2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
F 1028-1997
舟艇−陸電装置
Small crafts−Shore power systems
1. 適用範囲 この規格は,長さ24m以下,かつ,総トン数20トン未満の舟艇で単相交流125V以下,周
波数50Hz又は60Hzの船外の電源を舟艇に引き込む場合の船内の陸電装置(1)(以下,装置という。)につ
いて規定する。
注(1) 陸上の電源を船内に取り入れるため舟艇に装備する装置。
備考 この規格の引用規格を,次のとおりとする。
JIS C 3312 600Vビニル絶縁ビニルキャブタイヤケーブル
JIS C 3401 制御用ケーブル
JIS C 3410 船用電線
JIS C 8303 配線用差込接続器
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義を,次に示す。
(1) 通電導線 電源から各種電気装置及びレセプタクルまで電流を流す導線。
(2) 中性線 通電導線で大地電位に保たれた側の導電線。
(3) 接地 大地と同等な電位になるように接続すること。
(4) 接地線 人体への感電の影響を最小限にするために,電気機器の外部に露出している金属きょう(筐)
体を接地する導電線で,通常は電気を流していない。
(5) 配電盤 電源を船内の電気設備に給電する目的で回路の開閉監視,制御及び保護を行う装置。
(6) 過電流保護装置 設定された電流値を上回った場合,自動的に回路を遮断する装置。ヒューズやサー
キットブレーカなどのこと。
(7) トリップフリー形過電流遮断器 熱若しくは磁気又はその両方の手段によって作動する過電流保護装
置で,人力で遮断機構を無効にすることができないように設計された遮断器。
(8) 漏電遮断器 電源側から大地に流れる電流(漏電電流)が設定値を超えた場合,各種電気装置及びレ
セプタクルへの電気の供給を遮断する保護装置。
(9) 逆極性検知装置 陸上の電源と船の陸電回路とを接続したとき,通電導線の接地している側(中性線)
と接地していない側とが逆転して接続されていることを検知する装置。
(10) 陸上電源取入金物 船内の交流回路と陸上電源とを電気的に接続するために船に設けられた金物。レ
セプタクルの一種であるが,通常のものとは異なり雄端子が出ているいわゆる逆心タイプの金物をい
う。
(11) レセプタクル 船内で電気を取り出すために設けられた雌端子をもつコネクタ。コンセントともいう。
(12) 裸充電部 電圧がかかっているか又はかかることがある露出部。
(13) 安全緑縁変圧器 人体に対する電撃などの電気的危険保護の目的で,給電源から絶縁するために船体
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金属部に対し,一次側,二次側とも絶縁してある変圧器。
3. 一般要件 装置の一般要件は,次による。
(1) 交流電気機器個々の回路には2個以上の電源から同時に通電することができないようにすること。
(交流電源には,陸上電源,船内の発動発電機,DC/ACインバータなどがある。)
(2) 複数の陸上電源取入金物を備える場合,各々の取入金物ごとに回路は独立していること。
(3) 電気装置の裸充電部は,覆い,その他の有効な手段によって不用意に人体が接触しないようにする。
(4) レセプタクルの接地線及び金属製のきょう(筐)体をもつ電気機器の接地を陸上電源取入金物の接地
極を介して陸上電源の接地線に接続すること。ただし,安全絶縁変圧器を取り付けている場合はこの
限りではない。
(5) 陸上の電源回路と船舶側の回路とが誤接続されない構造又は機構をもつこと。
4. 配電方式及び電圧 装置の配電方式及び電圧は,交流125V以下の単相3線式(単相2線+接地線)
とする。
5. 陸上電源取入金物 陸上電源取入金物は,次による。
(1) 陸上電源取入金物の取り付け場所は,雨,飛まつ(沫)水など,水がかからない場所が望ましい。た
だし,水がかかる場所に設置する場合は,次のとおりとする。
(a) 雨,飛まつ(沫)水など,水がかかる場所に取り付ける場合は,ばねの力で自動的に閉まるふたを
備えるか又はねじ込み式でガスケット付きのふたを備えること。
また,陸上電源に接続するケーブルのプラグが接続されている状態において接続部分に水が浸入
しないこと。
(b) 喫水線に近い船の外側など水中に没する可能性がある場所に取り付ける場合は,ねじ込み式でガス
ケット付きのカバーを備えたものであること。
また,陸上電源に接続するケーブルのプラグが接続されている状態において水密であること。
(2) 陸上電源取入金物の形状は,図1に示すとおりとし,接地極付きであること。
図1 陸上電源取入金物
備考 形状及び寸法は,JIS C 8303の規定による。
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図1 (続き)
参考 ANSI/NEMA WD 6の形式L5-30Pによるものを示している。
参考 ANSI/NEMA WD 6の形式L5-50Pによるものを示している。
6. 保護及び検知装置
6.1
過電流保護装置 装置は,次の要件に適合した過電流保護装置を備えなければならない。
(1) トリップフリー形過電流遮断器を使用する。
(2) 主電源回路の遮断器は通電線の2回路が同時に開閉するものであること。
(3) 過電流保護装置の定格遮断電流は保護対象回路の電線及び陸上電源取入金物の定格最大電流容量を超
えてはならない。
6.2
漏電保護装置 装置は,人体及び装置の保護をさらに確実なものにするために,漏電遮断器を備え
ることが望ましい。
なお,備える場合は,次の要件に適合したものでなければならない。
(1) 漏電遮断器は関連した回路すべてを保護するように,配電盤への給電線の回路に装備するか,個々の
特定した分岐回路に装備してもよい。
(2) 漏電検知電流値は30mA以下,トリップ時間は100ms以下に設定すること。
(3) 水場に設置するレセプタクルには,漏電遮断器が組み込まれたものを設置することが望ましい。
6.3
逆極性検知装置 装置は,次の要件に適合した逆極性検知装置を備えなければならない。
なお,配電盤への給電線の回路に安全絶縁変圧器が装備されている場合は逆極性検知装置を備える必要
はない。
(1) 陸上の電源と船の陸電回路を接続したとき,通電導線の接地している側(中性線)と接地していない
側とが逆転して接続されていることを検知すること。
(2) 逆極性を検知した場合,継続した視覚又は聴覚信号を発すること。
(3) 逆極性検知装置の警報を発する部分には,その警報の意味することを示す適切な表示を行うこと。
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7. 配線 装置の配線は,次による。
(1) 敷設する電線及びケーブルは,JIS C 3410,JIS C 3401及びJIS C 3312の規定によるもの又はこれと
同等以上の性能を有するものとする。
(2) 各回路の絶縁被覆の色は,中性線は白,接地線は緑,接地しない通電導線はそれ以外の色とする。
(3) 電線の線径はその回路を敷設する温度環境及び同時に束ねられる本数を考慮し,かつ保護する過電流
保護装置の定格遮断電流以上の電流容量をもつこと。
8. 配電盤 配電盤は,次による。
(1) 配電盤は,操作しやすい位置に配置し,配電盤上及び内部の構成部品に風雨や水がかからない位置に
設置するか,有効な手段によって防水保護をすること。
(2) 直流電源をもつ舟艇は,直流の配電盤として独立したものとすること。ただし,共通の配電盤とする
場合には,仕切り板などで明確な区分を設けること。
また,盤上の表示については直流と交流との区分を明確につけること。
9. レセプタクル レセプタクルは,次による。
(1) レセプタクルの取付け場所は,雨,飛まつ(沫)水など,水がかからない場所が望ましい。ただし,
水のかかる場所に設置する場合は,次のとおりとする。
(a) 雨,飛まつ(沫)水など,水がかかる場所に取り付ける場合は,ばねの力などで自動的に閉まるふ
たを備えたレセプタクルであること。
漏電遮断器がレセプタクル内に組み込まれたものを設置してもよい。
(b) 喫水線に近い船の外側など水中に没する可能性がある場所に取り付ける場合は,ねじ込み式でガス
ケット付きのカバーを備えたものであること。
また,プラグが接続されている状態において水密であること。
(2) レセプタクルの形状は,図2に示すとおりとし,接地極付きであること。
図2 レセプタクル
備考 形状及び寸法は,JIS C 8303の規定による。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図2 (続き)
備考 形状及び寸法は,JIS C 8303の規定による。
(3) 交流電源のレセプタクル及びそれに合致するプラグは,直流電源のレセプタクル及びそれに合致する
プラグと互換性がないこと。
(4) 調理室に設置するレセプタクルは,そこに接続する器具のコードがシンク及びレンジの上を通ること
がない位置に設ける。
10. 表示
10.1 陸上電源取入金物の近辺に電圧,最大使用電流及び陸電使用上の注意事項を表示する。
なお,図3に注意事項の一例を示す。
図3 注意事項の例
10.2 配電盤には陸電の電圧を表示する。
例 交流100V
10.3 レセプタクルの本体又は近辺には電圧及び最大使用電流を表示することが望ましい。
例 AC 100V/15 A
関連規格 ANSI/NEMA WD 6 Wiring Devices Dimensional Requirements
[ANSI (American National Standards Institute) 及びNEMA (National Electrical Manufacuturers
Association) の規格]
ABYC E-8 Alternating Current Electrical Systems On Boats
[ABYC (American Boat and Yacht Council Inc. ) の規格]
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原案担当作業委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
栗 原 宏 一
日産自動車株式会社マリン事業部
(委員)
池 田 久 司
財団法人日本海事協会
小 野 純 生
日本小型船舶検査機構
村 山 雅 己
社団法人日本船舶品質管理協会船舶艤装品研究所
中 井 清
社団法人日本マリーナ・ビーチ協会
瀧 源 一 秀
タキゲン製造株式会社ウォーターフロント事業部
中 村 正 和
中村船具工業株式会社
鳴 海 照 芳
日産自動車株式会社マリン事業部
岸 英 樹
ヤマハ発動機株式会社マリン事業本部
塩 飽 誠
株式会社高工社
(事務局)
冨 永 恵 仁
財団法人日本船舶標準協会
今 井 要 介
財団法人日本船舶標準協会