G 1317-3:2020
(1)
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 一般事項························································································································· 1
4 定量方法の区分 ················································································································ 1
5 二酸化けい素重量法 ·········································································································· 1
5.1 要旨 ···························································································································· 1
5.2 試薬 ···························································································································· 1
5.3 試料はかりとり量 ·········································································································· 2
5.4 操作 ···························································································································· 2
5.5 空試験 ························································································································· 2
5.6 計算 ···························································································································· 2
6 ICP発光分光分析法 ·········································································································· 3
6.1 要旨 ···························································································································· 3
6.2 試薬 ···························································································································· 3
6.3 試料はかりとり量 ·········································································································· 4
6.4 操作 ···························································································································· 4
6.5 空試験 ························································································································· 4
6.6 検量線の作成 ················································································································ 4
6.7 計算 ···························································································································· 5
G 1317-3:2020
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本フェロアロイ協会(JFA)及び一般財団
法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,日本
産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。これによって,JIS G
1317:1998は廃止され,その一部を分割して制定したこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS G 1317の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS G 1317-1 第1部:モリブデン定量方法
JIS G 1317-2 第2部:炭素定量方法
JIS G 1317-3 第3部:けい素定量方法
JIS G 1317-4 第4部:りん定量方法
JIS G 1317-5 第5部:硫黄定量方法
JIS G 1317-6 第6部:銅定量方法
JIS G 1317-7 第7部:アルミニウム定量方法
日本産業規格 JIS
G 1317-3:2020
フェロモリブデン分析方法−
第3部:けい素定量方法
Method for chemical analysis of ferromolybdenum-
Part 3: Determination of silicon content
1
適用範囲
この規格は,フェロモリブデン中のけい素の定量方法について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 1301 フェロアロイ−分析方法通則
JIS H 6201 化学分析用白金るつぼ
JIS H 6202 化学分析用白金皿
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
3
一般事項
分析方法に共通な一般事項は,JIS G 1301による。
4
定量方法の区分
けい素の定量方法は,次のいずれかによる。
a) 二酸化けい素重量法 この方法は,けい素含有率(質量分率)0.05 %〜3.0 %の試料に適用する。
b) ICP発光分光分析法 この方法は,けい素含有率(質量分率)0.02 %〜1.0 %の試料に適用する。
5
二酸化けい素重量法
5.1
要旨
試料を,硝酸と塩酸とで分解し,硫酸を加え,加熱して硫酸の白煙を発生させて,けい素を不溶解性け
い酸とした後,可溶性塩類を溶解する。沈殿をこし分け,強熱して恒量とした後,その質量をはかる。硫
酸とふっ化水素酸とを加え,加熱して二酸化けい素を揮散させ,強熱して恒量とした後,その質量をはか
る。
5.2
試薬
試薬は,次による。
2
G 1317-3:2020
5.2.1
塩酸
5.2.2
塩酸(1+4,1+10)
5.2.3
硝酸(1+1)
5.2.4
ふっ化水素酸
5.2.5
硫酸(1+1)
5.3
試料はかりとり量
試料はかりとり量は,1.0 gとする。
5.4
操作
5.4.1
試料の分解及びけい酸の脱水
試料の分解及びけい酸の脱水は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかりとってビーカー(300 mL)に移し入れ,時計皿で覆う。
b) 硝酸(1+1)20 mL及び塩酸5 mLを加え,穏やかに加熱して分解する。
c) 放冷した後,時計皿の下面を水で洗って時計皿を取り除く。
d) 硫酸(1+1)20 mLを加え,加熱して硫酸の濃厚な白煙を約15分間発生させた後,放冷する。
5.4.2
けい酸のろ過及び洗浄
けい酸のろ過及び洗浄は,次の手順によって行う。
a) 5.4.1 d)で得た溶液に塩酸(1+4)50 mLを加え,穏やかに加熱して可溶性塩類を溶解する。
なお,可溶性塩類の溶解で長時間加熱すると含水二酸化けい素が再び可溶性になるので,可溶性塩
類の溶解は,なるべく短時間で行う。
b) 直ちにろ紙(5種B)を用いてこし分け,ビーカー内壁に付着した沈殿を,ポリスマンでこすって,
少量の温塩酸(1+10)でろ紙上に洗い移す。
c) 最初に温水と温塩酸(1+10)とで交互に5回ずつ,次に温水でろ液に鉄(III)イオンの黄色が認めら
れなくなるまで洗浄し,引き続き温水で酸が消失するまでろ紙上の沈殿を洗浄する。
5.4.3
ろ紙の灰化及び沈殿のひょう量
ろ紙の灰化及び沈殿のひょう量は,次の手順によって行う。
a) 5.4.2 c)で得た沈殿及びろ紙を,白金るつぼ(JIS H 6201の30番)に移し入れる。
b) 低温で加熱してろ紙を乾燥した後,強熱してろ紙を灰化する。
c) 1 100 ℃で約30分間強熱し,デシケーター中で常温まで放冷した後,白金るつぼの質量をはかる。
d) c)の操作を恒量(質量差が0.3 mg以下)となるまで繰り返す。
5.4.4
沈殿のふっ化水素酸処理及びひょう量
沈殿のふっ化水素酸処理及びひょう量は,次の手順によって行う。
a) 5.4.3 d)で得た白金るつぼ中の残さに硫酸(1+1)2滴〜3滴を加えて湿らせ,ふっ化水素酸約5 mLを
加え,加熱して二酸化けい素及び硫酸を揮散させる。
b) 1 100 ℃で約30分間強熱し,デシケーター中で常温まで放冷した後,白金るつぼの質量をはかる。
c) b)の操作を恒量(質量差が0.3 mg以下)となるまで繰り返す。
5.5
空試験
空試験は,試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と併行して行う。
5.6
計算
5.4.3 d)で得た質量,5.4.4 c) で得た質量及び5.5で得た質量から,試料中のけい素含有率を,次の式によ
って算出する。
3
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(
)(
)
2
3
4
5
1
0.4674
100
m
m
m
m
Si
m
×
−
−
−
=
×
ここに,
Si: 試料中のけい素含有率[%(質量分率)]
m1: 試料はかりとり量(g)
m2: 試料について5.4.3 d) で得た質量(g)
m3: 試料について5.4.4 c) で得た質量(g)
m4: 空試験における5.4.3 d) で得た質量(g)
m5: 空試験における5.4.4 c) で得た質量(g)
6
ICP発光分光分析法
6.1
要旨
試料を,硫酸と硝酸とで分解してろ過し,残さを炭酸ナトリウムで融解して融成物をろ液で溶解する。
その溶液をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,けい素の発光強度を測定する。
6.2
試薬
試薬は,次による。ただし,水は,JIS K 0557に規定する種別A3に相当するものを用いる。
6.2.1
塩酸(1+50)
6.2.2
硝酸(1+1)
6.2.3
硫酸(1+1)
6.2.4
炭酸ナトリウム
6.2.5
モリブデン溶液(Mo:30 mg/mL) 三酸化モリブデン[99.9 %(質量分率)以上で,けい素含有
率が0.001 %(質量分率)未満であることが保証されているか,又は0.01 %(質量分率)以下で値が特定
されているもの。特定された値としては,妥当性が確認できれば,認証値でなくてもよい。]を4.5 gはか
りとって,ポリテトラフルオロエチレン(以下,PTFEという。)製ビーカー(200 mL)又は白金皿(JIS H
6202の100番)に移し入れ,PTFE製の時計皿又は白金製の蓋で覆う。硫酸(1+1)10 mL,硝酸5 mL及
びふっ化水素酸5 mLを加え,加熱して分解する。放冷した後,時計皿又は蓋の下面を水で洗って取り除
き,加熱して硫酸の白煙を10分間発生させ放冷する。時計皿又は蓋で覆い,塩酸5 mLを加えて加熱し,
可溶性塩類を溶解する。常温まで冷却した後,蓋の下面を水で洗った後蓋を取り除き,水を用いて100 mL
の全量フラスコへ移し入れる。水で標線までうすめる。直ちに栓付きポリエチレン(以下,PEという。)
製瓶に保存する。
6.2.6
鉄溶液(Fe:50 mg/mL) 鉄[99.9 %(質量分率)以上で,けい素含有率が0.002 %(質量分率)
未満であることが保証されているか,又は0.02 %以下で値が特定されているもの。特定された値としては,
妥当性が確認されていれば,認証値でなくてもよい。]を5.0 gはかりとって,PTFE製ビーカー(300 mL)
に移し入れ,PTFE製の時計皿で覆い,塩酸(1+1)50 mLを少しずつ加える。反応が穏やかになったら加
熱して鉄を分解する。常温まで冷却した後,時計皿の下面を水で洗って時計皿を取り除き,100 mLの全量
フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線までうすめる。直ちに栓付きPE製瓶に保存する。
6.2.7 けい素標準液(Si:0.10 mg/mL) 二酸化けい素[99.9 %(質量分率)以上]を900 ℃〜1 100 ℃
で強熱し,デシケーター中で常温まで放冷してその質量をはかる操作を恒量(質量差が0.3 mg以下)にな
るまで繰り返す。その0.213 9 gを白金るつぼ(JIS H 6201の30番)にはかりとり,炭酸ナトリウム1.0 g
を加えて混合し,850 ℃以上で加熱して融解する。放冷した後,白金るつぼごと水50 mLが入ったビーカ
ー(300 mL)に入れ,穏やかに加熱して融成物を溶解し,白金るつぼを水で洗って取り除く。常温まで冷
却した後,1 000 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れる。水で標線までうすめる。直ちに栓付きPE
4
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製瓶に保存する。
6.3
試料はかりとり量
試料はかりとり量は,0.20 gとする。
6.4
操作
6.4.1
試料の分解
試料の分解は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかりとってPTFE製ビーカー(200 mL)に移し入れ,PTFE製の時計皿で覆う。
b) 硫酸(1+1)5 mL及び硝酸(1+1)10 mLを加え,加熱して分解する。
c) 時計皿の下面を温水で洗って時計皿を取り除き,水約30 mLを加え,溶液をろ紙(5種B)を用いて
ろ過する。
d) ビーカーに付着した残さは,ポリスマンでこすってろ紙上に移し,ろ紙及び不溶解残さを温水と温塩
酸(1+50)とで交互に5回ずつ,次に温水でろ液に鉄(III)イオンの黄色が認められなくなるまで洗
浄し,ろ液及び洗液をPTFE製ビーカー(200 mL)に集める。
e) ろ液及び洗液を加熱して液量が約50 mLになるまで濃縮する。
6.4.2
不溶解残さの処理
不溶解残さの処理は,次の手順によって行う。
a) 6.4.1 d)で得た不溶解残さを,ろ紙とともに白金るつぼ(JIS H 6201の30番)に移し入れ,低温で加
熱してろ紙を乾燥した後,強熱してろ紙を灰化し,放冷する。
b) 炭酸ナトリウム1.0 gを加えて混合した後,白金製の蓋で覆う。始めは徐々に加熱して融解し,続いて
約850 ℃で約5分間加熱し,不溶解残さを融解する。
c) 放冷した後,白金るつぼ及び蓋を6.4.1 e)で得た溶液中に移し入れる。
d) PTFE製の時計皿で覆い,穏やかに加熱して融成物を溶解する。時計皿の下面を水で洗って時計皿を
取り除き,白金るつぼ及び蓋を少量の水で洗って取り出す。
e) 常温まで冷却した後,100 mLの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線までうすめる。直ちに
栓付きPE製瓶に移し入れ,測定溶液とする。
6.4.3
発光強度の測定
6.4.2 e)で得た測定溶液の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,288.16 nmの分
析線を用いて,けい素の発光強度を測定する。
6.5
空試験
空試験は,次の手順に従って試料と同じ操作を試料と併行して行う。
a) PTFE製ビーカー(200 mL)を準備し,試料中に含まれるモリブデン及び鉄と同量のモリブデン溶液
(6.2.5)及び鉄溶液(6.2.6)を加え,PTFE製の時計皿で覆う。
b) 次に,6.4.1 b)〜6.4.3の手順に従って操作する。
6.6
検量線の作成
検量線の作成は,次の手順によって行う。
a) 数個のPTFE製ビーカー(200 mL)を準備し,試料中に含まれるモリブデン及び鉄と同量のモリブデ
ン溶液(6.2.5)及び鉄溶液(6.2.6)を加える。
b) a)の溶液に,けい素標準液(6.2.7)0 mL〜20 mL(けい素として0 mg〜2.0 mgに相当する。)を段階的
に正確に加え,PTFE製の時計皿で覆う。ただし,検量線溶液のけい素最高濃度は,分析試料中のけ
い素含有率の10倍相当量以下となるように調整する。
5
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c) 6.4.1 b)〜6.4.2 e)の手順に従って操作を行う。
d) この溶液の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,288.16 nmの分析線を用い
て,けい素の発光強度を試料と併行して測定する。
e) d)で得たけい素の発光強度と添加したけい素量との関係線を作成して検量線とする。
6.7
計算
6.6で作成した検量線から6.4.3及び6.5で得たけい素の発光強度に対応するけい素量を求め,試料中の
けい素含有率を,次の式によって算出する。
1
2
6
7
100
A A
m
Si
m
−
+
=
×
ここに,
Si: 試料中のけい素含有率[%(質量分率)]
A1: 測定溶液中のけい素検出量(g)
A2: 空試験溶液中のけい素検出量(g)
m6: 空試験で加えたモリブデン溶液及び鉄溶液中のけい素
量(g)。
三酸化モリブデン中のけい素含有率が0.001 %(質量分
率)未満及び鉄中のけい素含有率が0.002 %(質量分率)
未満である場合は,けい素量を0とする。
m7: 試料はかりとり量(g)
参考文献
[1] JIS Z 8402-2:1999 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部:標準測定方法の併行
精度及び再現精度を求めるための基本的方法
[2] JIS Z 8402-3:1999 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第3部:標準測定方法の中間
精度