日本工業規格
JIS
C
7032
-1993
トランジスタ通則
General rules for transistors
1.
適用範囲 この規格は,電子機器に用いるバイポーラトランジスタ及び電界効果トランジスタ(以下,
両者を総称してトランジスタという。
)の一般的共通事項について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 0301
電気用図記号
JIS C 7021
個別半導体デバイスの環境試験方法及び耐久性試験方法
JIS C 7030
トランジスタ測定方法
JIS C 7210
信頼性保証個別半導体デバイス通則
JIS Z 8202
量記号,単位記号及び化学記号
JIS Z 8203
国際単位系 (SI) 及びその使い方
2.
この規格の対応国際規格を,次に示す。
IEC 747-1 (1983)
Semiconductor devices, Discrete devices and integrated circuits Part 1 : General
IEC 747-7 (1988)
Semiconductor discrete devices and integrated circuits Part 7 : Bipolar transistors
IEC 747-8 (1984)
Semiconductor devices, Discrete devices Part 8 : Field-effect transistors
2.
用語の定義
2.1
絶対最大定格 瞬時たりとも超過してはならない限界値で,どの二つの項目も同時に達してはなら
ない限界値。
なお,ここでの電圧又は電流は,直流及びピーク値とする。
2.2
バイポーラトランジスタ バイポーラトランジスタの用語の定義は,次による。
(1)
保存温度 (T
stc
)
電圧を印加しない状態での保存時での周囲温度の許容範囲。
(2)
接合温度 (T
j
)
バイポーラトランジスタの熱的状態と電気的状態との関係を示す半導体内部のみか
けの接合温度の最大許容値。
(3)
コレクタ・ベース電圧 (V
CBO
)
エミッタ開放で,コレクタ接合の逆方向に印加できる電圧の最大許
容値。
(4)
エミッタ・ベース電圧 (V
EBO
)
コレクタ開放で,エミッタ接合の逆方向に印加できる電圧の最大許
容値。
(5)
コレクタ・エミッタ電圧 (V
CEO
)
ベース開放で,コレクタ接合の逆方向に印加できる電圧の最大許
容値。
(6)
コレクタ電流 (I
C
)
エミッタ・ベース間に順方向に電圧を加えたとき,コレクタ接合の逆方向に流す
ことができる電流の最大許容値。
(7)
エミッタ電流 (I
E
)
コレクタ・ベース間を短絡したとき,エミッタ接合の順方向に流すことができる
2
C 7032-1993
電流の最大許容値。
(8)
ベース電流 (I
B
)
エミッタ・ベース間に順方向に電圧を加え,エミッタ・コレクタ間を短絡したとき,
ベースに流すことができる電流の最大許容値。
(9)
全損失 (P
tot
)
又はコレクタ損失 (P
c
)
指定された放熱条件での,消費することができる全電力,又
はコレクタ接合で消費することができる電力の最大許容値。
2.3
電界効果トランジスタ 電界効果トランジスタの用語の定義は,次による。
(1)
保存温度 (T
stg
)
電圧を印加しない状態の保存時での周囲温度の許容範囲。
(2)
接合温度 (T
j
)
電界効果トランジスタの熱的状態と電気的状態との関係を示す半導体内部のみかけ
の接合温度の最大許容値。
(3)
チャネル温度 (T
ch
)
電界効果トランジスタの熱的状態と電気的状態との関係を示す半導体内部のみ
かけのチャネル温度の最大許容値。
(4)
ゲート・ドレイン電圧 (V
GD
)
ソースを規定の状態にしたとき,ゲート・ドレイン間に印加できる電
圧の最大許容値。
(5)
ゲート・ソース電圧 (V
GS
)
ドレインを規定の状態にしたとき,ゲート・ソース間に印加できる電圧
の最大許容値。
(6)
ドレイン・ソース電圧 (V
DS
)
ゲートを規定の状態にしたとき,ドレイン・ソース間に印加できる電
圧の最大許容値。
(7)
ドレイン電流 (I
D
)
ゲート・ソース間を規定の状態とし,ドレイン・ソース間に規定の電圧を印加
したときの,ドレインに流すことができる電流の最大許容値。
(8)
ゲート電流 (I
G
)
ゲートに流すことができる電流の最大許容値。
(9)
全損失 (P
tot
)
又はドレイン損失 (P
DS
)
指定された放熱条件での消費することができる全電力,又は
ドレイン接合及びチャネルで消費することができる電力の最大許容値。
2.4
パルス応答特性
2.4.1
パルス応答波形 パルス応答波形は,図 1 による。
3
C 7032-1993
図 1 パルス応答波形
2.4.2
バイポーラトランジスタ バイポーラトランジスタのパルス応答特性は,次による。
(1)
遅延時間 (t
d
)
入力パルスが振幅の 10%に達してから,出力パルスが振幅の 10%に達するまでの時間
(
図 1 参照)。
(2)
上昇時間 (t
r
)
出力パルスが振幅の 10%から 90%まで増加するのに要する時間(図 1 参照)。
(3)
ターンオン時間 (t
on
)
入力パルスが振幅の 10%に達してから,出力パルスが振幅の 90%に達するま
での時間(
図 1 参照)。
(4)
蓄積時間 (t
s
)
入力パルスが振幅の 90%に減少してから,出力パルスが振幅の 90%に減少するまでの
時間(
図 1 参照)。
(5)
下降時間 (t
f
)
出力パルスが振幅の 90%から 10%まで減少するのに要する時間(図 1 参照)。
(6)
ターンオフ時間 (t
off
)
入力パルスが振幅の 90%に減少してから,出力パルスが振幅の 10%に達する
までの時間(
図 1 参照)。
2.4.3
電界効果トランジスタ 電界効果トランジスタのパルス応答特性は,次による。
(1)
ターンオン遅延時間 [t
d (on)
]
入力パルスが振幅の 10%に達してから,出力パルスが振幅の 10%に達
するまでの時間(
図 1 参照)。
(2)
上昇時間 (t
r
)
出力パルスが振幅の 10%から 90%まで増加するのに要する時間(図 1 参照)。
(3)
ターンオン時間 (t
on
)
入力パルスが振幅の 10%に達してから,出力パルスが振幅の 90%に達するま
での時間(
図 1 参照)。
(4)
ターンオフ遅延時間 [t
d (off)
]
入力パルスが振幅の 90%に減少してから,出力パルスが振幅の 90%に
減少するまでの時間(
図 1 参照)。
(5)
下降時間 (t
f
)
出力パルスが振幅の 90%から 10%まで減少するのに要する時間(図 1 参照)。
(6)
ターンオフ時間 (t
off
)
入力パルスが振幅の 90%に減少してから,出力パルスが振幅の 10%に達する
までの時間(
図 1 参照)。
4
C 7032-1993
3.
個別規格 この規格によって個々のトランジスタの定格,性能,外形などを規定する場合は,個別規
格による。
4.
記号 この規格で用いる図記号は,JIS C 0301 による。
また,単位記号は,JIS Z 8202 及び JIS Z 8203 による。
5.
分類 トランジスタの分類は,表 1 による。
表 1 トランジスタの分類
分類項目
種類
用途
(1)
高周波用:高周波増幅,周波数変換,周波数混合,局部発振,高周波発振,
高周波電力増幅,高周波低雑音増幅
(2)
低周波用:低周波増幅,低周波電力増幅,低周波低雑音増幅
(3)
スイッチング用:高速度スイッチング,低速度スイッチング
構造
(1)
バイポーラトランジスタ
(2)
電界効果トランジスタ
6.
定格 最大定格は,絶対最大定格とする。最大定格の規定項目は,附属書 2 又は附属書 3 に示す個別
規格の様式による。
7.
性能
7.1
電気的特性 トランジスタの電気的特性は,附属書 2 又は附属書 3 に示す個別規格の様式に示した
項目で規定する。特性を規定する測定条件は,温度,電圧,電流については
表 2 に示す値を推奨する。
表 2 特性を規定する測定条件の推奨値
温度
−65℃,−55℃,−25℃,−10℃,+25℃,+40℃,+45℃,+55℃,+60℃,+70℃,+
85
℃,+100℃,+125℃,+150℃,+175℃,+200℃,+250℃,+300℃
電圧 1.0,1.25,1.6,2.0,2.5,3.2,4.0,5.0,6.3,8.0 (×10
n
V)
電流
(1)
小信号用トランジスタ:1,2,5 (×10
n
A)
(2)
電力用トランジスタ:1.0,1.6,2.5,4.0,6.3 (×10
n
A)
備考 n は,正又は負の整数とする。
7.2
環境及び耐久性に対する性能 トランジスタの環境条件に対する性能は,JIS C 7021 の環境試験の
うち,指定された項目について規定する。信頼性が要求されるトランジスタの信頼性保証方法は,JIS C
7210
による。
8.
測定 トランジスタの測定は,規定がない限り JIS C 7030 による。
9.
表示
5
C 7032-1993
9.1
製品に対する表示 トランジスタには,次の事項を表示する。ただし,表示が困難な場合は,形名
の略号を表示する。
(1)
形名
(2)
製造業者名又はその略号
(3)
製造年月又はその略号
9.2
包装に対する表示 包装の適切な箇所に次の事項を表示する。
(1)
形名
(2)
製造業者名又はその略号
(3)
製造年月又はその略号
なお,静電気破損のおそれがあるものに対しては,
附属書 1 に規定の静電気注意記号を表示する。
10.
取扱い上の注意事項 静電気破損のおそれがあるトランジスタに対しては,次の事項に注意する。
(1)
移送,保管及び放置の際は,静電気導電材料,帯電防止処理材料などを用い,静電気の帯電を防止す
る。
(2)
測定は,静電気の発生しない場所で行う。相対湿度は 50%程度が望ましい。
また,静電気の発生を防ぐためには,取扱者,工具及び測定機器類の電位と被測定トランジスタを
取り扱う場所の電位を同電位にする必要がある。
6
C 7032-1993
附属書 1 静電気破損のおそれがあるデバイスへの表示
静電気によって破損をするおそれがあり,取扱い上注意を必要とするデバイスであることを表示する記
号は,次による(IEC 747-1 による。
)
。
1.
記号の使用 実用上適している内装や可能ならばデバイス上に表示する。データシート上,保管容器,
特別な防護用の包などに表示する。
附属書 1 図 2 は,デバイス上に縮小して使用する場合に簡略化した記号である。
2.
記号の色 記号の色は,次による。
記号の種類
色
備考
附属書 1 図 1
附属書 1 図 2
下地と識別ができれば単一色で何色でも
よい。ただし,赤色は,除く。
主に印刷によって表示する。
附属書 1 図 3
下地は黄色とする。文字及び記号は黒色
とする。
主にラベルによって表示する。
附属書 1 図 1 記号
附属書 1 図 2 縮小する場合の簡略化した記号
7
C 7032-1993
附属書 1 図 3 文字と組み合わせた記号
8
C 7032-1993
附属書 2 バイポーラトランジスタの個別規格の様式
バイポーラトランジスタ
9
C 7032-1993
10
C 7032-1993
11
C 7032-1993
附属書 3 電界効果トランジスタの個別規格の様式
電界効果トランジスタ
12
C 7032-1993
13
C 7032-1993
14
C 7032-1993
15
C 7032-1993
JIS
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
吉 川 重 夫
日本放送協会放送技術研究所
(幹事)
岩 本 英 雄
三菱電機株式会社東京半導体技術部
(幹事)
岡 部 健 明
株式会社日立製作所半導体設計開発センタ
吉 川 直 幹
沖電気工業株式会社電子デバイス事業本部
杉 本 隆
株式会社東芝個別半導体応用技術部
佐 藤 喜久蔵
三洋電機株式会社半導体事業本部 TR 事業部
斎 藤 忠 義
日本電気株式会社半導体応用技術本部
東 迎 良 育
日本電子機械工業会
関 川 敏 弘
電子技術総合研究所
吉 田 裕 道
東京都立工業技術センター電子部
鳴 神 長 昭
日本電子部品信頼性センター
黒 木 勝 也
日本規格協会技術・検査部
水 沢 武
日本電信電話株式会社 LSI 研究所
芦 田 秀 夫
富士通株式会社通信事業推進本部
柴 田 明 一
ソニー株式会社法務・渉外グループ
川 城 三 治
株式会社ゼクセルソフトサービス事業室
兼 島 敏 一
シャープ株式会社情報システム事業本部
池 田 浩
横河電機株式会社開発推進センター標準部
松 田 純 夫
宇宙開発事業団機器・部品開発部
三 宅 信 弘
通商産業省機械情報産業局
稲 葉 裕 俊
工業技術院標準部
(事務局)
立 川 明
日本電子機械工業会
(事務局)
布 川 賢 一
日本電子機械工業会
JIS
原案作成分科会 構成表
氏名
所属
(主査)
岡 部 健 明
株式会社日立製作所半導体設計開発センタ
(幹事)
向 井 均
松下電子工業株式会社ディスクリート事業部
岩 本 英 雄
三菱電機株式会社東京半導体技術部
吉 川 直 幹
沖電気工業株式会社電子デバイス事業本部
柿 島 裕
株式会社東芝個別半導体応用技術部
佐 藤 喜久蔵
三洋電機株式会社半導体事業本部
山 口 忠 克
日本電気株式会社半導体応用技術本部
三 井 一 彦
オリジン電気株式会社半導体部
差 波 正 敏
新電元工業株式会社半導体事業部
後 藤 秋 夫
日本インター株式会社品質保証部
三 原 孝 行
富士通株式会社化合物半導体事業部
一 條 正 美
富士電機株式会社半導体開発部
山 本 悟
三菱電機株式会社パワーデバイス技術部
三 本 和 文
ローム株式会社トランジスタ製造商品開発課
高 橋 誠 一
沖電気工業株式会社研究開発本部電子部
由 宇 義 珍
三菱電機株式会社パワーデバイス技術部
(事務局)
立 川 明
日本電子機械工業会
(事務局)
布 川 賢 一
日本電子機械工業会