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F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 2 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 磁気コンパス ··················································································································· 2 

4.1 構造及び材料 ················································································································ 2 

4.2 装着 ···························································································································· 4 

4.3 指北装置 ······················································································································ 4 

4.4 コンパスカード ············································································································· 6 

4.5 精度 ···························································································································· 7 

4.6 磁気コンパスの環境条件試験(クラスAだけに適用) ·························································· 8 

5 ビナクル························································································································· 8 

5.1 A1形ビナクル ··············································································································· 9 

5.2 A2形ビナクル ·············································································································· 10 

6 方位測定具[クラスA,及びクラスB(装備する場合)] ························································ 11 

6.1 方位測定 ····················································································································· 12 

6.2 のぞき窓付方位測定具 ··································································································· 12 

6.3 水準器 ························································································································ 12 

7 表示······························································································································ 12 

8 形式表示························································································································ 12 

附属書A(規定)船用磁気コンパス,ビナクル及び方位測定具の一般的な試験及び証明 ···················· 13 

附属書B(規定)船用磁気コンパスの試験及び証明 ···································································· 14 

附属書C(規定)方位測定具の試験及び証明 ············································································ 23 

附属書D(規定)ビナクルの型式試験及び証明 ········································································· 28 

附属書E(規定)磁気コンパスの船内取付け位置 ······································································· 35 

附属書F(規定)安全距離の決定 ···························································································· 39 

附属書G(規定)磁気コンパス自差の修正 ··············································································· 40 

附属書H(規定)救命艇/救助艇用磁気コンパスの要件 ····························································· 42 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本

船舶技術研究協会(JSTRA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日

本工業標準調査会の審議を経て,国土交通大臣が改正した日本工業規格である。 

これによって,JIS F 9101:1998は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

F 9101:2015 

(ISO 25862:2009) 

船舶及び海洋技術− 

船用磁気コンパス,ビナクル及び方位測定具 

Ships and marine technology- 

Marine magnetic compasses, binnacles and azimuth reading devices 

序文 

この規格は,2009年に第1版として発行されたISO 25862を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。 

適用範囲 

この規格は,航行・操舵目的の,船用磁気コンパス,ビナクル及び方位測定具用の構造及び性能に関す

る要件を規定する。 

この規格は,船舶の設計に従い,二つの形式のビナクルを規定し, 

− 現行法規に従い,海上航行における船舶の航法及び操舵を対象とする, 

− 直読装置をもつ, 

液体式磁気コンパスに適用する。 

− 反映式(反射式),投影式又は方位発信形のいずれにも適用できる。 

この規格において,磁気コンパスとは,ボウルの中の1本の軸針で支持された指北装置からなる器具で

あり,そのボウルは内側及び外側のジンバルで支えられ,かつ,その内部を液体で完全に満たしてあるも

のをいう。ただし,ジンバル装置のない磁気コンパスもこの規格に含まれ,そのようなコンパスの場合に

は,ジンバル装置に関する要件は適用しない。 

この規格は,次のものに適用する。 

− SOLAS条約適用対象であり(総トン数150トン以上,かつ,国際航海に従事している船舶及び総トン

数500トン以上,かつ,国際航海に従事していない船舶),クラスA磁気コンパスを搭載している全

ての船舶 

− SOLAS条約適用対象外であり,クラスA又はクラスB磁気コンパスを搭載している全ての船舶 

− クラスB磁気コンパスを搭載している救命艇/救助艇(附属書Hに記載されているとおり。) 

この規格は,次のものには適用しない。 

a) 乾式カードコンパス 

b) 上記と異なった原理で設計された形の磁気コンパス,又は述べられた規定に従っていない形の磁気コ

ンパス 

c) ハンドベアリングコンパス 

試験及び証明の要件,船内での位置調整並びに自差修正は,附属書に規定する。 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 25862:2009,Ships and marine technology−Marine magnetic compasses, binnacles and azimuth 

reading devices(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)

は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS F 0812:2006 船舶の航海と無線通信機器及びシステム−一般要求事項−試験方法及び試験結果要

件 

注記 対応国際規格:IEC 60945:2002,Maritime navigation and radiocommunication equipment and 

systems−General requirements−Methods of testing and required test results(IDT) 

ISO 1069:1973,Magnetic compasses and binnacles for sea navigation−Vocabulary 

IMO Resolution A.382(X),Recommendations on performance standards for magnetic compasses 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,ISO 1069によるほか,次による。 

3.1 

磁気制御センサ(magnetic control sensor) 

自動船首方位制御システムへの供給,針路逸脱警報器の制御又はその他の機器への供給のために地磁気

を用いているセンサ。 

3.2 

最小距離(minimum distance) 

船舶構造の一部である磁性材の最近点と磁気コンパス中央との間で測定された距離。 

注記 標準磁気コンパスの最小距離を図E.1に,操舵磁気コンパスの最小距離を図E.2に示す。 

3.3 

安全距離(safe distance) 

関係する機器類の最近点と磁気コンパス中央との間の測定距離。 

注記 安全距離は,附属書Fに記載されているとおりに決定される。 

磁気コンパス 

4.1 

構造及び材料 

4.1.1 

磁性材 

磁気コンパスの指北装置に使用される磁石は,高い残留磁気及び少なくとも18 kA/mの保磁力のある適

切な磁性材でなければならない。方位発信形コンパスを除き,磁気コンパスで使用する他の全ての材料は,

非磁性の材料でなければならない。 

4.1.2 

船首指標 

クラスA磁気コンパスの場合,船首指標とカードの外周との距離は,直読式及び反映式(反射式)に対

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

しては1.5 mm〜3.0 mm,投影式に対しては0.5 mm〜1.5 mmでなければならない。船首指標の幅は,カー

ドの目盛の0.5度を超えてはならない。 

クラスB磁気コンパスの場合,コンパスは船首の方向を示す少なくとも一つの船首指標(主船首指標)

を設けなければならない。船首指標は追加してもよい。 

船首指標は,ボウルがジンバルで支えられるものでは,ボウルが10度傾いても,その他のものの場合に

はボウルが30度傾いても,操舵位置から読み取られるように設計されたものでなければならない。 

4.1.3 

カードの位置(クラスAだけに適用) 

バージリングと方位測定具の取付け座が共に水平な場合,カードの目盛の外周,船首指標が点である場

合はその点,軸針点(カードの支点),外側ジンバル軸は,ボウルについているジンバル軸を通る水平面か

ら1 mm以内になければならない。 

4.1.4 

ジンバル軸の角度及びそれらを通る垂直面の交点 

外側及び内側ジンバル軸の角度は,表1に示す値でなければならない。ジンバル軸を通る垂直面は,軸

針点の1 mm以内で交差しなければならない。軸方向の遊びは,これらの許容値を超えてはならない。 

表1−ジンバル軸の角度 

磁気コンパス 

ジンバル軸の角度 

クラスA 

(90±1) 度 

クラスB 

(90±2) 度 

外側のジンバル軸は,船の船首尾線方向になければならない。また,この規格の対象となっているジン

バルのない磁気コンパスについては,ジンバルに関する要件は適用されない。 

4.1.5 

上面ガラス蓋の厚さ(クラスAだけに適用) 

コンパスの上面ガラス蓋及び底面ガラスの厚さは,強化ガラスでない場合は4.5 mm以上,強化ガラス

の場合は3.0 mm以上でなければならない。これらの値は半球形磁気コンパスの上面ガラス厚にも適用さ

れる。ガラス以外の材料が使用されている場合,これと同等の強度のものでなければならない。 

4.1.6 

温度範囲内の構造条件 

表2に示す温度範囲内において, 

a) 磁気コンパスは満足に作動しなければならない。 

b) ボウル内の液体は清浄を保ち,気泡を生じることなく,乳濁又は凍結があってはならない。 

c) 内部に空気が侵入したり,液が外部に漏れたりしないものとする。特に,膨張を補償する構造の場合

を除き,コンパスの中で気泡を形成させてはならない。 

注記 膨張を補償するための気泡は,コンパスの機能及び読み取りを妨害してはならない。 

d) 内部の塗料は,認められるような膨れ,ひび割れ又は大きな変色をしてはならない。 

e) クラスA磁気コンパスの場合には,20 ℃の液体内において指北装置が軸針受(ピボット)に及ぼす

力は,カード直径が165 mm以下の場合は0.04 N〜0.1 N,カード直径が165 mmを超える場合は0.04 N

〜0.14 Nである。 

f) 

クラスB磁気コンパスの場合には,支持力は指北装置が常に軸針と接触しているようでなければなら

ない。 

g) コンパスカードの材料は,変形してはならない。 

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表2−温度範囲 

磁気コンパス 

温度範囲 

クラスA 

−30 °C〜+60 °C 

クラスB 

−20 °C〜+60 °C 

4.1.7 

水平位置 

ボウルは,ジンバルリングを水平に固定したとき,バージリング又は上面ガラス蓋が2度以内で水平面

にあるように平衡が保たれていなければならない。このことは,方位測定具又は拡大鏡が装備されても満

足しなければならない。 

4.2 

装着 

4.2.1 

支持器の傾斜 

ボウルは,クラスA磁気コンパスの場合には,ビナクルがどの方向に40度傾いても,クラスB磁気コ

ンパスの場合には,ビナクルがどの方向に30度傾いても,バージリングが2度以内で水平を保つように,

また,いかなる海上又は天候においても,磁気コンパスが外れないように装着されていなければならない。 

内側及び外側のジンバル軸の軸受は同じ形のものでなければならない。 

4.2.2 

ジンバルで支えられていないコンパスの場合のカードの自由度 

支持ジンバルで支えられていない磁気コンパスの場合,カードの自由度は全ての方向に30度でなければ

ならない。 

4.3 

指北装置 

4.3.1 

慣性モーメント 

指北装置の慣性モーメントは,軸針の宝石の支点を通る全ての水平軸の周りに対してほとんど同じでな

ければならない。 

4.3.2 

支持(クラスAだけに適用) 

指北装置は,適切な方法でその位置を保持するとともに,ボウルがどの方向に10度傾いても,自由でな

ければならない。 

4.3.3 

磁気モーメント(クラスAだけに適用) 

指北装置の磁針の磁気モーメントは,図1に示す値より少なくてはならない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

 X カード直径(mm) 

Y 磁気モーメント(A·m2) 
 

図1−液体式コンパスの磁気モーメント(必要最小値) 

4.3.4 

静止時間 

カードを磁気子午線から90度片寄せして放し,磁気子午線の1度以内に戻るのに要する時間は,温度(20

±3) ℃において

H

240

秒を超えてはならない。ここで,Hは試験場所における磁束密度の水平成分であ

ってマイクロテスラ(µT)で与えられる。 

4.3.5 

垂直磁界による指北装置の傾斜(クラスAだけに適用) 

指北装置は,鉛直磁束密度がゼロのときに水平面から0.5度以上傾かないような構造になっているか,

又は平衡がとられていなければならない。鉛直磁束密度が100 µT変化した場合,その傾斜の変化は3度以

内でなければならない。 

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4.3.6 

支持力(クラスAだけに適用) 

用いられている液体の中で,指北装置が軸針に及ぼす力は,カードの直径が165 mm以下の場合は0.04

〜0.1 N,カードの直径が165 mmを超える場合は0.04〜0.14 Nでなければならない。 

4.4 

コンパスカード 

4.4.1 

目盛 

コンパスカードは,北から始まって上から見て時計回りに360度の目盛が付けられていなければならな

い。各10度ごとに対応する三つの数字を表示しなければならない。したがって,北は“000°”と表示さ

れていなければならない。四方点は“N”,“S”,“E”及び“W”の大文字で表示されていなければならな

い。四偶点も大文字で表示してよい。また,北は適切な標識で表示してもよい。 

カードは,表3に示すように数字を表示しなければならない。 

表3−カードの目盛 

磁気コンパス 

目盛の等間隔 

カード目盛数字 

クラスA 

1度 

各10度ごと 

クラスB 

5度以下 

各30度ごと 

コンパスカードが両面印刷されている場合,目盛は0.2度の公差に一致しなければならない。 

4.4.2 

カードの直径 

次のビナクル形式に対するコンパスカードの直径を,表4に示す。 

表4−カード直径 

単位 mm 

磁気コンパス 

ビナクル形式 

カードの直径 

クラスA 

A1 

165以上 

A2 

125以上 

クラスB 

A1 

125以上 

A2 

注記1 A1形ビナクル(5.1参照)は,1 m以上のビナクルの高さとして定義される。

ビナクルの高さが1 m未満の場合,A2形ビナクル(5.2参照)である。 

注記2 救命艇/救助艇用の磁気コンパスのカード直径は,H.2.1に示す。 

4.4.3 

読みやすさ 

各クラスの操舵コンパスは,昼光によっても人工光によっても,正常な視力の人が,表5に示す磁気コ

ンパスからの距離において,カードの目盛を,船首指標の両側それぞれ15度以上の範囲にわたって読み取

ることができなければならない。この場合,拡大鏡を用いてもよい。 

反映式及び投影式磁気コンパスに対しては,船首指標が目視できるものとし,カードの30度の範囲が,

鏡筒から1 mの距離において正常な視力の人が読み取ることができなければならない。 

表5−可読距離 

単位 m 

磁気コンパス 

コンパスの可読距離 

クラスA 

1.4 

クラスB 

1.0 

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4.4.4 

方位測定磁気コンパス 

方位測定磁気コンパスに船首を基準とする相対方位の測定のため,度の目盛がある場合は,この目盛は

右回りに360度で目盛られていなければならない。この場合,方位測定具を通して見えるゼロは船首の方

向を示していなければならない。 

4.5 

精度 

4.5.1 

方位誤差 

方位誤差は,指北装置の構造上の誤差であり,次のものから成る。 

a) カードの目盛に対する磁石の向きの誤差(視準誤差)。 

b) コンパスカード目盛の誤差。 

c) カードの回転中心に対するコンパスカード目盛の偏心。 

方位誤差は,いずれの方向においても表6に示す値を超えてはならない。 

表6−方位誤差 

単位 度 

磁気コンパス 

許容方位誤差 

クラスA 

0.5 

クラスB 

1.5 

方位発信形コンパスの場合,方位誤差はフラックスゲートを除いた磁気コンパスに適用される。方位発

信形コンパスのフラックスゲートは,クラスAの場合にカード方位への影響が0.5度を超えないように設

置しなければならない。 

注記 コンパスボウルで試験を行う場合,もたらされる値には,磁気コンパス及び/又はフラックス

ゲートにある磁性材による自差が含まれる。 

4.5.2 

船首指標の誤差 

基線誤差とは,主船首指標の相対位置(固定されている場合),軸針受け及び外側のジンバル軸の方向に

依存する,コンパスボウル及びジンバルの構造上の誤差である。 

基線誤差は,表7に示す値を超えてはならない。 

表7−基線誤差 

単位 度 

磁気コンパス 

最大許容基線誤差 

クラスA 

0.5 

クラスB 

1.0 

4.5.3 

摩擦誤差 

温度(20±3) ℃における磁気コンパスでは,最初に子午線の一方の側に初期偏角(値については,表8

参照)がカードに与えられ,その後に反対側においても与えられる。カードは,表8に示す値の範囲内で

元の位置に戻らなければならない(ここでのHは,4.3.4で定義したもの。)。 

表8−摩擦誤差 

磁気コンパス 

初期偏角 

摩擦誤差 

クラスA 

2度 

(3/H) 度未満 

クラスB 

5度 

(9/H) 度未満 

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4.5.4 

旋回誤差 

温度(20±3) ℃において,6度/sの均一の角速度で水平面においてコンパスを回転させ,ボウルが180度

回ったときの磁気子午線からのカードの偏角は,表9に示す値を超えてはならない。 

又は,1.5度/sの均一の角速度でコンパスを回転させ,ボウルが360度回ったときのカードの偏角は,表

9に示す値を超えてはならない(ここでのHは,4.3.4で定義したもの。)。 

表9−旋回誤差 

磁気コンパス 

カード偏角値 

角速度:6度/s 

180度回転後に測定 

角速度:1.5度/s 

360度回転後に測定 

クラスA 

カードの直径が200 mm以上 

(108/H) 度 

(54/H) 度 

カードの直径が200 mm未満 

(36/H) 度 

クラスB 

(40/H) 度 

4.5.5 

感応誤差(クラスAだけに適用) 

指北装置内磁針の不適切な配置によって生じる感応誤差,及び係数Dの修正具(鉄球又は同等の従来形

修正具)に指北装置の磁針が影響して発生する誘導磁気によって生じる感応誤差を避けるため,次の要件

のいずれか一つを満たされなければならない。 

a) 係数Hの係数Dに対する比が0.08を超えてはならない。 

b) 磁針と同一水平面で,指北装置の中心に対し約40 cmの距離で直角に置かれた,長さ50 mm未満の小

磁石によって生じる六分円誤差の係数Fは,半円差の自差係数Bの0.01倍より小さい。 

4.5.6 

方位測定具の装備誤差 

ボウル上に方位測定具の中心を合わせて置いたとき,その鉛直軸は,軸針から0.5 mm以内になければ

ならない。 

4.5.7 

バージリングの偏心誤差(クラスAだけに適用) 

バージリングに目盛が施してある場合,その目盛面の中心を通る垂直線は,軸針から0.5 mm以内にな

ければならない。 

4.6 

磁気コンパスの環境条件試験(クラスAだけに適用) 

JIS F 0812に規定されている高温高湿サイクル試験,注水試験及び腐食試験を行うものとし,全ての要

件を満たさなければならない。 

任意で,JIS F 0812に規定されている振動試験を追加して行ってもよい。 

注記 救命艇/救助艇用磁気コンパスの環境条件試験は,H.2.3に記載している。 

ビナクル 

装備する船の種類によって,ビナクルの二つの形式のうちの一つ,A1形又はA2形を用いてもよい。二

つの形式の特性を5.1及び5.2に規定する。 

磁気コンパス及びビナクルは,表10に示すように組み合わせて使用する。 

表10−ビナクルの形式 

磁気コンパス 

ビナクル 

クラスA 

A1形 

A2形 

クラスB 

A1形 

A2形 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.1 

A1形ビナクル 

A1形ビナクルは,コンパスの指北装置の磁針がビナクル甲板取付け面の下面より1.0 m以上の高さであ

り,5.1.1〜5.1.5に記載した要件を満たさなければならない。 

5.1.1 

構造及び材料 

5.1.1.1 

ビナクル,ヘルメット,箱,ブラケット及び取付けボルトの構造には,十分な強度のある高品質

な非磁性材だけを用いなければならない。 

5.1.1.2 

船の船首尾線に対する据付誤差を4度以上6度以下で修正できる設備をビナクルに備えていなけ

ればならない。 

5.1.2 

自差修正装置(クラスBコンパスでも装備されている場合) 

5.1.2.1 

材料 

修正用磁石を使用する場合,それらは高い残留磁気及び11.2 kA/m以上の保磁力をもつ適切な磁性材で

なければならない。 

誘導磁界を修正するのに使用する材料は,高い透磁率をもち,低い保磁力及び無視し得る残留磁気をも

つものでなければならない。 

組込み式磁石は,中立位置に置くか又は取り外しができるものでなければならない。係数B及び係数C

の修正用の組込み磁石は,傾船差を生じさせてはならない。 

5.1.2.2 

水平永久磁気に対する修正 

ビナクルには,船の永久的な磁気の水平成分による自差を修正するための装置がなければならない。こ

の装置は少なくとも(720/H) 度までの係数Bと,少なくとも(720/H) 度までの係数Cとを修正できなけれ

ばならない(ここでのHは,4.3.4で定義したもの。)。 

ビナクルは,どの針路においても,15度の横傾斜又は縦傾斜に対して,磁界を乱して(20/H) 度を超える

偏角を与えるほど,指北装置にこの修正用磁石が近づかないような構造でなければならない。 

5.1.2.3 

傾船差に対する修正 

ビナクルには,傾船差を修正する装置が設置されていなければならない。この装置は,指北装置の磁針

の位置に少なくとも+75 µTから−75 µTの範囲にわたって垂直磁界を与え,修正が可能でなければならな

い。 

ビナクルは,どの針路においても,15度の横傾斜又は縦傾斜に対して,磁界を乱して(20/H) 度を超える

偏角を与えるほど,指北装置にこの修正用磁石が近づかないような構造でなければならない(ここでのH

は,4.3.4で定義したもの。)。 

5.1.2.4 

船内の軟鉄成分に地磁気の水平成分が影響して生じる誘導磁気の水平成分に対する修正 

ビナクルには,船内の軟鉄成分に地磁気の水平成分によって生じる誘導磁気が原因となる水平磁界を修

正するための装置が設置されていなければならない。この装置は,係数Dを最大10度まで修正できるも

のでなければならない。 

この修正を鉄球で行う場合,ビナクルが垂直に立っているとき,その装置の中心は指北装置の磁針を通

る水平面から15 mm以上の高低差があってはならない。 

5.1.2.5 

船内の軟鉄成分に地磁気の垂直成分が影響して生じる誘導磁気の水平成分に対する修正 

ビナクルには,船内の軟鉄成分に地磁気の垂直成分によって生じる誘導磁気が原因となる水平磁界を修

正するための装置が設置されていなければならない。フリンダースバーを用いている場合,棒の直径の

40 %を超えない中空のものであってもよい。 

ビナクルが垂直に立っているとき,その修正装置の磁極が指北装置の磁針の中心と同じ水平面内になけ

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F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ればならない。フリンダースバーを用いている場合,その磁極は,棒の端からその長さの1/12のところに

なければならない。 

5.1.2.6 

修正装置の位置及び取付け 

ビナクルには,5.1.2.2〜5.1.2.4で記載した修正装置の位置を記録するための用意がなされていなければ

ならない。 

修正装置は修正後,十分に固定されるようになっていなければならない。 

5.1.2.7 

消磁装置に対する補償コイル 

船に消磁装置が装着されている場合,これによって生じる自差を修正するための補償コイルが取り付け

られるようになっていてもよい。 

5.1.3 

船首尾線マークの精度 

ビナクルに船首尾線マークが施されている場合,それらは船首尾ジンバル軸受の軸から0.5度以内の同

一垂直面になければならない。 

5.1.4 

照明 

ビナクルには,船内電源及び非常灯電源によってカード及び船首指標を照明する適切な手段を備えてい

なければならない。 

投影式及び反映式ビナクルにおいては,操舵員の位置で明確にカード及び船首指標の映像が読めるよう

に照明する手段を備えていなければならない。 

船内主電源からの灯光を加減する手段を備えていなければならない。 

電灯,部品及び給電線は,指北装置に影響を与えてはならない。 

5.1.5 

その他の要件 

ビナクルは,JIS F 0812に規定する次の試験を満たさなければならない。 

a) 高温高湿試験 

b) 腐食試験(塩水試験) 

5.2 

A2形ビナクル 

このビナクルは,船舶の設計によって大形ビナクルの設置が不可能な場合に,海上航行において使用さ

れる。 

ビナクルが次の要件を満たせば,高さに関する要件は特にない。 

5.2.1 

構造及び材料 

十分な強度のある高品質な非磁性材だけを用いなければならない。 

5.2.2 

自差修正装置の規定 

5.2.2.1 

材料 

修正用磁石を使用する場合,それらは高い残留磁気及び11.2 kA/m以上の保磁力をもつ適切な磁性材で

なければならない。誘導磁界を修正するのに使用する材料は,高い透磁率をもち,低い保磁力及び無視し

得る残留磁気をもつものでなければならない。 

5.2.2.2 

水平永久磁気に対する修正 

ビナクルには,船の永久的な磁気の水平成分による自差を修正するための装置がなければならない。こ

の装置は少なくとも(720/H) 度までの係数Bと,少なくとも(720/H) 度までの係数Cとを修正できなけれ

ばならない(ここでのHは,4.3.4で定義したもの。)。 

ビナクルは,どの針路においても,15度の横傾斜又は縦傾斜に対して,(40/H) 度を超える偏角を与える

ほど,指北装置にこの修正用磁石が近づかないような構造でなければならない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.2.2.3 

傾船差に対する修正 

ビナクルには傾船差を修正する装置が設置されていなければならない。この装置は,指北装置の磁針の

位置に少なくとも+75 µTから−75 µTの範囲にわたって垂直磁界を与え,修正が可能でなければならない。 

ビナクルは,どの針路においても,15度の横傾斜又は縦傾斜に対して,磁界を乱して(80/H) 度を超える

偏角を与えるほど,指北装置にこの修正用磁石が近づかないような構造でなければならない(ここでのH

は,4.3.4で定義したもの。)。 

注記 5.2.2.2及び5.2.2.3で記載した装置によって生じる磁界は,指北装置が動く空間において可能な

限り均一とし,重大な六分円誤差をもたらしてはならない。 

5.2.2.4 

船内の軟鉄成分に地磁気の水平成分が影響して生じる誘導磁気の水平成分に対する修正 

ビナクルには,船内の軟鉄成分に地磁気の水平成分によって生じる誘導磁気が原因となる水平磁界を修

正するための装置が設置されていなければならない。この装置は,係数Dを最大7度まで修正できなけれ

ばならない。 

この修正を鉄球で行う場合,ビナクルが垂直に立っているとき,その装置の中心は指北装置の磁針を通

る水平面から15 mm以上の高低差があってはならない。 

5.2.2.5 

船内の軟鉄成分に地磁気の垂直成分が影響して生じる誘導磁気の水平成分に対する修正 

ビナクルには,船内の軟鉄成分に地磁気の垂直成分によって生じる誘導磁気が原因となる水平磁界を修

正するための装置が設置されていなければならない。フリンダースバーを用いている場合,棒の直径の

40 %を超えない中空のものであってもよい。 

ビナクルが垂直に立っているとき,その修正装置の磁極が指北装置の磁針の中心と同じ水平面内になけ

ればならない。フリンダースバーを用いている場合,その磁極は,棒の端からその長さの1/12のところに

なければならない。 

カードの中心からフリンダースバーの垂直軸までの距離は,磁針の長さの少なくとも3.5倍でなければ

ならない。 

5.2.2.6 

修正装置の取付け 

修正装置は修正後,十分に固定されるようになっていなければならない。 

5.2.3 

船首尾線マークの精度 

据付が正確にできるように船首尾線マークが施されているものとし,それらは船首尾線上のジンバル軸

受の軸から0.5度(クラスBの場合は1.0度)以内でなければならない。 

5.2.4 

照明 

ビナクルには,船内電源及び非常灯電源によってカードを照明する適切な手段を備えていなければなら

ない。投影式及び反映式ビナクルにおいては,操舵員の位置で明確にカードの映像が読めるように照明す

る手段を備えていなければならない。船内電源からの灯光を加減する手段を備えていなければならない。 

電灯,部品及び給電線は,指北装置に影響を与えてはならない。 

5.2.5 

その他の要件(クラスAだけに適用) 

ビナクルは,JIS F 0812に規定する次の試験を満たさなければならない。 

a) 高温高湿試験 

b) 腐食試験(塩水試験) 

方位測定具[クラスA,及びクラスB(装備する場合)] 

方位測定コンパス用の適切な方位測定具を1台備えていなければならない。A1形及びA2形ビナクルの

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場合,方位測定具にかえてビナクルより離れた所に適切な方位盤を備えてもよい。 

6.1 

方位測定 

視野は視線の両側にそれぞれ少なくとも5度とし,水平線の下方5度から上方60度(クラスBの場合,

10度)までの高度の天体の方位,又は遠方物標の方位を測定できるものでなければならない。 

要求される精度は,高度5度から50度の間で,附属書Cに記載した方位測定具のグループを満足する

ものでなければならない。 

6.2 

のぞき窓付方位測定具 

水平線の下方5度から上方30度までの高度の遠方物標の方位を測定できるものでなければならない。 

6.3 

水準器 

方位鏡又はプリズム計器は,水準器を備えていなければならない。 

この水準器は1度以内の精度でなければならない。 

表示 

次の部品には,表示位置において表11に掲げる情報を表示しなければならない。 

表11−表示要件 

部品 

製造業者名又は製造業者を 

識別する表示をする場所 

部品の製造番号の位置 

磁気コンパス 

カード 
バージリング 

カード 
バージリング 
ジンバルリング 

ビナクル 

適切な場所(形表示を伴う。) 必要としない。 

方位測定具 

方位測定具の上面 

方位測定具の上面 

使用する液がエチルアルコール以外のものでは,その液名を注液口付近に表示しなければならない。 

表示は,型式試験証明書に記載されたものでなければならない(附属書Dに示す。)。 

形式表示 

この規格に準拠する磁気コンパスは,次の順に従って,次の事項を表示しなければならない。 

− コンパスの形式(反映式,投影式,方位発信形) 

− この規格の番号 

− ビナクルの形式 

− ミリメートルで表したカードの直径 

例 反映式クラスA磁気コンパス,A2形ビナクル付,カード直径180 mm 

反映式磁気コンパス JIS F 9101 (ISO 25862)-A2-180 

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附属書A 

(規定) 

船用磁気コンパス,ビナクル及び方位測定具の一般的な試験及び証明 

A.1 はじめに 

この附属書は,船用磁気コンパス,方位測定具及びビナクルに関する試験及び証明の一般情報を規定す

る。 

次の機器の試験及び証明を記載する。 

− 附属書Bに規定する磁気コンパス 

− 附属書Cに規定する方位測定具 

− 附属書Dに規定するビナクル 

A.2 試験の適用範囲 

附属書B,附属書C及び附属書Dは,型式試験及び個別試験方法を定め,この規格に示す一般仕様に磁

気コンパス,方位測定具及びビナクルが適合していることを述べる必要がある特性の許容限界を記載して

いる。 

A.3 試験対象コンパスの形式 

試験は,発信装置の有無にかかわらず,全てのクラスA及びクラスBの船用磁気コンパスで行わなけれ

ばならない。操舵コンパスとしてだけに用いるジンバルのないコンパスを除き,全ての磁気コンパスは,

ジンバルリング及び外側ジンバル軸受を付けて試験しなければならない。 

A.4 試験条件 

対象器具が通常出荷に入る前に,型式試験を行わなければならない。型式試験は新しい装置にだけ行う。 

個別試験は,船に設置する前に行わなければならない。また,定期的に及び修理後に行う必要がある。

個別試験用に全ての機器は,試験用に提出するときは,清掃して使用可能な状態にしておかなければなら

ない。 

特に指定のない限り,全ての試験は(20±3) ℃の温度で行わなければならない。 

A.5 証明 

型式試験又は個別試験に合格し,要件を満たしている装置は,試験当局の言語及び英語で証明されなけ

ればならない。 

各型式試験証明書は,試験を受けた型式だけに有効である。この規格への適合性に影響する変更又は技

術の改良があった場合,その型式に新しい識別番号又は記号を付け,型式試験をやり直さなければならな

い。全ての変更は,最初の試験機関に提出して,新しい型式試験が必要かどうかを判定してもらわなけれ

ばならない(附属書B,附属書C及び附属書Dの最後の部分の証明書書式参照)。 

証明書の写しは,請求があれば発行しなければならない。その場合,“写し”であることを明確に表示し

なければならない。 

国家間の型式試験証明書及び個別試験証明書の承認は,双方の合意による。 

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附属書B 

(規定) 

船用磁気コンパスの試験及び証明 

B.1 

製造業者又は輸入業者の宣誓書 

製造業者は,型式試験中に確認できない要件に関して書面による製造業者又は輸入業者の宣誓書を作成

しなければならない(B.4参照)。製造業者又は輸入業者の宣誓書には,次の要点を含めなければならない。 

a) 指北磁石の保磁力及び磁気モーメント 

b) コンパス内側の塗料は良質であり,2年間にわたって,−30 ℃〜+60 ℃の範囲の温度変化,その他

の原因によってコンパスが使用不能になるほど劣化することがほとんどあってはならない(例えば,

目盛の明瞭性は変色又は膨れで損なわれてはならない。)。 

c) b)で記載した状況下において,コンパス液は,磁気コンパスが使用不能になるほどひどく変色するこ

とがほとんどあってはならない。 

d) 強化又は非強化ガラスを上面及び底面のガラス蓋に用いているかどうか,及びその厚さ。ガラスを用

いていない場合は,4.5 mm厚の非強化ガラスと同程度の強度でなければならない。 

e) コンパスカードの材料はひずまない。 

f) 

指北装置の慣性モーメントは,軸針の宝石の座面を通る全ての水平軸の回りでほぼ同じである。 

g) 指北装置の磁針の面中心とコンパスの内側ジンバル軸との間の垂直距離。 

h) 20 ℃における軸針の支持力。 

i) 

ジンバルリングの内側及び外側の軸受は同じ形式である。 

j) 

指北装置を形成する,棒磁石の長さ又は輪形磁石の直径。 

上記の製造業者又は輸入業者の宣誓書が要件を満たしていることを確認するため,抜取検査を行うこと

がある。 

B.2 

表示 

表11に示す表示であることを確認する。 

B.3 

磁気コンパス及びジンバルリングの検査及び試験 

B.3.1 構造及び材料 

B.3.1.1 コンパスボウルの状態 

磁気コンパスは,無きずかつ機械的に完全であることを確認するために検査しなければならない。液は

無色で,濁り及び綿状沈殿物があってはならない。液漏れがあってはならない。塗料は,コンパスカード

に塗られたものも含み,ひび割れ又は膨れがあってはならない。 

B.3.1.2 非磁性特性(型式試験だけに適用) 

製造業者が保証を宣言しているので,サンプル確認だけ必要である。 

コンパスボウル及びジンバルは,その非磁性特性の検証のために試験をしなければならない。 

B.3.1.3 高温における状態 

磁気コンパスは,室温から(60±2) ℃までゆっくり温められ,少なくとも8時間この温度を維持しなけ

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ればならない。この時間後,磁気コンパスには,いかなる機械的損傷,漏れ又は気泡を生じてはならない。

コンパス液及び塗料は,劣化しないものとし,指北装置は変形してはならない。磁気コンパスは満足に作

動し,4.1.6の要件を満たさなければならない。 

指北装置は常に軸針に接触していなければならない。 

B.3.1.4 低温における状態 

クラスA磁気コンパスは,(−30±2) ℃までゆっくり冷やさなければならない。クラスB磁気コンパス

は,(−20±2) ℃までゆっくり冷やさなければならない。いずれの場合も,少なくとも8時間この温度を

維持しなければならない。この時間後,磁気コンパスは機械的損傷,変形,漏れ又は気泡を生じてはなら

ない。ボウル内の液体は凍結,変色及び成分を分離してはならない。液中に綿状沈殿物又は氷を生じては

ならず,また指北装置は変形してはならない。磁気コンパスの機能に低下はないものとし,4.1.6の要件を

満たさなければならない。 

指北装置は,常に軸針に接触していなければならない。 

B.3.1.5 上面及び底面ガラス蓋の厚さ(型式試験だけに適用) 

マイクロメータで測定した上面及び底面ガラス蓋の厚さは,4.1.5の要件を満たさなければならない。こ

れはコンパスを開く必要があるので,他の試験を行った後で行わなければならない。 

B.3.1.6 発信装置 

発信装置は,方位測定具によるカードの読取り又は方位の測定を妨げてはならない。 

B.3.2 コンパスジンバル 

B.3.2.1 ジンバル軸の平面(型式試験だけに適用) 

ジンバル軸を検査しなければならない。4.1.4に定めたように,1 mmの許容差以内で同一平面になけれ

ばならない。 

この試験は,適切な物差しを用いて,固定した水平な基準面から行ってもよい。 

B.3.2.2 ジンバル軸の角度及びジンバル軸を通る垂直面の交点(型式試験だけに適用) 

軸の角度の測定は,試験台の目盛を用いて行ってもよく,その場合,コンパス支持を回転させることに

よって,ジンバル軸が交互に目盛の中心を通る垂直面に交わる。 

ジンバル軸のいずれかに対して垂直な方向におけるコンパス支持の変位を測定することによって,試験

台の上で交点線を判断してもよい。 

試験結果は,4.1.4の要件を満たさなければならない。 

B.3.2.3 ジンバルリング内の運動の自由度 

ジンバルリングが水平面にある場合,コンパスボウルは内側の軸を自由に回転しなければならない。上

面ガラス蓋又はバージリング上の傾斜計を置いて測定してもよい。試験結果は,4.2.1の要件を満たさなけ

ればならない。 

B.3.2.4 水平位置 

コンパスボウルは,ジンバルリングを水平に固定した場合,バージリング又は上面ガラス蓋が水平面に

あるように平衡が保たれていなければならい。このことは,方位測定具,その他の附属装置又は拡大鏡が

装備されても満足しなければならない。 

上面ガラス又はバージリング上に適切な感度のアルコール水準器を置いて測定を行うものとし,結果は,

4.1.7の要件を満たさなければならない。 

B.3.2.5 内側ジンバル軸の摩擦 

ジンバルリングが水平な位置に保たれ,コンパスボウルを±5度傾けたとき,コンパスボウルは水平面

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から2度以内に戻らなければならない。 

試験は,傾斜計又はアルコール水準器を用いて行ってもよい。 

B.3.2.6 内側及び外側のジンバル軸受(型式試験だけに適用) 

内側及び外側のジンバル軸の軸受は同じ形のものでなければならない。目視検査を行わなければならな

い。 

B.3.3 コンパスボウル 

B.3.3.1 相対方位リングの目盛(ある場合だけに適用) 

標準コンパスに船首を基準とする相対方位の測定のため,度の目盛がある場合は,この目盛は右回りに

360度目盛られていなければならない。このとき,方位測定具を通して見えるゼロは船首の方向を示して

いなければならない。 

この目盛は,検査しなければならない。 

B.3.3.2 方位リング目盛の偏心誤差(方位リング目盛のある場合だけに適用) 

相対方位リングがある場合,その目盛面の中心を通る垂直線は,軸針から0.5 mm以内でなければなら

ない。 

コンパスボウルを取り外したとき,試験台の中央に軸針を置き,コンパスボウルを回転させ,試験台の

望遠鏡によって相対方位リングの偏心を観察することによって試験することができる。 

もう一つの方法として,目盛の直径を測定し,組み立てた磁気コンパスを試験台に置いて方位誤差を読

み取ることによって試験を行ってもよい。最大許容方位誤差を目盛直径の関数として,表B.1に示す。 

表B.1−最大許容方位誤差 

目盛直径 

mm 

最大許容方位誤差 

度(°) 

115 

0.5 

142 

0.4 

190 

0.3 

280 

0.2 

B.3.3.3 方位測定具の心合わせの精度(型式試験だけに適用) 

方位測定具(ブリッジ形又はリング形)の回転軸と軸針を通るコンパスカードの鉛直回転軸との間の距

離は,0.5 mmを超えてはならない。 

方位測定具の構造によって,回転軸は,コンパスの上面ガラス蓋上の刻み目又は中心ボス,バージリン

グの内側又は外側の中心,若しくはコンパスボウルの外周によって規定することがある。 

試験は,コンパス試験台上で,水平時にコンパス軸針点を合わせるのに必要な変位,及び試験台の回転

軸と次々に合致する方位測定具の回転軸を測定することによって行ってもよい。 

B.3.4 コンパスカードの軸受 

B.3.4.1 軸針軸受の高さ(型式試験だけに適用) 

軸針点は,内側ジンバル軸を通る水平面から1 mm以上外れてはならない。軸針軸受が垂直支持ばねを

備えている場合,指北装置が完全に液体内にあるときにこの条件を満たさなければならない。 

コンパスボウルが開けられているとき,この試験は,コンパス外周を基準面として深さゲージを用いて

行うことができる。 

B.3.4.2 指北装置の移動防止 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

コンパスボウルに取り付けられている指北装置は,ボウルを逆にした後に正常な姿勢に戻したとき,軸

針上の元の位置に戻るような構造でなければならない。 

これは検査によって確認できる。 

B.3.4.3 指北装置の傾斜の自由度 

指北装置及びコンパスボウルは,コンパスボウルを次の角度でどの方向に傾けても,指北装置が自由に

回転して正常位置に戻るような構造でなければならない。 

a) コンパスボウルが外側ジンバル装置をもち,4.3.2に規定する要件を満たす場合:10度 

b) 4.2.2の要件を満たすその他の場合:30度 

試験は,傾斜が調整可能な回転プラットフォームを用いて行ってもよい。 

B.3.5 船首指標 

B.3.5.1 船首指標の数 

各磁気コンパスには,船首の方向を示す船首指標(主船首指標)を付けていなければならない。この主

船首指標は,明確に識別できるものとし,船首尾線方向にあるジンバル軸から0.5度以内になければなら

ない。 

その他の船首指標は,それぞれ船の船尾線及び横方向を示すものも認められる。これらの船首指標は,

4.1.2に規定する要件を満たさなければならない。 

B.3.5.2 船首指標の見やすさ 

4.1.2に規定するように,主船首指標は,コンパスボウルが傾いても,操舵位置から船首指標に対してカ

ードが読み取られるような設計のものでなければならない。ジンバル付磁気コンパスの場合,プレート基

線の使用を認める(4.4.3参照)。 

4.1.2の試験と併せて,目視検査による試験を行ってもよい。 

B.3.5.3 船首指標の幅 

船首指標の幅は,カードの目盛の0.5度の幅より大きくてはならない。目視検査による試験を行っても

よい。 

注記 救命艇/救助艇用磁気コンパスの船首指標の幅は,H.2.2に規定する。 

B.3.5.4 船首指標とカードの外縁との距離 

船首指標とカードの外縁との距離は,投影式コンパス以外は1.5 mm〜3 mmの間としなければならない,

投影式磁気コンパスの場合は,0.5 mm〜1.5 mmの間になければならない。 

この試験は,ボウル外周の上に設置されたミラーゲージを使用するか,又は可動形顕微鏡によるか,磁

気コンパスが分解されている場合は直接測定によって行ってもよい。 

半球形磁気コンパスの場合,これは型式試験だけに適用となり,磁気コンパスが解体さている場合に確

認できる。 

B.3.6 指北装置 

B.3.6.1 コンパスカード 

B.3.6.1.1 目盛 

カードは,北から始まって上から見て時計回りに360度の目盛を付けなければならない。四方点は“N”,

“S”,“E”及び“W”の大文字で表示されなければならない。四偶点も同様に表示してよい。また,北は

適切な標識で表示してもよい。カードは,表3に示すように数字を記さなければならない。 

コンパスカードが両面印刷されている場合,目盛は0.2度の許容差に一致していなければならない。試

験は目視で行わなければならない。 

18 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

B.3.6.1.2 カード直径 

ビナクル用コンパスカード直径を目視検査する。結果は,4.4.2の要件を満たすものでなければならない。 

B.3.6.1.3 読みやすさ 

操舵磁気コンパスでは,線の太さ及び数字並びに文字の高さは,正常な視力の人が,昼光でも人工光で

もカードを読み取ることができなければならない。 

反映式及び投影式磁気コンパスに対しては,主船首指標が目視できなければならない。 

拡大鏡を用いてもよい。 

試験は,目視によって行わなければならない。 

結果は,4.4.3の要件を満たさなければならない。 

B.3.6.1.4 コンパスカードの縁と軸針受との関係(型式試験だけに適用) 

バージリングと方位測定具の取付け座が共に水平な場合,カードの目盛の縁,船首指標(一点のとき),

軸針点,外側ジンバル軸は,ボウルに固定されたジンバル軸を通る水平面から全て1 mm以内になければ

ならない。コンパスボウルが開いている場合にだけこの測定を行うことができる。固定基準面から深さゲ

ージを用いて行うことができる。 

B.3.6.2 指北装置の磁針 

B.3.6.2.1 磁気モーメント 

指北装置の磁針の磁気モーメントは,カード直径によって,図1に示す値より少なくてはならない。 

試験は,磁力計(偏角法),その他の適切な手段を用いて行ってもよい。 

B.3.6.2.2 感応誤差(型式試験だけに適用) 

感応誤差は,次による。 

a) 指北装置の磁極は,修正装置の影響によって過剰な六分円誤差又は八分円誤差が生じないように配置

されなければならない。この基準は,八分円係数と四分円係数との比H/Dであり,0.08を超えてはな

らない。 

試験は,Meldauの4修正法,その他の同等な方法で行わなければならない。 

Meldau法を用いて試験する場合,磁気コンパスをスタンド上に装備し,二つの軟鉄修正具は回転中

心に対して直径上の相反する対称位置に置かなければならない。次に,二つの軟鉄修正具を付けた装

置を固定した磁気コンパスの周りを回転させ,係数Dを計算する。 

四分円誤差を相殺するため,二つの新たなほとんど同じ修正具を,元の組に対して直角に,中心か

ら同じ距離に置かなければならない。 

次に,四つの軟鉄修正具を磁気コンパスの周りに回転させ,係数Hを計算する。 

これらの値から,係数Hの係数Dに対する比を得る。 

試験結果は,4.5.5 a)の要件を満たさなければならない。 

b) 磁針と同一水平面で,指北装置の中心に対し約40 cmの距離で直角に置かれた,長さ50 mm未満の小

磁石によって生じる六分円誤差の係数Fは,半円差の自差係数Bの0.01倍より小さい。 

試験結果は,4.5.5 b)の要件を満たさなければならない。 

B.3.6.2.3 保磁力(型式試験だけに適用) 

指北装置で使用する磁石は,高い残留磁気及び高い保磁力のある適切な磁性材でなければならない。 

B.3.6.2.4 鉛直磁束密度が変化したときの傾斜の変化(型式試験だけに適用) 

ボウル内で平衡が保たれ,組み立てられている指北装置カードの傾斜は,E-W方向に0.5度,N-S方向

に(0.5+0.03δ)度を超えてはならない。ここでのδは,ある場所ともう一つの場所における鉛直磁束密度

19 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(µT)の差の絶対値である。 

この試験は,通常形の液体式コンパスの場合には,ボウルが分解されているとき行うか,又は封入され

ているときは適切な光学機器を用いて行わなければならない。その他のコンパスの場合,ボウルが分解さ

れているときに試験を行ってもよい。 

B.3.6.3 静止時間 

カードを磁気子午線から90度片寄せして放し,その後,磁気子午線の1度以内に戻るのに要する時間は,

4.3.4で求められている値を超えてはならない。 

子午線の反対側でこれを繰り返し,平均を取る。 

B.3.7 精度 

B.3.7.1 方位誤差 

方位誤差は,B.3.7に規定するように測定しなければならない。結果は,4.5.1の要件を満たさなければ

ならない。 

試験は,コンパス試験台の上で行ってもよい。コンパスカードの回転中心を試験台の回転軸に合わせた

後,回転軸を通る鉛直の見通し平面を磁気子午線に一致させておき,望遠鏡,その他の適切な手段を用い

てカード目盛で方位誤差を読み取ることができる。この測定は,少なくとも四つの等間隔の船首方位で行

わなければならない。測定するとき,摩擦誤差をなくすために,上面ガラスを軽く叩かなければならない

(4.5.3参照)。 

方位発信形コンパスでは,方位誤差はフラックスゲートを除いた磁気コンパスに適用される。方位発信

形コンパスのフラックスゲートは,カードの船首方位への影響が4.5.1の値を満たすように置かなければ

ならない。 

注記 コンパスボウルで試験を行う場合,もたらされる値には,磁気コンパス及び/又はフラックス

ゲートにある磁性材による自差が含まれる。 

B.3.7.2 船首指標の誤差 

船首指標(基線)誤差とは,主船首指標(固定されている場合),軸針受け及び外側のジンバル軸の方向

の相対位置に依存する,コンパスボウル及びジンバルの構造上の誤差である。 

可動船首指標があり,係数A修正用の補助目盛のあるコンパス,方位発信形コンパス又は回転可能なコ

ンパスボウルのあるオートパイロット操作の磁気コンパスについては,試験前に船首指標をゼロ位置に合

わせなければならない。 

基線誤差は,4.5.2における値を満たさなければならない。 

可動船首指標はあるが,補助目盛若しくはジンバル軸外側の方位と関連した船首指標の明確な位置を確

保するその他の手段のない磁気コンパス,又は操舵目的だけの半球形コンパスのようなジンバルのない磁

気コンパスについては,基線誤差は未確定となり決定できない。 

試験は,コンパス試験台の上で,試験台の回転中心を通る鉛直見通し平面に外側ジンバル軸を合わせ,

主目盛の副尺を読み込むことによって行ってもよい。この後,軸針点を試験台の回転中心に合わせ,かつ,

船首指標が鉛直見通し平面に一致するまで磁気コンパスを回転させる。 

この回転角が基線誤差である。 

B.3.7.3 摩擦誤差 

最初に子午線の片側に2度の初期偏角がカードに与えられ,その後もう片方において与えられたとき,

カードは元の位置に4.5.3に示した値以内で戻らなければならない。 

試験は,カードを2度片寄せし,少なくとも10秒その位置を保持した後に放す方法で行わなければなら

20 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ない。試験は,子午線の反対側にカードを片寄せして試験を繰り返さなければならない。得られた二つの

値の大きい方を摩擦誤差としなければならない。 

読み取りは,船首指標によるか,又はコンパス試験台の望遠鏡を用いてより正確に行ってもよい。 

B.3.7.4 旋回誤差 

水平面を6度/sの均一の角速度でコンパスを回転させ,ボウルが180度回ったときのカードの偏角は,

4.5.4の値を満たさなければならない。 

又は,1.5度/sの均一の角速度でコンパスを回転させ,ボウルが360度回ったときのカードの偏角は,表

9に示す値を超えてはならない。 

コンパスが360度回転した後に測定を開始しなければならない。コンパス液が整定するまで適切な時間

をおいて,磁気コンパスを反対方向に回転させて測定を繰り返さなければならない。得られた値の平均を

コンパスの旋回誤差とする。 

試験中に(9/H) 度を超える指北装置の不規則な動きが見られた場合は調査する必要がある。不規則の原

因は次のことが考えられる(ここでのHは,4.3.4で定義したもの。)。 

a) 軸針の摩擦 

b) 磁気コンパスに含まれている磁性材 

原因を突き止めるため,不規則が生じた船首方位で摩擦試験を行ってもよい。この試験の結果が満足で

きるものの場合,自差曲線を得ることによって,磁性材の試験を行ってもよい。これは,磁気コンパスに

磁性材があるかどうかを示す。 

B.3.7.5 磁気コンパスの環境条件試験(クラスAだけに適用) 

JIS F 0812に規定する試験方法及び求められる試験結果に従い,高温高湿試験,振動試験,注水試験及

び腐食試験を行わなければならない。全ての要件を満たさなければならない。 

B.4 

試験証明書 

磁気コンパスの試験証明書は,次のとおり。 

21 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

磁気コンパスの型式試験及び個別試験証明書 

[試験機関の名称] 

形式 

*) No.: .............................................................................................................................................  

個別 

クラスA *) 磁気コンパスの試験 

このJISに基づいたフラックスゲート又はその他の 

発信要素 

有り *) 

クラスB 

無し 

製造業者名:  ........................................................................................................................................................  

磁気コンパス及びジンバルの名称:  ..................................................................................................................  

磁気コンパス及びジンバルの製造番号:  ...........................................................................................................  

方位発信装置の名称:  .........................................................................................................................................  

方位発信装置の製造番号: ..................................................................................................................................  

製造業者の宣誓書及び署名を次に記載する。 

方位発信装置のない磁気コンパスの試験 

上記番号の磁気コンパスが試験され,このJISに準拠していることが確認されている。 

次の試験条項は省く:No.:  ................................................................................................................................  

方位発信装置のある磁気コンパスの試験 

上記番号の磁気コンパスが試験され,このJISに準拠していることが確認されている。 

次の試験条項は省く:No.:  ................................................................................................................................  

製造業者又はその代表者の署名:  ......................................................................................................................  

発行場所:  ............................................................................................................................................................  

国:  .......................................................................................................................................................................  

日付:  ....................................................................................................................................................................  

 ̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲  

*) 必要に応じ,削除する。 

22 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

製造業者又は輸入業者の宣誓書 

a) 指北装置磁石の保磁力及び磁気モーメントは次のとおり。 

保磁力: ................................................................................................................................. A/m 

磁気モーメント: .................................................................................................................. A・m2 

b) ボウル内側の塗料は良質であり,2年間は,温度が−30 ℃〜+60 ℃の範囲で変化しても,またその

他の原因によってもコンパスが使用不能になるほど劣化することはない(例を挙げると,目盛の視認

性は変色又は膨れで損なわれることはない)。 

c) b)で説明した状況下において,コンパス液は,コンパスが使用不能になるほどひどく変色することは

ほとんどない。 

d) 強化 

*) ガラスを次の厚さの上面ガラス及び底面ガラス蓋に用いている。 

非強化 

上面ガラス ............................................................................................................................. mm. 

底面ガラス ............................................................................................................................. mm.  

ガラスは用いておらず,厚さ ............................ mmの ................................... を用いている。 

この材料の強度は,厚さ ........................................................... mmの非強化ガラスと同程度である。 

e) コンパスカードの材料はひずまない。 

f) 

指北装置の慣性モーメントは,軸針の宝石の座面を通る全ての水平軸についてほぼ同じである。 

g) 指北装置の磁針の中央平面とコンパスの内側ジンバル軸との間の垂直距離は,................ mmである。 

h) 20 ℃における軸針の支持力は,...................................... Nである。 

i) 

ジンバルリングの内外軸受は同じ形式である。 

j) 

指北装置を形成する, 棒磁石の長さ 

*) mmである。 

輪形磁石の直径は 

k) 磁針の長さに対するフリンダースバーの垂直軸とカード中央との間の距離の比率は ..... 倍である。 

署名:...................................................................... 

日付:...................................................................... 

会社印: 

 ̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲  

*) 必要に応じ,削除する。 

23 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書C 
(規定) 

方位測定具の試験及び証明 

C.1 概要 

C.1.1 試験する方位測定具のグループ 

試験する方位測定具には,次の三つの異なるグループがある。 

グループI: 遠方物標を正確に狙うことを必要とする照準器又は望遠式照準器 

グループII: 方位鏡又はプリズム計器−正確に狙うことを必要としない,5度以内の小さな船首揺れ

角度において低い精度の方位を得るトムソン形 

グループIII: ビナクルのサイズ又はその船内の位置によって方位を知るのが難しい場合の,ビナク

ルから離して取り付けられる,A2形ビナクルとともに使用する方位盤 

グループI及びIIの方位測定具は,適切な磁気コンパスと組み合せた型式試験の場合にだけ認めなけれ

ばならない。 

二つのグループにおいて,要件及び試験方法が異なる(C.2.5.1及びC.2.5.2参照)。 

C.1.2 方位測定具の製造業者の証明書 

製造業者は,方位測定具用の単独の証明書において,方位測定具が属している磁気コンパスの形式及び

カード直径とともに,その名称,形式及び製造番号を記載しなければならない。 

方位測定具は,製造業者名,形式及び製造番号を明確に表示しなければならない。また,これらの表示

は証明書にも記載しなければならない。 

C.2 方位測定具の検査及び試験 

C.2.1 材料 

方位測定具の全ての部品は,非磁性材で製造されていなければならない。 

これは,方位測定具を縦軸,横軸及び垂直軸に沿って2 mTの磁束密度に順次暴露することによって試

験しなければならない。各暴露後,方位測定具はそれが属するコンパスに置かなければならない。測定具

がコンパスの上でゆっくり回転させた場合,識別できる指北装置の自差は生じてはならない。 

C.2.2 磁気コンパスへの取付け 

方位測定具は,それが属する磁気コンパスの上で容易に回転しなければならない。0.2度を超える読取り

差を生じさせる横方向の動きはないものでなければならない。 

試験は,磁気コンパスのカード又はバージリング目盛を用いて行ってもよい。 

C.2.3 アルコール水準器の調整 

アルコール水準器は,グループIIの方位測定具に取り付けるものとし,そのゼロ位置が1度の許容範囲

内でコンパスの上面ガラス蓋又はバージリングの水平位置を示すように調整されなければならない。調整

ねじの使用を認められる。 

試験は,方位測定具のアルコール水準器と,上面ガラス又はバージリング上に置いた校正されたアルコ

ール水準器との比較によって行ってもよい。 

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24 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

C.2.4 視野及び高度範囲(型式試験だけに適用) 

C.2.4.1 方位測定具の視野は,照準線の両側の水平面において少なくとも5度でなければならない。 

試験は,コンパスカード又はバージリング目盛によって行ってもよい。 

C.2.4.2 方位測定具が適用する高度範囲は,少なくとも次の値でなければならない。 

− グループI:水平線の下方5度から上方30度まで 

− グループII及びIII:水平線の下方5度から上方60度まで 

試験は,測鉛線に付けた角度表示又は照明した垂直スリットを用いて行ってもよい。 

C.2.5 精度 

C.2.5.1 照準器又は望遠式照準器(グループI) 

C.2.5.1.1 のぞき窓の平行度 

対物のぞき窓の垂直方位糸と対眼のぞき窓のスリットとは互いに平行でなければならない。 

試験は,観察で行わなければならない。 

C.2.5.1.2 台座上ののぞき窓の垂直度 

対物及び対眼のぞき窓によって定められる照準面は,それぞれ上面ガラス又はコンパスのバージリング

に垂直でなければならない。加えて,照準面は,方位測定具の回転軸を通らなければならず,バージリン

グ目盛上の船首に対する方位の指標表示と同様に,カード方位用の水平方位糸を含まなければならない。 

ベーンの垂直度の試験は,測鉛線又は照明した垂直スリットを見ること,及び目盛上の方位を読み取る

ことによって行ってもよい。次に,照準器は,正確に180度回転するものとし,それを通して再び反対方

向で見るものでなければならない。目標がベーンと平行を保っており,照準面上にある場合,のぞき窓は

回転面に垂直であり,同時に,照準面が回転軸を通ることが確認される。 

注記 目盛中心が回転軸に正確に位置する(偏心度0.1 mm未満)ことがこの試験に必要なため,こ

の試験は全ての形式の方位測定具に適した装置をもつ特殊な試験台の上で行うことができる。 

C.2.5.1.3 観察鏡の取付け及び調整 

高度の高い物体の方位を知るために使用される鏡(取り付けられている場合)は,表C.2に示す許容範

囲内におけるいかなる位置でも,反射平面が照準面に平行になるように取り付けられ調整されるものでな

ければならない。鏡が両面式の場合,それぞれ二つの鏡面は,これらの要件を満たさなければならない。

調整(修正)ねじの使用を認める。 

試験は,観察で行わなければならない。鏡が傾いている場合,垂直方位糸とその鏡像とは一致したまま

でなければならない。 

C.2.5.1.4 鏡及び遮光器のひずみの自由度 

遮光器の有無にかかわらず,方位誤差は,表C.1に示す値を超えてはならない。 

表C.1−方位誤差(水平線上の方位との差) 

観測物標の高度 

最大許容誤差 

水平線の下方5度から上方30度まで 

0.3度 

水平線の上方30度以上 

0.5度 

C.2.5.1.5 プリズム拡大鏡(ある場合) 

プリズム拡大鏡を用いてカード方位を読み取る場合,読み取りの値は,水平方位糸の読取値と0.3度以

上異なってはならない。 

試験は,検査によって行わなければならない。 

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25 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

C.2.5.2 トムソン形などの方位鏡又はプリズム計器(グループ II) 

C.2.5.2.1 構造 

グループIIの方位測定具には,次の四つのタイプの誤差があると思われる。 

a) 不適切な倍率の視準レンズ,又はコンパスカードの目盛縁から間違った距離に置かれている。 

b) 照準線に対してプリズムの軸が直角ではない。 

c) コンパスの上面ガラスの平面に対してプリズムの軸が平行でない。 

d) 遮光器が光学的に平らではない。 

C.2.5.2.2 レンズの焦点距離 

視準レンズの焦点距離は,コンパスカード半径の1.12倍とし,カード縁の目盛からその距離を離して置

かなければならない。 

次の二つの方法によってこれを確認できる。 

a) 遠方物標を正確に狙う。次に,物標が片方の視野に現れ,その後もう片方に現れるように,観測者の

頭を動かす。読取り誤差は,表C.2の条件a)の値を超えてはならない。 

b) 遠方物標を正確に狙う。観測者の頭は静止した状態を保ち,方位鏡は最初に片方に5度回転させ,次

にもう片方に5度回転させる。生じた誤差は,表C.2の条件b)の値を超えてはならない。 

表C.2−方位精度 

観測物標の高度 

最大許容誤差 

条件a) 

条件 b) 

水平線の下方5度から上方40度まで 

0.3度 

1.0度 

水平線の上方40度から50度まで 

0.3度 

1.5度 

水平線の上方27度 

0.3度 

0.5度 

C.2.5.2.3 機械的な不正確さによる誤差 

C.2.5.2.3.1 照準線に対して直角ではないプリズム軸 

遠方物標の方位は,誤差が分かっている平面照準器又はその他の器具を用いてはかる。これと方位鏡に

よる方位の差を比較し,表C.2の条件a)に示す値を超えてはならない。 

C.2.5.2.3.2 コンパス上面ガラスの平面と平行ではないプリズム軸 

コンパスは,上面ガラスが水平になるように置く。程よい距離(2 m以上)の測鉛線に正確に照準を合

わせる。プリズムは軸の周りを回転する。方位の変化は,表C.2の条件b) に示す値を超えてはならない。 

C.2.5.2.4 カード直径 

コンパスのカード直径は,証明書に記載しなければならない(C.3参照)。 

C.2.5.2.5 方位鏡の遮光器における誤差 

2 m以上離れた遠方光を,プリズムによってコンパスカード目盛上に導く。次に,遮光器を照準線に置

く。いずれの位置でも,照準線を大きく変更してはならない。 

プリズム下の調整ねじを認める。 

C.2.5.2.6 水準器 

水準器を備えている方位測定具が1度傾く場合,この傾斜を認めなければならない(6.3参照)。 

C.2.6 シャドー・ピン(ある場合) 

遠距離にある光で影を作らせ,コンパス及びピンの両方を回転させて垂直度及び心出し度を目視で検査

しなければならない。 

26 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

C.2.7 方位盤 

a) A2形ビナクルのある船が方位盤を備えている場合,C.2.5.1のように精度を検査できる。 

b) ジンバル内の方位盤の動きの自由度は,コンパスボウルの予期したものと等しい(すなわち,40度)

ものとする。 

c) 目盛の方位誤差の差は,0.5度を超えないものとする。 

C.3 試験証明書 

方位測定具の試験証明書は,次のとおり。 

27 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

方位測定具の証明書 

[試験所名] 

このJISに準拠した方位測定具の証明書 

型式試験 

*) No.:  ...................................................................  

個別試験 

製造業者名:  ........................................................................................................................................................  

この試験は方位測定具 

グループ I 

*) に適用する。 

グループ II 

グループ III 

形式:  ....................................................................................................................................................................  

シリアルNo.: ......................................................................................................................................................  

(グループI及びIIは適切なコンパスに供給されるものとする。) 

供給コンパス: 

名称:  ....................................................................................................................................................................  

シリアルNo.: ......................................................................................................................................................  

形式:  ....................................................................................................................................................................  

ボウル直径: ..........................................................................................................................................................  

上記付番方位測定具は,[上記付番コンパスと併せて+)]検査されており,このJISに準拠していることが

分かっている。 

見つかった誤差は次のとおり。 

 高度 

補正(度) 

−5度 

 ..............................  

0度 

 ..............................  

 +10度 

 ..............................  

 +20度 

 ..............................  

 +30度 

 ..............................  

 +40度 

 ..............................  

 +50度 

 ..............................  

製造業者又はその代表者の署名:  ......................................................................................................................  

発行場所:  ............................................................................................................................................................  

国:  .......................................................................................................................................................................  

日付:  ....................................................................................................................................................................  

 ̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲  

*) 必要に応じ,削除する。 

+) グループIIIの器具の場合,コンパスへの言及は不要。 

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28 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書D 
(規定) 

ビナクルの型式試験及び証明 

D.1 概要 

ビナクルは通常の出荷の前に,型式試験を行わなければならない。各ビナクルは,磁気コンパス,方位

測定具,修正装置及び方位発信装置(取り付けられている場合)を備えなければならない。ビナクル及び

修正具の個別の試験は不要である。 

型式試験は新しい装置にだけ行う。 

磁気コンパス及びビナクルは,表D.1に示すように組み合わせて使用する。 

表D.1−ビナクルの形式 

磁気コンパス 

ビナクル 

クラスA 

A1形 

A2形 

クラスB 

A1形 

A2形 

D.1.1 試験するビナクル及び修正装置 

型式試験は全てのビナクル及び修正装置について行わなければならない。これらには,投影式,反映式

又は方位発信形コンパス用のビナクルが含まれている。 

試験するビナクルには,次の二つの形式がある。 

A1形:甲板取付け面の下面からコンパスの指北装置の磁針までの高さが1 m以上の設計のビナクル。 

A2形:A1形ビナクルが不適切な場合に用いてもよいビナクル。ビナクルの高さは定められていない。 

これらの二つの形式において,要件又は試験方法が異なっている場合,A1とA2とは別々に試験方法を

規定する。 

A2形ビナクルは,四分円差修正装置なし,フリンダースバーなしで供給してもよいが,これらの修正具

の取付けに関する規定がある場合,型式承認用にビナクルを提出するときに,両方を備えていなければな

らない。 

D.1.2 ビナクルの製造業者の宣誓書 

製造業者は,型式試験中に確認できない要件を網羅した書面の宣誓書を作成しなければならない。この

宣誓書は,次の点を含むものとする。 

a) 指北装置の磁針の中央平面と供給されるコンパスの中心のジンバル軸受との間の垂直距離。 

b) 修正装置(必要に応じて,コンパスの方位発信装置の一部)を除き,ビナクル及び取付け部品が非磁

性材でなければならない。 

c) 天然木材をビナクルの外面に用いる場合,それは乾燥した熱帯堅木でなければならない(例 チーク)。

ビナクルにおけるその他の木は,乾燥堅木又は海洋合板でなければならない。木以外の材料が用いら

れている場合,その特性を記載しなければならない。 

d) 全ての材料が十分な強度をもたなければならない。 

e) 修正用磁石の保磁力 

f) 

誘導磁界の修正に使用される材料は,高透磁率,低保磁力及び無視できる残留磁気のもの。 

g) 木製部分が接着剤だけで接合されている場合,用いている接着剤の種類。 

29 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

D.2 ビナクル 

D.2.1 構造及び材料 

D.2.1.1 寸法 

A1形ビナクルでは,甲板取付け面の下面からコンパスの指北装置の磁針までの高さが少なくとも1 mで

なければならない。 

D.2.1.2 非磁性特性 

製造業者が保証を宣言しているので,サンプル確認だけ必要である。 

D.2.2 コンパスの支持 

D.2.2.1 外側ジンバル軸 

軸は,ビナクルの船首尾線から0.5度以内になければならない。 

D.2.2.2 支持器の傾斜 

クラスAコンパスの場合には,ビナクルがどの方向に40度傾いても,クラスBコンパスの場合には,

ビナクルがどの方向に30度傾いても,バージリングが2度以内で水平を保つものとし,試験結果は,4.2.1

の要件を満さなければならない。 

支持に横方向の遊びがないか又は無視し得る場合,これは,ビナクルの水平を保っている間にコンパス

ボウルを傾け,傾斜計で角度をはかることによって試験できる。 

磁気コンパスが弾力的な懸垂方法で取り付けられているか,又はばねで制御されている場合,ビナクル

を傾け,磁気コンパスを水平に保つ必要がある。この測定は,方位測定具,その他の取付け具が所定の位

置にある場合とない場合の両方で行う必要がある。 

この測定は,方位測定具又は他の附属装置(例えば,拡大鏡又はフラックスゲート)を付けた場合と付

けない場合の両方でしなければならない。 

D.2.2.3 移動に対する注意 

磁気コンパスは,海上又は天候がいかなる状態であっても移動しないように固定しなければならない。

この固定は,D.2.2.2の範囲内におけるコンパスの自由な動きを損なってはならない。 

D.2.2.4 ジンバルとコンパス軸との摩擦 

コンパスボウルをいずれかの方向に5度傾けて放したとき,水平面の2度以内に戻らなければならない。 

この測定は,適切な水準器を用いて行い,方位測定具及び時折所定の位置に取り付けられる附属品のあ

る場合とない場合の両方で行う必要がある。 

D.2.2.5 外側ジンバル軸の軸受の遊び 

外側ジンバル軸は,船首尾線方向に0.5 mmを超えて軸受内を動いてはならない。 

隙間ゲージを用いて測定を行ってもよい。 

D.2.2.6 ばねを備えたコンパスの支持 

D.2.2.6.1 コンパスボウル及びジンバルの水平移動 

ボウル及びジンバルの水平移動は,いずれの方向にも通常位置から5 mmを超えてはならない。 

この測定は,ビナクル内側縁を基準として使用し,ゲージ又は物差しで行ってもよい。 

D.2.2.6.2 方位測定具の影響 

方位測定具の質量によって生じるコンパスボウル中心の垂直変位は,3 mmを超えてはならない。 

測定は,適切な水平面を基準として使用し,ゲージ又は物差しで行ってもよい。 

D.2.3 不整列修正装置 

D.2.3.1 ビナクルにある船首尾線マークは,船首尾線ジンバル軸受の軸と,表D.2の値内で同一垂直面に

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

なければならない。 

表D.2−船首尾線マークの精度 

磁気コンパス 

船首尾線マークの精度 

クラスA 

0.5度 

クラスB 

1度 

試験は,測鉛線を活用し,ビナクル内のコンパスによって行ってもよい。 

D.2.3.2 A1形ビナクルでは,4度〜6度の角度でビナクルを回転させることによって,船の船首尾線に対

する不整列な対策をとるものでなければならない。A2形ビナクルではこの要件が必須ではない。ビナクル

内のコンパスによって試験を行ってもよい。 

D.2.3.3 投影された像から読み取る針路は,主船首指標から0.5度以内で読み取る針路と一致しなければ

ならない。 

D.2.4 修正装置,表示,保磁力及び固定[A1形ビナクル,及びA2形ビナクル(備えている場合)] 

修正用磁石は,指北端を赤く表示し,少なくとも11 200 A/mの保磁力をもたなければならない。 

修正装置の全ての取付け部品は,ビナクルにしっかりと結合され,海水及び天候に対して十分保護され

なければならない。 

いかなるときでも修正装置の位置を示す適切な装置(例えば,物差し)を備えていなければならない。

水平修正用磁石に使用する穴又は溝に番号を付けるものとし,番号は下から上に読めなければならない

(A1形ビナクルだけに適用)。 

許可されていない者の接近及び意図的でない移動に対してビナクルの修正装置を保護する対策が取られ

ていなければならない。 

試験は,目視によって行わなければならない。 

D.2.4.1 傾船差修正用磁石 

傾船差用磁石は,指北装置の磁針の位置に−75 µTから+75 µTの範囲にわたって垂直磁界を与えること

ができなければならない。 

これは,垂直力測定器又はその他の磁力計を使用することによって,又は磁気モーメントを測定し磁場

強度を計算することによって確認できる。 

適切な特殊装置を備えている場合を除き,垂直磁気の影響を修正するために一つ以上の傾船差用磁石を

備えている管を,ビナクル縦軸のコンパスボウル下の中心に取り付けなければならない。数個の傾船差用

磁石が取り付けられている場合,軸の周りに磁石を対称に配置できるようにケーシングを組み立てなけれ

ばならない。傾船差用磁石及び傾船差用磁石の保持具は,何らかの適切な手段によってそれぞれ所定の位

置に安全に固定できなければならない。A1形ビナクルにおいては,修正用磁石の上端と指北装置の磁針と

の間の距離は,修正用磁石の長さの2倍以下にならないように対策を取らなければならない。 

A2形ビナクルでは,正確な寸法は必要ないが,指北装置への影響は好ましくない。とりわけ,どの針路

においても,15度の横傾斜又は縦傾斜に対して,(80/H) 度を超える偏角を与えるほど磁界を乱さないよう

に,この修正用磁石が指北装置に近づかない対策を取らなければならない(ここでのHは,4.3.4で定義し

たもの。)。 

A1形ビナクルの場合,検査によって試験を行うものとする。 

より小さいA2形ビナクルの場合,指北要素の近くの垂直磁場を変更する手段を提供する必要がある場

合がある。このようにして生じた磁場は,傾船差用磁石によって修正され,ビナクルは15度傾く。結果と

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

して生じる自差は,(80/H) 度を超えてはならない。 

D.2.4.2 水平修正用磁石の取付け 

D.2.4.2.1 挿入方向の誤差 

船首尾線方向及び左右舷方向の修正用磁石は,外側ジンバル軸又はその直角方向からそれぞれ2度以内

とし,水平面の2度以内でなければならない。 

D.2.4.2.2 位置の誤差 

船首尾線及び横方向の修正用磁石の穴又は溝は,従来形の場合,該当する磁石の中点がそれぞれ左右舷

及び前後ジンバル軸を通る垂直面の5 mm以内に取り付けられなければならない。 

注記 D.2.4.2.1及びD.2.4.2.2で必要な試験は,水準器を用いて行うことができ,ジンバル軸を通る垂

直面を距離測定の可能な測鉛線で表すような方法で行うことができる。 

D.2.4.2.3 水平修正用磁石の指北装置からの最小距離及びその強度 

ビナクルには,船の永久的な磁気の水平成分による自差を修正するための装置がなければならない。 

装置は少なくとも(720/H) 度までの係数Bと,係数Cとを修正できなければならない(ここでのHは,

4.3.4で定義したもの。)。 

A1形ビナクルでは,水平修正用磁石の穴及び溝は,コンパスの指北装置が従来形であり,棒磁石又は環

状磁石から成る場合に,指北装置の磁針から修正装置の磁石の長さの2倍より近くならないように,ビナ

クルに取り付けられなければならない。 

A2形ビナクルでは,指北装置に対する修正用磁石の近接に関する正確な寸法は必要ないが,どの針路に

おいても,15度の横傾斜又は縦傾斜に対して,磁界を乱して(40/H) 度を超える偏角を与えるほど,指北装

置にこの修正用磁石が近づかないように対策を取らなければならない。 

修正用磁石で修正できる自差の量は,横方向に最大数の修正用磁石を置き,修正台に置かれたビナクル

に磁気コンパスを取り付けて,北又は南に向けることによって,測定できる。修正台の向きと磁北又は磁

南との角度差は,磁石の修正力を示す。これは,船首尾線磁石を用いて東と西とで繰り返す必要がある。 

A1形ビナクルの指北装置から磁石までの距離を,測定しなければならない。 

A2形ビナクルでは,磁気コンパスをビナクルに入れて試験台に置き,北又は南に合わせる。指北装置の

近くで適度に均一な磁場を生じさせるような十分離れたところにある外部磁力は,(720/H) 度の自差を得

るまで適用される。次に,この自差はビナクルの磁石によって修正される。ビナクルは15度傾けて,結果

として生じる自差は,(40/H) 度を超えてはならない。 

東と西とで繰り返す。 

D.2.4.3 四分円差修正装置の取付け 

A1形ビナクルの場合,四分円差修正装置は最大10度の自差を修正することができなければならない。 

A2形ビナクルの場合,四分円差修正装置が供給されていれば,最大7度の自差を修正することができな

ければならない。 

いずれの場合も,ビナクル軸が垂直であれば,修正装置の中心は,指北装置の磁針の中心を通る,水平

面から15 mm以内になければならない。 

いずれの場合も,修正具の軸は,横ジンバル軸方向から2度以内のビナクル直径に沿った軸方向に動け

るように取り付けなければならない。 

カード又はバージリングの目盛を用いて整列誤差を確認できる。 

修正具が所定の位置にあるなしにかかわらず,四分円針路の試験台にコンパス及びビナクルを置くこと

によって,修正可能な自差の量を確認できる。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

指北装置に対する修正具の高さは,内側ジンバル軸と修正具中心との距離を測定し,製造業者が提供す

る情報を適用することによって,確認できる。結果は,5.1.2.4の要件を満たさなければならない。 

D.2.4.4 フリンダースバー 

A1形ビナクルは,5.1.2.5の要件を満たすフリンダースバーを備えていなければならない。A2形ビナク

ルは,5.2.2.5の要件を満たすフリンダースバーを備えてもよい。 

D.2.4.4.1 フリンダースバーの縦軸とコンパス中心を結ぶ線は,船首尾線ジンバル軸の方向から2度以内

でなければならない。 

D.2.4.4.2 棒の上端は,指北装置の磁針の中心を通る水平面より,自身の長さの1/12(公差±10 mm)で

なければならない。中空のフリンダースバーを使用する場合,穴の直径はバーの直径の40 %を超えてはな

らない。 

D.2.5 補償コイル 

D.2.5.1 船が消磁コイルを備えている場合,これによって生じる自差を修正するための補償コイルを取り

付けてもよい。 

D.2.6 照明 

ビナクルは,船の電気供給及び非常時の光源によってカードを照らすための適切な手段を備えていなけ

ればならない。投影式及び反映式ビナクルでは,操舵員の位置で鮮明な映像を提供できなければならない。

操舵員の位置及びビナクルの両方で照明を薄暗くするための機器を備えていなければならない。 

D.2.6.1 ランプ,プラグ,ソケット,スイッチ,光度加減器及び配線の磁気的影響 

通電の有無に関係なく,ランプ,プラグ,ソケット,スイッチ,光度加減器及び配線は,いかなる船首

方位においても知覚可能な磁気的影響をコンパスに与えてはならない。 

試験は,検査で行うことができ,5.1.4又は5.2.4のいずれか該当する要件を満たさなければならない。 

D.2.6.2 反映式及び投影式コンパスの読みやすさ 

反映式又は投影式コンパスでは,昼光によっても人工光によっても,正常な視力の人が,ペリスコープ

筒から1 mの距離において,船首指標,及び船首指標の両側それぞれ15度のカードの範囲にわたって読

み取ることができるような光学装置でなければならない。 

D.3 試験証明書 

ビナクルの試験証明書は,次のとおり。 

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F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ビナクルの型式試験証明書 

[試験所名] 

型式試験証明書No.:  ..........................................................................................................................................  

ビナクル 

A1級 

*) このJISに準拠。 

A2級 

製造業者名:  ........................................................................................................................................................  

名称:  ....................................................................................................................................................................  

シリアルNo.: ......................................................................................................................................................  

製造業者の宣誓書及び署名を,次に記載する。 

このビナクルは,次のコンパスで検査した。 

No.:  ......................................................................................................................................................................  

型式試験No.: ......................................................................................................................................................  

このJISに準拠している。 

製造業者又はその代表者の署名:  ......................................................................................................................  

発行場所:  ............................................................................................................................................................  

国:  .......................................................................................................................................................................  

日付:  ....................................................................................................................................................................  

 ̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲̲  

*) 必要に応じ,削除する。 

34 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

製造業者又は輸入業者の宣誓書 

a) 指北装置の磁針の中央平面と供給したコンパスのジンバル軸受中心との間の垂直距離は ...... mmであ

る。 

b) 補正磁石(及びコンパス送信システムの適切なある部分)を除き,ビナクル及び附属品には磁性材を

用いていない。 

c) 天然木がビナクルの外面に使用されている場合,それは乾燥熱帯広葉樹である(例 チーク)。 

ビナクルにおけるその他の木は,乾燥硬材又は海洋合板である。 

木以外の材料が使用されている場合,その特性は次のとおり: ...............................................................  

 .........................................................................................................................................................................  

 .........................................................................................................................................................................  

d) 全ての材料が十分な強度をもっている。 

e) 磁石の保磁力は .............................................................................. A/mである。 

f) 

誘導磁界の補正に使用される材料は,高透磁率,低保磁力及びごく僅かな残留磁気をもっている。 

g) ビナクルの木製部分が接着剤だけで接合されている場合,接着剤は ................................... である。 

署名:...................................................................... 

日付:...................................................................... 

会社印: 

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F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書E 

(規定) 

磁気コンパスの船内取付け位置 

E.1 

概要 

この附属書は,この規格に規定する要件に従い,磁気コンパス及びビナクルの船上設置要件を規定する。 

また,この附属書は,航法援助に使用される磁気制御素子を対象としている。 

 D 最小距離(m) 

船の全長(m) 

標準磁気コンパスを 

備えている船 

漁船及び制限業務用に 

設計された船 

連続した固定磁性材(水平甲板を除く。) 

壁・パーティション・隔壁の上端,フレームの先端,桁,支柱,
はり,柱及び同様の鋼製部品などの固定磁性材の末端部。ダビッ
ト,換気装置,スチールドアなどの海上で動くことのある磁性材。 
 
煙突などの可変磁界をもつ大きな磁性材。 

注記1 “煙突”は,加熱しやすい排煙管又は排気管の一部と理解されている。煙突ケーシングは,固定磁性材と

みなすことができる。 

注記2 操舵コンパス及びその他のコンパスからの最小距離(E.3.2)については,E.4参照。 

図E.1−標準磁気コンパスからの最小距離 

E.2 

概要 

E.2.1 コンパス位置 

正常な航海のため,磁気コンパスに要求される精度を考慮して磁性材からの磁気コンパスの最小距離の

仕様を規定する。 

磁気コンパスは,船の中心に置かなければならない。特殊な場合だけ,この要件から逸脱が容認できる。 

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F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

E.2.2 安全距離 

磁気装置及び電装品には,磁気コンパスからの安全距離が必要である。安全距離は,磁気コンパスに影

響して自差を生じさせる磁場を除去又は大きく減少させるために,これらの項目のいずれかに必要と思わ

れる最小距離として定義されている。 

E.2.3 磁気コンパスの精度 

磁気コンパスの信頼性及び精度は,船内の位置及びその位置に関連した磁気装置と電装品との近さに大

きく依存している。しかしながら,磁気コンパスが果たさなければならない機能及び磁気コンパスを設置

した船の全長によって,様々な程度の信頼性及び精度が許容されている。 

E.2.4 磁気コンパスの機能 

E.2.4.1 磁気コンパスは,船内で果たすべき機能によって分類される。標準磁気コンパスの機能に関する

次の記載は,船内に一つ以上のジャイロコンパスを取り付ける可能性を考慮に入れていない。ジャイロコ

ンパスの取付けは,船舶を操舵する第一の手段である船の標準磁気コンパスから予期される精度を何らか

の方法で低下させる理由とみなしてはならない。 

E.2.4.2 標準磁気コンパスは,船を通常操舵する場所の近くに置くものとし,方位をはかるために,この

位置からの水平線の視野を可能な限り遮らないようにしなければならない。両側に115度開く範囲におい

て,マスト,デリックポスト,クレーン及び同様の障害物以外が水平線の視野を遮ってはならない。 

E.2.4.3 操舵室の上端に位置する標準磁気コンパスは,投影式又は反映式とする。主要な操舵位置におい

て操舵員が明確に読み取ることのできる船首情報を提供し,操舵磁気コンパスとしての機能も果たす。 

E.2.4.4 予備操舵磁気コンパスの例は,標準磁気コンパスの反映式又は投影式画像を入手できる船の操舵

室に取り付けられている,主に操舵に使用される操舵磁気コンパスである。 

非常用磁気コンパスは,他の全ての手段が損傷又は故障した後に船を操舵する目的のために取り付けら

れている。 

E.3 

船の構造に関する最小距離要件 

E.3.1 図E.1に示すように,船の構造の一部とみなしてよい磁性材の最小距離要件を満たすように標準磁

気コンパスを置かなければならない。磁気コンパスの近くであっても最小距離を超える場所にある磁性材

(図E.1参照)は,磁気コンパスに対して対称的に配置する必要がある。 

標準磁気コンパスについては,図E.1に従ってその他の最小距離が保たれている場合,磁気コンパスの

下の甲板からの距離は,1 mまで短くしてもよい。 

船内に1台の磁気コンパスだけが設置されている場合,この磁気コンパスは,この附属書の標準磁気コ

ンパス用の最小距離及び安全距離の要件を満たさなければならない。 

これらの距離は最小許容距離であり,船の大部分において満足できるものにする必要があることを強調

しておく。ただし,磁気コンパス近くの多量な鉄によって磁気コンパスが十分機能しないなどの特殊なケ

ースが生じることがあり,そのような場合は,やむを得ず距離を長くする必要がある。 

E.3.2 操舵磁気コンパスについては,標準磁気コンパスに必要な最小距離を65 %まで減じてもよい。 

操舵磁気コンパスについては,鉄の甲板,隔壁及び桁の先端からの距離が標準磁気コンパスに必要な距

離の65 %以上であれば,磁気コンパスの下の甲板からの距離を1.0 mまで短くしてもよい。 

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 D 最小距離(m) 

船の全長(m) 

操舵磁気コンパスを 

備えている船 

漁船及び制限業務用に

設計された船 

連続した固定磁性材(水平甲板を除く。) 

壁・パーティション・隔壁の上端,フレームの先端,桁,支柱,
はり,柱及び同様の鋼製部品などの固定磁性材の末端部。ダビッ
ト,換気装置,スチールドアなどの海上で動くことのある磁性材。 
 
煙突などの可変磁界をもつ大きな磁性材。 

注記 “煙突”は,加熱しやすい排煙管又は排気管の一部と理解されている。煙突ケーシングは,固定磁性材とみ

なすことができる。 

図E.2−操舵磁気コンパスからの最小距離 

E.3.3 操舵予備磁気コンパス及び磁気制御素子については,距離が1 m以上であれば,標準磁気コンパス

に必要な距離の50 %まで減じてもよい。 

E.3.4 非常用磁気コンパスについては(取り付けられている場合),最小距離は1 mである。 

E.3.5 船体構造に永久的に固定されている品目は,船体の一部として扱わなければならない。 

E.3.6 操舵磁気コンパス近くの可動磁気部分(例 操舵装置)は,当該コンパスの指示に影響を与えては

ならない。 

E.3.7 磁性材で完全に構成されている操舵室に標準磁気コンパス及び操舵磁気コンパスを置いてはなら

ない。操舵室の一部が磁性材で構成されている場合,磁気部分は磁気コンパスに対して対称的に配置され

なければならない。 

E.4 

磁気的,電気的装置及び電線からの安全距離要件 

E.4.1 磁気コンパス近くの磁気的,電気的装置及び直流が流れている電線は,そのコンパスに自差を生じ

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させる可能性がある。 

E.4.1.1 装置の品目の取外し又は交換によって有害な自差を導かないように,当該品目を安全距離よりも

磁気コンパスに近づけて置いてはならない。 

いずれの品目の安全距離も,附属書Fに記載した方法で測定されなければならない。 

磁気コンパス近くのクリップ,その他の部品は非磁性材でなければならない。 

E.4.1.2 磁気コンパスの5 m以内で直流を流す電気配線(コンパス修正に使用するコイルを除く。)は,

二つの逆方向電流で発生する磁場が互いに相殺するように,双極形に配置されなければならない。 

E.4.2 磁気的及び電気的装置の製造業者は,磁気コンパスの近くに置かれるような装置の安全距離を,附

属書Fに記載した方法によって準備しておかなければならない。製造業者は,携帯用機器の各品目に安全

距離を表示しなければならない。 

固定装置については,製造業者は,装置に安全距離を表示するか,又は装置マニュアルに安全距離を定

めてもよい。 

E.4.3 安全距離が分からない品目は,標準磁気コンパス及び操舵磁気コンパスの5 m以内に置いてはなら

ない。ただし,制限業務用に設計された船の標準磁気コンパス及び操舵磁気コンパスに対しては,この距

離は3 mまで減じてもよい。 

E.4.4 レーダセットのような装置の大きな品目の安全距離を決定する場合,容易に交換できる品目と,そ

の交換にかなりの作業量を伴うことになる大質量の品目とを区別することが許される場合もある。そのよ

うな場合,容易に交換できる品目の安全距離は,磁気コンパスに目立つような影響を及ぼすことなく取外

し又は交換ができるようにE.4.1.1に従って決定する。大質量のものから成る装置の残りは,船の構造の一

部として扱い(E.3.5参照),取外し又は交換を行った場合,影響を受けた磁気コンパスを再修正しなけれ

ばならない。 

E.4.5 磁気コンパスは,別の磁気コンパス又は磁気制御センサの2 m以内に置いてはならない。全長60 m

未満の船は,この距離を1.8 mまで短くしてもよい。 

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附属書F 

(規定) 

安全距離の決定 

機器の品目の安全距離は,次に説明する方法で決定しなければならない。品目がこの方法に適している

場合,磁気コンパスに生じる誤差が最大となるように磁気コンパス又は磁力計に対する位置及び姿勢にお

いて各品目を試験する。 

各品目の安全距離は,磁気コンパス又は磁力計の中心と品目と間で,自差を生じない最も近い距離とし

て定義されている。 

− 標準磁気コンパスにおいては(5.4/H) 度を超える。 

− 操舵磁気コンパスにおいては(18/H) 度を超える。 

ここで,Hは試験場所における磁束密度の水平成分(µT) 

各品目を次のとおりに試験する。 

a) それが受ける磁気的状態に置き, 

b) 18×(1 000/4π) A/m r.m.s.の安定した50 Hzの交流磁界を重畳し,1×(1 000/4π) A/m直流磁界での磁化

後,被試験装置の損傷が生じる可能性のある場合は,安定磁界を省略できる。 

注記 観察又は図面から推定して,この磁界の方向は,結果として生じる磁化が最大となる方向に

する(例 強磁性箱の長軸)。 

c) 品目が通電可能な場合,通電条件下 

これら全ての試験から得た中で最も長い距離が安全距離である。 

得た値は,50 mm又は100 mmに切り上げる。 

制限業務用に設計された船の安全距離は,上記の値の60 %に減じてもよい。 

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附属書G 
(規定) 

磁気コンパス自差の修正 

G.1 

概要 

適切に調整された磁気コンパスの残存自差は,全長82.5 m以上の船舶では3度以内,82.5 m未満の船舶

では4度以内とする。安全航行するための精度は,2度以内でなければならない。 

G.2 

コンパスの修正時期 

磁気コンパスは,次の場合に修正する必要がある。 

a) 最初の設置時 

b) 信頼できなくなったとき 

c) 永久磁気及び/又は誘導磁気に影響する可能性のある船舶の修理又は構造的改造を行ったとき 

d) 磁気コンパス近くの電気装置又は磁気装置を追加,除去又は変更したとき 

e) 記録自差が過度なとき,又は磁気コンパスに物理的損傷があるとき 

f) 

航行の安全のために船長が必要と判断したそのとき 

全ての磁気コンパスは,最低限次の頻度で測定及び修正しなければならない。 

− 2年ごと 

− 乾ドック後 

− かなりの構造の工事 

G.3 

磁気コンパス修正者 

修正は,資格のある磁気コンパス修正者又は船長が行わなければならない。 

G.4 

フリンダースバーによる修正 

当該修正は,その船が航海するかもしれないあらゆる磁気緯度に対する修正を含まなければならない。

そのため,新造から2回目の定期的な自差測定修正の後,いかなる緯度変化後の残存自差は5度を超えて

はならない。 

G.5 

船首方位を真船首方位に修正する手段 

船首方位を真船首方位に修正する手段を常に備えていなければならない。 

例を挙げると,これらの手段には,残存自差の表又は曲線,及び磁気偏差情報が含まれる。 

G.6 

修正の種類 

修正は,次のことによって生じる半円差及び四分円差自差のため行わなければならない。 

a) 船の永久磁気の水平成分 

b) 傾船差 

c) 誘導水平磁気の水平成分 

d) それぞれ適切な装置を用いている誘導垂直磁気の水平成分 

41 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

G.7 

自差表又は曲線 

各磁気コンパスは適切に修正され,その残存自差の表又は曲線は,常にコンパスの表示装置近くの船上

で利用できなければならない。 

42 

F 9101:2015 (ISO 25862:2009) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書H 
(規定) 

救命艇/救助艇用磁気コンパスの要件 

H.1 概要 

この附属書は,救命艇/救助艇用磁気コンパスの特殊要件を規定する。 

H.2 救命艇/救助艇用磁気コンパスの要件 

救命艇/救助艇用磁気コンパスは,この規格に規定するクラスB磁気コンパスの要件を満たし,かつ,

H.2.1〜H.2.3に示す要件を満たさなければならない。 

H.2.1 カードの直径 

A2形ビナクル用のコンパスカードの直径は,70 mm以上でなければならない。4.4.2の要件は,適用さ

れない。 

H.2.2 船首指標の幅 

船首指標の幅は,カードスケール幅の1/4か,又はそれ以下でなければならない。B.3.5.3の要件は,適

用されない。 

試験は,目視検査によって行ってもよい。 

H.2.3 磁気コンパスの環境条件試験 

JIS F 0812に従い,救命艇/救助艇内で使用するコンパスは,次の条件下で検査されなければならない。 

− 高温乾燥 

− 高温高湿 

− 低温 

− 振動 

− 日射 

− 腐食