2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
D 1702-1996
自動車−直接運転視界試験方法
Road vehicles−Test method for the direct driver's field of view
1. 適用範囲 この規格は,乗用車,トラック及びバスにおいて,前方を直視した状態の運転者の直接運
転視界試験方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS D 0021 自動車の運転者アイレンジ
JIS D 0102 自動車用語−自動車の寸法,質量,荷重及び性能
JIS D 0301 自動車室内寸法の測定方法
JIS D 4607 自動車室内寸法測定用三次元座位人体模型 (3DM-JM50)
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
(1) アイレンジ 運転者の目の位置の分布を統計的に表したもの。
(2) アイリプス 運転者の右目及び左目のアイレンジを側面図及び平面図に表した長円。
(3) アイリプス基準線 アイリプス上に示す基準線。
(4) 基準アイポイント アイリプスの中から運転者の代表的な目の位置として決めた点。
(5) アイライト装置 ランプ投影法において,アイポイント(5.3参照)に一致させ運転者の目の代用とし
て使用する点光源装置。
(6) カメラ設定点 カメラ撮影法において,アイポイントに一致させるべきカメラ上の位置で,通常はカ
メラフィルム面上の位置。
(7) アイマーク 目視法において,車両内に設置してアイポイントを示すために使用する装置。
3. 基準アイポイントの設定方法 JIS D 0021に従って設定されたアイリプスに対し,次の手順によって
基準アイポイントを設定する。ただし,JIS D 4607に規定する3DM-JM50を使用して求めたH点及びR
点からJIS D 0021に準じて設定されたアイリプスを用いてもよい。
(1) 単眼の場合 単眼の場合には,次による。
なお,アイリプス基準線は,JIS D 0021に従って設定する。
(a) 側面図では,アイリプス基準線X-X及びZ-Zの交点を基準アイポイントとする。
(b) 平面図では,アイリプス中心を通りアイリプス基準線X-Xに平行に引いた線と,アイリプス基準線
Y-Yとの交点を基準アイポイントとする。
(2) 双眼の場合 双眼の場合には,次による。
(a) 側面図では,単眼の場合と同じとする。
(b) 平面図では,(1)(b)で決めた基準アイポイントを中心にして,左右間隔が65mmとなるアイリプス基
準線Y-Y上の2点を基準アイポイントとする。
2
D 1702-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4. 試験方法の種類 試験方法は,次の3種類とし,試験目的に合わせてこの中から選んで行う。
(1) ランプ投影法 アイポイントに設置したアイライト装置からの光によって視界を投影し,測定する方
法で,スクリーンに投影するスクリーン投影法と,水平面に投影する水平面投影法がある。
(2) カメラ撮影法 アイポイントに設置したカメラによって視界を撮影し,測定する方法で,ランプ投影
法と同様に,スクリーン投影法と水平面投影法とがある。
(3) 目視法 アイポイントに設置したアイマークから視界を目視し,測定する方法。
5. 試験条件
5.1
自動車の設置条件 自動車は水平な平たん(坦)面(以下,接地面という。)に置き,直進姿勢とす
る。ただし,自動車の水平基準面(1)を水平に固定した状態で試験してもよい。
注(1) JIS D 0301に規定するゼロZ平面とする。
5.2
積載条件 自動車は,空車状態(2)(スペアタイヤ,標準工具,ジャッキなどを含む。)に運転席1名
乗車の状態とする。
また,空車状態及び空車状態に乗員相当質量を定員数だけ負荷した定員乗車状態又は最大積載状態(2)に
おいて試験してもよい。
注(2) JIS D 0102による。
5.3
アイポイント アイポイントは,原則として基準アイポイントの双眼を使用する。ただし,試験目
的に応じて基準アイポイントの単眼を使用してもよい。
また,アイレンジ上の任意の点を使用してもよい。
5.4
スクリーンの設置位置 スクリーンの設置位置は,次による。
円筒形スクリーンの半径の中心を単眼アイポイントに合わせる。スクリーンの横軸の目盛は,角度表示
とし,単眼アイポイントを通り,自動車の縦中心面に平行な面と水平面との交線に平行な線を0°とする。
スクリーン縦軸の目盛は,寸法表示とし,接地面高さを0mとする。
5.5
水平面投影法の基準線 水平面投影法の基準線は,次による。
単眼アイポイントを通り,自動車の縦中心面に平行な面と水平面との交線を基準とし,アイポイント位
置を原点にした極座標又は直交座標の軸目盛を表示する。直交座標表示の場合には,原点を通り自動車の
縦中心面に平行な面と水平面との交線を縦軸とし,原点を通り縦軸に直交する線を横軸にする。
なお,通常,投影面は,接地面とする。
5.6
シートなどの固定位置 視界測定時には,シートなどは,試験目的,試験自動車の構造などに応じ
て定められた位置に固定する。ただし,特に定めがない場合には,次のような位置に固定する。
(1) シートクッションの位置 各スライドシートは,設計基準位置に,設計基準位置が不明の場合には前
後及び上下方向の全調整量の各中央に固定する。ただし,運転席は,測定器具の設置のために最後端
及び最下端位置に固定してもよい。
なお,中央に固定できない場合には,中央より前方及び上方で固定することができる最も近い位置
に固定する(3)。
注(3) JIS D 0301による。
(2) シートバック位置 リクライニング式シートのシートバックアングルは設計基準位置に,設計基準位
置が不明の場合には,乗用車では25°,トラック及びバスでは15°に最も近い位置に固定する。ただ
し,運転席は測定器具の設置のために,妥当な位置に固定してもよい。
3
D 1702-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(3) ヘッドレストの位置 調整式ヘッドレストは,設計基準位置に,設計基準位置が不明の場合には全調
整量の中央に固定する。ただし,運転席は測定器具の設置のために,妥当な位置に固定又は取り外し
てもよい。
なお,中央に固定できない場合には,中央より前方及び上方で固定することができる最も近い位置
に固定する。
6. 試験手順 試験手順は,次による。
(1) 試験目的に合わせて,アイポイントの位置及び単双眼の別を決定する。
(2) 試験車両を5.の試験条件に従って設置する。
(3) 試験目的に合わせて,マークをつけたスクリーン,水平面上の目標線又は目標物を試験自動車に対し
て妥当な位置に設置する。
(4) 試験装置を,次によって設置する。
(a) ランプ投影法の場合 アイライト装置の光源中心がアイポイントに一致するようにアイライト装置
を設置する。
(b) カメラ撮影法の場合 カメラ設定点がアイポイントに一致するようにカメラを設置する。
(c) 目視法の場合 アイマークがアイポイントに一致するようにアイマークを設置する。
(5) 測定及び記録 試験目的及び必要に応じて,特別な場合を除いて目標物又はスクリーン若しくは水平
面への投影を,写真撮影又は測定記録する。
(a) スクリーン投影法 アイポイントに光源を置いて,鉛直に置かれたスクリーンに視界の妨害物を投
影する。
記録はスクリーンに描かれた目盛によって読み取るか,又は写真撮影する。
(b) 水平面投影法 アイポイントに光源を置いて,夜間又は暗い室内の水平面に影を投影する。記録は,
水平面に描かれた目盛によって読み取るか,又は写真撮影する。
(c) 目視法 視界を妨害する物の輪郭を,スクリーン又は水平面に描かれた目盛によって目視で読み取
る。
7. 試験記録
7.1
記録項目 試験記録には,次に示す項目を含める。
(1) 試験年月日
(2) 試験場所
(3) 試験者名
(4) 試験車名 型式,通称名などを記入する。
(5) 自動車設置状態
(6) 積載状態
(7) 乗員1人当たり質量
(8) 測定器具
(9) 測定器質量 測定時に車載する測定器の質量を記入する。
(10) 各席の状態 シートクッション,シートバック及びヘッドレストの固定位置を記入する。
(11) 単双眼の別
(12) アイポイントの位置
4
D 1702-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(13) スクリーンの半径(円筒形スクリーンの場合)
(14) 接地面から投影面までの高さ(水平面投影法の場合)
(15) 試験方法(カメラ投影法の場合にはカメラ設定点を含む。)
(16) 結果の表示
(17) その他特記事項
7.2
試験記録の表示例 試験記録の表示例を次に示す。
(1) ランプ投影法,スクリーン投影法(角度−距離目盛による表示例)……付図1
(2) ランプ投影法,水平面投影法(直交座標目盛による表示例,極座標による表示例)……付図2及び付
図3
(3) カメラ撮影法,スクリーン投影法(写真による表示例,数値による表示例)……付図4及び付図5
5
D
1
7
0
2
-1
9
9
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図1 ランプ投影法,スクリーン投影法(角度−距離目盛による表示例)
[試験記録]
(1) 試験年月日
;1996年○月○日
(10) 各席の状態
;設計基準位置
(2) 試験場所
;○○自動車㈱テクニカルセンター
(11) 単双眼の別
;双眼
(3) 試験者名
;日本太郎
(12) アイポイントの位置
;基準アイポイント
(4) 試験車名
;軽乗用車
(13) スクリーンの半径
;3.5m
(5) 自動車設置状態
;接地面上に設置
(14) 投影面の高さ
;該当なし
(6) 積載状態
;運転席1名乗車
(15) 試験方法
;ランプ投影法,スクリーン投影法
(7) 乗員1人当たり質量
;63kg
(16) 結果の表示
;下図参照
(8) 測定器具
;アイライト装置
(17) その他特記事項
;アイポイント位置寸法(両眼中心)
(9) 積載測定器具質量
;3kg
接地面から
1 067mm
車軸中心から
280mm
フロントアクスルから
1 020mm
6
D 1702-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図2 ランプ投影法,水平面投影法(直交座標目盛による表示例)
[試験記録]
(1) 試験年月日
;1996年○月○日
(2) 試験場所
;○○自動車㈱テクニカルセンター
(3) 試験者名
;日本太郎
(4) 試験車名
;大型ボンネットトラック
(5) 自動車設置状態
;接地面上に設置
(6) 積載状態
;運転席1名乗車
(7) 乗員1人当たり質量
;63kg
(8) 測定器具
;アイライト装置
(9) 積載測定器具質量
;3kg
(10) 各席の状態
;設計基準位置
(11) 単双眼の別
;単眼
(12) アイポイントの位置
;基準アイポイント
(13) スクリーンの半径
;該当なし
(14) 投影面の高さ
;0m及び1m
(15) 試験方法
;ランプ投影法,水平面投影法
(16) 結果の表示
;下図参照
(17) その他特記事項
;特になし
7
D
1
7
0
2
-1
9
9
6
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図3 ランプ投影法,水平面投影法(極座標による表示例)
[試験記録]
(10) 各席の状態
;設計基準位置
(1) 試験年月日
;1996年○月○日
(11) 単双眼の別
;単眼
(2) 試験場所
;○○自動車㈱テクニカルセンター
(12) アイポイントの位置
;基準アイポイント
(3) 試験者名
;日本太郎
(13) スクリーンの半径
;該当なし
(4) 試験車名
;小型乗用車
(14) 投影面の高さ
;0m
(5) 自動車設置状態
;接地面上に設置
(15) 試験方法
;ランプ投影法,水平面投影法
(6) 積載状態
;運転席1名乗車(相当質量)
(16) 結果の表示
;下図参照
(7) 乗員1人当たり質量
;63kg
(17) その他特記事項
;特になし
(8) 測定器具
;アイライト装置
(9) 積載測定器具質量
;1名乗車相当質量に含む
8
D
1
7
0
2
-1
9
9
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図4 カメラ撮影法,スクリーン投影法(写真による表示例)
[試験記録]
(10) 各席の状態
;設計基準位置
(1) 試験年月日
;1996年○月○日
(11) 単双眼の別
;単眼
(2) 試験場所
;○○自動車㈱テクニカルセンター
(12) アイポイントの位置
;基準アイポイント(3DM-JM50によるH点基準)
(3) 試験者名
;日本太郎
(13) スクリーンの半径
;3.5m
(4) 試験車名
;小型乗用車
(14) 投影面の高さ
;該当せず
(5) 自動車設置状態
;接地面上に設置
(15) 試験方法
;カメラ撮影法,スクリーン投影法
(6) 積載状態
;空車
(16) 結果の表示
;下図参照
(7) 乗員1人当たり質量
;0kg
(17) その他特記事項
;基準アイポイントの地上からの高さは1 096mm
(8) 測定器具
;パノラミックカメラ,円筒形スクリーン
(9) 積載測定器具質量
;0kg
9
D 1702-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図5 カメラ撮影法,スクリーン投影法(数値による表示例)
[試験記録]
(1) 試験年月日
;1996年○月○日
(2) 試験場所
;○○自動車㈱テクニカルセンター
(3) 試験者名
;日本太郎
(4) 試験車名
;小型乗用車
(5) 自動車設置状態
;接地面上に設置
(6) 積載状態
;運転席1名乗車(相当質量)
(7) 乗員1人当たり質量
;63kg
(8) 測定器具
;魚眼レンズカメラ
(9) 積載測定器具質量
;5kg
(10) 各席の状態
;設計基準位置
(11) 単双眼の別
;単眼
(12) アイポイントの位置
;アイレンジ (165, 95%) の最前端 (A) 及び最後端 (B) (下図参照)
(13) スクリーンの半径
;該当せず
(14) 投影面の高さ
;0m
(15) 試験方法
;カメラ撮影法,スクリーン投影法
(16) 結果の表示
;下図参照
(17) その他特記事項
;特になし
試験結果(アイポイントを含む水平面内の死角)
死角
アイポイント
前方の死角(度)
アイレンジ最前端 (A)
24.0
アイレンジ最後端 (B)
17.5
関連規格 JIS D 0024 自動車におけるH点の決め方
JASO Z 011-78 運転車アイレンジ(トラック)
JASO Z 106-74 間接後方視界試験方法
ISO 4513 : 1978 Road vehicles−Visibility−Method for establishment of eyellipses for driverʼs eye
location
ISO 6549 Road vehicles−Procedure for H−point determination
SAE J 826 Devices for Use in Defining and Measuring Vehicle Seating Accommodation
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D 1702-1996
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
社団法人 自動車技術会基本部会運転視界分科会 構成表
氏名
所属
(分科会長)
松 田 浩 一
日産自動車株式会社車両技術開発本部
(幹部)
岩 崎 信 也
日産自動車株式会社車両技術開発本部
麻 生 勤
財団法人日本自動車研究所第二研究部
宇佐見 明
三菱自動車工業株式会社乗用車開発本部
大 松 由 治
マツダ株式会社車両実研統括部
岡 田 竹 雄
運輸省交通安全公害研究所
長 内 仁 哉
株式会社本田技術研究所第7研究ブロック人間工学G
戒 能 一 成
通商産業省機械情報産業局
川 上 健 司
ダイハツ工業株式会社第一実験部
酒 井 聰
日野自動車株式会社車両RE部
笹 尾 照 夫
通商産業省工業技術院標準部機械規格課
田 上 知 利
いすゞ自動車株式会社小型研究実験部
永 井 芳 宏
トヨタ自動車株式会社第2開発センター
長 野 永
富士重工業株式会社スバル技術本部
平 井 隆 志
運輸省自動車交通局技術安全部
堀 算 伸
スズキ株式会社四輪車体設計部
村 岡 良 三
社団法人日本自動車部品工業会
(事務局)
武 藤 博
社団法人自動車技術会