日本工業規格
JIS
D
4606
-1994
自動車乗員用ヘッドレストレイント
Head restraints for automobile occupants
1.
適用範囲 この規格は,乗用車・小型トラックなどに用いる自動車乗員用のヘッドレストレイントに
ついて規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS D 4607
自動車室内寸法測定用三次元座位人体模型
2.
この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 6549-1980
Road Vehicles−Procedure for H−point determination
2.
用語の定義 この規格に用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
(1)
ヘッドレストレイント 自動車が主として追突を受けた際,乗員の頭部の後傾を抑止して,けい部の
損傷を防止又は軽減させるための装置。
(2)
シーティングレファレンスポイント JIS D 4607 又は ISO 6549 で規定した成人男子の 50 パーセンタ
イル人体模型を,その搭載要領に基づきシートに着座させた場合の,人体模型のヒップポイント(こ
関節点)に相当するシート上に設定した設計基準点。ただし,前後位置が調節できるシートは,設計
上の最後端位置にし,シートバックの角度が調節できるものは,設計基準位置又は人体模型のトルソ
ライン(胴体の傾斜を表す線)が,できるだけ鉛直から 25 度に近くなるような位置とし,その他の調
節機構は,設計基準位置に調節する。
(3)
トルソレファレンスライン (2)における人体模型のトルソラインに相当するシート上に設定した設
計基準線。
(4)
座位中心面 (2)における人体模型の左右の中心面に相当するシート上に設定した設計基準面。
(5)
バックパン JIS D 4607 又は ISO 6549 で規定した人体模型の胴体背面に相当し,ヒップポイント及び
トルソラインのわかる曲面板。
(6)
ヘッドフォーム 頭部に相当する直径 165mm の半球状又は球状の剛体模型。動的試験に用いるとき
は,その有効質量を 6.8kg とする。
3.
性能 ヘッドレストレイントの性能は,次のとおりとする。
(1)
ヘッドレストレイントを 5.1.2 に示す方法で試験したとき,5.1.2(3)で測定したヘッドフォームの移動
量は,102mm 以下とし,ヘッドレストレイントには,破損がないこと。
また,更に荷重を 5.1.2(4)に規定する値まで加えたとき,ヘッドレストレイントは,シート,パネル
などが破損する前に破損又は脱落がないこと。
(2)
ヘッドレストレイントを 5.1.3 に示す方法で試験したとき,ヘッドフォームに加わる加速度の絶対値は,
785m/s
2
以上の値が,連続して 3ms 以上にわたって発生しないものとする。
2
D 4606-1994
(3)
調節機構をもつヘッドレストレイントで,
頻繁に使用される調節部は,
5.2
に示す方法で試験したとき,
各部に変形,がたつき,破損,摩耗その他操作に支障を伴う異状を生じないこと。
4.
構造及び寸法 ヘッドレストレイントの構造及び寸法は,次のとおりとする。
(1)
ヘッドレストレイントの表皮の縫目部又は接着部及び内容物は,繰り返しの加圧に対して,十分に耐
えること。
(2)
構造物及び金具類には,強度上適切な材料を用い,外部に露出している金属部分には,すべてさび止
め処理を施す。ただし,耐食性材料には,その必要はない。
(3)
ヘッドレストレイントは,振動に対して,緩み・がたつき・移動・騒音などを生じないこと。
(4)
調節機構をもつヘッドレストレイントの各部の調節部は,調節が容易かつ円滑で,ヘッドレストレイ
ントを所定の位置に固定できること。
また,調節範囲を超えて,その位置で使用されるおそれがない構造とする。
(5)
ヘッドレストレイントの位置及び大きさは,次のとおりとする。ただし,位置を調節できるヘッドレ
ストレイントは,(a)及び(b)の規定を,同時に満足できる位置で固定できること。
(a)
ヘッドレストレイントの上端の位置は,トルソレファレンスラインに平行に測って,シーティング
レファレンスポイントから,ドライバシート用では,700mm 以上,その他のシート用では,650mm
以上とする。
(b)
ヘッドレストレイントの外形幅は,トルソレファレンスラインに平行に測って,上端から下方の
65mm
又はシーティングレファレンスポイントから上方の 635mm の位置で,
座位中心面から左右に,
それぞれ 85mm 以上とする。
(c)
位置を調節できるヘッドレストレイントの外形高さは,トルソレファレンスラインに平行に測って,
100mm
以上とする。
5.
試験方法
5.1
性能試験
5.1.1
試験機への取付け シート及びヘッドレストレイントは,車体への取付けと同様な状態で,試験機
に取り付ける。
なお,調節機構をもつシート及びヘッドレストレイントの位置は,次のように調節する。
また,その他の調節機構は,設計基準位置とする。
(1)
シートの前後方向は,設計上の最後端位置にする。
(2)
シートの上下方向は,設計基準位置にする。
(3)
シートバックの角度は,設計基準位置又は 50 パーセンタイル人体模型のトルソラインが,できるだけ
鉛直から 25 度に近くなるような位置にする。
(4)
ヘッドレストレイントの高さ及び前後方向は,次のように調節する。
(4.1)
静的試験では,設計上の最も高い位置にした後,最も後方の位置にする。
(4.2)
動的試験では,設計上の最も低い位置にした後,次の位置とする。
(a)
前方からの衝撃試験では,設計上の最も後方の位置にする。
(b)
後方からの衝撃試験では,設計上の最も前方の位置にする。
5.1.2
静的試験 ヘッドレストレイントの静的試験は,次のとおりとする。
(1)
バックパンのヒップポイントをシーティングレファレンスポイントに合わせ,シーティングレファレ
3
D 4606-1994
ンスポイント回りに,373N・m のモーメントが生じるように,荷重をバックパンを介して座位中心面
上にシートバックに加え,そのときのバックパンのトルソライン(以下,移動後のトルソレファレン
スラインという。
)の位置を決める。
(2)
ヘッドフォームを用い,シーティングレファレンスポイント回りに,373N・m のモーメントが生じる
ように,荷重を座位中心面上に,ヘッドレストレイントに,次のように加える。
(2.1)
荷重点は,
図 1 に示すように,ヘッドレストレイントの上端から移動前のトルソレファレンスライ
ンに平行で,座位中心面上に測って,65mm の下方の位置とする。
(2.2)
荷重の負荷方向は,移動後のトルソレファレンスラインに垂直とし,その後のヘッドフォームの動
きは,
図 1(a)に示すように,移動後のトルソレファレンスラインの垂直線上又は図 1(b)に示すよう
に,シーティングレファレンスポイントを中心とする円周上とする。
(3)
負荷時のヘッドフォームの先端と移動後のトルソレファレンスラインとの距離(以下,ヘッドフォー
ムの移動量という。
)を測定し,また,ヘッドレストレイントの破損の有無を調べる。
図 1 荷重点,荷重の負荷方向及びヘッドフォームの移動量
(4)
更に荷重を,890N まで加えて,ヘッドレストレイント,シート及びパネルなどの破損又は脱落の有無
を調べる。
5.1.3
動的試験 ヘッドレストレイントの動的試験は,次のとおりとする。ただし,後方からの衝撃試験
は,最後部のシート・横向きシート・後向きシートなどのように,後方の乗員が直接衝突するおそれがな
い,ヘッドレストレイントには,行わない。
(1)
前方からの衝撃試験 前方からの衝撃試験は,次による。
(1.1)
ヘッドフォームを用い,25±1km/h の速度で,振子式・発射式・落下式などでヘッドレストレイン
トに衝撃を加える。
(1.2)
衝撃点及び衝撃方向は,次のとおりとする。
(a)
衝撃点は,座位中心面上で,ヘッドレストレイントの上端からトルソレファレンスラインに平行
4
D 4606-1994
に測って,原則として 65mm の下方の点とする。
(b)
衝撃方向は,座位中心面上で水平とする。
(1.3)
衝撃時のヘッドフォームの加速度波形を記録し,調べる。
(2)
後方からの衝撃試験 後方からの衝撃試験は,次による。
(2.1)
ヘッドフォームを用い,25±1km/h の速度で,振子式・発射式・落下式などでヘッドレストレイン
トの後面に衝撃を加える。
(2.2)
衝撃点及び衝撃方向は,原則として次のとおりとする。
(a)
衝撃点は,座位中心面上で,
図 2 に示すように,水平面と 45 度の角度をもつ直線が,ヘッドレス
トレイントの後面に接する点とする。
(b)
衝撃方向は,座位中心面上で,水平面に対して 45 度とする。
図 2 衝撃点と衝撃方向
(2.3)
衝撃時のヘッドフォームの加速度波形を記録し,調べる。
5.2
耐久試験 ヘッドレストレイントを通常の操作と同様な方法で,各調節部ごとに調節範囲を 200 回
操作させて,各調節部の異状の有無を調べる。
5
D 4606-1994
自動車 航空部会 保護まくら専門委員会 構成表(昭和 59 年 4 月 1 日改正のとき)
氏名
所属
(委員会長)
佐 藤 武
慶応義塾大学
堤 富 男
通商産業省機械情報産業局
松 波 正 壽
運輸省自動車局
大久保 和 夫
工業技術院標準部
野 崎 武 敏
工業技術院機械技術研究所
福 田 重 久
財団法人日本自動車研究所
志 賀 四 郎
社団法人日本保安用品協会
杉 浦 文 夫
トヨタ自動車株式会社
秋 葉 忠 臣
日産自動車株式会社
樋 口 和 雄
株式会社本田技術研究所
武 田 康 之
富士重工業株式会社
大 塚 順 一
いすゞ自動車株式会社
金 子 達 明
日本自動車輸入組合
轟 秀
社団法人日本自動車連盟
高 橋 敏 雄
国松工業株式会社
金 井 隆
立川スプリング株式会社
辻 潤 吾
東京シート株式会社
柴 田 藏 六
日本発条株式会社
横 倉 千代勝
池田物産株式会社
谷 口 貞 雄
社団法人日本自動車工業会
岩 根 政 雄
社団法人日本自動車部品工業会
(専門委員)
入 江 泰 彦
運輸省交通安全公害研究所
増 山 慧
東洋工業株式会社
小 林 隆 二
社団法人日本自動車部品工業会
(事務局)
川 口 広 美
工業技術院標準部機械規格課
武 藤 晃 雄
工業技術院標準部機械規格課
(事務局)
笹 尾 照 夫
工業技術院標準部機械規格課(平成 6 年 9 月 1 日改正のとき)