G 0571:2003
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,ステンレス協会
(JSSA) /財団法人 日本規格協会 (JSA) から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出
があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS G 0571 : 1980は改正され,この規格に置き換えられる。
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目 次
ページ
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 試験装置 ························································································································ 1
4. 試験溶液 ························································································································ 1
5. 試験片 ··························································································································· 1
6. 試験片の鋭敏化熱処理 ······································································································ 2
7. 試験方法 ························································································································ 2
8. エッチング組織の分類 ······································································································ 2
9. 判定 ······························································································································ 3
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日本工業規格 JIS
G 0571:2003
ステンレス鋼のしゅう酸エッチング試験方法
Method of oxalic acid etching test for stainless steels
1. 適用範囲 この規格は,オーステナイト系ステンレス鋼をしゅう酸溶液中で電解エッチング(以下,
エッチングという。)後,顕微鏡でエッチング面の組織を観察して,硫酸・硫酸第二鉄腐食試験(JIS G 0572),
65 %硝酸腐食試験(JIS G 0573)又は硫酸・硫酸銅腐食試験(JIS G 0575)の熱酸腐食試験を行う必要が
あるかどうかを判別する方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS G 0572 ステンレス鋼の硫酸・硫酸第二鉄腐食試験方法
JIS G 0573 ステンレス鋼の65 %硝酸腐食試験方法
JIS G 0575 ステンレス鋼の硫酸・硫酸銅腐食試験方法
JIS K 8252 ペルオキソ二硫酸アンモニウム(試薬)
JIS K 8519 しゅう酸二水和物(試薬)
3. 試験装置 試験装置は,次による。
a) 試験装置は,試験片をエッチングするのに十分な容量の電流を供給できる直流電源とエッチング回路
の電流を制御するための可変抵抗器及び電流計を使用する。
b) 陰極は,オーステナイト系ステンレス鋼製ビーカー又は十分な表面積をもつオーステナイト系ステン
レス鋼の小片を使用する。
c) 試験片を陽極として試験溶液中に保持できる適切な形状のホルダを使用する。
4. 試験溶液 試験溶液は,JIS K 8519に規定する特級品100 gを蒸留水又は脱イオン水900 mlに溶解し
て10 %しゅう酸溶液を調製する。
備考 含モリブデン鋼種で段状組織の現れにくい場合は,10 %しゅう酸溶液の代わりに10 %ペルオ
キソ二硫酸アンモニウム溶液を使用してもよい。この場合の溶液は,JIS K 8252に規定する特
級品100 gを蒸留水又は脱イオン水900 mlに溶解して,10 %ペルオキソ二硫酸アンモニウム
溶液を調製する。
5. 試験片 試験片は,次による。
a) 試験片は,エッチング・検鏡面が,加工方向に直角となるように採取する。溶接部を含む場合は,母
材,熱影響部及び溶着金属を含む断面とする。複雑形状の場合には,受渡当事者間の協定によって検
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鏡面の方向を変更してもよい。
b) 試験片の切断方法は,通常のこぎり切断による。せん断による場合は,切断面を切削又は研削で再仕
上げして,せん断の影響部分を除く。
c) エッチングして検鏡する面は,バフ研磨を行う。
d) エッチング・検鏡面以外は,絶縁物質によって試験溶液と絶縁する。
6. 試験片の鋭敏化熱処理 試験片の鋭敏化熱処理は,極低炭素鋼種(炭素0.030 %以下)及び安定化鋼
種(チタン又はニオブ添加)だけについて行う。熱処理は研磨前に行い,熱処理条件は700±10 ℃で30
分加熱し空冷とする。ただし,受渡当事者間の協定によって,これ以外の鋭敏化熱処理条件に替えてもよ
い。
7. 試験方法 試験方法は,次による。
a) 試験溶液の温度は,20〜50 ℃とする。
b) 試験片のエッチング面を陽極として10 %しゅう酸試験溶液中に入れ,エッチング面積1 cm2当たりの
電流を1 Aに調整して90秒エッチングする。
備考 10 %ペルオキソ二硫酸アンモニウム溶液を試験溶液として使用する場合は,エッチング面積1
cm2当たりの電流を1 Aに調整して5〜10分エッチングする。
c) エッチング後,試験溶液から試験片を取り出し,流水で洗浄,乾燥してから,エッチング面の全域を
顕微鏡で観察して,表1及び表2,図1〜7によって,エッチング組織の分類判定を行う。
なお,エッチング面の検鏡倍率は,圧延及び鍛造品では200〜500倍,鋳鋼品,溶接部などでは,約
250倍とする。
8. エッチング組織の分類 エッチング組織の分類は,次による。
a) 結晶粒界の状態を示すエッチング組織の分類は,表1による。
表 1 結晶粒界の状態を示す分類
エッチング組織
説明
記号
名称
A
段状組織
結晶方位ごとに腐食速度が異なるために現れる,結晶粒界に溝のない段状の組
織(図1)。
B
混合組織
結晶粒界に部分的に溝のある組織。ただし,完全に溝で囲まれた結晶粒が一つ
もないもの(図2)。
C
溝状組織
完全に溝で囲まれた結晶粒が一つ以上ある組織(図3)。
D
遊離フェライト組織
鋳鋼品,溶接部などに認められるオーステナイト地とフェライトの間が段状と
なっている組織(図4)。
E
樹枝状晶間溝状組織
鋳鋼品,溶接部などに認められる溝状組織が深く連続している組織(図5)。
b) ピットの状態を示すエッチング組織の分類は,表2による。
表 2 ピットの状態を示す分類
エッチング組織
説明
記号
名称
P1
ピット組織Ⅰ
浅いピットが多く,深いピットが少ない組織(図6)。
P2
ピット組織Ⅱ
浅いピットが少なく,深いピットが多い組織(図7)。
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9. 判定 熱酸腐食試験を行う必要があるかどうかの判定は,8.エッチング組織の分類(表1及び表2)
に基づき表3に従う。
参考 10 %しゅう酸エッチング試験で熱酸腐食試験の要否を判定できる鋼種及び熱酸腐食試験で検
出されるクロム炭化物とσ相を参考表1に示す。
表 3 エッチング組織と適用すべき熱酸腐食試験
試験素材
エッチング組織
種類の記号
状態
溝状組織 C
溝状組織 C
ピット組織Ⅱ P2
溝状組織 C
SUS304
受入れのまま
(固溶化熱処理)
硫酸・硫酸第二鉄腐食試験
(JIS G 0572)
65 %硝酸腐食試験
(JIS G 0573)
硫酸・硫酸銅腐食試験
(JIS G 0575)
SUS316
SUS316J1
SUS317
―
SUS304L
鋭敏化熱処理
硫酸・硫酸第二鉄腐食試験
(JIS G 0572)
65 %硝酸腐食試験
(JIS G 0573)
硫酸・硫酸銅腐食試験
(JIS G 0575)
SUS316L
SUS316J1L
SUS317L
―
SUS321
SUS347
―
参考表 1 10 %しゅう酸エッチング試験で熱酸腐食試験の要否を判定できる鋼種
及び熱酸腐食試験で検出されるクロム炭化物とσ相
熱酸腐食試験
10 %しゅう酸エッチング試験で熱
酸腐食試験の要否を判別できるス
テンレス鋼の種類
熱酸腐食試験で検出されるクロム炭化物又
はσ相
硫酸・硫酸第二鉄腐食試験方法
(JIS G 0572)
SUS304, SUS304L
SUS316, SUS316L
SUS316J1, SUS316J1L
SUS317, SUS317L
クロム炭化物:
SUS304, SUS304L, SUS316, SUS316L
SUS316J1, SUS316J1L, SUS317, SUS317L
クロム炭化物とσ相:
SUS321
65 %硝酸腐食試験方法
(JIS G 0573)
SUS304, SUS304L
クロム炭化物:
SUS304, SUS304L
クロム炭化物とσ相:
SUS316, SUS316L, SUS317, SUS317L
SUS321, SUS347, SUS316J1, SUS316J1L
硫酸・硫酸銅腐食試験方法
(JIS G 0575)
SUS304, SUS304L
SUS316, SUS316L
SUS316J1, SUS316J1L
SUS317, SUS317L
SUS321, SUS347
クロム炭化物:
SUS304, SUS304L, SUS316, SUS316L
SUS316J1, SUS316J1L, SUS317, SUS317L,
SUS321, SUS347
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図 1 段状組織(記号A)×500 図 2 混合組織(記号B)×500
図 3 溝状組織(記号C)×500 図 4 遊離フェライト組織(記号D)×250
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図 5 連続溝状組織(記号E)×250 図 6 ピット組織Ⅰ(記号P1)×500
図 7 ピット組織Ⅱ(記号P2)×500
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