F 2054:2017
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 種類······························································································································· 1
4.1 種類の区分 ··················································································································· 1
4.2 呼び寸法 ······················································································································ 2
5 寸法······························································································································· 2
6 材料······························································································································· 2
7 構造······························································································································· 2
8 製造及び検査 ··················································································································· 2
9 表示······························································································································· 2
附属書A(参考)係留チョックの強度評価の基準 ······································································· 9
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 12
F 2054:2017
(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本船舶技術研究協会(JSTRA)
から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経
て,国土交通大臣が制定した日本工業規格である。これによってJIS F 2005:1975は廃止され,この規格に
置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。国土交通大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本工業規格 JIS
F 2054:2017
船舶及び海洋技術−係留チョック
Ships and marine technology-Shipʼs mooring and towing fittings-
Mooring chocks
序文
この規格は,2012年に第1版として発行されたISO 13713を基とし,我が国の実状に合わせるため,技
術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,船舶の係留及びえい(曳)航ロープを導くために設置した係留チョックの設計,寸法及び
技術的要件について規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 13713:2012,Ships and marine technology−Shipʼs mooring and towing fittings−Mooring chocks
(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
IMO Circular MSC/Circ. 1175,Guidance on shipboard towing and mooring equipment
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
安全使用荷重,SWL(safe working load)
通常の使用条件において適用される,ロープにかかる最大荷重。
4
種類
4.1
種類の区分
係留チョックは,その設置場所によって次の二つのタイプに分類する。
− タイプA−デッキ取付形係留チョック
2
F 2054:2017
− タイプB−ブルワーク取付形係留チョック
4.2
呼び寸法
係留チョックの呼び寸法L×Hは,チョック開口部の幅及び高さに対する基準で示す。同一サイズで異
なるSWLの係留チョックについては,呼び寸法の後に英字が付く。呼び寸法は,次のとおり。
100×76,150×110,200×150,250×200,300×250,350×250,400×250,450×250,500×250S,
500×250,500×400
5
寸法
詳細は,次による。
− タイプA(中形):表1及び図1
− タイプA(小形):表2及び図2
− タイプA(大形):表3及び図3
− タイプB:表4及び図4
6
材料
係留チョックの製造には,次の材料を使用する。
− チョック:235 MPa以上又は同等の降伏点をもつ鋳鋼材
鋳鋼の炭素含有量は,溶接性を考慮して0.23 %以下とする。
注記 1 MPa=1 N/mm2
7
構造
係留チョックのシートは,実際の荷重方向を考慮して設計する。シートと船体との溶接接合は,塑性変
形又は割れが生じることなく,船体構造へ係留チョックの最大荷重を確実に伝達する。
8
製造及び検査
8.1
溶接を含め,係留チョックの全ての表面には,目に見えるきず又は欠陥があってはならない。
8.2
ロープに接する全ての表面には,摩耗によってロープを損傷させる可能性の高い表面の粗さ又は凹
凸があってはならない。
8.3
係留チョックは,防食保護塗料で外部を塗装する。
9
表示
9.1
IMO Circular MSC/Circ.1175に従って,船長の指針用に,船上に備え付けられるえい航及び係留計
画書に示された係留チョックの使用には,SWLを表示する。
9.2
9.1のSWLは,シート及びデッキ補強を考慮して判断し,えい航及び係留計画書に表示する。
9.3
係留チョックは,溶着ビード又は同等物によってSWLを明確に表示する。SWLはキロニュートン
(kN)又はトン(t)表示とし,器具の操作中に目立つように設置する。
例 SWL XXX t又はkN
9.4
図1〜図4に示していないエッジ及びコーナーの半径は,25 mm以上とする。
3
F 2054:2017
単位 mm
1
係留チョック
SWL表示は,通常,係留チョックのシート上又は船殻構造上に表示する。
図1−タイプA(中形),デッキ取付形係留チョック
z1
4
F 2054:2017
表1−タイプA(中形)“デッキ取付形係留チョック”の寸法及びSWL
単位 mm
呼び寸法
L×H
l1
l2
l3
B
H1
H2
R
R1
R2
250×200
100
250
444
160
377
80
100
197
80
300×250
110
300
536
200
468
100
125
243
100
350×250
125
350
608
220
489
110
125
254
110
400×250
135
400
682
240
511
120
125
266
120
450×250
150
450
760
260
535
130
125
280
130
500×250S
175
500
832
280
556
140
125
291
140
500×250
175
500
840
280
560
140
125
295
140
呼び寸法
L×H
R3
R4
R5
T
T1
溶接脚長a)
SWL b)
計算質量c)
(kg)
z1
(kN)
(t)
250×200
46
20
15
34
18
8.5
353
36
73
300×250
64
25
20
36
20
9
491
50
121
350×250
72
30
20
38
20
9.5
589
60
151
400×250
78
30
20
42
23
10.5
736
75
200
450×250
80
30
20
50
28
12.5
981
100
280
500×250S
88
30
20
52
30
13
1128
115
338
500×250
80
30
20
60
36
15
1373
140
396
注a) 同じ溶接容積/強度に基づいて溶接方法を変更してもよい。
b) 表示のSWLは参考値。これらは附属書Aに記載した荷重に基づいている。SWLは実際の荷重条件に従って
調整してもよい。実際の表示はユーザーと製造業者との間で同意するものとする。
c) 計算質量は参考値。
5
F 2054:2017
単位 mm
SWL表示は,通常,係留チョックのシート上又は船殻構造上に表示する。
図2−タイプA(小形),デッキ取付形係留チョック
表2−タイプA(小形)“デッキ取付形係留チョック”の寸法及びSWL
単位 mm
呼び寸法
L×H
L1
L2
B
H1
H2
H3
R
R1
T (T1) d) (R2) d) (R3) d) 溶接
脚長a)
計算
質量c)
(kg)
SWL b)
(kN) (t)
100×76
35
170
60
141
30
35
38
73
12
(10) (30) (18)
7
3.7
75.0
7.6
150×110
50
250
90
205
45
50
55
105
16
(12) (45) (29)
8
10.5
101
10.3
200×150
70
340 120
280
60
70
75
145
20
(16) (60) (40)
9
24.0
148
15.1
注a) 同じ溶接容積/強度に基づいて溶接方法を変更してもよい。
b) 表示のSWLは参考値。これらは附属書Aに記載した荷重に基づいている。SWLは実際の荷重条件に従って調
整してもよい。実際の表示はユーザーと製造業者との間で同意するものとする。
c) 計算質量は参考値。
d) 括弧内の数値は参考値を示す。
6
F 2054:2017
単位 mm
SWL表示は,通常,係留チョックのシート上又は船殻構造上に表示する。
図3−タイプA(大形),デッキ取付形係留チョック
表3−タイプA(大形)“デッキ取付形係留チョック”の寸法及びSWL
単位 mm
呼び寸法
L×H
L
L1 L2
L3 L4 L5
D H1 H2 H3 R1 R2 R3 R4 R5 R6
K
T B1 計算
質量
b)
(kg)
SWL a)
(kN)(t)
500×400 5 204 208 500 908 854 48 784 689 204 404 309 130 132 180 132 20 40 180 450 980 100
注a) 表示のSWLは参考値。これらは附属書Aに記載した荷重に基づいている。SWLは実際の荷重条件に従って調
整してもよい。実際の表示はユーザーと製造業者との間で同意するものとする。
b) 計算質量は参考値。
7
F 2054:2017
単位 mm
1
係留チョック
θ
曲面終端によって制限される角度(参照用)
a
SWL表示
SWL表示は,通常,係留チョックのシート上又は船殻構造上に表示する。
図4−タイプB,ブルワーク取付形係留チョック
z1
z2
8
F 2054:2017
表4−タイプB“ブルワーク取付形係留チョック”の寸法及びSWL
単位 mm
呼び寸法
L×H
l1
l2
B
H1
H2
C
R
R1
R2
250×200
450
398
154
408
327
57
100
200
174
300×250
516
460
168
466
387
60
125
233
205
350×250
582
520
177
482
395
65
125
241
210
400×250
652
588
193
502
412
70
125
251
219
450×250
734
662
213
534
433
77
125
267
231
500×250S
812
730
237
562
447
82
125
281
240
500×250
828
750
253
578
466
82
125
289
250
呼び寸法
L×H
R3
T
T1
溶接脚長a)
SWL b)
計算質量c)
(kg)
z1
z2
(kN)
(t)
250×200
78
26
20
8
8
353
36
48
300×250
85
27
24
8
9.5
491
50
83
350×250
90
29
25
9
10
589
60
100
400×250
98
34
32
9.5
13
736
75
145
450×250
108
41
36
12.5
14.5
981
100
215
500×250S
120
41
36
12.5
14.5
1128
115
235
500×250
128
48
41
14.5
16.5
1373
140
266
注a) 同じ溶接容積/強度に基づいて溶接方法を変更してもよい。
b) 表示のSWLは参考値。これらは附属書Aに記載した荷重に基づいている。SWLは実際の荷重条
件に従って調整してもよい。実際の表示はユーザーと製造業者との間で同意するものとする。
c) 計算質量は参考値。
9
F 2054:2017
附属書A
(参考)
係留チョックの強度評価の基準
A.1 一般
係留チョックの強度は,有限要素モデル分析で評価し,次の設計基準に基づいて測定する。
A.2 荷重
係留チョックは,水平(図A.1)及び垂直(図A.2及び図A.3)荷重ケースに耐えられるように設計する。
水平及び垂直荷重は個別に考慮し,両荷重を同時には考慮しない。
A.2.1 ケース1−水平荷重(タイプA及びタイプB)
P
係留力又はえい航力
注記 係留チョックによって180°(θ=0°)方向が変わったロープによる荷重を考慮する。
表2のタイプA(小形)の荷重条件は,150°(θ=30°)とする。
図A.1−水平荷重(タイプA及びタイプB)
10
F 2054:2017
A.2.2 ケース2−垂直荷重(タイプA)
P
係留力又はえい航力
a
船側
注記 係留チョックによって方向が変わったロープによる荷重を考慮する。
垂直下方:船外90°下方,船内30°下方
垂直上方:船外30°上方,船内15°上方
表2のタイプA(小形)に対する荷重条件は,船外30°上方,船内0°水平とする。
図A.2−タイプAの垂直荷重−デッキ取付形係留チョック
A.2.3 ケース3−垂直荷重(タイプB)
a) 傾斜のないブルワーク取付形係留チョック
図A.3−タイプBの垂直荷重−ブルワーク取付形係留チョック
11
F 2054:2017
b) 傾斜のあるブルワーク取付形係留チョック
P
係留力又はえい航力
注記 係留チョックによって方向が変わったロープによる荷重を考慮する。
垂直下方:船外90°下方,船内65°を超えないθ下方
[例 α最大30°,βの設計げんしょう(舷墻)角=55°]
垂直上方:船外30°上方,船内15°上方
図A.3−タイプBの垂直荷重−ブルワーク取付形係留チョック(続き)
A.3 荷重及び応力基準
SWLの下,次の応力基準を採用する。
− 複合応力は材料の降伏応力の85 %に制限する。
A.4 摩耗代及び腐食予備厚
摩耗代及び腐食予備厚は,既に安全係数に含まれている。
参考文献
IACS UR A2,Shipboard fittings and supporting hull structures associated with towing and mooring on
conventional vessels
OCIMF,Mooring Equipment Guidelines (MEG 3)
ISO 4990,Steel castings−General technical delivery requirements
ISO 2408,Steel wire ropes for general purposes−Minimum requirements
12
F 2054:2017
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS F 2054:2017 船舶及び海洋技術−係留チョック
ISO 13713:2012,Ships and marine technology−Shipʼs mooring and towing fittings−
Mooring chocks
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
4 種類
4.2 呼び寸法
4
JISとほぼ同じ。 追加
ISO規格には呼び寸法100×76,150
×110,200×150及び500×400は
規定されていない。
ISO規格は,我が国内で実績のあるこの
追加要件を規定していないため,国内利
害関係者の利便性を図った。
日本独自の呼び寸法であるため,国際規
格として提案は実施しない。
5 寸法
寸法を規定
5
JISとほぼ同じ。 追加
JISでは,ISO規格にない図2及び
図3を追加した。
ISO規格は,我が国内で実績のあるこの
追加要件を規定していないため,国内利
害関係者の利便性を図った。
日本独自の呼び寸法であるため,国際規
格として提案は実施しない。
9 表示
係留チョックに表示す
る事項を規定
9
JISとほぼ同じ。 追加
JISでは,SWLはトン表記又はキロ
ニュートン表記とした。
技術的な差異はなし。
単位の選択肢を増やしただけなので,特
段の国際的な対応は必要なし。
図1
タイプA(中形),デッ
キ取付形係留チョック
Figure
1
JISとほぼ同じ。 削除
ISO規格で規定する“代替溶接方
法”は,我が国内では実績のない方
法であるため削除した。
技術的な差異はなし。
我が国独自のタイプ及び我が国の実績を
考慮した図題の変更及び図の編集である
ため,国際的な対応は特段必要なし。
表1
タイプA(中形)“デッ
キ取付形係留チョッ
ク”の寸法及びSWL
Table1 JISとほぼ同じ。 追加
JISでは,表題に(中形)を追記し
た。
技術的な差異はなし。
我が国独自のタイプ及び我が国の実績を
考慮した図題の変更及び図の編集である
ため,国際的な対応は特段必要なし。
図2
タイプA(小形),デッ
キ取付形係留チョック
−
−
追加
JIS独自の図であるため,ISO規格
には規定なし。
我が国における利便性を考慮した,JIS独
自の図であるため,国際提案はしない。
2
F
2
0
5
4
:
2
0
1
7
13
F 2054:2017
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異の理由
及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
表2
タイプA(小形)“デッ
キ取付形係留チョッ
ク”の寸法及びSWL
−
−
追加
JIS独自の図に対応した表であるた
め,ISO規格には規定なし。
我が国における利便性を考慮した,JIS独
自の表であるため,国際提案はしない。
図3
タイプA(大形),デッ
キ取付形係留チョック
−
−
追加
JIS独自の図であるため,ISO規格
には規定なし。
我が国における利便性を考慮した,JIS独
自の図であるため,国際提案はしない。
表3
タイプA(大形)“デッ
キ取付形係留チョッ
ク”の寸法及びSWL
−
−
追加
JIS独自の図に対応した表であるた
め,ISO規格には規定なし。
我が国における利便性を考慮した,JIS独
自の表であるため,国際提案はしない。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 13713:2012,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
F
2
0
5
4
:
2
0
1
7