E 3018 : 2001
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,国土交通大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS E 3018 : 1994は改正されこの規格に置き換えられる。今回の改正は,
冷却剤に油を使用しないインピーダンスボンドが製造されるようになり,試験方法などの見直しを行った
ものである。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
E 3018 : 2001
インピーダンスボンド−
性能試験方法
Railway signaling equipment−Impedance bonds−Test methods
1. 適用範囲 この規格は,鉄道信号保安装置に用いるインピーダンスボンド(以下,ボンドという。)の
性能試験方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 1102-2 直動式指示電気計器 第2部:電流計及び電圧計に対する要求事項
JIS C 1302 絶縁抵抗計
JIS C 2320 電気絶縁油
JIS E 3014 鉄道信号保安部品−振動試験方法
JIS E 3017 鉄道信号保安部品−防水試験方法
JIS Z 8703 試験場所の標準状態
3. 定義 この規格の中で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
a) 信号周波数 列車に対する情報伝送及び列車・車両の検知のためにレールに通電する信号電流の周波
数。
b) LF 信号周波数として一般に用いる25〜120 Hzの周波数。
c) AF 信号周波数として一般に用いる数百Hz〜十数kHzの周波数。
d) 一次コイルの定格電流 一次コイルの片側端子に連続して通電できる直流,又は交流50/60Hzの電流
値。
e) 中性点 一次コイルの巻数が2等分となる中間の端子。
f)
冷却剤 コイルと鉄心の発熱を外気へ放熱するために外箱内に充てん(填)する絶縁物。
4. 試験の種類 ボンドの試験の種類は,次のとおりとする。
a) 形式試験 設計が示す,すべての特性について行う試験。
b) 受渡試験 形式検査に合格したものと同じ設計・製造による製品の受渡しに際し,必要と認める特性
について行う試験。
5. 試験項目 ボンドの試験項目は,表1のとおりとし,形式試験は全項目,受渡試験は○印を付けた項
目とする。
2
E 3018 : 2001
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表1 試験項目
試験項目
受渡試験
適用試験項目番号
巻数比試験
○
7.1
極性試験
○
7.2
コイル抵抗試験
7.3
インピーダンス試験
無負荷試験
○
7.4.1
短絡試験
7.4.2
動作減衰量試験*
7.5
不平衡率試験
7.6
飽和特性試験
7.7
温度上昇試験**
7.8
耐瞬時過電流試験**
7.9
絶縁試験
絶縁抵抗試験
○
7.10.1
耐電圧試験
○
7.10.2
環境試験
振動試験
7.11.1
防水試験
7.11.2
備考 *印の試験項目は,AF信号周波数で使用するボンドに適用する。
**印の試験項目は,冷却剤を入れて行う。
6. 試験条件
6.1
試験場所の状態 試験場所の状態は,特に指定がない限り,JIS Z 8703に規定する温度20±15℃,
相対湿度 (65±20) %とする。
6.2
試験計器 試験計器は,特に指定がない限り,次のとおりとする。
a) 電圧計及び電流計は,JIS C 1102-2の1.0級以上のものを用いる。
b) 電子電圧計は,器差が5%以内のものを用いる。
c) 絶縁抵抗計は,JIS C 1302に規定する定格測定電圧(直流)500Vのものを用いる。
d) 位相計は,器差が3%以内のものを用いる。
6.3
試験用絶縁油 試験用絶縁油は,JIS C 2320の1種2号を用いる。
7. 試験方法
7.1
巻数比試験 巻数比試験は,1次コイルに50Hz又は60Hzの交流電圧を加え,無負荷2次コイル電
圧及び無負荷3次コイル電圧を測定し,1次−2次コイル間巻数比及び1次−3次コイル間巻数比を式(1)
及び式(2)によって求める。
1
2
12
V
V
N=
················································································· (1)
1
3
13
V
V
N=
················································································· (2)
ここに, N12: 1次−2次コイル間巻数比
N13: 1次−3次コイル間巻数比
V1: 1次コイル電圧 (V)
V2: 無負荷2次コイル電圧 (V)
V3: 無負荷3次コイル電圧 (V)
3
E 3018 : 2001
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7.2
極性試験 極性試験は,次のいずれかによる。
a) 図1に示す試験回路で,スイッチSを閉じた瞬間に直流電圧計(可動コイル形)Vの指針の振れ方を
調べる(指針が正方向に振れたときは減極性)。
b) 図2に示す試験回路に50Hz又は60Hzの交流電圧V1を加え,そのときの電圧V2を測定する(V1>V2
ならば減極性)。
図1 極性試験回路
図2 極性試験回路
7.3
コイル抵抗試験 コイル抵抗試験は,図3に示す試験回路に直流電流を流し,そのときの電圧及び
電流を測定し,コイル抵抗を式(3)によって求める。
図3 コイル抵抗試験回路
I
V
R=
····················································································· (3)
ここに, R: コイル抵抗 (Ω)
V: 1次片コイル端子間電圧 (V)
I: 1次コイル電流 (A)
7.4
インピーダンス試験
7.4.1
無負荷試験 無負荷試験は,図4に示す試験回路で,電圧V1及びV2を測定し,位相角φを調べ,1
次コイル電流及び励磁インピーダンスを式(4)及び式(5)によって求める。また,これを図5のような等価回
路とみなした場合の抵抗及びインダクタンスを式(6)及び式(7)によって求める。
なお,位相角を必要としないときは,1次コイル電流を求めるのに電流計を用いてもよい。
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図4 インピーダンス試験回路
図5 等価回路
S
R
V
I
1
=
···················································································· (4)
I
V
Z
2
=
···················································································· (5)
ϕ
cos
Z
R=
················································································ (6)
ϕ
πsin
2f
Z
L=
············································································· (7)
ここに,
I: 1次コイル電流 (A)
Z: 励磁インピーダンス (Ω)
φ: 位相角 (゚)
R: 等価回路とみなした場合の抵抗 (Ω)
L: 等価回路とみなした場合のインダクタンス (H)
Rs: 基準抵抗 (Ω)
f: 信号周波数 (Hz)
V1: Rsの両端電圧 (V)
V2: ボンドの1次コイル電圧 (V)
7.4.2
短絡試験 短絡試験は,図6に示す試験回路で,電圧V1及びV2を測定し,位相角φを調べ1次コ
イル電流及び漏れインピーダンスを式(8)及び式(9)によって求める。また,これを図7のような等価回路と
みなした場合の抵抗及びインダクタンスを式(10)及び式(11)によって求める。
図6 短絡試験回路
図7 等価回路
S
R
V
I
1
=
···················································································· (8)
5
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I
V
Z
2
=
···················································································· (9)
ϕ
cos
Z
R=
············································································ (10)
f
Z
L
π
ϕ
2
sin
=
············································································ (11)
ここに,
I: 1次コイル電流 (A)
Z: 漏れインピーダンス (Ω)
φ: 位相角 (゚)
R: 等価回路とみなした場合の抵抗 (Ω)
L: 等価回路とみなした場合のインダクタンス (H)
Rs: 基準抵抗 (Ω)
f: 信号周波数 (Hz)
V1: Rsの両端電圧 (V)
V2: ボンドの1次コイル電圧 (V)
7.5
動作減衰量試験 動作減衰量試験は,図8に示す試験回路で電圧V1及びV2を測定し,動作減衰量を
式(12)によって求める。
図8 動作減衰量試験回路
12
10
1
2
10
log
20
log
20
N
V
V−
=
α
······················································ (12)
ここに,
α: 動作減衰量 (dB)
R1: 負荷抵抗 (Ω)
R2: 基準抵抗=R1×N122 (Ω)
N12: ボンドの1次コイルと2次コイルとの巻数比
V1: R1の両端電圧 (V)
V2: R2の両端電圧 (V)
7.6
不平衡率試験 不平衡率試験は,図9及び図10又は図11に示す試験回路で,表2に示す電流を流
し,そのときの2次コイル並びに3次コイルの誘起電圧V12,V22,V13及びV23を測定し,2次コイル不平
衡率及び3次コイル不平衡率を式(13)及び式(14)によって求める。
なお,図11の試験回路及び表2の2Iと∆Iは,1次コイルの中性点を切離ししない場合に用いる。
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図9 不平衡率試験回路
図10 不平衡率試験回路
図11 不平衡率試験回路
100
12
22
2
×
V
V
UB=
······································································· (13)
100
13
23
3
×
V
V
UB=
······································································· (14)
ここに,
UB2: 2次コイル不平衡率 (%)
UB3: 3次コイル不平衡率 (%)
V12,V22: 2次コイル電圧 (V)
V13,V23: 3次コイル電圧 (V)
表2 試験電流
信号周波数種類
電源周波数
電流I
電流2I
電流∆I
LF
50Hz又は60Hz
5A
10A
2mA以下
AF
指定の信号周波数
0.5A
1A
0.2mA以下
7.7
飽和特性試験 飽和特性試験は,図12又は図13に示す試験回路で,表3に示す電流を流して電圧
V1及びV2を測定し,位相角φを調べ,2次コイル電流,励磁インピーダンスを式(15)及び式(16)によって求
める。
なお,位相角を必要としないときは,2次コイル電流を求めるのに電流計を用いてもよい。
図12 直流電化区間用
図13 交流電化区間用
S
R
V
I
1
=
·················································································· (15)
I
N
V
Z
2
12
2
2
=
············································································ (16)
ここに,
I: 2次コイル電流 (A)
Z: 励磁インピーダンス (Ω)
Rs: 基準抵抗 (Ω)
f: 信号周波数 (Hz)
fo: 交流50Hz又は60Hz
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N12: ボンドの1次コイルと2次コイルとの巻数比
V1: Rsの両端電圧 (V)
V2: ボンドの2次コイル電圧 (V)
表3 試験電流
電化区間種類
1次コイル
2次コイル
電源
電流
周波数
電流
直流
直流
定格不平衡電流 指定の信号周波数 受渡当事者間の
協定による。
交流
交流50Hz又は60Hz
7.8
温度上昇試験 温度上昇試験は,図14又は図15の試験回路に,1次コイルに表4の電流の150%,
2次コイルに表4の電流を1時間通電しその後に表4に示す電流を連続通電し,温度上昇が一定になった
と認められたとき,及びこれに引き続き1次コイルに表4の電流の150%を1時間通電した後,コイルと
冷却剤の温度を測定し,周囲温度との差によって温度上昇値を求める。
図14 直流電化区間用
図15 交流電化区間用
表4 試験電流
電化区間種類
1次コイル
2次コイル
電源
電流(中性点)
電源
電流
直流
直流
定格電流の200%
交流50Hz
又は60Hz
定格電流
交流
交流50Hz又は60Hz
なお,温度の測定は,次の方法によって行う。
a) ボンドの温度の測定は,コイルと冷却剤について行う。コイルは,電圧計及び電流計を用いる抵抗法
によって測定する。抵抗法によるコイルの温度は,コイル抵抗の変化に基づいて,式(17)によって求
める。冷却剤の温度は温度計法によって,最も高い温度の箇所を測定し求める。
なお,油の場合は,油面下約10mmの位置で測定する。密閉構造の場合は,外箱の最も高い箇所を
測定する。
(
)
1
1
1
1
2
2
5.
234
t
t
R
R
R
t
+
+
−
=
·························································· (17)
ここに,
t2: 抵抗法によって求めるコイルの温度 (℃)
t1: 試験の最初のコイルの温度(周囲温度)(℃)
R1: t1℃でのコイルの抵抗 (Ω)
R2: t2℃での同一コイルの抵抗 (Ω)
b) 周囲温度の決定は,次のいずれかによる。
1) 供試ボンドの周囲で,高さはボンドの高さの約21,距離は1〜2mの位置に温度計を置いて空気の温
度を測定し,試験の最後の3時間中の約30分ごとにとった温度計の読みの平均値を周囲温度とする。
2) 供試ボンドとほぼ同じ大きさの休止ボンドを用いて,試験すべきボンドと同等と認められる冷却状
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態で,この休止ボンドの油の温度をもって周囲温度とする。
7.9
耐瞬時過電流試験 耐瞬時過電流試験は,1次コイルに定格電流(交流50Hz又は60Hz)の150%を
1時間通電した後,2次コイルを短絡し,1次コイルの片側に定格電流(交流50Hz又は60Hz)の200%を
1分間通電して行う。ただし,この試験は,受渡当事者間の協定による。
7.10 絶縁試験
7.10.1 絶縁抵抗試験 絶縁抵抗試験は,導体部分とその他の金属部分との間及び相互に絶縁された導体部
分の間を絶縁抵抗計を用いて行う。
7.10.2 耐電圧試験 耐電圧試験は,導体部分とその他の金属部分との間及び相互に絶縁された導体部分の
間に,表5に示す3種類の交流電圧のいずれかを指定し,1分間加えて行う。
表5 耐電圧の種類
耐電圧の種類
電源周波数Hz
電圧V
1種
50又は60
1 000
2種
3 000
3種
5 000
7.11 環境試験
7.11.1 振動試験 振動試験は,JIS E 3014に規定する2種による。
7.11.2 防水試験 防水試験は,JIS E 3017に規定する噴水試験による。
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JIS工業規格改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
高 重 哲 夫
財団法人鉄道総合技術研究所輸送システム開発推進部
(委員)
穐 山 貞 治
通商産業省工業技術院標準部
粕 谷 勲
運輸省鉄道局技術企画課
* 日比野 謙 一
電気技術開発株式会社第一技術本部
澤 本 尚 志
東日本旅客鉄道株式会社設備部電気設備課
久保田 清 登
東海旅客鉄道株式会社技術本部
廣 瀬 雄 造
西日本旅客鉄道株式会社(鉄道本部)電気部
大 熊 康 義
東武鉄道株式会社鉄道事業本部電気部信号通信課
柴 田 裕 邦
相模鉄道株式会社運輸営業本部電気部通信課
日 朝 賢 三
株式会社京三製作所信号事業部第2技術部
猪 瀬 勝 一
日本信号株式会社与野事業所フィールド制御技術部
直 江 正 直
大同信号株式会社信号事業部技術部列車制御第2PT
町 村 忠 芳
株式会社明電舎施設技術部施設技術二課
市 川 和 男
株式会社三工社甲府工場技術部
佐 野 皓 良
社団法人日本鉄道電気技術協会
(幹事長)
若 林 武 夫
財団法人鉄道総合技術研究所輸送システム開発推進部
(幹事)
池 川 澄 夫
通商産業省工業技術院標準部
神 雅 弘
運輸省鉄道局技術企画課
橋 本 和 夫
東日本旅客鉄道株会社設備部電気設備課
町 田 満寿男
東海旅客鉄道株式会社建設工事部電気工事課
田 鍬 守
西日本旅客鉄道株式会社電気部
石 塚 豊 作
東武鉄道株式会社鉄道事業本部電気部信号通信課
大 越 充
相模鉄道株式会社運輸営業本部電気部通信課
田 中 豊
日本信号株式会社与野事業所フィールド制御技術部
鈴 木 昭 夫
株式会社京三製作所信号事業部第2技術部
曽 野 修 宣
大同信号株式会社信号事業部技術部列車制御第1PJ
鈴 木 研太郎
明電ケミカル株式会社沼津工場技術部技術課
今 枝 慎 一
株式会社三工社第1技術部
(事務局)
石 原 誠
社団法人日本鉄道電気技術協会
備考 *印は委員兼幹事を示す。