2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
F 0701-1989
船用電気器具のプラスチック選定基準
Criteria for Selection of Plastics Used
for Marine Electrical Appliances
1. 適用範囲 この規格は,船用の照明器具及び配線器具,船内通信器具,航海計器などの船用電気器具
(以下,器具という。)の構造材料,電気絶縁材料及び部品材料に用いるプラスチックの性能及び選定基準
について規定する。
備考 この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,参
考として併記したものである。
引用規格:
JIS K 6900 プラスチック用語
JIS K 6911 熱硬化性プラスチック一般試験方法
JIS K 7207 硬質プラスチックの荷重たわみ温度試験方法
JIS Z 8701 XYZ表色系及びX10Y10Z10表色系による色の表示方法
関連規格:JIS A 1415 プラスチック建築材料の促進暴露試験方法
JIS C 0028 環境試験方法(電気・電子)温湿度組合せ(サイクル)試験方法
JIS K 6717 メタクリル樹脂成形材料
JIS K 7110 硬質プラスチックのアイゾット衝撃試験方法
JIS K 7113 プラスチックの引張試験方法
JIS K 7203 硬質プラスチックの曲げ試験方法
JIS K 7208 プラスチックの圧縮試験方法
ASTM D 638 Standard Test Method for Tensile Properties of Plastics
ASTM D 648 Standard Test Method for Deflection Temperature of Plastics under Flexural Load
ASTM D 695 Standard Test Method for Compressive Properties of Rigid Plastics
ASTM D 790 Standard Test Method for Flexural Properties of Plastics and Electrical Insulating
Materials
2. 用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,JIS K 6900(プラスチック用語)によるほか,次
による。
(1) 熱変形温度 JIS K 7207(硬質プラスチックの荷重たわみ温度試験方法)によって測定した荷重たわ
み温度。
(2) 耐熱温度 JIS K 6911(熱硬化性プラスチック一般試験方法)の耐熱性試験を行い,有害なひび,割
れ,ふくれ,変形などが生じない限界温度。
2
F 0701-1989
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(3) 異種材料との化学反応 器具を構成するプラスチックとゴム,接着剤,異質プラスチック,金属,潤
滑剤,絶縁電線などの異種材料との間に生じる化学反応。
(4) 後収縮 器具が使用中に受ける温度サイクルなどによって,プラスチックが収縮し,元に戻らなくな
る現象。
(5) 低温性能 器具を低温下で使用したとき,器具を構成するプラスチックが,ぜい(脆)性破壊するこ
となく,器具の機能を維持できる低温に対する能力。
(6) 耐燃性 JIS K 6911による垂直燃焼試験及び水平燃焼試験を行い,着火炎の燃焼状態がV-0級,V-1
級,HB級に区分した条件に適合する耐燃焼性能。
3. 選定区分 プラスチックの選定区分は,器具各部の使用目的,環境条件などによって,表1のとおり
とする。
表 1
選定区分
選定区分
の記号
適用区分
適用例
一般構造部材
A1
機械的強度を必要
とする部分
スイッチ用ボタン,部品取付座,つまみ,
非防水器具体
容器外被
A2
接続箱体及びふた,レセプタクル体,作
業灯体,蛍光灯ケース
長期応力発生部
A3
取付足,電線貫通金物体及び同締付グラ
ンド,ねじ締付部
可動部及びしゅう動部
A4
スイッチの可動部,軸受,カム,歯車
衝撃を受ける部分
A5
ガード,容器の外被
電気絶縁部分
B1
電気的性能を必要
とする部分
端子絶縁体,裸導電体支持部
アーク発生部
B2
スイッチなどの火花発生部付近
常時高温になる部分
C1
熱的強度を必要と
する部分
電球受金及びヒータ付近
温度変化が大きい部
分のねじ及び精密は
めあい部
C2
白熱灯ガード枠のねじ部
温湿度サイクルを受
ける部分
C3
防水形照明器具のグローブ及びガード
暴露部
D1
環境条件への適合
を必要とする部分
防水形照明器具の外被,防水形電路器具
の外被
多湿下で使用される部分
D2
浴室用照明器具の外被
低温下で使用される部分
D3
冷凍室内の器具
薬品又は特定のガス
に触れる部分
E1
化学的性能を必要
とする部分
自動車運搬船のカーホールド,バッテリ
ールーム,ペイントストアなどに装備す
る器具
光線透過を目的とす
る部分
F1
光学的性能を必要
とする部分
照明器具のグローブなどの透光体
3
F 0701-1989
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4. 性能区分
4.1
機械的性能 プラスチックの機械的性能は,表2による。
表2
等級
機械的性能
適用例
引張強さ
N/mm2
{kgf/mm2}
伸び
%
圧縮強さ
N/mm2
{kgf/mm2}
曲げ強さ
N/mm2
{kgf/mm2}
衝撃強さ
J/m
{kgf・cm/cm}
01
60 {6} 以上
150以下
74 {7.5} 以上 74 {7.5} 以上 150 {15} 以上 強い外的衝撃を受ける
おそれがある部分
02
30 {3} 以上
150以下
60 {6} 以上
40 {4} 以上
15 {1.5} 以上
軽度な外的衝撃を受け
たり,強い外力又は振
動を受けるおそれがあ
る部分
03
20 {2} 以上
400以下
40 {4} 以上
30 {3} 以上
15 {1.5} 以上 軽度な外力を受けるお
それがある部分
04
20 {2} 以上
400以下
30 {3} 以上
20 {2} 以上
10 {1} 以上 外力を受けない部分
参
考
試
験
方
法
JIS K 7113
JIS K 6911
ASTM D 638
JIS K 7113
ASTM D 638
JIS K 7208
JIS K 6911
ASTM D 695
JIS K 7203
JIS K 6911
ASTM D 790
JIS K 7110
JIS K 6911
備考 衝撃強さは,アイゾット衝撃値を示し,試験片の幅は,熱硬化性プラスチックの場合12.7mm,熱可塑性プ
ラスチックの場合3.2mmを基準とする。
4.2
電気的性能 プラスチックの電気的性能は,表3及び表4による。
表3
等級
耐電圧
絶縁抵抗 Ω
耐アーク
性
耐トラッ
キング性
吸水率
%
適用例
常態
煮沸後
11
表4に示す電
位傾度とな
る試験電圧
に1分間耐え
ること。
1011以上
1010以上
受渡当事者間の協定
による。
0.3以下 定格電圧500V以下
の導電部材支持部
12
1010以上
109以上
0.4以下 定格電圧250V以下
の導電部材支持部
13
109以上
108以上
0.5以下 定格電圧125V以下
の導電部材支持部
参
考
試
験
方
法
JIS K 6911
JIS K 6911
JIS K
6911
表4
等級
耐電圧試験における電位傾度kV/mm
11
10
12
9
13
8
4
F 0701-1989
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.3
熱的性能 プラスチックの熱的性能は,耐熱性能,寸法安定性能及び耐燃性によって区分し,次に
よる。
(1) 耐熱性能 耐熱性能は,使用最高温度の区分によって,表5に示す熱変形温度及び耐熱温度に適合す
ること。
表5
単位 ℃
等級
使用最高温度
熱変形温度
耐熱温度
21
180
208以上
226以上
22
160
186以上
202以上
23
140
164以上
178以上
24
120
142以上
154以上
25
100
120以上
130以上
26
80
98以上
106以上
27
60
76以上
82以上
参
考
試
験
方
法
JIS K 7207
ASTMD648
JIS K 6911
備考1. 熱変形温度測定時の曲げ応力は,原則として182N/cm2
{18.6kgf/cm2} とし,使用応力が小さい場所(例えば4.1の等級03,
04)に適用する場合は,45N/cm2 {4.6kgf/cm2} とすることができ
る。
2. 耐熱温度の試験時間は2hとする。
(2) 寸法安定性能 寸法安定性能は,プラスチック製品成形後に温度試験を行い,後収縮による寸法変化
率で分類し,表6による。
試験温度及び時間は,表7による。ただし,成形後アニーリングして使用するものでは,アニーリ
ングした後に試験する。
表6
等級
寸法変化率
%
適用例
31
0.2以下
回転軸受,取外しを行うねじはめあい部など比較
的精度の高い部分で寸法安定性を必要とする部分
32
0.5以下
取外しを行わない固定はめあい部など比較的精度
の高い部分で寸法安定性を必要とする部分
33
1.0以下
寸法安定性は必要とするが,寸法変化に対する余
裕が十分とれる部分
備考1. 寸法変化率は,完成品の中で特に必要な箇所について適用する。
2. 寸法変化率は,次式によって算出する。ただし,初期寸法は加熱前の寸法,
後期寸法は加熱後,室温まで自然に冷却した後の寸法とする。
100
1
2
1
×
−
=
∂
l
l
l
ここに,
δ: 寸法変化率 (%)
l1: 初期寸法 (mm)
l2: 後期寸法 (mm)
5
F 0701-1989
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表7
使用最高温度
℃
試験温度
℃
試験時間
h
180
208以上
3
160
186以上
140
164以上
120
142以上
100
120以上
80
98以上
60
76以上
(3) 耐燃性 耐燃性は,表8による。
表8
等級
耐燃性
試験方法
41
V-0級
JIS K 6911による。
42
V-1級
43
HB級
備考 燃焼試験における試験片の寸法は,JIS K 6911
による。
4.4
耐候性 プラスチックの耐候性は,表9による。
表9
等級
耐候性
適用例
参考
試験方法
51
日光,雨雪などの自然条件の影響を受けて
も,使用上有害な損傷が生じないこと。
暴露部で使用するもの
JIS A 1415のWS
形
52
風雨,温度,湿度などの自然条件の影響を受
けても,使用上有害な損傷が生じないこと。
日光を直接受けない高温多
湿の場所で使用するもの
JIS C 0028の試
験方法
備考1. 等級51の耐候性試験は,サンシャインカーボンアーク灯を用い,原則として製品完成状態で行い,試
験時間は200hとする。ただし,試験片で行う場合は,試験時間は500hとする。
2. 等級52の耐候性試験は,製品完成状態及び正規に近い取付け状態で行い,試験は2サイクル行う。
ただし,照明器具では,点灯時1サイクル,消灯時1サイクルとする。
4.5
低温性能 プラスチックの低温性能は,器具を正規の取付け状態で規定試験温度に2時間放置した
後,その温度下で器具の機能を維持しなければならない。
なお,試験温度は使用最低温度の区分によって表10による。
表10
単位 ℃
等級
使用最低温度
試験温度
61
−60
−60
62
−50
−50
63
−40
−40
64
−30
−30
65
−20
−20
66
−10
−10
6
F 0701-1989
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.6
異種材料との化学反応 異種材料との化学反応は,表11による。
表11
等級
化学反応
備考
71
通常の使用条件において全く反応が生じないもの
試験方法及び判定
基準は備考による。
72
通常の使用条件において実用上有害な反応が生じないもの
備考1. 試験方法 試験は,温度50102
+−℃,相対湿度65±20%の恒温槽内に器具を正規の使用状
態に取り付け,器具の定格運転状態で7日間連続運転を行う。ただし,この試験に用
いる恒温槽が,内部空気を強制循環させる方式のものである場合は,器具の自己発熱
による温度上昇が,槽内の空気の流れによって受ける影響をできるだけ少なくなるよ
う適当な覆いなどを設けて試験する。
2. 判定基準 判定基準は,次による。
(1) 等級71は,化学反応が全く認められないもの。
(2) 等級72は,化学反応は認められるが,反応程度が少なく,かつ,器具の機能を損な
わず,引き続き使用できる状態のものは無害とみなし,器具の機能を低下させたり,
著しい変形,ひび,割れ,溶解などが発生した場合は,実用上有害とみなす。
4.7
耐薬品性 プラスチックの耐薬品性能は,表12による。
表 12
等級
耐アルカリ
耐酸
耐油
耐溶剤
耐水
耐ガス
その他
81
受渡当事者間の協定による。
82
器具製造業者の仕様書による。
4.8
光線透過率 プラスチックの光線透過率は,表13による。
表13
等級
光線透過率 %
適用例
参考
無色透
明
乳白
赤
黄赤
緑
青
試験方法
91
85以上
−
18以上
−
18以上 18以上 信号灯,作業灯
JIS K 6717
92
80以上 45以上 15以上 35以上
−
−
天井灯,蛍光灯
93
60以上 40以上 10以上 25以上 10以上 10以上 表示灯
備考1. 試験片の厚さは,3.4mmとする。
2. 色相及び光線透過率を厳密に規定する必要がある場合は,JIS Z 8701(XYZ表色系及びX10 Y10
Z10表色系による色の表示方法)による。
5. 選定基準 プラスチックの選定基準は,選定区分(表1)と性能区分(表2〜13)との組合せによって,
表14による。
なお,選定区分が二つ以上組み合わされる場合は,性能等級の高位の性能を採用する。
表14
選定
性能区分
機
械
的
性
能
電
気
的
性
能
耐
熱
性
能
性
能
寸
法
安
定
耐
燃
性
耐
候
性
低
温
性
能
の
化
学
反
応
異
種
材
料
と
耐
薬
品
性
光
線
透
過
率
区分の
等級
選定区分
記号
01〜04 11〜13 21〜27 31〜33 41〜43 51〜52 61〜66 71〜72 81〜82 91〜93
一般構造部材
A1
○
−
○
△
−
−
△
○
○
−
容器外被
A2
○
−
○
△
○
△
△
○
○
−
長期応力発生部
A3
○
−
○
−
−
△
△
−
△
−
可動部及びしゅう動部
A4
○
−
○
△
−
−
△
○
○
−
7
F 0701-1989
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
選定
性能区分
機
械
的
性
能
電
気
的
性
能
耐
熱
性
能
性
能
寸
法
安
定
耐
燃
性
耐
候
性
低
温
性
能
の
化
学
反
応
異
種
材
料
と
耐
薬
品
性
光
線
透
過
率
区分の
等級
選定区分
記号
01〜04 11〜13 21〜27 31〜33 41〜43 51〜52 61〜66 71〜72 81〜82 91〜93
衝撃を受ける部分
A5
○
−
○
−
−
△
△
−
△
−
電気絶縁部分
B1
○
○
○
−
○
−
−
−
△
−
アーク発生部
B2
○
○
○
−
○
−
−
−
−
−
常時高温になる部分
C1
○
−
○
△
○
△
−
○
−
−
温度変化大なる部分のね
じ及び精密はめあい部
C2
○
−
○
○
△
−
−
−
−
−
温湿度サイクルを受ける
部分
C3
○
−
○
○
△
○
○
○
−
−
暴露部
D1
○
−
○
−
○
○
△
○
○
−
多湿下で使用される部分
D2
○
−
○
−
−
△
−
○
△
−
低温下で使用される部分
D3
○
−
−
△
△
△
○
−
−
−
薬品又は特定のガスに触
れる部分
E1
○
−
○
−
−
△
−
○
○
−
光線透過を目的とする部
分
F1
○
−
○
−
△
△
△
−
○
○
備考1. 表中の記号は,○印は規定するもの,△印は必要によって規定するもの,−印は規定しないものを表す。
2. 性能等級は,器具の要求度によって個別に選定する。
6. 選定基準の呼び方 プラスチック選定基準の呼び方は,規格の名称又は規格番号及び性能等級の組合
せによって表す。
なお,性能等級に特別な条件又は注意事項が付くものでは,その内容を併記する。
例:1. 船用電気器具のプラスチック選定基準 02-26-72-82
2.
JIS F 0701 -02-26(1)-42-52-64-72-82
注(1) 器具のぎ装工事において,取付足が取付ピースの溶接による高熱を受けることを前提とす
る場合は,取付足部分を断熱材で保護するか,又は,この高熱に直接耐える材料を選定す
る。
8
F 0701-1989
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
船舶部会 船用照明器具専門委員会 構成表 昭和56年9月11日制定のとき)
氏名
所属
(委員会長)
末 広 一 郎
財団法人日本海事協会
土 屋 睦 夫
運輸省船舶局
菅 原 淳 夫
工業技術院標準部
斎 藤 宗三郎
財団法人日本船舶標準協会
竹 貫 登志雄
船舶整備公団
大 石 幸 明
大石電機株式会社
小 川 雄
株式会社五十嵐硬化工業所
笠 井 富 夫
小糸工業株式会社
神 谷 鍵 次
株式会社三英電機製作所
北 澤 毅
株式会社北澤電機製作所
佐 藤 泰 司
三信電具製造株式会社
平 川 武 治
森尾電機株式会社
水 田 裕 雄
桑畑電機株式会社
森 下 幸 作
株式会社高工社
五十嵐 昭 一
住友重機械工業株式会社船舶海洋本部
大 川 清 広
石川島播磨重工業株式会社生産本部
大須賀 実
川崎重工業株式会社船舶事業部
神 浦 恒 男
日本鋼管株式会社重工事業部
鶴 井 信 勝
三菱重工業株式会社造船設計部
橋 口 真 治
日立造船株式会社船舶営業本部
久 本 修 三
三井造船株式会社船舶海洋プロジェクト事業本部
(事務局)
石 井 清 次
工業技術院標準部機械規格課
岡 部 康 恒
工業技術院標準部機械規格課
(事務局)
小 林 秋 穂
工業技術院標準部機械規格課(平成元年6月15日改正のとき)
山 形 智 幸
工業技術院標準部機械規格課(平成元年6月15日改正のとき)