2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
D 1607-1995
自動車用スタータ試験方法
Test methods of starter motors for automobiles
1. 適用範囲 この規格は,自動車用内燃機関の始動に用いるスタータ(以下,スタータという。)の試験
方法について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1102 指示電気計器
JIS D 0103 自動車用電装部品の名称に関する用語
2. この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 8856 Road vehicles−Starter motors−Test methods and general requirements
2. 用語の定義 この規格で用いる用語の定義は,JIS D 0103によるほか,次のとおりとする。
(1) 公称出力 最大出力を有効数字3けた目で切り捨てた,2けたの出力値。
(2) 電圧電流特性 スタータ端子に加える電圧,及びそのときスタータに流れる電流によって定まる特性
(付表1参照)。
(3) 無負荷特性 スタータのピニオンにトルク負荷が加わらない状態の特性。
(4) 負荷特性 スタータのピニオンに所定のトルク負荷が加わっている状態の特性。
(5) 拘束特性 スタータのピニオンを拘束した状態(スタータが回転しない状態)の特性。
(6) 内部抵抗 スタータのピニオンを拘束した状態で,スタータの端子電圧,及びそのとき流れる電流か
ら算出したスタータ内の抵抗。
(7) マグネチックスイッチ閉路電圧 マグネチックスイッチ内の接点を閉じるために必要な最小の端子電
圧。
3. 試験の種類 スタータの試験の種類は,次のとおりとする。
(1) 出力特性試験
(2) マグネチックスイッチ閉路電圧試験
(3) マグネチックスイッチ接点電圧降下試験
4. 試験条件及び試験装置
4.1
試験条件 試験は,特に規定がない限り,次の条件によって行う。
(1) 試験場所の周囲温度は,23±5℃とする。
(2) 試験電圧及び試験電流は,スタータの種類・形式に応じてスタータ製造業者が指定する電圧電流特性
区分(付表1)の電圧値及び電流値を用いる。
4.2
試験装置 スタータの出力測定は,図1に示すような試験装置を用いて行う。
2
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図1 試験装置(例)
備考1. スタータのマグネチックスイッチなどの消費電流は,スタータ電流に含
める。
2. スタータアースは,フロントブラケットからとるが,アース端子が設け
てある場合には,それを用いる。
4.3
測定器 試験に用いる測定器は,次のとおりとする。
(1) 電圧計及び電流計は,JIS C 1102に規定する1.0級以上のものを用いる。
(2) 回転計は,±2%の精度をもつものを用いる。
(3) トルク計は,±2%の精度をもつものを用いる。
5. 試験方法
5.1
出力特性試験 スタータを図1の試験装置に取り付け,付表1の電圧電流特性区分による電圧値及
び電流値を選び,次のいずれかの方法で無負荷特性,負荷特性及び拘束特性を測定する。
(1) 固定モード方法 スタータに種々のトルク負荷を加えて運転し,それぞれの負荷点におけるトルク,
電圧,電流及び回転速度を測定する。
各負荷点における測定は,3秒間以内に行い,その都度スタータの温度を4.1(1)の周囲温度にまで下
げておく。
なお,負荷点は,出力特性曲線を作成するために必要で十分な数を選ぶ。
(2) 連続モード方法 スタータのトルク負荷を連続的に増加させながら運転して,トルク,電圧,電流及
び回転速度を自動的に測定する。
5.2
マグネチックスイッチ閉路電圧試験 スタータを図2のように接続して電圧を徐々に増大し,マグ
ネチックスイッチ内の接点が閉じたときの電圧を測定する。このとき,ピニオンは,所定の移動距離だけ
動くものとする。
3
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図2 マグネチックスイッチ閉路電圧測定方法(例)
5.3
マグネチックスイッチ接点電圧降下試験 スタータを図1の試験装置に取り付け,負荷を加えた状
態にしたとき,接点間に生じる電圧を測定する。
負荷の電流は,公称電圧12Vのものでは200Aとし,公称電圧24Vのものでは受渡当時者間の協定によ
って定める。
6. トルク及び出力の計算並びに補正
6.1
トルク及び出力の計算方法 スタータのトルク及び出力は,次によって計算する。
i
T
Ts
×
=
9.0
·············································································· (1)
105
000
.0
9.0
×
×
=
n
T
P
··································································· (2)
ここに,
Ts: スタータのトルク Nm
T: トルク計の読み Nm
N: スタータの回転速度 min−1
n: リングギヤの回転速度 min−1
i: 減速比 (N/n)
P: スタータの出力 kW
0.9: ギヤ効率
6.2
測定値の補正 測定値の補正が必要な場合は,次の方法で行う。
(1) トルク値の慣性補正 5.1(2)によって測定を行った場合,アーマチュアなどの慣性に対し,次の計算式
によって補正を行う。
T1=T−Tc ················································································· (3)
)
(
30
a
d
c
J
J
tn
T
+
×
∆
×∆
×
=π
····························································· (4)
ここに, T1: トルク計の読みを慣性補正したトルク Nm
Tc: トルク慣性補正値 Nm
∆n: ブレーキ中の2点間の回転速度差 min−1
∆t: ブレーキ中の2点間の時間差 s
Jd: 測定装置の慣性モーメント kg・m2
Ja: 測定装置からみたスタータ回転部分の慣性モーメント kg・m2
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(2) トルク値の温度補正 永久磁石形界磁をもつスタータについては,スタータの温度が20±0.5℃の範囲
にない場合,スタータの温度t℃に対する20℃のトルク補正値は,(1)のT1を用い,次の計算式によっ
て求める。
T2=T1[1−β (t−20)] ···································································· (5)
ここに,
T2: スタータの温度t℃から,20℃に補正したトルク Nm
β: 永久磁石の残留磁束密度の温度係数 1/℃
(巻線形界磁のスタータでは,β=0である。)
(3) 回転速度の温度補正 スタータの温度が20±0.5℃の範囲にない場合,スタータの温度t℃に対する
20℃への補正回転速度は,次の計算式によって求める。
回転速度は一般に,
Φ
×
=
E
N
κ
·············································································· (6)
ここに,
E: 誘起電圧 V
φ: スタータの磁束 Wb
k: 比例定数
誘起電圧は,
E=V−I×R ·············································································· (7)
ここに, V: 端子電圧 V
I: スタータの電流 A
R: スタータの内部抵抗 Ω
温度補正した内部抵抗は,
R2=R1×[1−α (t−20)] ································································ (8)
ここに,
R1: 測定時の内部抵抗 Ω
R2: 20℃に温度補正した内部抵抗 Ω
α: 巻線の材質による抵抗の定質量温度係数 1/℃
備考 銅100%のとき20℃では,3.93×10−3/℃。銅アルミニウム複合巻線では,この値は計算によっ
て求める。
温度補正した回転速度は,
1
1
2
2
)
20
(
1
1
N
t
E
E
N
×
−
−
×
=
β
······················································· (9)
ここに, E1: 測定したときの誘起電圧 V
E2: 温度補正した誘起電圧 V
N1: 測定した回転速度 min−1
N2: 温度補正した回転速度 min−1
(4) 回転速度の電圧補正 端子電圧Vが規定電圧と異なる場合,式(7)のとおり誘起電圧が変動する。これ
による回転速度の電圧補正は,次の式による。
1
1
2
2
N
E
E
N
×
=
········································································· (10)
6.3
補正後の出力特性 6.2によってトルク値及び回転速度の補正を行った場合,スタータの出力特性は
6.1によって計算する。
この場合,計算に用いた係数α及びβを記録しておく。
7. 試験結果の表示 スタータの特性は,図3に示す様式に表示する。
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なお,回転速度及びトルクの特性曲線を付け加えてもよい。
図3 スタータの特性表示様式(例)
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付表1 電圧電流特性区分
公称電圧
(V)
電圧電流特性
区分記号
電圧値,電流値
V1 (V)
I1 (A)
V2 (V)
I2 (A)
12
12-B
12
0
6
300
12-B2
350
12-C
400
12-C2
450
12-C3
500
12-D
550
12-D2
600
12-E
800
12-E2
900
12-F
1 000
12-F2
1 200
12-F3
1 500
12-F4
1 700
12-F5
3 000
24
24-A
24
0
12
500
24-A2
600
24-B
800
24-C
900
24-C2
1 000
24-C3
1 200
24-C4
1 500
24-C5
1 700
24-D
2 000
24-D2
2 400
備考 電圧電流特性区分は,V1,I1及びV2,I2の二組の電圧
値・電流値を結ぶ直線によって表す。
7
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
社団法人 日本自動車部品工業会 スタータ,オルタネータ関係JIS改正原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
野 崎 武 敏
工業技術院機械技術研究所
(幹事)
高 橋 佑 朋
日立オートモティブエンジニアリング株式会社
中 川 勝 弘
通商産業省機械情報産業局
松 波 正 壽
運輸省地域交通局陸上技術安全部
飛 田 勉
工業技術院標準部
池 田 順 一
財団法人日本規格協会
久津見 都
社団法人自動車技術会
大 崎 邦 彦
日産ディーゼル工業株式会社
菱 川 正 敏
いすゞ自動車株式会社
稲 垣 真
鈴木自動車工業株式会社
橿 本 久 雄
ダイハツ工業株式会社
河 村 史 郎
トヨタ自動車株式会社
荒 木 靖
日産自動車株式会社
久保田 昌 治
富士重工業株式会社
後 藤 博
株式会社本田技術研究所
青 柳 幸 雄
三菱自動車工業株式会社
森 一 正
日本電装株式会社
竹 内 健 治
三菱電機株式会社
藤 木 陽太郎
澤藤電機株式会社
守 屋 泰 明
日興電機工業株式会社
中 川 透
株式会社日立製作所
上 山 明
株式会社三ツ葉電気製作所
高 橋 道 也
国産電機株式会社
村 岡 良 三
社団法人日本自動車部品工業会
(関係者)
高 木 敦 雄
日産自動車株式会社
赤 江 義 文
三菱電機株式会社
川 島 忠 雄
澤藤電機株式会社
山 本 尚 俊
日興電機工業株式会社
堀 真 和
株式会社日立製作所
栗 原 元 秋
株式会社三ツ葉電気製作所
岩 田 頼 明
日本電装株式会社
(事務局)
落 合 俊 一
社団法人日本自動車部品工業会