2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
D 4311-1995
自動車用クラッチフェーシング
Clutch facings for automobiles
1. 適用範囲 この規格は,自動車に用いる乾式クラッチフェーシング(以下,クラッチフェーシングと
いう。)について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS G 5501 ねずみ鋳鉄品
JIS R 6252 研摩紙
2. 性能
2.1
摩擦性能 クラッチフェーシングの摩擦係数及びその許容差並びに摩耗率は,6.1によって試験した
とき,表1に示すとおりとする。
なお,試験後,ディスクの摩擦面及び試験片には,有害なきず,膨れなどがあってはならない。
表1 摩擦係数及び摩耗率
項目
試験温度(1)
100℃
150℃
200℃
摩擦係数(2)
0.25〜0.60
0.20〜0.60
0.15〜0.60
指定された摩擦係数に対する許容差
±0.08
±0.10
±0.12
摩耗率10-7cm3/Nm
0.50以下
0.75以下
1.00以下
注(1) 試験温度は,ディスク摩擦面の温度とする。
(2) 摩擦係数の範囲は,許容差を含む。
2.2
曲げ クラッチフェーシングの曲げ強さ及び最大ひずみは,6.2によって試験したとき,表2に示す
とおりとする。ただし,メタリックのものには適用しない。
表2 曲げ強さ及び最大ひずみ
材料
曲げ強さ
N/mm2
最大ひずみ
10-3mm/mm
レジンモールド系
25以上
6.0以上
セミモールド系,その他
8.3以上
3. 寸法許容差 クラッチフェーシングの寸法許容差は,原則として表3による。
なお,クラッチフェーシングの主要寸法を,参考として参考表1に示す。
2
D 4311-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表3 寸法許容差
単位mm
区分
許容差
1枚当たりの厚さの差
外径
190以下のもの
±0.8
−
190を超え255以下のもの
±1.0
255を超えるもの
±1.2
内径
160以下のもの
±0.8
−
160を超えるもの
±1.0
厚さ
3.2以下のもの
外径190以下のもの
±0.08
0.08以下
外径190を超え255以下のもの
±0.10
0.10以下
3.2を超え4.0以下のもの
外径190以下のもの
±0.08
0.08以下
外径190を超え350以下のもの
±0.10
0.10以下
外径350を超えるもの
±0.12
0.12以下
4.0を超えるもの
外径350以下のもの
±0.10
0.10以下
外径350を超えるもの
±0.12
0.12以下
参考表1 主要寸法
単位mm
外径
内径
厚さ
外径
内径
厚さ
150
100 110
2.8
3.0
3.2
3.5
260
150 160 170
3.5
3.8
4.0
160
110
275
175 180
165
110
300
190
170
110 120
325
190 200 210
180
125
2.5
2.9
3.0
3.2
3.3
3.4
3.5
3.8
4.1
350
210 220
4.0
4.5
5.0
5.5
184
127
380
220 240
190
130 132
400
236 250
200
130 140
410
250 260
212
140 150
430
250 260
215
140 150 154
457
280
222
150
224
150 160
225
145 150 154
236
150
240
150 160
250
155 160
255
170
4. 外観 クラッチフェーシングの仕上げは良好で,き裂,きず,でこぼこ,反り,ねじれなどの有害な
欠点があってはならない。
5. 材料 クラッチフェーシングの材料は,モールド,特殊加工ウーブン,セミモールド,メタリック又
はその他これに類似するものとする。
6. 試験
6.1
摩擦性能試験
6.1.1
試験片 試験片は,次のとおりとする。
3
D 4311-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(1) 試験片の摩擦面の大きさは25×25mm,その許容差は±0.2mmとする。ただし,製品形状によって25
×25mmが採取できない場合は,できるだけ25×25mmに近い大きさとする。
(2) 試験片の厚さは,製品厚さとし,その両面を平行に研磨する。
(3) 試験片は,1枚のクラッチフェーシングから2個採取する。
6.1.2
試験装置 試験装置は,円板形の摩擦板(以下,ディスクという。)が一定速度で回転する定速式
摩擦試験機(参表図1参照)とし,その仕様は,次のとおりとする。
(1) 試験片中心とディスク回転軸中心との距離は,150mmとする。
(2) ディスク摩擦面の材料は,JIS G 5501のFC 250とし,その表面はJIS R 6252の320番相当の研磨紙
で仕上げる。
また,表面はパーライト組織とする。
(3) 摩擦力の測定には,自己測定装置を用いる。
(4) ディスク摩擦面の温度(以下,ディスク温度という。)の測定は,熱電対を溶着した8×8×0.6mmの
銀板を摩擦面に0.1〜0.2Nの力で押し付けて行う(付図1参照)。
その位置は,ディスクの摩擦部幅の中心線上において,試験片中心から回転方向へ50〜100mmの
所とする。
(5) 加熱及び冷却装置は,ディスクの裏側から加熱又は冷却し,ディスク摩擦面の温度を100℃から200℃
までの試験温度に対して±10℃の範囲で調整できるものとする。
6.1.3
試験条件 試験条件は,次のとおりとする。
(1) 試験温度の許容差は,±10℃とする。
(2) 試験片とディスク摩擦面との滑り速さは,6〜8m/sとする。
(3) 試験片の押付け圧力は,0.5±0.01MPaとする。
(4) 摩擦方向は,クラッチフェーシングの摩擦方向とする。
6.1.4
試験方法 試験は,試験片2個を試験装置に取り付け,次の順序で行う。
(1) 試験片を,あらかじめ十分な当たりがつくまで100℃以下ですり合わせを行う。すり合わせ後,試験
片の厚さをマイクロメータで測定する。測定は,試験片1個について5か所とし,その平均値を厚さ
とする。ただし,厚さの測定は,試験片を室温まで冷却した後に行う。
(2) 試験温度100℃において6.1.3の条件でディスクを5 000回転させ,その間の摩擦力を測定するか,又
は5 000回転を10〜20等分して250〜500回転ごとに摩擦力を測定する。摩擦後,試験片の厚さを(1)
と同様に測定する。
(3) 試験温度150℃及び200℃において(2)と同様な測定を行う。
(4) 200℃までの測定が終わった後,100℃においてディスクを3 000回転させ,(2)と同様の測定を行う。
備考1. ディスク温度は,各試験回転数のうちの1 500回転以下で各試験温度に達しなければならない。
2. ディスク温度の上昇は,試験片との摩擦熱によるが,1 500回転以下で各試験温度に達しない
場合は,補助的に加熱装置を用いてもよい。
6.1.5
計算 各試験温度における摩擦係数及び摩耗率は,次の式によって算出する。
F
f
=
μ
ここに,
μ: 摩擦係数
f: 摩擦力(3)(N)
F: 試験片に加える全押付け力(4)(N)
4
D 4311-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3
2
1
2
1
10
06
.1
2
1
−
×
−
=
−
=
m
m
f
d
d
n
A
f
d
d
n
A
R
V
π
ここに,
V: 摩耗率(単位仕事量当たりの摩耗量)(cm3/N・m)
R: 試験片中心とディスク回転軸中心との距離 (150mm)
n: 試験時のディスクの総回転数
A: 試験片の摩擦面の総面積 (mm2)
d1: 試験前の試験片の平均厚さ (mm)
d2: 試験後の試験片の平均厚さ (mm)
fm: 試験時の平均摩擦力(5)(N)
注(3) 全摩擦距離の後半の安定した摩擦力の平均値。
(4) (試験片の押付け圧力)×(試験片の面積)
(5) 全摩擦距離の平均摩擦力。
6.2
曲げ試験
6.2.1
試験片 試験片は,次のとおりとする。
(1) 試験片は,摩擦材部だけとし,その大きさは,長さ55×幅15mm×製品厚さとする。ただし,長さ55mm
のものが採取できないときは40mmでもよい。
また,試験片の中央部に溝がないように採取する。
(2) 試験片は,1枚のクラッチフェーシングから摩擦方向に2個以上採取する。
6.2.2
試験用ジグ 試験用ジグは,次のとおりとする(付図2参照)。
(1) 支点間距離は,40mmとする。ただし,短い試験片に対しては30mmとする。
(2) 支点先端の曲率半径は1.5mm,加圧先端の曲率半径は3mmとする。
6.2.3
試験方法 試験方法は,次のとおりとする。
(1) 試験片を,摩擦両側を上にして支点の上に載せる。
(2) 試験片の中央に10mm/min以下の下降速度で荷重を加え,最大荷重及び破壊時のたわみを測定する。
6.2.4
計算 曲げ強さ及び最大ひずみは,次の式によって算出する。
2
2
3
bd
Wl
=
σ
δ
2
6
l
d
e=
ここに,
σ: 曲げ強さ (N/mm2)
d: 試験片の厚さ (mm)
b: 試験片の幅 (mm)
l: 支点間距離 (mm)
W: 最大荷重 (N)
e: 最大ひずみ (mm/mm)
δ: 最大たわみ(破壊時のたわみ)(mm)
7. 検査
7.1
検査項目 クラッチフェーシングの検査項目は,次のとおりとする。
(1) 性能検査
(2) 寸法検査
(3) 外観検査
5
D 4311-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.2
検査方法 クラッチフェーシングの検査方法は,受渡当事者間の協定による抜取検査方式に基づく
抜取検査とする。
6
D
4
3
11
-1
9
9
5
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図1 ディスク温度測定装置と測定位置
7
D 4311-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
8. 製品の呼び方 クラッチフェーシングの呼び方は,規格の名称又は規格番号,外径,内径及び厚さに
よる。
例1: 自動車用クラッチフェーシング200×140×3.2
例2: JIS D 4311 200×140×3.2
9. 表示 製品又は包装には,次の事項を表示する。
(1) 製品に表示する場合 製品に表示する場合には,製造業者名又はその略号を表示する。
(2) 包装に表示する場合 包装に表示する場合には,次の事項を表示する。ただし,(b)〜(d)については,
受渡当事者間の協定による部品番号でもよい。
(a) 製造業者名又はその略号
(b) 外径
(c) 内径
(d) 厚さ
付図2 曲げ試験ジグ
8
D 4311-1995
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参考図1 定速式摩擦試験機の一例
9
D 4311-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
社団法人 日本自動車部品工業会
フェーシング,リベット関係JIS改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
野 崎 武 敏
工業技術院機械技術研究所
(幹事)
柳 田 勇
曙ブレーキ工業株式会社
北 野 清 一
株式会社大金製作所
(委員)
鈴 木 孝 男
通商産業省機械情報産業局
飛 田 勉
工業技術院標準部
下 平 隆
運輸省地域交通局陸上技術安全部
田 沢 修
富士重工業株式会社
土 井 利 政
日産自動車株式会社
片 山 信 昭
トヨタ自動車株式会社
安 部 宏
株式会社本田技術研究所
渡 辺 悠
三菱自動車工業株式会社
宮 坂 昌 輝
いすゞ自動車株式会社
白 瀬 勝 男
日野自動車工業株式会社
喜 多 秀 紀
マツダ株式会社
山 田 洋一郎
厚木自動車部品株式会社
工 藤 良 一
アイシン精機株式会社
坂 田 隆 男
日立化成工業株式会社
谷 川 勝 志
日清紡績株式会社
飯 尾 智 之
株式会社エフ・シー・シー
小 島 克 己
社団法人日本自動車部品工業会
(関係者)
竹 村 伸 一
久代ブレーキ工業株式会社
桝 田 操
日本バルカー工業株式会社
大 堀 英 司
三菱セメント建材株式会社
直 井 戌
株式会社アスク
御 厨 良 平
日本クラッチ株式会社
川 瀬 誠
住友電気工業株式会社
梶 原 勝 治
東京部品工業株式会社
(事務局)
落 合 俊 一
社団法人日本自動車部品工業会