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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

F 6709-1995 

ムアリングウインチ 

Mooring winches 

1. 適用範囲 この規格は,船舶係船用の電動,蒸気,油圧などの電力源をもつムアリングウインチにつ

いて規定する。 

備考1. この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS G 3525 ワイヤロープ 

2. 対応国際規格:ISO 3730 Shipbuilding−Mooring winches 

2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。 

(1) 呼び 呼び巻込み速度を発揮できるドラム荷重に比例する数値(表1参照)。 

(2) 荷重 

(a) ドラム荷重 ドラム上ロープ1層巻きで,呼び巻込み速度で巻き込むとき,ドラム直前で測ったロ

ープ張力の最大値。 

(b) 保持荷重 ドラム上ロープ1層巻きでブレーキ装置により保持することができるロープ張力の最大

値。 

(c) ストール荷重 ドラム上ロープ1層巻きで原動機最大出力トルクでロープを巻き込むとき,ドラム

の回転が止まるロープ張力の最小値。 

(d) リカバリー荷重 自動張力制御時,ムアリングウインチを原動機の最大出力トルク位置にセットし

た状態でドラムが巻込み方向に回転し始めるとき,ドラム上ロープ1層巻きでドラム直前で測った

ロープの張力値。 

(e) レンダリング荷重 自動張力制御時,ムアリングウインチを原動機の最大出力トルク位置にセット

した状態でドラムが巻出し方向に回転し始めるとき,ドラム上ロープ1層巻きでドラム直前で測っ

たロープの張力値。 

備考 リカバリー荷重及びレンダリング荷重は,自動張力制御機構付きムアリングウインチにだけ適

用する。 

(3) 速度 

(a) 呼び巻込み速度(定格速度) ドラム荷重をドラム上ロープ1層巻きで巻き込むときの最大ロープ

速度。 

(b) ライトライン速度 ドラム上ロープ1層巻きで,無視できるほど小さいロープ張力を巻き込むとき

の最大ロープ速度。 

(c) クリープ速度 ドラム上ロープ1層巻きで,ムアリングウインチにドラム荷重を加えた状態で制御

できる最小一様速度。

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F 6709-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(4) 右勝手 図1に示すようにムアリングウインチの駆動源又は制御器側にいる操作者から見て,ドラム

の駆動源(原動機,ドラムの減速歯車装置など)が,ドラムの右側にあるもの。左側にあるものを左

勝手という。 

図1 

3. 基本仕様 

3.1 

ムアリングウインチの仕様 ムアリングウインチの仕様は,表1のとおりとする。 

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3

F

 6

7

0

9

-1

9

9

5

  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表1 

呼び 

ドラム荷重 

呼び巻込

み速度 

ライトラ
イン速度 

クリープ 

速度 

ロープ 

保持荷重 

リカバリー 

荷重 

レンダリング 

荷重 

主ドラム及びワーピ

ングエンドの直径 

ロープ巻取り長さ 

直径 

破断力 

最小 

最小 

最大 

最小 

最小 

最小 

最小 

最大 

最小 

標準容量 

大容量 

kN 

m/s 

m/s 

m/s 

mm 

kN 

kN 

kN 

kN 

mm 

50 

50 

0.25 

0.5 

0.125 

18 

181 

150 

25 

90 

288 

180 

360 

80 

80 

0.25 

0.5 

0.125 

22 

271 

220 

40 

135 

352 

200 

400 

100 

100 

0.25 

0.5 

0.125 

25 

320 

260 

50 

160 

400 

200 

400 

120 

125 

0.2 

0.4 

0.10 

28 

435 

350 

60 

215 

448 

200 

400 

160 

160 

0.2 

0.4 

0.10 

32 

573 

470 

80 

286 

512 

250 

500 

200 

200 

0.16 

0.32 

0.08 

36 

725 

590 

100 

362 

576 

250 

500 

250 

250 

0.16 

0.32 

0.08 

40 

895 

730 

125 

447 

640 

250 

500 

315 

315 

0.13 

0.26 

0.065 

44 

1 080 

880 

155 

540 

704 

250 

500 

400 

400 

0.13 

0.26 

0.065 

48 

1 290 

1 050 

200 

645 

768 

250 

500 

備考1. リカバリー及びレンダリング荷重は,自動張力制御機構付きムアリングウインチにだけ適用する。 

2. ロープ直径は,JIS G 3525の20号 [6×WS (31)] の場合を示す。繊維ロープを使用する場合は,呼びに対応するロープ破断力(最小)を満足する直径とする。 
3. 主ドラム及びワーピングエンドとも,ドラム長さは規定しない。 
4. ドラムの直径(最小)は,ワイヤロープ使用ドラムの場合を示す。繊維ロープ使用ドラムの直径は,ロープ径の6倍以上とする。 
5. ドラム荷重は,それが主係船ドラムである場合は表1の値と同一とするが,それが主係船ドラムでない場合は,原則として表1に記載するドラム荷重の12以

上とする。 

F 6709-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.2 

原動機の仕様 ムアリングウインチの原動機は,次の機能を満足するものとする。 

(1) ロープ巻込み方向及び巻出し方向のいずれにも回転及び速度の制御が可能なものとする。 

(2) 表1に記載の呼び巻込み速度,ライトライン速度及びクリープ速度を発揮できるものとする。 

(3) 表1に記載のドラム荷重をかけた状態で連続30分間継続使用可能なものとする。 

(4) 表1に記載のドラム荷重を超える過負荷荷重によるウインチの損傷を防止するために必要な保護装置

を装備する。 

4. 性能 ムアリングウインチは,表1に規定された事項及び次の事項を満足しなければならない。 

なお,リカバリー荷重及びレンダリング荷重は,自動張力制御機構付きムアリングウインチにだけ適用

する。 

(1) ドラム荷重 ムアリングウインチを呼び巻込み速度で運転するとき,ドラム荷重は,ロープ破断力の

0.33倍を超えないものとする。 

(2) 保持荷重 保持荷重は,表1に記載の最小ロープ破断力の0.8倍以上とする。 

(3) リカバリー荷重 リカバリー荷重は,ドラム荷重の0.5倍以上とする。 

(4) レンダリング荷重 レンダリング荷重は,ロープ破断力の0.5倍以下とする。 

(5) ライトライン速度 ライトライン速度は,呼び巻込み速度の2.0倍以上とする。 

(6) クリープ速度 クリープ速度は,呼び巻込み速度の0.5倍以下とする。 

5. 構造 

5.1 

機械部の構造 ムアリングウインチの機械部の構造は,次のとおりとする。 

(1) ムアリングウインチの構造は,波浪などの衝撃を考慮して強固で,かつ,各部の操作は容易でなけれ

ばならない。 

(2) ドラム(ワーピングエンドを含まず)には,ブレーキを設け,クラッチによって駆動装置から掛け外

しできる構造とする。 

また,暴露甲板に装備するもので,密閉された部分は,適切な防水構造とする。 

(3) ウインチの制御装置の操作方向は,回転ハンドルの場合は時計回り操作時に,傾倒レバーの場合は操

縦者側に倒したときに,それぞれロープを巻き込むものとする。 

なお,制御装置操作ハンドル又はレバーには,操作方向を明示しなければならない。 

(4) 標準容量のドラムフランジの高さは,ドラムにロープの全長を巻いた状態で,最外周ロープ面から,

ワイヤロープの場合,ロープ径の1.5倍以上,繊維ロープの場合,ロープ径の1.0倍以上突き出るよう

にする。 

大容量のドラムフランジの高さは,上層のロープが下層のロープの真上にくるように(すなわち,

隣接ロープ間に1層上のロープがこないように)巻き込んだ状態で,最外層ロープがフランジ外周か

らはみ出さないものとする。 

5.2 

安全装置及び保護装置 ムアリングウインチは,次の安全装置及び保護装置を設けなければならな

い。 

(1) 歯車装置の保護カバー 

(2) 駆動源の手動制御用ハンドル又はレバーの自動中立位置復帰装置 

(3) 油圧機器の過圧防止装置(油圧機械駆動の場合にだけ適用) 

(4) クランクディスクの保護カバー(蒸気機関の場合にだけ適用) 

F 6709-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(5) 蒸気シリンダのやけど防止カバー(蒸気機関の場合にだけ適用) 

(6) 運転中の無電圧及び過負荷に対する電動機の保護装置(電動機駆動の場合にだけ適用) 

(7) 自動コントロールブレーキ装置(電動機駆動の場合にだけ適用) 

操作レバーを停止位置又は制動位置に戻したとき及び停電(無電圧)時作動する自動コントロール

ブレーキ装置を装備するものとし,この場合のブレーキ保持荷重は,ドラム荷重の1.5倍以上とし,

かつ,装置を破損することなく最高速度のドラム荷重を停止できるものとする。 

6. 強度 

6.1 

ドラム荷重作用時強度 単純弾性理論に基づくウインチ各部の応力は,ドラム荷重作用時,材料の

0.2 %耐力の0.4倍を超えてはならない。 

6.2 

原動機最大出力トルク時強度 原動機最大出力トルク作用時,関連部材の応力は,材料の0.2 %耐力

の0.9倍を超えてはならない。 

6.3 

保持荷重作用時強度 保持荷重作用時,ブレーキ装置及び主ドラムの軸受フレーム,床板,ドラム

軸,据付ボルト,主ドラムなど本体部分の応力は,材料の0.2 %耐力の0.9倍を超えてはならない。 

7. 検査 

7.1 

製造業者の工場において組立完了後,形式検査及び個別検査を行う。 

7.2 

形式検査 各形式ごとに1台のウインチについて形式検査を行う。 

この検査は,製造業者と購入者との間に同意があれば,原型試験証明書によって代えることができる。 

形式検査は,次のとおり行う。 

(1) 負荷運転検査 ウインチにドラム荷重をかけ,巻込み,繰出しを合計30分間運転する。 

(2) 保持検査 ウインチのブレーキ操作状態において,ドラムから引き出したロープに保持荷重をかけて

行う。このときドラムが回転してはならない。 

この検査は,購入者と製造業者との間に同意があれば船上で行ってもよい。 

(3) 自動コントロールブレーキ装置検査 この検査は,5.2(7)の規定を満足しなければならない。 

この検査は,購入者と製造業者との間に同意があれば船上で行ってもよい。 

(4) 自動張力制御検査 リカバリー荷重,レンダリング荷重を確認する。 

(5) 検査中,次の項目について点検又は計測する。 

(a) 軸受の異常温度上昇の有無 

(b) 実際の速度 

(c) 異常騒音の有無 

(d) 動力消費量 

上記検査以外の検査の要求がある場合は,契約時に受渡当事者間で合意を得ておかなければならない。 

7.3 

個別検査 個別検査は,次のとおり行う。 

(1) 無負荷運転検査 ライトライン速度で各回転方向に連続15分間,合計30分間運転する。 

(2) 制動装置の作動検査 無負荷状態で正常な作動を確認する。 

(3) 検査中,次の項目について点検又は計測する。 

(a) 油漏れの有無(密閉減速機など) 

(b) 軸受の異常温度上昇の有無 

(c) 異常騒音の有無 

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F 6709-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(d) 動力消費量 

(e) ドラムの回転速度 

8. 製品の呼び方 ムアリングウインチの呼び方は,規格名称,駆動機の種類,ドラム荷重及び呼び巻込

み速度による。ただし,規格名称の代わりに規格番号を用いてもよい。 

例 ムアリングウインチ−E−50 kN−0.25 m/s 

9. 表示 ムアリングウインチには,見やすい位置に,次の事項を記入した耐食性銘板を取り付けなけれ

ばならない。 

(1) 規格名称 

(2) ドラム荷重 

(3) 呼び巻込み速度 

(4) 製造番号(又は機械番号) 

(5) 製造年月 

(6) 製造業者名(又はその略号) 

(7) 質量 

F 6709-1995  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

船舶部会 甲板補機専門委員会 構成表(昭和60年11月1日制定のとき) 

氏名 

所属 

(委員会長) 

久 米   宏 

財団法人日本海事協会 

土 井 平 孝 

運輸省海上技術安全局 

横 溝 眞一郎 

工業技術院標準部 

草 野   博 

財団法人日本船舶標準協会 

奥 山 孝 志 

社団法人日本中型造船工業会 

高 橋 正之助 

株式会社アジア船舶工業社 

岡 沢   治 

川崎重工業株式会社西神戸工場 

福 永 靖 夫 

三菱重工業株式会社原動機事業本部 

夫津木   武 

辻産業株式会社技術部 

奥 田 清 人 

株式会社福島製作所設計部 

長谷川 照 一 

日本鋼管株式会社海洋・鉄構事業部鶴見製作所 

坂 倉 勝 彦 

住友重機械工業株式会社船舶海洋鉄構事業本部 

臼 居   勲 

社団法人日本船主協会 

山 名 俊 茂 

大阪商船三井船舶株式会社 

砥 石 研 治 

日本郵船株式会社 

長谷川 和 男 

株式会社上野運輸商会 

百合草 正 韶 

船舶整備公団 

斎 藤 忠 文 

三井造船株式会社船舶海洋プロジェクト事業本部 

徳 丸   薫 

石川島播磨重工業株式会社船舶海洋事業本部 

(事務局) 

黒 河 亀千代 

工業技術院標準部機械規格課 

武 藤 晃 雄 

工業技術院標準部機械規格課 

(事務局) 

高 橋   潔 

工業技術院標準部機械規格課(平成7年3月28日改正のとき)