サイトトップへこのカテゴリの一覧へ

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

F 0404-1985 

海上試運転におけるディーゼル主機の 

出力算出方法 

Calculation Methods for Main Diesel Engine Output at Sea Trial 

1. 適用範囲 この規格は,海上試運転時における,ディーゼル主機の出力算出方法について規定する。 

備考 この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって参考

として併記したものである。 

引用規格: 

JIS F 0401 船に装備された主機の出力の呼び方とその定義 

2. 種類 出力算出方法の種類は,次のとおりとする。 

(1) 燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値)と回転速度から算出する方法 

(2) 燃料油消費量から算出する方法 

(3) ねじり計測器によるトルクから算出する方法 

(4) 指圧器などによる図示出力から算出する方法 

備考 この規格でいう出力とは(3)の場合は軸出力,その他の場合は,ブレーキ出力とする。 

なお,出力の定義は,JIS F 0401(船に装備された主機の出力の呼び方とその定義)による。 

3. 適用 主機への適用は,燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値)と回転速度から算出する方法

とする。 

備考 算出方法2.の(2),(3)及び(4)は,必要に応じて適用できる。 

4. 方法,準備,計測項目,算出及び補正 方法,準備,計測項目,算出及び補正は,次による。 

(1) 燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値)と回転速度から算出する方法 

(1.1) 方法 主機の陸上試験において,水動力計又はその他適当な出力計を用いて,正確に計測された出

力とそれに対応する燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値)及び回転速度の同時計測結果か

ら出力推定曲線を求める。海上試運転時の出力は,この出力推定曲線を基準にして算出する。 

(1.2) 準備 

(a) 出力推定曲線を用意する(参考図1参照)。 

備考 主機関製造所は,陸上試験の結果から出力推定曲線を作成する。 

(b) 燃料油性状(比重,低発熱量)を調査する。 

(c) 燃料ポンプ有効吐出し行程を調査する。 

(1.3) 計測項目 

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(a) 燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値) 

(b) 回転速度 

(c) 主機関入口燃料油温度 

燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値)の計測は大きな変動値を除き平均値を採用する。 

回転速度は積算形回転計などで正確に計測する。 

また,これらは同時計測による。 

(1.4) 算出及び補正 出力推定曲線上で計測結果から出力を求める。ただし,燃料油の性状,燃料ポンプ

有効吐出し行程が陸上試験時と海上試運転時とで異なる場合は,補正を行って出力を算出する。 

次式により補正する。 

γ

γ

=

u

a

ua

a

H

S

H

S

BHP

BHP

1

ここに, 

BHP: 海上試運転時主機出力 (kW) {PS} 

BHP1: 出力推定曲線から直接求めた出力 (kW) {PS} 

S: 陸上試験における燃料ポンプ有効吐出し行程 (mm) 

Sa: 海上試運転における燃料ポンプ有効吐出し行程 (mm) 

Hu: 陸上試験における燃料油の低発熱量 (kJ/kg) {kcal/kg} 

Hua: 海上試運転における燃料油の低発熱量 (kJ/kg) {kcal/kg} 

γ: 陸上試験における機関入口燃料油比重 

γa: 海上試運転における機関入口燃料油比重 

(2) 燃料油消費量から算出する方法 

(2.1) 方法 主機の陸上試験において,水動力計又はその他適当な出力計を用いて正確に計測された出力

とそれに対応する燃料油消費量計測結果から,出力推定曲線を求める。 

出力推定曲線の求め方は,次に示すように力率試験を行っていない場合とそうでない場合の2方

法がある。 

海上試運転時の出力は,これらの出力推定曲線を基準にして算出する。 

(a) 力率試験を行っていない場合の出力推定曲線(参考図2参照)。 

各出力における燃料油消費量の関係を表す曲線。 

(b) 力率試験を行っている場合の出力推定曲線(参考図3参照)。 

力率試験で求められた等燃料油消費率曲線と燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値)の関

係を,出力と回転速度を座標軸とするグラフに表す曲線。 

(2.2) 準備 

(a) 出力推定曲線を用意する。 

備考 主機関製造所は陸上試験の結果から,出力推定曲線を作成する。 

(b) 燃料油性状(比重,低発熱量)を調査する。 

(2.3) 計測項目 

(a) 燃料消費量 

(b) 燃料油温度(消費量計測場所での燃料油温度) 

(c) 回転速度 

(d) 燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値) 

燃料油消費量の計測は,精度の高い積算形流量計などを使用する。 

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

また,漏えい(洩)量も調査し正確に行う。計測時間は主機負荷整定状態下でなるべく長くとる。 

(c),(d)は,力率試験を行っている場合の出力推定曲線を利用するときに計測する。 

(2.4) 算出及び補正 

(a) 力率試験を行っていない場合 計測した燃料油消費量を,陸上試験で使用した燃料油の発熱量をも

とに,補正燃料油消費量を算出し,出力推定曲線上から主機出力を求める。 

燃料油消費量の発熱量補正計算式を次に示す。 

u

ua

fa

f

H

H

G

G =

ここに, 

Gf: 海上試運転補正燃料油消費量 (kg/h) 

Gfa: 海上試運転燃料油消費量 (kg/h) 

Hu: 陸上試験における燃料油低発熱量 (kJ/kg) {kcal/kg} 

Hua: 海上試運転における燃料油低発熱量 (kJ/kg) {kcal/kg} 

(b) 力率試験を行っている場合 計測した回転速度と燃料ポンプラック目盛(又は負荷指針指示値)か

ら,出力推定曲線上で燃料油消費率を求める。 

一方,計測した燃料油消費量からは出力推定曲線上に描かれている等燃料油消費率曲線の発熱量

(一般的には42 000kJ/kg)をもとに,補正燃料油消費量を算出する[方法は(a)と同様]。 

燃料油消費率と補正燃料油消費量から次式によって,出力を算出する。 

f

f

g

G

BHP1000

=

ここに, BHP: 海上試運転時出力 (kW) {PS} 
 

Gf: 補正燃料油消費量 (kg/h) 

gf: 燃料油消費率 (g/kW・h) {g/ps・h} 

(3) ねじり計測器などによるトルクから算出する方法 

(3.1) 方法 主機の動力をプロペラに伝達するための軸には,回転力によって,ねじりによる変位が生じ

る。 

この軸のねじり変位量(ねじり角)と軸の横弾性係数 (G) からトルクを求める。 

このトルクをトルク計によって計測し,これに回転速度を乗じ,出力を算出するか又は出力計に

よって,直接出力を計測する。 

(3.2) 準備 

(a) 軸の横弾性係数 (G) を調べる。 

鋼の場合 G : 82.1×103N/mm2 (8.37×105kgf/cm2) 

(b) ねじり計測器を軸に正確に取り付ける。 

(c) 主機運転前にねじり計測器の零点調整を行う。 

(3.3) 計測項目 

(a) トルク 

(b) 回転速度 

トルクは,大きな変動値を除き,平均値を採用する。 

回転速度は,積算形回転計などで正確に計測する。 

また,これらは同時計測による。 

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(3.4) 算出及び補正 ねじり計測器には,トルク計と出力計とがあり,トルク計の場合は,次式によって

出力を算出する。 

計測値の補正は,ねじり計測器の取付け状態において,主機運転前,運転後の零点調査の結果,

必要がある場合に行う。 

60

1000

2

×

=

Q

N

SHP

π

×

=

60

75

2

1

Q

N

SHP

π

ここに, 

SHP: 軸出力 (kW) 

SHP1: 軸出力 {PS} 

 (トルクはkgf・mを用いて計算し,PSで表す場合) 

Q :トルク (N・m) 
Q' :トルク {kgf・m} 
N :回転速度 (rpm) 

(4) 指圧器などによる図示出力から算出する方法 

(4.1) 方法 主機の陸上試験において,水動力計又はその他適当な出力計を用いて,正確に計測されたブ

レーキ出力と,指圧器などによって同時に計測された図示出力との関係を示す機械効率曲線を求め

る。 

海上試運転時の出力は,図示出力を求め機械効率を乗じて算出する。 

(4.2) 準備 

(a) 機械効率曲線を用意する。 

備考 主機関製造所が作成する。 

(b) 指圧器など指圧図採取装置を用意する。 

(4.3) 計測項目 

(a) 各シリンダの指圧図 

(b) 回転速度 

指圧図の採取は主機関負荷整定状態下で,各シリンダごと迅速に行う。 

(4.4) 算出及び補正 各シリンダの採取指圧図から求めた,平均有効圧力の合計と回転速度から図示出力

を次式によって算出する。 

IHP=(ΣP) (C・N) 

ここに, 

IHP: 図示出力 (kW) {PS} 

ΣP: 各シリンダー平均有効圧力の総和 (MPa) {kgf/cm2} 

N: 回転速度 (rpm)  

C: 定数 

C': 定数(圧力はkgf/cm2を用いて計算し,PSで表す場合) 

 4サイクルの場合 

1200

A

L

C =

   

9000

A

L

C =

2サイクルの場合 

600

A

L

C =

   

4500

A

L

C =

L:行程の長さ (m)  
A:ピストンの面積 (cm2) 

次に機械効率曲線から計測回転速度での機械効率を求め,主機出力(ブレーキ出力)を次式によ

って算出する。 

BHP=ηm・IHP 

ここに, BHP: 主機関出力(ブレーキ出力) (kW) {PS} 
 

ηm: 機械効率 

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

IHP: 図示出力 (kW) {PS}  

5. 計測要領及び注意事項 海上試運転における,主機関の出力算出のために必要な項目を計測する際は,

より正確な出力を求めるために次の点に注意する。 

(1) 運転時における主機の各部調整状態は,陸上試験時の状態とできるだけ同じとする。 

(2) 計測誤差を少なくするため,主機関の運転は変動幅の少ない整定した負荷状態を保持する必要がある

ので,次の点に注意すること。 

(a) できるだけ海象条件の良い状態で行う。 

(b) かじ操作はできるだけ避けて,船を直進状態とする。 

(c) 増速し負荷を上げたとき,また転だ(舵)により進路を変えたときは,十分に時間をおき負荷を整

定させる。 

(3) 各計測項目の計測は,できるだけ同じ時間に行う。 

(4) 計測値は極端な変動値を除いて,平均した数値とする。 

6. 主機関出力の決定 海上試運転の主機関の出力は,陸上試験において正確に計測された出力と,その

ときの諸元を基準にして算出されるため,主機関出力決定に当たっては,その点を十分に考慮する必要が

ある。 

すなわち海上試運転における,主機関の運転状態を把握するため陸上試験時計測した運転諸元のうち 

過給機回転速度 

掃気圧力(給気圧力) 

排ガス温度 

燃焼最高圧力 

給気温度 

過給機入口空気温度 

大気圧力 

などを必要に応じて計測し,各負荷の相違による変化の傾向を,陸上試験結果の傾向と比較してみること。 

両者の運転時期による季節的違いを考慮し,陸上試験時の運転状態と大きな差がないことを確認して,

出力算出方法から算出された数値を,海上試運転におけるディーゼル主機の出力として決定すること。 

background image

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考図1 出力推定曲線 

方法 

1. 次式によって出力を求める。 

γ

γ

=

u

a

ua

a

H

S

H

S

BHP

BHP

1

ここに, 

BHP: 海上試運転時主機出力 (kW) 

BHP1: 海上試運転時この図から直接求めた出力 (kW) 

Sa: 海上試運転時燃料ポンプ有効吐出し行程 (mm) 

S: 陸上試験時燃料ポンプ有効吐出し行程 (mm) 

Hua: 海上試運転時燃料油低発熱量 (kJ/kg) 

Hu: 陸上試験時燃料油低発熱量 (kJ/kg) 

γa: 海上試運転時機関入口燃料油比重 

γ: 陸上試験時機関入口燃料油比重 

background image

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

2. 陸上試験結果及び海上試運転の事前調査により, 

  S=14 Hu=42 300 γ=0.851 4 Sa=14.1 Hua=40 700 

を知り,次式を得る。 

BHP=BHP1・

8514

.0

42300

14

40700

1.

14

×

×

×

×

a

γ

=1.138γa・BHP1 

3. BHP1は負荷指針指示値 (F) ×回転速度 (N) の計算値から,この図によって求める。 

使用例: 

1. 計算によって,F=6.3 N=120rpmを得た。 

  F・N=6.3×120=756を算出。 

この図から主機出力BHP1=6 480kWを求めた。 

2. 一方,主機入口燃料油温度計測から比重を算出し,0.91を得た。 

3. 海上試運転時主機出力BHPは,BHP=1.138×0.91×6 480=6 710 

  6 700kWを得る。 

参考図2 出力推定曲線 

方法 

1. 燃料油消費量を計測し,補正燃料油消費量を次式によって算出する。 

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

u

ua

fa

f

H

H

G

G =

ここに, 

Gf: 海上試運転時補正燃料油消費量 (kg/h) 

Gfa: 海上試運転燃料油消費量 (kg/h) 

Hu: 陸上試験時燃料油低発熱量 (kJ/kg) 

Hua: 海上試運転時燃料油低発熱量 (kJ/kg) 

2. 陸上試験結果及び海上試運転の事前調査により, 

  Hu=42 700 Hua=41 900を知り,次式を得る。 

fa

fa

f

G

G

G

981

.0

42700

41900=

=

3. 算出された補正燃料油消費量から,この図によって機関出力を求める。 

使用例: 1. 計算によって,Gfa=480kg/hを得た。 

2. 式によって,Gf=0.981×480=471kg/hを算出した。 

3. 図から,2 270kWを得る。 

background image

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考図3 出力推定曲線 

方法 

1. 回転速度と燃料ポンプラック目盛の計測から,この図によって燃料油消費量 (gf) を求める。 

2. 別途計測した燃料油消費量を,低発熱量によって補正した補正燃料油消費量 (Gf) を求める。 

3. 次式によって出力を算出する。 

f

f

g

G

BHP1000

=

使用例: 

1. 計測によって,回転速度:370,ポンプラック目盛:38を得た。 

2. この図により,gf=207g/kW・hを得た。 

10 

F 0404-1985  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3. 一方,計測により,燃料油消費量480kg/h(低発熱量41 900kJ/kg燃料油にて)を得た。 

補正燃料油消費量を求める。 

Gf=480×42700

41900=471kg/hを得る。 

4. 機関出力 

BHP=

207

471

1000×

=2275 

2 280kWを得る。 

船舶部会 船舶機関設計専門委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員会長) 

石 川 哲 司 

土 井 平 孝 

運輸省海上技術安全局 

横 溝 眞一郎 

工業技術院標準部 

白 石 圭 一 

財団法人日本海事協会 

小 郷 一 郎 

財団法人日本船舶標準協会 

臼 居   勲 

社団法人日本船主協会 

百合草 正 韶 

船舶整備公団 

佐 藤 彰 一 

日本鋼管株式会社重工事業部船舶本部 

和 田   勝 

石川島播磨重工業株式会社艦船設計部 

清 水   實 

川崎重工業株式会社船舶事業本部 

宮 下 尚 明 

住友重機械工業株式会社追浜造船所 

清 水 英 夫 

日立造船株式会社船舶本部 

田 中 嘉 春 

三井造船株式会社船舶事業部 

戸野本 義 直 

三菱重工業株式会社船舶鉄構事業本部 

浅 見 与 一 

富士ディーゼル株式会社 

鵜 野 元 彦 

昭和精機工業株式会社 

村 松 綏 啓 

株式会社新潟鉄工所内燃機事業部 

藤 田   護 

ヤンマーディーゼル株式会社 

瀬 角 憲 一 

ダイハツディーゼル株式会社技術本部 

緒 方   勇 

株式会社赤阪鉄工所技術部 

(事務局) 

黒 河 亀千代 

工業技術院標準部機械規格課 

武 藤 晃 雄 

工業技術院標準部機械規格課