2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
D 5805-1994
自動車用プッシュプルスイッチ(1段)
Push-pull switches for automobiles
1. 適用範囲 この規格は,最大負荷160W以下の自動車用各種ランプ(ただし,ハザードウォーニング
ランプを除く。)及び各種機器の電流回路を手動により開閉するプッシュプルスイッチ(1段)(以下,ス
イッチという。)について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 0209 メートル並目ねじの許容限界寸法及び公差
JIS C 1102 指示電気計器
JIS C 1302 絶縁抵抗計
JIS D 0201 自動車部品の電気めっき通則
JIS D 1601 自動車部品振動試験方法
JIS D 5403 自動車用電線端子
JIS Z 8703 試験場所の標準状態
2. 種類及び記号 スイッチの種類及び記号は,公称電圧及び最大負荷によって区分し,表1に示すとお
りとする。
表1
種類
記号
公称電圧 V
最大負荷 W
1種
1A
12
10
1B
24
2種
2A
12
100
2B
24
3種
3A
12
160
3B
24
3. 構造
3.1
一般構造 スイッチの構造は,できるだけ取り扱いが簡単で,堅ろうなものとし,使用中各部がゆ
るまないようにしなければならない。
3.2
切換方式 スイッチの切換方式は,表2に示すとおりとする。
表2
切換位置
入力端子
出力端子
ノブの位置
OFF
○
−
押し込まれているとき
ON
○
○
引き出されているとき
備考 表中の○印は,各端子に対する接続を示す。
2
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3.3
操作及び節度 スイッチの操作は滑らかで,しかも停止すべき正しい位置(表2の切換位置で,以
下,停止位置という。)を手ごたえで容易に感知できなければならない(以下,節度という。)。ただし,そ
の際の節度の荷重(力)は,4.9〜29Nとする。
なお,各停止位置の中間においては,有害な引っかかり,きしみ,がたなどがあってはならない。
3.4
形状及び寸法 スイッチの形状及び主要寸法は,付図1に示すとおりとする。
3.5
端子の強さ スイッチの端子は,正規の使用状態において,端子のリード線取付部へ垂直静荷重49 N
を1分間加えても,有害な変形,端子固定部のがた及びその他に異状が生じてはならない。
なお,平形端子又はリード線に,はんだ付けしたものは,リード線の引き出し方向へ静荷重49 Nを加え
て行う。
3.6
取付部の強さ スイッチを正規の使用状態に取り付け,本体先端(付図1参照)へ垂直静荷重49 N
を1分間加えても,取付部その他に異状が生じてはならない。
4. 材料及びめっき スイッチの主要部の材料及びめっきは,原則として表3に示すとおりとする。
なお,めっきは,JIS D 0201の規定による。
表3
部品名
材料
めっき
接点
銅又は銅合金
銀めっきを施す場合はMBAg5
銀又は銀合金
−
端子
銅
−
黄銅
軟鋼
MFZn5
導電金具
銅
−
黄銅
端子用小ねじ及び
取付けナット
黄銅
−
軟鋼
MFZn5
外わく
軟鋼
MFZn5
アルミニウム
−
亜鉛合金
合成樹脂
化粧ナット
黄銅
MBCr5又はMBNi5
軟鋼
MFNi5又はMFCr10
亜鉛合金
MZCr10又はMZNi15
アルミニウム
MACr20
合成樹脂
−
絶縁体
合成樹脂
−
備考 MFZn5の場合は,クロメート処理B又はCを施す。
5. 外観 スイッチの化粧ナット及びノブの外観は,JIS D 0201の規定による。ただし,ノブについては,
あわ,異物,ばり,かけなどの容易に識別できるものがあってはならない。
なお,傷,あわ,異物,ばり,ピンホール及びかけの限度は,原則として表4に示すとおりとする。
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表4
部品名
外観の状態
限度
化粧ナット
打傷
幅0.5mm以下,長さ3mmまで3個以下
素地傷
長さ1〜4mm 3個以下
すり傷
長さ3〜10mm3本以下
ノブ
素地傷
長さ4〜7mm1個以下
すれ傷
長さ4〜7mm1個以下
あわ,異物
幅1mm以下1個以下
ばり
幅2mm以下
ピンホール
1文字の線幅の10〜30%までの直径をもつピンホール1個以下
かけ
文字部のかけは,0.5mm以下
6. 性能
6.1
絶縁抵抗 スイッチの絶縁された金属間の絶縁抵抗は,常温常湿の状態において1MΩ以上とする。
6.2
接触抵抗 スイッチをON状態において,入力端子と出力端子との間に表7に示す負荷を加えた時
の接触抵抗による電圧降下は,表5に示す値以下とする。
表5
単位 V
項目
電圧降下
耐久検査前
0.15
耐久検査後
0.25
6.3
耐温度性 スイッチは,−30〜80℃の温度範囲において各部に異状を生じないで,−20〜60℃の温
度範囲で作動しなければならない。
また,接触抵抗は,6.2による耐久検査前の値を満足しなければならない。
6.4
温度上昇 スイッチをON状態において,入力端子と出力端子との間に表7に示す負荷を加え,各
部の温度がほぼ一定になったときの導電部の温度と負荷を加える前の温度との差は,表6に示す値以下で
なければならない。
表6
単位 ℃
接触部の種類
温度差
自力接触
銅又は銅合金
30
銀又は銀合金
50
他力接触
銅又は銅合金
40
銀又は銀合金
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備考1. 自力接触とは,接触部における導電部分の一部又は全部によ
って接触圧力が生じるような構造のものをいう。
2. 他力接触とは,接触部における導電部分が単に通電を目的と
し,接触圧力が通電を目的としない他の弾性体(例えば,ば
ね鋼のばね)に依存するような構造のものをいう。
3. 自力,他力両効果のある構造で,自力接触の効果が失われて
も他力で十分接触効果のあるものは,他力接触とみなす。
6.5
耐振性 スイッチの各切換位置において,JIS D 1601の5.3(振動耐久試験方法)に規定する段階4
による試験を行ったとき,接点の接触ふらつき及び有害な異常音を生じてはならない。
また,試験後,接触抵抗は,6.2に規定する耐久検査前の値を,操作及び節度は,3.3に規定する事項を
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満足しなければならない。
6.6
耐久性 スイッチは,通常の使用状態において,作動回数25 000回以上使用しても,3.3,6.1及び
6.2の規定を満足しなければならない。
なお,作動回数は,ノブの操作1往復を1回とする。
7. 検査
7.1
形式検査 形式検査は,新規の設計製作によるスイッチが設計どおりの性能を発揮するかどうか,
又は新規の受渡しに際し,設計仕様どおりの性能を発揮するかどうかを知るために行うもので,次の各項
目について行い,同一試験品について全部の検査に合格しなければならない。ただし,(7)は,別の試験品
で行ってもよい。
(1) 構造検査
(2) 材料検査
(3) 外観検査
(4) 絶縁抵抗検査
(5) 接触抵抗検査
(6) 耐温度検査
(7) 温度上昇検査
(8) 操作及び節度検査
(9) 耐振検査
(10) 耐久検査
(11) 表示検査
7.2
受渡検査 受渡検査は,形式検査に合格した同一形式のスイッチを製造又は受渡しの際に行うもの
で,同一試験品について,次の各項目全部の検査に合格しなければならない。ただし,3.5に規定する端子
の強さ及び3.6に規定する取付部の強さは検査を行わない。
また,受渡当事者間の協定によって,検査項目の一部を省略してもよい。
(1) 構造検査
(2) 外観検査
(3) 絶縁抵抗検査
(4) 操作及び節度検査
(5) 表示検査
7.3
検査条件
7.3.1
検査場所の標準状態 特に指定がない限り,原則としてJIS Z 8703に規定する常温常湿で行う。
7.3.2
測定用電気計器 電圧計及び電流計は,JIS C 1102に規定する0.5級以上,絶縁抵抗計はJIS C 1302
に規定する500V用のものを使用する。
7.3.3
検査電圧 特に指定がなければ,検査電圧は公称電圧とする。
7.3.4
検査電流 特に指定がなければ,検査電流は表7による。
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表7
種類
公称電圧V
検査電流 A
1
12
1
24
2
12
8
24
4
3
12
13
24
7
7.3.5
検査負荷 特に指定がなければ,抵抗負荷(電球を含む)を用いる。
7.4
検査方法
7.4.1
構造検査 構造は,3.の規定に適合しなければならない。
7.4.2
材料検査 材料は,4.の規定に適合しなければならない。
7.4.3
外観検査 外観は,5.の規定に適合しなければならない。
7.4.4
絶縁抵抗検査 絶縁抵抗は,6.1の規定に適合しなければならない。
7.4.5
接触抵抗検査 接触抵抗は3回測定し,その平均値が6.2の規定に適合しなければならない。
7.4.6
耐温度検査
(1) スイッチを低温槽に入れ,ノブを引き出さない状態で槽内の周囲温度を−30℃に下げ,ほぼ安定して
から約60分間保持し,温度を徐々に−20℃まで上げる。周囲温度がほぼ安定した後,更に約30分間
保持してから全ストロークを10回作動させた後作動検査を行い,6.3の規定に適合しなければならな
い。
(2) スイッチを高温槽に入れ,ノブを引き出さない状態で槽内の周囲温度を80℃に上げ,ほぼ安定してか
ら約60分間保持し,温度を徐々に60℃まで下げる。周囲温度がほぼ安定した後,更に約30分間保持
してから全ストロークを10回作動させた後作動検査を行い,6.3の規定に適合しなければならない。
7.4.7
温度上昇検査 スイッチの端子に電線を接続して表7に示す負荷を加え,各部の温度がほぼ安定し
た後,熱電対を使用して測定したとき,導電部の最高温度上昇は,表6に示す値以下でなければならない。
7.4.8
操作及び節度検査 電流切換作動は確実で,点灯時に異状がなく,3.3の規定に適合しなければな
らない。
7.4.9
耐振検査 耐振性は,6.5の規定に適合しなければならない。
また,振動耐久試験の時間は,各切換位置の合計時間とする。
備考 スイッチの左右方向へ振動を加える場合,正規の使用状態の取り付けに対して,スイッチの左
右方向の向きを90度回転させて,もとの左右方向が垂直となるようにして,上下振動を加えて
もよい。
7.4.10 耐久検査 表8に示す条件によって,スイッチを開閉作動して耐久試験を行ったとき,各部に異状
がなく,6.6の規定に適合しなければならない。ただし,接触抵抗の測定は3回行い,その平均値をとる。
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表8
項目
試験条件
作動回数
毎分15〜30回,25 000回
操作部の移動時間
0.1〜0.5秒
試験端子電圧
公称電圧12Vは約14V
公称電圧24Vは約28V
端子負荷電流
表7による。
7.4.11 表示検査 表示は,9.の規定に適合しなければならない。
8. 製品の呼び方 スイッチの呼び方は,規格名称又は規格番号,種類又は記号及び端子の種類又は端子
記号による。
例 自動車用プッシュプルスイッチ(1段)1種12Vねじ端子
又は,JIS D 5805-1AS
9. 表示 スイッチは,見やすい箇所に容易に消えない方法で,次の事項を明りょうに表示する。
(1) 製造業者名又はその略号
(2) 製造年月又はその略号
(3) 種類(1種は1,2種は2,3種は3と表示する。ただし,3種は省略してもよい。)
(4) 公称電圧(公称電圧が12V及び24V併用のものは表示しなくてもよい。)
付図1
1. 主要寸法及び取付部寸法
備考1. つまみ取付部5口又は4口がねじ込みの場合のねじは,原則としてJIS B 0209に規定するM5×0.8又はM4×0.7
の2級とする。
2. ねじ精度は,JIS B 0209に規定する2級とする。
2. 端子寸法
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(1) ねじ端子のねじ(記号S)は,原則としてJIS B 0209に規定するM3×0.5の2級又はM4×0.7の2級
とする。
(2) 平形おす端子は,JIS D 5403に規定するPAとする。