2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
F 1029 : 1998
(ISO/DIS 13297 : 1997)
舟艇−交流電気設備
Small craft−Electrical systems−
Alternating current installations
序文 この規格は,ISO/DIS 13297, Small craft−Electrical systems−Alternating current installationsを翻訳し,
技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で,点線の下線を施してある箇所は,原国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲 この規格は,船の長さ24m以下の舟艇に搭載し,単相交流の呼び電圧が250V未満で作動
する低電圧交流装置の設計,製造及び据付け要件について規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO/DIS 13297 Small craft−Electrical systems−Alternating current installations
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS F 8007 船用電気器具の外被の保護形式及び検査通則
備考 IEC 60529 Degrees of protection provided by enclosures (IP code) からの引用事項は,この規格
の該当部分と同等である。
ISO 8846 Small craft−Electrical devices−Protection against ignition of surrounding flammable
gases
ISO 9094-1(1) Small craft−Fire protection−Part 1 : Craft with a hull length of up to and including
15m
ISO 10133 Small craft−Electrical systems−Extra-low-voltage d. c. installations
ISO 10239(1) Small craft−Liquefied petroleum gas (LPG) systems
JIS C 2811 工業用端子台
備考 IEC 60947-7-1 Low-voltage switchgear and controlgear. Part 7 : Ancillary equipment−Section
One : Terminal blocks for copper conductorsからの引用事項は,この規格の該当部分と同等
である。
3. 定義 この規格では,次の定義を適用する。
3.1
舟艇の接地 (craft's ground/earth) 船体の水面下の表面の導電部を含み,共通の接地(地表電位)と
の導電接続(意図した又は偶然な)によって確立される接地。
注(1) 発効予定
2
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3.2
漏電遮断器 (GFCI)/残余(差動)電流装置 (RCD) [ground fault circuit interrupter (GFCI) ; residual
(differential) current device (RCD)] 残余電流がある値になったとき,負荷への電流を中断させるように意
図された,機械的若しくは電気−機械的切替装置又は装置群。
備考1. GFCIは,人が感電事故の際,負傷する危険を減らすのに役立つ。
3.3
有極変圧器 (polarization transformer) 装置の中性線及び通電線の非接地側の導線を舟艇内の極性
と同じ極性方向へ自動的に向ける変圧器。
3.4
中性線 (neutral conductor) 装置の中性点に接続され,電気エネルギーを伝達する役目をする導線
(電線)。
3.5
接地線 [protective (earthing or grounding) conductor] 通常は電流が流れず,電気装置の導電部を舟艇
の接地線及び陸上電源ケーブルで陸上の交流電源の接地線に接続して感電を防ぐ手段として使用する導線
(電線)。4.2参照。
3.6
通電導線 (live conductor) 通常は電源から電気装置又はレセプタクルまで電流を通すことができ
る導線(電線)。
3.7
点火保護装置 (ignition-protected) ISO 8846に従って設計及び製造された装置。
3.8
過電流保護装置 (overcurrent protection device) ヒューズ又は回路遮断器のように,電流があらかじ
め設定された値を上回ったときに回路を遮断するように設計された装置。
3.9
配電盤 (panel board) 電力の制御若しくは分配又はその両方を行うために,回路遮断器,ヒューズ,
スイッチ,計器,表示器などを組み立てたもの。
3.10 極性システム (polarized systems) 中性線及び通電導線を,回路内の電気装置及びレセプタクルの全
端末に同じ極性で接続するシステム。
3.11 自己制限装置 (self-limiting device) 自己の磁気的及び電気的特性によって,ある特定の最高出力値
に制限できる装置。
3.12 陸上電源取入金物 (shore-power inlet) 舟艇に取り付けるために設計された金物で,電気エネルギー
の伝達用として電気的に接続を行う金物。陸上電源ケーブルの舟艇側の端末にはめす形コネクタをもつお
す形の金物。
3.13 トリップ・フリー形過電流遮断器 (trip free circuit breaker) 通常の回路の状態にあって,電流の起
電,通電及び電流遮断をすることができ,かつ,指定された異常回路状態(短絡状態を含む)にあって,
電流の起電,一定時間の通電及び電流遮断をすることができる機械的掛け外し機構のある遮断器であり,
リセット手段が電流妨害機構の働きを押さえるために手動での押し込みができない設計のもの。
3.14 近づける (accessible) 舟艇の恒久的な構造物を取り外すことなく,検査,取り外し又は保守のため
にそこにいくことができること。
3.15 容易に近づける (readily accessible) 有効に使用するために工具を使わずに素早く安全に近づくこ
とができること。
3.16 外装 (sheath) ゴム被覆,プラスチック被覆,布被覆,フレキシブル管被覆などの非金属材料を使
用し,絶縁した導線1本又はそれ以上のまわりに設けた連続管状耐湿保護被覆。
3.17 コンディット (conduit) 電気設備の絶縁された導体又はケーブルにかかわる,断面が環状又は非環
状の閉鎖された配線器具の一部であって,導体及び/又はケーブルをその中に引き込み及び/又は取り替
えができる接続用器具。
3.18 ケーブル・トランク (cable trunking) 絶縁された導体,ケーブル,コードを完全に囲うため及びそ
の他の電気機器の収容のために取外し可能な扉が付いた基礎部をもつ閉鎖された閉囲の方式。
3
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3.19 有極レセプタクル (polarized receptacle) 器具を差し込むとき,極性が一方向だけしか差し込めない
構造のレセプタクル。
3.20 二極回路遮断器 (double-pole circuit breaker) 指定された電流を上回る電流が流れたとき,回路内の
中立及び通電導線回路の電流を両極同時に遮断する遮断器。
3.21 固定くわ形板端子又は固定端子 (captive spade or captive terminal) ねじ式の端子固定金物が緩んで
も,小ねじ又はスタッドへの接続を維持する導線接続に用いる部品。
3.22 暴露導電部 (exposed conductive part) 触れやすく,通常は帯電していないが,故障状態にあっては
帯電するおそれがある導電部品。
3.23 ヒューズ (fuse) ある一定値を超える電流が,ある時間流れたとき,それ自体が挿入された回路中
に特別に設計され,割り当てられた部品の一部が溶断することによって電流を遮断し,その回路を開放す
る器具。
備考2. ヒューズとは,完成品に含まれるすべての構成部品の集まりをいう。
3.24 ガルバニ電流絶縁装置 (galvanic isolator) 直流低電圧のガルバニ電流を遮断するために,陸上電源
ケーブルの接地線に直列に接続する装置で,正常に接地線に連結された交流は通過できる。
4. 一般要求事項
4.1
接地線の絶縁被覆は,緑又は緑に黄色の縞を入れたものでなければならない。また,これらのいず
れの色も導電部品用の導線に使用してはならない。
備考3. 直流電気設備 (ISO 10133) の等電位ボンディング導体も緑又は黄しま(縞)付き緑の絶縁を
用い,直流電気機器の各種暴露導電部,その他存在する導電部及び直流負極接地部に連結さ
れる。
4.2
接地は,蓄電池の負極の端子にできるだけ近い位置で,舟艇の直流の負極接地をしなければならな
い。また,漏電遮断器(すべての舟艇の残余電流装置)が交流電気装置の主電源回路に取り付けられてい
る場合,直流電気装置の負極接地端子は,陸上の交流の接地線に接続する必要はない。
4.3
金属製の舟艇の船体を導線又は接地として使用してはならない。
4.4
保護導線は,水の溜まるおそれがある箇所より上の一点で,金属製の舟艇の船体と接続しなければ
ならない。
4.5
個々回路は,同時に二つ以上の電源から電気の供給を受けることができないものとしなければなら
ない。各陸上電源取入金物,発電機又はインバータは,個別の電源である。一つの電源から他の電源への
切り替えには,すべての導体は,通電線又は中性線いずれにおいても,電源回路を閉じる前に開かれ,接
点と接点との間でアークの発生を防ぎ,かつ,機械的又は電気機械的な手段を用いてインタロックされた
ものとしなければならない。電源を切り替えるときは,導体は,通電線の非接地側及び中性線いずれでも,
同時に断としなければならない。
4.6
電気機器の電圧がかかる部分は,JIS F 8007の規定によるIP2Xの保護,又はその他の手段(電気機
器以外へ使用してはならないもの)を用いることによって,不意の接触が起こらないよう,防護しなけれ
ばならない。電圧がかかる部分へ近づけるためには,ハンド工具の使用を必要とするか,又は少なくとも
外被をIP2Xとしなければならない。ただし,他に特定の規定がある場合は,この限りではない。
なお,適切な警告表示を掲げなければならない(5.2参照)。
4
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.7
中性線は,電源の部分,すなわち,舟艇内の発電機,絶縁変圧器若しくは極性変圧器の2次側又は
陸上電源接続部だけで接地しなければならない。陸上電源の中性線側は,陸上電源ケーブルによって接地
するべきであり,舟艇内に接地してはならない。
4.8
舟艇の接地は,絶縁変圧器を設置しない場合又は主電源回路にGFCI/RCDが備えられた場合には陸
上電源の接地へ接続するべきである(4.2参照)。絶縁変圧器が設置されているときは,陸上電源の接地に
接続してはならない。
4.9
ガルバニ電気絶縁装置(直流を通さない装置)又はその他の適切な器具は,交流を通電するとき,
その通電は可能であるが,迷走ガルバニ電流が流入しないようにこれを接地線(例:避雷)に設けること
ができる。
ガルバニ電気絶縁装置は,その出力試験端子へ対称的に5 000 A rmsを流すことのできる電源から短絡試
験における電力印加に耐えるように設計しなければならない。
短絡試験を3回実施した後,絶縁装置の電気的及び機械的特性は,不変のままでなければならない。
5. 表示
5.1
陸上電源取入金物が,2個以上ある場合には電圧,電流のほか,その対象回路をそれぞれの取入金物
に表示しなければならない。
5.2
舟艇の配電盤には,耐水性の警告標識を設けなければならない。この標識には,図1a)又は図1b)に
示す情報要素を含めなければならない。又は,使用する国に適切な言語で,次のように記載する。
備考4. 項目3.は,装置内に極性指示器を要求される場合に限る。
5. 項目2.及び5.は,恒久的に接続されている陸上電源ケーブルには必要ない。
b) 推奨する警告標識のテキスト(使用する国の適切な言語で記載)
図1 推奨する警告標識
5.3
スイッチ及び制御器には,スイッチの使用目的が明りょうな場合及び通常の操作では,スイッチの
“入”,“切”によって危険な状態を引き起こすおそれがない場合を除き,その用途を表示しなければなら
ない。
5.4
電気機器には,次に示す表示又は識別を行わなければならない。
a) 製造業者名又はその略号
b) 形式番号又はその名称
5
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
c) 定格電圧及び定格電流,又は定格電圧及び消費電力
d) 該当する場合は,相数及び周波数
e) 該当する場合は,ISO 8846による点火保護
6. 点火源
6.1
爆発性ガスが侵入する可能性があるISO 9094の規定による区画に設置する電気部品は,ISO 8846
の規定によって点火保護を行い,位置を決めなければならない。
6.2
LPG装置を装備する舟艇は,点火保護を施し,電気部品はすべてISO 10239の規定によって位置を
決めなければならない。
7. 過電流保護
7.1
極性をもたない場合には,通電線の非接地側及び中性線の両方を遮断する二極回路遮断器が要求さ
れる。
7.2
モータ負荷の過電流保護装置は,保護される回路及び保護装置を設ける舟艇内の場所,すなわち,
機関場所又はその他の場所に適合する温度定格及び需要負荷特性をもたなければならない。
7.3
すべての交流モータ設備及びモータ駆動装置の各モータは,7.2に従って,過電流保護装置又は温度
保護装置によって個々に保護しなければならない。
なお,ローターの連続拘束状態でも加熱しないモータについては,適用除外としてもよい。
7.4
過電流保護装置の定格は,保護対象の導線の最大許容電流を超えてはならない。
表A.1参照。
7.5
主電源回路
7.5.1
手動でリセットするトリップ・フリー形の遮断器は,電源から0.5m以内に設置するか,又はそれ
が実際的でない場合には,電源から配電盤の回路遮断器までの導体を接続箱,制御箱,閉囲配電盤などの
保護カバー内に収めるか若しくはコンディット,ケーブルトランク又は同等の保護カバー内に収めなけれ
ばならない。電源から配電盤までの距離が舟艇の長さの2分の1を超える場合には,手動によってリセッ
トできるトリップ・フリー形回路遮断器又はヒューズを陸上電源ケーブル接続部,発電機又はインバータ
の端子から,舟艇の長さの2分の1以内に設けなければならない。
7.5.2
配電盤/分電分岐回路からの陸上電源回路には,二極回路遮断器を設けなければならない。
7.5.3
絶縁変圧器及び有極変圧器には,過電流保護を行わなければならない。
これらの変圧器には,1個の装置として作動する2個又は3個の単相変圧器の列を含む。各変圧器は,
それぞれ一次側に設けられた変圧器の定格一次電流の125%以下を定格とした過電流保護装置によって保
護しなければならない。
7.6
分岐回路
7.6.1
極性をもつ電気系統の各分岐回路の通電線の非接地側には,主配電盤に接続する箇所に,過電流保
護装置,すなわち,ヒューズ又は回路遮断器を設けなければならない。
7.6.2
極性をもたない電気系統の各分岐回路の通電線の非接地側及び中性線には,主配電盤母線に接続す
る箇所に,二極回路遮断器による過電流保護を行わなければならない。
7.6.3
極性をもたない電気系統には,ヒューズを使用してはならない。
8. 漏電保護/接地漏電保護
6
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
8.1
GFCI (RCD) の遮断器は,トリップ・フリー形でなければならない。
8.2
主電源回路には,最大呼びトリップ感度が30mAで最大トリップ時間が100msの二極のRCDブレー
カーを設けなければならない。又は,厨房,トイレ,機械室,ウェザーデッキに設置する各レセプタクル
は,最大感度10mAのGFCI (RCD) によって保護しなければならない。
8.3 GFCI (RCD) 装置は,トリップ機能をマニュアルで試験するための内部回路をもたなければならない。
8.4
GFCI (RCD) 2極レセプタクルは,1個のアウトレット器具又は多重貫通設備において,“簡便なアウ
トレット器具”の一部として設けることができる。
9. 器具及び装置
9.1
舟艇内に設置する器具及び固定された交流電気装置は,いずれも二重絶縁構造となっていない限り,
通電しない導電性の暴露表面を接地導線に接続しなければならない。
9.2
全体的な過電流保護を行うことができる。
10. 設備の配線
10.1 導線の定格は,少なくとも300/600Vでなければならない。フレキシブルコードの定格は,300/300V
以上でなければならない。
10.2 導線及びフレキシブルコードは,銅製の多数のより線で構成され,その太さは,表A.1によって決
まる値より小さくてはならない。
備考6. 電気装置を接地するために使用する導線は,表A.1を参照する場合,電流を通す導線とはみ
なさない。
10.3 機関がある場所以外に用いる導線及びフレキシブルコードは,絶縁温度定格が60℃以内でなければ
ならない。
10.4 導線の最小断面積は,1mm2でなければならない。
ただし,配電盤の内部で,最小0.75mm2の導線を使用しているものについては適用除外とする。
10.5 機関場所の導線の絶縁温度定格は,耐油性で70℃以上とするか又は絶縁電線管若しくはスリーブで
保護し,附属書Aの規定によって定められた電流以下となる絶縁温度定格のものとしなければならない。
10.6 接地線は,供給回路の通電線の断面積と同等又はそれ以上でなければならない。
10.7 交流設備の通電線は,絶縁被覆の色別によって又は識別方法を示す系統配線図が舟艇に供給されて
いるときは,その他の手段によって,識別されなければならない。交流の通電線に黒色の絶縁被覆が使わ
れるときは,直流設備の負極の線 (ISO 10133) は,黄色の絶縁被覆とすることが要求される。
なお,黄色の絶縁被覆は,交流設備の電線として用いてはならない。
11. 据付け
11.1 導線の接続部は,風雨から保護された場所又はIP55/JIS F 8007以上で保護されていなければならな
い。
なお,間欠的な水没が起こる甲板上の接続部は,IP67/JIS F 8007以上の囲いをしなければならない。
11.2 導線はその全長にわたって,電線管,ケーブルトランク若しくはトレイで支持するか,又は端子か
ら1m以内に最初の支持台で支持され,かつ,間隔を450mm以内とした独立の支持台で支えなければなら
ない。
7
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
11.3 交流及び直流電線又は多心導線は,トランク,電線管又はトレイ内に一緒に敷設する場合,直流導
線は,交流導線から最小100mm間隔を保ち,十分に仕切るか又は交流導線とは分けて被覆又は束ねなけ
ればならない。
11.4 電流を通す導線は,ビルシ水及び水が溜まるおそれがあるいかなる場所でも,予測できる水面より
上に敷設しなければならない。
導線をビルジ場所に敷設しなければならない場合,配線及び接続部は,連続電線管のようなIP67/JIS F
8007以上の囲い内に設けなければならない。
11.5 端子用スタッド,ナット及び座金に使用する金属は,耐食性があり,かつ,耐電食性に優れ,導線
及び端子に適合したものでなければならない。アルミニウム及びめっきしない鋼材は,電気回路のスタッ
ド,ナット又は座金に使用してはならない。
11.6 導線にはすべて適切な端子を設けなければならない。すなわち,裸の電線端末の素線をスタッドで
結合する接続としてはならない。ただし,端末の素線が端子ポスト結合部と接触する全域にわたって固く
はんだ付けをする場合を除く。
なお,導線の公称断面積が2.5mm2以上の接続及び末端部は,はんだ付けによる結合として使用しては
ならない。
11.7 端子の小ねじ又はナットで,導線の素線と直接接続してはならない。ただし,導線の素線をルーブ
又はフックを作ってはんだ付けによって接続する場合,11.9及び11.14の保持要件を満足する場合を除く。
11.8 締付けねじ又はねじなし端子は,JIS C 2811に適合しなければならない。その他の端子をねじ又は
スタッドに保持する場合には,ねじ又はナットの締め付けだけに頼ることがないよう,丸形又はくわ形の
ものでなければならない。
なお,20Aを超えない回路で20Nの力を受けたとき,導線結合部が分離しない摩擦形のコネクタを使用
できる場合は適用除外とする。
11.9 ツイストコネクタ(ワイヤナット)は,使用してはならない。
11.10 端子の暴露軸部は,保護導線系統を除き,絶縁隔壁又はスリーブによって偶発的な短絡が生じない
ように保護しなければならない。
11.11 導線は,絶縁材を損傷させるおそれがある排気管及びその他の熱源から遠ざけて敷設しなければな
らない。
水冷式排気部分からは50mm以上,乾燥式排気部分からは250mm以上の間隔をとらなければならない
が,同等の防熱隔壁を設ける場合を除く。
11.12 物理的な損傷を受けるおそれがある導線は,シース,電線管又はその他同等の手段で保護しなけれ
ばならない。隔壁又は構造部材を貫通する導線は,こすれによって絶縁材が損傷を受けないように保護し
なければならない。
11.13 導線と導線,導線と導線群及び導線と端子を接続する各導線の接続部は,接続する中の最小の導線
が表1の値以上の引張力を受けたとき,端子から外れず1分間耐えなければならない。
8
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表1 導線の引張力
導線サイズ
mm2
引張力
N
導線サイズ
mm2
引張力
N
導線サイズ
mm2
引張力
N
0.75
40
6
200
50
400
1.00
60
10
220
70
440
1.50
130
16
260
95
550
2.50
150
25
310
125
660
4.00
170
35
350
150
770
11.14 はんだ付けをしないで用いられる圧着端子及び導線に対しては,接続に使用する端末処理用の圧着
工具を附属させ,11.13の要件を満足する結合部にしなければならない。
11.15 5本以上の導線を1個の端子スタッドに固定してはならない。
11.16 LPG装置を備えた舟艇は,ISO 10239に従って,点火保護電気部品 (ISO 8846) を備えなければなら
ない。
12. 配電盤
12.1 設備の通電/無通電を示す表示灯を設けた交流配電盤を取り付けなければならない。
12.2 設備がモータ回路に給電するように設計されているか又は舟艇内に発電機が装備されている場合,
配電盤に電圧計を設けなければならない。
12.3 配電盤には,設備の電圧を恒久的に表示しなければならない。
例: 230 V AC又は230 V 50 Hz
12.4 配電盤の前面のスイッチ及び遮断器の操作面は,容易に近づけるものとし,また,後面,すなわち,
端子及び接続側は,近づけるものとしなければならない。
12.5 配電盤の電気的接続部及びその構成部は,JIS F 8007に適合し,風雨から保護された場所に設けなけ
ればならない。
− 最低IP67−短時間水中に没する場合
− 最低IP56−水しぶきに暴露する場合
− 最低IP20−舟艇内の保護された場所に位置する場合
12.6 直流と交流の両系統を装備する舟艇は,それぞれ独立した配電盤から給電するか又は共通の配電盤
として仕切り,その他の確実な手段で,直流と交流部分を相互に明確に分離して給電しなければならない。
回路,構成部品及び導線を識別するための配線図を舟艇に備えなければならない。
13. レセプタクル/ソケット
13.1 舟艇の交流に使用するレセプタクル/ソケットとそれに適合するプラグは,直流に使用するそれら
の器具と互換性があってはならない。
13.2 雨,しぶき又ははね水を受ける場所に設けるレセプタクル/ソケットは,未使用時にはJIS F 8007
のIP55以上の保護ができなければならない。また,レセプタクルに適合するプラグについても引用規格に
よって,防水性を保持できる状態にできるものでなければならない。
13.3 浸水又は一時的に没水する場所に設けるレセプタクル/ソケットは,JIS F 8007のIP56以上の囲い
で保護し,かつ,この要件はプラグを差し込んだ状態でも満足しなければならない。
13.4 レセプタクル/ソケットは,保護導線用の端子をもつ接地極付きでなければならない。
9
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
13.5 調理室用に設けられるレセプタクル/ソケットは,器具のコードが人の歩き回る場所,レンジやシ
ンクの上を横切らないで差し込むことができる位置に設けなければならない。
13.6 レセプタクルは,電源から供給される電圧に適合した定格電圧のものでなければならない。
14. 電源オプション
14.1 交流設備の電力は,次のうち,一つの方法で供給しなければならない。
a) 要求される設備の設計負荷を供給する容量をもつ1本の陸上電源ケーブル,1個の電源取入金物,配
線及び構成部品
b) 要求されるシステムの設計負荷を供給する容量をもつ複数の陸上電源ケーブル,複数の電源取入金物,
配線及び構成部品
c) 舟艇の直流システムから交流電力を供給するインバータ
d) 要求される系統負荷を供給する舟艇内の交流発電機
e) 陸上電源ケーブルと舟艇内の発電機を同時に使用する組合せによる供給。ただし,これは,舟艇の回
路の配置によって,各電源に接続される負荷が4.6によって相互に分離されている場合に限る。
14.2 陸上電源ケーブルの容量と舟艇内の発電機の容量を合わせたものは,要求されるシステムの負荷容
量又はこれと同等以上でなければならない。
14.3 交流発電機は,4.6で要求される方法で,配電システムに接続しなければならない。
14.4 交流発電機からの給電導線は,少なくとも発電機の定格出力に適合するサイズで,かつ,発電機本
体に,9.2による過電流保護装置を備え保護しなければならない。
過電流保護装置の定格は,発電機の定格出力の120%を超えてはならない。
なお,最大過負荷電流が定格電流出力の120%を超えない自己制限発電機の場合は,適用除外として外
部に過電流保護装置を追加しなくてもよい。
10
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A(規定) 導線に対する要求事項
表A.1は,連続許容電流(アンペア),異なる定格温度及び導線の素線の最小数についての関係を示す。
これらは,3本以下の導線を束ねる場合の導線1本に対して示し,周囲温度30℃で測定している。
なお,機関室内(周囲温度60℃)の導線の場合又は4本以上の導線を束ねる場合は,最大定格電流を次
に示す係数によって減らさなければならない。
絶縁導線の温度定格
表A.1から得た最大許容電流値に
次の係数を乗じる。
70℃
0.75
80℃〜90℃
0.82
105℃
0.86
125℃
0.89
200℃
1.00
束ねられる導線数
表A.1から得た最大許容電流値に
次の係数を乗じる。
4〜6
0.7
7〜24
0.6
25以上
0.5
備考7. 温度と束ねによる減少は累積とする。
表A.1 導線要求
横断面積
mm2
導線1本当たりの最大許容電流 (A)
絶縁温度定格
素線の最小数
60℃
70℃
85〜90℃
105℃
125℃
200℃
1形(1)
2形(1)
0.75
6
10
12
16
20
25
16
1
8
14
18
20
25
35
16
1.5
12
18
21
25
30
40
19
26
2.5
17
25
30
35
40
45
19
41
4
22
35
40
45
50
55
19
65
6
29
45
50
60
70
75
19
105
10
40
65
70
90
100
120
19
168
16
54
90
100
130
150
170
37
266
25
71
120
140
170
185
200
49
420
35
87
160
185
210
225
240
127
665
50
105
210
230
270
300
325
127
1 064
70
135
265
285
330
360
375
127
1 323
95
165
310
330
390
410
430
259
1 666
120
190
360
400
450
480
520
418
2 107
150
220
380
430
475
520
560
418
2 107
導線の定格電流については,表A.1の断面積を補間してもよい。
注(1) 舟艇の一般配置には,少なくとも1形素線構成の導線を使用しなければならない。使用中にひん繁に曲げら
れることがある配線には,2形素線構成の導線を使用しなければならない。
11
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B(参考) オーナ用マニュアルに含めるべき指示事項
舟艇に交流電気システムが配置される場合には,オーナ用マニュアルにはこのシステムの操作及び保守
に関する指示事項を含めなければならない。これには,導線の識別を含めた配線図及び少なくとも次の各
項目を記載しなければならない。
a) 舟艇の電気設備又は関連図面を変更しないこと。作業及び保守は船舶電気技術者(船舶電装士など)
の資格保持者が行うこと。
b) 可能な場合いつでも,二重絶縁又は3線式保護電気器具を使用すること。
c) 設置された電気器具の金属容器又は外被を,舟艇の接地系統(緑又は,黄色の縞をつけた緑色の導線)
に接続すること。
d) 逆極性検知器が作動している場合には,電気装置を使用しないこと。舟艇の電気装置に通電する前に
極性の誤りを直すこと(1)。
e) 警告−陸上電源ケーブルの端は,水中につけてはならない。
付近で泳いでいる人を死傷させるおそれのある電場が生じる可能性がある。
f)
警告−感電及び火災の危険を最小にするには:
− 陸上電源接続スイッチを切にしてから,陸上電源ケーブルを接続又は切り離すこと。
− 陸上電源ケーブルの接続は,先に舟艇側の取入金物に接続してから,陸上電源に接続すること(2)。
− 陸上電源ケーブルは,まず陸上電源側で切り離すこと。
− 逆極性検知器が作動した場合は,誤接続であり,直ちにケーブルを切り離すこと(3)。
− 陸上電源取入金物のカバーは,確実に閉鎖すること。
− 陸上電源ケーブル接続器は,改造しないこと。
注(1) 分極システムには極性指示器が要求されている。
(2) 永久接続陸上電源ケーブル設備には要求しない。
(3) 逆極性検知器がシステムに要求されていない場合は,該当しない。
12
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C(参考) 参考文献
この規格の意図は,爆発及び火災に対する保護を規定することにある。重要なことは,この規格だけで
この目的を達成しようと考えていないことを認めることである。製作者は,同じ可能性のある危険に対す
る保護に関して別の諸規格にも従わなければならない。これらの規格を以下に列挙し,その内容を簡単に
説明する。その要件を完全に理解するために製作者は実際の規格を参照しなければならない。これらの規
格に従うことによって,すべての舟艇,特にガソリン又はLPGを使用する舟艇の安全性を高めることは間
違いない。
[1] ISO 10088 : 1992, Small craft−Permanently installed fuel systems and fixed fuel tanks
100%の圧力試験を受けた個々の燃料タンク
火災試験を受けた非金属製燃料タンク
耐火性のフレキシブルな燃料ホース
火災試験を受けた非金属製燃料装置部品
耐食性の燃料タンク材
電食面で適合する金属部品
サイホン防止保護要件
燃料給油系ホースの二重クランプ
すべての金属部品の電気的な接地
すべての燃料装置の100%圧力試験
[2] ISO 8846 : 1990, Small craft−Electrical devices−Protection against ignition of surrounding flammable gases
ガソリン機関,ガソリン及びLPGタンク区画の全部品は,開放火花に対して着火しないように保護する
べきである。これは,全電気接点,整流子,ブラシ,スイッチ,リレー,発電機,ヒューズ,配電器,機
関クランクモータ,推進トリムモータその他はもとより,機関全体についても適用する。
この規格は,更に,各部品が装置のどんな運転条件にも耐えるように要求する。その条件には,定格電
流の400 %までの達成可能な最大過負荷(回路遮断器,スイッチ,その他)及び製品の製作者が指定した
過電流保護装置で保護される回路をもつすべてのモータの回転子ストール状態が含まれる。
[3] ISO 7840 : 1994, Small craft−Fire resistant fuel hoses
機関及び燃料タンクの区画には,耐火性の燃料ホースしか使用してはならない。機関と強固に取り付け
た金属配管との間には,振動による破損をなくすためにフレキシブルなホースを使用しなければならない。
このホースは,火災,圧力,真空圧壊,オゾンその他の環境に耐え,かつ,燃料の浸透が最小限でなけれ
ばならない。
[4] ISO 9097 : 1991, Small craft−Electric fans
[5] ISO 8849 : 1990, Small craft−Electrically operated bilge-pumps
ガソリン機関区画,ガソリン又はLPGタンク区画に取り付けられる場合には,すべての部品は,着火に
13
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
対する保護をし,すべての配線に絶縁を施し,海洋環境に適し,かつ,モータが過負荷又は回転数が低下
した状態のとき危険を生じないようにしなければならない。
[6] ISO 10239 : (1), Small craft−Liquefied petroleum gas (LPG) systems
極端な温度に耐える装置
器具は承認を受け,通風区画にしか取り付けない。タンク及び圧力容器は,識別され,換気され,
かつ,船外に排水できるロッカー内にしか取り付けない。
燃料配管及びその支持台に関する仕様を満足すること。
器具は,器具ごとに火災事故締切り制御装置によって十分守られていること。
各器具には,警告ラベルを付けること。
設置された装置の圧力試験
点火防止を施した燃料貯蔵のロッカー内のすべての電気装置
[7] ISO 9094-1 : (1), Small craft−Fire protection Part 1 : Craft with a hull length of up to and including 15m
ISO 9094-2 : (1), Small craft−Fire protection Part 2 : Craft of more than 15m and up to and including 24m
出口及び緊急脱出口の仕様
裸火の近くの場所における材料仕様
機関区画内の自己消火材料
湯沸かしのための換気及び煙道保護
無人器具の密封燃焼装置
燃料タンクの仕様
携帯用消火器の,近づきやすさ,保護,積込み及びロッカー識別大きさに関する要求事項
消火器の数及び種類の仕様
ある種の舟艇の固定式消火装置の仕様
ボンベ据付けの仕様
固定装置の場合の遠隔放出
分配管及びホースの耐火性
放出及び制御の仕様
放出及び操作の指示書
[8] ISO 11105 : 1997(2) Small craft−Ventilation of petrol engine and/or petrol tank compartments
区画容積に基づく通風量
区画の気密度の仕様
機関区画の自然通風及び機動通風
ある種の燃料区画の自然通風
舟艇外部の通風穴
操船者のためのブロア警告
注(1) 発効予定
(2) 発効予定 ISO 11105 : 1995の改正版
14
F 1029 : 1998 (ISO/DIS 13297 : 1997)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
[9] ISO 10134 : 1993, Small craft−Electrical devices−Lightning protection
舟艇に適合した避雷設備の設計,構造及び設備に関する要求事項
[10] IEC 364-7-709 : 1994, Electrical installations of buildings−Part 7 : Requirements for special installations or
locations−Section 709 : Marinas and pleasure craft
マリーナ及び舟艇に接続される交流電気システム
舟艇−交流電気設備原案作成専門分科会 構成表
氏名
所属
(専門分科会長)
坂 元 謙 介
学識経験者
(委員)
久 能 孝 一
財団法人日本海事協会
旗 手 光 清
日本小型船舶検査機構
村 山 雅 己
社団法人日本船舶品質管理協会船舶艤装品研究所
中 井 清
社団法人日本マリーナ・ビーチ協会
瀧 源 一 秀
タキゲン製造株式会社ウォーターフロント事業部
中 村 正 和
中村船具工業株式会社
鳴 海 照 芳
日産自動車株式会社マリーン事業部
本 田 哲 郎
ヤンマー造船株式会社
塩 飽 誠
株式会社高工社
岸 英 樹
ヤマハ発動機株式会社W/V事業部
杉 山 明 久
ヤマハ発動機株式会社舟艇事業部
杉 田 英 二
株式会社アイ・イー・エム
(事務局)
冨 永 恵 仁
財団法人日本船舶標準協会
長谷川 幸 生
財団法人日本船舶標準協会