2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
C 8971-1993
太陽光発電用鉛蓄電池の残存容量測定方法
Measuring procedure of residual capacity for lead acid battery
in photovoltaic system
1. 適用範囲 この規格は,太陽光発電システムにおいて電気エネルギー貯蔵用として設置される据置鉛
蓄電池のシステム運用状態での残存容量の測定方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 8704 据置鉛蓄電池
JIS C 8905 独立形太陽光発電システム通則
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 8905によるほか,次のとおりとする。
成層化 蓄電池の部分充放電などによって生じる電解液の上下方向の濃度差。
3. 測定方法の種類 測定方法の種類は,次のとおりとし,一つ又は複数の組合せによって測定する。
(1) 電圧測定法 鉛蓄電池システム又は鉛蓄電池の端子電圧を測定することによって,鉛蓄電池内の残存
容量を測定する方法。
(2) 比重測定法 鉛蓄電池内の硫酸電解液の比重を測定することによって,鉛蓄電池内の残存容量を測定
する方法。
(3) Ah測定法 鉛蓄電池システムの充電電流,放電電流の積算値を測定することによって,鉛蓄電池内
の残存容量を測定する方法。
4. 測定条件 測定条件は,次による。
(1) 測定周期は10分以下にする。ただし,補正の目的で使用する場合はこの限りではない。
(2) 適用温度範囲は−20〜+50℃とする。
5. 電圧測定法
5.1
測定回路 鉛蓄電池システムの端子電圧を測定する測定回路の例を,図1に示す。
5.2
測定器の精度 使用する電圧計と電流計の階級は,0.5級以上とする。測定範囲は,測定対象の定格
の1.5〜3倍の範囲とする。
5.3
測定方法 蓄電池システムの端子電圧の場合は直列セル数で測定電圧を除し,単セルに換算する。
蓄電池の並列接続は一般的ではないが,並列接続されているときには電流についても並列数で除して単セ
ルに換算する。
2
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図1 電圧測定法の測定回路の例
5.4
残存容量の算出方法 測定した電圧から起電力を推定し,その結果を用いて残存容量を次の手順で
算出する。
(1) まず,式(1)によって起電力を推定する。
E=V+I・Rc ··············································································· (1)
ここに,
E:単セルで推定した起電力 (V)
V:単セルに換算した端子電圧 (V)
I:単セルに換算した電流(放電時を+とする) (A)
Rc:単セルの近似内部抵抗(Ω)
(2) Rcの値を,式(2)によって求める。
3
0
0
c
10
C
K
R
−
−
×
=
α
························································ (2)
ここに,
K0:比例定数
C0:定格容量 (Ah)
α:係数
それぞれの値は,JIS C 8704に規定した形式について表1に示す。
表1 内部抵抗を決定するための係数
K0
α
HS形
61.6
0.835
CS形
80.8
0.828
(3) 式(3)によって残存容量に変換する。
100
)
15
.
273
(
)
(
exp
1
0
×
+
+
−
=
T
R
E
E
E
F
Q
··················································· (3)
ここに,
Q:残存容量 (%)
E0:完全充電時の起電力 (V)
E1:充電時と放電時の補正項 (V)
R:ガス定数
F:ファラディ定数
T:測定時の電解液温度 (℃)
E0の値は,式(4)によるものとする。E1の値は,放電時は0,充電時は0.05とする。
E0=0.85+D0 ············································································ (4)
ここに,
D0:完全充電時の電解液の比重[JIS C 8704の5.8(電解液)に示さ
れた値とする。]
3
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5.5
適用限界 完全充電直前・放電末期を除くと,電圧の変化が少なく残存容量の測定精度は低いので,
残存容量測定方法として上記近似式を使用する電圧測定法単独の場合は蓄電池の保護だけに使用する。
なお,充電時の水の電気分解による電圧の急激な上昇が生じた際には,式(3)は適用できない。
6. 比重測定法
6.1
測定回路 鉛蓄電池の比重測定回路の例を,図2に示す。
図2 比重測定法の測定回路の例
6.2
測定器の精度 比重測定の精度は,0.005以下,比重測定の測定範囲は,1.10〜1.28を読むことがで
きるものとする。
6.3
測定方法 主として,不完全充放電状態で使用される鉛蓄電池に対しては,電解液の成層化による
測定誤差を避けるためにかくはん又は複数のセンサの設置を行う。かくはんを行う際は,かくはんによる
測定への影響がないようにする。機械的な方法や光学的な方法によって測定した比重を電気信号に変換す
る。正確な残存容量の測定には電解液温度によって20℃に補正を行う。
比重の温度補正式は式(5)を使用する。
D20=Dt−0.000 7 (T−20)······························································ (5)
ここに,
D20:20℃に換算した比重
Dt:測定した比重
T:測定時の電解液温度 (℃)
6.4
残存容量の算出方法 比重と残存容量は,比例関係にあるので式(6)で与えられる。
Q= {1− (D0−D20) /K1} ×100····················································· (6)
ここに,
K1:比例定数(=比重の変化分/充電状態の変化分)
K1の値は,図3を用いて次の手順で求める。
まず,鉛蓄電池の銘板から1Ah当たりの電解液量Xを求める。D0に対応した曲線とXからの縦の直線
との交点を求める。この交点の縦軸の座標が,完全放電時の電解液比重Dzである。K1は,D0とDzから式
(7) によって求めることができる。
4
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図3 鉛蓄電池の1Ah放電終了時の硫酸比重
K1=D0−Dz ··············································································· (7)
7. Ah測定法
7.1
測定回路 Ah測定のための測定回路の例を,図4に示す。
7.2
測定器の精度 ドリフト誤差は,0.5%/月以下とする。電流変換器の誤差は,0.5%以下とする。測
定範囲は,蓄電池の定格の2倍以内とする。
7.3
測定方法 完全充電時の値を容量値として,それからの積算によって残存容量を測定する。自己放
電,電解液温度による残存容量の変化があることに留意する。
均等充電時に定格容量値にリセットする。
図4 Ah測定法の測定回路の例
5
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7.4
残存容量の算出方法 残存容量の算出は,完全充電状態を基準として,式(8)による。
なお,算出結果が定格容量を超えるときには定格量とする。
100
100
1
0
×
−
+
=
∫
∫
C
dt
I
dt
I
Q
D
C
η
················································· (8)
ここに,
η:充電電流効率 (%)
IC:充電電流 (A)
ID:放電電流 (A)
C0:定格容量 (Ah)
備考 充電電流効率の値は,95%とする。
6
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平成4年度新発電システム標準化調査研究委員会 構成表(敬称略,順不同)
氏名
所属
(委員長)
関 根 泰 次
東京理科大学工学部
(副委員長)
堀 米 孝
東京農工大学工学部
(副委員長)
平 田 賢
芝浦工業大学システム工学部
(副委員長)
本 間 琢 也
筑波大学構造工学系
吉 田 高 明
通商産業省機械情報産業局
佐々木 宣 彦
通商産業省資源エネルギー庁公益事業部
小 山 健 一
工業技術院電子技術総合研究所
大 西 利 只
工業技術院電子技術総合研究所エネルギー部
森 信 昭
工業技術院ニューサンシャイン計画室
吉 村 佳 人
工業技術院ニューサンシャイン計画室
栗 原 史 郎
工業技術院標準部
中 川 興 史
新エネルギー・産業技術総合開発機構
寺 澤 洋
新エネルギー・産業技術総合開発機構
村 田 照 夫
財団法人機械電子検査検定協会
石 川 力 雄
財団法人電力中央研究所狛江研究所開発部
坂 井 正 行
電気事業連合会工務部
宮 沢 敬 治
東京電力株式会社技術開発本部開発研究所
石 木 芳 徳
中部電力株式会社技術開発本部電力技術研究所
山 岡 隆 三
関西電力株式会社総合技術研究所
高 橋 昌 英
株式会社四国総合研究所エネルギー研究部
甲斐崎 充 典
東京ガス株式会社燃料電池プロジェクトチーム
橋 本 昌
大阪ガス株式会社マーケッティング本部
桑 野 幸 徳
三洋電機株式会社研究開発本部
荻 本 和 男
株式会社東芝電力事業部
加 藤 寧
株式会社日立製作所電力事業本部
穴 原 良 司
富士電機株式会社技術開発推進センター
山 下 弘 雄
三菱電機株式会社機電事業本部機電技術部
清 水 英 範
社団法人日本電機工業会技術部
(事務局)
今 坂 善 夫
社団法人日本電機工業会技術部
太陽光分科会 構成表(敬称略,順不同)
氏名
所属
(主査)
堀 米 孝
東京農工大学工学部
(副主査)
黒 川 浩 助
工業技術院電子技術総合研究所エネルギー部エネルギー情報技術研究室
浜 川 圭 弘
大阪大学基礎工学部極限物質研究センター
石 原 好 之
同志社大学工学部
森 信 昭
工業技術院ニューサンシャイン計画室
栗 原 史 郎
工業技術院標準部
田 所 利 一
新エネルギー・産業技術総合開発機構
鈴 木 守
財団法人機械電子検査検定協会関東事業所
浜 場 邦 洋
電気事業連合会
中 山 隼 夫
東京電力株式会社開発研究所
加 藤 厚
中部電力株式会社電力技術研究所
北 村 章 夫
関西電力株式会社総合技術研究所
滝 川 清
財団法人電力中央研究所狛江研究所開発部
飯 田 和 弘
株式会社関電工電力本部発変電部
桑 野 幸 徳
三洋電機株式会社研究開発本部
国 吉 真 照
株式会社東芝電力・核融合開発技術部
7
C 8971-1993
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
氏名
所属
地 福 順 人
株式会社日立製作所日立工場
重 政 猛 征
富士電機株式会社太陽エネルギーシステム部
坂 田 末 男
三菱電機株式会社伊丹製作所開発部電力制御技術グループ
増 田 岳 夫
光産業技術振興協会開発部
清 水 英 範
社団法人日本電機工業会技術部
(事務局)
今 坂 善 夫
社団法人日本電機工業会技術部
太陽光分科会システム・機器作業会 構成表(敬称略,順不同)
氏名
所属
(主査)
黒 川 浩 助
工業技術院電子技術総合研究所エネルギー部
(副主査)
津 田 泉
工業技術院電子技術総合研究所エネルギー部
(副主査)
小 林 広 武
財団法人電力中央研究所開発部
牧 野 享 子
工業技術院ニューサンシャイン計画室
平 野 由紀夫
工業技術院標準部
西 岡 純 一
新エネルギー・産業技術総合開発機構
高 橋 義 詔
財団法人機械電子検査検定協会浜松ソーラエネルギー研究所
井 山 治
サンケン電気株式会社機器事業部第二技術部
武 岡 明 夫
三洋電機株式会社研究開発本部機能材料開発センター
国 吉 真 照
株式会社東芝電力・核融合開発技術部
西 村 荘 治
日新電機株式会社複合システム開発部
江 口 吉 雄
株式会社日立製作所パワーエレクトロニクスシステム開発
センターシステム開発設計グループ
菅 原 功
富士電機株式会社新事業推進事業部太陽エネルギーシステム部
坂 田 末 男
三菱電機株式会社伊丹製作所開発部電力制御技術グループ
横 山 忠 夫
新神戸電機株式会社技術部
坪 田 正 温
日本電池株式会社研究開発本部第一研究部
藤 原 良 生
古河電池株式会社宇航特機事業部宇航特機営業部
杉 山 寛
松下電池工業株式会社蓄電池事業部技術部技術第一グループ
土佐野 進
株式会社ユアサコーポレーション総合電源本部技術サービスセンター
近 藤 茂 樹
株式会社京セラSESシステム研究
三 宅 行 美
英弘精機株式会社
(事務局)
今 坂 善 夫
社団法人日本電機工業会技術部