2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
D 0210-1995
自動車ブレーキ試験方法通則
General rules of brake test method of automobiles and motor cycles
1. 適用範囲 この規格は,自動車のブレーキ試験方法に共通して用いる用語の定義,車両区分,試験条
件,制動速度測定方法,温度測定方法及び計算式について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1602 熱電対
JIS D 0106 自動車ブレーキ用語(種類,力学及び現象)
JIS D 0107 自動車ブレーキ用語(部品)
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS D 0106及びJIS D 0107によるほか次による。
(1) 冷却走行速度 ブレーキの冷却及び次の制動の助走の目的で走行するある一定の速度。
(2) 制動前ブレーキ温度 制動開始前に規定に従って読み取ったブレーキ温度。
(3) 一定制動減速度 レバー操作力,ペダル踏力の加減によって,過渡的状態を除いて,制動中ほぼ一定
に保たれている制動減速度。
(4) 一定ペダル踏力又は一定操作力 過渡的状態を除いて,制動中ほぼ一定に保たれているペダル踏力又
は操作力。
(5) 制動間隔 制動操作の繰り返しにおいて,ある制動操作開始時から,次の制動操作開始時までの経過
時間又は経過距離。
(6) フェード試験所要時間 フェード試験で第1回目の制動操作開始時から,最終回の制動操作開始時ま
での経過時間。
(7) 通常駆動位置 変速装置を所定の制動初速度を維持できる最高の変速段にした状態。ただし,オーバ
ドライブを除く。
(8) 中立位置 制動操作の開始に先立ち,変速装置を中立位置にした状態又はクラッチを切った状態。
(9) スパイク制動 特別に強力な制動操作のことで,ペダル踏力一時間特性が次の規定を満足する。ただ
し,二輪自動車については適用しない。
(a) ペダル踏力立上りこう(勾)配は10kN/sを目標とし,5〜20kN/sの範囲内にあること。ただし,ペ
ダル踏力立上りの時点から0.03秒以内,ペダル踏力0.3kN以下の範囲は規定の対象とはしない。
ペダル踏力立上りこう配 (a) は,式(1)で表すことができる。
t
F
a=
····················································································· (1)
ここに, a: ペダル踏力立上りこう配 (kN/s)
F: ペダル踏力 (kN)
t: ペダル踏力立上り始めからの経過時間 (s)
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D 0210-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(b) ペダル踏力は上記こう配の範囲内で,1kN (0.7kN) に達することを目標とし,0.8kN [0.5〜1.2kN
(0.9kN)] の範囲に到達すること。その後は完全停止まで,その踏力を維持すること。ただし,ホイ
ールロックの状態又はアンチロック装置の作動している状態が維持されている限り,ペダル踏力は
低下しても差し支えない。
なお,ペダル踏力最大値は全域にわたり1.2kN (0.9kN) を超えてはならない。
備考 丸括弧( )が付いていないものは前進時,丸括弧の付いているものは後進時に適用する。
(c) エアブレーキ(複合ブレーキを含む。)では,ブレーキペダルが全ストロークするまでの時間が0.2
秒以内にペダルを踏み込むこと。
3. 車両区分 試験用車両を最高速度によって区分する場合は,次の速度で区分する。
区分1 最高速度が,140km/hを超えるもの。
区分2 最高速度が,110km/hを超え,140km/h以下のもの。
区分3 最高速度が,90km/hを超え,110km/h以下のもの。
区分4 最高速度が,60km/hを超え,90km/h以下のもの。
区分5 最高速度が,60km/h以下のもの。
4. 試験条件
4.1
車両の状態 試験時の車両の状態は,次のとおりとする。
(1) 試験用車両の試験時の配分荷重は,次の(2)の場合を除いて,試験人員及び試験機器を含む状態で最大
積載状態の配分荷重にできるだけ近い状態とする。
連結車では,試験用トレーラの試験時の総質量及び連結時の配分荷重は,メーカ指定の値にできる
だけ近い状態とする。
(2) 軽積載時の車両の状態とは,試験人員及び試験用機器を含む状態で,空車状態の配分荷重の車両前席
に人員2名が乗車したときの配分荷重にできるだけ近い状態とする。ただし,二輪自動車については
適用しない。
(3) 試験用車両は,正常な整備状態でなければならない。
ホイールアライメント,タイヤ空気圧,タイヤ摩耗状態及び試験に関係する部分の状態は,試験の
全期間を通じて適正な状態とする。
4.2
路面及び気象の状態 路面及び気象の状態は,次のとおりとする。
(1) 試験路面 試験の制動操作を行う路面は,乾燥したポルトランドセメントを用いた乾燥コンクリート
又は同等の摩擦係数をもつ平たんな硬い舗装路面とする。特に定めがある場合の制動操作を行う路面
のこう配は,±1%以下とする。
(2) 大気温度 試験を行う際の大気温度は,性能に著しい影響を及ぼさない範囲であり,フェードリカバ
リ試験を行う際の大気温度は,4℃以上,35℃以下の範囲であることが望ましい。
(3) 風速 試験を行う際の風速は,性能に著しい影響を及ぼさない範囲であり,通常,風速は5m/s以下で
あることが望ましい。
4.3
ブレーキ装置各部の状態 試験時のブレーキ装置各部の状態は,原則として次のとおりとする。
(1) ブレーキライニング又はパッド,ドラム又はディスク及びブレーキ液は,正規の新品を用いて試験を
開始する。
(2) ブレーキ装置は,正規の仕様で,正常な機能をもつ部品で組み立てられ,必要に応じて適切な調整が
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行われているものとする。
5. 制動速度測定方法 制動初速度及び制動終速度の測定は,次による。
(1) 制動初速度 制動操作の開始直前の速度を校正された速度計によって読み取る。
(2) 制動終速度 制動操作の終了直後の速度を校正された速度計によって読み取る。
6. 温度測定方法 ブレーキ温度の測定は,原則として次のとおりとする。
備考 熱電対は,JIS C 1602を参照。
(1) 固定側で測定する場合(図1参照) 各ブレーキごとに,最も負荷の大きいブレーキライニング又は
パッドの摩擦面のほぼ中央で,表面から1mmの位置に熱電対を取り付ける。
図1
(2) 回転側で測定する場合(図2参照)
ドラムの場合 ライニングのしゅう(摺)動面のほぼ中央で,ドラム内面より2〜3mmの位置に熱
電対を取り付ける。
ディスクの場合 ディスクのほぼ有効半径のところで,ディスク厚みのほぼ中央に熱電対を取り付
ける。
なお,ディスクが非常に厚い場合は,表面から5mmの位置に取り付ける。
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D 0210-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
備考 ただし,上記によらないときは,その旨を記録する。
図2
備考 ディスクの形状によって,上記のとおりにできない場合(例えばベンチレーテッドディスク)
は,上記の位置にできるだけ近づける。
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7. 計算式 慣性モーメント,制動トルク及び制動率を求める計算式は,次のとおりとする。ただし,二
輪自動車には適用しない。
(1) 常用ブレーキ仕様で試験する際の慣性モーメント及び制動トルク
g
r
W
r
m
I
2
2
=
=
b
g
r
W
b
r
m
T
=
=
又は
b
r
I
T
'
'=
なお,デュアルダイナモメータ,シングルダイナモメータなどの使用試験機及び試験方法により,
W(試験荷重)は次の値とする。
(1.1) デュアルダイナモメータで前後の組合せ試験を行う場合。
T
W
W
=21
(1.2) デュアルダイナモメータで左右の組合せ試験を行う場合。
(a) 自動車総質量相当荷重を指定制動減速度における前後輪の制動力配分で配分した値。
前輪
Br
Bf
Bf
W
W
T
+
=
後輪
Br
Bf
Br
W
W
T
+
=
(b) 自動車総質量相当荷重を指定制動減速度によって生じる荷重移動を考慮して配分した値。
前輪
前進時
L
H
A
W
Wf
W
T
+
=
後進時
L
H
A
W
Wf
W
T
−
=
後輪
前進時
L
H
A
W
Wr
W
T
−
=
後進時
L
H
A
W
Wr
W
T
+
=
(1.3) シングルダイナモメータで試験を行う場合
(a) 自動車総質量相当荷重の21を指定制動減速度における前後輪の制動力配分で配分した値。
前輪
Br
Bf
Bf
W
W
T
+
=2
後輪
Br
Bf
Br
W
W
T
+
=2
(b) 自動車総質量相当荷重の21を指定制動減速度によって生じる荷重移動を考慮して配分した値。
前輪
前進時
L
H
A
W
Wf
W
T
+
=
2
2
後進時
L
H
A
W
Wf
W
T
−
=
2
2
後輪
前進時
L
H
A
W
Wr
W
T
−
=
2
2
6
D 0210-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
後進時
L
H
A
W
Wr
W
T
+
=
2
2
ここに,
I: 常用ブレーキ仕様で試験する際の慣性モーメント (kg・m2)
W: 試験荷重 (N)
r: タイヤ動荷重半径 (m)
g: 重力の加速度 (9.8m/s2)
T: 荷重から求めた制動トルク (N・m)
T': 慣性モーメントから求めた制動トルク (N・m)
I': 試験時の慣性モーメント (kg・m2)
b: 制動減速度 (m/s2)
m: 試験質量(kg)
WT: 自動車総質量相当荷重 (N)
Wf: 積車状態における前軸荷重 (N)
Wr: 積車状態における後軸荷重 (N)
Bf: 前輪制動力 (N)
Br: 後輪制動力 (N)
A: 重力の加速度に対する制動減速度の割合
gb
H: 重心高さ (m)
L: 軸距 (m)
(2) 駐車ブレーキ仕様で試験する際の慣性モーメント及び制動トルク
2
2
1
f
N
r
m
I
T
p
=
b
r
m
T
T
=
又は
b
r
f
N
I
T
p
2
1
'
' =
ここに, Ip1: 駐車ブレーキ仕様で試験する際の慣性モーメント (kg・m2)
r: タイヤ動荷重半径 (m)
f: 最終減速比(組込み式の場合は1とする)
N: 駐車ブレーキのかかるブレーキ数
T: 荷重から求めた制動トルク (N・m)
T': 慣性モーメントから求めた制動トルク (N・m)
I'p1: 試験時の慣性モーメント (kg・m2)
b: 制動減速度 (m/s2)
mT: 自動車総質量 (kg)
(3) 制動率
(
)
(
)
(
)(
)
(
)
(
)g
W
W
W
W
W
W
f
F
F
F
f
F
g
W
W
f
F
e
fn
f
f
n
m
m
fj
j
i
i
+
+
+
+
+
−
+
+
−
+
−
=
+
−
=∑
∑
∑
Λ
Λ
Λ
Λ
Λ
Λ
2
1
2
1
2
2
1
1
ここに,
e: 制動率
Wfj: 回転部分相当質量 (kg)
(ただし,駐車ブレーキの試験のときは,Wfj=0とする)
もし,Wfjが不明の場合には,次のように仮定する。
Wfj=0.05W'j……乗用車,小型トラック,バス,トレーラ
Wfj=0.07W'j……普通トラック,トラクタ
Wj: 各自動車総質量 (kg)
W'j: 各自動車質量 (kg)
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D 0210-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
Fi: 各車輪又は各車軸の試験機の読取り値 (N)
fi: 各車輪又は各車軸の初期値 (N)
g: 重力の加速度 (9.8m/s2)
関連規格 JIS D 1010 自動車走行試験方法通則
JIS D 1013 自動車−ブレーキ試験方法
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D 0210-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
社団法人自動車技術会ブレーキ部会ブレーキ通則分科会 構成表
氏名
所属
(分科会長)
清 水 和 明
日産自動車株式会社制動設計部
(幹事)
渡 辺 浩 行
日産ディーゼル工業株式会社第1設計部
有 田 哲 二
通商産業省機械情報産業局自動車課
川 口 廣 美
工業技術院標準部機械規格課
星 野 努
機械技術研究所自動車安全公害部安全設計課
鈴 木 好 朗
交通安全公害研究所自動車審査部
石 川 健三郎
交通安全公害研究所交通安全部車両構造研究室
関 口 富 郎
いすゞ自動車株式会社開発本部大型車設計部
鈴 木 久 雄
鈴木自動車工業株式会社四輪車体設計部
津 田 尚 一
トヨタ自動車株式会社第11技術部
吉 岡 吏 郎
東洋工業株式会社シャシー設計部
近 藤 俊 則
日野自動車工業株式会社第2実験部
五十嵐 克 正
富士重工業株式会社スバル技術本部車体研究実験部
窪 明 弘
株式会社本田技術研究所
荒 川 清 秀
三菱自動車工業株式会社トラック・バス技術センター
コンポーネント技術部
鳥 谷 康 夫
トキコ株式会社
山 本 好 男
曙ブレーキ工業株式会社研究開発本部研究管理部
河 野 輝 久
住友電気工業株式会社ブレーキ事業部技術部
安 藤 昌 基
アイシン精機株式会社
高 倉 悦千代
東京部品工業株式会社開発本部
谷 川 勝 志
日清紡績株式会社
田 中 隆 一
日本エヤーブレーキ株式会社
小 島 克 己
社団法人日本自動車部品工業会技術部
(事務局)
樋 田 誠 一
社団法人自動車技術会規格課
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D 0210-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
自動車 航空部会 自動車専門委員会構成表(昭和60年3月31日制定のとき)
氏名
所属
(委員会長)
中 込 常 雄
社団法人自動車技術会
横 溝 眞一郎
工業技術院標準部
柴 藤 良 知
運輸省交通安全公害研究所
堤 富 男
通商産業省機械情報産業局
清 水 達 夫
運輸省地域交通陸上技術安全部
瀬 倉 久 男
防衛庁装備局
梅 澤 清 彦
東京工業大学
石 渡 正 治
財団法人日本自動車研究所
大 沼 広 洲
全日本トラック協会
佐 藤 武
慶応義塾大学
杉 浦 秀 昭
日本自動車整備振興会連合会
田 中 兼 吉
社団法人日本バス協会
轟 秀
社団法人日本自動車連盟
安 部 宏
株式会社本田技術研究所
改 田 護
トヨタ自動車株式会社
紅 谷 恒 雄
日産自動車株式会社
須 永 惇 一
いすゞ自動車株式会社
鈴 本 作 良
社団法人日本自動車部品工業会
高 原 昭 二
三菱自動車工業株式会社
西 原 孝 雄
マツダ株式会社
大 槻 耕 一
日野自動車工業株式会社
金 子 達 明
日本自動車輸入組合
(専門委員)
斎 藤 巌
財団法人日本規格協会
武 永 三 郎
日本道路公団
有 賀 久
日産ディーゼル株式会社
宇 藤 官
鈴木自動車工業株式会社
(事務局)
田 代 和 也
工業技術院標準部機械規格課
宗 像 保 男
工業技術院標準部機械規格課
(事務局)
笹 尾 照 夫
工業技術院標準部機械規格課(平成7年2月1日改正のとき)