F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人 日本船
舶標準協会(JMSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準
調査会の審議を経て,国土交通大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS F 9602:1992 は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
改正に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 8728:1997,Ships and marine
technology - Marine gyro-compasses
を基礎として用いた。
JIS F 9602
には,次に示す附属書がある。
附属書 A(規定)ジャイロコンパス及びレピータコンパスの船上装備に関する船舶検査員への勧告
附属書 B(参考)参考文献
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
(2)
目 次
ページ
序文
1
1.
適用範囲
1
2.
引用規格
1
3.
定義
1
4.
構造
2
5.
性能要求
3
6.
型式試験
4
7.
表示
8
8.
情報
8
附属書 A(規定)ジャイロコンパス及びレピータコンパスの船上装備に関する船舶検査員への勧告
9
附属書 B(参考)参考文献
10
日本工業規格
JIS
F
9602
:2004
(ISO 8728
:1997
)
船舶及び海洋技術−船用ジャイロコンパス
Ships and marine technology - Marine gyro-compasses
序文 この規格は,1997 年に第 2 版として発行された ISO 8728:1997,Ships and marine technology - Marine
gyro-compasses
を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
1.
適用範囲 この規格は,1974 年 SOLAS の第 V 章で要求されるジャイロコンパスの構造,性能及び型
式試験について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21 に基づき,IDT(一致している)
,MOD(修
正している)
,NEQ(同等でない)とする。
ISO 8728:1997
,Ships and marine technology - Marine gyro-compasses (IDT)
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発効年(又は発行年)を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの
規格の規定を構成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年(又は発行年)を付
記していない引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
ISO/R 694:1968
Positioning of magnetic compasses in ships
IEC 60945:1994
Marine navigational equipment - General requirements - Methods of testing and required
test results
3.
定義 この規格に用いる主な用語の定義は,次による。
3.1
ジャイロコンパス(gyro-compass) 必要要素すべてを含む完備した装置。
3.2
真船首方位(true heading) 真子午線を通る鉛直面と船舶の船首尾線を通る鉛直面との間の水平角。
真北(000゜)から時計回りに 360゜まで測られる。
備考 ジャイロコンパスが船舶上に装備されていない場合には,この“真船首方位”は船首基線の真
方位とする。船首基線を動かして修正をする装置を備えているジャイロコンパスにあっては,
その修正はその地の緯度に合わせて置くものとする。
3.3
静定(settled) コンパスを水平に固定された台上に設置した状態で,30 分間隔で読み取られた 3 回
の読取値が 0.7°の範囲内にあるときの動作が安定した状態。
備考 静定時間とは,最初の船首方位を誤差のある状態で起動した時刻から静定したと認められる 3
回目の読取までの経過時間。
3.4
静止点船首方位(settle point heading) 3.3 の定義によりコンパスが静定した後,20 分間隔で読み取ら
れた 10 回の指示値の平均値。
3.5
静止点誤差(settle point error) 3.4 で定義した静止点船首方位と真船首方位との差。
3.6
誤差(error) 観測値と 3.4 で定義した静止点船首方位との差。
2
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
3.7
方位測定用レピータコンパス(bearing repeater compass) 離れた場所においてマスターコンパスのカ
ード目盛を再現する装置。
3.8
コンパスカード(compass card) 方位を指示するコンパスの目盛盤。
3.9
緯度誤差(latitude error) ある種のジャイロコンパスに存在する誤差で,その大ささと符号がその地
の緯度によって変わる誤差。
備考 この誤差を修正する手段を備えていなければならない。
3.10
速度誤差(speed error) 船の速力,針路及びその地の緯度によってその大きさと符号が変わる,ジ
ャイロコンパスの誤差。
備考 この誤差を修正する手段を備えていなければならない。
3.11
基線(lubber line) 船首のコンパス方位を読み取るためにコンパスに設けられた指標。
3.12
マスターコンパス(master compass) レピータコンパス及びその他の航行援助装置に船首方位の情報
を供給する主コンパス装置。
3.13
動揺試験台(スコースビーテーブル)(Scorsby table) 3 軸の回りに互いに独立に振揺することがで
きる試験台。船舶の運動を模擬するために用いられる。
4.
構造 ジャイロコンパスは,次の要件を満たさなければならない。
4.1 6.10.1
∼6.10.5 に規定する振動,湿度,温度変化,及び電源変動の条件下で連続して作動できなけれ
ばならない。
4.2
方位測定用レピータコンパスを設けるように要求される船の場合には,その構造は次による。
a)
方位測定用レピータコンパスは方位測定器を取り付けられるように設計しなければならない。
b)
船の運動に対して,方位測定用レピータコンパスのカードが水平に保持されるようジンバル機構を備
えなければならない。
c)
暴露甲板で使用される方位測定用レピータコンパスはすべて,水密構造としなければならない。
4.3
コンパスカードは,1゜又はそれ以下の等間隔に目盛らなければならない。
目盛の誤差は,±0.2゜未満でなければならない。
数字による表示は,000゜から始めて時計回りに 360゜の間,少なくとも 10゜ごとに付けなければならな
い。
4.4
いかなる時でもすべてのコンパスカードの目盛が読み取ることができるように十分で適正な照明を
設けなければならない。また,照明光度加減器を設けなければならない。
4.5
マスターコンパスにもレピータコンパスにも,船の船首方位を示すための基線を備えなければなら
ない。
4.5.1
基線が船の船首尾線を含む鉛直面内に来るようにコンパスを船内に据え付けやすくするため,コン
パスの基部又は他の固定端のどこかに,印又は標識を付けなければならない。基線を動かして誤差を修正
する装置が設けてあるジャイロコンパスにあっては,据え付け作業中その修正量はゼロにセットしなけれ
ばならない。
これらの印又は標識が修正されていない基線と同じ鉛直面内にない場合には,両者の間の水平角を明示
しなければならない。
4.6
船の速力と緯度によって生じる誤差を修正するための手段をもたなければならない。
グラフ又は表による改正手段を用いても差し支えない。
3
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
4.7
ジャイロコンパスと他の船内機器との間の電磁的干渉の原因をできるだけ除き,かつ,その程度を
弱めるための実用的処置がとられていなければならない。
4.8
船の安全を左右するような音が確実に聴守できるように,すべての部分から発生する機械的騒音を
小さくしなければならない。
4.9
装置は,点検・整備が容易にできるような構造になっていなければならない。
4.10
ジャイロコンパスの電源故障を表示するための自動警報装置が備えられていなければならない。
4.11
過電流及び過電圧,過渡状態並びに電源極性の不慮の反転から装置を保護する手段がとられていな
ければならない。
4.12
ジャイロコンパスは,他の航行援助装置に船首方位の情報を供給することができるように設計しな
ければならない。
5.
性能要求
5.1
緯度 60゜までの精度
5.1.1
静定時間 コンパスは,製造業者の指示書に従って起動してから,6 時間以内に静定しなければな
らない。
5.1.2
静止点誤差
5.1.2.1 3.5
の定義による静止点誤差は,いかなる船首方位においても緯度のセカント(secant latitude)に
±0.75゜を乗じた値を超えてはならない。また,個々の船首方位指示値と平均値との差の RMS 値は緯度の
セカント(secant latitude)に 0.25゜を乗じた値未満でなければならない。
5.1.2.2
ある運転時と他の運転時の静止点誤差の再現性は緯度のセカント(secant latitude)に 0.25゜を乗じ
た値以内でなければならない。
5.1.3
運航状態における静定時間 コンパスは,周期 6∼15 秒最大角度 5゜,最大水平加速度 0.22m/s
2
の単弦運動のローリング(rolling)及びピッチング(pitching)の合成運動をしている状態で,製造業者の
指示書に従って起動してから 6 時間以内に静定しなければならない。
5.1.4
一般状態における静止点誤差 マスターコンパスの静止点誤差の再現性は,それを装備している船
が実際に遭遇するような一般状態と磁場の変動の下で,緯度のセカント(secant latitude)に±1゜を乗じた値
以内でなければならない。
5.1.5
修正後の残存誤差 20 ノットの速力と針路の影響を修正した後,残存する定常状態での誤差は,
緯度のセカント(secant latitude)に±0.25゜を乗じた値を超えてはならない。
5.1.6
船速変更の影響 20 ノットの速力の急激な変更による誤差は,±2゜を超えてはならない。
5.1.7
変針の影響 20 ノットの速力で,180゜にわたる急激な変針による誤差は,±3゜を超えてはなら
ない。
5.1.8
動揺試験台上における精度 周期が 6∼15 秒,最大揺れ角がそれぞれ 20゜,10゜,及び 5゜,最
大水平加速度が 1 m/s
2
の場合のいかなる単弦運動のローリング(rolling)
,ピッチング(pitching)
,及びヨ
ーイング(yawing)による過渡的な及び定常状態の誤差は,緯度のセカント(secant latitude)に±1゜を乗じ
た値を超えてはならない。
5.1.9
マスターコンパスとレピータコンパスとの間の同期 ひとたび各レピータコンパスがマスターコ
ンパスと同期した後は,あらゆる運航状態の下においても両方のコンパスの間の指示値の差は ±0.5゜を
超えてはならない。この要件のため,緯度速度誤差修正はゼロにあわせておかなければならない。
5.2
他の要求項目 ジャイロコンパスは IEC 60945:1994 の 3.の必要条件に従わなければならない。
4
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
6.
型式試験
6.1
構造 ジャイロコンパスの構造は,4.に規定した要件に合致しなければならない。
6.2
静定時間試験 マスターコンパスを固定された水平台上に設置した後,公称値の電源を給電し,製
造業者の指示書に従って,初期船首方位誤差をプラス側(右回り)に 30゜以上与えた状態から起動しなけ
ればならない。静定時間(3.3 参照)は 5.1.1 の規定を満足しなければならない。
6.3
静止点誤差試験 マスターコンパスが 3.3 の定義のとおり静定したとき,静止点誤差(3.5 参照)は
5.1.2.1
に規定した要件に合致しなければならない。
6.4
静止点船首方位の再現性試験 マスターコンパスを初期船首方位誤差をプラス側(右回り)に 30゜
以上与えた状態から製造業者の指示に従がい起動し,静定しなければならない。
静止点船首方位を 3.4 の規定によって決定した後,マスターコンパスをいったん 12 時間以上 7 日以下の
間停止し,初期船首方位誤差をマイナス側(左回り)に 30゜以上与えた状態から起動し,静止点船首方位
を測定する。
次に,マスターコンパスを 12 時間以上 7 日以下の間停止し,再び初期船首方位誤差をプラス側(右回り)
に 30゜以上与えた状態から起動し,静止点船首方位を測定する。
こうして得られた静止点船首方位の 3 つの値のうち,
任意の 2 つの値の差が緯度のセカント
(secant latitude)
に 0.25゜を乗じた値を超えてはならない。
備考 この試験が 6.3 の試験に続いて行う場合には,6.3 で得た“静止点船首方位の値”を,この再現
性試験で要求される最初の値として使用することができる。ただし,2 番目の“静止点船首方
位の値”が,12 時間以上 7 日以下の間停止した後の値であることが条件である。
6.5
動揺試験台上における静定時間 マスターコンパスを,動揺試験台上に設置する場合,その船首尾
(前後)軸が動揺試験台の一つの動揺軸と平行になるように設置しなければならない。この動揺軸をロー
ル(roll)軸と定める。
第一の軸と水平面内で直角なもう一つの動揺軸は,ピッチ(pitch)軸と定める。次に,動揺試験台に次
に示す単弦の動揺運動を与えながら,製造業者の指示書に従ってコンパスを起動する。
− ロール(roll)軸:最大振幅 5゜±1゜,周期 15 秒±1 秒
− ピッチ(pitch)軸:最大振幅 5゜±1゜,周期 6 秒±1 秒
電源投入からコンパスが 3.3 で定義したように静定するまでの静定時間は 5.1.3 に規定する要件に合致し
なければならない。
備考 静定の状態を決定するコンパスの読みは,動揺試験台の動揺を停止させて実質的に水平のとき,
定められた動揺試験台の運動を再開する前に,あまり遅れないように読み取ってもよい。
6.6
動揺試験台上試験 マスターコンパスは,固定した実質的に水平であって,ロール(roll)軸が南北
線に対して±1゜以内にある状態の動揺試験台上で,静定することができなければならない。
コンパスの基線はこの動揺試験台のロール(roll)軸に対して±1゜以内に向いていなければならない。
次に示す実質的な単弦運動を,動揺試験台の 3 軸に同時に 25 分間加えなければならない。
− ロール(roll)軸:最大振幅 20゜±2゜,周期 10 秒±1 秒
− ピッチ(pitch)軸:最大振幅 10゜±1゜,周期 6 秒±1 秒
− ヨー(yaw)軸:最大振幅 5゜±1゜,周期 15 秒±1 秒
25
分経過後,動揺試験台の運動を止めて台をもとの位置に戻し,直ちにコンパスの船首方位を記録する。
この試験は,動揺試験台のロール(roll)軸を,045゜±1゜,090゜±1゜,及び 315゜±1゜に向けて繰
り返す。これらの各方位において,コンパスの静止点船首方位が台の運動を開始する前に測定しなければ
5
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
ならない。そして,運動直前の静止点船首方位と運動終了時の船首方位との間に指示値の変化があれば,
すべて,運動による誤差として記録しなければならない。
この 4 回の各試験において,運動による誤差は緯度のセカント(secant latitude)に±1゜を乗じた値未満で
なければならない。
この試験中に加えられる水平加速度は,1m/s
2
を超えてはならない。
6.7
隅点方向運動試験 マスターコンパスを,水平面内の運動成分の最大加速度が 1.0±0.1m/s
2
であるよ
うな単弦運動を起こすことができる装置に固定しなければならない。この装置の水平面内における運動の
方向は,隅点方向に対して±3゜以内でなければならない。
上記のように設置して,コンパスを静定(3.3 参照)させ,その静止点船首方位を装置が安定な水平状態
のもとで測定することとする(3.4 参照)
。装置には次に,先に述べたような最大加速度 1.0±0.1m/s
2
をも
った周期 3 秒以上の運動を 2 時間加える。
この運動中に記録したコンパスの船首方位と運動前の静止点船首方位との差は,すべて運動によるもの
と考えられる。
この差は,緯度のセカント(secant latitude)に 1゜を乗じた値を超えてはならない。
備考 運動中に記録したマスターコンパスの船首方位は,加えられた運動の周期と等しいか又はそれ
より高い周期における変調分はすべて無視されなければならない。
6.8
レピータコンパス精度試験 この試験はレピータコンパスを附属するコンパス装置にだけ適用する。
緯度及び速度誤差修正はゼロにあわせなければならない。マスターコンパスを水平な回転台に設置して静
定させ,レピータコンパスとマスターコンパスとの指度を整合する。回転台とマスターコンパスを 5゜/s
以下の早さで回転させる。この際 30゜ごとに回転台の回転を止めて,マスターコンパスの船首方位及びレ
ピータコンパスの船首方位を記録する。この手順を,反対方向に回転させて繰り返す。マスターコンパス
とレピータコンパス間の読みにおいての最大の差異は 5.1.9 の指定された必要条件に従わなければならな
い。
備考 この試験の目的は,マスターコンパスとレピータコンパスとの船首指示方位を比較することに
あるので,読みをとるときの回転台の正確な方位は重要ではない。試験対象のレピータコンパ
スが暴露甲板用の場合には,−20℃±3℃ 及び +60℃±3℃でも試験をしなければならないが,
それらの試験の前に,それぞれの試験温度に 2 時間づつ保って行う。
レピータコンパス装置の構成部分として設計された温度制御装置があれば,この試験のときその電源を
入れて行うことができる。
6.9
速度誤差修正装置試験 この試験は,船の速力及び針路による誤差の修正装置を備えたジャイロコ
ンパス装置に適用する。
6
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
マスターコンパスを水平で安定した基盤の上に設置し,コンパスの基線を南北方向に向けた状態で,マ
スターコンパスを静定させ,静止点船首方位を記録する。
20
ノットの速度誤差修正信号をコンパス装置に与え,コンパスを静定させる。
こうして得た静止点船首方位と最初に記録した値との差は,緯度のセカント(secant latitude)に 0.25゜を
乗じた値以内で試験場所の緯度に関して理論的に計算した値と一致しなければならない。
緯度及び速力による誤差の修正が船首方位信号伝送装置内で行われる場合には,この試験のために必要
な船首方位の指示値は,伝送装置の出力信号を使った伝送機構で駆動されるレピータコンパスで読み取ら
れなければならない。
備考 南北方向に向けたコンパスの速力と針路による誤差(度)は,次式で表される。
π
5
V
×緯度のセカント(secant latitude)
ただし,
V
は船の速力(ノット)である。
6.10
一般要件試験 一般要件試験として,すべての環境試験において,特定の環境条件を与えないとき
に得られた静止点船首方位を基準値として,静止点の変動を測定する。ジャイロコンパスにレピータコン
パスが附属している場合には,少なくとも 1 個のレピータコンパスは作動させて,環境試験の間常にマス
ターコンパスと整合しなければならない。他のレピータコンパスの出力は,それぞれ,製造業者が供給し
た通常の負荷又は通常の負荷の代わりとなる適切なインピーダンスに結合しなければならない。
6.10.1
電圧変動試験 電源電圧を公称電圧の 10%高い電圧にして 3 時間加え,その間,コンパスの船首
方位を 20 分間隔で記録する。次に,電源電圧を公称電圧の 10%低い電圧にして 3 時間加え,同様に 20 分
間隔でコンパス船首方位を記録する。
記録された船首方位はすべて,初めの基準値から緯度のセカント(secant latitude)に 1゜を乗じた値以下
でなければならない。
6.10.2
周波数変動試験 電源周波数を公称周波数の 5%多い周波数にして 3 時間加え,その間,コンパス
の船首方位を 20 分間隔で記録する。
次に,
電源周波数を公称周波数の 5%少ない周波数にして 3 時間加え,
同様に 20 分間隔でコンパス船首方位を記録する。
記録した船首方位はすべて,初めの基準値から緯度のセカント(secant latitude)に 1゜を乗じた値以下で
なければならない。
6.10.3
振動試験
6.10.3.1
マスターコンパスの振動試験 この試験の間,マスターコンパスの基線は,子午線に対して+
30
゜±1゜の方向としなければならない。
マスターコンパスに次に示す振動を加える。振動方向を次の 3 種類に変えて試験を行う。
a)
子午線に対して+30゜±1゜の方向で水平面内の振動
b)
子午線に対して−60゜±1゜の方向で水平面内の振動
c)
鉛直方向の振動
いずれの場合にも,コンパスをまず静定させ,次に最低周波数の振動を適切な振幅を保持しながら 25
分間加える。この時間の経過後,周波数及び振幅の振動を
表 1 に示す値に変えて,更に 25 分間加える。
この手順を,全部の周波数範囲が終わるまで続ける。
7
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
表 1 周波数及び振幅
周波数
Hz
振幅
mm
5
7
10
14
20
28
40
±0.71
±0.71
±0.71
±0.63
±0.31
±0.16
±0.08
船首方位の指示値を,各試験時間の終わりに記録することとし,記録された船首方位と基準の静止点船
首方位との差はすべて,試験地の緯度のセカント(secant latitude)に 1゜を乗じた値以下でなければならな
い。
備考 振動装置に起因する電磁界によって装置の性能に及ぼす悪影響を減少又は無効にする対策が講
じられていてもよい。
6.10.3.2
マスターコンパス以外のコンパス装置の振動試験 この装置は,構成要素として何らかの緩衝装
置を完備した状態で,振動台上に正常の支持方法で固定する。次に,マスターコンパスに正常の電気的構
成で接続する。マスターコンパスを製造業者の指示書に従って起動させ,静止点船首方位を測定し,記録
する。
振動台上に設置した装置に,25 分間以上かけて次に示す範囲の全周波数で鉛直振動を加える。
a)
周波数が 5 Hz∼13.2 Hz で振幅が 1.0mm
b)
周波数が 13.2 Hz∼40 Hz で最大加速度が 0.7×9.8m/s
2
このすべての手順は,その装置を水平面内の互いに直角な二つの方向で振動させて反復する。
この一連の試験のいずれの場合にあっても,電気的又は機械的な損傷が生じてはならない。
指示された船首方位は各試験時間の終わりに記録される。
この記録された船首方位の基準の静止点船首方位との差は,試験地の緯度のセカント(secant latitude)に
1
゜を乗じた値以下でなければならない。
6.10.4
温度試験 コンパス装置を常温の恒温槽内に置き,起動して静止させる。静止点船首方位を読み取
り,記録する。次に,恒温槽内の温度を 45℃±2℃まで上げて 3 時間保持し,この 3 時間経過後,コンパ
スの船首方位の指示値を記録する。恒温槽内の温度を 0℃±2℃にして 3 時間保持し,この 3 時間経過後,
コンパスの船首方位の指示値を記録する。記録したいずれの船首方位指示値も,基準の静止点船首方位と
の差が緯度のセカント(secant latitude)に 1゜を乗じた値以下でなければならない。
備考 恒温槽内の温度を変える場合,その変化の早さは 1 時間当たり 45℃を超えないようにしなけれ
ばならない。
6.10.5
高湿高温試験 コンパス装置を常温及び常湿の恒温槽内に置き,起動し静定させる。静止点船首方
位を読み取り,記録する。次に 3 時間±0.5 時間かけて恒温槽内の温度及び相対湿度を,それぞれ 40℃±2℃
及び 93±3%まで徐々に上げ,その状態で 3 時間保持する。
この 3 時間経過後のコンパスの船首方位の指示値と,基準の静止点船首方位との差は緯度のセカント
(secant latitude)に 1゜を乗じた値以下でなければならない。
6.10.6
その他の試験 ジャイロコンパスは IEC 60945 の次の試験に従わなければならない。
8
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
a)
降雨試験(IEC 60945:1994 の 4.4.8);
b)
伝導インタフェアランス試験(IEC 60945:1994 の 4.5.3);
c)
ふく射インタフェアランス試験(IEC 60945:1994 の 4.5.4);
d)
騒音試験(IEC 60945:1994 の 4.5.7);
騒音試験は,ジャイロコンパスの起動時には測定しないものとする。
7.
表示 ジャイロコンパスの各装置には,製造業者名,種類名,製造番号及び製造年を表示しなければ
ならない。
各装置には,その装置を設置するとき,基準及び操舵用磁気コンパスから離すべき最小安全距離を表示
しなければならない。この安全距離は,ISO/R 694 に従って測定した値でなければならない。
8.
情報 船の乗組員がその装置を有効に操作し,かつ,保守することができるような情報を提供しなけ
ればならない。
9
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
附属書 A(規定)ジャイロコンパス及びレピータコンパスの船上装備に関す
る船舶検査員への勧告
本体の 5.1.8 に規定された運動がもたらす誤差を実際に上回らないことを保証するためには,マスターコンパス
の装備位置に特別な注意を払う必要がある。
マスターコンパス及びレピータコンパス又はそのいずれかが方位測定用に使用される場合には,そのコンパス
カードの中心を通り基線を含む鉛直面と船の船首尾線を通る鉛直面との間の水平角は装備された時,±0.5゜以内であ
るべきである。
10
F 9602
:2004 (ISO 8728:1997)
附属書 B(参考)参考文献
この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな
い。
[1] IMO
決議 A.694(17),General requirements for shipborne radio equipment forming part of the global maritime
distress and safety system (GMDSS) and for electronic navigational aids.
[2] IMO
決議 A.424(XI),Performance standards for gyro-compasses.
[3] International Convention on Safety of Life at Sea (SOLAS) 1974 (amended)