C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義··················································································································· 2
4 測定方法の概要················································································································ 2
5 装置······························································································································· 2
5.1 一般 ···························································································································· 2
5.2 ピンゲージ ··················································································································· 3
5.3 フェルール保持具 ·········································································································· 3
5.4 ビデオカメラ付き顕微鏡 ································································································· 3
5.5 精密位置決めステージ ···································································································· 3
5.6 ディスプレイ ················································································································ 3
5.7 コンピュータ ················································································································ 3
6 手順······························································································································· 3
7 個別に規定する事項·········································································································· 4
附属書A(参考)測定不確かさ ······························································································· 5
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第14条第1項の規定に基づき,認定産業標準作成機関である一般財団法人
日本規格協会(JSA)から,産業標準の案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,経済産業
大臣が制定した日本産業規格である。これによって,JIS C 5961:2009は廃止され,その一部を分割して
制定したこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実用新案権に関わる確認に
ついて,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
C 61300-3-54:2020
(IEC 61300-3-54:2019)
光ファイバ接続デバイス及び光受動部品−基本試験
及び測定手順−第3-54部:円筒形フェルールの
フェルール穴軸とフェルール軸との角度ずれ測定
Fiber optic interconnecting devices and passive components-
Basic test and measurement procedures-
Part 3-54: Examinations and measurements-Angular misalignment
between ferrule bore axis and ferrule axis for cylindrical ferrules
序文
この規格は,2019年に第1版として発行されたIEC 61300-3-54を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本産業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,円筒形フェルールのフェルール穴軸とフェルールの外径を基準とした軸(以下,フェルー
ル軸という。)との角度ずれの測定手順について規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61300-3-54:2019,Fibre optic interconnecting devices and passive components−Basic test and
measurement procedures−Part 3-54: Examinations and measurements−Angular misalignment
between ferrule bore axis and ferrule axis for cylindrical ferrules(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こと
を示す。
2
引用規格
次に掲げる引用規格は,この規格に引用されることによって,その一部又は全部がこの規格の要求事項
を構成している。この引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 7420 限界プレーンゲージ
注記 対応国際規格における引用規格:ISO 1938-1,Geometrical product specifications (GPS)−
Dimensional measuring equipment−Part 1: Plain limit gauges of linear size
2
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
角度ずれ,θ
フェルール軸とフェルール穴軸とがなす角度
注釈1 角度ずれの単位は,度とする。
注釈2 図1を参照。
図1−フェルール軸とフェルール穴軸との角度ずれ
3.2
フェルール穴軸
フェルール穴に対する最大内接円の中心軸
4
測定方法の概要
円筒形フェルールのフェルール軸とフェルール穴軸との角度ずれの測定手順について規定する。
この測定手順は,フェルール軸を中心に回転するときにフェルール穴に挿入したピンゲージ先端のずれ
を測定することによって,角度ずれθを測定する。
5
装置
5.1
一般
図2に示す装置は,5.2〜5.7に規定する項目を構成する。測定不確かさに悪影響を与えない場合は,代
替機器を使用してもよい。測定不確かさバジェットに最も影響を与える項目を,参考として附属書Aに示
す。
3
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
図2−測定装置の例
5.2
ピンゲージ
ピンゲージ径は,供試品のフェルール穴径より僅かに小さい外径のもので,JIS B 7420に規定されたも
のとする。
5.3
フェルール保持具
フェルール保持具は,フェルールが中心軸周りに回転するように置くため,精密なV溝又は外径基準出
し機構をもたなければならない。精密なV溝又は外径基準出し機構の軸をフェルール保持具の軸という。
JIS B 0615-1[1]が推奨するV溝のくさび角度の最適値は,108度である。
5.4
ビデオカメラ付き顕微鏡
ビデオカメラ付き顕微鏡は,フェルール保持具である精密なV溝又は外径基準出し機構にフェルールを
置いて回転させたときに,ピンゲージ先端の位置を測定できるカメラをもたなければならない。ビデオカ
メラ及び顕微鏡の光軸は,精密なV溝又は外径基準出し機構の中心軸との平行度が0.01度以下となるよ
うにする。画像処理装置の解像度は,ピクセル当たり0.3 μm未満であることが望ましい。
5.5
精密位置決めステージ
精密位置決めステージは,フェルール端面からのピンゲージの突出量(図2のL)を測定するのに十分
な調整確度のものを用いなければならない。ピンゲージの突出量は,フェルール端面からピンゲージ先端
までのフェルール軸に平行な距離とする。調整確度は,0.01 mm未満であることが望ましい。
5.6
ディスプレイ
ディスプレイは,フェルールの外径基準軸を中心に回転させる間,ピンゲージ先端の位置を測定できる
ように,ビデオカメラ付き顕微鏡からの画像を表示しなければならない。
5.7
コンピュータ
画像処理ソフトウエアをインストールしたコンピュータは,ピンゲージ先端画像の中心を測定し,複数
の測定点から最小二乗法によって近似円を計算することが可能なものを用いなければならない。
6
手順
測定手順は,次による。
4
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
a) ピンゲージは,フェルール端面から突出させるように供試品のフェルール穴に挿入する。ピンゲージ
は,フェルール穴にフェルール端面から3 mm以上挿入され,ピンゲージの突出量は,フェルール端
面から5 mm以上にすることが望ましい。(図2のL)。
b) フェルール保持具にフェルールを置く。
c) 精密位置決めステージを用いて,フェルール端面とピンゲージ先端とを光学系で順次焦点を合わせ,
二つの焦点面の距離(L)を測定し,ピンゲージの突出量(図2のL)を求める。
d) フェルールは,1回転するまで60度以下の角度ずつフェルール軸を中心に回転しなければならない。
e) 5.7で規定するコンピュータの画像処理ソフトウエアを用いて,各先端画像の中心位置を求める。
熱的なドリフトを最小限に抑えるために,全ての測定を短時間(1分未満)で連続的に行うことが
望ましい。
f)
コンピュータ及び関連するソフトウエアを用いて,図2に示す仮想円の直径(A)を求める。
g) フェルール軸とフェルール穴軸との角度ずれ(θ)は,次の式(1)によって求める。
arctan2AL
θ
=
········································································· (1)
ここで,
L: ピンゲージの突出量
A: ピンゲージの最大変位量
7
個別に規定する事項
必要に応じて,次の事項を製品規格などに規定する。
− 測定装置の仕様及び要求する確度
− フェルール軸とフェルール穴軸との角度ずれの許容値
− 使用するピンゲージの寸法(長さ及び外径)
− フェルール穴径
− フェルール端面からのピンゲージ突出量
− 顕微鏡の倍率
− ピクセル当たりの画像処理装置の解像度
− 精密位置決めステージの調整確度
− この規格の試験方法との差異
− 測定不確かさ
5
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
附属書A
(参考)
測定不確かさ
A.1 一般
測定不確かさに寄与すると考えられる主な項目を,A.2〜A.6に記載する。
A.2 精密位置決めステージの調整確度
精密位置決めステージの調整確度によって起こる測定不確かさを,図A.1に示す。
記号説明
L ピンゲージの突出量(mm)
θ フェルール軸とフェルール穴軸とがなす角度(°)
Δd 精密位置決めステージの調整確度(mm)
ΔA 精密位置決めステージの調整確度によって起こる仮想円画像のずれ(mm)
Δθ フェルール軸とフェルール穴軸とがなす角度による測定不確かさ(°)
図A.1−精密位置決めステージの調整確度によって起こる測定不確かさの概念図
Δdに関連する測定不確かさΔθは,式(A.1)及び式(A.2)で計算される。
2
arctan
arctan
2
A
A
L
L
θ
∆
∆
∆=
=
················································· (A.1)
tan
A
d
θ
∆=
×∆ ······································································· (A.2)
精密位置決めステージの調整確度によって起こる測定不確かさは,式(A.3)で計算される。
(
)
arctantan
1
dL
θ
θ
θ
∆=
×
+∆
−
··············································· (A.3)
A.3 フェルール保持具の軸とビデオカメラ付き顕微鏡の光軸との角度ずれ
フェルール保持具の軸とビデオカメラ付き顕微鏡の光軸との角度ずれによって起こる測定不確かさを,
図A.2に示す。
6
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
記号説明
L ピンゲージの突出量(mm)
θ フェルール軸とフェルール穴軸とがなす角度(°)
φ フェルール保持具の軸とビデオカメラ付き顕微鏡の光軸との角度ずれ(°)
ΔA フェルール保持具の軸とビデオカメラ付き顕微鏡の光軸との角度ずれによる仮想円画像のずれ(mm)
Δθ フェルール軸とフェルール穴軸とがなす角度による測定不確かさ(°)
注記1 フェルール軸とフェルール保持具の軸とは一致している。
注記2 二点鎖線は,ビデオカメラ付き顕微鏡の光軸を示している。
図A.2−フェルール保持具の軸とビデオカメラ付き顕微鏡の光軸との角度ずれによって起こる
測定不確かさの概念図
φに関連するΔθの測定不確かさは,式(A.4)及び式(A.5)で計算される。
(
)
arctan
2
A
AL
θθ
∆=
−
−∆
···················································· (A.4)
(
)
1cos
2
A
A
ϕ
∆=
−
×
································································ (A.5)
フェルール保持具の軸とビデオカメラ付き顕微鏡の光軸との角度ずれによる測定不確かさΔθは,式
(A.6)で計算される。
(
)
arctancos
tan
θθ
ϕ
θ
∆=−
×
······················································ (A.6)
A.4 ピクセル当たりの画像処理装置の解像度
ピクセル当たりの画像処理装置の解像度によって起こる測定不確かさの最大値を,図A.3に示す。
7
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
記号説明
ΔR ピクセル当たりの画像処理装置の解像度(mm)
図A.3−ピクセル当たりの画像処理装置の解像度によって起こる測定不確かさの概念図
ピクセル当たりの画像処理装置の解像度によって起こる測定不確かさΔθは,式(A.7)で計算される。
2
arctan
arctan
2
R
R
L
L
θ
∆
∆
∆=
=
················································ (A.7)
A.5 フェルール穴の同心度
フェルール軸とフェルール穴軸との同心度によって起こる測定不確かさを,図A.4に示す。
記号説明
L ピンゲージの突出量(mm)
ΔF フェルール軸とフェルール穴軸との同心度(mm)
図A.4−フェルール軸とフェルール穴軸との同心度によって起こる測定不確かさの概念図
フェルール軸とフェルール穴軸との同心度によって起こる測定不確かさΔθは,式(A.8)で計算される。
2
arctan
arctan
2
F
F
L
L
θ
∆
∆
∆=
=
················································ (A.8)
A.6 フェルール穴径とピンゲージ径とのクリアランス
フェルール穴径とピンゲージ径とのクリアランスによって起こる測定不確かさの概念図を,図A.5に示
す。
8
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
記号説明
L ピンゲージの突出量(mm)
ΔC フェルール穴径とピンゲージ径とのクリアランス(mm)
ΔA フェルール穴径とピンゲージ径とのクリアランスによる仮想円画像のずれ(mm)
図A.5−フェルール穴径とピンゲージ径とのクリアランスによって起こる測定不確かさの概念図
フェルール穴径とピンゲージ径とのクリアランスによって起こる測定不確かさΔθは,式(A.9)で計算さ
れる。
2
arctan
arctan
2
C
C
L
L
θ
∆
∆
∆=
=
················································ (A.9)
A.7 測定不確かさのまとめ
ピンゲージの突出量別による測定不確かさの計算値を,表A.1に示す。
表A.1−測定不確かさのまとめの例
単位 °
参照項目
確度
ピンゲージ突出量 L
(mm)
注記
値
単位
5
10
15
20
A.2−精密位置決めステージの調
整確度
0.01
mm
0.000 4
0.000 2
0.000 1
0.000 1
角度ずれ
θ=0.2°の
場合
A.3−フェルール保持具の軸とビ
デオカメラ付き顕微鏡の光軸と
の角度ずれ
0.01
°
3×10−9
3×10−9
3×10−9
3×10−9
A.4−ピクセル当たりの画像処理
装置の解像度
0.3
μm
0.003
0.002
0.001
0.001
−
A.5−フェルール穴の同心度
0.5
μm
0.006
0.003
0.002
0.001
−
A.6−フェルール穴径とピンゲー
ジ径とのクリアランス
1.0
μm
0.011
0.006
0.004
0.003
−
確度の累積(総計)による測定不確かさ
0.021
0.011
0.007
0.005
−
残差平方和による95 %信頼区間における測定不確かさ
0.027
0.013
0.009
0.007
−
9
C 61300-3-54:2020 (IEC 61300-3-54:2019)
参考文献
[1] JIS B 0615-1 製品の幾何特性仕様(GPS)−くさび形体−第1部:角度及び勾配の基準値
JIS C 5965-3-1 光ファイバコネクタ光学互換−第3-1部:シングルモード光ファイバ用直径2.5 mm及
び1.25 mm円筒形全ジルコニア直角PC端面フェルール光学互換標準
JIS C 5965-3-2 光ファイバコネクタ光学互換−第3-2部:シングルモード光ファイバ用直径2.5 mm及
び1.25 mm円筒形全ジルコニア8度斜めPC端面フェルール光学互換標準
JIS C 61300-3-26 光ファイバ接続デバイス及び光受動部品−基本試験及び測定手順−第3-26部:光フ
ァイバとフェルール軸との角度ずれの測定