G 1257-0:2013
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 一般事項························································································································· 2
5 規格群各部の適用範囲 ······································································································· 2
6 原子吸光分析装置 ············································································································· 5
6.1 原子吸光分析装置の調整 ································································································· 5
6.2 装置性能基準 ················································································································ 5
7 規格群共通規定 ··············································································································· 10
7.1 原液及び標準液 ············································································································ 10
7.2 鉄 ······························································································································ 10
7.3 検量線用溶液の調製 ······································································································ 10
7.4 吸光度の測定 ··············································································································· 10
8 安全······························································································································ 11
G 1257-0:2013
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本鉄鋼連盟(JISF)から,工
業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済
産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS G 1257の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS G 1257-0 第0部:一般事項
JIS G 1257-1 第1部:マンガン定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-2 第2部:りん定量方法−モリブドりん酸抽出間接フレーム法
JIS G 1257-3 第3部:ニッケル定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-4 第4部:クロム定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-5 第5部:モリブデン定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-6 第6部:銅定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-7 第7部:バナジウム定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-8 第8部:コバルト定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-9 第9部:チタン定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-10-1 第10部:アルミニウム定量方法−第1節:酸分解フレーム法
JIS G 1257-10-2 第10部:アルミニウム定量方法−第2節:酸可溶性アルミニウム定量方法
JIS G 1257-10-3 第10部:アルミニウム定量方法−第3節:鉄分離フレーム法
JIS G 1257-10-4 第10部:アルミニウム定量方法−第4節:電気加熱法
JIS G 1257-11-1 第11部:すず定量方法−第1節:よう化物抽出フレーム法
JIS G 1257-11-2 第11部:すず定量方法−第2節:電気加熱法
JIS G 1257-12-1 第12部:鉛定量方法−第1節:酸分解フレーム法
JIS G 1257-12-2 第12部:鉛定量方法−第2節:よう化物抽出フレーム法
JIS G 1257-12-3 第12部:鉛定量方法−第3節:電気加熱法
JIS G 1257-13 第13部:マグネシウム定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-14 第14部:カルシウム定量方法−酸分解フレーム法
JIS G 1257-15-1 第15部:亜鉛定量方法−第1節:酸分解フレーム法
JIS G 1257-15-2 第15部:亜鉛定量方法−第2節:よう化テトラヘキシルアンモニウム・トリオクチ
ルアミン抽出フレーム法
JIS G 1257-16-1 第16部:ビスマス定量方法−第1節:よう化物抽出フレーム法
JIS G 1257-16-2 第16部:ビスマス定量方法−第2節:電気加熱法
JIS G 1257-17-1 第17部:アンチモン定量方法−第1節:よう化物抽出フレーム法
JIS G 1257-17-2 第17部:アンチモン定量方法−第2節:電気加熱法
G 1257-0:2013
(3)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS G 1257-18-1 第18部:テルル定量方法−第1節:よう化物抽出フレーム法
JIS G 1257-18-2 第18部:テルル定量方法−第2節:電気加熱法
JIS G 1257-19-1 第19部:ひ素定量方法−第1節:電気加熱法
JIS G 1257-19-2 第19部:ひ素定量方法−第2節:水素化物発生法(予定)
JIS G 1257-20 第20部:セレン定量方法−電気加熱法
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
G 1257-0:2013
鉄及び鋼−原子吸光分析方法−第0部:一般事項
Iron and steel-Atomic absorption spectrometric method-
Part 0: General rules
序文
この規格は,JIS G 1257:1994の本体及び各附属書(追補1:1999及び追補2:2000に規定された附属書を
含む。)に個別に規定されていた共通の規定内容について整理し,更に技術的な規定を追加して作成した規
格である。
1
適用範囲
この規格は,鉄及び鋼の原子吸光分析方法を規定するJIS G 1257の規格群(以下,規格群という。)に
おける各部の適用範囲及び規格群の一般事項について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 1201 鉄及び鋼−分析方法通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 0133 高周波プラズマ質量分析通則
JIS Z 8103 計測用語
3
用語及び定義
規格群で用いる主な用語及び定義は,JIS G 1201,JIS K 0121及びJIS Z 8103によるほか,次による。
3.1
ゼロメンバー
検量線用溶液において,定量成分の標準液を添加していない溶液。
3.2
酸可溶性
試料を酸分解して得られた溶液をろ過したときに,ろ液中に含まれる化学種を呼称するときの接頭語。
例 酸可溶性アルミニウム,酸可溶性カルシウム
3.3
酸不溶性
試料を酸分解して得られた溶液をろ過したときに,残さ中に含まれる化学種を呼称するときの接頭語。
2
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3.4
プラットフォーム
電気加熱原子吸光分析の発熱体として用いる黒鉛管の中に入れる黒鉛製の板。中央部に凹みがあり,試
料溶液を保持できる。発熱した黒鉛管からの間接加熱のため温度が安定し,原子化効率も高くなる長所を
もつ。黒鉛管と一体となったものもある。
4
一般事項
この規格に規定していない分析の一般事項は,JIS G 1201及びJIS K 0121による。
5
規格群各部の適用範囲
JIS G 1257の規格群の各部の適用成分及び含有率範囲は,表1による。
表1−JIS G 1257規格群各部の適用成分及び適用含有率範囲
部番号
−節番号
適用成分
−定量方法
含有率範囲
質量分率(%)
参考情報
溶液調製
原子化方式 対応ISO規格
第1部
マンガン
−酸分解フレーム法
0.003以上
2.0以下
王水分解+過塩素酸白煙処理
アセチレ
ン・空気フ
レーム
ISO 10700
(MOD)
第2部
りん
−モリブドりん酸抽
出間接フレーム法
タングステン
含有率(質量
分率)が
0.01 %未満の
試料中の
0.000 3以上
0.010以下
1)
2)
a) 硝酸又は(硝酸+塩酸)分
解+過塩素酸白煙処理
b) 硝酸分解+過塩素酸白煙
処理+硫酸アンモニウム
鉄(II)添加
c) 硝酸又は(硝酸+塩酸)分
解+過塩素酸白煙処理+
ふっ化水素酸分解+ほう
酸添加
モリブドりん酸抽出(七モリ
ブデン酸六アンモニウム添加
+酢酸2-メチルプロピル抽
出)
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
(りんと化
合している
モリブデン
を原子化)
−
第3部
ニッケル
−酸分解フレーム法
0.003以上
1.0以下
a) 混酸A分解
b) 王水分解+過塩素酸白煙処理
アセチレ
ン・空気フ
レーム
ISO 4940
(MOD)
第4部
クロム
−酸分解フレーム法
0.002以上
2.0以下
a) 王水分解
b) 王水分解+残さの二硫酸カリ
ウム又は硫酸水素カリウム融
解処理
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
ISO 10138
(MOD)
第5部
モリブデン
−酸分解フレーム法
0.01以上
1.0以下
1)
2)
a) 混酸A分解
b) 王水分解+過塩素酸白煙
処理
c) 混酸B分解+硫酸白煙処
理
塩化アルミニウム添加
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
−
第6部
銅
−酸分解フレーム法
0.003以上
1.0以下
a) 混酸A分解
b) 王水分解+過塩素酸白煙処理
アセチレ
ン・空気フ
レーム
ISO 4943
(MOD)
3
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表1−JIS G 1257規格群各部の適用成分及び適用含有率範囲(続き)
部番号
−節番号
適用成分
−定量方法
含有率範囲
質量分率(%)
参考情報
溶液調製
原子化方式 対応ISO規格
第7部
バナジウム
−酸分解フレーム法
タングステン
含有率(質量
分率)が1 %
未満及び/又
はチタン含有
率(質量分率)
0.5 %未満の
試料中の
0.005以上
1.0以下
王水分解+過塩素酸白煙処理
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
ISO 9647
(MOD)
第8部
コバルト
−酸分解フレーム法
0.01以上
0.50以下
a) (塩酸・過酸化水素)分解
b) 王水分解+過塩素酸白煙処理
アセチレ
ン・空気フ
レーム
ISO 11652
(MOD)
第9部
チタン
−酸分解フレーム法
0.01以上
0.50以下
1) a) 混酸A分解
b) 王水分解
2) 残さの二硫酸ナトリウム融解
処理
3) 塩化アルミニウム添加
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
−
第10部
−第1節
アルミニウム
−酸分解フレーム法
0.005以上
0.10以下
1) a) 混酸A分解
b) 王水分解
2) 残さの二硫酸カリウム又は硫
酸水素カリウム融解処理
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
ISO 9658
(MOD)
第10部
−第2節
アルミニウム
−酸可溶性アルミニ
ウム定量方法
炭素鋼及び低
合金鋼中の
0.005以上
0.10以下
1) 酸分解[塩酸,硝酸,(塩酸・
過酸化水素)の任意の比の酸
でもよい。]
2) ろ過処理
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
ISO 9658
(MOD)
第10部
−第3節
アルミニウム
−鉄分離フレーム法
0.001以上
0.010以下
1) 王水分解+過塩素酸白煙処理
+ろ過+4-メチル-2-ペンタノ
ン溶液添加抽出(水相使用)
2) 残さの二硫酸ナトリウム融解
処理
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
−
第10部
−第4節
アルミニウム
−電気加熱法
鋼中の
0.001 0以上
0.005 0以下
混酸A分解+残さの二硫酸カリ
ウム又は硫酸水素カリウム融解
処理
電気加熱
−
第11部
−第1節
すず
−よう化物抽出フレ
ーム法
0.002以上
0.10以下
王水分解+硫酸白煙処理+塩酸
溶解+よう化物抽出[L(+)-アスコ
ルビン酸添加+よう化カリウム
添加+トリ-n-オクチルホスフィ
ンオキシド(以下,TOPOという。)
-4-メチル-2-ペンタノン溶液添加
抽出(有機相使用)]
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
−
第11部
−第2節
すず
−電気加熱法
鋼中の
0.000 3以上
0.010 0以下
混酸A分解
電気加熱
−
第12部
−第1節
鉛
−酸分解フレーム法
0.01以上
0.35以下
王水分解+過塩素酸白煙処理
アセチレ
ン・空気フ
レーム
−
4
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表1−JIS G 1257規格群各部の適用成分及び適用含有率範囲(続き)
部番号
−節番号
適用成分
−定量方法
含有率範囲
質量分率(%)
参考情報
溶液調製
原子化方式 対応ISO規格
第12部
−第2節
鉛
−よう化物抽出フレ
ーム法
0.000 5以上
0.010以下
王水分解+硫酸白煙処理+塩酸
溶解+よう化物抽出[L(+)-アスコ
ルビン酸添加+よう化カリウム
添加+TOPO-4-メチル-2-ペンタ
ノン溶液添加抽出(有機相使用)]
アセチレ
ン・空気フ
レーム
−
第12部
−第3節
鉛
−電気加熱法
鋼中の
0.000 1以上
0.002 0以下
混酸A分解
電気加熱
−
第13部
マグネシウム
−酸分解フレーム法
0.001以上
0.10 以下
王水分解+過塩素酸白煙処理
アセチレ
ン・空気フ
レーム
−
第14部
カルシウム
−酸分解フレーム法
0.000 5以上
0.010以下
王水分解+炭酸ナトリウム融解
処理
アセチレ
ン・一酸化
二窒素フレ
ーム
ISO 10697-2
(MOD)
第15部
−第1節
亜鉛
−酸分解フレーム法
0.005 以上
0.025 以下
a) 混酸A分解
b) 王水分解+過塩素酸白煙処理
アセチレ
ン・空気フ
レーム
−
第15部
−第2節
亜鉛
−よう化テトラヘキ
シルアンモニウム・
トリオクチルアミン
抽出フレーム法
0.000 5以上
0.006 0以下
王水分解+硫酸白煙処理+塩酸
溶解+よう化物抽出[L(+)-アスコ
ルビン酸添加+トリオクチルア
ミン添加+よう化テトラヘキシ
ルアンモニウム-4-メチル-2-ペン
タノン溶液添加抽出(有機相使
用)]
アセチレ
ン・空気フ
レーム
−
第16部
−第1節
ビスマス
−よう化物抽出フレ
ーム法
0.000 5以上
0.015以下
王水分解+硫酸白煙処理+塩酸
溶解+よう化物抽出[L(+)-アスコ
ルビン酸添加+よう化カリウム
添加+TOPO-4-メチル-2-ペンタ
ノン溶液添加抽出(有機相使用)]
アセチレ
ン・空気フ
レーム
−
第16部
−第2節
ビスマス
−電気加熱法
鋼中の
0.000 1以上
0.002 0以下
混酸A分解
電気加熱
−
第17部
−第1節
アンチモン
−よう化物抽出フレ
ーム法
0.001 5以上
0.050以下
王水分解+硫酸白煙処理+塩酸
溶解+よう化物抽出[L(+)-アスコ
ルビン酸添加+よう化カリウム
添加+TOPO-4-メチル-2-ペンタ
ノン溶液添加抽出(有機相使用)]
アセチレ
ン・空気フ
レーム
−
第17部−
第2節
アンチモン
−電気加熱法
鋼中の
0.000 5以上
0.010以下
塩酸・硝酸(1:1)分解
電気加熱
ISO 10698
(IDT)
5
G 1257-0:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表1−JIS G 1257規格群各部の適用成分及び適用含有率範囲(続き)
部番号
−節番号
適用成分
−定量方法
含有率範囲
質量分率(%)
参考情報
溶液調製
原子化方式 対応ISO規格
第18部
−第1節
テルル
−よう化物抽出フレ
ーム法
0.000 5以上
0.050以下
王水分解+硫酸白煙処理+塩酸
溶解+よう化物抽出[L(+)-アスコ
ルビン酸添加+よう化カリウム
添加+TOPO-4-メチル-2-ペンタ
ノン溶液添加抽出(有機相使用)]
アセチレ
ン・空気フ
レーム
−
第18部
−第2節
テルル
−電気加熱法
鋼中の
0.000 2以上
0.002 0以下
混酸A分解
電気加熱
−
第19部
−第1節
ひ素
−電気加熱法
鋼中の
0.000 3以上
0.003 0以下
混酸A分解
電気加熱
−
第19部
−第2節
(予定)
ひ素
−水素化物発生法
(未定)
(未定)
(未定)
−
第20部
セレン
−電気加熱法
鋼中の
0.000 2以上
0.002 0以下
硝酸・ふっ化水素酸分解
電気加熱
−
混酸A:塩酸1,硝酸1,水2の混酸,混酸B:塩酸3,りん酸3,水16の混酸
注記 溶液調製の欄の+は,前の操作に続けて行われる操作を示す。
また,1),2) などの数字は,調製の順序を示し,a),b) などの記号は,調製の区分を示す。
6
原子吸光分析装置
警告 過塩素酸の蒸気は,アンモニア,亜硝酸の蒸気又は有機物が存在すると爆発する危険がある。
過塩素酸の蒸発は,過塩素酸の使用に耐えるドラフト(ヒュームフード)の中で行わなければ
ならない。使用後は,噴霧系及び排水系を,過塩素酸がなくなるまで水洗する。バーナーのス
ロットを過塩素酸によって生じる付着物で詰まらないように清浄に保持する。
6.1
原子吸光分析装置の調整
この規格群で使用する原子吸光分析装置は,JIS K 0121及びその装置の製造業者の指示書に従い,6.2
に規定する装置性能条件を満たすように調整する。
フレーム原子吸光分析においては,検量線用溶液の最高濃度溶液とゼロメンバーの吸光度との差が最大
となるようにバーナーの位置(水平,垂直及び回転方向)及び各ガス流量を調節する。分光光度計が測定
する波長に正確に調整されていることを確認する。
注記 一般には,バーナーのスロットの位置が光路の鉛直面下に光路と平行になるよう調節し,バー
ナーの高さを,アセチレン・空気フレームにおいては,光路下約10 mmに,アセチレン・一酸
化二窒素フレームにおいては,光路下約10〜20 mmになるように調節すると,吸光度の差が最
大となる。
電気加熱原子吸光分析においては,短期安定性が最良(最小値)となるよう,検出下限溶液の黒鉛管へ
の注入量及び加熱パターンを調整する。
6.2
装置性能基準
6.2.1
要求される性能基準
この規格群で使用する原子吸光分析装置は,原子吸光分析の区分別に次の性能基準を満たさなくてはな
6
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らない。
a) フレーム原子吸光分析:短時間安定性,検出下限,直線性,1 %吸収濃度
b) 電気加熱原子吸光分析:短時間安定性,検出下限,直線性,1 %吸収質量
6.2.2
短時間安定性
6.2.2.1
短時間安定性の求め方
短時間安定性の求め方は,次による。
なお,吸光度の測定は,各々の測定を個別試料の測定として7.4に従って行う。
a) 最高濃度液の測定の短時間安定性 各部で規定された検量線溶液のうち,最高濃度液について吸光度
の測定を10回繰り返し,その平均値(
A
A)及び標準偏差(σA)を計算する。
最高濃度液の測定の短時間安定性(%)は,
100
/
A
A
×
A
σ
の式で算出する。
注記 標準偏差の計算は,次の式による。
1
)
(
2
x
−
−
=∑n
x
xi
σ
ここに,
σx: 標準偏差
xi: i番目のデータ
x: 平均値
n: データ数
b) 最低濃度液の測定の短時間安定性 各部で規定された検量線溶液のうち,ゼロメンバーを除いた最低
濃度液について吸光度の測定を10回繰り返し,その標準偏差(σB)を計算する。
最低濃度液の測定の短時間安定性(%)は,
100
/
A
B
×
A
σ
の式で算出する。
注記 最低濃度液の測定の短時間安定性を求める式の分母は,最高濃度液の測定の平均値
A
Aであ
る。
6.2.2.2
短時間安定性の装置性能基準規定
フレーム原子吸光分析の最高濃度液の測定の短時間安定性(%)は1.5を,最低濃度液の測定の短時間
安定性(%)は0.5を,それぞれ超えてはならない。
電気加熱原子吸光分析の最高濃度液の測定の短時間安定性(%)は10を,最低濃度液の測定の短時間安
定性(%)は3を,それぞれ超えてはならない。
6.2.3
検出下限
6.2.3.1
検出下限の求め方
6.2.3.1.1
フレーム原子吸光分析の検出下限の求め方
溶液のマトリックスがゼロメンバーと同じで,定量元素についてゼロメンバーの吸光度より僅かに大き
い(0.01程度)吸光度を与えるような濃度を含有する溶液A1を調製し,A1及びゼロメンバー(A0)につ
いて,それぞれ吸光度の測定を10回繰り返す。各吸光度の測定は,個別試料の測定として7.4に従って行
う。それぞれの液の測定の平均値(
1A及び 0A)及びA1の測定の標準偏差(σA1)を計算する。
検出下限を次の式によって求める。
0
1
1
A
1
A
min
3
A
A−
×
×
=
σ
ρ
ρ
ここに,
ρmin: フレーム原子吸光分析の検出下限(μg/mL)
ρA1: 溶液A1の濃度(μg/mL)
6.2.3.1.2
電気加熱原子吸光分析の検出下限の求め方
7
G 1257-0:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
溶液のマトリックスがゼロメンバーと同じで,定量元素についてゼロメンバーの吸光度より僅かに大き
い(0.01程度)吸光度を与えるような濃度を含有する溶液A1を調製し,A1及びゼロメンバー(A0)につ
いて,それぞれ吸光度の測定を10回繰り返す。それぞれの液の測定の平均値(
1A及び 0A)及びA1の測定
の標準偏差(σA1)を計算する。
検出下限を次の式によって求める。
0
1
1
A
1
A
min
3
A
A
V
m
−
×
×
×
=
σ
ρ
ここに,
mmin: 電気加熱原子吸光分析の検出下限(pg)
ρA1: 溶液A1の濃度(ng/mL)
V: 注入した溶液の量(μL)
6.2.3.2
検出下限の装置性能基準
検出下限の装置性能基準は,各部で規定されている場合はその規定による。各部で規定されていない場
合は,表2による。電気加熱法を規定した規格において,1 %吸収質量の装置性能基準を規定している場
合は,検出下限については規定しなくてもよい。
注記 表2に示す検出下限の装置性能基準規定値は,フレーム原子吸光分析においては,その部で規
定した試料調製方法によって定量範囲下限の含有率(質量分率)の試料を調製したときの定量
成分の濃度の3/5,電気加熱原子吸光分析においては,その部で規定した試料調製方法及び吸光
度測定方法によって定量範囲下限の含有率(質量分率)の試料を調製・測定したときの定量成
分の量の3/5を基準とし,装置性能の実態及びISO規格での規定値を考慮して求めた値である。
6.2.4
検量線の直線性
6.2.4.1
検量線の直線性の求め方
濃度範囲の上部域20 %の検量線の傾斜(吸光度の差:図1のAA)と濃度範囲の下部域20 %の検量線の
傾斜(吸光度の差:図1のAB)との比(AA/AB)を直線性として算出する。
図1−検量線の直線性の基準計算用模式図
8
G 1257-0:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.2.4.2
検量線の直線性の装置性能基準
検量線の直線性は,フレーム原子吸光分析,電気加熱原子吸光分析とも0.7以上とする。
6.2.5
1 %吸収濃度
6.2.5.1
1 %吸収濃度の求め方
溶液のマトリックスがゼロメンバーと同じで,定量元素について吸光度が約0.1になるような濃度とな
る溶液A2を調製し,A2及びゼロメンバー(A0)について,スケール拡大なしで吸光度を測定する。
1 %吸収濃度は,次の式で求める。
0
2
A2
k
x,
4
0.004
A
A−
×
=ρ
ρ
ここに,
ρx, k: 1 %吸収濃度(μg/mL)
ρA2: 溶液A2中の定量成分濃度(μg/mL)
A2: 溶液A2の吸光度
A0: ゼロメンバーA0の吸光度
6.2.5.2
1 %吸収濃度の装置性能基準
1 %吸収濃度の装置性能基準は,各部で規定されている場合はその規定による。各部で規定されていな
い場合は,表2による。
注記 表2に示す1 %吸収濃度の装置性能基準規定値は,フレーム原子吸光分析において,その部で
規定した試料調製方法によって定量範囲下限の含有率(質量分率)の試料を調製したときの定
量成分の濃度の1/2を基準とし,装置性能の実態及びISO規格での規定値を考慮して求めた値
である。1 %吸収(吸光度0.004 4)の値が定量下限値の1/2であれば,吸光度の0.001の変化に
よって,定量値が定量下限値のほぼ1/10の値の変化を生じることを意味する。
6.2.6
1 %吸収質量
6.2.6.1
1 %吸収質量の求め方
溶液のマトリックスがゼロメンバーと同じで,定量元素について吸光度が約0.1になるような濃度とな
る溶液A2を調製し,A2及びゼロメンバー(A0)について,スケール拡大なしで吸光度を測定する。
1 %吸収質量は,次の式で求める。
0
2
A2
c
4
0.004
A
A
V
m
−
×
×
=ρ
ここに,
mc: 1 %吸収質量(pg)
ρA2: 溶液A2中の定量成分濃度(ng/mL)
A2: 溶液A2の吸光度
A0: ゼロメンバーA0の吸光度
V: 注入した溶液の量(μL)
6.2.6.2
1 %吸収質量の装置性能基準規定
1 %吸収質量の装置性能基準規定は,各部で規定されている場合はその規定による。各部で規定されて
いない場合は,表2による。
注記 表2に示す1 %吸収質量の装置性能基準規定値は,電気加熱原子吸光分析において,その部で
規定した試料調製方法及び吸光度測定方法によって定量範囲下限の含有率(質量分率)の試料
を調製・測定したときの定量成分の量の1/2を基準とし,装置性能の実態及びISO規格での規
定値を考慮して求めた値である。1 %吸収(吸光度0.004 4)の値が定量下限の1/2なら,定量
値が定量下限値のほぼ1/10の値の変化で吸光度が0.001変化することを意味する。
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G 1257-0:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表2−1 %吸収濃度,1 %吸収質量及び検出下限の装置性能基準規定値
規格番号
適用
成分
定量方法
原子吸光
測定元素
及び波長
nm
1 %吸収濃度
装置性能基準
規定値
μg/mL
1 %吸収質量
装置性能基準
規定値
pg
検出下限
装置性能基準
規定値
G1257-1
Mn
酸分解フレーム法
Mn 279.5
0.1 a)
−
0.18 μg/mL
Mn 403.1
5.0
−
6.0 μg/mL
G1257-2
P
抽出間接フレーム法
Mo 313.3
0.15
−
0.18 μg/mL
G1257-3
Ni
酸分解フレーム法
Ni 232.0
0.15
−
0.18 μg/mL
Ni 352.5
2.5
−
3.0 μg/mL
G1257-4
Cr
酸分解フレーム法
Cr 357.9
0.15 b)
−
0.075 c) μg/mL
Cr 425.4
5
−
6.0 μg/mL
G1257-5
Mo
酸分解フレーム法
Mo 313.3
0.5
−
0.6 μg/mL
G1257-6
Cu
酸分解フレーム法
Cu 324.7
0.1 a)
−
0.18 μg/mL
Cu 327.4
2.5
−
3.0 μg/mL
G1257-7
V
酸分解フレーム法
V 318.4
0.25
−
0.3 μg/mL
G1257-8
Co
酸分解フレーム法
Co 240.7
0.5
−
0.6 μg/mL
G1257-9
Ti
酸分解フレーム法
Ti 364.3
1.5 b)
−
0.6 μg/mL
G1257-10-1
Al
酸分解フレーム法
Al 309.3
1.5 b)
−
0.3 μg/mL
G1257-10-2
酸可溶
性Al
酸可溶性アルミニウ
ム定量方法
Al 309.3
1.5 b)
−
0.3 μg/mL
G1257-10-3
Al
鉄分離フレーム法
Al 309.3
1.5 b)
−
0.3 b) μg/mL
G1257-10-4
Al
電気加熱法
Al 309.3
−
100
−
G1257-11-1
Sn
抽出フレーム法
Sn 224.6
Sn 286.3
1
−
1.2 μg/mL
G1257-11-2
Sn
電気加熱法
Sn 286.3
−
120
−
G1257-12-1
Pb
酸分解フレーム法
Pb 217.0
Pb 283.3
0.5
−
0.6 μg/mL
G1257-12-2
Pb
抽出フレーム法
Pb 283.3
0.5 b)
−
0.3 μg/mL
G1257-12-3
Pb
電気加熱法
Pb 283.3
−
120 b)
−
G1257-13
Mg
酸分解フレーム法
Mg 285.2
0.025
0.03 μg/mL
G1257-14
Ca
酸分解フレーム法
Ca 422.7
0.05
−
0.03 c) μg/mL
G1257-15-1
Zn
酸分解フレーム法
Zn 213.9
0.25
−
0.3 μg/mL
G1257-15-2
Zn
抽出フレーム法
Zn 213.9
0.125
−
0.15 μg/mL
G1257-16-1
Bi
抽出フレーム法
Bi 223.1
0.25
−
0.3 μg/mL
G1257-16-2
Bi
電気加熱法
Bi 223.1
−
120 b)
−
G1257-17-1
Sb
抽出フレーム法
Sb 217.6
0.75
−
0.9 μg/mL
G1257-17-2
Sb
電気加熱法
Sb 217.6
−
25 a)
30 c) pg
G1257-18-1
Te
抽出フレーム法
Te 214.3
0.4 b)
−
0.2 μg/mL
G1257-18-2
Te
電気加熱法
Te 214.3
−
100
−
G1257-19-1
As
電気加熱法
As 193.7
−
100
−
G1257-20
Se
電気加熱法
Se 196.0
−
100
−
注a) 対応するISO規格での規定値を採用した値。
b) 装置の性能実態を反映した値。
c) 対応するISO規格での検出下限規定値に3/2を乗じた値(ISO規格では,標準偏差と検出下限との関係係数k
についてk=2とした値を採用しているが,この表においては,6.2.3.1の規定に従ったk=3とした値を記載
している。)。
10
G 1257-0:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7
規格群共通規定
7.1
原液及び標準液
規格群で使用する各元素原液及び/又は標準液は,基本的には高純度金属又は高純度酸化物を塩酸及び
/又は硝酸で分解して調製した液を用いる。
市販されている標準液は,濃度が各規格で規定されている各元素原液又は標準液と同レベルで,トレー
サビリティがとれ,かつ,他の成分1) の混入がないか,又は微量でその量が既知の場合には,規格群で規
定している標準液の代わりに用いてもよい。市販標準液は,規格群で規定している濃度について,その液
に記載されている濃度又はファクターで補正して用いる。
標準液調製は,原液又は他の標準液を薄めて調製するが,元の液の採取量は,少なくとも2 mL以上と
し,5 mL以上採取するのが望ましい。
注1) 他の成分とは,定量成分,塩酸,硝酸以外の成分を指す。
7.2
鉄
検量線用溶液及び空試験液調製に用いる鉄は,定量成分の含有率(質量分率)が定量下限の1/10未満で
あることが保証されているか,又は定量下限以下で値が特定されているものを用いる。
特定された値としては,妥当性が確認されていれば,認証値でなくてもよい。
妥当性の確認方法としては,例えば,自所でJIS K 0133の附属書A(高周波プラズマ質量分析計の使用
判定項目)の使用判定項目が対象元素の定量の基準を満たすICP質量分析装置を用いて行う。対象元素の
定量下限に近い含有率(質量分率)の認証値が得られている認証標準物質を定量し,許容差内の妥当な定
量値が得られていれば,併行して定量した鉄の定量値は妥当である。また,鉄の試薬の製造業者が,同様
な手順で分析結果について妥当性を示していればその製造業者の表示値を採用してもよい。妥当性確認方
法としては,他に標準添加法,同位体希釈ICP質量分析法などがある。
定量下限の1/10未満であることも,同様に妥当性が示されることで保証されたものとする。
7.3
検量線用溶液の調製
検量線用溶液は,定量成分の濃度が高い場合(酸分解フレーム法を規定している各部)は,試料と同じ
手順で調製するが,試料と併行には調製せずに,あらかじめ調製して保管しておき,原子吸光測定だけを
試料溶液と併行に行って検量線を作成してもよい。
検量線用溶液の調製は,鉄に分析対象成分だけを添加して調製する。ただし,共存元素の影響が,相互
に影響されないことが確認できていて,調製された標準液中の不純物が他の成分の分析に影響を及ぼさな
い場合には,複数成分を添加してもよい。
分析試料が高合金鋼の場合は,試料溶液に類似した組成となる検量線用溶液を調製して検量線を作成す
ることが望ましい。
7.4
吸光度の測定
7.4.1
フレーム原子吸光分析における吸光度の測定
6.1で調整した原子吸光分析装置を用いて,次の点に留意して各液を測定する。
・ 各溶液の噴霧時間は,吸光度が安定するのに十分な時間をとる。
・ 試料溶液,空試験液及び/又は検量線用溶液の噴霧測定の間には,常に溶液の主成分である水又は
有機溶媒を噴霧し,水又は有機溶媒の吸光度が安定していることを確認する。各溶液の前後に噴霧
する水又は有機溶媒の吸光度測定値の平均値と溶液の吸光度測定値との差を溶液の吸光度とするこ
とが望ましい。
・ 空試験液,検量線用溶液及び各試料溶液を濃度の高くなる順で測定し,更にその逆の順序で測定し,
11
G 1257-0:2013
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
各溶液の測定吸光度の平均値を最終測定値とすることが望ましい。
・ 測定を続けたため,溶液の残さがバーナーに付着し,アセチレンフレームが不均一となった場合は
バーナーを清掃する。同様に溶液の残さの付着のため水又は有機溶媒の吸光度が上がってきた場合
には,付着物を取り除いて水又は有機溶媒の吸光度を元に戻す。
・ 一連の試料溶液測定の間に検量線用溶液及び/又は空試験液を頻繁に測定して,その吸光度が変化
していないことを確認することが望ましい。確認に用いる検量線用溶液は,その前後で測定する試
料溶液と吸光度が類似したものが望ましい。検量線用溶液の吸光度が変化したときは,検量線の再
作成を行う。
7.4.2
電気加熱原子吸光分析の吸光度の測定
6.1で調整した原子吸光分析装置を用いて,次の点に留意して各液を測定する。
・ 実験室雰囲気からの汚染がないよう厳重な注意を払う。
・ 一連の試料溶液測定の間に検量線用溶液及び/又は空試験液を頻繁に測定して,その吸光度が変化
していないことを確認することが望ましい。確認に用いる検量線用溶液は,その前後で測定する試
料溶液と吸光度が類似したものが望ましい。検量線用溶液の吸光度が変化したときは,補正ファク
ターを用いての補正を行うか,又は検量線の再作成を行う。
・ 空試験液,検量線用溶液及び各試料溶液を濃度の高くなる順で測定し,更にその逆の順序で測定し,
各溶液の測定吸光度の平均値を最終測定値とすることが望ましい。
8
安全
JIS K 0121の10.(安全)の項目を遵守する。高輝度フレームからの眼の保護,アセチレン・一酸化二窒
素フレームの点火及び消火手順は,特に気を付ける。