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(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 品質······························································································································· 2
4 構造,形状及び寸法 ·········································································································· 2
5 材料······························································································································ 11
6 検査方法························································································································ 13
7 製品の呼び方 ·················································································································· 13
8 表示······························································································································ 13
附属書A(参考)締付金物の例 ······························································································ 15
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本船舶技術研究協会(JSTRA)
から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経
て,国土交通大臣が制定した日本産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。国土交通大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
注記 工業標準化法に基づき行われた申出,日本工業標準調査会の審議等の手続は,不正競争防止法
等の一部を改正する法律附則第9条により,産業標準化法第12条第1項の申出,日本産業標準
調査会の審議等の手続を経たものとみなされる。
日本産業規格 JIS
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アルミニウム合金製風雨密小形ハッチ
Small weathertight aluminium hatches
序文
この規格は,アルミニウム合金製風雨密小形ハッチの種類,構造,形状及び寸法,並びに材料を規定す
ることによって,アルミニウム合金製風雨密小形ハッチの設計,工作,維持管理の利便性向上などを目的
としている。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,アルミニウム合金の展伸材及び鋳物を材料として溶接によって製作する,倉庫区域又は乾
貨物倉への荷役作業,居住区の出入りなどに使用されるアルミニウム合金製風雨密小形ハッチ(以下,ハ
ッチという。)について規定する。
注記 この規格の使用者は,規格の要求事項を守ると同時に,それぞれの船舶が適用を受けるべき法
令の要求事項を満足していることを確認しなければならない。
例 居住区の脱出用ハッチとして使用する場合は,内外開閉式クリップを使用する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 0205-3 一般用メートルねじ−第3部:ねじ部品用に選択したサイズ
JIS B 1180 六角ボルト
JIS B 1256 平座金
JIS B 1351 割りピン
JIS F 2312 船用ちょう形締付金物
JIS F 3905 船用トグルピン
JIS F 3906 船用鎖ひも
JIS F 3907 船用鎖ひもS形環
JIS G 4303 ステンレス鋼棒
JIS G 4304 熱間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯
JIS G 4305 冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯
JIS G 4308 ステンレス鋼線材
JIS G 4309 ステンレス鋼線
JIS G 4315 冷間圧造用ステンレス鋼線
2
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JIS H 4000 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条
JIS H 4040 アルミニウム及びアルミニウム合金の棒及び線
JIS H 5202 アルミニウム合金鋳物
3
品質
3.1
外観
ハッチは,次の各項目に適合しなければならない。
a) ねじれがあってはならない。
b) 人を傷つけるおそれのないように,粗い端部が露出してはならない。
c) 適切な方法で表面処理を行い,表面のスケール及び汚れを除去した上で,腐食の発生を防止するため
の塗装を行わなければならない。
d) 通常の方法で閉められた状態で,ハッチコーミング上端部がハッチシールと確実に連続して接触して
いなければならない。
3.2
風雨密性
6.3によって風雨密性の試験を行ったとき,浸水があってはならない。
4
構造,形状及び寸法
4.1
一般
ハッチコーミング及びハッチカバーの呼び寸法は,表1による。
表1−呼び寸法
単位 mm
呼び寸法
620×620
670×670
720×720
770×770
870×870
4.2
ハッチコーミング
ハッチコーミングのコーナ部は,角又は円弧としてよい。ハッチシールの損傷を防止するために,ハッ
チコーミング上端部は丸みを付けるか又は面取りを施す。ハッチコーミングの所要寸法は,表2及び図1
による。
単位 mm
図1−ハッチコーミングの構造,形状及び寸法
3
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表2−ハッチコーミングの所要寸法
単位 mm
呼び寸法
ハッチコーミングの
内のりの寸法
甲板の開口の
寸法
a2,b2
コーミング厚さ
tcoam,net
長さa,幅b
許容差
620×620
620
0,−3
600×600
下記の計算式による。
ただし,最小4 mm。
670×670
670
650×650
720×720
720
700×700
770×770
770
750×750
870×870
870
850×850
コーミング厚さの計算式は,次による[一般財団法人日本海事協会2016鋼船規則C
編20章2.9-2.(2)参照]。
tcoam,net=14.2 S
)
/
(
coam
a,
Hσ
P
σa,coam=0.95σ0.2
ここに, tcoam,net: ハッチコーミングのネット板厚(mm)
S: ハッチコーミングの心距(mm)
PH: 設計波浪荷重[一般財団法人日本海事協会2016鋼船規則C編
20章2.4.(2)参照]
σ0.2: 使用材料の0.2 %耐力(N/mm2)
4.3
ハッチカバー
ハッチカバーは,スチフナで補強する。ハッチコーミングとの接面にハッチシールを設け,ハッチシー
ル押さえは,図2に示すように垂直又は斜めに設ける。ハッチカバーの所要寸法は,表3及び図2による。
スチフナの配置方法は,附属金物の取付位置によって異なり,図3又は図4による。
表3−ハッチカバーの所要寸法
単位 mm
呼び寸法
大きさ
厚さ t
スチフナ
長さa1,幅b1
許容差
620×620
673
±5
4
4×25
670×670
723
±5
4
4×25
720×720
773
±5
4
4×25
770×770
823
±5
4
4×25
870×870
923
±5
4
4×25
4
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単位 mm
1
カバー
2
ハッチシール押さえ
3
ハッチシール
4
スチフナ
5
くさび座
6
ハンドル
注記 ハッチシールは,圧縮された状態を示す。
図2−ハッチカバー及びハッチカバーシール押さえの構造,形状及び寸法
4.4
附属金物(締付金物及びヒンジ)
4.4.1
附属金物及びその取付位置
附属金物は,次による。
a) 附属金物は,構成物である締付金物及びヒンジによって区分し,表4による。
5
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表4−附属金物の区分
区分
記号
締付金物
ちょう形
WB
クリップ形
WW
ヒンジ
開度制限付き
A形
開度制限なし
B形
b) 附属金物の締付金物及びヒンジの数は,表5による。取付位置は,図3及び図4による。
なお,寸法は,附属金物の中心線を元とする。
表5−附属金物の締付金物及びヒンジの数
単位 mm
呼び寸法
締付金物の数
ヒンジの数
ヒンジ間隔 h
620×620
4
2
280〜340
670×670
300〜370
720×720
325〜400
770×770
345〜425
870×870
4又は6
390〜480
6
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単位 mm
図3−附属金物[ちょう形締付金物(WB)及びヒンジ]の位置例
7
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単位 mm
図4−附属金物[クリップ形締付金物(WW)及びヒンジ]の位置例
4.4.2
締付金物
締付金具は,次による。
a) ちょう形締付金物(WB) ちょう形締付金物のトグルボルト,ナット止め及びちょう形ナットの形状
及び寸法は,JIS F 2312による。ちょう形ナットは,一人の人間が道具なしで風雨密性を確保できる
締付トルクが得られるものとする。ねじ切り及びトグルボルトは,JIS B 0205-3の,ねじの呼び16に
よる。ちょう形締付金物の例を,A.1に示す。
b) クリップ形締付金物(WW) クリップは,一人の人間が道具なしで風雨密性を確保できる締付力が得
られるものとする。クリップ形締付金物の例を,A.2に示す。
4.4.3
ヒンジ
ヒンジは,だ円形の孔によって締付金物がハッチシールを圧縮できる構造とし,次による。
a) ヒンジ(A形:開度制限付き) ヒンジは,次による。
1) ヒンジの構造,形状及び寸法の例を,図5に示す。
2) 座金の形状及び寸法は,JIS B 1256による。
3) ボルトの形状及び寸法は,JIS B 1180による。
4) トグルピンの形状及び寸法は,JIS F 3905による。
5) 鎖ひもの形状及び寸法は,JIS F 3906による。
6) 鎖ひもS形環の形状及び寸法は,JIS F 3907による。
7) ボルトとナットとは,必要に応じ,溶接する。
8
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単位 mm
1
カバー付きヒンジ
2
コーミング付きヒンジ
3
当て板
4
ボルト
5
U-ナット
6
平座金
7
鎖ひも用アイプレート
8
トグルピン
9
鎖ひも
10 鎖ひもS形環
1
カバー付きヒンジ
2
コーミング付きヒンジ
3
当て板
4
ピン
5
割りピン
6
平座金
7
鎖ひも用アイプレート
8
トグルピン
9
鎖ひも
10 鎖ひもS形環
a) A-1形
b) A-2形
図5−ヒンジ(A形)の構造,形状及び寸法例
b) ヒンジ(B形:開度制限なし) ヒンジは,次による。
1) ヒンジの構造,形状及び寸法の例を,図6に示す。
2) 座金の形状及び寸法は,JIS B 1256による。
3) 割りピンの形状及び寸法は,JIS B 1351による。
9
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単位 mm
1
カバー付きヒンジ
2
コーミング付きヒンジ
3
ボルト
4
平座金
5
U-ナット
1
カバー付きヒンジ
2
コーミング付きヒンジ
3
ピン
4
平座金
5
割りピン
a) B-1形
b) B-2形
図6−ヒンジ(B形)の構造,形状及び寸法例
4.5
補助金物(開き止め及び施錠金物)
必要に応じ,開き止め及び施錠金物を設ける。開き止めは,ヒンジ(B形)を取り付けた場合に,ハッ
チカバーを直立位置で固定することが必要な場合に設ける。開き止めの形状及び寸法例を,図7に示す。
施錠金物の形状及び寸法例を,図8に示す。
10
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単位 mm
1
支持金物
2
止め金物
3
ノックピン
注記 ※印は,取付位置に合わせ決定する。
図7−開き止めの形状及び寸法例
11
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単位 mm
1
カバー付き金物
2
コーミング付き金物
図8−施錠金物の形状及び寸法例
5
材料
5.1
ハッチコーミング
ハッチコーミングは,JIS H 4000のA5052P-H112,A5083P-O,又は引張強さ170 MPa以上かつ耐食性及
び溶接性がこれと同等以上のアルミニウム板で製作する。
5.2
ハッチカバー
ハッチカバーの材料は,表6による。
なお,部品番号は,図2による。
12
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表6−ハッチカバーの材料
部品番号
部品名称
材料
1
カバー
JIS H 4000のA5052P-H112,A5083P-O,又は引張強さ170 MPa以上かつ耐食
性及び溶接性がこれと同等以上のもの
2
ハッチシール押さえ
引張強さが170 MPa以上の溶接できるアルミニウム材
3
ハッチシール
耐老化性ゴム又は耐老化性合成ゴム被膜スポンジゴムa)
4
スチフナ
JIS H 4000のA5052P-H112,A5083P-O,又は引張強さ170 MPa以上かつ耐食
性及び溶接性がこれと同等以上のもの
5
くさび座b)
締付受け座・受け板(A5052テーパ材+SUS板)
6
ハンドル
JIS H 4040のA5052,A5056,又は引張強さ,耐食性及び溶接性がこれと同等
以上のもの
注a) 船用として満足なものとし,ハッチを通常の状態で締め付ける場合に,有効かつ持続的なシールを繰り返し
て行えるもの。
b) くさび座の形状,寸法及び材料の例は,A.3を参照。
5.3
附属金物(ヒンジ)
ヒンジ(A形)の材料は,表7による。ヒンジ(B形)の材料は,表8による。
なお,部品番号は,図5及び図6による。
表7−ヒンジ(A形)の材料
部品番号
部品名称
材料
1
カバー付きヒンジ
JIS H 4000のA5052P-O,A5052P-H112,A5083P-O,JIS H 5202のAC7A,又
は耐食性がこれと同等以上のもの
2
コーミング付きヒン
ジ
3
当て板
JIS H 4000のA5052P-O,A5052P-H112,A5083P-O,JIS H 5202のAC7A,又
は耐食性がこれと同等以上のもの
4
ピン(A-2形だけ)
JIS G 4303のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上のもの
4
ボルト(A-1形だけ)
JIS G 4303のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上のもの
5
割りピン(A-2形だけ) JIS G 4315のSUS316,又は引張強さがこれと同等以上のもの
5
U-ナット(A-1形だけ) JIS G 4303のSUS316,又は引張強さがこれと同等以上のもの
6
平座金
JIS G 4304若しくはJIS G 4305のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上の
もの
7
鎖ひも用アイプレー
ト
JIS H 4040のA5052BE,又は引張強さ,耐食性及び溶接性がこれと同等以上
のもの
8
トグルピン
JIS G 4303のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上のもの
9
鎖ひも
JIS G 4308若しくはJIS G 4309のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上の
もの
10
鎖ひもS形環
JIS G 4308若しくはJIS G 4309のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上の
もの
13
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表8−ヒンジ(B形)の材料
部品番号
部品名称
材料
1
カバー付きヒンジ
JIS H 4000のA5052P-O,A5052P-H34,A5052P-H112,A5083P-O,A5083P-H321,
JIS H 5202のAC7A,又は耐食性がこれと同等以上のもの
2
コーミング付きヒンジ
3
ピン(B-2形だけ)
JIS G 4303のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上のもの
3
ボルト(B-1形だけ)
JIS G 4303のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上のもの
4
平座金
JIS G 4304若しくはJIS G 4305のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上の
もの
5
割りピン(B-2形だけ) JIS G 4315のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上のもの
5
U-ナット(B-1形だけ) JIS G 4303のSUS304,又は引張強さがこれと同等以上のもの
5.4
補助金物(開き止め及び施錠金物)
開き止めの材料は,表9による。施錠金物の材料は,表10による。
なお,部品番号は,図7及び図8による。
表9−開き止めの材料
部品番号
部品名称
材料
1
支持金物
JIS H 4000のA5052P-O,A5052P-H34,A5052P-H112,A5083P-O,A5083P-H321,
又は引張強さ及び耐食性がこれと同等以上のもの
2
止め金物
3
ノックピン
JIS H 4040の5052-O,5052-H112,5083-O,5083-H112,又は耐食性がこれと
同等以上のもの
表10−施錠金物の材料
部品番号
部品名称
材料
1
カバー付き金物
JIS H 4000のA5052P-O,A5052P-H34,A5052P-H112,A5083P-O,A5083P-H321,
又は引張強さ及び耐食性がこれと同等以上のもの
2
コーミング付き金物
6
検査方法
6.1
寸法検査
採寸によって,箇条4の規定に適合していることを確認する。
6.2
外観検査
目視によって,使用上有害なきず,亀裂などの欠点がなく,仕上げが良好であることを確認する。
6.3
風雨密性
ハッチは,完成後船上に装備し,通常の方法で閉められた状態で,公的機関の検査官が認めた試験(ホ
ーステスト又は同等のテスト)方法によって,3.2の規定に適合していることを確認する。
7
製品の呼び方
この規格に従ったハッチの呼び方は,規格の名称,附属金物及び呼び寸法の記号による。ただし,規格
の名称の代わりに規格番号を用いてもよい。
例 アルミニウム合金製風雨密小形ハッチWWA形620×620,又はJIS F 2338 WWA形620×620
8
表示
この規格に従ったハッチは,次の順序で表示を行う。
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a) 名称 アルミニウム合金製風雨密小形ハッチ
b) 規格番号 JIS F 2338
c) 記号 ハッチの呼び方による。
例 アルミニウム合金製風雨密小形ハッチWWA形770×770,又はJIS F 2338 WWA形770×770
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附属書A
(参考)
締付金物の例
A.1 ちょう形締付金物
ちょう形締付金物(WB)の形状,寸法及び材料の例を,図A.1に示す。
単位 mm
部品番号
部品名称
材質(参考)
1
ちょう形ナット
SUS304
2
トグルボルト
SUS304
3
トグルボルトピン
SUS304
4
らぐ
A5052
5
カバー
A5052
6
ハッチシール
耐老化性ゴム
7
コーミング
A5083
8
ナット止め
SUS304
図A.1−ちょう形締付金物(WB)の形状,寸法及び材料の例
A.2 クリップ形締付金物
クリップ形締付金物(WW)の形状,寸法及び材料の例を,図A.2に示す。
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単位 mm
部品番号
部品名称
材質
1
ハンドル
SCS14
(SUS316相当品)
2
ハンドル
SCS13
(SUS304相当品)
3
ボス
A5052
4
座金
SUS304
5
U-ナット
SUS304
6
座金
SUS304
7
Oリング
NBR
8
グリースニップル
C3602B
図A.2−クリップ形締付金物(WW)の形状,寸法及び材料の例
A.3 くさび座
くさび座の形状,寸法及び材料の例を,図A.3に示す。
単位 mm
図A.3−くさび座の形状,寸法及び材料の例