C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 一般······························································································································· 3
5 試験レベル ······················································································································ 5
6 試験装置及びレベル調整手順 ······························································································ 6
6.1 試験信号発生器 ············································································································· 6
6.2 結合デバイス及び減結合デバイス······················································································ 8
6.3 結合デバイス及び減結合デバイスのEUTポートでのコモンインピーダンスの検証 ···················· 15
6.4 試験信号発生器の設定 ··································································································· 17
7 試験セットアップ及び注入方法 ·························································································· 20
7.1 試験セットアップ ········································································································· 20
7.2 単一のユニットからなるEUT ·························································································· 20
7.3 幾つかのユニットからなるEUT ······················································································· 21
7.4 注入方法及び試験ポイントの選択····················································································· 22
7.5 CDN注入 ···················································································································· 24
7.6 コモンモードインピーダンス要求条件に適合する場合のクランプ注入 ····································· 25
7.7 コモンモードインピーダンス要求条件に適合しない場合のクランプ注入 ·································· 27
7.8 直接注入 ····················································································································· 27
8 試験手順························································································································ 28
9 試験結果の評価 ··············································································································· 28
10 試験報告書 ··················································································································· 29
附属書A(規定)EMクランプ及び減結合クランプ ···································································· 30
附属書B(参考)試験周波数範囲の選択基準············································································· 40
附属書C(参考)試験レベルを選択するための指針 ··································································· 42
附属書D(参考)CDNに関する情報 ······················································································· 43
附属書E(参考)試験信号発生器の仕様に関する情報 ································································· 49
附属書F(参考)大形EUTの試験セットアップ ········································································ 50
附属書G(参考)試験電圧レベルの測定不確かさ ······································································ 53
附属書H(参考)AEのインピーダンスの測定 ·········································································· 64
附属書I(参考)ポート間注入 ······························································································· 68
附属書J(参考)増幅器の圧縮及びノンリニアリティ ································································· 70
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人電気
学会(IEEJ)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正す
べきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS C 61000-4-6:2006は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS C 61000の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 61000-3-2 第3-2部:限度値−高調波電流発生限度値(1相当たりの入力電流が20 A以下の機
器)
JIS C 61000-4-2 第4-2部:試験及び測定技術−静電気放電イミュニティ試験
JIS C 61000-4-3 第4-3部:試験及び測定技術−放射無線周波電磁界イミュニティ試験
JIS C 61000-4-4 第4-4部:試験及び測定技術−電気的ファストトランジェント/バーストイミュニ
ティ試験
JIS C 61000-4-5 第4-5部:試験及び測定技術−サージイミュニティ試験
JIS C 61000-4-6 第4-6部:試験及び測定技術−無線周波電磁界によって誘導する伝導妨害に対する
イミュニティ
JIS C 61000-4-7 第4-7部:試験及び測定技術−電力供給システム及びこれに接続する機器のための
高調波及び次数間高調波の測定方法及び計装に関する指針
JIS C 61000-4-8 第4-8部:試験及び測定技術−電源周波数磁界イミュニティ試験
JIS C 61000-4-11 第4-11部:試験及び測定技術−電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対する
イミュニティ試験
JIS C 61000-4-14 第4部:試験及び測定技術−第14節:電圧変動イミュニティ試験
JIS C 61000-4-16 第4-16部:試験及び測定技術−直流から150 kHzまでの伝導コモンモード妨害に
対するイミュニティ試験
JIS C 61000-4-17 第4部:試験及び測定技術−第17節:直流入力電源端子におけるリプルに対する
イミュニティ試験
JIS C 61000-4-20 第4-20部:試験及び測定技術−TEM(横方向電磁界)導波管のエミッション及び
イミュニティ試験
JIS C 61000-4-22 第4-22部:試験及び測定技術−全電波無響室(FAR)における放射エミッション
及びイミュニティ試験
JIS C 61000-4-34 第4-34部:試験及び測定技術−1相当たりの入力電力が16Aを超える電気機器の
電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対するイミュニティ試験
JIS C 61000-6-1 第6-1部:共通規格−住宅,商業及び軽工業環境におけるイミュニティ
JIS C 61000-6-2 第6-2部:共通規格−工業環境におけるイミュニティ
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日本工業規格 JIS
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(IEC 61000-4-6:2013)
電磁両立性−第4-6部:試験及び測定技術−
無線周波電磁界によって誘導する伝導妨害に対する
イミュニティ
Electromagnetic compatibility(EMC) -Part 4-6: Testing and measurement
techniques-Immunity to conducted disturbances, induced by
radio-frequency fields
序文
この規格は,2013年に第4版として発行されたIEC 61000-4-6を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,周波数範囲150 kHz〜80 MHzの意図する無線周波(RF)送信機から到来する電磁妨害に対
する電気・電子装置の伝導性イミュニティ要求事項について規定する。装置に妨害RF電磁界を結合させ
る伝導ワイヤ及び/又はケーブル(例えば,電源線,信号線又はグラウンド線)を一つももたない装置は,
この規格の適用範囲から除外する。
注記1 電磁放射によって誘導する伝導妨害信号が,関連装置に及ぼす影響を評価する試験方法を,
この規格の中で定めている。これらの伝導妨害のシミュレーション及び測定は,影響の定量
的な決定のためには適切で正確なものとはいえない。影響の定量的分析のために,各種の設
備での結果の適切な再現性を確立することを主要な目的として,この規格を構成している。
この規格の目的は,RF電磁界によって誘起する伝導妨害に対して,電気・電子装置の機能的
イミュニティを評価するための共通の引用規格を確立することである。この規格は,定義し
た現象に対する,装置又はシステムのイミュニティを評価するための方法を規定している。
注記2 この規格は,IEC Guide 107で記載しているように,製品規格を作成するときに用いる基本
EMC規格である。また,製品規格原案作成委員会は,このイミュニティ試験規格を適用する
かどうかを決定する責任をもつ。さらに,適用する場合,適切な試験レベル及び性能評価基
準を決める責任がある。
注記3 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61000-4-6:2013,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 4-6: Testing and measurement
techniques−Immunity to conducted disturbances, induced by radio-frequency fields(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”
ことを示す。
2
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2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 60050-161 EMCに関するIEV用語
注記 対応国際規格:IEC 60050-161:1990,International Electrotechnical Vocabulary. Chapter 161 :
Electromagnetic compatibility(IDT)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 60050-161によるほか,次による。
3.1
擬似手(artificial hand)
平均的な動作条件下での,大地と携帯用電気機器との間の人体のインピーダンスを模擬する電気回路網
(JIS C 60050-161-04-27)。
注記 この構造は,CISPR 16-1-2に従うことが望ましい。
3.2
補助装置,AE(auxiliary equipment)
供試装置(EUT)に,通常動作を行うのに必要な信号を供給するための装置,及びEUTの性能を確認す
るための装置。
3.3
クランプ注入(clamp injection)
クランプ“電流”注入デバイスをケーブルに取り付けることによって行う注入。
3.4
クランプ注入デバイス(clamp injection device)
クランプしたケーブルに“電流”を注入するためのデバイス。クランプ注入デバイスには,電流クラン
プ及びEMクランプがある。
3.4.1
電流クランプ(current clamp)
電流を注入するケーブルを二次巻線とするトランス。
3.4.2
EMクランプ(electromagnetic clamp, EM clamp)
容量結合及び誘導結合を組み合わせた注入デバイス。
3.5
コモンモードインピーダンス(common-mode impedance)
あるポートにおけるコモンモード電流でコモンモード電圧を除した数値。
注記 コモンモードインピーダンスは,そのポートの端子又はシールドと基準面(点)との間に単一
のコモンモード電圧を印加することによって決定できる。その結果生じたコモンモード電流は,
これらの端子又はシールドを流れる全ての電流のベクトル和として測定できる[図8 a) 及び図
8 b) 参照]。
3.6
結合係数(coupling factor)
3
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結合デバイス及び結合・減結合デバイス(結合デバイス及び減結合デバイスの両方の機能を備え合わせ
たもの)のEUTポートで得られる開回路電圧(e.m.f.)を,試験信号発生器の出力で得られる開回路電圧
で除して得られる比。
3.7
結合回路網(coupling network),結合デバイス(coupling device)
エネルギーをある回路から他の回路へ規定のインピーダンスで伝達するための電気回路,及びデバイス。
注記 結合回路網及び減結合回路網は,一つの箱[結合・減結合回路網(CDN)]に統合してもよい
が,別々の回路網としてもよい。
3.8
結合・減結合回路網,CDN(coupling/decoupling network)
結合回路網及び減結合回路網の両方を一つの箱に収めた電気回路。
3.9
減結合回路網(decoupling network),減結合デバイス(decoupling device)
EUTに印加する試験信号がEUTでない他の機器,装置又はシステムに影響を及ぼすのを防ぐための電
気回路,及びデバイス。
3.10
試験信号発生器(test generator)
所要の信号を発生することができる発生器(RF発振器,変調器,減衰器,広帯域電力増幅器及びフィル
タ)。
注記 図3参照。
3.11
起電力,e.m.f.(electromotive force)
能動素子を理想電圧源で表現するときの電圧源の端子における電圧。
3.12
測定結果,Umr(measurement result)
測定装置の電圧の読み。
3.13
電圧定在波比,VSWR(voltage standing wave ratio)
線路に沿った電圧の最大振幅と隣接する最小振幅との比。
4
一般
この規格の対象となる妨害源は,通常,意図するRF送信機から到来し,設置している装置に接続する
ケーブルの全長にわたって作用する電磁界である。妨害を受ける装置は,ほとんどが大きなシステムの一
部であるが,その寸法は,妨害信号の波長に比べて短いと仮定できる。EUTの入出力線(例えば,電源線,
通信線,インターフェースケーブル)は,意図的及び非意図的信号に対して,受動的な受信アンテナ回路
網及び信号伝導路として働く。
ケーブルネットワークでは,感受性のある装置はその装置を“通り抜ける”電流にさら(曝)される。
装置に接続するケーブルシステムは,共振モード(λ/4又はλ/2の開放形又は折り返しダイポール)にある
と仮定でき,それらは基準グラウンド面に対して150 Ωのコモンモードインピーダンスをもつ結合デバイ
ス及び減結合デバイスによって代表される。二つの150 Ωのコモンモードインピーダンス(一つはRF信
4
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号源で,もう一つは電流の帰路)接続によって,EUTを試験することができる。
この試験方法では,意図するRF送信機から到来する電磁界を模擬した妨害源にEUTをさら(曝)す。
これらの妨害電磁界(電界E及び磁界H)は,図1 a) の中で示す試験系によって発生する電圧及び電流に
よる近傍電磁界で近似できる。
結合デバイス及び減結合デバイスを用いて,一つのケーブルに妨害信号を印加するとき他のケーブルに
は印加しないという方法[図1 b) 参照]は,全てのケーブルにレベル及び位相の異なった電圧を同時に印
加するという現実の状況を近似しているにすぎない。
結合デバイス及び減結合デバイスの特性は,6.2に規定する。この特性を満足する任意の結合デバイス及
び減結合デバイスを利用することができる。附属書Dの中の結合・減結合回路網(CDN)は,市販の回路
の一例である。
Zce
:CDNのコモンモードインピーダンス, Zce=150 Ω
U0
:試験信号発生源の電圧(起電力)
Ucom
:EUTと基準グラウンド面との間のコモンモード電圧
Icom
:EUTを通るコモンモード電流
Jcom
:EUTの伝導表面における電流密度又はEUTの他の導体における電流
E,H
:電界及び磁界
注記 図中の端子A及びBに接続した100 Ωの抵抗器は,CDNに含む。左側の端子Aは,50 Ω負荷で接続し,
かつ,右側の端子Bは試験信号発生器の出力端子に接続する。
a) EUTのケーブルのコモンモード電流によるEUT近傍の電磁界を示す図(概念図)
図1−RF伝導妨害に対するイミュニティ試験
5
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CDNを用いるイミュニティ試験のためのセットアップ図
注入クランプを用いるイミュニティ試験のためのセットアップ図
T
:終端 50 Ω
T2
:固定減衰器(6 dB以上)
CDN
:結合・減結合回路網
注入クランプ :電流クランプ又はEMクランプ
h
:CDNに接続するケーブルの高さ
L
:CDNとEUTとの間の距離,注入クランプとEUTとの間の距離
L2
:注入クランプとAEとの間の距離
b) RF伝導妨害に対するイミュニティ試験のためのセットアップ図
図1−RF伝導妨害に対するイミュニティ試験(続き)
5
試験レベル
150 kHz〜80 MHzの周波数範囲におけるRF送信機からの電磁波によって誘導される伝導妨害に対して,
この規格に従った試験を行う。
実効値で示した無変調妨害信号の開放端試験レベル(起電力)は,表1による。
6
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表1−試験レベル
周波数範囲 150 kHz〜80 MHz
レベル
起電力(e.m.f.)
U0
V
U0
dB(μV)
1
1
120
2
3
129.5
3
10
140
X a)
特殊
注a) “X”は,オープンレベルである。レベルは,個別装置の仕様書に明記しな
ければならない。
試験レベルは,結合デバイスのEUTポートで設定する(6.4参照)。この信号は,実際の脅威を模擬する
ために1 kHzの正弦波による変調度80 %の振幅変調を行う。振幅変調した場合の効果を図2に示す。試験
レベルを選択するための指針は,附属書Cに示す。
注記1 JIS C 61000-4-3もこの規格と同様に,放射電磁エネルギーに対する電気・電子装置のイミュ
ニティを確立するための試験方法を規定している。JIS C 61000-4-3は,80 MHz以上の周波
数を対象とする。製品規格は,これら二つの試験方法での適用領域の境界を80 MHz未満又
は以上の周波数に変更してもよい(附属書B参照)。
注記2 製品規格は,代替の変調方式を選択してもよい。
図2−試験レベル1に対する結合デバイスのEUTポートに発生する開回路波形
6
試験装置及びレベル調整手順
6.1
試験信号発生器
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試験信号発生器は,適切な注入点で所要のレベルの妨害信号を各結合デバイスの入力ポートに供給する
ための全ての装置及び部品を含む。代表的には次に示す項目のもので構成し,これらは個々に独立になっ
ていてもよいし,一つ又は幾つかに統合してもよい(3.10及び図3参照)。
− RF信号発生器(G1) 対象の周波数帯の信号を発生でき,1 kHzの正弦波による変調度80 %の振幅
変調ができる。信号発生器は,例えば,周波数,振幅若しくは変調度を手動で制御し,又はRFシン
セサイザの場合,周波数に依存するステップの幅及び滞在時間(dwell time)をプログラムで設定でき
なければならない。
− 可変減衰器(T1) 妨害試験信号源出力レベルを制御するための,適切な周波数特性をもつRF信号
減衰器(通常0 dB〜40 dB)。T1はRF信号発生器に組み込んでもよい。
− RFスイッチ(S1) EUTのイミュニティ試験中に妨害試験信号をON/OFFできる。RF信号発生器に
組み込んでもよい。
− 広帯域電力増幅器(PA) RF信号発生器の出力電力が不十分なとき,その信号を増幅するために用
いる。
− ローパスフィルタ(LPF)及び/又はハイパスフィルタ(HPF) 幾つかの種類のEUT(例えば,RF
受信機)では高調波(高次又は副次)による干渉を避けるために用いる場合がある。これらが必要な
場合には,PAとT2との間に挿入する。
− 固定減衰器(T2) 十分な電力定格をもつ固定減衰器(6 dB以上)。T2は結合デバイスの不整合に起
因する電力増幅器に対するVSWRを減らすために用いる。
注記 T2は,CDNの中に組み込んでもよく,広帯域電力増幅器の出力インピーダンスがいかなる負
荷条件の下でも規定の範囲内にある場合,取り付けなくてもよい。
試験信号発生器の特性は,表2による。
表2−試験信号発生器の特性
出力インピーダンス
50 Ω,VSWRは1.5未満
高調波及びひずみb)
結合デバイスのEUTポートにおいて,150 kHz〜80 MHzの周
波数帯域の全ての不必要な信号(スプリアス)は搬送波レベ
ルに比べ15 dB以上小さくなければならない。また,アンプ
の出力を直接測定した場合も同様に15 dB以上小さくなけれ
ばならないa) 。
振幅変調
内部変調又は外部変調
変調信号は,1 kHz±0.1 kHzの正弦波
変調度m(%)は,次の式による
)
20
5
80
(
−+
=
m
%
ここに
min
,p-p
max
,p-p
min
,p-p
max
,p-p
100
U
U
U
U
m
+
−
×
=
(記号は,図2参照。)
出力レベル
試験レベルを満足するために十分な大きさ
(附属書Eも参照)
注a) 結合デバイスとして電流クランプを用いる場合,試験ジグのEUT又はAEいずれか
の側を測定することによってスプリアスの検証(搬送波レベルに比べ15 dB以上)
ができる。
b) 高調波及びひずみは,出力レベルの1.8倍の無変調連続波で測定できる。
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G1 :RF信号発生器
T1 :可変減衰器
PA :広帯域電力増幅器
T2 :固定減衰器(6 dB以上)
LPF/HPF:ローパスフィルタ及び/又はハイパスフィルタ(任意)
S1 :RFスイッチ
図3−試験信号発生器の概念図
6.2
結合デバイス及び減結合デバイス
6.2.1
一般
結合デバイスは,EUTに接続する各種のケーブルへ,EUTポートにおける規定のコモンモードインピー
ダンスで,全周波数範囲にわたり妨害信号を適切に結合(注入)するために用いる。減結合デバイスは,
結合した妨害信号によって試験の対象としないデバイス,装置及びシステムが影響を受けるのを防ぐため
に用いる。
結合デバイス及び減結合デバイスは,CDN又はEMクランプとして一つの箱に組み込むことができるが,
幾つかの部分に分けて構成することもできる。
試験の再現性及びAEの保護のための望ましい結合デバイス及び減結合デバイスは,CDN(6.2.2参照)
である。結合デバイスと減結合デバイスとを組み合わせた場合の主なパラメータである,EUTポートから
見たコモンモードインピーダンスは,表3による。CDNが適切でない,又は入手不可能な場合,他のデバ
イスを用いた注入方法を使うことができる。適切な注入方法の選択は,7.4に示す。ただし,他のデバイス
を用いた注入方法は,その電気的特性のために表3のパラメータの要求を満たすことは容易ではない。
注記1 目的の信号に対して,CDN内部の減衰によって生じる影響が容認できない場合,CDNの使
用は適切ではない。
表3−結合デバイスと減結合デバイスとを組み合わせた場合の主なパラメータ
パラメータ
周波数帯
0.15 MHz〜24 MHz
24 MHz〜80 MHz
|Zce|
150 Ω±20 Ω
150 Ω
Ω
−+45
60
注記2 Zceの位相(偏角),及びEUTポートとAEポートとの間の減結合係数は,共に規定していな
い。これらの係数は,|Zce|の許容差が,AEポートと基準グラウンド面との間を短絡及び開放
した条件で満たされるという要求事項(6.3.1参照)に含まれる。
注記3 クランプの詳細は,附属書A参照。
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50 Ω同軸線
電源,信号又はグラウンドケーブル
50 Ω 終端器
150 Ω−50 Ω変換アダプタ
入出力ポート間に100 Ωの直列抵抗器を入れた箱
50 Ω系信号源
50 Ω系測定装置,
例えば,選択電圧計
50 Ω系10 dB減衰器
EUTポート,入力ポート及びAEポートを
もつ結合・減結合回路網(CDN)
固定減衰器(6 dB以上)
これらの記号は,他の図にも用いる。
a) セットアップの説明に用いる記号の一覧
図4−結合及び減結合の原理
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詳細は,6.2.4参照。
b) 遮蔽ケーブルに対する直接注入の原理
c) CDNを用いた場合の無遮蔽ケーブルに対する結合の原理
図4−結合及び減結合の原理(続き)
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例 一般的にはCdecは47 nF(無遮蔽ケーブル),150 kHzのときのLは,280 μH以上
低周波数インダクタ:フェライトトロイダルコアに17回巻,材料:ニッケル亜鉛フェライト,
μR=1 200
高周波数インダクタ:2個〜4個のフェライトトロイダルコア(チューブ),材料:ニッケル亜鉛フェライト,
μR=700
d) 減結合の原理
図4−結合及び減結合の原理(続き)
6.2.2
結合・減結合回路網(CDN)
6.2.2.1
一般
CDNは,一つの箱の中に結合回路及び減結合回路を組み込んだものである。CDNの代表的な原理は,
図4のc) 及びd) に示す。附属書Dで記載する異なる種類のCDNの選択方法を表4に示す。選択したCDN
は目的の信号に過剰に影響を及ぼしてはならない(図12参照)。信号への影響に対する制限を,製品規格
の中で規定することができる。
表4−CDNの選択方法
線種
例
用いるCDNの種類
電源(交流及び直流)
及び
接地
商用電源,
工業用施設の直流電源,
接地
CDN-Mxa)
(図D.2参照)
遮蔽ケーブル
同軸ケーブル
LAN及びUSBの接続に用いるケーブル
オーディオシステムに用いるケーブル
CDN-Sxa)
(図D.1参照)
無遮蔽平衡線路
ISDN回線
電話回線
CDN-Txa)
(図D.4,図D.5,図D.7及び附属書H参照)
無遮蔽不平衡線路
上記に属さないその他の線
CDN-AFxa)又はCDN-Mxa)
(図D.3及び図D.6参照)
注a) xは線数。
6.2.2.2
電源線用CDN
CDNは,全ての電源線に接続するのが望ましい。ただし,より大きい電力システム(電流16 A以上)
及び/又は複合電源システム(多相又は各種の並列の供給電圧)に対しては,その他の注入方法を選択し
てもよい。
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妨害信号は,CDN-Ml(単線),CDN-M2(2線),CDN-M3(3線)又はこれらと同等の回路網(附属書
D参照)を用いて電源線に結合しなければならない。同様の回路網は,三相電源にも適用できる。この結
合回路は,図4 c) に示す。
CDNの性能は,EUTに流れる電流による磁性体の飽和によって過度に低下してはならない。CDNは,
可能な限り順方向電流の磁化効果が逆方向電流による効果で確実に相殺できるように構成するのが望まし
い。
実際の設置状態で,電源線を1線ずつ別々の経路で配線している場合,各々にCDN-Mlを用い,更に全
ての入力ポートを別々に扱わなければならない。
EUTが機能接地端子を備えている場合(例えば,RF機器又は漏れ電流が大きい機器)は,次に示す条
件で基準グラウンド面に接続する。
− EUTの特性又は仕様で,CDN-Ml回路網を接続できる場合は,CDN-Mlを用いる。この場合,電源は,
CDN-Mxを通して供給する。
− EUTの特性又は仕様(例えば,RF又は他の理由で)によって,CDN-Ml回路網をEUTの接地端子と
接続できない場合は,接地端子は基準グラウンド面に直接接続する。この場合,保護接地導体による
RFでの短絡を防ぐために,EUTに電源を供給するのに用いる回路網は,CDN-M3回路網の使用を避
け,CDN-M2回路網を用いる。装置が既にCDN-Ml又はCDN-M2回路網を通して電源を供給してい
る場合は,その状態にしておく。
− 三相電源の場合においても,適切なCDN-Mx回路網の使用に関して,上記二つの条件と同様に扱う。
警告 CDNの中のコンデンサは,充電部に接続している。この結果,大きい漏れ電流が発生する可能
性があるため,安全上,CDNを基準グラウンド面に接続する(CDNの構造によっては,基準
グラウンド面に置くことで実現できる場合がある。)。
6.2.2.3
無遮蔽平衡線路用のCDN
無遮蔽の平衡ケーブルに対する妨害信号の結合及び減結合は,次のとおりCDN-T2,CDN-T4又は
CDN-T8を用いる。図D.4,図D.5及び図D.7にこれらの回路の例を示す。
− 一対の平衡線(2線)をもつケーブルはCDN-T2
− 二対の平衡線(4線)をもつケーブルはCDN-T4
− 四対の平衡線(8線)をもつケーブルはCDN-T8
目的の周波数範囲において適切であり,かつ,6.2.1の要求事項に適合する場合は,他のCDN-Txを用い
てもよい。例えば,CDN-Txのディファレンシャルモードからコモンモードへの変換損は,敷設している
ケーブル又はケーブルを接続しているEUTの指定の変換率よりも大きな値であることが望ましい。変換率
の指定値がケーブルとEUTとで異なる場合は,小さいほうの値を適用する。多対平衡ケーブルに対しては,
クランプ注入がより適している。
6.2.2.4
無遮蔽不平衡線路用のCDN
無遮蔽の不平衡線路への妨害信号の結合及び減結合は,一対の場合は,図D.3に示すCDNを,四対の
場合には,図D.6に示すCDNを用いることができる。
無遮蔽不平衡線路に対して,CDNが適用できない場合には,図12に従って注入方法を決定する。
6.2.2.5
遮蔽ケーブル用のCDN
遮蔽ケーブルへの妨害信号の結合及び減結合は,CDN-Sxを用いる。図D.1に同軸ケーブル用のCDN
(CDN-S1)の例を示す。
妨害信号の結合にCDN-Sxを用いて遮蔽ケーブルを試験する場合には,遮蔽の両端を接地する。この条
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件が満足できない場合には,そのケーブルは無遮蔽ケーブルとして取り扱うことが望ましい。
6.2.3
クランプ注入デバイス
6.2.3.1
一般
クランプ注入デバイスを用いる場合,結合と減結合とは,別のデバイスを用いる。結合は,クランプ注
入デバイスで行い,コモンモードインピーダンスの確立及び減結合機能は,AEで実現する。
このように,AEは,結合デバイス及び減給合デバイスの一部となる(図5参照)。クランプ注入デバイ
スを用いる場合,AEにもEUTに注入した電流が流れるので,適用する試験レベルに対応した電流に耐え
ることが望ましい。
注記1 クランプ注入法を,AEのコモンモードインピーダンス要求事項に適合することができない
状態で用いる場合,Zceの要求事項に適合しないことがある。ただし,7.4.2に従った場合には,
その注入クランプは受容可能な試験結果を提供できる。
注記2 EMクランプは,10 MHzを超える周波数では,幾らかの減結合機能をもつ。附属書A参照。
クランプ注入デバイスの適切な選択及び適用手順は,7.6による。
EMクランプ又は電流クランプが7.6の要求事項に適合していない場合は,7.7に規定する手順に従う。
試験電圧は,6.4.2と同じ方法で設定する。さらに,結果として生じる電流を監視し,Imax(7.7参照)に制
限しなければならない。この手順においては,より低いコモンモードインピーダンスを用いてもよい。た
だし,コモンモード電流は,150 Ωを負荷としたときに流れる電流を超えてはならない。
AE及びEUTに接続したCDN,例えば,接地したCDN-M1又はCDN-M3は,その入力ポートを50 Ωで終端しなけ
ればならない(7.7参照)。
図5−クランプ注入法における結合及び減結合のセットアップ図
6.2.3.2
電流クランプ
電流クランプは,EUTに接続したケーブルへの誘導結合を実現する。例えば,5:1の巻数比で変換した
コモンモード直列インピーダンスは,AEによって実現した150 Ωに比べて極めて小さいため無視できる。
この場合,試験信号発生器の出力インピーダンス(50 Ω)は,2 Ωに変換される。その他の巻数比を用い
てもよい。
電流クランプの挿入によって発生する試験ジグの伝送損失は,1.6 dBを超えてはならない。伝送損失検
証のための回路の一例を,図7に示す。
注記1 性能検証は次の二つの手順で実施できる。第一の手順では,電流クランプがない状態でその
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電圧を記録する。第二の手順では,電流クランプを挿入し,その入力ポートを50 Ω負荷で終
端した状態で,その電圧を測定する。この二つの測定電圧の違いが上記のように1.6 dBを超
えないことを確認する。
電流クランプへ印加する信号レベルは,試験の前に設定する。試験レベルの設定手順は,6.4.2による。
また,レベル設定セットアップの回路例を図6に示す。
電流クランプを使う場合は,結合デバイスのEUTポートで,電力増幅器によって基本信号レベル以上の
高調波が,発生しないことが望ましい。
注記2 結合容量を最小にするために,クランプの中央を通してケーブルを配置することが一般的に
必要である。
図6−150 Ω試験ジグ内のレベル設定セットアップの回路例
図7−電流クランプの性能検証の回路例
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6.2.3.3
EMクランプ
EMクランプは,EUTに接続したケーブルに対して容量結合及び誘導結合の両方を実現する。EMクラ
ンプの構造及び性能は,附属書Aによる。
6.2.4
直接注入デバイス
直接注入を用いる場合には,妨害信号を試験信号発生器から100 Ωの抵抗器を通して,遮蔽ケーブル端
のグラウンド接続の有無にかかわらず,その遮蔽ケーブルに注入する。AEと注入点との間に,減結合デ
バイス(6.2.5参照)をできる限り注入点[図4 b) 参照]に近づけて挿入する。減結合量を増加し回路網
を安定させるため,グラウンド接続は,直接注入デバイスの入力ポートの遮蔽から基準グラウンド面へ接
続する。
遮蔽部分に直接接続する場合には,良好に接続することで信頼できる試験結果が得られる。
6.2.5
減結合回路網
通常,減結合回路網は,全周波数範囲にわたって高いインピーダンスを作り出すために,幾つかのイン
ダクタで構成する。減結合回路網のインピーダンスは,用いるフェライト材料によって決まり,更に周波
数150 kHzにおいては280 μH以上のインダクタンスが必要である。リアクタンスは,周波数24 MHzまで
は260 Ω以上,周波数24 MHz以上では150 Ω以上を維持しなければならない。このリアクタンスは,フ
ェライトのトロイダルコア[図4 d) 参照]に巻線を多く巻くか,又はケーブルに多くのフェライトのトロ
イダルコア(通常,クランプオンチューブとして)を取り付けることによって実現できる。
注記 クランプの仕様を附属書Aに示す。
附属書Dに記載するようなCDNは,この規格の他の場所で規定がない場合,無負荷状態の入力ポート
をもつ減結合回路網として用いることができる。CDNをこの方法で用いる場合は,上記の要求事項を満た
さなければならない。
減結合回路網は,試験のために選択したケーブルだけではなく,EUT及び/又はAEに接続する全ての
ケーブルに取り付けなければならない。ただし,7.3の場合におけるEUT間の接続ケーブルを除く。
6.3
結合デバイス及び減結合デバイスのEUTポートでのコモンインピーダンスの検証
6.3.1
一般
結合デバイス及び減結合デバイスは,EUTポートから見たコモンモードインピーダンス|Zce|によって特
徴付けている。その正確な値は,試験結果の再現性を保証する。結合デバイス及び減結合デバイスのコモ
ンモードインピーダンスは,図8に示すセットアップを用いて検証する。
結合デバイス,減結合デバイス及びインピーダンス基準面[図8 a)]は,基準グラウンド面上に置く。
基準グラウンド面の寸法は,その全ての辺がセットアップした状態で投影した外形寸法よりも0.2 m以上
大きくする。
インピーダンス基準点は,図8 a) に例示するように30 mmと等しいか又はより短い接続でCDNのEUT
ポートと接続する。インピーダンス基準面にあるコネクタから見たコモンモードインピーダンスの大きさ
を,測定する。
CDNは,入力ポートを50 Ω負荷で終端し,AEポートを図8 b) で示すようにコモンモードで順次短絡
及び開放条件としたとき,表3のインピーダンス規定に適合しなければならない。この要求事項は,十分
な減衰を保証するとともに,AEのセットアップの影響(例えば,その入力ポートの開放又は短絡)を,
軽微なものとなるようにしている。
クランプ注入又は直接注入を用いる場合,EUTに接続した各種のAEの組合せについて,コモンモード
インピーダンスを検証することは非現実的である。クランプ注入の場合,通常,7.6の手順に従うことで十
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分である。他の全てのクランプ注入の場合には,7.7に規定する手順を用いる。直接注入の場合,通常,7.8
の手順に従うことで十分である。
6.3.2
150 Ω−50 Ω変換アダプタの挿入損失
試験の前に試験信号発生器を設定する場合は,試験レベルは150 Ω系コモンモードインピーダンス環境
の中で確かめなければならない。これは,図8 c) に示すように適切なコモンモードポイントを150 Ω−50
Ω変換アダプタを通して50 Ω測定デバイスと接続することによって達成できる。アダプタの構造は,図8
d) 及び図8 e) に示す。
変換アダプタは,投影した外形寸法よりも全ての辺で0.2 m以上大きい基準グラウンド面の上に置く。
挿入損失は,図8 c) の原理に従って測定する。この値は,9.5 dB±0.5 dB(50 Ωのシステムで測定した場
合に直列に付加したインピーダンスに起因する理論値は9.5 dB)の範囲でなければならない。受信器の入
力及び信号発生器の出力で,適切なVSWR(1.2以下が望ましい)をもつ減衰器を推奨する。
− 基準グラウンド面の寸法は,その全ての辺が結合デバイス,減結合デバイス及び他の部品の投影した外見寸法
よりも0.2 m以上大きくなければならない。
− 同軸コネクタは,水平にEUTポートへ接続しなければならない。
− EUTポートの高さhは各CDNに応じて,30 mm〜100 mmの高さで変えてよい。特に大電流用CDNは,基準グ
ラウンド面からより高い位置にEUTポートをもつ。
− コネクタ面(同軸コネクタをもつ)は,h=30 mmの場合100 mm×100 mm,他の高さhの場合150 mm×150 mm
とする。
− 両方のコネクタ面は,銅,真ちゅう又はアルミニウムで作り,かつ,RF的に良好に接続していなければならな
い。
a) 結合デバイス及び減結合デバイスのインピーダンス特性を確認するためのセットアップの例
図8−結合デバイス,減結合デバイス及び150 Ω−50 Ω変換アダプタの
基本特性を確認するための構成及び部品の詳細
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インピーダンスの要求事項は,スイッチSを開放したとき及び閉じたときの両方に適合しなければならない(6.3参
照)。
b) 結合デバイス及び減結合デバイスのZceを確認するためのセットアップの原理
挿入損失=Umr(スイッチ位置2)−Umr(スイッチ位置1)
dB dB(μV) dB(μV)
c) 二つの150 Ω−50 Ω変換アダプタの挿入損失を測定するためのセットアップの原理
注記 低インダクタンスの抵抗器:
定格電力は2.5 W以上
注記 同軸コネクタ面は図8 a) と同じ,ただし,100 Ωの低
インダクタンスの抵抗器を付加
d) 150 Ω−50 Ω変換アダプタの回路
e) 150 Ω−50 Ω変換アダプタの構造図の例
(150 mm×150 mmの例)
図8−結合デバイス,減結合デバイス及び150 Ω−50 Ω変換アダプタの
基本特性を確認するための構成及び部品の詳細(続き)
6.4
試験信号発生器の設定
6.4.1
一般
無変調での試験レベルを正しく設定するために,6.4.2の手順を適用する。試験信号発生器,結合デバイ
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ス,減結合デバイス及び150 Ω−50 Ω変換アダプタは,6.1,6.2.1及び6.3.1の要求事項に適合したものを
用いる。6.4.2の手順に従って得た測定結果に対する測定不確かさを,附属書Gに示す。
レベル設定に次の二つの方法を用いることができる。
− 増幅器出力電力(方向性結合器を用いて測定する進行波電力)を測定することによって,試験信号発
生器の出力電力を決めることができる。
− 試験装置(特に増幅器)の安定性が保証できる限り,レベル設定時に記録したRF信号発生器の設定
値を用いて,増幅器出力電力の測定値を用いることなく,試験信号発生器の出力電力を決めることが
できる。
6.4.2
結合デバイスのEUTポートにおける出力レベル設定
試験信号発生器は,結合デバイスの入力ポートに接続する。結合デバイスのEUTポートは,150 Ω−50 Ω
変換アダプタを通して,入力インピーダンス50 Ωの測定装置にコモンモードで接続する。結合デバイスの
AEポートは,コモンモードで50 Ωで終端した150 Ω−50 Ω変換アダプタを負荷として接続する。全ての
結合デバイス及び減結合デバイスのセットアップは,図9 c) に示す。
注記1 直接注入では,AEポート側で基準グラウンド面にシールドが接続しているので,AEポート
に150 Ωの負荷は必要ない。
注記2 クランプ注入では,一般に電流クランプは双方向のためEUTポート及びAEポートの区別が
ない。これらの装置は図6のジグを用いて校正を行う。
警告 試験信号発生器の設定の間,必要以外の(図9参照)結合デバイス及び減結合デバイスのEUT
ポート,並びにAEポートへの全ての接続は,短絡回路状態及び測定装置の破壊を避けるため
に,外しておかなければならない。
上記のセットアップ及び次の測定方法を用いて,測定装置での読取りが次手順のUmrとなるように試験
信号発生器を調節しなければならない。
出力レベル設定は,各結合デバイスについて,次の手順で行う。
a) 150 Ω−50 Ω変換アダプタの出力ポートでUmrに等しい電圧値になるように,結合デバイスに無変調
の進行波電力を加え,RF信号発生器の出力レベルPgen,及び/又は増幅器の出力ポートでの進行波電
力Pfor,並びに150 Ω−50 Ω変換アダプタの出力ポートの電圧Umrを記録する。
b) 周波数を,現周波数の1 %分増やす。
c) 次の周波数が試験周波数範囲の最高周波数(例 80 MHz)を超えるまで,a) 及びb) を順番に繰り返
す。
d) 手順a) で得られたRF信号発生器の出力レベルPgen,進行波電力Pfor及び電圧Umrの記録したレベル
を用いて,結合デバイスのEUTポートで要求の電圧を発生させるために必要な進行波電力及び/又は
RF信号発生器の出力レベルを計算する。
e) 増幅器が飽和していないことを確認するために,手順d) で得たデータを用いて,希望の試験レベル
Umrが発生するように試験信号発生器を調節する。用いる最も高い試験レベルで次の手順1) から手順
4) を行う。
1) RF信号発生器の出力レベルを5.1 dB増やす。
2) 結合デバイスに供給する新しい出力レベル,又は150 Ω−50 Ω変換アダプタの出力ポートでの電圧
を記録する。
3) 対数表示で進行波電力の差分,又は電圧の差分を計算する。
4) 差分が3.1 dB〜7.1 dBの場合,増幅器は許容範囲にあり,選択した試験レベルでの試験に十分な試
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験システムである。差分が3.1 dB未満,又は7.1 dBよりも大きい場合,増幅器はノンリニアであり,
試験には適さない。
試験発生器の圧縮点及び増幅器のノンリニアリティについての情報は,附属書Jに示す。
手順a) で電圧Umrは,次のように調節する。
リニア表示では,
−+
=
%
16
%
19
6/
0
mrU
U
対数表示では,
dB
5.1
dB
6.
15
0
mr
±
−
=U
U
注記3 U0は,表1の中で規定する試験電圧であり,Umrは,3.12及び図9で定義する測定電圧であ
る。試験誤差を最小にするために,試験信号発生器の出力レベルを,U0によって設定するの
ではなく,150 Ω負荷(例えば,150 Ω−50 Ω変換アダプタ及び50 Ω終端を用いた状態で)
の設定値Umrで設定する。
注記4 係数6(15.6 dB)は,試験レベルを起電力値で規定したことによって生じる。整合負荷レベ
ルは起電力レベルの半分であり,更に50 Ωの測定装置によって終端した150 Ω−50 Ω変換ア
ダプタによって1/3に分圧される。
注記5 増幅器に出力電力調節機能がない試験装置の場合には,各結合デバイス及び各試験レベルに
ついて,出力レベル設定を繰り返して行う。試験装置が増幅器出力電力設定,又は附属書J
の増幅器リニアリティを満足する場合,6.4.2の手順は各結合デバイスについて最も高い試験
レベルについてだけ行う。
試験信号発生器の設定における制御パラメータ(ソフトウェアのパラメータ,減衰器設定など)は記録
し,その値を試験に用いる。
a) 無遮蔽ケーブルのコモンモードポイントの定義
b) 遮蔽ケーブルのコモンモードポイントの定義
図9−レベル設定のためのセットアップ
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結合デバイス及び減結合デバイスの例:
− CDN
− 直接注入回路網(減結合付き)
− クランプ注入器(EMクランプ)
注a) 図中の150 Ω負荷,例えば,50 Ωで終端した150 Ω−50 Ω変換アダプタは,無遮蔽ケーブルだけに適用す
る。遮蔽ケーブルの場合には,その遮蔽がAE側で基準グラウンド面に接続しているので不要である。
c) 結合デバイス及び減結合デバイスのEUTポートにおけるレベル設定のためのセットアップ
図9−レベル設定のためのセットアップ(続き)
7
試験セットアップ及び注入方法
7.1
試験セットアップ
EUTは,基準グラウンド面から高さ0.1 m±0.05 mの絶縁支持台上に設置する。基準グラウンド面から
の高さ0.1 m±0.05 mの非導電性のローラ又はキャスタを絶縁支持台の代わりに用いることができる。EUT
から出る全てのケーブルは,基準グラウンド面上30 mm以上の高さとする。
パネル,ラック又はキャビネットに取り付けるように設計している装置は,取り付けた状態で試験する。
試験のためにEUTを支持する必要がある場合,この支持材料は非金属で,非伝導性を用いる。装置のグラ
ウンドは,製造業者の設置説明書に従う。
結合デバイス及び/又は減結合デバイスを取り付けるときは,それらをEUTから0.1 m〜0.3 mの距離に
配置する(この規格ではこの距離をLと表記する。)。この距離は,基準グラウンド面上のEUT投影面から
結合デバイス及び/又は減結合デバイスまで,水平方向に寸法を測る(図5,図10及び図11を参照)。7.2
〜7.8に,より詳細な情報を提供している。
注記 距離Lは,EUTの全ての面で同じである必要はなく,0.1 m〜0.3 mの間にあればよい。
附属書Fに大形EUTの試験セットアップ例を示す。
7.2
単一のユニットからなるEUT
EUTは,基準グラウンド面から高さ0.1 mの絶縁支持台の上に置く。卓上形装置は,基準グラウンド面
を机の上に置いてもよい(図10参照)。
試験する全てのケーブルに,結合デバイス及び減結合デバイスを挿入する(7.4.3参照)。結合デバイス
及び減結合デバイスは,EUTから0.1 m〜0.3 mの距離で基準グラウンド面上に直接接触して配置する。結
合デバイス及び減結合デバイスとEUTとの間のケーブルは,可能な限り短くし,束ねたり,巻いたりして
はならない。これらのケーブルの基準グラウンド面上の高さは,30 mm以上とする。
EUTとAEとを結ぶインターフェースケーブルは,できる限り短くすることが望ましい。
EUTに他のグラウンド端子がある場合で,許容できる場合,これをCDN-M1を通して基準グラウンド
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面に接続する(6.2.2.2参照。すなわち,そのときにはCDN-M1のAEポートは基準グラウンド面に接続し
ている。)。
EUTにキーボード又は手で操作する附属品が付いている場合,擬似手はキーボード又は附属品の上に置
き,基準グラウンド面と接続する。
製品規格に従い,例えば,通信装置,モデム,プリンタ,センサなど,EUTに指定された動作をさせる
ために必要なAE,及び/又はデータ転送及び機能の評価を確実に行うために必要なAEを,結合デバイス
及び減結合デバイスを通してEUTに接続する。試験するケーブルの数は可能な限り制限してもよいが,あ
らゆるタイプの物理的なポートに注入することが望ましい。
注a) EUTは,試験用装置を除く全ての金属物から0.5 m以上離さなければならない。
b) 注入に用いないCDNのうち一つだけは,50 Ωで終端して,帰路を一つにする。他の全てのCDNは,減結合回
路網として構成する。
図10−単一のユニットからなるEUTの試験セットアップの例(上面図)
7.3
幾つかのユニットからなるEUT
相互に接続する幾つかのユニットで構成する装置は,次の方法のうちの一つを使って試験する。
− 推奨方法:各ユニットは,それぞれ1個のEUT(7.2参照)とみなす。試験する場合は,そのうちの
一つをEUTとみなし,それ以外はAEとする。結合デバイス及び減結合デバイス(又はCDN)を,
EUTとしたユニットのケーブル(7.4.1参照)に取り付ける。試験ごとにEUTとみなすユニットを入
れ替えて,全ての個々のユニットに応じて順次試験する。
− 代替方法:常に1 m以下の短いケーブルによって互いに接続し,EUTの一部として試験できる幾つか
のユニットは一つのEUTとみなすことができる。これらのケーブルはシステムの内部ケーブルとみな
し,この相互接続ケーブル上では伝導性イミュニティ試験を実施しない。図11参照。
EUTの一部分であるようなユニットは,全て絶縁支持台の上に,お互いに接触することなしにできるだ
22
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け近くに置く。これらのユニットの相互接続ケーブルもまた,絶縁支持台の上に置く。その他の全てのケ
ーブルは,7.4〜7.8に従って試験する。
EUTは,試験と無関係な全ての金属物から0.5 m以上離す。
注a) 注入に用いないCDNのうち一つだけは,50 Ωで終端して,帰路を一つにする。他の全てのCDNは,減結合回
路網として構成する。
b) EUTに附属する相互接続ケーブル(1 m未満)は,絶縁支持台の上に置く。
図11−幾つかのユニットからなるEUTにおける試験セットアップの例(上面図)
7.4
注入方法及び試験ポイントの選択
7.4.1
一般
結合デバイス及び減結合デバイスに取り付けるケーブルの形式及び数を選択するために,典型的な設置
条件における物理的な形状,例えば,ケーブルの適切な長さを考慮する。
全ての試験において,CDNの内部ケーブル長を含むEUTとAEとの間のケーブル長は,EUTの製造業
者が指定する最大長を超えてはならない。
7.4.2
注入方法
図12に,注入方法を選択するためのフローチャートを示す。
23
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注a) 表4参照。
b) 6.2.4参照。
図12−注入方法の選択フローチャート
特に指定のない場合,試験のために選択したケーブルを含むEUTは,標準的な適用に沿った方法で構成,
設置,配置及び操作する。この規格にないCDNであっても,この規格の要求事項に適合する場合,用い
てもよい。
EUTから出ている幾つかのケーブルが,10 mを超える長さで極めて近接しているか又はEUTから他の
装置までケーブルトレイ又はコンジットによって敷設する場合は,それらは一つのケーブルとして扱うこ
とが望ましい。
特別な製品群に接続するケーブルについて,ある種類の結合デバイス及び減結合デバイスを,製品規格
の中で用いることがより適切であるとの規定がある場合,その選択(技術的根拠が正当である場合)を優
先する。これらのデバイスは,製品規格に規定していなければならない。CDNの例は,附属書Dに示す。
7.4.3
試験するポート
一つの試験において二つの150 Ω回路が必要となる。試験信号を注入する回路は,試験する様々なポー
トに移すことができる。CDNをポートから外したとき,減結合回路に置き換えてもよい。
注入方法の選択
CDNは適用
できるか?
CDN注入(7.5参照)a)
遮蔽ケーブ
ルか?b)
EMクランプ
又は電流クラ
ンプ注入は適
用できるか?
次の要求事項を確認
1. AEインピーダンスは150 Ω
2.試験セットアップは図5を満たす
3. AEは十分な耐性をもつ
直接注入(7.8参照)
要求事項を
満足するか?
EMクランプ
又は電流クランプ注入
(7.6参照)
EMクランプ
又は電流クランプ注入
(7.7参照)
はい
いいえ
はい
いいえ
いいえ
はい
はい
いいえ
24
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
EUTに複数の同種のポート(同じ入力又は出力電子回路,負荷,接続した装置など)がある場合,それ
らの全ての異なるタイプのポートを包含し試験を確実に行うために,少なくともそれらの一つのポートを
選択する。
7.5
CDN注入
CDN注入を行う場合は,次の処置が必要となる。
a) AEがEUTと直接接続している場合[例えば,図13 a) に示すように,これらの接続間にいかなる減
結合デバイスも接続していない],基準グラウンド面上の高さ0.1 m±0.05 mの絶縁支持台の上に配置
する。さらに,終端したCDNを通してグラウンドに接続する。
EUTが複数のAEに直接接続している場合,一つのAEはこの方法で終端する。他の直接接続して
いるAEは,その他全ての接続を減結合する。この方法によって,それぞれの末端を150 Ωで終端さ
れた一つの閉回路を実現する。
b) AEがCDNを経由してEUTに接続している場合,そのAE周りの配置及び配線は,通常,重要ではな
く,製造業者の設置仕様に従って基準グラウンド面に接続することができる。
c) 試験する目的のポートに注入するためのCDNを接続し,更に他のポートに接続した一つのCDNに50
Ωで終端する。減結合回路網は,他の全てのケーブルが接続するポートに取り付ける。この方法によ
って,それぞれの末端を150 Ωで終端した一つの閉回路を実現する。
d) 終端したCDNは,次の優先順に従って選択する。
1) グラウンド端子に接続したCDN-M1
2) 保護接地線のある電源線に用いるCDN-M3,CDN-M4又はCDN-M5
3) EUTが幾つかのCDN-Snポートをもつ場合,選択された注入ポートに最も近い位置を用いる。
CDN-Sn(n=1,2,3,…)
4) 保護接地線のない電源線に用いるCDN-M2
5) 選択した注入ポートに最も近い位置ポートに接続しているその他のCDN
注記 附属書Iに特殊な製品における代替CDN注入方法を示す。
e) EUTにポートが一つしかない場合は,そのポートは注入用のCDNに接続する。
f)
EUTが二つのポートをもち,EUTに一つだけCDNが接続できる場合,もう一方のポートはAEに接
続し,そのAEのEUTに接続していないポートの一つを上記d) の優先順位に従って50 Ωで終端した
CDNに接続する。AEの他の全ての接続は減結合する。[図13 a) 参照]。EUTに接続しているAEが
試験中に誤動作を示す場合,減結合デバイス(できれば終端したEMクランプ)をEUTとAEとの間
に接続することが望ましい[図13 b) 参照]。
g) EUTが三つ以上のポートをもっていて,一つだけCDNが接続できる場合,二つのポートをもつEUT
について規定する通りに試験する。残りの全てのポートは減結合する。EUTに接続しているAEが試
験中に誤動作を示す場合,減結合デバイス(できれば終端したEMクランプ)をEUTとAEとの間に
接続することが望ましい。
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C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
インターフェースケーブルは可能な場合1 mとする。
a) 二つのポートをもつEUTでCDNが一つだけ接続される回路構成
b) AEが試験中誤動作を示す場合の回路構成例
T:
50 Ω終端
T2:
固定減衰器(6 dB以上)
CDN: 結合・減結合回路網
図13−二つのポートをもつEUTのイミュニティ試験(CDNを一つだけ用いる場合)
7.6
コモンモードインピーダンス要求条件に適合する場合のクランプ注入
クランプ注入を用いる場合,AEの配置は6.2.1で要求するコモンモードインピーダンスにできるだけ近
づけるようにする(附属書H参照)。クランプ注入を適用する各AEは,できる限り機能上の設置条件に
近い状態にする。要求するコモンモードインピーダンスを擬似するために,次の方法を用いる。
− クランプ注入の場合に用いる各AEは,基準グラウンド面上高さ0.1 m の絶縁支持台上に置く。
− 試験するケーブルにクランプを挟む。試験信号発生器は,事前にレベルセッティング手順で確立した
レベルをクランプに供給する。
− 試験中,電流クランプを用いる場合には,入力ポートのシールドを,EMクランプを用いる場合には,
EMクランプの接地面を,基準グラウンド面(図14及び図15参照)に接続する。
− 減結合回路網は,試験するケーブルを除いたEUTとAEとの間の各ケーブルに取り付ける。
− 各AEに接続する全てのケーブルのうち,EUTに接続していないケーブルは,減結合回路網を用いる
(6.2.5及び図5参照)。
− (EUTとAEとの間のケーブルを除いた)各AEに接続したこれらの減結合回路網は,AEから0.3 m
以上(長さ:L2)離してはならない。AEと減結合回路網との間又はAEと注入クランプとの間のケー
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ブルは,束ねたり,巻いたりしてはならず,かつ,基準グラウンド面上30 mmの高さ又はそれ以上の
高さに保持する(図5)。
− 試験するケーブルの片方はEUTに接続し,その反対側はAEに接続する。EUT及びAEには複数の
CDNを接続することができる。ただし,EUT及びAEに接続する各々のCDNのうち一つだけは,50 Ω
で終端する。終端するCDNは,7.5 d) の優先順に従って選ぶ。
− 複数のクランプを用いる場合,注入は試験対象として選択するそれぞれのケーブルを一つずつ実施す
る。注入クランプを付加した複数のケーブルの中で,実際に注入していないケーブルは,6.2.5に従っ
て減結合しなければならない。
クランプ注入のその他の全ての場合は,7.7で示す手順に従うことが望ましい。
注記 モニタリングプローブの使用条件は,7.7参照。
図14−クランプ注入デバイスを用いたテストセットアップの一般的な方法
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C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 モニタリングプローブの使用条件は,7.7参照。
図15−注入クランプを使う場合のグラウンド面上の試験ユニットのセットアップ例(上面図)
7.7
コモンモードインピーダンス要求条件に適合しない場合のクランプ注入
AE側でコモンモードインピーダンスの要求事項に適合しないクランプ注入の場合,AEのコモンモード
インピーダンスは,試験しているEUTポートのコモンモードインピーダンスと同等かそれ以下とする。そ
うでない場合は,(例えば,CDN-M1又はAEからグラウンドに150 Ωの抵抗器を使うことによって)この
条件を満たし,かつ,共振を避けるためにAEポートに対策する。
次の手順は,7.6で規定する手順との差違だけを示す。
− クランプ注入の場合,各AE及びEUTは,例えば,EUTを基準グラウンド面に接続していても,絶縁
支持台上に設置していても,機能上の設置条件に可能な限り合わせる(図14及び図15参照)。
− 注入クランプとEUTとの間に挿入した低挿入損失の電流プローブを用いて,誘導電圧(6.4.1に従っ
て設定)から生じる電流を監視する。この電流が次の式で得る公称値Imaxを超える場合は,測定電流
がImaxの値と等しくなるまで試験信号発生器のレベルを減らす。
Ω
=
150
/
0
maxU
I
Imaxの値と等しくするために用いた試験電圧レベルは,試験報告書に記録する。
再現性を保証するために,この試験セットアップを詳細に試験報告書に記載する。
7.8
直接注入
遮蔽ケーブルへの直接注入の場合,次の方法を用いる。
− EUTは,基準グラウンド面上の高さ0.1 mの絶縁支持台の上に置く。
− 試験するケーブルに対して減結合回路網は,注入点とAEとの間で,注入点にできる限り近づけて配
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C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
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置する。第二のポートは,50 Ωで終端したCDN(150 Ωの負荷)を接続する。その終端の方法は,7.5
d) の優先順に従って選択する。EUTに付随した他の全てのケーブル上には,減結合回路網を組み込
む(CDNを開放にしておく場合,CDNは減結合回路網とみなす。)。
− 注入点は,基準グラウンド面上のEUTの投影面から0.1 m〜0.3 mに配置する。
− 試験信号は,100 Ωの抵抗器を介してケーブルの遮蔽部分に直接注入する(6.2.4参照)。
遮蔽部分に直接接続する場合には,良好に接続することで信頼できる試験結果が得られる。
8
試験手順
EUTは,意図する動作条件及び気象条件の範囲内で試験する。
試験セットアップからの放射に関しては,地域の障害規制に従わなければならない。放射エネルギーが
許容レベルを超える場合は,シールドルームを用いる。
注記1 一般的には,この試験は,シールドルームを用いなくても実行できる。これは,適用した妨
害レベル及び設備の形状から,特に低い周波数では,高いエネルギー量を放射するようなも
のではないといえるからである。
この試験は,試験信号発生器を各々の結合デバイス(CDN,EMクランプ及び電流クランプ)に順次接
続して実施する。その時点で試験に用いないほかの全てのケーブルは,機能的に許容できる場合は接続し
ないか,又は減結合回路網若しくは未終端のCDNで分離する。
LPF及び/又はHPF(例 カットオフ周波数100 kHz)は,高次又は副次の高調波からEUTへの妨害を
避けるために,試験信号発生器の出力側に用いてもよい。LPFの帯域阻止特性は,結果に影響を及ぼさな
いように高調波を抑制するために十分なものでなければならない。これらのフィルタは,試験レベルの設
定の前に試験信号発生器の出力側に挿入する(6.1及び6.4.1参照)。
設定手順に従って確定した信号レベルを使い,1 kHzの正弦波による変調度80 %の振幅変調を行った妨
害信号を,必要に応じてRF信号レベルを調節,又は結合デバイスを交換するために中断しながら,150 kHz
〜80 MHzの周波数範囲で妨害信号を掃引する。周波数を増加方向に掃引する場合,そのステップの幅は,
直前の周波数の1 %を超えてはならない。各周波数での振幅変調搬送波の滞在時間は,EUTが作動及び反
応するのに必要な時間以下にしてはならない。ただし,全ての場合も0.5秒間以下にしてはならない。影
響を受けやすい周波数(例えば,クロック周波数,製造業者が指定する周波数,又は試験によって得られ
る周波数)は,ステップした周波数に加えて試験する。
注記2 EUTは,周波数掃引の間に発生する過渡現象によって妨害を受けることがあるので,このよ
うな妨害を避ける準備をする必要がある。例えば,信号の強さは,周波数を変更する前に試
験レベルより数dB小さくすることができる。
試験中は,EUTの全てのモードを動作させ,更に選択した,影響を受けやすい全ての動作モードについ
て試験を行う。
特別な動作試験プログラムを用いることが望ましい。
試験は,試験計画に従って行う。
試験計画の幾つかの条件を確立するために,予備試験が必要となることがある。
9
試験結果の評価
試験結果は,EUTの機能損失又は性能低下の観点から,製品の製造業者,試験の依頼者によって,又は
製品の製造業者と使用者との間の合意によって指定する性能レベルと比較して分類する。推奨する分類を,
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次に示す。
a) 製造業者,試験の依頼者又は使用者によって指定する仕様限度内の正常な性能。
b) 妨害がなくなった後に消滅する一時的な機能損失又は性能低下。操作者が介在することなくEUTが正
常な性能に自己復帰する。
c) 操作者が介在する調整が必要な,一時的な機能損失又は性能低下。
d) ハードウェア又はソフトウェアの破壊による修復不可能な機能損失若しくは性能低下,又はデータの
損失。
EUTへの影響のうち,重要ではないとみなして,許容できる影響を,製造業者の仕様書に指定してもよ
い。
この分類は,共通規格,製品規格及び製品群規格の性能評価基準を規定するときの指針として,又は適
切な共通規格,製品規格及び製品群規格が存在しない場合の製造業者と使用者との間で性能評価基準に対
する合意を行うための枠組みとして用いてもよい。
10 試験報告書
試験報告書は,試験を再現するために必要な全ての情報を含む。特に,次の事項を記載する。
− EUT及び関連装置の識別表示(例えば,商標,製品形式,製造番号)
− EUTの寸法
− EUTの代表的な動作条件
− 試験するEUTが単一か,複数ユニットか
− 長さを含む相互接続ケーブルの形式,及びEUTに接続するインタフェースポートの形式
− 適合性を達成するために必要なEUTの動作条件,又は仕様上のあらゆる条件。例えば,ケーブル長又
は形式,シールド又はグラウンド
− 必要な場合,EUTの回復時間
− 用いた試験設備の形式,並びにEUT,AE,結合デバイス及び減結合デバイスの配置
− 試験装置の識別(例えば,商標,製品形式,製造番号)
− 各ケーブルに用いた結合デバイス及び減結合デバイス
− 各々の注入点及び50 Ω終端した減結合デバイスの表示
− EUTの動作方法の説明
− 試験を行うために必要な特別な条件
− 試験を適用した周波数範囲
− 周波数の掃引率,滞在時間及び周波数ステップの幅
− 適用した試験レベル
− 製造業者,試験の依頼者又は使用者によって指定する性能レベル
− 適用した性能評価基準
− 妨害の印加中又は印加後に観測したEUTへの全ての影響,及びこれらの影響が持続した期間
− 合否判定の根拠(共通規格,製品規格若しくは製品群規格において規定してある,又は製造業者と使
用者との間で合意した性能評価基準に基づく。)
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附属書A
(規定)
EMクランプ及び減結合クランプ
A.1 EMクランプ
A.1.1 一般
この附属書は,EMクランプについて規定する。従来の電流クランプと比較した場合,EMクランプは,
数十MHzを超える周波数帯域で方向性をもっている。
A.1.2 EMクランプの仕様
EMクランプは,ケーブルへの注入に用いる。要求事項は,次による。
− 動作周波数範囲:0.15 MHz〜80 MHz
− 長さ:650 mm±50 mm
− グラウンド面からクランプ中央の開口部までの高さ:50 mm〜70 mm
− クランプ開口部の直径:20 mm±2 mm
− クランプの基準点(外面から最初のコアまでの距離):30 mm未満
− EMクランプの構造及び概念を,図A.1及び図A.2に示す。
− インピーダンスの典型的な特性を,図A.7に示す。
− 減結合係数の典型的な特性を,図A.8に示す。
− 結合係数の典型的な特性を,図A.11に示す。
注記 A.2の要求事項に適合する場合,物理的な寸法が異なるクランプ(例 より大きな直径のケー
ブルの試験)を用いることができる。
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C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
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単位 mm
部品リスト
1 フェライトリングコア φ36 mm×φ23 mm×15 mm
10個のリング,形式4C65a),ニッケル亜鉛(NiZn),比透磁率μは約100
26個のリング,形式3C11a),マンガン亜鉛(MnZn),比透磁率μは約4 300
2 溝に接着した銅はく(箔)の半シリンダ
3 下部の導体板
4 グラウンド棒
5/6 供試ケーブルを溝に押し付けるための素子
圧縮ばね(表示していない)をもつ絶縁物の部品
7 フェライト管,4C65a)
8 同軸ケーブル,50 Ω BNCコネクタ付き
9 Z1の開放のためのスイッチ
10 部品2のためのスロット
11 弾力のあるフェライト固定具(上部の半リング)
12 下部の絶縁板
13 Z1及びZ2のための保護板
Z1:直列インピーダンス(図A.2参照),C1:20 pF〜100 pF,L1:0.15 μH,R1:50 Ω/12W
Z2:直列インピーダンス(図A.2参照),L2:0.8 μH,R2:50 Ω/12W
注a) 3C11及び4C65は市販製品の一例である。この情報は,この規格の利用者の便宜を図って記載するもので,こ
の製品を推奨するものではない。
図A.1−EMクランプの詳細構造の例
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C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
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部品リスト
1
フェライト管(クランプ構造)長さ0.6 m,φ20 mm,EUT側10個のリング(形式4C65)及びAE側26個のリ
ング(形式3C11)から成る。
2
銅はく(箔)の半シリンダ
7
EMクランプ構造の中に内蔵するフェライト管
Z1,Z2 周波数応答及び方向性を最適化するために組み込んだもの
Zeut EUTのインピーダンス
Zae AEのインピーダンス
G1 試験信号発生器
EMクランプの原理:
− フェライト管による磁気結合(第1項)
− EUTケーブルと銅はく(箔)との間の密着による電気結合(第2項)
図A.2−EMクランプの概念の例
A.2 EMクランプ特性評価
A.2.1 クランプ試験ジグの仕様
クランプのSパラメータを測定するために用いる試験ジグは,図A.4及び図A.5に示すように金属板(基
準グラウンド面)上に円筒形金属棒をもつ。
試験ジグは,三つの部分で構成し,減衰のない50 Ω系アダプタをもつ二つのジグ部分及びその間を伝送
する線を形成する部分からなる(図A.3〜図A.5参照)。
EMクランプの特性評価のために単一の円筒形金属棒を用いる。金属棒の長さ(LA + LB + Lreference)は,
図A.5の寸法を満たすように設定する。
円筒形金属棒の直径dは4 mmとする。基準グラウンド面からの高さhは,クランプ開口部の中心位置
の高さである。典型的なhの値は,50 mm〜70 mmである。
クランプ基準点(両端のフェライトコアの端)とジグの垂直基準面との間の距離LA及びLBは30 mm±5
mmとする(図A.5参照)。基準グラウンド面の寸法は,ジグ及びクランプの幾何学的投影の全ての側面か
ら0.2 m以上とする。
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図A.3−ジグの寸法
A,B :EMクランプの両端のフェライトコアの端の位置を表す。
図A.4−試験ジグ
A,B :EMクランプの両端のフェライトコアの端の位置を表す。
図A.5−EMクランプを配置した場合の試験ジグ
A.2.2 EMクランプの特性
A.2.2.1 インピーダンス
A.2.2.1.1 測定セットアップ
A.2.1で規定する試験ジグは,インピーダンス測定のために用いる。EMクランプは試験ジグ内に配置し,
注入ポートは50 Ωで終端する(図A.6参照)。
インピーダンス測定においてEMクランプは,2ポートデバイスとして扱う。その特性はネットワーク
アナライザ(VNA)を用いてSパラメータS11,S12,S21及びS22を50 Ω系で測定する。
測定の前にVNAは適切な校正キットを用いて,標準的な通過−開放−短絡−整合
(Through-Open-Short-Match:TOSM)法によって,ケーブル端(試験ジグに接続する箇所)で正規化する。
ケーブル端とクランプ基準点との間の長さは,VNAのオフセットポート又は他の手段で考慮する。
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C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
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図A.6−インピーダンス又は減結合係数測定セットアップ
A.2.2.1.2 変換
A.2.2.1.1で規定するようにVNAで測定するSパラメータは,50 Ω系で測定する。ただし,試験ジグの
特性インピーダンスZrefは,一般的に50 Ωとは異なり,グラウンド面からクランプ開口部の中心までの高
さによって決定する。SパラメータからFパラメータ(ABCDパラメータ)への変換を用いて,Zrefから独
立した変換係数は,次の式によって得られる。
注記 全ての計算は複素数で実施する。
Ω
=50
ref
Z
············································································ (A.1)
21
21
12
22
11
2
)
1
)(
1(
S
S
S
S
S
A
+
−
+
=
··················································· (A.2)
ref
21
21
12
22
11
2
)
1
)(
1(
Z
S
S
S
S
S
B
−
+
+
=
··············································· (A.3)
ref
21
21
12
22
11
/
2
)
1
)(
1(
Z
S
S
S
S
S
C
−
−
−
=
·············································· (A.4)
21
21
12
22
11
2
)
1
)(
1(
S
S
S
S
S
D
+
+
−
=
··················································· (A.5)
試験ジグの特性インピーダンスを根拠とした一組のSパラメータは,Fパラメータを用いて計算できる。
Ω
=
′
−
d
h
Z
2
cosh
60
1
ref
························································· (A.6)
ここに,
d: ジグの円筒形金属棒の直径(4 mm)
h: 基準グラウンド面から円筒形金属棒の中心までの高さ
ref
/Z
B
B
′
=
′
······································································ (A.7)
ref
Z
C
C'
′
=
······································································ (A.8)
D
C
B
A
D
C
B
A
S
+
′
+
′
+
−
′
−
′
+
=
′11
···························································· (A.9)
(
)
D
C
B
A
BC
AD
S
+
′
+
′
+
−
=
′
2
12
·························································· (A.10)
D
C
B
A
S
+
′
+
′
+
=
′
2
21
·························································· (A.11)
D
C
B
A
D
C
B
A
S
+
′
+
′
+
+
′
−
′
+
−
=
′22
························································ (A.12)
A.2.2.1.3 インピーダンス計算
入力インピーダンスは,式(A.13)による。
35
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
11
11
ref
in
1
1
S
S
Z
Z
′
−
′
+
′
=
······························································· (A.13)
図A.7は,3種のEMクランプのインピーダンス曲線の典型的な例を示す。
0
50
100
150
200
250
300
350
400
0.1
1.0
10.0
100.0
周波数 (MHz)
イン
ピーダ
ンス
(
Ω
)
図A.7−典型的な3種のクランプインピーダンス特性の例
注記 この方法によって測定したインピーダンスは,機器の遠端がZrefで終端した場合に有効である。
実際のイミュニティ試験セットアップでは,この値はAEのインピーダンスによって異なる場
合がある。
A.2.2.2 EUTとAEとの間の減結合係数
測定セットアップ及び変換は,A.2.2.1.1及びA.2.2.1.2による。減結合係数aは,式(A.14)で計算する。
[]
()
(
)
21
10
log
20
dB
S
ABS
a
′
=
················································· (A.14)
図A.8は,3種のEMクランプの減結合係数の典型的な例を示す。
36
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
‒20
‒18
‒16
‒14
‒12
‒10
‒8
‒6
‒4
‒2
0
a
(
d
B
)
0.1
1.0
10.0
100.0
周波数 (MHz)
図A.8−典型的な3種のクランプの減結合係数の例
A.2.2.3 結合係数
結合係数は,図A.10に示すセットアップによって150 Ω系で測定する。
試験ジグは,次の点を変更してA.2.1を適用する。円筒形金属棒はクランプ開口部の下部になるように
調整する。さらに,150 Ω−50 Ω変換アダプタは,垂直基準面に挿入する。測定前にジグの二つの垂直基
準面を接続して正規化する(図A.9参照)。図A.9及び図A.10に示すように,二つの10 dBの固定減衰器
を用いることが望ましい。
図A.9−結合係数測定に用いる測定系を正規化するためのセットアップ
37
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図A.10−結合係数測定セットアップ
3種のEMクランプの結合係数の典型的な例を,図A.11に示す。
周波数 (MHz)
0.1
1.0
10.0
100.0
‒15
‒10
‒5
0
5
結
合
係
数
(
d
B
)
図A.11−3種のEMクランプの結合係数の典型的な例
A.3 減結合クランプの特性
A.3.1 インピーダンス
A.3.1.1 測定セットアップ
A.2.1で規定する試験ジグは,インピーダンス測定のために用いる。減結合クランプは,試験ジグ内に配
置する(図A.12参照)。インピーダンス測定において減結合クランプは,2ポートデバイスとして扱う。
その特性はVNAを用いてSパラメータS11,S12,S21及びS22を50 Ω系で測定する。測定の前にVNAは適
切な校正キットを用いて,標準的なTOSM法によって,ケーブル端(試験ジグに接続する箇所)で正規化
する。ケーブル端とクランプ基準点との間の長さは,VNAの電気長補正機能又は他の手段で考慮する。
38
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図A.12−減結合クランプ特性測定セットアップ
A.3.1.2 インピーダンス計算
A.2.2.1.2で規定する変換を適用する。入力インピーダンスは,式(A.13)による。
ここで規定する減結合クランプ及びCISPR 16-1-4で規定するコモンモード吸収クランプ(CMAD)のイ
ンピーダンス特性の例を図A.13に示す。
0
200
400
600
800
1 000
1 200
1 400
1 600
1 800
2 000
0.1
1.0
10.0
100.0
Z
(Ω
)
減結合クランプ
CMAD
周波数 (MHz)
図A.13−減結合クランプのインピーダンスの典型的な例
注記 この方法によって測定したインピーダンスは,機器の遠端がZrefで終端した場合に有効である。
実際のイミュニティ試験セットアップでは,この値はAEのインピーダンスによって異なる場
合がある。
A.3.2 減結合係数
測定セットアップ及び変換は,A.3.1.1及びA.2.2.1.2による。減結合係数aは,式(A.14)で計算する。
ここで規定する減結合クランプ及びCISPR 16-1-4で規定するコモンモード吸収クランプ(CMAD)の減
結合係数の例を図A.14に示す。
注記 CISPR 16-1-4記載のコモンモード吸収デバイス(CMAD)は,30 MHz〜200 MHzで良好な減結
合を実現するよう設計されている。このため,この規格の試験には適切でないかもしれない。
39
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図A.14−減結合係数の典型的な例
‒30
‒25
‒20
‒15
‒10
‒5
0
0.1
1.0
10.0
100.0
Frequency (MHz)
Decoupling clamp
CMAD
a
(d
B
)
IEC 2624/13
減結合クランプ
周波数
40
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B
(参考)
試験周波数範囲の選択基準
この規格の要求事項は,150 kHz〜80 MHzの周波数範囲を規定しているが,適用できる周波数範囲は試
験する装置の正規の設置条件及び動作条件に依存する。
一般的に,試験終了周波数は80 MHzである。小形装置(波長の1/4未満の装置)を考慮する場合は,
専用の製品規格で試験終了周波数を,最大で230 MHzまで拡張して定めてもよい。この場合,結合デバイ
ス及び減結合デバイスは,表B.1で記載した,EUTポートで測定したコモンモードインピーダンスのパラ
メータを満足しなければならない。高い周波数までこの試験方法を用いる場合,試験結果は装置の寸法,
用いる相互接続ケーブルの形式,80 MHzを超える周波数に対応した特別なCDNの有効性などに影響を受
ける。さらに,適切に適用するための指針を製品規格に記載することが望ましい。
表B.1−試験周波数範囲が80 MHzを超えて拡張するときの結合デバイス及び
減結合デバイスの組合せの主要なパラメータ
パラメータ
周波数範囲
0.15 MHz〜24 MHz
24 MHz〜80 MHz
80 MHz〜230 MHz
|Zce|
150 Ω±20 Ω
150 Ω
Ω
−+45
60
150 Ω±60 Ω
Zceの根拠及びEUTポートとAEポートとの間の減結合係数は規定していない。これらの係数は,|Zce|の許
容差が,AEポートと基準グラウンド面との間を短絡又は開放した条件で満たされなければならないとい
う要求事項に含まれる。
AEのコモンモードインピーダンス要求事項に適合しない状態でクランプ注入方法を用いる場合,Zceに対
する要求事項に適合しない場合がある。ただし,7.7の規定に従う場合は,注入クランプで許容可能な試
験結果を得ることができる。
試験開始周波数は,接続するケーブルを含む装置が,妨害電磁界から大きなRFエネルギーを受ける可
能性があるかどうかに依存する。
次の三つの異なる場合が,考えられる。
a) グラウンド線及び他の装置への接続をもたず,電池充電中は用いない電池駆動の装置(波長の1/4未
満の装置)は,この規格に従った試験をする必要はない。充電中に装置が動作する場合,b) 又はc) を
適用する。
電池駆動の装置(波長の1/4以上の装置)は,接続するケーブルの最大長を含む寸法で,試験開始
周波数を決定する(図B.1参照)。
b) 電源系統に接続するが,他の装置又はケーブルに接続していない装置。
結合デバイス及び減結合デバイスを通して電力を供給し,擬似手を装置に置く。このような装置の
試験開始周波数は,150 kHzとする。
c) 電源系統に接続し,かつ,制御及びI/Oケーブル又は通信ケーブルを通して他の絶縁装置又は非絶縁
装置に接続する装置。このような装置の試験開始周波数は,150 kHzとする。
41
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
100 M
10 M
1 M
100 k
0.1
1
10
100
1 000
試
験
開
始
周
波
数
F
st
ar
t
(
H
z
)
長さ L (m)
Fstart = c0
10L
s
m
c
8
0
10
3×
=
L:ケーブル長に装置寸法を加えた長さ
例:
− 電池駆動のパーソナルコンピュータからケーブルの長さ4 mのカールコードで電源を供給するキーボード(最大
寸法 ≧ λ/4)に接続するケーブルは,試験開始周波数は6.67 MHzであることが望ましい。このキーボードは,擬
似手で覆うことが望ましい。2 mのケーブルの付いているマウスは,試験開始周波数は15 MHzとなる,など。
− AC/DCアダプタが利用可能な電卓は,そのアダプタの商用電源側で150 kHz以上の周波数で試験することが望ま
しい。この電卓は擬似手で覆うことが望ましい。
− グラウンド線に接続できる携帯形の電池駆動のマルチメータは,そのケーブルに150 kHz以上の周波数で試験す
ることが望ましい。このマルチメータは擬似手で覆うことが望ましい。
− 絶縁したスピーカーボックスに接続し,オーディオレシーバ及びグラウンド線に接続でき,かつ,アンテナ入力
端子も付いている二重絶縁の(電源に接続する)コンパクトディスクプレーヤは,電源線及びオーディオケーブ
ルの両方で150 kHz以上の周波数で試験することが望ましい。
− 建築物の中に分配している各種の絶縁した検知器をもち,その最大ケーブル長が200 m(製造業者の仕様)を超え
る盗難警報器は,これらのケーブルに150 kHz以上の周波数で試験することが望ましい。
図B.1−ケーブル長に装置寸法を加えた長さに対応する試験開始周波数
42
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
試験レベルを選択するための指針
試験レベルは,最終的に設置したときに,EUT及びケーブルがさらされる電磁放射環境に対応して選択
することが望ましい。試験レベルの選択に当たっては,障害による影響を考慮することが望ましい。障害
による影響が重大である場合は,より高いレベルを考えることが望ましい。
EUTを限られた場所にだけ設置する場合は,当該場所のRF発生源の観測によって,発生する電磁界強
度の計算が可能である。発生源の電力が未知の場合は,当該場所における実際の電磁界強度を測定しても
よい。
多様な場所での稼動を意図する装置は,次の指針に従って試験レベルを選択してもよい。
次のクラスは,箇条5で規定するレベルに対応している。これらは適切なレベルの選択のための一般的
な指針である。
クラス1:低レベル電磁放射環境。ラジオ送信所及びテレビ送信所が1 kmよりも遠い距離にある場合の
典型的なレベル及び低電力トランシーバの典型的なレベル。
クラス2:中程度の電磁放射環境。低電力可搬形トランシーバ(一般的には定格電力1 W未満)を用い
るが,装置の近傍での使用を制限する。典型的な商業環境。
クラス3:厳しい電磁放射環境。可搬形トランシーバ(一般的には2 W以上)を装置の比較的近くで用
いるが,1 m未満の距離には接近しない。大電力放送用送信機が装置に近接,又は工業・科学・
医療(ISM)装置が近くにある。典型的な工業環境。
クラスX:Xは任意のレベルであって,専用の装置仕様又は装置固有の規格で取り決めて規定してもよ
い。
この規格で規定する試験レベルは,上記の場所においてめったに超えない典型的な値である。ただし,
同じ建物内において,例えば,大電力送信機又はISM装置の近傍など,場所によってはこの値を超える場
合がある。このような場合には,全ての装置をこのレベルに耐えるように規定するよりはむしろ,部屋又
は建物を遮蔽すること,並びに装置への信号線及び電源線にフィルタを付けることを推奨する。
43
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
CDNに関する情報
D.1 CDNの基本的機能
CDNは,次の機能を備えていることが望ましい。
− EUTへの妨害信号の結合
− AEのコモンモードインピーダンスによって変化しない,EUTからみて安定したインピーダンス
− 妨害信号による干渉を防ぐための,AEへの減結合
− 必要な信号に対する通過特性
周波数範囲150 kHz〜80 MHzにおけるCDNの必要なパラメータは6.2.1に規定し,その例はD.2に示す。
図D.1〜図D.7において,CDNのコモンモードインピーダンス Zce[図1 a)参照]は,試験信号発生器
の内部抵抗(50 Ω)と供試ケーブルの導線から並列に組み合わせた抵抗器(100 Ω)との合計で構成する。
減結合素子は,適切なインダクタL(| ωL| >> 150 Ω)を用いて,Zceに影響しないことが望ましい。
CDNのEUTポートの中心は,基準グラウンド面上30 mmに位置することが望ましい。CDNとEUTと
の間のケーブルは,基準グラウンド面上高さ30 mmに配線すれば,特性インピーダンスが約150 Ωの伝送
線路と同等になる。
図D.2〜図D.7において,試験信号発生器とCDNの各線との間で直流及び低周波を分離させるコンデン
サC1及びCのインピーダンスは,対象とする試験周波数範囲において150 Ωよりも極めて小さいことが
望ましい。
AEは,無遮蔽ケーブルはコモンモードインダクタL及びコンデンサC2によるか又はコモンモードイン
ダクタLだけで減結合する。遮蔽ケーブルは,遮蔽がAE側で基準グラウンド面に接続しているために,
コンデンサC2は必要としない。
無遮蔽ケーブルは,必要な信号に過度に影響しないようにC2の値を選ぶことが重要である。CDNのパ
ラメータが,必要な信号によって,過度に影響を受けることは許容できない(例えば,CDN-M1でフェラ
イトが飽和するなど)。
警告 コンデンサのC1又はC,及びC2(図D.2〜図D.7参照)は電源線のCDN内の充電部をつなぐ
ため,適切なコンデンサを用いなければならない。漏えい電流が大きいため,CDNはグラウン
ド端子をもち,全ての試験条件下で基準グラウンド面に接続しなければならない。さらに,基
準グラウンド面は保護グラウンドに適切に接続しなければならない。
D.2 CDNの例
一つのCDNで,全部の種類のケーブルに対応することは不可能なため,ケーブルの種類ごとに異なる
CDNが必要になる(表4参照)。図D.1〜図D.7にケーブルの種類ごとのCDNの例を示す。
44
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
R =100 Ω
L ≧280 μH(150 kHz)
図D.1−遮蔽ケーブルに用いるCDN-S1回路の簡略図の例(6.2.2.5参照)
C1 (代表値)= 22 nF
C2 (代表値)= 47 nF
R =100 Ω
L ≧280 μH(150 kHz)
a) 無遮蔽の電源線に用いるCDN-M1回路の簡略図の例(6.2.2.2参照)
図D.2−無遮蔽の電源線に用いるCDN-M1,CDN-M2及びCDN-M3回路の簡略図の例(6.2.2.2参照)
45
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
C1 (代表値)= 10 nF
C2 (代表値)= 47 nF
R =200 Ω
L ≧280 μH(150 kHz)
b) 無遮蔽の電源線に用いるCDN-M2回路の簡略図の例(6.2.2.2参照)
C1 (代表値)= 10 nF
C2 (代表値)= 47 nF
R =300 Ω
L ≧280 μH(150 kHz)
c) 無遮蔽の電源線に用いるCDN-M3回路の簡略図の例(6.2.2.2参照)
図D.2−無遮蔽の電源線に用いるCDN-M1,CDN-M2及びCDN-M3回路の簡略図の例(6.2.2.2参照)
(続き)
46
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
C1 (代表値)=10 nF
C2 (代表値)=47 nF
R =200 Ω
L ≧280 μH(150 kHz)
図D.3−無遮蔽不平衡線路に用いるCDN-AF2回路の簡略図の例(6.2.2.4参照)
C1 (代表値)=10 nF
C2 (代表値)=47 nF
R =200 Ω
L1 ≧280 μH(150 kHz)(C2及びL3を用いない場合,L1は30 mH以上)
L2=L3=6 mH
図D.4−無遮蔽平衡線路に用いるCDN-T2回路の簡略図の例(6.2.2.3参照)
47
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
C(代表値)=5.6 nF
R=400 Ω
L1 >> 280 μH(150 kHz)
L2=6 mH
図D.5−無遮蔽平衡線路に用いるCDN-T4回路の簡略図の例(6.2.2.3参照)
C(代表値)=2.2 nF
R=800 Ω
L >> 280 μH(150 kHz)
図D.6−無遮蔽不平衡線路に用いるCDN-AF8回路の簡略図の例(6.2.2.4参照)
48
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
C (代表値)=2.2 nF
R=800 Ω
L1 >> 280 μH(150 kHz)
L2 >> 6 mH(150 kHz)
図D.7−無遮蔽平衡線路に用いるCDN-T8回路の簡略図の例(6.2.2.3参照)
49
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書E
(参考)
試験信号発生器の仕様に関する情報
電力増幅器PA(図3参照)の有効出力電力は,固定減衰器T2(6 dB以上),振幅変調度(80 %)(図2
参照)及び用いたCDN又はクランプの最小結合係数を考慮して決定する。表E.1に10 Vの試験レベルを
得るために必要な電力増幅器の出力電力例を示す。
表E.1−10 Vの試験レベルを得るために必要な電力増幅器の出力電力
注入デバイス
最小結合係数 ±1.5 dB
dB
電力増幅器出力における必要電力
W
CDN
0
7
電流クランプ(巻数比5:1の場合)
−14
176
EM クランプ
−6
28
注記 結合係数は3.6で定義している。これは出力レベル設定回路を用いて測定することができる[図9 c)
参照]。結合係数は,結合・減結合デバイスを150 Ω−50 Ω変換アダプタと直列に用いた場合の出
力電圧(Umr)と2個の150 Ω−50 Ω変換アダプタを直列に用いた場合の出力電圧との比である。
50
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書F
(参考)
大形EUTの試験セットアップ
F.1
一般事項
箇条7で記載する試験セットアップは,ケーブルの入出力の高さが1 mを超える大形EUTの要求事項に
適合するには,十分ではない場合がある。試験信号の周波数の上限が80 MHzのため,EUT寸法は波長に
比べて無視できず,そのようなEUTに接続するケーブルによる共振の影響があるかもしれない。
ここでは,大形EUTに適用可能な代替試験方法を記載する。高い位置にあるケーブル入力の近くに結合
デバイスを設置することで,小さなループ領域を作成し共振の影響を少なくする。
この附属書で適用可能な大形EUTの例は,次に示すが,この限りではない。
− ラック搭載形の通信交換システム
− 大形電動機
− ラック搭載形の開閉装置及び制御装置
F.2
大形EUTの試験セットアップ
大形EUTの試験セットアップの例を図F.1及び図F.2に示す。
図F.1で示す,高く持ち上げた基準グラウンド面(以下,水平高架基準グラウンド面という。)は,この
試験セットアップのための基準グラウンド面とする。水平高架基準グラウンド面の目的は,EUTとCDN
との間のケーブルの長さを短くすることで,ケーブルの共振の影響を抑制することにある。
水平高架基準グラウンド面の寸法は,試験中に用いる全てのCDNの側面から0.2 m以上大きくする。試
験中でのEUTとCDNとの間のケーブルの長さは,最大0.3 mとする。
水平高架基準グラウンド面は,ケーブルがEUTからCDNを水平に配置できるように基準グラウンドよ
りも高い位置に設置する。
水平高架基準グラウンド面は,安全上の理由によって電気的に接地する。一つ以上のCDNをセットア
ップに用いる場合に,この接続はRF観点からは重要ではない。
注記1 水平高架基準グラウンド面の物理的構造及びその支持台構造は,機械的な安全条件を確保す
るために重要である。
試験する装置は,基準グラウンド面上の高さ0.1 m±0.05 mの絶縁支持台に置くことが望ましい。装置
が搬送台の上にあり,かつ,その過度な重量又は寸法のために,搬送台から安全に移動できない場合,台
の高さが0.1 m±0.05 mを超えていても,EUTは試験のために搬送台上に置いたままでもよい。装置が,
寸法又は重量のため,0.1 m±0.05 mに持ち上げることができない場合には,EUTが基準グラウンド面から
電気的に分離可能ならば,薄い絶縁体を用いてもよい。試験の標準的な方法からの変更点は,試験報告書
に記録する。
AEは水平高架基準グラウンド面に配置してもよいが,AEがCDN経由でEUTに接続している場合,水
平高架基準グラウンド面上に配置する必要はない。直接注入の場合,適切な減結合を用いる場合,AEは
水平高架基準グラウンド面から離れて配置してもよい。クランプ注入をCDN注入の代わりに用いる場合
のAEは,水平高架基準グラウンド面に配置しなければならない。
51
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図F.1−水平高架基準グラウンド面を用いた大形EUTの試験セットアップ例
図F.2で示す垂直基準グラウンド面は,この試験セットアップのための基準グラウンド面である。垂直
基準グラウンド面の目的は,EUTとCDNとの間のケーブルの長さを短くすることで,ケーブルの共振の
影響を抑制することにある。
注記2 入出力ケーブルがEUTに複数の高さで接続されているか,又は一つのCDNだけを用いる場
合は,水平高架基準グラウンド面よりも垂直基準グラウンド面を用いる方が,便利なことが
ある。
垂直基準グラウンド面は,安全上の理由によって電気的に接地する。この接続は,RFの観点からは余り
重要ではない。
垂直基準グラウンド面の寸法は,試験中に用いる全てのCDNの側面から0.2 m以上大きくする。ただし,
EUTが一つのCDNだけを用い,垂直基準グラウンド面が小さく作られる可能性がある場合は,垂直基準
グラウンド面を床面まで延長し,床面に直接接続するか,又は床面に接続するケーブルの長さが誘導性を
もたないように配慮する。試験中でのEUTとCDNとの間のケーブルの長さは,0.3 m以下とする。EUT
と垂直基準グラウンド面との間の距離は,0.3 m以下のケーブルで接続できるようにする。シールドルー
ムの壁は,垂直基準グラウンド面として用いることができる。
CDNは,EUTからのケーブルが水平になる高さの垂直基準グラウンド面の位置に取り付ける。
水平高架基準グラウンド面を用いる試験セットアップの規定(すなわち,絶縁支持台及びAEの配置)
は,垂直基準グラウンド面の試験セットアップにも適用する。
52
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図F.2−垂直基準グラウンド面を用いた大形EUTの試験セットアップ例
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C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書G
(参考)
試験電圧レベルの測定不確かさ
G.1
一般
この附属書は,この規格の本文に記載された試験方法の特定の要求に従った試験装置によって発生する
電圧の測定不確かさ(MU)に関係する情報を示す。MUに関するさらなる情報は,参考文献[5]〜[7]を参
照。
この附属書は,レベル設定の不確かさに焦点を絞っており,測定装置不確かさ及び6.4で規定する試験
電圧レベル設定手順の双方に基づく不確かさバジェットの作成方法を例として示している。妨害量のその
他のパラメータ(例えば,変調周波数,変調深さなど)は,等しく重要であり,必要に応じて試験所で考
慮することを推奨する。この附属書で示す方法論は,妨害量の全てのパラメータに適用可能と考える。
この附属書の目的は,6.4の試験レベル設定手順によって要求されたEUTインピーダンスが150 Ωの場
合の電圧レベル設定のMUの評価である。異なる試験機関で同一のEUTを試験することに関連する非再
現性問題の解析は,この附属書の目的外である。
G.2
一般記号
この附属書で用いる一般記号を次に示す(参考文献[5]参照)。
Xi
:入力量(不確かさの要因)
xi
:Xiの推定量
u(xi) :xiの標準不確かさ
ci
:感度係数
y
:全ての認められた有意な系統的影響を補正した測定結果(測定量の推定値)
Ui(y) :yの標準不確かさ
uc(y) :yの(合成)標準不確かさ
U(y) :yの拡張不確かさ
k
:包含係数
δXi
:影響量Xiに対する補正値
G.3
試験方法に対する不確かさバジェット
G.3.1 測定量の定義
測定量は,箇条5で規定する開回路試験レベルU0である。
注記 U0は,150 kHzと80 MHzとの間の特定の周波数において,結合デバイスを通じて150 Ω負荷
に供給される電圧であり,MUを求める場合は,dB(μV)で表している。
G.3.2 測定量のMUへの寄与
図G.1〜図G.4に示す要因図は,試験電圧レベルへの影響の例である。この要因図は,全ての要因を網
羅していないと理解するのがよい。要因図からの最も重要な寄与を,表G.1〜表G.8の不確かさのバジェ
ット例に示す。異なる試験場所又は試験所の比較可能なバジェットを得るために,少なくとも表G.1〜表
G.8に記載する寄与成分を不確かさの計算に用いる。MUの計算において,試験所が特定の環境の下で追
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加の寄与成分(例えば,タイプA)を含む場合があることに注意する。
図G.1−CDN使用時の試験電圧レベルへの影響の例
図G.2−EMクランプ使用時の試験電圧レベルへの影響の例
図G.3−電流クランプ使用時の試験電圧レベルへの影響の例
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図G.4−直接注入デバイス使用時の試験電圧レベルへの影響の例
G.3.3 拡張不確かさに対する入力量及び計算例
次の例は,試験の間用いない測定機器を除き,試験レベル設定手順に用いる測定装置が試験電圧レベル
[試験レベル設定に対する測定セットアップは,図9 c) 及び図G.5に示す]を発生するためにも用いるこ
とを仮定している。しかしながら,異なる測定装置を用いる場合,表G.1〜表G.8で示す不確かさの寄与
を見直す(表G.1〜表G.8の注を参照)。したがって,レベル設定時に対して適用する不確かさ寄与(表G.1,
表G.3,表G.5及び表G.7)と試験時に対し適用する寄与(表G.2,表G.4,表G.6及び表G.8)とは同一で
はなく,(若干)異なる不確かさバジェットになる。
表G.1〜表G.8は,電圧レベル設定に対する不確かさバジェットの例である。各不確かさバジェットは,
レベル設定の不確かさ及び試験に対する不確かさの二つの部分で構成する。レベル設定時において,Uxと
Umrとの間の関係が決定し(図G.5参照),試験時にUxが再現できる。
a) CDNを用いた場合の不確かさバジェット
CDNを用いた場合のレベル設定時及び試験時の不確かさを,表G.1及び表G.2に示す。
CDN電圧レベル設定時に対するモデル関数(全ての量は対数で表現):
ML
SW
RCAL
LM
U
U
δ
δ
δ
δ
+
+
+
+
+
=
c
c
LMc
0
dB
6.
15
··························· (G.1)
寄与の説明:
ULMc:電力計から得られる電圧表示Umr dB(uV)
注記1 式(G.1)のその他の記号は,記号の説明に含む。
CDN試験時に対するモデル関数(全ての量は対数で表現):
t
t
x
0
)5/6
log(
20
SW
CAL
LMC
U
U
δ
δ
δ
+
+
+
+
=
································· (G.2)
ここに,
)5
log(
20
LMc
x
+
=U
U
注記2 式(G.2)の記号は,記号の説明に含む。
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図G.5−レベル設定セットアップのための回路
表G.1−CDNのレベル設定時のバジェット
記号
不確かさの要因 Xi
U(xi) 単位 確率分布
除数 u(xi) 単位 ci ui(y) 単位 ui(y)2 単位
δRCAL
150 Ω−50 Ω変換アダプタの偏差
0.3
dB 一様
1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
150 Ω−50 Ω変換アダプタの校正
0.2
dB 正規 k=2
2
0.10 dB 1 0.10 dB 0.01 dB
δSETUP レベル設定のセットアップ
0.35 dB 正規 k=1
1
0.35 dB 1 0.35 dB 0.12 dB
δLMc
レベルメータ
0.5
dB 一様(方形) 1.73 0.29 dB 1 0.29 dB 0.08 dB
δSWc
ソフトウェア設定許容範囲
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
δLMCca) 制御ループ内のレベルメータ
0
dB 一様(方形) 1.73 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δTGca)
試験信号発生器
0
dB 一様(方形) 1.73 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δMTcb)
信号発生器とCDNとの間の不整合
0
dB U字形
1.41 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δML
レベルメータとCDNとの間の不整合 0.5
dB U字形
1.41 0.35 dB 1 0.35 dB 0.13 dB
注a) 注記3及び注記4を参照。
b) 注記5を参照。
Σui (y)2
0.40 dB
合成不確かさ u(y)=ÖΣui(y)2
0.63 dB
拡張不確かさ (CAL) U=u(y)'k,k = 2
1.27 dB
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表G.2−CDNの試験時のバジェット
記号
不確かさの要因 Xi
U(xi) 単位 確率分布
除数 u(xi) 単位 ci ui(y) 単位 ui(y)2 単位
δCAL
校正
1.27 dB 正規 k=2
2
0.63 dB 1 0.63 dB 0.40 dB
δLMCta) 制御ループ内のレベルメータ
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
δTGta)
試験信号発生器
0
dB 一様(方形) 1.73 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δMTtb)
信号発生器とCDNとの間の不整合
0
dB U字形
1.41 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δSWt
ソフトウェア設定許容範囲
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
注a) 注記3及び注記4を参照。
b) 注記5を参照。
Σui(y)2
0.46 dB
合成不確かさ u(y)=ÖΣui(y)2
0.68 dB
拡張不確かさ U=u(y)'k,k = 2
1.36 dB
注記3 レベルメータ(LMC)又は試験信号発生器(TG)の寄与は,試験信号発生器及び増幅器出力
レベルの制御ループを用いるか否かに応じて,レベル設定時及び/又は試験時のための表G.1
及び表G.2中に含める。この例では,試験信号発生器は,制御ループの一部となるので不確
かさバジェットに寄与しない。制御ループからの寄与は,レベルメータによって確定する(注
記4参照)。ただし,試験信号発生器は,試験機関の個々の試験セットアップに依存するこの
項を試験機関が考慮できることを示唆するため,表G.1及び表G.2に含める。この場合,TG
の寄与のより詳細な分析が必要である。記号の説明を参照。
注記4 同じ装置をレベル設定及び試験に用いる場合,再現性及びリニアリティの寄与だけ試験時の
ための表G.2に含める。レベル設定の寄与は,無視することができる。
注記5 同じ回路をレベル設定及び試験に用いる場合,これらの寄与は表G.1及び表G.2中に含まな
い。
記号の説明:
RCALは,150 Ωから50 Ωへの変換アダプタの不確かさである。この寄与は,通常校正報告書から得
られる,又はVNAで測定した挿入損失を用いて求めることができる[図8 c) 参照]。規定の損失(9.5 dB)
からの最大偏差及びその校正の不確かさは,表G.1及び表G.2に含めることを推奨する。校正証明書が
許容範囲に対し合否だけ記載している場合,0.5 dBの値を用いることを推奨する。
注記6 偏差はソフトウェアで補正できる。この場合,最大偏差は,補間の不確かさ及び校正の不確
かさにまで減少させることができる。
注記7 150 Ωから50 Ωへの変換アダプタのインピーダンスも,例えばVNAを用いて直接測定でき
る,又は校正証明書から取り出すことも可能である。この場合,100 Ωからの偏差及び校正
の不確かさは,表G.1及び表G.2に含めることができる。その結果,この寄与に対する感度
係数ciは,変化する。
SETUP は,校正ジグ,CDNとCDNアダプタとの間の接続,及び基準グラウンド面の影響,例えば基
準グラウンド面への接続など,レベル設定時のセットアップによって導入された不確かさの組合せであ
る。この寄与は,条件を変化させて実施した再現試験の結果によって得られる,又はバジェット表の例
で示すような知見に基づいて推定できる。
LMc は,レベルメータ(すなわち,CDNの出力端でレベルの測定に用いる電圧計又は電力計)の不
確かさである。不確かさは,例えば,製造業者の仕様書から引用するが,他の根拠からも決定できる。
SWc は,レベル設定時におけるレベル設定のため,信号発生器の離散的なレベルステップ幅及びソフ
トウェアウィンドウ(目的のレベルに対する設定許容範囲)から決定する不確かさである。ソフトウェ
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
アウィンドウは,通常,試験所によって調節できる。
LMCc は,レベルメータ(すなわち,信号発生器及び増幅器の出力レベルの制御ループに用いる電圧
計又は電力計)の不確かさである。不確かさは,製造業者の仕様書から引用又は他の根拠から決定する
ことができる。
TGc は,信号発生器,電力増幅器及び減衰器を含む試験信号発生器のレベル設定時における不確かさ
である。不確かさは,製造業者の仕様書から引用又は他の根拠から決定できる。
注記8 試験信号発生器の個々の構成要素(例えば,信号発生器,電力増幅器の安定度,電力増幅器
の急激な利得変動,減衰器など)の不確かさは,特に制御ループを試験のセットアップで用
いない場合は個別に評価できる。
MTc は,増幅器,減衰器及びCDN間のレベル設定時における不整合の合成である。
ML は,CDN及びレベルメータ間の不整合である。
CALは,レベル設定時における試験電圧レベルの拡張不確かさである。
LMCt は,電力増幅器の出力で用いたレベルメータ(例えば,電圧計)の製造業者の仕様書に記載す
る不確かさである。代替として,不確かさを小さくするために,電力計を用いてもよい。
TGt は,信号発生器,電力増幅器及び減衰器を含む試験信号発生器の試験時の不確かさである。不確
かさは,製造業者の仕様書から引用又は他の根拠から決定できる。
注記9 試験信号発生器の個々の構成要素(例えば,信号発生器,電力増幅器の安定度,電力増幅器
の急激な利得変動,減衰器など)の不確かさは,特に制御ループを試験のセットアップで用
いない場合は個別に評価できる。
MTt は,増幅器,減衰器及びCDN間の試験時の不整合の合成である。この不確かさの寄与は,同じ
構成(すなわち,減衰器及びケーブル)をレベル設定及び試験に用いる場合は無視できる。
SWt は,試験時のレベル設定のため,信号発生器の離散的なレベルのステップ幅及びソフトウェアウ
ィンドウから決定する不確かさである。ソフトウェアウィンドウは,通常,試験所によって調節できる。
b) EMクランプを用いた場合の不確かさバジェット
EMクランプを用いた場合のレベル設定時及び試験時の不確かさを表G.3及び表G.4に示す。
EMクランプの電圧レベル設定時に対するモデル関数(全ての量は対数で表示):
ML
SW
SETUP
RCAL
LM
U
U
δ
δ
δ
δ
δ
+
+
+
+
+
+
=
c
c
LMc
0
dB
6.
15
············· (G.3)
寄与の説明:
ULMc:電力計から得られる電圧表示Umr dB(μV)
注記1 式(G.3)のその他の記号は,記号の説明に含む。
EMクランプの試験時に対するモデル関数(全ての量は対数で表示):
AETERM
SW
CAL
LMC
U
U
δ
δ
δ
δ
+
+
+
+
+
=
t
t
x
0
)5/6
log(
20
················· (G.4)
ここに, Ux=ULMc+20 log(5)
注記2 式(G.4)の記号は,記号の説明に含む。
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C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表G.3−EM クランプのレベル設定時のバジェット
記号
不確かさの要因 Xi
U(xi) 単位 確率分布 除数 u(xi) 単位 ci ui(y) 単位 ui(y)2 単位
δRCAL 150 Ω−50 Ω変換アダプタの偏差
0.3 dB 一様
1.73
0.17 dB 1
0.17 dB 0.03 dB
150 Ω−50 Ω変換アダプタの校正
0.2 dB 正規 k=2 2
0.10 dB 1
0.10 dB 0.01 dB
δSETUP レベル設定のセットアップ
0.35 dB 正規 k=1 1
0.35 dB 1
0.35 dB 0.12 dB
δLMc
レベルメータ
0.5 dB 一様(方形) 1.73
0.29 dB 1
0.29 dB 0.08 dB
δSWc
ソフトウェア設定許容範囲
0.3 dB 一様(方形) 1.73
0.17 dB 1
0.17 dB 0.03 dB
δLMCca) 制御ループ内のレベルメータ
0
dB 一様(方形) 1.73
0.00 dB 1
0.00 dB 0.00 dB
δTGca) 試験信号発生器
0
dB 一様(方形) 1.73
0.00 dB 1
0.00 dB 0.00 dB
δMTcb) 信号発生器とクランプとの間の不整合
0
dB U字形
1.41
0.00 dB 1
0.00 dB 0.00 dB
δML
レベルメータとクランプとの間の不整合 −0.5 dB U字形
1.41 −0.35 dB 1 −0.35 dB 0.13 dB
注a) 注記3及び注記4を参照。
b) 注記5を参照。
Σui(y)2
0.40 dB
合成不確かさ u(y)=ÖΣui(y)2
0.63 dB
拡張不確かさ U=u(y)'k,k = 2
1.27 dB
表G.4−EM クランプの試験時のバジェット
記号
不確かさの要因 Xi
U(xi) 単位 確率分布 除数 u(xi) 単位 ci ui(y) 単位 ui(y)2 単位
δCAL
校正
1.27 dB 正規 k=2 2
0.63 dB
1
0.63
dB 0.40 dB
δLMCta)
制御ループ内のレベルメータ
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB
1
0.17
dB 0.03 dB
δTGta)
試験信号発生器
0
dB 一様(方形) 1.73 0.00 dB
1
0.00
dB 0.00 dB
δMTtb)
信号発生器とクランプとの間の不整合 0
dB U字形
1.41 0.00 dB
1
0.00
dB 0.00 dB
δSWt
ソフトウェア設定許容範囲
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB
1
0.17
dB 0.03 dB
δAETERM AE 終端
2.5
dB 一様(方形) 1.73 1.45 dB
1
1.45
dB 2.09 dB
注a) 注記3及び注記4を参照。
b) 注記5を参照。
Σui(y)2
2.55 dB
合成不確かさ u(y)=ÖΣui(y)2
1.60 dB
拡張不確かさ U=u(y)'k,k = 2
3.19 dB
注記3 レベルメータ(LMC)又は試験信号発生器(TG)の寄与は,試験信号発生器及び増幅器出力
レベルの制御ループを用いるか否かに応じて,レベル設定時及び/又は試験時のための表G.3
及び表G.4中に含む。この例では,試験信号発生器は,制御ループの一部となるので不確か
さバジェットに寄与しない。制御ループからの寄与は,レベルメータによって確定する(注
記4参照)。ただし,試験信号発生器は,試験機関の個々の試験セットアップに依存するこの
項を試験機関が考慮できることを示唆するため,表G.3及び表G.4に含めている。この場合,
TGの寄与のより詳細な分析が必要である。記号の説明を参照。
注記4 同じ装置をレベル設定及び試験に用いる場合,再現性及びリニアリティの寄与だけ試験時の
ための表G.4に含める。レベル設定の寄与は,無視することができる。
注記5 同じ回路をレベル設定及び試験に用いる場合,これらの寄与は表G.3及び表G.4中に含まな
い。
記号の説明:
幾つかの記号は,原則として,上記のCDNなどを用いた場合の記号を適用する。これらの記号は,
ここでは説明しない。
注記6 モニタリングプローブを用い,電流制限を適用する7.7に関する不確かさは,この附属書で
は考慮しない。この場合,U0の値は,レベル設定手順で決定した値と同じではなく,未知の
値に減少する。したがって,不確かさは,この場合のU0に割り当てることができない。
60
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
AETERMは,AEインピーダンスの影響である。そのインピーダンスは,150 Ωに維持するのが望まし
い。この値からの偏差は,EMクランプの方向性が弱くなる低い周波数範囲(10 MHz未満)で特に重大
な影響がある。この場合,不確かさのバジェットに対するAETERMの寄与は,ここで例を用いた数値よ
りも恐らく大きくなる。より低い値を10 MHz以上の周波数で用いてもよい。
この寄与は,VNAを用いて実験的に評価できる。クランプの結合係数は,150 ΩのAEインピーダン
スで測定し,異なるAEインピーダンスと比較することができる。
c) 電流クランプを用いた場合の不確かさバジェット
電流クランプを用いた場合のレベル設定時及び試験時の不確かさを表G.5及び表G.6に示す。
電流クランプ電圧レベル設定時に対するモデル関数(全ての量は対数で表示):
ML
SW
JIG
RCAL
LM
U
U
δ
δ
δ
δ
δ
+
+
+
+
+
+
=
c
c
LMc
0
dB
6.
15
·················· (G.5)
寄与の説明:
ULMc:電力計から得られる電圧表示Umr dB(μV)
注記1 式(G.5)のその他の記号は,記号の説明に含む。
電流クランプ試験時に対するモデル関数(全ての量は対数で表示):
AETERM
SW
CAL
LMC
U
U
δ
δ
δ
δ
+
+
+
+
+
=
t
t
x
0
)5/6
log(
20
················· (G.6)
ここに, Ux=ULMc+20 log(5)
注記2 式(G.6)の記号は,記号の説明に含む。
表G.5−電流クランプのレベル設定時のバジェット
記号
不確かさの要因 Xi
U(xi) 単位 確率分布 除数 u(xi) 単位 ci ui(y) 単位 ui(y)2 単位
δRCAL 150 Ω−50 Ω変換アダプタの偏差
0.3 dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
150 Ω−50 Ω変換アダプタの校正
0.2 dB 正規 k=2 2
0.10 dB 1 0.10 dB 0.01 dB
δJIG
レベル設定のセットアップ
0.5 dB 正規 k=1 1
0.50 dB 1 0.50 dB 0.25 dB
δLMc
レベルメータ
0.5 dB 一様(方形) 1.73 0.29 dB 1 0.29 dB 0.08 dB
δSWc
ソフトウェア設定許容範囲
0.3 dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
δLMCca) 制御ループ内のレベルメータ
0
dB 一様(方形) 1.73 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δTGca) 試験信号発生器
0
dB 一様(方形) 1.73 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δMTcb) 試験信号発生器とクランプとの間の不整合 0
dB U字形
1.41 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δML
レベルメータとクランプとの間の不整合
0.5 dB U字形
1.41 0.35 dB 1 0.35 dB 0.13 dB
注a) 注記3及び注記4を参照。
b) 注記5を参照。
Σui(y)2
0.53 dB
合成不確かさ u(y)=ÖΣui(y)2
0.73 dB
拡張不確かさ (CAL) U=u(y)'k,k = 2
1.46 dB
表G.6−電流クランプの試験時のバジェット
記号
不確かさの要因 Xi
U(xi) 単位 確率分布 除数 u(xi) 単位 ci ui(y) 単位 ui(y)2 単位
δCAL
校正
1.46 dB 正規 k=2 2
0.73 dB 1 0.73 dB 0.53 dB
δLMCta)
制御ループ内のレベルメータ
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
δTGta)
試験信号発生器
0
dB 一様(方形) 1.73 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δMTtb)
信号発生器とクランプとの間の不整合
0
dB U字形
1.41 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δSWt
ソフトウェア設定許容範囲
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
δAETERM AE 終端
2.5
dB 一様(方形) 1.73 1.45 dB 1 1.45 dB 2.09 dB
注a) 注記3及び注記4を参照。
b) 注記5を参照。
Σui(y)2
2.68 dB
合成不確かさ u(y)=ÖΣui(y)2
1.64 dB
拡張不確かさ U=u(y)'k,k = 2
3.27 dB
61
C 61000-4-6:2017 (IEC 61000-4-6:2013)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記3 レベルメータ(LMC)又は試験信号発生器(TG)の寄与は,試験信号発生器及び増幅器出力
レベルの制御ループを用いるか否かに応じて,レベル設定時及び/又は試験時のための表G.5
及び表G.6中に含む。この例では,試験信号発生器は,制御ループの一部となるので不確か
さバジェットに寄与しない。制御ループからの寄与は,レベルメータによって確定する(注
記4参照)。ただし,試験信号発生器は,試験機関の個々の試験セットアップに依存するこの
項を試験機関が考慮できることを示唆するため,表G.5及び表G.6に含めている。この場合,
TGの寄与のより詳細な分析が必要である。記号の説明を参照。
注記4 同じ装置をレベル設定及び試験に用いる場合,再現性及びリニアリティの寄与だけ試験時の
ための表G.6に含める。レベル設定の寄与は,無視することができる。
注記5 同じ回路をレベル設定及び試験に用いる場合,これらの寄与は表G.5及び表G.6中に含まな
い。
記号の説明:
幾つかの記号は,原則として,上記のCDNなどを用いた場合の記号を適用する。これらの記号は,
ここでは説明しない。
注記6 モニタリングプローブを用い,電流制限を適用する7.7に関する不確かさは,この附属書で
は考慮しない。この場合,U0の値は,レベル設定手順で決定した値と同じではなく,未知の
値に減少する。したがって,不確かさは,この場合のU0に割り当てることができない。
JIGは,試験ジグの不確かさの合成を示す。この合成は,条件を変えた再現性試験から得ることがで
き,又は実験に基づき評価することができる。
d) 直接注入を用いた場合の不確かさバジェット
直接注入を用いた場合のレベル設定時及び試験時の不確かさを表G.7及び表G.8に示す。
直接注入電圧レベル設定時に対するモデル関数(全ての量は対数で表示):
ML
SW
SETUP
RCAL
LM
U
U
δ
δ
δ
δ
δ
+
+
+
+
+
+
=
c
c
LMc
0
dB
6.
15
············· (G.7)
寄与の説明:
ULMc:電力計から得られる電圧表示Umr dB(μV)
注記1 式(G.7)のその他の記号は,記号の説明に含む。
直接注入試験時に対するモデル関数(全ての量は対数で表示):
DD
SW
CAL
LMC
U
U
δ
δ
δ
δ
+
+
+
+
+
=
t
t
x
0
)5/6
log(
20
························ (G.8)
ここに, Ux=ULMc+20 log(5)
注記2 式(G.8)の記号は,記号の説明に含む。
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表G.7−直接注入レベル設定時のバジェッド
記号
不確かさの要因 Xi
U(xi) 単位 確率分布 除数 u(xi) 単位 ci ui(y) 単位 ui(y)2 単位
δRCAL 150 Ω−50 Ω変換アダプタの偏差
0.3 dB 一様(方形) 1.73
0.17 dB 1
0.17
dB 0.03 dB
150 Ω−50 Ω変換アダプタの校正
0.2 dB 正規 k=2 2
0.10 dB 1
0.10
dB 0.01 dB
δSETUP レベル設定のセットアップ
0.5 dB 正規 k=1 1
0.50 dB 1
0.50
dB 0.25 dB
δLMc
レベルメータ
0.5 dB 一様(方形) 1.73
0.29 dB 1
0.29
dB 0.08 dB
δSWc
ソフトウェア設定許容範囲
0.3 dB 一様(方形) 1.73
0.17 dB 1
0.17
dB 0.03 dB
δLMCca) 制御ループ内のレベルメータ
0
dB 一様(方形) 1.73
0.00 dB 1
0.00
dB 0.00 dB
δTGca) 試験信号発生器
0
dB 一様(方形) 1.73
0.00 dB 1
0.00
dB 0.00 dB
δMTcb) 試験信号発生器とCDNとの間の不整
合
0
dB U字形
1.41
0.00 dB 1
0.00
dB 0.00 dB
δML
レベルメータとCDNとの間の不整合 −0.5 dB U字形
1.41 −0.35 dB 1 −0.35
dB 0.13 dB
注a) 注記3及び注記4を参照。
b) 注記5を参照。
Σui(y)2
0.53 dB
合成不確かさ u(y)=ÖΣui(y)2
0.73 dB
拡張不確かさ (CAL) U=u(y)'k,k = 2
1.46 dB
表G.8−直接注入試験時のバジェッド
記号
不確かさの要因 Xi
U(xi) 単位 確率分布 除数 u(xi) 単位 ci ui(y) 単位 ui(y)2 単位
δCAL
校正
1.46 dB 正規 k=2
2
0.73 dB 1 0.73 dB 0.53 dB
δLMCta)
制御ループ内のレベルメータ
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
δTGta)
試験信号発生器
0
dB 一様(方形) 1.73 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δMTtb)
信号発生器とクランプとの間の不整合 0
dB U字形
1.41 0.00 dB 1 0.00 dB 0.00 dB
δSWt
ソフトウェア設定許容範囲
0.3
dB 一様(方形) 1.73 0.17 dB 1 0.17 dB 0.03 dB
δDD
減結合デバイス
2.3
dB 一様(方形) 1.73 1.33 dB 1 1.33 dB 1.77 dB
注a) 注記1及び注記2を参照。
b) 注記5を参照。
Σui(y)2
2.36 dB
合成不確かさ u(y)=ÖΣui(y)2
1.54 dB
拡張不確かさ U=u(y)'k,k = 2
3.07 dB
注記3 レベルメータ(LMC)又は試験信号発生器(TG)の寄与は,試験信号発生器及び増幅器出力
レベルの制御ループを用いるか否かに応じて,レベル設定時及び/又は試験時のための表G.7
及び表G.8中に含む。この例では,試験信号発生器は,制御ループの一部となるので不確か
さバジェットに寄与しない。制御ループからの寄与は,レベルメータによって確定する(注
記4参照)。ただし,試験信号発生器は,試験機関の個々の試験セットアップに依存するこの
項を試験機関が考慮できることを示唆するため,表G.7及び表G.8に含めている。この場合,
TGの寄与のより詳細な分析が必要である。記号の説明を参照。
注記4 同じ装置をレベル設定及び試験に用いる場合,再現性及びリニアリティの寄与だけ試験時の
ための表G.8に含める。レベル調整の寄与は,無視することができる。
注記5 同じ回路をレベル調整及び試験に用いる場合,これらの寄与は表G.7及び表G.8中に含まな
い。
記号の説明:
幾つかの記号は,原則として,上記のCDNなどを用いた場合の記号を適用する。これらの記号は,
ここでは説明しない。
DDは,減結合デバイス及びAEによる終端の合成不確かさである。減結合が十分な場合,AE終端の
影響がないが,不十分な場合は,大きな影響がある。この寄与は,減結合素子のインピーダンスから計
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算できる。
G.4
計算したMUの表記及びその適用
MUは,通常dBで表記する試験レベルの不確かさへの寄与(例えば,電圧計の振幅仕様及びアダプタ
の挿入損失校正)と同様にするために,対数で計算する。したがって,バジェットも対数[例えば,dB(μV)]
で表記する。
試験電圧レベルは,電圧及びその拡張不確かさの最良の値を報告書に記載する。最良の値とは,適応周
波数範囲内の電圧U0の平均である。
測定不確かさの例を次に示す。
対数の表記では,
U0:129.5 dB(μV)±1.36 dB(CDN注入の例)
リニア表記では,
U0:3V+(17 %)−(14.5 %)
U0:3V
%
17
%
5.
14
+−
計算したMUは,様々な目的,例えば,製品規格,試験所認定などに用いられる。
この計算結果を,試験中のEUTに適用する試験レベルの設定のために用いることは意図しない。
また,6.4で規定した電圧許容範囲の要求事項の評価に用いることも意図しない。
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附属書H
(参考)
AEのインピーダンスの測定
H.1 一般
この附属書は,EUTと一緒に用いる一般のAEのコモンモードインピーダンスの測定方法に関する情報
を示す。試験のセットアップの詳細は,この規格の本体に規定している。AEユニットが常にEUTを一緒
に用いる場合は,一緒に試験を行う。
この附属書は,測定したAEのインピーダンスの値の例を示す。さらに,AEのコモンモードインピーダ
ンスが150 Ωの理想インピーダンスにどのように近似できるかの指針を示す。
H.2 コモンモードインピーダンス
H.2.1 インピーダンスの要求事項
箇条6及び箇条7に記載した試験セットアップに従って,AEのインピーダンスは,表H.1(表3から引
用)に示したインピーダンス要求事項に合致することが望ましい。
表H.1−AEのインピーダンス要求事項
パラメータ
周波数帯
0.15 MHz〜24 MHz
24 MHz〜80 MHz
|Zce|
150 Ω±20 Ω
150 Ω
Ω
−+45
60
注記 7.7に従った試験では,AEのインピーダンスは,この表の値よりも低いかもしれない。クランプ注
入時の電流のモニタリングに関する追加情報は,7.7を参照。
H.2.2 インピーダンスアナライザを用いた測定セットアップ
AEのインピーダンスは,図8 b) に示す測定セットアップを用いて測定する。AEのケーブルの全ての
配線は,150 kHzを超える周波数において150 Ωよりも十分低いインピーダンスで,インピーダンスアナ
ライザに接続する。AEは,測定中に機能し,かつ,電源及びその他のAE(ある場合)に接続する。ケー
ブルにインピーダンスアナライザを接続することでAEが正常動作しないことがある。
注記 20 nF以上のコンデンサを介することで,インピーダンスアナライザと接続できる。この場合,
AEのケーブルに接続している高電圧及び/又は高電流によってAE及びインピーダンスアナラ
イザが損傷しない様に注意する。
H.2.3 レベル設定セットアップを用いた測定
AEのインピーダンスは,図9 c) に示すレベル設定セットアップを用いても測定できる。この場合,AE
は,適切なCDNと並列に接続し,100 Ω校正抵抗(150 Ω−50 Ω変換アダプタ)と入力のインピーダンス
50 Ωの電圧計とを直列に接続する。
測定中の実際のセットアップ及びAEの操作は,H.2.2を参照。
AEのインピーダンスは,試験レベルU0でのAEの負荷による分圧の変化によって求める(図H.1参照)。
50 Ω電圧計から読み取る電圧限度値は,表H.2に示す。
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表H.2−AEのインピーダンス測定のための電圧分圧比
パラメータ
周波数帯
0.15 MHz〜24 MHz
24 MHz〜80 MHz
|Zce|
150 Ω±20 Ω
150 Ω
Ω
−+45
60
理論値(|Zce| = 150 Ω)
0.111×U0 (−19.1 dB)
0.111×U0 (−19.1 dB)
電圧上限
0.116×U0 (−18.7 dB)
0.123×U0 (−18.2 dB)
電圧下限
0.106×U0 (−19.5 dB)
0.097×U0 (−20.2 dB)
注記 この表の公称値は,測定不確かさは考慮せず,全てのインピーダンスは,純抵抗値を想定して
いる。したがって,指針であり要求ではない。
図H.1−電圧計を用いたインピーダンス測定
H.2.4 電流ブロープを用いる測定
AEのインピーダンスは,7.7に挙げた電流モニタリングプローブを用いて測定することもできる。この
場合,AEは適切なCDNと並列に接続し,注入CDNから流れる電流をモニターして,理想的な150 Ωの
AEインピーダンスから予想する電流と比較する。
図H.2のセットアップを用いてAEのインピーダンスを測定する。AEは,測定中に機能し,かつ,電源
及びその他のAE(ある場合)に接続する。CDNがAEとEUTとの間の機能信号の送信に影響することが
あるため,AEは正常動作しないことがある。
AEのインピーダンスは,試験レベルU0でのAEの負荷による分圧の変化によって求める。50 Ω電圧計
から読み取る電圧限度値は,表H.3に示す。この数値は0 dB(V/A)という理想的な変換係数をもつ電流
プローブの場合のものであることに注意する。プローブの変換係数が0 dB(V/A)でなければ,電圧の読
み値を実際の変換係数に合わせて補正しなければならない。
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表H.3−AEのインピーダンス測定のための電圧分圧比
パラメータ
周波数帯
0.15 MHz〜24 MHz
24 MHz〜80 MHz
|Zce|
150 Ω±20 Ω
150 Ω
Ω
−+45
60
理論値 (|Zce| = 150 Ω)
(ブロープの変換係数を0 dB
とした場合)
0.003 333×U0 (−49.5 dB)
0.003 333×U0 (−49.5 dB)
電圧上限
(プローブの変換係数を0 dB
とした場合)
0.003 571×U0 (−48.9 dB)
0.003 922×U0 (−48.1 dB)
電圧下限
(プローブの変換係数を0 dB
とした場合)
0.003 125×U0 (−50.1 dB)
0.002 778×U0 (−51.1 dB)
注記 この表の公称値は,測定不確かさは考慮せず,全てのインピーダンスは,純抵抗値を想定して
いる。したがって,指針であり要求ではない。
図H.2−電流プローブを用いたインピーダンスの測定
H.3 理想的なインピーダンスを得るための指針
一般的なAEを用い,150 Ωという理想的なAEコモンモードインピーダンスを得る目的は,試験の再現
性を得ることである。
CDNを用いることができないときは,再現性のある正確な結果を得るために,AEは150 Ωのコモンモ
ードインピーダンスをもつことが望ましい。これは,EUTに接続するAEのケーブルが次のいずれかの特
性をもつときに得られる可能性がある。
− 遮蔽ケーブルの場合,遮蔽がAEの金属きょう体(又はそのプリント配線板のグラウンド面)に接続
している。
− 無遮蔽ケーブルの場合,数本の線が直接又は高い容量結合で,きょう体又はプリント配線板のグラウ
ンド面に接続している。
金属きょう体をもったAEを使って150 Ωのインピーダンスを得る場合は,次のようにすることが望ま
しい。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− AEのきょう体を,150 Ωを通して基準グラウンド面に接続する。
− 100 pF未満の容量の電源絶縁トランスを用い,AEに電源を供給する。保護接地線は,直接接地して
はならない。安全性を考慮して,280 μHよりも大きいRFチョークを用いてもよい。直流電源(ガル
バニック絶縁付き)が必要な場合,又はバッテリを用いる場合も,同じ手順を適用する。
− 外部へのケーブルをできるだけ少なくする。
− AEケーブルを束ねてAEの近くに置き,AEを300 mmの絶縁体の上に置き,基準グラウンド面との
結合を減らす。
− 他のAEとの接続に,光ファイバ信号変換器を用いる。
きょう体が非導電性材料の場合,AEを使って150 Ωのインピーダンスを得る場合は,次のようにする
ことが望ましい
− 遮蔽ケーブルのシールドを,150 Ωを通して基準グラウンド面に接続するか,又はプリント配線板の
グラウンド面を,150 Ωを通して基準グラウンド面に接続する。
− コンデンサを経由してケーブルの全ての線を一緒にコモンポイントに接続し,150 Ωを介してそのポ
イントを基準グラウンド面に接続する。AEケーブルの線をまとめて接続するとき,高い電圧及び/
又は電流によってAEが破損しないように注意する。接続は,最低20 nFのコンデンサを経由させれ
ば可能となる。
上記の手段をとったにもかかわらず,AEのコモンモードインピーダンスを150 Ωに近づけることがで
きない場合は,可能なら,AEに終端処理した追加のCDNを加えてAEのコモンモードインピーダンスの
低減を試みる。表H.1の注記も参照。
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附属書I
(参考)
ポート間注入
I.1
一般
一つのポートに注入し,同じ種類の別のポートを終端処理している場合,EUTによってはRF信号によ
って敏感に反応するものがあることが経験的に分かっている。製品規格では,この規格の本体で規定して
いる手順に代えて,この附属書で説明している方法を規定してもよい。
この附属書は,EUTに同じ種類のポートが複数ある場合のポートの試験に関する情報を示している。こ
の附属書では,RF信号を同じ種類のポートの一つに注入し,7.5に従って選択したポートの代わりに残り
の同じ種類のポートに注入する方法を紹介する。
一つのポートに誘導し,同じ種類の別のポートに流れるRF信号に対するEUTのイミュニティを評価す
る目的で,7.5に規定するテストケースを補完するものとして試験を実施する。
同じ種類を複数もつポートの例には,ローカルエリアネットワーク,熱電対入力,アナログ入出力,デ
ジタル入出力,タコメータカウンタ入力があるが,これらだけに限らない。
I.2
同じ種類のポートを複数もつ場合の試験セットアップ
I.2.1
ポートの選択
注入は,同じ種類の二つのポート間で実施する。物理的にできるだけ近く配置している二つのポートを
選択して試験する。EUTに,異なる種類のポート群がある場合は,ポート群ごとに二つのポートを選択し
て試験する。
注記 製品規格では,特定のケーブル若しくはインタフェースの種類だけ,又はある一定の長さを超
えているケーブルをもつポートだけに試験を限定することができる。この附属書は,このよう
な限定されたポートだけに適用する。
I.2.2
ポート間注入の手順
一つのポートを注入ポートとして選択する。もう一つのポートは,50 Ωで終端したCDNに接続する(図
I.1参照)。
この規格の本体に従って,他の全てのEUTポートには減結合装置として用いるCDNを接続する。この
場合,この規格の本体で規定しているように,CDNには50 Ωの終端器は接続しない。
試験対象に複数の種類のポート群がある場合,それぞれのポート群ごとに試験する。
試験するポート群にCDNを用いることができない場合は,ポートへの注入に箇条7で規定している一
般規則を適用する。注入方法選択の指針は,図12を参照。
ポートの試験及び試験結果の取扱いは,この規格の本体の規定による。
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図I.1−ポート間注入のセットアップ例
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附属書J
(参考)
増幅器の圧縮及びノンリニアリティ
J.1
増幅器のひずみを制限する目的
増幅器のノンリニアリティは,EUTに加わる妨害信号の不確かさの要因となり得る。この附属書の目的
は,増幅器のノンリニアリティを低く保ち,不確かさに影響を与えないようにすることである。この附属
書は,増幅器のひずみを理解及び制限するための試験所に向けた指針である。
J.2
高調波及び飽和が原因として考えられる問題点
増幅器を飽和状態で用いる場合,次のような結果を生じることがある。
a) 電力計は基本波及び高調波の両方の総電力を測定するため,試験レベルの校正時の測定値に高調波が
大きく影響することがある。例えば,EMクランプ入力端子で第2次及び第3次高調波が基本周波数
よりも15 dB低いと仮定すると,それ以外の高調波は無視できる。さらに,実質的なEMクランプ係
数が,基本周波数のときに比べて,第3次高調波の周波数のときに5 dB低いと仮定する。基本周波数
の電圧レベルは,第3次高調波のレベルよりも10 dB高いだけである。10 Vの全振幅が測定した場合,
基本周波数の影響は9.5 Vだけの可能性がある。EMクランプ校正の不確かさよりも小さい場合,これ
は許容できる誤差である。スペクトラムアナライザのような周波数選択式装置はこの測定誤差はない。
b) EUTが意図する基本周波数に対しては影響を受けないが,高調波周波数に対しては強い影響を受ける
場合,高調波がEUTの誤動作の原因となることがある。誤動作は不正確に記録され,不正確な誤動作
対策につながる可能性がある。
c) 特別な状態で高調波が非常によく抑えられている場合でも,高調波が測定結果に影響を及ぼすことが
ある。例えば60 MHzの受信機を試験する場合,20 MHzの信号の高調波が十分微弱に抑えられていて
も,受信機の入力で過負荷になるときがある。似たような現象は,信号発生器が高調波に無関係な信
号(スプリアス)を出力している場合にも起こることがある。特殊なLPF又はノッチフィルタは,感
度の高いEUTの保護に用いることができる。
d) 測定可能な高調波がない場合でも飽和が内在することがある。これは,増幅器が高調波を抑えるLPF
を備えている場合,及び/又は内部回路及び複合技術で帯域端部の高調波を抑えるように働いている
場合に発生する。このような場合にも,次に示す例のように誤った結果を導くことがある。
1) 6.4.2に規定するアルゴリズムでは電力増幅器がリニアリティをもつことを前提としているため,こ
れが校正中に生じた場合,誤った校正データとなる。
2) 試験時のこの種の飽和は,不正確な変調指数及び変調周波数(通常1 kHz)となる。
上記の事例から分かるように,ひずみの影響は,試験するEUTの種類に大きく依存するため,電力増幅
器のひずみに対して,数値的な制限が与えられないことは明らかである。
J.3
妨害信号の高調波成分の制限
妨害信号の高調波成分は,電力増幅器の出力端子において,調整可能形,トラッキング形又は同調形LPF
を用いて制限できる。
電力増幅器の出力端子に生じた高調波は,J.2 c) において論じられた状況を除き,全ての周波数に対す
71
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る妨害信号の基本波と高調波との差は15 dB以上あれば十分である。
これによって,妨害電圧レベル誤差は2 %に制限される。例えば,広帯域で測定した10 V信号は,基本
波9.8 V及び高調波1.75 Vから生じる結果である。これは,校正の不確かさとして許容してもよい。
出力端子に固定LPFをもつ電力増幅器では,基本波周波数の上限は,電力増幅器の仕様上の最大周波数
の約1/3となる。
飽和した電力増幅器の高調波をLPFで抑制している場合,どのような状況(例えば,特性が最も悪い周
波数,変調を含んだ最大妨害電圧レベル)でも電力増幅器の2 dB圧縮点を超えないことが望ましい。2 dB
圧縮点で,最大電圧振幅は20 %減少する。これは,80 %変調指数が64 %に低くなること,言い換えると,
EUT内で検波される電圧の20 %低減となる。
J.4
イミュニティ試験へのリニアリティの影響
J.4.1
一般
イミュニティ試験の結果に影響を及ぼす問題は,電力増幅器のリニアリティ特性,高調波及び飽和であ
る。
6.4.2に規定するCDN及び/又はクランプのレベル設定手順は,用いる電力増幅器が入力信号に比例し
た出力を発生すると仮定している。
電力増幅器のリニアリティは,用いる電力増幅器が校正電圧レベル及びより低い計算されたレベルにお
いて,正しい妨害電圧レベルを生成することを保証するために検証することが望ましい。
電力増幅器のリニアリティは,振幅変調の変調度にも影響を与えるため,振幅変調度も検証することが
望ましい。
J.4.2
電力増幅器のリニアリティ特性評価
J.4.2.1
評価レベル範囲
電力増幅器のリニアリティ特性は,試験に用いる電力増幅器の周波数範囲及びレベル範囲全体にわたっ
て評価することが望ましい。これには,変調による変化分を考慮した,最小レベルから最大レベルを含ま
なければならない。
最大レベルは変調分を考慮し,連続波の最大レベルを5.1 dB増加する。
一つの結合デバイスレベル調整手順に基づいて,異なる試験妨害電圧レベルを計算して求めるときは,
試験に利用されるアンプ出力の最小と最大の範囲でリニアリティ特性評価を実施する。例えば,10 Vのレ
ベル調整手順から得られた値を用いて1 V試験を実施するならば,電力増幅器に定義された出力のリニア
リティ特性評価範囲は,最低でも1.8 V〜18 V(e.m.f.)と定義される。
いろいろな結合デバイスは,必要とする妨害レベルを達成するために異なる電力増幅器の出力を必要と
する場合があるため,それについても考慮する。例えば,電流クランプは,10 Vの妨害試験レベルを達成
するためにCDNよりも更に多くの電力を必要とする場合がある。
注記 6.4.2で規定する結合デバイス校正手順では,電力増幅器の最大の出力が5.1 dB増加するとき,
試験所は許容範囲2 dBを確認することを規定している。この手順は,J.4.2.2で記載するリニア
リティ特性を評価するのではなく,電力増幅器の飽和状態を確かめるだけに適用できる。
J.4.2.2
評価手順
電力増幅器のリニアリティ評価には,試験のために利用される結合デバイス及び試験装置のような実際
の負荷並びに環境条件を用いることが重要である。試験セットアップを図J.1に示す。
電力増幅器のリニアリティ特性は,少なくとも電力増幅器の周波数範囲の最小,中央及び最大の周波数
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で評価する。例えば,0.15 MHz〜80 MHzの電力増幅器の場合,0.15 MHz,40 MHz及び80 MHzを評価す
る。
注記 上記リニアリティ特性の測定結果の評価によって,他の周波数のリニアリティ特性が妥当であ
るとみなすことができる。
図J.1−電力増幅器のリニアリティ特性の測定セットアップ
リニアリティ特性の測定は,上記の各周波数において,次の手順に従って行う。
1) 結合デバイスを適切にセットアップするために,信号発生器の最小及び最大レベルの出力の設定を
決定する(J.4.2.1参照)。
2) 信号発生器を1) で決定した最小値に設定し,信号発生器の出力及び電力増幅器の進行波電力を記
録する。
3) 信号発生器の設定を1 dB増加し,そのときの信号発生器の出力及び電力増幅器の進行波電力を記録
する。
4) 1) で決定した信号発生器の最大値に到達するまで,3) を繰り返す。
5) 残りの周波数で2)〜4) を繰り返す。
J.4.2.3
リニアリティ特性の基準
J.4.2.2で得られた結果に関して,信号発生器の出力が1 dB増加するごとに,測定した電力増幅器の出力
も1 dB(電力増幅器のリニアリティ特性の許容範囲は±1 dBである)増加しなければならない。
J.4.2.2で記載した手順に従って記録した値が±1 dBの基準を満たす場合,評価した電力増幅器はリニア
リティ特性の基準を満たしている。記録した値がこのリニアリティ特性の基準を超えている場合は,J.4.2.4
及びJ.4.2.5を適用する。
ある周波数で出力された電力増幅器のリニアリティ特性,及び±1 dB許容範囲の例を図J.2に示す。こ
の例における信号発生器出力は,最小値の−30 dBmと最大値の0 dBmとの間の変化を示している。この
例では,電力増幅器は許容範囲を超えている。
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‒25
‒20
‒15
‒10
‒5
0
5
10
‒30
‒25
‒20
‒15
‒10
‒5
0
信号発生器出力値 (dBm)
電
力
増
幅
器
出
力
値
(
d
B
m
)
±1 dB
測定値
図J.2−リニアリティ特性の例
J.4.2.4
振幅変調の確認
J.4.2.3によって得た評価結果がリニアリティ特性の基準±1 dBを超えた場合,次の手順で振幅変調を確
認する。試験セットアップは図J.3に示す。
J.4.2.3の評価の結果,許容範囲を逸脱した全ての周波数で試験する。
図J.3−変調度の測定セットアップ
1) 対象の周波数において振幅変調を有効にし,信号発生器の出力をJ.4.2.1で決定した最大値にする。
2) 1) で決定した信号発生器の出力周波数を,図J.3に示すようにスペクトラムアナライザの中心周波
数に設定する。
3) 搬送波,上側波帯及び下側波帯の波形が画面に表示されるように,スペクトラムアナライザを設定
する。例えば,周波数スパンを10 kHz,分解能帯域幅を100 Hzとする。
4) 搬送波の値(Lcarrier)と上側波帯又は下側波帯(Lsideband)との振幅の差(Lcs = Lcarrier−Lsideband)を記録
する(図J.4参照)。
Lcsが10 dBよりも大きい(変調度が64 %未満)か,又はLcsが6 dBよりも小さい(変調度が100 %を超
える)場合,その結果を試験報告書に記録することが望ましい。
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図J.4−振幅変調信号のスペクトラム
J.4.2.5
電力増幅器のリニアリティ特性が基準を逸脱した場合のイミュニティ試験
J.4.2.3の評価結果が±1 dBの基準に適合しないが,J.4.2.4の基準に適合する場合には,実際の試験のと
き,次のいずれかの方法に従って進行波電力を調整する。
一つは,フィードバックを用いるシステムによって,電力計を用いて試験発生器からの進行波電力を監
視する方法である。
もう一つは,必要とする試験レベルごとに進行波電力を校正し,フィードバックを用いない方法である。
これらの方法は,いずれも6.1の要求事項に適合しなければならない。
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参考文献
[1] JIS C 61000-4-3 電磁両立性−第4-3部:試験及び測定技術−放射無線周波電磁界イミュニティ試験
注記 対応国際規格:IEC 61000-4-3,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 4-3: Testing and
measurement techniques−Radiated, radio-frequency, electromagnetic field immunity test(IDT)
[2] CISPR 16-1-2,Specification for radio disturbance and immunity measuring apparatus and methods−Part 1-2:
Radio disturbance and immunity measuring apparatus−Ancillary equipment−Conducted disturbances
[3] CISPR 16-1-4,Specification for radio disturbance and immunity measuring apparatus and methods−Part 1-4:
Radio disturbance and immunity measuring apparatus−Antennas and test sites for radiated disturbance
measurements
[4] CISPR 20,Sound and television broadcast receivers and associated equipment−Immunity characteristics−
Limits and methods of measurement
[5] IEC/TR 61000-1-6:2012,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 1-6: General-Guide to the assessment of
measurement uncertainty
[6] UKAS, M3003, Edition 2:2007,The Expression of Uncertainty and Confidence in Measurement,
www.ukas.com
[7] ISO/IEC Guide 98-3:2008,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of uncertainty in
measurement (GUM: 1995)
[8] IEC Guide 107 Edition 4.0 2014-07,Electromagnetic compatibility−Guide to the drafting of electromagnetic
compatibility publications