C 9323 : 1999
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
制定に関しては,国際規格に整合した日本工業規格を作成するために,ISO/FDIS 5826, Electric resistance
welding−Transformers−General specifications apllicable to all transformers(ISO/FDIS 5826:電気式抵抗溶接
−変圧器−全変圧器に適用する一般仕様)を基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
JIS C 9323には,次に示す附属書がある。
附属書1(参考) 定格銘板の例
附属書2(参考) この規格に使用している記号
附属書3(規定) 高所及び冷媒温度に対する補正
附属書4(規定) 定義
附属書5(規定) 形式コード
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
C 9323 : 1999
抵抗溶接機用変圧器−
全変圧器に適用する一般仕様
Electric resistance welding−Transformers−General
specifications apllicable to all transformers
序文 この規格は,1998年に発行されたISO/FDIS 5826, Electric resistance welding−Transformers−General
specifications apllicable to all transformersを元に,対応する部分(定義,標準使用状態,試験)については技
術的内容を変更することなく作成した日本工業規格であるが,対応国際規格には規定されていない規定内
容を日本工業規格として追加している。
なお,点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲 この規格は,整流器に接続されていないすべての溶接変圧器(以下,変圧器という。)につ
いて規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO/FDIS 5826 : 1998 Electric resistance welding−Transformers−General specifications apllicable
to all transformers
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 0365 感電保護−設備及び機器の共通事項
JIS C 0704 制御機器の絶縁距離,絶縁抵抗及び耐電圧
JIS C 0920 電気機械器具の防水試験及び固形物の侵入に対する保護等級
JIS C 1102 指示電気計器
JIS C 4003 電気絶縁の耐熱クラス及び耐熱性評価
JIS C 9305 抵抗溶接機通則
IEC 60204-1 Electrical equipment of industrial machines ; Part 1 : General requirements
IEC 60905 Loading guide for dry-type power transformers
ISO 10656 Electric resistance welding−Integrated transformers for welding guns
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 9305による。
4. 標準使用状態 変圧器は特に指定がない場合は,次の状態において使用するものとする。使用状態が
次の状態と異なる場合は,受渡当事者間の協定による(IEC 60204-1 附属書B参照)。
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C 9323 : 1999
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a) 周囲温度 周囲温度は,+5℃〜+40℃とする。ただし,冷却媒体の最高温度が異なる場合については,
附属書3による。
b) 湿度 湿度は,30%〜95%とする。結露による悪影響が生じないように,適切な設計又は対策(例え
ば,空調,水抜き穴)を施さなければならない。
c) 高度 高度は,標高1 000mを超えない状態とする。これ以外の場合については,附属書3による。
d) 輸送及び保管 輸送及び保管は,−25℃〜+55℃の温度に,また24時間を超えない短時間の間+70℃
の温度に耐えなければならない。さらに,湿度,振動,衝撃による損傷を防ぐ処置を施さなければな
らない。
e) 荷役手段 変圧器は,輸送のために,クレーン若しくは類似の装置で取り扱える適当な手段を備えて
いなければならない。
f)
冷却水の温度 変圧器に使用する冷却水の水温は,給水口において+30℃以下とする。ただし,冷却
媒体の最高温度が異なる場合については,附属書3による。
備考 冷却水の水量が多い場合,又は水温が低い場合は,湿度と関係して結露を起こしやすいので注
意を要する。
5. 冷却水回路
a) 連続容量での冷却水の流量は,表1の数値を超えてはならない。
表1 冷却水量の限度
連続入力Sp
流量Q
kVA
l/min
100以下
4以下
101〜350
8以下
b) 10bar,10分間をかけた状態で,水漏れしてはならない。
c) 表1の流量Qで冷却水圧損⊿Pの最大値は,0.60barを超えてはならない。
備考 1bar=105Pa=10-1MPa
6. 電気的特性
6.1
定格二次無負荷電圧 (U20) 二次無負荷電圧は,8.2の試験を行ったとき,銘板記載の数値の±2.0%
以内でなければならない。
6.2
無負荷入力 無負荷入力は,受渡当事者間の協定で必要とされる場合は,8.3の試験を行ったとき,
図1のS0−定格最大溶接入力曲線(実線)から求められる値以下でなければならない。ただし,最大溶接
入力が明らかでないものは,S0−定格容量曲線(点線)から求める。
3
C 9323 : 1999
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図1 無負荷入力
6.3
温度上昇 変圧器の温度上昇限度は,次による。
a) 巻線の温度上昇については,6.3.1による。
b) 外部表面の温度上昇については,6.3.2による。
6.3.1
巻線 変圧器の巻線の温度上昇は,8.4の試験を行ったとき,表2の値以下でなければならない。
また,どの部分も,表2の値を満たしても,他の部品を損傷する温度に上昇してはならない。
表2 巻線の温度上昇限度
単位 K
絶縁の種類
℃
ピーク温度
℃
温度上昇限度
空冷巻線
水冷巻線
埋込み式
温度センサ
抵抗法
埋込み式
温度センサ
抵抗法
105(A)
140
60
60
70
70
120(E)
155
75
75
85
85
130(B)
165
85
85
95
95
155(F)
190
110
105
120
115
180(H)
220
135
130
145
140
200
235
155
145
165
155
220
250
175
160
185
170
備考1. 巻線での最高温度は,埋込み式温度センサで測定することができ
る。抵抗法による測定温度は,巻線に生じるすべての温度の平均値
である。
2. 絶縁の種類の定義は,JIS C 4003によるが,これらよりも高い温度
上昇限度をもった絶縁の種類を使用してもよい。ピーク温度は,
IEC 60905による。
6.3.2
外部表面 接触の恐れがある部分の表面の温度上昇は,4.a)の周囲温度,4.f)の冷却水温度において,
8.4の試験を行ったとき,表3の値以下でなければならない。
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C 9323 : 1999
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表3 外部表面の温度上昇限度
単位 K
外部表面
温度上昇限度
空冷変圧器
水冷変圧器
未塗装金属製外箱
25
35
塗装金属製外箱
35
45
非金属製外箱
45
55
金属製ハンドル
10
20
非金属製ハンドル
30
40
6.4
定格短絡電圧比率 (UCC) 製造業者は,短絡電圧比率 (UCC) を,8.5によって求め,与えなければな
らない。出力回路が2回路の変圧器の場合は,それぞれの巻線に対して,測定値は,最大値から±5%の範
囲まで許容してよい。
6.5
動的特性 変圧器は,8.6の試験を行い,異常なくこれに耐えなければならない。
7. 電撃の防護
7.1
絶縁抵抗 絶縁抵抗は,直流500Vの絶縁抵抗計を使って次の箇所の測定を行い,50MΩ以上でなけ
ればならない。
測定箇所は,
a) 一次,二次巻線間,及び,
b) 一次・二次巻線,フレーム間。
7.2
絶縁耐力 絶縁は,いかなるフラッシュオーバや絶縁破壊を起こすことなく次の試験電圧に耐え,
絶縁の機能を損なってはならない。
合否判定は,JIS C 0704,及び,次によって行う。
試験電圧は,交流電圧で入力電圧と同じ周波数の,
a) 組み付けられたガン付変圧器では,4 000Vr.m.s,また,
b) その他のすべての変圧器では,2 500Vr.m.s
の電圧を,クラスI又はクラスIIの変圧器の,入力側と一つの二次巻線の間に印加して行う。しかし,ク
ラスIに設計された変圧器は,二次側の一点がアースされているので,試験電圧は,2 500Vr.m.sに減少さ
せてもよい。
また,同様に,1 000Vr.m.sの交流電圧が二次回路の一つの巻線とアース間に適用される。
1 000V試験電圧は,瞬時に印加しなければならない。
2 500Vと4 000Vの試験電圧は,約20秒間で所定の値に徐々に印加していかなければならない。
備考 絶縁耐力試験は,通常,同じ変圧器で繰り返して行う必要はない。何らかの理由で再試験を行
う場合には,上述の値の75%の試験電圧を印加することによって行う。
7.3
定常作業における電撃からの防護(直接接触) 外箱による変圧器の最小限の保護等級は,JIS C 0920
によるIP54に適合しなければならない。
ただし,変圧器が中に組み込まれる場合には,IP00でもよい。
合否判定は,JIS C 0920による。
7.4
異常状態における電撃からの防護(間接接触) 変圧器は,JIS C 0365による保護クラスI又は保護
クラスIIに組み立てなければならない。
合否判定は,目視による。
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C 9323 : 1999
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7.5
入力回路と出力回路の絶縁 溶接回路は,入力回路から,並びに無負荷電圧より高い電圧をもつ他
のすべての回路から,強化絶縁又は二重絶縁によって電気的に絶縁しなければならない。他の回路が二次
回路に接続される場合には,他の回路の入力は,絶縁変圧器か又は同等な手段で供給しなければならない。
合否判定は,設計図をみることによって行う。
8. 試験
8.1
試験条件
8.1.1
試験環境 試験環境は,次による。
a) 試験は,新品で乾燥し,完全に組み立てられた変圧器で行う。
b) 周囲温度は,+10℃〜+40℃とする。
c) 換気は,通常の使用状態とする。
d) 測定器を据える場合には,カバープレート,点検用扉又は作業者が簡単に取り外しできる開口部を利
用する。
e) 測定器によって,変圧器の通常の通気を妨げたり,熱を授受させてはならない。
f)
水冷変圧器の場合には,製造業者が指定する冷却水条件で試験する。
8.1.2
測定器の精度 測定器の精度は,次による。
1) 電気測定器:クラス0.5(JIS C 1102で示すフルスケールで0.5%)。
2) 温度計:±2K
8.2
二次無負荷電圧試験 二次無負荷電圧試験は,変圧器の一次側の各タップに定格周波数における定
格入力電圧を加えたときの二次無負荷電圧を測定する。
8.3
無負荷入力試験 最大電流を流すことができる変圧器のタップに,定格周波数の定格入力電圧を加
えて無負荷入力を測定する。
8.4
温度試験
8.4.1
温度試験の試験条件
a) 試験は,すべてのものを設置して行わなければならない。
b) 水冷式変圧器の場合には,100%使用率で行わなければならない。
c) 温度試験中の値は,次の公差内の値にする。
1) 二次電流;連続二次電流の±2%。
2) 冷却水流量(適用可の場合);定格流量の±5%。
d) 試験は,新しい変圧器で,短絡して電圧を下げて行う。二次回路が2回路のものは,並列短絡で行う。
8.4.2
試験準備
a) 埋込み式又は表面温度センサの場合(8.4.4a,8.4.4c参照) 試験は,変圧器と冷却水との温度差がな
くなる前に開始してもよい。
b) 抵抗法の場合(8.4.4b参照) 試験は,冷却水の給水口と排水口とでの温度差が1K以内になってか
ら開始する。冷却水温度θ1は,最初の測定抵抗値R1に相当する最初の巻線温度として与えなければな
らない。
8.4.3
温度試験時間 温度試験は,変圧器のどの点でも,温度上昇が2K/hを超えなくなるまで行わなけ
ればならない。
8.4.4
温度測定方法 温度測定方法は,次のうちのいずれかによる。
a) 埋込み式温度センサ 温度は,最高温度部に埋込んだ,一つ又は複数の熱電対,若しくは同等の性能
6
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
の温度測定器によって測定する。
単層巻線の最高温度部に当てられる熱電対は,埋め込み式とみなす。
測定結果の記録は,電流を遮断する直前で,負荷のかかった状態で行わなければならない。
b) 抵抗法 この方法は,一次巻線にだけ適用する。巻線の温度上昇は,抵抗値の増分で決定され,銅線
の場合には,次の式によって求める。
(
)(
)(
)()
℃
−
+
−
+
=
−
a
a
R
R
R
θ
θ
θ
θ
θ
1
1
1
2
1
2
235
ここに, θ1: 巻線の初期温度 (℃)
θ2: 試験終了時の温度 (℃) (計算値)
θa: 試験終了時の冷却水の温度 (℃)
R1: 巻線の初期抵抗 (Ω)
R2: 試験終了時の巻線の初期抵抗 (Ω)
アルミニウム線の場合には,この式で,235を225と置き換える。
測定結果の記録は,次の手順で遅滞なく行わなければならない。
1) 冷却水を止め,
2) 電流を遮断し,
3) 抵抗値R2を記録する。
c) 表面温度センサ 接触する可能性のある外部表面の温度は,次の条件下で温度センサ(例えば,熱伝
対,抵抗温度計)で決定する。
1) 温度センサは,最高点が発生すると予想される,接近可能な点に置く。予備試験によって,最高温
度が発生する点を特定する。
2) 測定点と温度センサ間の効果的な熱伝導が確保され,空気の流れや放熱の効果が温度センサで阻害
されないようにしなければならない。
測定結果の記録は,次の手順で行わなければならない。
1) 電流を遮断し,
2) 得られた最高温度を記録する。
8.4.5
周囲温度の決定 温度計は,輻射熱と空気の流れに影響を受けないようにしなければならない。温
度変化を平衡させるために,温度計のガラス球は,油で満たされた小さいホルダーの中に置いてもよい。
8.4.6
冷却水温度の決定 温度計は,変圧器の給水側に置かなければならない。
測定結果の記録は,試験の最後の四半期で得られた平均温度としなければならない。
8.5
短絡電圧比率 (UCC) 試験 温度試験終了後直ちに,次の試験を行う。
a) 二次巻線の短絡 二次回路が2回路の場合は,
1) 並列短絡,
2) 直列短絡,
3) 片側短絡,片側開放で行う。
b) 入力電圧を,許容される連続一次電流 (I1P) になるまで,値 (U1CC) を調整する。
備考
()
A
U
S
I
N
P
P
×
1
1=
c) 定格短絡電圧比率 (UCC) を,次の式によって求める。
()
%
100
N
1
CC
1
CC
×
U
U
U=
7
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
d) 内部インピーダンスの二次換算値 (Z2) を,次の式によって求める。
()
Ω
×
×
×
N
1
P
1
2
20
CC
2
100
U
I
U
U
Z=
8.6
動的試験 変圧器の動的試験は,次の試験による。
a) 変圧器は,出力端子を,実際の使用状態を想定して,機械的に導体で短絡,接続し,
b) 定格入力電圧で行う。電流は,連続二次電流 (I2P) の9倍以内でできるだけ大きくし,1.23%の使用率,
10秒のサイクルタイムで4時間行わなければならない。
9. 検査
9.1
形式検査 形式検査は,特殊な仕様のものを除いて,同一の変圧器で行わなければならない。
次の形式検査は,次に示す順序で行い,f),g),h)とi)の間は,遅滞なく行わなければならない。
a) 総合目視検査
b) 絶縁抵抗(7.1参照);予備チェック
c) 温度定格(6.3参照)
d) 定格短絡電圧比率(6.4参照)
e) 外箱による防護(7.3参照)
f)
絶縁抵抗(7.1参照)
g) 絶縁耐力(7.2参照)
h) 動的特性(6.5参照)
i)
総合目視検査
この規定の上述以外の検査は,適当な順序で行ってもよい。
備考 絶縁抵抗の予備チェックは,変圧器が入力電源と接続しても安全かどうかを決めるために行う。
9.2
受渡検査 個々の変圧器の受渡検査は,次によって行わなければならない。
a) 総合目視検査
b) 絶縁耐力(7.2参照)
c) 定格二次無負荷電圧(6.1参照)
d) 冷却水回路(5.参照)
e) 総合目視検査
10. 製品の呼び方 製品の呼び方は,名称,形式,定格入力電圧及び周波数によるか,又は附属書5で規
定する形式コードによる。
11. 表示 定格銘板は,明瞭かつ消えないように製作し,各々の変圧器に確実に取り付けるか,又は印刷
しなければならない。定格入力電圧が複数に設計された変圧器の場合は,各々の入力電圧での電気的特性
を表示しなければならない。
規格との合致は,目視検査と,表示を水に浸した布で15秒間及び石油に浸した布で15秒間手で擦るこ
とにより行う。
この試験後においても,表示は,容易に読み取れることが必要であり,簡単に剥がれたり,まくれたり
してはならない。
11.1 銘板記載事項 銘板記載事項は,11.2によるか,又は11.3による。
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11.2 銘板記載事項(その1) 定格銘板は,次の項目における変圧器の情報とデータを区分しなければな
らない。
a) 製造業者,形式など
b) 電気的特性
c) その他の特性
データの配列と順番は,図2(記入例は,附属書1参照)を原則とする。
備考1. 定格銘板の単位は,指定しない。
2. 他の有用な情報は,製造業者の技術資料で与えてもよい。
11.2.1 内容 以下の内容は,図2の番号に付いた欄を参照する。
図2 定格銘板の原則
a) 製造業者,形式など
1) 製造業者又は販売業者の名称及び住所,並びに必要ならば,商標及び原産国
2) 製造業者による形式
3) 設計及び製造のトレーサビリティ(例えば,製造番号)並びに製造年
4) この変圧器の適用規格
b) 電気的特性
5) U1N=V/...〜...Hz 定格入力電圧,相数(1又は3),交流電流記号(〜),定格周波数(例えば,50
又は60Hz)
6) SP=...kVA,連続容量(使用率100%)
(S50=...kVA,使用率50%の容量)
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備考
2
P
50
×
S
S=
7) U20=...V〜...V...タップ,定格交流無負荷電圧の範囲,タップ数
8) I2P=...kA連続二次電流
(I2/50=...kA 使用率50%での二次電流)
備考 I2/50=I2P×2
c) その他の特性
9) Q=...l/min 定格冷却水流量
10) ∆P=...bar 定格冷却水圧損
11) 絶縁の種類
12) 保護クラス
13) 質量=...kg 変圧器の質量
14) 適用するものがあれば,その追加情報(例えば,附属書5で示す形式コード)
11.3 銘板記載事項(その2) 定格銘板は,次の事項を記載しなければならない。
a) 名称
b) 形式
c) 定格容量 (kVA) (50%使用率)
d) 定格入力電圧 (V)
e) 定格周波数 (Hz)
f)
最大二次無負荷電圧 (V)
g) 内部インピーダンス (μΩ) (二次換算値)
h) 絶縁の種類
i)
所要冷却水量 (l/min)
j)
質量 (kg)
k) 製造業者名又はその略号
l)
製造年
m) 製造番号
12. 取扱説明書 変圧器は,次の内容を含む取扱説明書を添付しなければならない。
a) 銘板に記載の情報を含む一般仕様
b) フォークリフト,クレーンなどの正しい取扱い方法及びあらかじめ注意する事柄
c) 変圧器の正しい使用法(例えば,設置場所及び過熱又は凝結を避けるための冷却に関する要求事項)
d) 使用率の限度
e) 作業場内の人,作業者の身体への危険に対する保護に関する基本的ガイドライン(例えば,出力端子
を短絡させることや磁界によって引き起こされる金属体の危険)
f)
保守
g) 主要部品リストの付いた適切な回路図
h) 据付け及び取付け
これら以外の他の有益な情報を与えてもよい。例えば,制御機器,表示器,1パルス内の最大時間,力
率,インピーダンス,形式コード,表示の意味,マークや図記号など。
規格との合致は,取扱説明書を読んで行う。
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附属書1(参考) 定格銘板の例
序文 この附属書(参考)は,本体11.2の定格銘板の例について記述するものであり,規定の一部ではな
い。
1. 定格銘板の記載例として,附属書1図1に,定格入力電圧が単一の変圧器の場合について示す。
附属書1図1 定格入力電圧が単一の変圧器
11
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附属書2(参考) この規格に使用している記号
序文 この附属書(参考)は,この規格に使用している記号について記述するものであり,規定の一部で
はない。
1. この規格に使用している記号のリスト
記号
意味
記号
意味
θ
温度
附属書4
I2X
所定の使用率での二次電流
附属書4
θm
平衡温度
附属書4
Q
冷却水流量
5.
附属書4
θn
冷却し始めるときの温度
附属書4
R1
巻線の初期抵抗
8.4
θa
冷却水の温度
8.4
附属書4
R2
温度試験終了直後の巻線抵抗
8.4
θ0, 1, 2
熱時間定数の計算のための温
度又は温度試験中での巻線の
温度
8.4
附属書4
S
容量
附属書4
∆θ1, 2
温度差
附属書4
S0
無負荷入力
8.3
τ
熱時間定数
附属書4
SP
連続入力
5.,8.5
附属書4,1
τ2
負荷時での熱時間定数
附属書4
S50
定格容量
(50%使用率での入力容量)
8.4
附属書1
τ2P
連続二次電流での熱時間定数
附属書4
SX
所定の使用率での入力容量
附属書4
m (Mass)
質量
附属書1
T
サイクルタイム
附属書4
t
時間
附属書4
UCC
定格短絡電圧比率
8.5,8.7
t1
負荷時間
附属書4
U1N
定格入力電圧
8.4,8.5
附属書1
∆P
冷却水圧損
5.
U1CC
入力短絡電圧
8.5
I1P
連続一次電流
8.4
8.5
U20
定格二次無負荷電圧
8.5
附属書1
I1X
所定の使用率での一次電流
附属書4
X
鉄芯の使用率
附属書4
I2
二次電流
附属書4
Xm
鉄芯の最大使用率
附属書4
I2P
連続二次電流
附属書4,1 Z2
二次回路のインピーダンス
8.5
I2/50
50%使用率での二次電流
附属書1
12
C 9323 : 1999
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書3(規定) 高所及び冷媒温度に対する補正
1. 適用範囲 この附属書は,本体の4.及び5.で規定する使用状態と異なる場合に適用する。
2. 標高1 000m以上での使用状態 標高1 000m以上での使用として設計される空冷変圧器において,標
高1 000mよりも低い場所で測定された温度上昇は,装置の設置場所が標高1 000m以上での場合,表2で
の数値に対して100mについて0.5%低下した数値を超えてはならない。
3. 規定以上の冷媒温度 冷媒温度が規定値よりも高い場合,許容される最高温度上昇は,次のように修
正する。
附属書3表1 温度上昇限度の減少
冷却媒体
冷却媒体の温度
℃
温度上昇限度の減少
K
水
30以下
31〜35
36〜40
0
5
10
空気
40以下
41〜45
46〜50
0
5
10
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附属書4(規定) 定義
1. 適用範囲 この附属書は,定義に関して規定する。
2. 変圧器の温度上昇と冷却
稼働中,変圧器の温度は,一般に最大の平衡温度θmに上昇する。
平衡温度は,巻線に流れる電流の二次関数となり,また,
a) 製造,組立条件,及び
b) 冷媒への熱移動
に依存する。
変圧器の稼働を停止すると,各部は,冷媒の温度に冷却される。
変圧器が冷却され,冷却水と熱平衡に達した後に,電流I2=1.26×I2Pを負荷する。この場合,I2Pを100%
使用率で流したときの前述した温度と同じ温度に到達する時間は,測定した時間定数τと同じである。
変圧器の温度変化(附属書4図1参照)は,次の式によって時間的に指数関数の法則に従う。
上昇時の温度 θ=θm− (θm−θa) e−t/τ (℃)
冷却時の温度 θ=θa− (θn−θa) e−t/τ (℃)
ここに,
θm: 平衡温度 (℃)
θa: 冷媒の温度 (℃)
θn: 変圧器が冷却し始めるときの温度 (℃)
附属書4図1 変圧器の温度変化
指数としての係数1/τは,次に依存する物理量である。
a) 変圧器の設計,組立,及び
b) 冷媒への熱移動。
熱時間定数 (τ) は,
1) 測定可能な物理量であり,
2) 変圧器の各部の特性であり,
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3) 温度の上昇,冷却の速度を決定し,
4) 最初の変化速度を保つならば,温度が後に最高値に到達する時間に対応し,
5) 温度変化が平衡温度と時間tにおける温度差が63%に到達する時間に対応する。
3. 一次巻線の熱時間定数 (τ) の決定
熱時間定数は,次のいずれかのうちの一つの方法で決定してよい。
a) 方法1
1) 変圧器の負荷は,
− 8.4で述べた100%使用率の条件で,
− 温度測定は,どんな方法でもよいが,温度が冷媒と熱平衡するまでかけて行う。
2) 次の温度の測定をする。
− θ0:初期 (℃)
− θ1:時間t=t1経過後 (℃)
− θ2:時間t=2×t1経過後 (℃)
3) 次の式によって計算する。
∆θ1=θ1−θ0 (K)
(
)()s
t
2
1
1
/
ln
θ
θ
τ
⊿
⊿
=
∆θ2=θ2−θ0 (K)
b) 方法2
1) 温度試験の後,電流を遮断する。
水冷変圧器の場合は,冷却水は,流したままにしておく。
2) 巻線に取り付けた熱電対を使って,冷却曲線を次のようにしてプロットする。
− 連続プロッター,又は,
− 電流を遮断した時間から計算して,冷却開始時及びt1,2×t1,3×t1などの時間経過後,読み取
る。特に冷却開始時では,測定点の最大値を読み取ることが必要である。
3) 熱時間定数 (τ) の決定は,
− 注意深く冷却曲線(附属書4図1参照)に補助接線を描くことによるか,又は,
− 次の式によって求める。
(
)()s
t
2
2/
ln
θ
θ
τ=
ここに, θ2: 温度試験終了時の最高温度 (℃)
θ: 時間t経過後の温度 (℃)
c) 方法3
冷媒と熱平衡した変圧器に,時間tの間電流I=1.26×I2Pを負荷する。この場合の温度上昇が,変圧
器に100%使用率で電流I2Pを負荷する場合の平衡温度と同じとなる時間をt経過後とすると,熱時間
定数τは,この時間tと同じである。
4. 変圧器の稼働
一般に,変圧器は,連続して稼働せず,スイッチをオン,オフすることによって負荷と無負荷とを定期
的に繰り返して稼働する。
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負荷時間 (t1) とサイクルタイム (T) との比率が,使用率 (X) である。その値は,%で表す。
X= (t1/T) ×100 (%)
サイクルタイムと使用率は,溶接作業と変圧器の使用条件に影響する。
稼働サイクル(附属書4図2参照)の間,変圧器の温度は,負荷時間中に上昇し,無負荷時間中に冷却
する。その温度は,θ1とθ2との間で変化する。
備考 曲線は平衡状態を示す。
附属書4図2 変圧器の稼働サイクル
4.1
巻線
巻線の最高温度θ2は,次に依存する。
a) 電流,
b) サイクルタイム,
c) 使用率,及び
d) 熱時間定数。
巻線の温度上昇は,絶縁の種類で指定された限度を超えてはならない。結果的に,例えば,使用率が低
い場合には,使用率が高い場合よりも変圧器に大きい電流を流すことが可能である。
連続入力SP又は連続二次電流I2Pと変圧器の熱時間定数τが既知の場合は,使用率X,サイクルタイムT
における入力容量SX又は二次電流I2Xは,次の式で決定される。
(
)
kVA
1
1
100
P
X
τ
−
τ
−
−
−
=
XT
T
e
e
S
S
()
kA
1
1
100
P
2
X
2
τ
−
τ
−
−
−
=
XT
T
e
e
I
I
備考 一般に,熱時間定数とサイクルタイムの比率が5 (τ/T>5) を超える場合は,次の簡略化した式
を使ってもよい。
(
)
kVA
100
P
X
X
S
S=
()
kA
100
P
2
X
2
X
I
I=
4.2
鉄芯
変圧器の鉄芯の最高温度上昇 (θ) は,金属内での誘導効果によって生じる電流にはよらず,入力電圧に
よって決まる。鉄芯の温度上昇は,また,通電する時間に関係するので,サイクルタイム,使用率及び熱
時間定数によっても決まる。
電流が変化しても,誘導は,入力電圧によって決まるので一定である。与えられた変圧器の鉄芯の温度
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上昇は,したがって,スイッチオンの時間には依存しない。入力が開路され溶接変圧器にかかる負荷によ
って,鉄芯の温度上昇は,使用率及びサイクルタイムで直接変化する。
このことは,最大使用率 (Xm) が規定されることを意味するが,それを超えると,鉄芯の温度上昇は,
高くなっていく。
鉄芯の熱時間定数は非常に大きいので,最大使用率 (Xm) の値は,サイクルタイムとは独立しているも
のとみなすことができる。
備考 連続条件下で巻線の温度試験を実際に行っても,上述したことの矛盾はない。温度試験は,実
際には,低い電圧で行うので,鉄芯の温度上昇は,無視できる。
5. 使用
次の値がわかれば,使用条件が決定できる。
a) 熱時間定数 (τ) ,及び
b) 定格連続入力 (SP),又は,
c) 許容される定格連続二次電流 (I2P)。
附属書4.1で示した式から,
1) 溶接作業に応じてサイクルタイムと使用率を与えると,許容される入力容量及び二次電流を計算す
ることができる。また,
2) 溶接作業で必要となる電流がわかれば,許容されるサイクルタイムと使用率を計算することができ
る。
附属書4.1で示した簡略化した式が使えない場合(熱時間定数τ≦5T)には,計算は完全な式で行わなけ
ればならない。この場合,電流を通電する間の時間t1が既知でないといけないことに注意しなければなら
ない。
この時間t1は,次の式による。
t1=T× (X/100) (s)
許容されるサイクルタイムTは,次式で最初に決定される。
(
)
[
]
{
}()s
I
I
I
T
tτ
θ
τ
/
2
X
2
2
P
2
P
2
1
1
ln
ln
2
−
−
−
−
=
それから,
X= (t1/T) ×100 (%)
が計算される。
備考 変圧器の据付け条件が,電流又は許容使用率を減少させないかどうかを確認することが必要で
ある。
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附属書5(規定) 形式コード
1. 適用範囲 この附属書は,本体10.の製品の呼び方の他の呼び方として規定する。本体の10.は,附属
書5の形式コードに置き換えてもよい。
2. 形式コード 変圧器は,次の例に示す形式コードで表す。
形式コード例
形式コードの説明
1) 出力端子の配列
備考 上記の形式コードに依らないもので,産業界で通例となっている変圧器には,文字のかわりに
数字を使用してもよい。
2) タップスイッチの位置
1 端,
2〜5 横,
6 外部
タップスイッチなしのもの
0 二次側タップなしの変圧器
7 コネクタのセットによってタップを変えられる変圧器
3) 定格無負荷電圧(例えば,10V)
4) 定格短絡電圧比率UCC(例えば,71%)
5) 定格入力電圧U1N(例えば,400V)
ISO 10656の中のコードHとJは,この附属書とは異なることに注意が必要である。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS C 9323(抵抗溶接機用変圧器−全変圧器に適用する一般仕様)原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
大 嶋 健 司
埼玉大学
(幹事)
中 根 豊
大阪電気株式会社
(委員)
佐 藤 次 彦
大阪工業大学名誉教授
伊 藤 章
通商産業省機械情報産業局
兼 谷 明 男
通商産業省工業技術院
山 村 修 蔵
財団法人日本規格協会
西 脇 敏 博
OBARA株式会社
青 木 欣 一
株式会社木村電熔機製作所
永 井 啓 彦
ナストーア株式会社
佐 藤 啓 二
株式会社中央製作所
長谷川 和 芳
株式会社電元社製作所
小笠原 幸 生
トヨタ自動車株式会社
平 松 良 一
東急車輛製造株式会社
金 志 真 彦
ホンダエンジニアリング株式会社
加 藤 和 彦
三菱自動車工業株式会社
高 橋 靖 雄
新日本製鐵株式会社
田 辺 勝 二
OBARA株式会社
(事務局)
池 原 平 晋
社団法人日本溶接協会