G 1301:2016
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 3
4 一般事項························································································································· 5
4.1 共通一般事項 ················································································································ 5
4.2 個別一般事項 ················································································································ 5
5 成分試験試料の採取,調製及び取扱い ·················································································· 6
5.1 成分試験試料の採取,調製及び保管··················································································· 6
5.2 化学分析方法の成分試験試料のはかりとり ·········································································· 6
5.3 機器分析方法の成分試験試料の調製··················································································· 6
6 分析値のまとめ方 ············································································································· 6
6.1 空試験 ························································································································· 6
6.2 分析回数 ······················································································································ 6
6.3 分析値の採択 ················································································································ 6
6.4 分析値の表示 ················································································································ 6
7 化学分析方法の許容差の取扱い方 ························································································ 6
7.1 化学分析方法の許容差 ···································································································· 6
7.2 化学分析方法の分析値の精確さの検討················································································ 6
7.3 許容差が規定されていない場合の取扱い方 ·········································································· 8
7.4 許容差の判定方法 ·········································································································· 8
8 化学分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ ·························································· 8
9 機器分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ ·························································· 9
10 フェロアロイ分析方法規格群の規格の様式 ·········································································· 9
附属書A(参考)フェロアロイ分析方法規格群の規格作成における参考情報 ··································· 10
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(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,日本フェロアロイ
協会(JFA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべ
きとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS G 1301:2008は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
G 1301:2016
フェロアロイ−分析方法通則
Ferroalloys-General rules for chemical analysis
1
適用範囲
この規格は,日本工業規格(JIS)に規定されているフェロアロイ(JIS G 2301〜JIS G 2304,JIS G 2306
〜JIS G 2316,JIS G 2318及びJIS G 2319)中の各成分の分析方法を規定した規格(以下,フェロアロイ
分析方法規格群という。)(表1)におけるフェロアロイの分析方法に関する一般的な事項について規定す
る。
表1−フェロアロイの分析方法
分析方法規格番号
規格名称
分析成分又は品種/分析成分
JIS G 1311-1〜7
フェロマンガン分析方法−
第1部〜第7部
Mn,C,Si,P,S,B,N
JIS G 1312-1〜6
フェロシリコン分析方法−
第1部〜第6部
Si,C,P,S,Al,Ti
JIS G 1313-1〜6
フェロクロム分析方法−
第1部〜第6部
Cr,C,Si,P,S,N
JIS G 1314-1〜6
シリコマンガン分析方法−
第1部〜第6部
Mn,Si,C,P,S,B
JIS G 1316
フェロタングステン分析方法
W,C,Si,Mn,P,S,Sn,Cu,As,Sb,Bi
JIS G 1317
フェロモリブデン分析方法
Mo,C,Si,P,S,Cu,Al
JIS G 1318
フェロバナジウム分析方法
V,C,Si,P,S,Al
JIS G 1319
フェロチタン分析方法
Ti,C,Si,Mn,P,S
JIS G 1320
フェロホスホル−りん定量方法
P
JIS G 1321-1〜5
金属マンガン分析方法−
第1部〜第5部
C,Si,P,S,Fe
JIS G 1322-1〜7
金属けい素分析方法−
第1部〜第7部
Si,C,P,S,Fe,Al,Ca
JIS G 1323
金属クロム分析方法
Cra),C,Si,P,S,Fe,Al
JIS G 1324
カルシウムシリコン分析方法
Ca,Si,C,P
JIS G 1325-1〜5
シリコクロム分析方法−
第1部〜第5部
Si,Cr,C,P,S
JIS G 1326
フェロニッケル分析方法
Ni,Co,C,Si,Mn,P,S,Cr,Cu
JIS G 1327-1〜4
フェロボロン分析方法−
第1部〜第4部
B,C,Si,Al
JIS G 1328
フェロニオブ分析方法
Nb,Ta,C,Si,P,S,Sn,Al
JIS G 1351
フェロアロイ−蛍光X線分析方法 フェロマンガン/Mn,Si,P,フェロシリコン/Si,Al,P,
フェロクロム/Cr,Si,P,シリコマンガン/Mn,Si,P,
金属けい素/Al,Fe,Ca,シリコクロム/Si,Cr,P,フェ
ロボロン/B,Si,Al,P
注a) 炭素,けい素,りん,硫黄,鉄及びアルミニウムを定量した後の残部
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引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 1501 フェロアロイのサンプリング方法通則
JIS G 1601 フェロアロイの成分用試料のサンプリング方法(その1 フェロマンガン,フェロシリコ
ン,フェロクロム,シリコマンガン及びシリコクロム)
JIS G 1602 フェロアロイの成分用試料のサンプリング方法(その2 フェロタングステン,フェロモ
リブデン,フェロバナジウム,フェロチタン及びフェロニオブ)
JIS G 1603 フェロアロイの成分用試料のサンプリング方法(その3 フェロホスホル,金属マンガン,
金属けい素,金属クロム,カルシウムシリコン及びフェロボロン)
JIS G 1604 フェロアロイの成分用試料のサンプリング方法(その4 フェロニッケル)
JIS G 2301 フェロマンガン
JIS G 2302 フェロシリコン
JIS G 2303 フェロクロム
JIS G 2304 シリコマンガン
JIS G 2306 フェロタングステン
JIS G 2307 フェロモリブデン
JIS G 2308 フェロバナジウム
JIS G 2309 フェロチタン
JIS G 2310 フェロホスホル
JIS G 2311 金属マンガン
JIS G 2312 金属けい素
JIS G 2313 金属クロム
JIS G 2314 カルシウムシリコン
JIS G 2315 シリコクロム
JIS G 2316 フェロニッケル
JIS G 2318 フェロボロン
JIS G 2319 フェロニオブ
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0113 電位差・電流・電量・カールフィッシャー滴定方法通則
JIS K 0115 吸光光度分析通則
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0117 赤外分光分析方法通則
JIS K 0119 蛍光X線分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 0211 分析化学用語(基礎部門)
JIS K 0557 用水・排水の試験に用いる水
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS R 3505 ガラス製体積計
JIS Z 2615 金属材料の炭素定量方法通則
3
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JIS Z 2616 金属材料の硫黄定量方法通則
JIS Z 8101-1 統計−用語及び記号−第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
JIS Z 8301 規格票の様式及び作成方法
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8402-1 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第1部:一般的な原理及び定義
JIS Z 8402-6 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第6部:精確さに関する値の実用的
な使い方
JIS Z 8801-1 試験用ふるい−第1部:金属製網ふるい
3
用語及び定義
この規格及びフェロアロイ分析方法規格群で用いる主な用語及び定義は,JIS K 0050,JIS K 8001,JIS Z
8101-1,JIS Z 8301及びJIS Z 8402-1によるほか,次による。また,フェロアロイ分析方法規格群での操
作に用いる用語の説明を,附属書Aに示す。
注記 JIS K 0050の箇条3(用語及び定義)には,JIS K 0211,JIS K 0212,JIS K 0213,JIS K 0214,
JIS K 0215及びJIS K 0216の分析化学用語の各規格が引用されているので,この規格でもこれ
ら分析化学用語の各規格の定義が適用される。
3.1
化学分析方法
試料に化学反応を起こさせ,重量法1),ガス容量法,滴定法2),吸光光度分析法,原子吸光分析法,誘
導結合プラズマ[ICP3)]発光分光分析法,赤外線吸収法,導電率法,電量法などによって分析対象成分を
定量する方法の総称。
注記 滴定法,吸光光度分析法,原子吸光分析法及び誘導結合プラズマ発光分光分析法は,JIS K 0211
に定義されている。
注1) JIS K 0211には,“重量分析”が規定されているが,フェロアロイ分析方法規格群では他の分析
法の用語と整合させるため,“重量分析”の代わりに“重量法”を用いる。
2) フェロアロイ分析方法規格群では,滴定法の種類として,酸塩基滴定法,酸化還元滴定法及び
錯滴定法並びにそれらの逆滴定法,及び電位差滴定法が採用されている。これらの滴定法は,
JIS K 0211に定義されている。
3) ICPは,誘導結合プラズマの略称としてJIS K 0116に定義されている。
3.2
機器分析方法
蛍光X線分析法によって分析対象成分の定量を行う分析方法。
注記 蛍光X線分析法は,JIS K 0211に定義されている。
3.3
ガス容量法
分析対象成分を気体状の化合物とし,その生成物を吸収液に吸収させて減じた体積量を測定して分析対
象成分の定量を行う分析方法。
3.4
目視滴定法
指示薬などの色の変化を目視して滴定終点を判定する滴定法。通常は,単に滴定法というが,電位差滴
4
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定法との区別を要する場合に目視滴定法という。
3.5
赤外線吸収法
試料を吸収セルに送り,赤外線光の吸収セル通過での吸収量を測定して定量を行う分析方法。
フェロアロイ分析方法規格群では,試料中の分析対象成分を気体状の化合物に変換して吸収セルに送り,
その気体状の化合物による赤外線の吸収量を測定して分析対象成分の定量を行う分析方法。
3.6
熱伝導度法
試料から生じたガスを検出器に流し,基準ガスとの熱伝導度の違いによって生じる検出器中の加熱フィ
ラメントの電気抵抗の変化を測定してガス組成を定量する分析方法。
3.7
導電率法
試料を吸収液に吸収させ,その吸収液の電気導電率を測定して定量を行う分析方法。
フェロアロイ分析方法規格群では,試料中の分析対象成分を気体状の化合物に変換して吸収液に送り,
その気体状の化合物を吸収した吸収液の電気導電率を測定して分析対象成分の定量を行う分析方法。
3.8
電量法
試料を吸収液に吸収させ,その吸収液中の試料を電気分解によって分解した際の電流量を測定して定量
を行う分析方法。
フェロアロイ分析方法規格群では,試料中の分析対象成分を気体状の化合物に変換して吸収液に送り,
その気体状の化合物が溶解して生成した物質が電気分解によって,分解する際に要した電流量を測定して
分析対象成分の定量を行う分析方法。
3.9
空試験
通常,試料を用いないで,試料と同様の操作を併行して操作をする試験。
フェロアロイ分析方法規格群では,吸光光度分析法,原子吸光分析法などの検量線を作成する方法にお
いては,試料の代わりに高純度金属を用いて試料と同様の操作をする試験をいう。空試験によって調製し
た液を空試験液という。
注記 空試験は,JIS K 0211には第一文だけが定義として示されている。
3.10
ゼロメンバー
検量線用溶液において,分析対象成分の標準液を添加していない溶液。
3.11
熱(接頭語)
酸などの液体について,60 ℃以上の温度とした状態に用いる接頭語。“熱塩酸(1+1)”などのように用
いる。
3.12
温(接頭語)
酸などの液体について,40〜60 ℃の温度とした状態に用いる接頭語。“温塩酸(1+50)”などのように
用いる。
5
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3.13
成分試験試料
規定の試料調製を完了し,分析対象成分分析を行うことができる試料。
フェロアロイ分析方法規格群に規定している各定量方法規格においては,成分試験試料を分析用試料又
は単に試料ということがある。
3.14
分析試料
分析対象成分分析を行うために,成分試験試料からはかりとる試料。ただし,各定量方法規格において
分析試料を単に試料又ははかりとり試料ということがある。
3.15
室内再現条件(within-laboratory-reproducibility condition)
同一成分試験試料の測定において,時間・校正・オペレータ・装置の4因子の1個以上が異なっている
測定条件4)。
注4) 室内再現条件で求めた“室内再現精度”は,JIS Z 8402-3に規定された“中間精度”に相当す
る。
3.16
室内再現許容差(within-laboratory-reproducibility limit)
室内再現条件で得られた2個の測定結果の差の絶対値が,その値以下になることが95 %の確率で期待さ
れる値。
4
一般事項
4.1
共通一般事項
フェロアロイ分析方法規格群に共通な一般事項は,JIS K 0050によるほか,次による。
a) 全量ピペット及びビュレット フェロアロイ分析方法規格群で用いる全量ピペット及びビュレットは,
特に指定がない場合は,JIS R 3505のクラスAのものを用いる。
なお,自動ビュレットは,指定滴加量の繰返し測定(体積換算値)の標準偏差の2倍の値が,JIS R
3505に規定されている,その指定滴加量(体積)でのクラスAの許容誤差内であれば,全量ピペット
及び/又はビュレットの代わりに使用できる。
b) 全量フラスコ フェロアロイ分析方法規格群で用いる全量フラスコは,特に指定がない場合は,JIS R
3505のクラスAの受用のものを用いる。ただし,JIS K 0050の附属書H(体積計の校正方法)によっ
て校正した場合は,クラスBのものを用いてもよい。
c) はかり 化学分析用の分析試料などのはかりとりに用いるはかりは,特に指定がない場合は,最小読
取値が0.1 mgで,国際標準とトレーサビリティが得られている分銅によって校正された,化学はかり
又は電子はかりとする。
d) ふるい ふるいは,特に指定がない場合は,JIS Z 8801-1による。
e) 水 フェロアロイ分析方法規格群で用いる水は,特に指定がない場合は,JIS K 0557に規定する種別
A3又はA4相当の水を用いる。
4.2
個別一般事項
フェロアロイ分析方法規格群に規定した各定量方法における一般事項は,JIS K 0113,JIS K 0115,JIS K
0116,JIS K 0117,JIS K 0119,JIS K 0121,JIS Z 2615及びJIS Z 2616による。
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成分試験試料の採取,調製及び取扱い
5.1
成分試験試料の採取,調製及び保管
成分試験試料の採取及び調製は,JIS G 1501及びJIS G 1601〜JIS G 1604による。成分試験試料の保管
期間は,通常,6か月とする。
なお,試料の保管に際しては,試料が変質を起こさないように温度,直射日光,水分などの影響のない
場所に保管する。
5.2
化学分析方法の成分試験試料のはかりとり
化学分析方法の成分試験試料は,5.1で採取及び調製した成分試験試料から,4.1 c) に規定されたはかり
を用いて,はかりとった試料の組成が成分試験試料の平均組成となるように,かつ,その質量が化学分析
方法を規定したフェロアロイ分析方法規格群の各定量方法規格に規定しているはかりとり量の表示桁に丸
めたときに規定を満たすようにはかりとり,その質量を0.1 mgの桁まで読み取る。ただし,熱的分析方法
においては,1 mgの桁までの読取りでよく,この場合に用いるはかりは,4.1 c) の規定を満たさなくても
よい。ただし,フェロアロイ分析方法規格群の各定量方法規格に読取り桁数が規定されている場合には,
その規定に従う。
5.3
機器分析方法の成分試験試料の調製
機器分析方法の成分試験試料は,機器分析方法の各定量方法規格に記載する方法に従って調製する。
6
分析値のまとめ方
6.1
空試験
化学分析方法による分析においては,全操作を通じて空試験を行い,分析値を補正しなければならない。
なお,フェロアロイ分析方法規格群の各定量方法規格に空試験は行わないと規定されている場合には,
空試験及び空試験値の補正を省略する。
6.2
分析回数
分析回数は,分析依頼者からの要求による。要求がない場合には,JIS Z 8402-6によるのが望ましい。
ただし,7.2.1の真度の検討を行って分析値の妥当性が確認されれば,1回の分析でもよい。
6.3
分析値の採択
化学分析方法による分析においては,7.2の分析値の精確さの検討,特に7.2.1の真度の検討を行って検
討結果が満足できる場合にだけ分析値を採択することが望ましい。
6.4
分析値の表示
分析値は,はかりとった試料の質量に対する質量分率で表し,百分率を示す%を用いて表示する。
分析値の報告桁は,分析法の精度を考慮して決定する。数値の丸め方は,JIS Z 8401による。JISの製
品規格の規定によって分析値を報告する場合には,規定された各成分の表示の最下位まで表示する。
7
化学分析方法の許容差の取扱い方
7.1
化学分析方法の許容差
化学分析方法の許容差は,フェロアロイ分析方法規格群の化学分析方法の各定量方法規格に規定する。
フェロアロイ分析方法規格群に許容差を規定していない場合には,7.3による。
7.2
化学分析方法の分析値の精確さの検討
7.2.1
真度の検討
分析試料と化学特性が近似し,認証値が成分試験試料の予想含有率に近い認証標準物質を一つ選んで,
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分析試料と併行して分析し,得られた認証標準物質の分析結果と認証値との差の絶対値が,その分析方法
規格の対標準物質許容差を超えなければ,同時に分析して得られた分析試料の分析値の真度は,満足でき
るものと判断する。複数の試料について,分析操作が分析試料と同一の場合は,それらの試料に対し,一
つの認証標準物質によって真度の検討を行ってもよい。
対標準物質許容差の求め方は,次のいずれかによる。
a) 各定量方法規格に対標準物質許容差が規定されている場合 対標準物質許容差は,その規定に従う。
b) 各定量方法規格に対標準物質許容差の規定がなく,室間再現許容差が規定されている場合 対標準物
質許容差C(質量分率)は,次のいずれかの方法によって求める。室間再現許容差が式で規定されて
いる場合は,室間再現許容差の式に認証値を代入して室間再現許容差を求め,得た値に0.357
1(=1.0/2.8)を乗じた値を室間再現標準偏差として式(1)又は式(2)に代入して対標準物質許容差Cを求め
る。室間再現許容差が数値の表で示されている場合は,認証値における室間再現許容差を補完法によ
って求め,得た値に0.357 1(=1.0/2.8)を乗じた値を室間再現標準偏差として式(1)又は式(2)に代入して
対標準物質許容差Cを求める。
なお,補完法とは,例えば,隣り合った2点間に一次式を求め,この一次式から許容差を近似する
ことをいう。
1) 使用した認証標準物質の認証書に個々のデータが記載され,認証値決定時の分析値の標準偏差が求
められる場合は,式(1)によって求める。
2
R
C
2
C
2
s
N
s
C
+
=
········································································ (1)
ここに,
sC: 試料と併行に分析した認証標準物質の認証値決定時の分析の
標準偏差(標準偏差を求める個々のデータは,認証値決定試
験参加分析室ごとの平均値)(質量分率)
NC: 用いた標準物質の認証値決定試験参加分析室数
sR: 室間再現標準偏差(質量分率)
2) 使用した認証標準物質の認証書に個々のデータの記載がなく,不確かさの値だけが記載されている
場合は,式(2)によって求める。
2
R
2
CRM
)
/
(
2
s
k
U
C
+
=
······························································· (2)
ここに, UCRM: 使用した認証標準物質の認証値の不確かさ
k: 包含係数。JIS K 0211に規定され,拡張不確かさを得るため
に合成標準不確かさに乗じる係数で,通常は2〜3の値をと
る。
c) 各定量方法規格に対標準物質許容差及び室間再現許容差が規定されていない場合 式(3)において
mCRMに認証値[%(質量分率)]を入れて室間再現標準偏差を求め,その値をb) の式(1)又は式(2)に
代入して対標準物質許容差Cを求める。
5
0.601
CRM
R
21
0.018
m
s
×
=
······························································· (3)
7.2.2
併行精度の検討
同一分析室において,同一成分試験試料を併行条件で2回分析して得られた2個の分析値の結果の範囲
が,その分析方法に規定している併行許容差(r)以下であれば,これらの2個の分析値の間に異常な差は
ないものと判断する。この場合には,併行許容差式の成分含有率の項には,2個の分析値の平均値を代入
する。
8
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7.2.3
室内再現精度(中間精度)の検討
同一分析室において,同一成分試験試料を再現条件で2回分析して得られた2個の分析結果の差の絶対
値が,その分析方法規格に規定されている室内再現許容差を超えなければ,この2個の分析結果の間に異
常な差はないものと判断する。室内再現許容差が式で規定されている場合には,2個の分析値の平均値を
式の成分含有率の項に代入する。
注記 JIS Z 8402-3では併行標準偏差と再現標準偏差との間の誤差因子をもつ場合を中間精度と呼ん
でいて,この語が正規の用語であるが,フェロアロイ分析方法規格群では,従来からの呼称に
従って,室内再現精度の用語を用いる。
7.2.4
室間再現精度の検討
二つの異なる分析室において,同一成分試験試料をそれぞれ分析して得られた結果の範囲が,その分析
方法規格に規定している室間再現許容差(R)以下であれば,これらの二つの分析室の間に異常な差はな
いものと判断する。室間再現許容差が式で規定されている場合には,2個の分析値の平均値を式の成分含
有率の項に代入する。
7.3
許容差が規定されていない場合の取扱い方
分析方法規格に許容差又は分析精度が規定されていない場合の許容差,又は分析方法規格の定量範囲に
対して許容差若しくは分析精度の適用範囲が狭い場合の適用範囲外の許容差は,次の式によって算出する。
a) 併行許容差
6
0.603
1
3
0.024
m
r
×
=
····································································· (4)
ここに,
r: 併行許容差[%(質量分率)]
m1: 併行許容差を求める二つの分析結果の平均値[%(質量分率)]
b) 室内再現許容差
6
0.603
2
w
1
0.029
m
R
×
=
·································································· (5)
ここに,
Rw: 室内再現許容差[%(質量分率)]
m2: 室内再現許容差を求める二つの分析結果の平均値[%(質量
分率)]
c) 室間再現許容差
5
0.601
3
0
0.051
m
R
×
=
···································································· (6)
ここに,
R: 室間再現許容差[%(質量分率)]
m3: 室間再現許容差を求める二つの分析結果の平均値[%(質量
分率)]
7.4
許容差の判定方法
併行許容差,室内再現許容差及び室間再現許容差の判定は,各々の分析結果の報告桁を報告桁の一番少
ない結果に合わせてその差を求め,許容差も分析結果の報告桁に丸めて比較する。対標準物質許容差の判
定は,分析結果の報告桁を認証値の表示桁に合わせてから認証値との差を求めて比較する。ただし,分析
結果の報告桁数が少なく,認証値の表示桁に合わせることができない場合は,認証値及び許容差を分析結
果の報告桁に丸めて比較する。
許容差を分析結果の報告桁に丸めるとゼロとなる場合は,その報告桁の値が1となる値を許容差とする。
8
化学分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ
フェロアロイ分析方法規格群のうちの化学分析方法によって得た定量値は,7.2.1に規定された真度を満
足していれば,適用した分析法の国際単位系(SI)への計量計測トレーサビリティが得られている。
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機器分析方法による定量値の計量計測トレーサビリティ
機器分析方法によって得た定量値の計量計測トレーサビリティは,フェロアロイ分析方法規格群の化学
分析方法で分析し,併行して分析した認証標準物質の分析値によって正確さが確認された標準値をもつ試
料と冶金的履歴が同じ標準物質群によって作成された検量線を使って分析することで得られる。
定量の対象としている成分の化学分析方法の適用範囲が機器分析方法より狭いことによって,機器分析
方法に使用する標準物質の組成が,フェロアロイ分析方法規格群に規定された化学分析方法では計量計測
トレーサビリティを確保できない場合の化学分析方法は,次による。ただし,いずれの方法の場合も7.2.1
に規定された対標準物質許容差,並びに7.3 a) 及び7.3 b) に規定された併行許容差及び室内再現許容差を
満足しなければならない。
a) そう書,論文などによって公知となっている,適切なフェロアロイの分析方法。
b) 該当するJISの操作の一部を変更し,適用範囲を拡大した方法。
10 フェロアロイ分析方法規格群の規格の様式
フェロアロイ分析方法規格群の規格の様式及び作成方法は,JIS Z 8301によるが,細部については,附
属書Aを参照して作成することが望ましい。
10
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附属書A
(参考)
フェロアロイ分析方法規格群の規格作成における参考情報
A.1 規格名称
規格名称は,前書き要素:“(対象品種)の分析方法”−主題要素:“(分析対象成分)定量方法”とする
ことを推奨する。分析対象成分が複数ある場合には,部編成とすることが望ましい。
注記 規格名称は,JIS Z 8301に“前書き要素”−“主題要素”−“補完要素”(必要な場合)で記載
することと規定されている。
化学分析方法の名称は,対応国際規格がある場合は,その規格の題名と整合させるほか,次によること
が望ましい。
a) 重量法 重量法の名称は,質量をはかる化合物又は単体(以下,化合物という。)の名称の後に“重量
法”を付ける。
沈殿の生成の前に,分析対象成分を分離させる場合には,分離させる試薬又は分離される化合物,
及び方法(操作)の原理を表す語句1)を先に付ける。定量の妨害成分を分離させる場合は,妨害成分
名の後に“分離”と入れる。
注1) 方法(操作)の原理を表す語句とは,沈殿,共沈,気化,抽出,イオン交換などをいう。
例1 二酸化けい素重量法,イオン交換分離酸化ニオブ(V)重量法
b) 滴定法 滴定法の名称は,滴定試薬の名称の後に“滴定法”を付ける。電位差滴定の場合は,“電位差
滴定法”を付け,目視滴定と併用する場合は,両方の名称を入れる。
分析対象成分をあらかじめ酸化剤(又は還元剤)で酸化(又は還元)した後,滴定する(ただし,
逆滴定ではない。)場合は,上記滴定法の名称の前に,酸化剤(又は還元剤)の名称及び“酸化”(又
は“還元”)を付ける。
逆滴定の場合の名称は,滴定において過剰に加える試薬の名称及び滴定試薬の名称を中点“・”で
結び,その後に“逆滴定法”を付ける。
滴定の前に,分析対象成分を分離させる場合は,分離させる試薬又は分離される化合物,及び方法
(操作)の原理を表す語句1)を先に付ける。妨害成分を分離させる場合は,妨害成分名の後に“分離”
と入れる。
例2 過マンガン酸カリウム目視滴定法,エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム滴定法,ペ
ルオキソ二硫酸アンモニウム酸化硫酸アンモニウム鉄(II)・過マンガン酸カリウム逆滴定法
c) 吸光光度分析法 吸光光度分析法の名称は,水溶液の呈色を測定する場合は,呈色化合物の名称(た
だし,呈色化合物が錯体の場合には,錯体を生成させるために加えた錯形成剤の名称)の後に“吸光
光度法”を付ける。
呈色化合物を有機溶媒に抽出した後,その有機層の呈色を測定する場合には,呈色化合物の名称(た
だし,呈色化合物が錯体の場合には,錯体を生成させるために加えた錯形成剤の名称)の後に“抽出
吸光光度法”を付ける(抽出に用いる有機溶媒の名称は書かない。)。
例3 モリブドりん酸青吸光光度法,還元蒸留メチレンブルー吸光光度法
複数の錯形成剤を用いて呈色させる場合の名称は,複数の錯形成剤の名称を中点“・”で結び,そ
の後に吸光光度法又は抽出吸光光度法を付ける。
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呈色の前に,分析対象成分を分離させる場合は,分離させる試薬又は分離される化合物,及び方法
(操作)の原理を表す語句1)を先に付ける。妨害成分を分離させる場合は,妨害成分名の後に“分離”
と入れる。
例4 2-エチル-1,3-ヘキサンジオール抽出分離クルクミン吸光光度法
d) 原子吸光分析法 原子吸光分析法の名称は,フレーム原子吸光分析を用いる場合は,単に原子吸光分
析法とし,電気加熱原子吸光分析を用いる場合は,電気加熱原子吸光分析法とする。
原子吸光分析の前に,分析対象成分を分離させる場合は,分離させる試薬又は分離される化合物,
及び方法(操作)の原理を表す語句1)を先に付ける。妨害成分を分離させる場合は,妨害成分名の後
に“分離”と入れる。
分析対象成分と異なる成分を原子吸光分析法で測定してその吸光度から分析対象成分を定量する場
合は,“(分析対象成分)間接定量法”とする。
e) ICP発光分光分析法 ICP発光分光分析法の名称は,分析対象成分が3成分以上ある場合は,分析対
象成分として“多元素定量”としてもよい。規格群に同一の分析対象成分が複数ある場合は,続く補
完要素には,各部の特徴的な内容を示す語句をいれて区別する。
分析対象成分を分離させる場合は,分離させる試薬又は分離される化合物,及び方法(操作)の原
理を表す語句1)を付ける。妨害成分を分離させる場合は,妨害成分名の後に“分離”と入れる。
f)
その他の分析方法 その他の分析方法の名称は,単元素定量方法については,吸光光度分析法に準じ,
多元素定量法については,ICP発光分光分析法に準じて付ける。
A.2 適用範囲
適用範囲は,共同実験によって決定するのが望ましい。適用範囲の上限値は,共同実験結果で得た許容
差が7.3の各許容差を満たす共同実験試料の最大含有率を適切に丸めた値とし,下限値は,共同実験で得
た室間再現精度式から相対精度20 %以下の適切に丸めた値とするのが望ましい。
共同実験時に,共存元素の影響及び影響除去対策を調査し,影響が除去できない共存元素含有範囲は,
適用範囲から外す。
A.3 要旨
要旨は,次の事項を考慮して規定する。
注記 JIS Z 8301には,試験方法について原理を書くこととしており,ISO規格も原理(Principle)の
項を書いているが,フェロアロイ分析方法規格群では,分析法の原理ではなく要旨を書くこと
としている。
原理は,可能な限り解説に記載する。
a) 方法の概要が分かるよう簡潔に書く。操作については主として行う内容を書き,非定常の操作は省く。
“溶液を全量フラスコに移し入れて標線までうすめる。”などの標準操作の記載も省く。
反応式,分離,滴定などにおいて特定元素が反応する原理,理論的背景などは解説に示す。
b) 要旨中の試薬名は,溶液を使う場合でも“○○溶液”とはしない。ただし,滴定液(JIS K 0211によ
る。)は,溶液と書く。
c) 要旨中の試薬名,化合物及び元素は,分子式及び元素記号を用いないで書く。
d) 要旨の末尾は,“その質量をはかる。”,“その減量をはかる。”,“○○溶液で滴定する。”,“吸光度を測
定する。”などの文とし,標準添加法など特別な方法を採用した場合は,“○○法によって定量する。”
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と入れる。
A.4 試薬
A.4.1 一般事項
試薬は,次の事項を考慮して規定する。
a) 操作で使用する試薬は全て規定する。ただし,試薬調製,例えば,標準液の原液調製だけに用いる試
薬は規定しない。
b) ニッケルカプセルなど形状を規定するものは,器具とし,試薬としない。
c) 分析操作ごとに取り替える必要のない試薬は,装置・器具の箇条に記し,試薬の箇条には記さない。
d) 試薬の名称は,JISに規定されているものは,そのJISの名称を用い,使用する個々の試薬にJIS規
定名称及び化学式は記載しない。使用する個々の試薬JISに規定していない試薬の名称は,IUPACの
命名法に従い,化学式も記載する。
e) 国際一致規格は,ISO規格どおりの順で記載する。
f)
試薬の記載は,濃度などの語句による規定は試薬名と同じ行に記し,調製手順などの文による規定は,
改行して記す。
g) 同一試薬については,濃度の高い順に記載する。ただし,JIS K 0050の表1(水との混合比で表すこ
とのできる試薬)に規定された,水との混合比で表すことのできる試薬については,規定濃度の試薬
をそのまま用いる場合は一つの細分箇条とし,水との混合比で表すものについては別の細分箇条とし
て混合比の全てを同じ細分箇条で表す。
h) JIS K 0050の表1に規定された試薬以外の溶液の濃度の表示は,溶質の質量の無水換算値を溶液の体
積で除した値を基本とする。
i)
混合試薬は,単純混合の場合は,中点“・”を用いて併記する。混酸は,各酸(及び水)について名
称と体積割合とで示す。融解合剤は,質量割合を示す。
j)
同じ試薬について2種以上の濃度のものを規定し,使用目的を変えて使う場合は,なるべく名称を変
える。
例 ○○溶液,○○洗浄溶液
A.4.2 試薬の記載順序
試薬は,次の順で記載する。
a) 水(特殊な水)
b) 無機酸 一価の酸,二価の酸,三価の酸,混酸の順とする。一価の酸は,塩酸,硝酸,過塩素酸,ハ
ロゲン化水素酸の順とし,ハロゲン化水素酸は塩酸を除き原子番号順とする。
c) 無機塩基 アンモニア水,水酸化ナトリウム,水酸化カリウム,水酸化バリウムの順とする。
d) 過酸化水素
e) 金属 単体金属,合金の順とし,単体金属は原子番号順とする。
f)
ハロゲン 原子番号順とする。
g) 気体 希ガス,単体,化合物,混合ガスの順とし,単体は,原子番号順とする。化合物は分子式の原
子番号順とし,同じ原子番号の並びなら原子数の少ない順とする。
例 アルゴン,窒素,硫化水素,メタン,プロパン,一酸化炭素,二酸化炭素
h) 無機塩類 b) の順による。酸が同じならc) の順による。多価の酸の塩は,塩基の数の多い順とする。
i)
無機化合物 分子式の原子番号順とし,同じ原子番号の並びなら原子数の少ない順とする。
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j)
有機酸,有機塩基,有機塩類 無機酸などと同様の順とする。
k) 呈色試薬
l)
有機溶媒
m) 滴定液又は標準液
n) 指示薬
o) その他 認証標準物質(CRM)など。
A.5 操作
操作についての用語は,別途規定しない場合には,次によって区分して用いることが望ましい。
a) 加熱・冷却
1) 温める又は加温 溶液温度を室温から60 ℃以下に加熱する操作。
2) 穏やかに加熱する。 溶液温度を80 ℃以下に保ち,沸騰が生じないように加熱する操作。
3) 沸騰直前まで加熱する。 溶液温度を90 ℃以上とし,突沸が生じないように注意して加熱する操
作。
4) 加熱して液量を○○にする。 溶液温度を90 ℃以上とし,突沸が生じないように注意して加熱し
て,液量を○○に濃縮する操作。
5) 加熱して窒素酸化物などを追い出す。 溶液を沸騰状態とし,窒素酸化物などが揮散するまで加熱
する操作。
6) 乾固直前まで加熱する。 溶液がほとんど残らない状態まで加熱する操作。その後,余熱によって
液はほとんど見えなくなるが,残留物中には液が残り,表面に色がついている状態となる。
7) 乾固する。 液状のものが残らず,残留物の表面が白くなる状態まで加熱する操作。
8) 過塩素酸の白煙処理 過塩素酸の白煙処理は,次のいずれかを意味する。
8.1) 過塩素酸の白煙がビーカー内に充満している状態に加熱する操作。
8.2) ビーカー内が透明になり,過塩素酸の蒸気がビーカーの内壁を伝わって還流している状態に加熱
する操作。
9) 硫酸の白煙処理 三酸化硫黄の白煙が発生する状態に加熱する操作。このとき,硫酸の温度は
300 ℃以上となっている。
10) りん酸の白煙処理 メタりん酸などの白煙が発生する状態に加熱する操作。
11) 放冷 溶液などの温度が室温に下がるまで実験台などに静置しておく操作。温度については,室温
以外を指定する場合がある。
12) 冷却 温度の高い溶液,蒸気などに対し,水,氷水,冷えた空気など熱媒体で強制的に温度を下げ
る操作。
13) 強熱 650 ℃以上で加熱する操作。
b) その他の操作
1) 融解 不溶性物質と融剤とを強熱して,可溶性物質に変える操作。
2) 揮散 揮発性成分を大気中に気化放出させる操作又は大気中に気化する現象。
3) 恒量 同一条件下で,物質を加熱・放冷・ひょう量などの操作を繰り返したとき,前後の質量の計
量差が規定の値以下となった状態。
4) 振り混ぜ 2種以上の物質をなるべく均一にするために,容器ごと振って混ぜる操作。
5) 対照液 試料液の色調又は吸収の度合いを比較するために用いる標準的な色調又は吸収を示す溶液。
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6) 分取 全体の試料から割合の分かっている分量を正確に分ける操作。
7) (溶液を)移し入れる。 試料溶液を別の容器に移す操作。溶液のほとんどを新しい容器に移した
後,元の容器に残る試料溶液を指定された液を用いてうすめ,新しい容器に移し,それを2,3回繰
り返して元の容器に残る試料溶液の量が無視できるレベルにする。
8) 標線までうすめる。 指定された溶媒を用いて溶液全体の容量を規定の量とする操作。標線近くま
で溶媒を入れた後,溶液の温度を常温とし,液が均一になるように混合してから標線まで溶媒を加
え,再び液が均一になるように混合する。標線の合わせ方を含む,ガラス体積計の目盛への液体の
合わせ方は,JIS R 3505の図1(水際の視定方法)に示されている。
9) 洗液 操作に用いた時計皿,ろ紙などへの試料の付着物,又はるつぼなど容器内の試料の残留物を
洗い流した液。
10) 正確に 質量においては,指定した量を検定されたはかりによってはかることをいう。液体の容量
においては,全量フラスコ,全量ピペット,ビュレット,ピストン式ピペット(JIS K 0970による。)
によって,それらの体積計の公差内ではかることをいう。“正しく”は,同じ意味ではあるが,用い
ないのが望ましい。
c) 時計皿の使用 フェロアロイ分析方法規格群における時計皿の使用については,使用する容器と同じ
材質で,次の手順で使用することを推奨する。これらの手順によって時計皿は使用されるものとして,
各定量方法規格には,これらの手順の詳細は記載しなくてもよい。これらの手順は,各分析成分の原
液,空試験液,標準液及び検量線溶液の調製の場合にも適用される。
1) 時計皿で蓋をしたビーカーを試料分(標準試料及び空試験用も含む。)準備する。
2) 試料をはかりとったら,時計皿を外して試料をビーカーに移し入れ,再び時計皿で覆って蓋とする。
3) ビーカーに分解するための酸などを入れるときは,時計皿を少しずらして,その隙間から酸などを
注ぐ。試料の分解による発泡などの反応が始まる前に時計皿を元の位置に戻す。
4) 試料を酸で分解する間は,時計皿は蓋として用いる。
5) 試料溶液の濃縮,乾固,白煙処理を行わない場合は,時計皿の下面を水又は温水で洗って時計皿を
取り除く。洗液は,試料溶液に合わせる。
6) 試料溶液を濃縮する場合は,濃縮前の試料溶液量及び濃縮後の試料溶液量を考慮して,時計皿をず
らしてビーカー上部に適正な開放部を作り,試料溶液を蒸発させる。濃縮後,放冷し,時計皿の下
面を水又は温水で洗って時計皿を取り除く。洗液は,試料溶液に合わせる。
上部を完全に開放して蒸発速度を上げる場合は,あらかじめ時計皿の下面を水又は温水で洗って
時計皿を取り除く。洗液は,試料溶液に合わせる。乾固又は乾固直前の状態まで加熱する場合も,
あらかじめ時計皿の下面を水又は温水で洗って時計皿を取り除く。洗液は,試料溶液に合わせる。
濃縮・乾固などの処理終了後,加熱を止め,時計皿で覆って,放冷する。放冷した後,時計皿の下
面を水又は温水で洗って時計皿を取り除く。洗液は,試料溶液に合わせる。
7) 試料溶液について過塩素酸の白煙処理を行う場合は,時計皿の下面を少量の水又は温水で洗って時
計皿を取り除くか,又は時計皿をずらしてビーカー上部に適正な開放部を作り,過塩素酸を入れて
加熱する。時計皿で覆ったまま加熱してもよい。塩酸,硝酸などが蒸発して過塩素酸の白煙の発生
が始まったら,再び時計皿で覆って加熱を続けて白煙処理を行う。規定の時間の白煙処理後,放冷
し,時計皿の下面を水又は温水で洗って時計皿を取り除く。洗液は,試料溶液に合わせる。
8) 試料溶液について硫酸又はりん酸の白煙処理を行う場合は,7) において過塩素酸の代わりに硫酸又
はりん酸を用い,7) と同様に操作する。硫酸白煙の場合,析出した塩類で突沸するおそれがあるの
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で,その操作については,各定量方法規格の規定に従う。
d) 用語の区別
1) ろ過とこし分け 分析対象として,分離した液体を主に用いる場合は,ろ過と呼び,分離した固体
を主に用いる場合は,ろ過又はこし分けと呼ぶ。
2) 溶解と分解 溶解は化学反応による化学種の変化を生じずに溶液化することを呼び,化学反応が生
じる場合は,分解と呼ぶ。
注記1 溶解と分解については用語の厳密な使い方をせず,化学反応を生じても溶解と呼んでい
る場合もある。
3) 常温と室温 化学分析においては,常温は20±5 ℃を,室温は20±15 ℃を指す。また,標準温度
とは20 ℃を指す。
注記2 上記の温度の規定は,JIS K 0050による。
A.6 空試験
空試験の操作を具体的に書く。空試験操作の記載が長い場合,空試験の操作の一部について他の項目を
引用する場合などにおいては,定量操作と同様に,手順ごとに区切って記載してもよい。空試験で調製し
た溶液を空試験液という。検量線用溶液を試料と併行して調製する場合は,ゼロメンバー液を空試験液と
してもよい。
A.7 検量線の作成
検量線は,通常,主成分の純物質に,分析対象元素を段階的に添加し,分析試料と同じ調製方法で調製
して検量線用溶液とし,検量線用溶液の信号量と分析対象元素の添加量との関係線を作成し,その関係線
について原点を通るよう平行移動して検量線とする。ただし,ICP発光分光分析法及び機器分析方法にお
いては,平行移動せずに,得た関係線をそのまま検量線とする。
検量線用溶液の調製の操作は,具体的に書く。
検量線について,係数を求める場合は,市販の回帰計算ソフトを用いて求めてもよい。
A.8 許容差
化学分析方法の許容差は,共同実験によって求める。共同実験試料は,認証標準物質及び/又は同一組
成の試料を用い,含有率が目標適用範囲を含むように選ぶ。共同実験結果は,JIS Z 8402-2又はJIS Z 8402-3
によって解析する。各所の実験が併行2回分析でなく,日を変えて2回分析した場合は,JIS Z 8402-2に
よって解析を行い,併行分析を日間分析又は室内再現分析と読み替える。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献 JIS K 0212 分析化学用語(光学部門)
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS K 0214 分析化学用語(クロマトグラフィー部門)
JIS K 0215 分析化学用語(分析機器部門)
JIS K 0216 分析化学用語(環境部門)
JIS K 0970 ピストン式ピペット
JIS Z 8402-2 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第2部:標準測定方法の併行
精度及び再現精度を求めるための基本的方法
JIS Z 8402-3 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)−第3部:標準測定方法の中間
精度