日本工業規格
JIS
D
6701
- 1986
農業用車輪トラクタの仕様書様式
Standard Form of Specifications of Agricultural Wheeled Tractors
1.
適用範囲 この規格は,農業用車輪トラクタ(
1
)
(以下,トラクタという。
)の仕様書(以下,仕様書と
いう。
)の様式及びその記入要領について規定する。
注(
1
) 4
輪をもち,農業用作業機を取り付け,これを駆動又はけん引し,操縦者が乗用するトラクタ。
備考 この規格で { } を付けて示してある単位は,従来単位によるものであって,参考として併記
したものである。
引用規格:
JIS D 6702
農業用トラクタの動力取出軸
JIS D 6703
農業用車輪トラクタの 3 点支持装置の主要寸法
JIS D 6704
農業用トラクタのヒッチ部の主要寸法
JIS D 6705
農業用車輪トラクタのリンク形ドローバーの主要寸法
JIS D 6706
農業用トラクタの主動力取出軸性能試験方法
JIS D 6707
農業用トラクタのけん引性能試験方法
JIS D 6708
農業用トラクタの旋回性能試験方法
2.
仕様書の様式 仕様書の様式は,次による。
(1)
仕様書の様式は,
付表 1 及び付表 2 による。
(2)
付表 1 は,トラクタの諸元及び性能の概要を示し,付表 2 は,トラクタの使用,整備その他の技術的
な目的のために細目を示すもので,
付表 1 と併用して用いる。
(3)
項目は目的に応じて適当に選ぶことができ,必要に応じて,各部の構造,材料,試験方法などを付記
し,全体図,運転席付近配置図,作業機装着装置などの図面を添付する。
(4)
全体図には,トラクタの外形,座席,車輪などの配置の概略と主要寸法を示す。
(5)
運転席付近配置図には,トラクタの運転,走行に必要な操向ハンドル,操作ペダル,レバー,計器,
表示装置類の配置の概略と主要関係寸法を示す。
(6)
作業機装着装置は,JIS D 6703(農業用車輪トラクタの 3 点支持装置の主要寸法)によって主要関係
寸法を示す。
3.
仕様書の記入要領 仕様書の記入要領は,次による。
(1)
付表 1 付表 1 の記入要領は次による。
(1.1)
名称・型式 トラクタに付けた製造業者名略称及び型式記号を記入する。
(1.2)
通称名 製造業者の称する通称名を記入する。
(1.3)
製造業者名 トラクタの製造会社又は製造工場名などを記入する。
2
D 6701 - 1986
(1.4)
種別 道路運送車輌法による小型特殊自動車又は大型特殊自動車の別を記入する。
(1.5)
駆動方式 4 輪駆動又は後 2 輪駆動の別を記入する。
(1.6)
主要寸法 トラクタの標準の整備状態における寸法を,次によって記入する。ロータリ専用又はロ
ータリモア専用のものは,これを含む状態の寸法とし,その旨を付記する。
(1.6.1)
全長 作業機装着装置を装着した場合と装着しない場合の最大長を記入し,その部位を併記する。
(1.6.2)
全幅 最大幅を記入し,その部位を併記する。
(1.6.3)
全高 地面から車両最高部までの高さを,次の場合に記入し,その部位を併記する。
(a)
運転時 装備した状態。
(b)
格納時 格納又は運搬などの便のため,排気管など着脱容易な突出部を外した場合。
(1.6.4)
軸距 前車軸及び後車軸の軸中心の水平距離を記入する。
(1.6.5)
輪距 前輪,後輪それぞれに,左右タイヤの接地面における中心距離の標準値,最大値,及び最小
値,並びに調節段数を記入する。
(1.6.6)
最低地上高 車両の中心線付近の最低部の地上高を記入し,その位置を付記する。
(1.7)
質量
(a)
車両質量 燃料を満載し,潤滑油,作動油及び冷却水は規定量とし,規定の携行工具その他の附属
品を装着した質量を記入する。
なお,前軸質量,後軸質量及び荷重割合を併記する。
(b)
付加重り 付加重りをもつ場合は,前輪,後輪及び車体に分けて重錘の質量と個数を記入する。
(1.8)
機関
(a)
名称・型式 機関に付けた製造業者名略称及び型式記号を記入する。
(b)
機関形式 シリンダ配置,冷却方式,気筒数,サイクル別,機関種類,その他必要であれば燃焼室
形式,弁配置,過給機形式を記入する。
(c)
総行程容積(総排気量) 次式による。
6
2
10
4
−
×
=
LN
D
V
π
ここに,
V
:
総行程容積
(
l
)
D
:
シリンダ内径
(mm)
L
:
行程
(mm)
N
:
シリンダ数
π=
3.141 6
(d)
機関性能 製造業者の指定する回転数における出力,最大トルク,燃料消費率を記入する。
(e)
使用燃料 ガソリン,灯油,軽油,重油などの種類を記入する。
(f)
燃料タンク容量 補助タンクをもつ場合は付記する。
(g)
バッテリ 個数,電圧及び容量を記入する。
(1.9)
主要性能
(a)
変速段数 前進及び後進の変速段数を記入する。
(b)
走行速度 3.(1.8)(d)の機関回転数における走行速度を計算し,範囲で記入する。
(c)
最大安定傾斜角 輪距を標準状態にしてトラクタを左右に傾斜させた場合,山側のすべての車輪が
踏板から離れる瞬間における傾斜角度を記入する。左右の値が異なる場合は,それぞれの値を記入
する。
(d)
最小旋回半径 JIS D 6708(農業用トラクタの旋回性能試験方法)によって,ブレーキを使用した
3
D 6701 - 1986
場合と使用しない場合のそれぞれについて最小旋回半径を記入する。
(e)
主動力取出軸出力 JIS D 6706(農業用トラクタの主動力取出軸性能試験方法)による主動力取出
軸最大出力を記入する。
(f)
最大けん引出力 JIS D 6707(農業用トラクタのけん引性能試験方法)による最大けん引出力を記
入する。
(g)
最大けん引力 JIS D 6707 による最大けん引力を記入する。
(h)
作業機昇降装置の最大揚力 機体の前部を固定し,油圧式では油温を
65
±
5
℃とした状態で下部リ
ンクヒッチ点及びフレーム上の荷重点の揚程が最小となるようにリンクを調節したときに,それぞ
れの点において全揚程を通じて揚げうる最大揚力を記入する。
(i)
主動力取出軸 (PTO) 回転数及び段数 JIS D 6702(農業用トラクタの動力取出軸)によって動力取
出軸回転数及び変速段数を記入する。
(1.10)
車体
(a)
タイヤの呼び及びプライ数 前輪及び後輪のタイヤの呼び及びプライ数を記入する。
(b)
クラッチ装置 主クラッチの形式,乾式・湿式の別,単板・多板の別,単動式二段踏込式の別など
を記入する。
(c)
制動装置 主ブレーキの形式,
4
輪制動・後
2
輪制動などの別,乾式・湿式の別,内部拡張式・デ
ィスク式などの別を記入する。
(d)
かじ取り装置 歯車形式(ヒンドレウォームローラ式,ウォームセクタ式などの別),リンク装置の
形式,倍力装置(リンケージ形,インテグラル形,セミインテグラル形,全油圧形などの別)を記
入する。
(e)
差動装置 差動機形式,傘歯車,平歯車などの種類,ロック装置の有無などを記入する。
4
輪駆動
の場合は,前輪,後輪それぞれについて記入する。
(f)
変速装置 変速方式(常時かみ合い式,同期かみ合い式,選択かみ合い式,パワーシフト式,油圧
モータ式など)を記入する。
(g)
作業機装着装置 JIS D 6703 によってその種類を記入する。
なお,これと異なる場合はその旨を付記する。
(h)
作業機昇降装置制御方式 自動制御装置の有無,ポジションコントロール,ドラフトコントロール,
ミックスコントロールなどの別を記入する。
(i)
主動力取出軸寸法 JIS D 6702 による呼びなどを記入する。
(1.11)
その他
(a)
転倒時防護装置など 安全キャブ,安全フレーム(
2
柱又は
4
柱の別)
,日除けなどの装着の有無,
標準装備,オプションの別を記入する。
(b)
型式認定番号又は新型届出番号 道路運送車輌法による小型特殊自動車の型式認定番号又は大型特
殊自動車の新型届出番号を記入する。
(c)
型式検査合格番号,安全鑑定適合番号その他公的機関などの試験成績など 国の実施する型式検査
をはじめ他の公的機関の試験結果があるものはその番号などを記入する。
(2)
付表 2 付表 2 の記入要領は次による。
(2.1)
重心位置 トラクタの重心の位置を,後車軸中心線から前方への距離,車両中心線から左右への距
離及び接地面からの高さで記入する。
(2.2)
機関
4
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(a)
シリンダ シリンダ内径及び行程を記入する。
(b)
燃焼室容積 燃焼室容積を記入する。
(c)
圧縮比 次の式によって計算した値を記入する。
(
) (
)
(
)
燃焼室容積
燃焼室容積
行程容積
+
(d)
機関の位置
前部機関,後部機関の別を記入する。
(2.3)
燃料系統
(a)
噴射ポンプ及びノズル形式
製造業者が付けた形式を記入する。
(b)
調速機
遠心式,空気式,オールスピード式などの別を記入する。
また必要に応じて製造業者の付けた形式を付記する。
(c)
燃料ろ過器
ろ紙式などの別を記入する。
(2.4)
機関潤滑系統
(a)
潤滑方式
圧送式,はねかけ式などの別を記入する。
(b)
油ポンプ
歯車式,トロコイド式,プランジャ式などの別を記入する。
(c)
油ろ過器
ろ紙式,金網式,遠心式などの別を記入する。
なお,2 個以上用いるときは個数を記入する。
(d)
ろ過方式
フルフロー式,バイパス式などの別を記入する。
(e)
潤滑油の種類
油の種類を記入する。
(f)
潤滑油容量
全容量を記入する。
(2.5)
冷却系統
(a)
水ポンプ形式
遠心式,軸流式などの別を記入する。
(b)
放熱器形式
加圧式,開放式などの別及びコルゲート形,プレートフィン形の別を記入する。
(c)
送風機形式
遠心式,軸流式などの別及び吸込み式,押出し式の別を記入する。
(d)
冷却水容量
水ジャケット及び放熱器内のものを含めた全容量を記入する。補助タンク,暖房機な
どがある場合は,その旨付記する。
(e)
サーモスタット形式
ベローズ式,ワックス式などの別を記入する。
(2.6)
空気清浄器
(a)
形式
ろ紙式,油槽式,遠心式などの別を記入する。
(b)
油の種類及び規定油量
油槽式の場合は,油の種類と規定油量を記入する。
(2.7)
予熱プラグ
製造業者が付けた形式を記入する。
また,必要に応じ,定格電圧,定格電流値を記入する。
(2.8)
始動装置
(a)
始動電動機
製造業者が付けた型式を記入する。
また,必要に応じ,定格電圧,定格容量を記入する。
(b)
始動電動機のかみ合い方式
押込み式,電磁シフト式,アーマチュアシフト式,慣性シフト式など
の別を記入する。
(c)
始動安全装置
変速中立形,主クラッチ遮断形などの別を記入する。
(2.9)
充電装置
(a)
充電発電機
製造業者の付けた型式を記入する。また,必要に応じ,交直流の別,定格電圧,定格
容量を記入する。
5
D 6701 - 1986
(b)
電圧電流調整器
チリル式,カーボンパイル式,半導体式などの別を記入する。
(2.10)
動力伝達装置
(a)
主クラッチ
クラッチディスク径を記入する。
(b)
変速機室潤滑油
種類及び容量を記入する。
(c)
差動機室潤滑油
種類及び容量を記入する。
なお,4 輪駆動の場合は,前輪,後輪それぞれについて記入する。
(d)
終減速機室潤滑油
種類及び容量を記入する。
なお,4 輪駆動の場合は,前輪,後輪それぞれについて記入する。
備考
動力伝達装置において,二つ以上の装置が同一の油を使用している場合は,全量をまとめ
て記入することができる。
(2.11)
走行装置
(a)
前車軸形式
形式を,エリオット式,逆エリオット式,ルモアン式,逆ルモアン式などの別,フラ
ンジ式,スライドハブ式などの別を記入する。
(b)
車輪
前後輪それぞれのリムの呼び,タイヤの空気圧を記入する。
(2.12)
制動装置
(a)
主ブレーキ
ブレーキ胴径(ディスクブレーキの場合はディスクの外径)を記入する。
(b)
駐車ブレーキ
操作方式及び作動箇所を,足踏式,手動式の別,4 輪,後 2 輪の別を記入する。
(2.13)
動力取出軸
(a)
軸の位置及び方向
トラクタの中心線及び後車軸中心線を基準として,動力取出軸先端の位置,地
上高及び方向を記入する。
(b)
軸の回転方向及び回転数
動力取出軸先端から見た回転方向及び取出軸回転数[時計回り 540,1
000min
−
1
{rpm}
など]とこれに対応する機関回転数を記入する。
(c)
その他
主動力取出軸以外に,グランド
PTO
,ベルト駆動軸などがあれば,上記にならって記入す
る。
(2.14)
作業機装着装置
(2.14.1)
3
点支持装置
JIS D 6703
によって種類(0 形,1N 形,1 形,2 形,3 形)を記入する。
なお,
JIS D 6703
の各寸法と異なる場合は,その旨を付記する。
(2.14.2)
ドローバー
(a)
形式
固定式,スイングドローバー方式,前後出し入れ式などの別を記入する。
(b)
位置
トラクタ中心線からの左右の振れ,後車軸中心線からヒッチピンまでの距離,接地面からの
最大,最小高さを記入する。
(c)
呼び又は種類
JIS D 6704
(農業用トラクタのヒッチ部の主要寸法)
,
JIS D 6705
(農業用車輪トラ
クタのリンク形ドローバーの主要寸法)によって記入する。
なお,これらの各寸法と異なる部分がある場合は,その旨を付記する。
(2.15)
作業機昇降装置
(a)
ポンプ型式
製造業者の付けた型式を記入する。
(b)
ポンプ吐出し量
吐出し量を記入し,その時の機関回転数を付記する。
(c)
作動圧力
リリーフ圧力を記入する。
(d)
ロワーリンクヒッチ点における最大昇降量(垂直移動距離)を記入する。
(e)
油圧外部取出し栓
個数及び油圧取出口寸法を記入する。
6
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(f)
作動油
種類及び専用,兼用の別並びに容量を記入する。
(g)
油圧ロック方法
ロックの方法を記入する。
(2.16)
運転装置
(a)
レバー類
運転操作に必要なレバー,ハンドル,ペダル類の名称及び個数を記入する。
(b)
座席
必要に応じて上下,前後の調節範囲,座席の懸架方式とともに,ひじ付,ヘッドレスト付な
どを記入する。
(c)
計器類
速度計,運転時間計,油圧計,温度計,電流計,燃料計などの計器の名称,方向指示器表
示灯,前照灯主光軸表示灯,充電表示灯,油圧表示灯などの表示装置について備えるものを記入す
る。
(d)
灯火類
前照灯,補助前照灯,車幅灯,尾灯,番号灯,制動灯,後退灯,駐車灯,方向指示器(前
方,側方,後方)
,作業灯,後部反射器など,それぞれの灯火について個数,色,容量及び形式を記
入する。
(e)
警音器
形式,個数,定格電圧,定格電流及びホーンを記入する。
(f)
後写鏡
個数及び取付場所を記入する。
(2.17)
その他
必要と思われる事項を記入する。
7
D 6701 - 1986
付表 1 農業用車輪トラクタ仕様書 (1)
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付表 2 農業用車輪トラクタ仕様書 (2)
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12
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改正原案調査作成委員会構成表
氏名
所属
(委員会長)
田 原 虎 次
日本大学農獣医学部
黒 田 武 夫
通商産業省機械情報産業局
田 中 行 平
全国農業協同組合連合会
辻 充
社団法人陸用内燃機関協会
戸 田 政 則
農林水産省農蚕園芸局
松 本 大 治
工業技術院標準部
八 木 茂
農業機械化研究所検査部
渡 辺 崇
全国農業機械商業協同組合連合会
渡 辺 波 夫
社団法人日本農業機械化協会
宇 野 宏
株式会社本田技術研究所朝霞東研究所
小 林 誠
松山株式会社開発部
小 宮 正 幸
富士ロビン株式会社技術部
後 藤 秀 夫
久保田鉄工株式会社内燃機器研究本部開発管理部
佐 藤 文 男
石川島芝浦機械株式会社技術管理部
鮫 島 陽 一
高北農機株式会社技術部
瀧 澤 保 男
ヤンマー農機株式会社中央技術研究所
手 塚 博 之
三菱農機株式会社生産本部技術管理部
福 岡 泰 孝
井関農機株式会社整地技術部
鋤 柄 作 治
鋤柄農機株式会社研究部