F 9001
:2004
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法第 14 条によって準用する第 12 条第 1 項の規定に基づき,財団法人 日本船
舶標準協会(JMSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準
調査会の審議を経て,国土交通大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS F 9001:1996 は改正され,この規格に置き換えられる。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
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:2004
(2)
目 次
ページ
1.
適用範囲
1
2.
引用規格
1
3.
定義
1
4.
情報システムの構成
1
4.1
情報システムの構成図
1
4.2
情報システムの構成要素
2
5.
情報システムの構成
3
5.1
機能一般
3
5.2
表示機能
3
5.3
警報機能
3
5.4
操作機能
3
5.5
印字機能
4
5.6
通信機能
4
5.7
自己診断機能
4
5.8
信頼性及び保全性
4
5.9
電源
4
5.10
耐環境性
4
日本工業規格
JIS
F
9001
:2004
船内総合情報システム設計通則
Shipbuilding - Integrated information systems - General specifications
1.
適用範囲 この規格は,船内総合情報システム(以下,情報システムという。)を設計する場合の一般
事項について規定する。
ここで船内総合情報システムとは,少人数で運航する船舶の経済的,かつ,安全な運航に寄与するこ
とを目的に,船内(外)の必要とするすべての情報を集中し,これらに適切な処理を加え,表示装置などを
用いて乗組員に的確な状況判断ができる情報を迅速に伝達するシステムをいう。
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS F 0412 船舶機関部機器類の警報及び表示の方式
JIS F 0413 船内可聴信号器及び表示灯適用基準
JIS F 0416 船用コンピュータ及び周辺機器−船内環境適用基準
JIS F 0807 船用自動化機器環境試験通則
JIS X 0001 情報処理用語-基本用語
3.
定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS X 0001 によるほか,次による。
a) マン-マシン インタフェース(man-machine interface) 人間と機械とが接触する境界線を意味し,
そこを流れる情報によって人間と機械との対話を可能とする。
情報は,マン-マシン インタフェースにおいて,人間の思考,判断,知覚などに適した形の情報
表現及び人間の操作などと機械内部の情報表現との間で相互に変換される。
この規格では,主として表示装置及びキーボードをマン-マシン インタフェースとして用いる。
なお,音声合成,音声認識などもマン-マシン インタフェースとして考えられる。
b) 常時表示 使用方法の一つであって,主として重要な情報をあらかじめ設定したタイミングで更新し
ながら常時一定内容を表示装置に表示する。
c) 任意表示 使用方法の一つであって,乗組員が必要とする情報を乗組員自身が要求することによって,
その情報を表示装置に表示する。
d) LAN (Local Area Network) 船内のように,ある特定した区域内で,コンピュータ,入出力機器など
を有機的に結び合わせて通信機能を付加することによって,分散処理,情報資源の共有化などを効率
よく行わせるための地域内情報通信網。
4.
情報システムの構成
4.1
情報システムの構成図 情報システムの構成例を図 1 に示す。
2
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T1 T2 T3 T4 TX
図 1. 情報システムの構成例
備考 ここで,図中の記号を,次に示す。
T1,T2,T3,T4,TX : 端末装置 (陸上通信端末などを含む)
VDU :
視覚表示装置
KB
: 操作器
PRT :
印字装置
S
:
サーバ
CPU :
処理装置
○
: ノード
4.2
情報システムの構成要素 情報システムは,構成範囲により異なるが,主として次の要素で構成する。
a) 処理装置(CPU) CPU は,情報システムを構成する機器によってその処理範囲に違いはあるが,いず
れの場合もマイクロプロセッサ,主記憶部,各種コントローラなどに使用する処理装置である。
図 1 のシステム構成図の CPU は,各端末装置ごとにその範囲内を管理,運用する。
b) 端末装置(T1,T2,T3,T4,TX) 端末装置は,マン-マシン インタフェースとして乗組員の直接操
作に
よって必要な情報の表示・印字などを行う。
c)
外部入(出)力インタフェース(I/F) 外部入(出)力インタフェースは,そこに集まった情報を情報源
側の伝送方式に合わせて受け取り,それを情報システム側の要求する情報形式に整合して,CPU へ送
り出す部分である。
なお,図 1 では,情報システム側は,LAN と接続することを前提条件としている。したがって,
この外部入(出)力インタフェースの機能は,LAN の接続部分の機能を意味し,図 1 では端末装置の
CPU の機能の中に含んでいる。
d) 印字装置 (PRT) 印字装置は,情報システムの構成によって,その接続方法,種類,台数などが異な
り,いずれの場合もこれらを構成要素としてもつことを基本とする。
e) サーバ(S) サーバは,ネットワークの管理,ファイルの共通データの管理,共用プリンタの管理など
を行う。
端末台数の少ない場合においては,端末装置がネットワーク管理を行い,サーバ機を省略しても良
VDU
KB
CPU
VDU
KB
CPU
VDU
KB
CPU
VDU
KB
CPU
情報
システム側
情報源側
PRT
M
PRT
M
他のシステム,センサなど
(情 報 源)
他のシステム,
センサなど
(情 報 源)
LAN(Local Area Network)の回線
S
S
VDU
KB
CPU
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い。
また,サーバを介して端末装置だけの各システムの機能を構成する場合には,サーバの 2 重化など
の冗長性を考慮しなければならない。
f) 各種情報源 情報は,各種センサからのアナログ又はデジタル情報,それらをまとめた多重伝送情報,
例えば,故障診断システムのような個別システムからの情報など多種多様であり,また,その伝送方
法も各種ある。これらは,情報システムを構成する上での情報源となる。
5.
情報システムの機能
5.1
機能一般 情報システムの機能は,一般的には,次による。
端末装置の CPU に取り込んだ情報は,情報ごとにあらかじめ設定したタイミングでその内容を更新し
ながら表示,印刷又は記憶する。
備考 情報表示,警報表示などは,その情報伝達手段として,音声合成装置などを用いた音声を表示
と併用してもよい。
5.2
表示機能 各端末装置における表示機能は,少なくとも次の条件を満足するものでなければならない。
a)
表示画面は,円などの図形を描かせたとき極端に不自然とならない程度の細かさであることが望まし
い。
b)
表示装置は,必要に応じ,静電気,磁気,電磁波などの影響による表示のずれなどを打ち消す対策が
講じられなければならない。
c) 表示装置が船橋に装備される場合には,周囲の明るさに対応して十分な輝度調整ができる機能をもた
なければならない。
d) 表示装置の表面は,反射防止の対策が施されなければならない。
5.3
警報機能 端末装置における警報機能を装備する場合は,次による。
a) 警報は,その緊急度によって,次のように優先度を定める。
1) 優先度 A : 非常警報
2) 優先度 B : プライマリ警報
3) 優先度 C : セカンダリ警報
各々の詳細については,JIS F 0413 を参照する。
b) 警報が発生した場合,可聴警報を発するとともに,その警報内容が関係する端末装置に警報の発生を
表示する。
c) 優先度 A の警報は,その警報事項が関係する端末装置に警報内容を強制表示することが望ましい。
d) 優先度 B 及び優先度 C の警報は,その警報事項が関係する端末装置に自動的に警報内容を表示する。
また,表示画面を警報以外の目的で使用している場合は,その目的の表示を打ち切るか新たな画面
を開くことによって表示を可能とする。
e) 警報は,情報源から警報情報として得たものによるほか,情報システムとして,警報のために制限値
を設定することによって発生させることができる。ただし,この設定値は,情報システム全体で共通
である。
なお,この設定値は設定変更しない限り保持できるような対策が,ハードウェア的及びソフトウェ
ア的に講じなければならない。
f) 警報の表示方式は,JIS F 0412 による。
5.4
操作機能 情報システムの主要な操作機能は,次による。
a) 端末装置の操作機能及び表示内容は,その装置自体における操作で切り換えることができ,かつ,直
4
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ちに選択された機能で動作しなければならない。
b) 端末装置には,操作のためにキーボードなどの操作キー又は,同等の装置を設ける。
端末装置における表示内容の選択,警報の確認,制限値の設定,印字指令などの操作は,画面によ
って行うことができる。
c) 情報システムの各装置は,誤操作に対するソフトウェア的及び/又はハードウェア的対策を講じ,誤
操作によって少なくとも暴走したり,システムダウンがあってはならない。
5.5
印字機能 印字装置が印字中であっても,端末装置は,その主機能を中断することなく作動しなけれ
ばならない。
5.6
通信機能 船上の情報を陸上に送信又は陸上よりの情報を受信する手段を講じることができる。
海事通信衛星などの通信手段を用いて,船上のデータ又は陸上のデータを相互に通信する。
5.7
自己診断機能 システム全体に及ぼすサーバなどの重要システムの故障は,自己診断機能によって判
別でき,自動自己診断及び手動自己診断の 2 種類の機能をもつ。
a) 自動自己診断 自動自己診断は,常時行い,異常があるときは,可聴警報を発するとともに,警報表
示及び印字出力する。
なお,ここでいう警報機能は,表示装置への表示のほか専用の表示灯による表示,カード上の発光
ダイオードなどによる表示も含む。
b) 手動自己診断 手動自己診断は,マイクロプロセッサ,RAM など各装置の主要構成要素に対し,そ
の動作確認を行う動作診断及び各種表示灯の表示機能,警報の可視可聴機能などの確認を行う機能診
断を任意に行えるものが望ましい。
なお,この診断中,監視,警報など本来の機能に影響を与えないものでなければならない。
5.8
信頼性及び保全性 情報システムは,その信頼性及び保全性において,少なくとも次の要件を満足し
なければならない。
a) 情報システムは,できる限り一つの故障が他の故障へと拡大しないように,また,万一の故障又は,
過大な負荷(情報)量に対しても情報システムの機能が損なわれる範囲を最小限にとどめるように設
計する。
b) 情報システムは,想定される誤操作及び誤動作による機器又は装置の損傷を防止するための適切な対
策を講じる。
c) サーバなどの重要システムの CPU は,その重要性に応じて,冗長性を考慮したシステム構成とするか,
故障に対して機能の復旧が容易になされるような措置を講じなければならない。
d) サーバの管理は,特定の管理者を設け,記憶媒体の整理などの保守を定期的に行わなければならない。
e) 情報システムに用いる機器,装置類は,入出力端子から侵入するおそれのある過電圧などに対する保
護対策を講じなければならない。
5.9
電源 情報システム構成するサーバなどの重要機器への供給電源は,船内主電源及び非常電源の 2 系
統とし,使用中の供給電源が停止した場合,なるべく短時間で自動的に別系統の電源に切り換えられる。
この無電圧の間で,情報システムの故障を引き起こす場合は,無停電電源装置などの対策を講じなけ
ればならない。
また,警報設定値,トレンドデータ等の加工データ,表示選択条件など重要事項は,システムダウン
によって失われないような対策を講じなければならない
。
5.10
耐環境性 情報システムを構成するサーバなどの重要システムは,JIS F 0807 に規定する環境試験
に耐えるものでなければならない。端末装置などのシステムにおいては,JIS F 0416 と同等の性能をも
5
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たなければならない。