C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語,定義及び略語 ·········································································································· 2
4 一般······························································································································· 5
4.1 電力系統の開閉過渡現象 ································································································· 5
4.2 雷の過渡現象 ················································································································ 5
4.3 過渡現象のシミュレーション ··························································································· 6
5 試験レベル ······················································································································ 6
6 試験装置························································································································· 6
6.1 一般 ···························································································································· 6
6.2 1.2/50 µs CWG ··············································································································· 6
6.3 CDN ··························································································································· 10
6.4 CDNの校正 ················································································································· 18
7 試験セットアップ ············································································································ 21
7.1 試験装置 ····················································································································· 21
7.2 試験装置の検証 ············································································································ 22
7.3 EUTの電源ポートにサージを印加するときの試験セットアップ ············································· 22
7.4 非シールド非対称相互接続線に印加するときの試験セットアップ ··········································· 22
7.5 非シールド対称相互接続線に印加するときの試験セットアップ ·············································· 23
7.6 シールド線を用いた装置の試験セットアップ ······································································ 23
8 試験手順························································································································ 24
8.1 一般 ··························································································································· 24
8.2 試験室の基準条件 ········································································································· 24
8.3 試験の実施 ·················································································································· 24
9 試験結果の評価 ··············································································································· 25
10 試験報告書 ··················································································································· 26
附属書A(規定)広域分散システムに相互接続することを意図した屋外用非シールド対称通信線へのサー
ジ試験 ························································································································· 27
附属書B(参考)CWG及び試験レベルの選択 ·········································································· 33
附属書C(参考)補足説明 ···································································································· 36
附属書D(参考)低電圧配電系統へ接続される装置のイミュニティ達成への考察 ····························· 39
附属書E(参考)サージ波形の数理モデル化············································································· 41
附属書F(参考)測定不確かさ(MU)の考察 ··········································································· 50
附属書G(参考)サージ測定システムの校正方法 ······································································ 58
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014) 目次
(2)
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ページ
附属書H(参考)定格200 Aを超える電源線に対するサージの結合及び減結合 ································ 61
参考文献 ···························································································································· 63
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人電気
学会(IEEJ)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正す
べきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS C 61000-4-5:2009は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS C 61000の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 61000-3-2 第3-2部:限度値−高調波電流発生限度値(1相当たりの入力電流が20 A以下の機
器)
JIS C 61000-4-2 第4-2部:試験及び測定技術−静電気放電イミュニティ試験
JIS C 61000-4-3 第4-3部:試験及び測定技術−放射無線周波電磁界イミュニティ試験
JIS C 61000-4-4 第4-4部:試験及び測定技術−電気的ファストトランジェント/バーストイミュニ
ティ試験
JIS C 61000-4-5 第4-5部:試験及び測定技術−サージイミュニティ試験
JIS C 61000-4-6 第4-6部:試験及び測定技術−無線周波電磁界によって誘導する伝導妨害に対する
イミュニティ
JIS C 61000-4-7 第4-7部:試験及び測定技術−電力供給システム及びこれに接続する機器のための
高調波及び次数間高調波の測定方法及び計装に関する指針
JIS C 61000-4-8 第4-8部:試験及び測定技術−電源周波数磁界イミュニティ試験
JIS C 61000-4-11 第4-11部:試験及び測定技術−電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対するイ
ミュニティ試験
JIS C 61000-4-16 第4-16部:試験及び測定技術−直流から150 kHzまでの伝導コモンモード妨害に対
するイミュニティ試験
JIS C 61000-4-20 第4-20部:試験及び測定技術−TEM(横方向電磁界)導波管のエミッション及び
イミュニティ試験
JIS C 61000-4-22 第4-22部:試験及び測定技術−全電波無響室(FAR)における放射エミッション及
びイミュニティ試験
JIS C 61000-4-34 第4-34部:試験及び測定技術−1相当たりの入力電流が16 Aを超える電気機器の
電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対するイミュニティ試験
JIS C 61000-6-1 第6-1部:共通規格−住宅,商業及び軽工業環境におけるイミュニティ
JIS C 61000-6-2 第6-2部:共通規格−工業環境におけるイミュニティ
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日本工業規格 JIS
C 61000-4-5:2018
(IEC 61000-4-5:2014)
電磁両立性−第4-5部:試験及び測定技術−
サージイミュニティ試験
Electromagnetic compatibility (EMC)-Part 4-5: Testing and measurement
techniques-Surge immunity test
序文
この規格は,2014年に第3版として発行されたIEC 61000-4-5を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,電力系統における開閉及び雷の過渡現象による過電圧によって発生する単極性(正又は負)
のサージに対する,イミュニティ要求事項及び試験方法について規定する。これらの要求事項は,電気・
電子装置に適用し,異なる環境及び設置状態に関係する幾つかの試験レベルの範囲を規定する。この規格
の目的は,サージにさらされた場合の電気・電子装置のイミュニティを評価するための,共通の基準を確
立することにある。この規格では,装置又はシステムのイミュニティを評価するために,定義した現象に
対して一貫性のある試験方法を規定している。
注記1 この規格は,IEC Guide 107で記載しているように,製品規格を作成するときに用いる基本
EMC規格である。また,製品規格委員会は,このイミュニティ試験規格を適用すべきかどう
かを決定する責任をもつ。さらに,適用する場合,適切な試験レベル及び性能評価基準を決
める責任がある。基本EMC規格作成委員会は,それらの製品に対する特定のイミュニティ
試験値の評価について,製品規格委員会と協力する用意がある。
この規格では,次の事項を規定する。
− 試験レベルの範囲
− 試験装置
− 試験セットアップ
− 試験手順
この規格で規定する試験の目的は,開閉及び雷の影響によって発生するサージ電圧に対して,規定する
動作条件でのEUTの反応を見いだすことである。
高電圧ストレスに対するEUTの絶縁性能を試験することは,意図していない。この規格では,雷電流の
直接注入,すなわち,直撃雷は,考慮していない。
注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61000-4-5:2014,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 4-5: Testing and measurement
techniques−Surge immunity test(IDT)
2
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
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なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 60050-161 EMCに関するIEV用語
注記 対応国際規格:IEC 60050-161,International Electrotechnical Vocabulary. Chapter 161:
Electromagnetic compatibility
3
用語,定義及び略語
3.1
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 60050-161によるほか,次による。
3.1.1
アバランシェ素子(avalanche device)
指定した電圧でブレークダウン及び導通するように設計したダイオード,ガスアレスタ,その他の部品。
3.1.2
校正(calibration)
規定する条件で基準に照らして,表示値と測定値との間の関連性を確立するための一連の作業。
注記1 この用語は,“不確かさ”に関連する(附属書Fを参照)。
注記2 表示値と測定値との間の関連性は,通常,校正ダイヤグラムで説明することができる。
[IEC 60050-311:2001,311-01-09参照]
3.1.3
クランプ素子(clamping device)
指定値を超える印加電圧を制限するように設計したダイオード,バリスタ,その他の部品。
3.1.4
コンビネーション波形発生器,CWG(combination wave generator)
1.2/50 µs又は10/700 µsの開回路電圧波形,及び8/20 µs又は5/320 µsの短絡電流波形をそれぞれ備える
発生器。
3.1.5
結合回路網,CN(coupling network)
一つの回路からほかの回路へエネルギーを伝達させる目的をもつ電気回路。
3.1.6
結合・減結合回路網,CDN(coupling/decoupling network)
結合回路網及び減結合回路網の両方を一つの箱に収めた電気回路。
3.1.7
減結合回路網,DN(decoupling network)
EUTに印加するサージが,試験対象外の機器,装置又はシステムに影響することを防止するための電気
回路。
3
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
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3.1.8
持続時間(duration)
3.1.8.1
持続時間(サージ電圧の場合),Td(duration)
サージ電圧の瞬時値が,最初にピーク値の50 %に達してから,次のピーク値の50 %に達するまでの時
間間隔(図2及び図A.2のTwと等しい値)。
3.1.8.2
持続時間(8/20 µsサージ電流の場合),Td(duration)
サージ電流の瞬時値が,最初にピーク値の50 %に達してから,次のピーク値の50 %に達するまでの時
間間隔に1.18を乗じた仮想パラメータ(図3のTwに1.18を乗じた値)。
3.1.8.3
持続時間(5/320 µsサージ電流の場合),Td(duration)
サージ電流の瞬時値が,最初にピーク値の50 %に達してから,次のピーク値の50 %に達するまでの時
間間隔(図A.3のTwに等しい値)。
3.1.9
実効出力インピーダンス(effective output impedance)
サージ発生器の同じ出力ポートでのピーク短絡電流に対するピーク開回路電圧の比。
3.1.10
(削除)
注記 対応国際規格で定義する“電気設備(electrical installation)”は,この規格では用いていないた
め不採用とした。
3.1.11
フロントタイム(front time)
3.1.11.1
フロントタイム(サージ電圧の場合),Tf(front time)
サージ電圧がピーク値の30 %における時間と90 %における時間との時間間隔Tに1.67を乗じた仮想パ
ラメータ(図2及び図A.2のTに1.67を乗じた値)。
3.1.11.2
フロントタイム(サージ電流の場合),Tf(front time)
サージ電流がピーク値の10 %と90 %とになるときの時間間隔Trに1.25を乗じた仮想パラメータ(図3
及び図A.3のTrに1.25を乗じた値)。
3.1.12
高速通信線(high-speed communication lines)
100 kHzを超える伝送周波数で動作する入出力線。
3.1.13
イミュニティ(immunity)
電磁妨害が存在する環境で,機器,装置又はシステムが性能低下せずに動作することができる能力。
[JIS C 60050-161-01-20]
3.1.14
相互接続線(interconnection lines)
4
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I/O線(入出力線),通信線,及び/又は低電圧直流入出力線(60 V以下)。ここで,低電圧直流入出力
線とは,二次回路(交流電源から分離されている。)に,過渡的な過大電圧の影響を受けないもの(例えば,
確実に接地接続されている,リプルの振幅が直流成分の10 %未満の容量性フィルタをもつ直流二次回路な
ど)との接続線をいう。
3.1.15
電源ポート(power port)
装置の動作(機能)又は関連する装置を接続するために必要な一次電源を伝達する導体又はケーブルの
ポート。
3.1.16
一次保護(primary protection)
強力なエネルギーの大半が,特定のインタフェースを越えて伝わることを防止する手段。
3.1.17
基準グラウンド(reference ground)
あらゆる接地接続の影響も受けない,通常ゼロ電位で,かつ,導電性がある大地の一部。
[IEC 60050-195:1998,195-01-01]
3.1.18
立ち上がり時間,Tr(rise time)
サージの瞬時値が最初にピーク値の10 %に到達し,その後,90 %に到達するまでの時間間隔(図3及び
図A.3参照)。
[JIS C 60050-161-02-05,修正]
3.1.19
二次保護(secondary protection)
一次保護を通過したエネルギーを抑制する手段。
注記 二次保護は,特別のデバイス又はEUT固有の特性の場合がある。
3.1.20
サージ(surge)
急激な上昇の後に緩やかに減少する特徴をもったライン又は回路を伝達する電流,電圧又は電力の過渡
的波形。
[JIS C 60050-161-08-11,修正]
3.1.21
対称線(symmetrical lines)
ディファレンシャルモードからコモンモードへの変換損失が20 dBを超える,対称的に駆動する一対の
導体。
3.1.22
システム(system)
指定する機能を行うことによって,与えられた目的を達成するために構成する相互依存する要素のセッ
ト。
注記 システムは,環境及びほかの外部システムとの結合を分離する仮想の境界によって,環境及び
ほかの外部システムから切り離して考えている。これらの結合を通じて,システムは,環境に
よって影響を受けるか,外部システムによって影響されるか,又はシステム自身が環境若しく
5
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は外部システムに影響を与える。
3.1.23
過渡現象(transient)
対象とする時間スケールに比べて短い時間間隔で,二つの連続する定常状態の間を変化する現象若しく
は量に関係するもの,又はその呼称。
[JIS C 60050-161-02-01]
3.1.24
検証(verification)
試験装置システム(例えば,試験発生器及びその相互接続しているケーブル)を確認し,この試験シス
テムが機能することを証明する一連の作業。
注記1 検証の方法は,校正の方法と異なってもよい。
注記2 この定義は,IEC 60050-311(IEV 311-01-13)に規定する定義と異なっている。
3.2
略語
AE
補助装置(Auxiliary equipment)
CD
結合デバイス(Coupling device)
CDN
結合・減結合回路網(Coupling/decoupling network)
CLD
クランプ素子(Clamping device)
CN
結合回路網(Coupling network)
CWG
コンビネーション波形発生器(Combination wave generator)
DN
減結合回路網(Decoupling network)
EFT/B
電気的ファストトランジェント/バースト(Electrical fast transient/burst)
EMC
電磁両立性(Electromagnetic compatibility)
ESD
静電気放電(Electrostatic discharge)
EUT
供試装置(Equipment under test)
GDT
ガス入り放電管(Gas discharge tube)
MU
測定不確かさ(Measurement uncertainty)
PE
保護接地(Protective earth)
SPD
サージ保護デバイス(Surge protective device)
4
一般
4.1
電力系統の開閉過渡現象
電力系統における開閉の過渡現象は,その関連する過渡現象によって次のように分類できる。
a) コンデンサバンクの開閉のような,主電源系の開閉妨害。
b) 配電系統における,小さな局所的開閉動作又は負荷変動。
c) サイリスタ,トランジスタなどの半導体デバイスに起因する共振。
d) 設備の接地系統に対する短絡及び放電故障のような,各種のシステム故障。
4.2
雷の過渡現象
雷がサージ電圧を発生する主なメカニズムは,次による。
a) 外部(屋外)回路への直撃雷によって,接地抵抗又は外部回路のインピーダンスのいずれかに大電流
が流れることで電圧が誘起する。
6
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b) 間接的な雷撃(雲と雲との間,雲の内部,又は近くの物体への雷撃によって発生する電磁界)によっ
て,建物の外側及び/又は内側の導体に,電圧又は電流を誘起する(誘導雷)。
c) 近くの大地へ直接放電する雷によって,大地電流が設備の接地系統の共通接地経路に流れ込む。
雷保護デバイスが作動するときに発生する電圧及び電流の流れの急激な変化は,隣接した装置に電磁妨
害を誘起することがある。
4.3
過渡現象のシミュレーション
試験発生器は,できるだけ正確に4.1及び4.2に記載した現象を模擬する。
妨害源が同一回路内,例えば,電源供給回路内にある場合(直接結合),発生器は,EUTのポートにお
いて低インピーダンス源を模擬する。
妨害源が同一回路内にない場合(間接結合),発生器は,高インピーダンス源を模擬する。
5
試験レベル
推奨する試験レベルは,表1による。
表1−試験レベル
レベル
開回路試験電圧
kV
ライン−ライン間
ライン−グラウンド間b)
1
−
0.5
2
0.5
1.0
3
1.0
2.0
4
2.0
4.0
X a)
特殊
特殊
注a) Xは任意のレベルで,ほかのレベルよりも高い若しくは低い,又はレベル間
とすることができる。このレベルは,装置仕様に明確に記載する。
b) 対称的な相互接続線は,グラウンド(すなわち,ライン−グラウンド間)に
対して,同時に複数のラインに試験できる。
試験レベルは,設置条件に従って選択する。その設置条件の分類は,附属書Cに示す。
試験は,選択した試験レベル,及び表1に規定する下位の全ての試験レベルで行う(8.3参照)。
各種のインタフェースに対する試験レベルは,附属書Bを参照して選択する。
6
試験装置
6.1
一般
この規格では,2種類のCWGを規定する。それぞれの発生器は,試験ポートの種類に応じて適用する。
10/700 µs CWGは,屋外用の対称通信線へ接続することを意図する試験ポートに用いる(附属書A参照)。
1.2/50 µs CWGは,ほかの全ての場合に用いる。
6.2
1.2/50 µs CWG
6.2.1
一般
このCWGは,出力波形がEUTに印加する箇所で仕様を満たすことを意図している。これらの波形は,
開回路電圧及び短絡電流として規定し,EUTを接続せずに測定する。EUTの交流又は直流電源線にサージ
を印加する場合,電源線に印加するCDNの出力波形は,表4,表5及び表6を満足させる。CWG出力端
7
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子から直接サージを印加する場合,出力波形は,EUTを接続しない状態で,表2を満足させる。これらの
波形は,EUTだけに印加する場合であり,CWG出力及びCDNの出力を同時に満足することは意図してい
ない。
CWGは,次のサージを発生することを意図している。
− 開回路電圧のフロントタイム: 1.2 µs
− 開回路電圧の持続時間:
50 µs
− 短絡電流のフロントタイム:
8 µs
− 短絡電流の持続時間:
20 µs
CWGの簡易回路図を,図1に示す。各種の構成部品Rs1,Rs2,Rm,Lr及びCcの値は,CWGが1.2/50 µs
開回路電圧サージ及び8/20 µs短絡電流サージを出力するように選択する。
U
Rc
Cc
Rm
Lr
Rs1
Rs2
S
U:
高電圧源
Rc:
充電抵抗
Cc:
エネルギー蓄積コンデンサ
Rs1,Rs2:
サージ幅形成抵抗
Rm:
インピーダンス整合抵抗
Lr:
立ち上がり時間形成インダクタ
S:
放電スイッチ
図1−CWGの簡易回路図
CWGの同じ出力ポートのピーク開回路出力電圧とピーク短絡電流との比は,実効出力インピーダンス
とみなす。このCWGでは,実効出力インピーダンスは,2 Ωとなる。
CWGの出力をEUTに接続している場合,電圧及び電流の波形は,EUTの入力インピーダンスの影響を
受ける。サージをEUTに印加している間,この入力インピーダンスは,次のような場合に変化することが
ある。
a) 取り付けた保護デバイスが正常に動作した場合。
b) 保護デバイスがない又は動作しない状態で,次のいずれかが発生した場合。
− フラッシュオーバ
− EUTの部品破壊
したがって,負荷によって決まる1.2/50 µs電圧波形及び8/20 µs電流波形は,一つの発生器(CWG)で
出力する。
6.2.2
CWGの性能特性
CWGの性能特性は,次による。
− 極性
正及び負
8
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− 位相シフト
EUTの交流電源ラインの位相角0°〜360°の範囲。許容差は,±10°。
− 繰返し率
1分間に1回以上
− ピーク開回路出力電圧
0.5 kVから要求試験レベルまで可変である。
− サージ電圧波形
表2及び図2参照
− 出力電圧の許容差
±10 %
− ピーク短絡出力電流
ピーク開回路出力電圧の設定によって決まる(表2及び表3参照)。
− サージ電流波形
表2及び図3参照
注記 時間のパラメータは,10 Ωの抵抗を取り付けていないCWGの出力の短絡電流での値を示す(6.3
参照)。
− 短絡出力電流の許容差
±10 %
表2−1.2/50 µs及び8/20 µsの波形パラメータ
フロントタイム Tf
μs
持続時間 Td
μs
開回路電圧
Tf=1.67×T=1.2±30 %
Td=Tw=50±20 %
短絡電流
Tf=1.25×Tr=8±20 %
Td=1.18×Tw=20±20 %
表3−ピーク開回路出力電圧とピーク短絡出力電流との関係
CWG出力のピーク開回路出力電圧
kV
CWG出力のピーク短絡出力電流
kA
0.5
0.25
1.0
0.5
2.0
1.0
4.0
2.0
CWGの出力端子は,非接地状態で出力する。
9
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
フロントタイム:
Tf=1.67×T=1.2 µs±30 %
サージ電圧の持続時間:
Td=Tw=50 µs±20 %
注記 値1.67は,0.3と0.9との差(0.6)の逆数である。
図2−CDNを接続しないときのCWG出力での開回路電圧(1.2/50 µs)の波形
アンダーシュート(立ち下がり波形の基線を超える振幅)の図2及び図3に示す0〜−0.3の規定は,CWG
の出力だけに適用する。CDNの出力には,アンダーシュート又はオーバーシュート(立ち上がり波形目標
値を超える振幅)の制限はない。
フロントタイム:
Tf=1.25×Tr=8 µs±20 %
サージ電流の持続時間:
Td=1.18×Tw=20 µs±20 %
注記1 値1.25は,0.1と0.9との差(0.8)の逆数である。
注記2 値1.18は,実験値に基づく。
図3−CDNを接続しないときのCWG出力での短絡電流(8/20 µs)の波形
Tr
0〜−0.3
Tw
1,0
0,9
0,5
0,3
0,1
0,0
時間
正
規
化
電
流
1.0
0.9
0.5
0.3
0.1
0.0
0〜−0.3
時間
1,0
0,9
0,5
0,3
0,1
0,0
T
Tw
0~-0.3
正
規
化
電
圧
1.0
0.9
0.5
0.3
0.1
0.0
0〜−0.3
10
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アンダーシュートの規定は,CWGの出力だけに適用する。CDNの出力には,アンダーシュート又はオ
ーバーシュートの制限はない。
6.2.3
CWGの校正
試験発生器は,この規格の要求事項を満たすために校正する。校正は,次の手順による(附属書Gも参
照)。
CWGの出力は,波形の特性を観測するための電圧及び電流の仕様に十分な帯域幅をもつ測定システム
に接続する。サージ波形の帯域幅に関する情報を,附属書Eに示す。
短絡電流の測定に電流プローブを用いる場合,磁気コアが飽和しないものを選択することが望ましい。
プローブの低域カットオフ周波数(−3 dB)は,100 Hz未満が望ましい。
CWGの特性は,同じ試験電圧で,開回路(10 kΩ以上の負荷)及び短絡の双方の状態で,出力に直列に
接続した18 µFの外付けのコンデンサを介して測定する。
18 µFのコンデンサをCWGに内蔵している場合,18 µFの外付けのコンデンサは,必要ない。
6.2.2に規定する全ての性能及び特性は,位相シフトを除き,CWGの出力で満足することを確認する。
位相シフトの性能は,CDN出力のそれぞれの極性で0°,90°,180°及び270°で満足することを確認す
る。
注記 試験セットアップの要求事項に従って,2 Ωから例えば12 Ω又は42 Ωに信号源の実効出力イ
ンピーダンスを増加させるために,CWG出力に内部又は外部に抵抗を追加する場合は,CNの
出力で試験サージのフロントタイム及び持続時間は,大きく変化してもよい。
6.3
CDN
6.3.1
一般
CDNは,図5〜図11の例に示すように,結合回路網(CN)と減結合回路網(DN)とで構成する。
注記 結合抵抗及び/又はコンデンサは,CDNに内蔵しても,CWGに内蔵しても,又は外付けの部
品としてもよい。
交流又は直流電源線において,DNは,サージに対して相対的に高いインピーダンスとなるが,同時に
EUTに交流又は直流が流れる。このインピーダンスは,CDNのEUT出力端における規定のサージの発生
を妨げず,かつ,交流又は直流電源側へそのサージ電流が流入することを防止する。CNには,波形の持
続時間全体にわたりEUTへの結合ができる十分な性能をもった高圧コンデンサを用いる。交流又は直流電
源へ接続するCDNは,開回路電圧波形及び短絡電流波形のそれぞれが,表4,表5及び表6に規定する要
求事項を満足するように設計する。
I/O線及び通信線は,DNの直列インピーダンスによって,データ転送が可能な帯域幅を制限することが
できる。結合素子は,線路に容量性負荷を付けてもよい場合にはコンデンサ,それ以外の場合にはクラン
プ素子又はアレスタを用いる。相互接続線に結合する場合,6.3.3に規定する結合メカニズムによって,サ
ージ波形がひずむことがある。
CDNは,6.3.2及び6.3.3の要求事項並びに6.4の校正の要求事項に満足させる。また,CDNは,図4の
フローチャートを用いて選択する。
11
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図4−CDNの選択方法
6.3.2
1相当たりの定格が200 A以下の交流又は直流電源回路のためのCDN
ピーク値,フロントタイム及び持続時間は,EUT出力ポートで,開回路電圧及び短絡電流に対して検証
する。CDNのEUTポートで測定する波形パラメータは,CWGに依存する。試験した特定のCWGとCDN
との組合せに対してだけ有効である。30 %のアンダーシュートの規定は,CWG出力だけに適用する。CDN
の出力には,アンダーシュート又はオーバーシュートの制限はない。CDNの出力波形を観測するときは,
十分な帯域幅,電圧及び電流の定格をもつ測定システムにCDNを接続する。
減結合インダクタンスは,CDNの定格電流でのCDNによる電源電圧降下が,CDN入力電圧の10 %以
下になるように,CDNの製造業者が選択する。ただし,1.5 mHを超えないことが望ましい。
CDNでの不要な電源電圧降下を防止するために,定格が16 Aを超えるCDNの場合は,減結合素子のイ
ンダクタンス値を減らす。結果として,無負荷での開回路電圧波形のピーク電圧及び持続時間は,表4,
表5及び表6に従った許容範囲内で変化してもよい。大電流のEUTは,インピーダンスがより低いため,
サージは,短絡状態のときに近い。したがって,大電流CDNにとっては,電流波形が重要となる。電圧
波形の大きな許容差は,許容できる。
結合モード?
ライン−グラウンド間
ライン−ライン間
交流又は直流電
源ポート?
シールド線?
シールド接続
の方法?
対称線?
CDNの選択
はい
いいえ
いいえ
はい
片端接地
両端接地
図12
図9
図10又は図11
はい
いいえ
単相又は直流:図5
三相:図7
単相又は直流:図6
三相:図8
交流又は直流
電源ポート?
シールド線?
対称線?
結合モード?
ライン−ライン間
12
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表4−CDNのEUTポートでの電圧波形規定
開回路状態でのサージ電圧パラメータa)
結合インピーダンス
18 μF
(ライン−ライン間)
9 μF+10 Ω
(ライン−グラウンド間)
ピーク電圧
定格電流が16 A以下
設定電圧の10
10
+−%
設定電圧の10
10
+−%
定格電流が16 A超32 A以下
設定電圧の10
10
+−%
設定電圧の10
10
+−%
定格電流が32 A超63 A以下
設定電圧の10
10
+−%
設定電圧の10
15
+−%
定格電流が63 A超125 A以下
試験電圧の10
10
+−%
設定電圧の1020
+−%
定格電流が125 A超200 A以下
設定電圧の10
10
+−%
設定電圧の1025
+−%
フロントタイム
1.2 μs±30 %
1.2 μs±30 %
持続時間
定格電流が16 A以下
50 μs
10
10
+−μs
50 μs1025
+−μs
定格電流が16 A超32 A以下
50 μs10
15
+−μs
50 μs1030
+−μs
定格電流が32 A超63 A以下
50 μs1020
+−μs
50 μs1035
+−μs
定格電流が63 A超125 A以下
50 μs1025
+−μs
50 μs1040
+−μs
定格電流が125 A超200 A以下
50 μs1030
+−μs
50 μs1045
+−μs
注記 この表の定格電流は,CDNの定格値である。
注a) サージ電圧パラメータの測定は,CDNの交流又は直流電源入力ポートを開回路状態にして行う。
表5−CDNのEUTポートでの電流波形規定
短絡状態での
結合インピーダンス
サージ電流パラメータa)
18 μF
(ライン−ライン間)
9 μF+10 Ω
(ライン−グラウンド間)
フロントタイム
Tf=1.25×Tr=8 μs±20 %
Tf=1.25×Tr=2.5 μs±30 %
持続時間
Td=1.18×Tw=20 μs±20 %
Td=1.04×Tw=25 μs±30 % b)
注a) サージ電流パラメータの測定は,CDNの交流又は直流電源入力ポートを開回路状態にして行う。
b) 1.04の値は,実験値に基づく。
表6−CDNのEUTポートでのピーク開回路出力電圧とピーク短絡出力電流との関係
CDNのEUTポートでのピーク
開回路出力電圧
±10 %
kV
CDN(18 µF)のEUTポー
トでのピーク短絡出力電流
±10 %
kA
CDN(9 µF+10 Ω)のEUTポート
でのピーク短絡出力電流
±10 %
A
0.5
0.25
41.7
1.0
0.5
83.3
2.0
1.0
166.7
4.0
2.0
333.3
1相当たりの定格入力電流が200 Aを超えるEUTについては,附属書Hを参照する。
この単相系(ライン,中性線及び保護接地)の特性は,三相系(三相線,中性線及び保護接地)に対し
ても適用できる。
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図5−交流又は直流電源線への容量結合に対するCN及びDNの例
ライン−ライン間結合
図6−交流又は直流電源線への容量結合に対するCN及びDNの例
ライン−グラウンド間結合
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スイッチS1及びS2:印加線の選択(1〜4)
試験中,スイッチS2の位置は,S1と同じ位置ではない。
図7−交流電源線(三相)への容量結合に対するCN及びDNの例
L2ライン−L3ライン間結合
スイッチS2:印加線の選択(1〜4)
図8−交流電源線(三相)への容量結合に対するCN及びDNの例
L3ライン−グラウンド間結合
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6.3.3
相互接続線用CDN
6.3.3.1
一般
6.3.3では,附属書Aに規定する広域分散システムに相互接続することを意図した屋外用非シールド対称
通信線を除く,全ての種類の相互接続線用CDNについて規定する。
結合方法は,相互接続ケーブルの種類,回路,及び製品仕様又は製品規格に従った動作条件の機能で選
択する。
非シールド線への結合には,相互接続線とCWGとの間を確実に分離し,かつ,サージを十分に伝送す
るCDを必要とする。
結合及び絶縁機能を満足するコンデンサ又はガスアレスタのようなあらゆるCDを用いてもよい。
コンデンサを用いた結合は,サージ波形を完全に維持するが,高速のデータ伝送のフィルタリング効果
によって影響を与える場合がある。
ガスアレスタのようなアバランシェ素子は,低い寄生容量をもつため,ほとんどの種類の相互接続線に
接続してもよい。アバランシェ素子の動作電圧は,できるだけ低いものを選択するが,試験するラインの
最大動作電圧よりも高くする。
全てのCDNは,6.4の校正要求事項に満足させる。
信号線が対称である場合,電流補償インダクタ(コモンモードチョークコイル)を,DNに用いる。
AE側の必要な減結合性能は,仕様に従って,用いる減結合素子(コイル,抵抗,コンデンサ,ガス充
塡チューブ,クランプ素子など)を決定する。減結合素子は,減結合性能及びAEの保護が最適であるこ
とを確実にするために,適切に選択する。
6.3.3.2
非シールド非対称相互接続線に対する結合・減結合サージ
非シールド非対称相互接続線への結合は,ライン−ライン間及びライン−グラウンド間の両方が試験で
きる。減結合には,1相当たり一つの減結合用チョークコイルを備える。
非シールド非対称相互接続線に対するCDNの例を,図9に示す。
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1) スイッチS1
− ライン−グラウンド間: 位置0
− ライン−ライン間:
位置1〜4
2) スイッチS2:印加相互接続線の選択:位置1〜4。ただし,スイッチS1と同じ位置ではない。
注記 CDについては,表8参照。
図9−非シールド非対称相互接続線に対するCN及びDNの例
ライン−ライン間及びライン−グラウンド間結合
6.3.3.3
非シールド対称相互接続線に対するCDN
シールドがない配線の性質から,対称相互接続線(ツイストペア)への結合は,常にコモンモード,す
なわち,全ラインとグラウンドとの間の結合である。
CWGからEUTへのエネルギー伝送は,ケーブルのライン数に依存せず一定であり,約40 Ωの結合イ
ンピーダンスと等価であるとみなす。この等価の結合インピーダンスは,ケーブル内の複数のライン間で
分割される。この理由から,ツイストペアに用いる結合抵抗の値は,それぞれ40 Ωの倍数となる。この規
定は,4ペア(8線)以下のケーブルに適用する。CDNは,ケーブル内のライン及びペアの数に合わせて
選択する。ただし,4ペア(8線)を超えるケーブルの場合は,4ペア(8線)以下に分割して,4ペア(8
線)の試験時の抵抗を用いて複数のCDNに接続する。
コモンモードチョークコイルは,高速のデータ伝送及び効率的な減結合に有効であるため用いる。
非シールド対称相互接続線に対するCDNの例を,図10に示す。
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結合抵抗値RCは,次のように算出する。
n=4の例
RC=4×40 Ω=160 Ω
各結合抵抗値は,並列の合成抵抗値が40 Ωになるように選択する。この図のポートへの試験の例では,四つの抵抗
は各々160 Ωとする。
電流補償コイルLは,効果を上げるために4ラインを1組にする場合と,2ラインを1組にする場合とがある。
注記 CDについては,表10参照。
図10−非シールド対称相互接続線に対するCN及びDNの例
ライン−グラウンド間結合
高速通信線の相互接続線の場合,図10及び図11の例を,用いることができる。
データ伝送において結合及び減結合コンデンサのフィルタリング効果を避けるために,コモンモードチ
ョークコイルを用いてバランスのとれた高周波を考慮した設計が必要となる。
通信速度1 000 Mbit/s以下の対称相互接続線の試験におけるCN及びDNの例を,図11に示す。
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結合抵抗値及び結合容量値の算出:
RC及びRD:結合抵抗値は,並列の合成抵抗値が40 Ωになるように選択する。例えば,2ペアのポートを試験する
場合,二つの抵抗は各々80 Ωとする。4ペアのポートを試験する場合,四つの抵抗は各々160 Ωとする。
RA,RB,C1,C2,L1,L2及びL3:全ての素子は,サージ波形の要求事項に整合するように選択する。
図11−非シールド対称相互接続線のCN及びDNの例
コンデンサによるライン−グラウンド間結合
CDNの影響によってEUTにおける通常の機能が達成できない場合,製品規格で適切な運用を規定する
か,又はサージイミュニティ試験を実施しないことを規定することが望ましい。
6.4
CDNの校正
6.4.1
一般
CDNは,CDNの違いによって試験結果に差異が出ないように,定期的に校正する。校正は,次の手順
によって,CDNの最も重要な特性を測定する。CDNのEUTポートで測定する波形パラメータは,CWG
に依存する(CDNの校正には,6.2.3の要求事項に適合したCWGを用いる。)。試験した特定のCWGと
CDNとの組合せに対してだけ有効である。
CDNの校正に用いる測定装置は,CWGの校正と同じ要求事項を適用する(6.2.3参照)。
6.4.2
1相当たりの定格が200 A以下の交流及び直流電源ポート用CDNの校正
CDNの特性は,同じ試験電圧で,開回路(10 kΩ以上の負荷)及び短絡(0.1 Ω未満の負荷)の双方の
状態で測定する。
EUT及び電源を接続していない状態で,DNの交流及び直流電源ポートにおけるサージ印加する電源線
とグラウンドとの間の残留サージ電圧の測定値が,印加した試験電圧の最大値の15 %,又はCDNの最大
定格電圧の2倍のいずれか高い方を超えないことを確認する。
EUT及び電源を接続していない状態で,サージを印加していない電源ポート側の電源線とグラウンドと
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の間の不要なサージ電圧の測定値は,印加した試験電圧の最大値の15 %を超えないことを確認する。
注記 CDNの構成によって,ライン−グラウンド間への印加時に試験電圧がライン−ライン間電圧に
顕著に現れることがある。高いインピーダンスをもつEUTの場合,この電圧はライン−ライン
間の試験レベル以上に高くなることがある(7.3参照)。
交流及び直流電源ポート開放時のCDN出力は,6.3.2の表4〜表6の全ての特性を満たすことを確認す
る。
6.4.3
相互接続線用CDNの校正
6.4.3.1
一般
相互接続線のCDNについても,試験と同様の構成(同じ結合素子及び減結合素子)で校正することが,
望ましい。
EUT及びAEを外した状態で,CDNのAE側におけるサージ印加ラインとグラウンドとの間の残留サー
ジ電圧を,測定及び記録する。
6.4.3.2
非対称相互接続線用CDNの校正
測定は,サージを一度に1線ずつ印加して行う。
表7に従って,CDNの定格に従ったEUT出力ポートにおけるサージ電圧及び電流に対するピーク値,
フロントタイム及び持続時間を測定する。
EUT出力ポートにおけるサージ電圧及び電流を測定するために,DNのAE側入力は,PEと短絡する。
残留電圧の値は,実際に用いるAEの仕様に基づく。したがって,この規格では,規定しない。
表7−非対称相互接続線用CDNの校正方法の概要
項目
結合
測定
AE側
EUT側
EUT側サージ電圧
1線ずつ
ライン−PE間
1線ずつ
ピーク電圧,フロントタ
イム及び持続時間
全てのラインをPE
に短絡
開回路
EUT側サージ電流
1線ずつ
ライン−PE間
1線ずつ
ピーク電流,フロントタ
イム及び持続時間
全てのラインをPE
に短絡
短絡
EUT側サージ電圧
1線ずつ
ライン−ライン間
1線ずつ
ピーク電圧,フロントタ
イム及び持続時間
全てのラインをPE
に短絡
開回路
EUT側サージ電流
1線ずつ
ライン−ライン間
1線ずつ
ピーク電流,フロントタ
イム及び持続時間
全てのラインをPE
に短絡
短絡
AE側残留電圧
(保護素子含む。)
1線ずつ
ライン−PE間
まとめたライン−PE間
ピーク電圧
開回路
開回路
この校正方法の目的は,素子の適切な機能,減結合用チョークコイルの飽和,DNの減結合効果,並び
にCNの電流容量及び結合効果を確認することである。ここで規定する結合方法は,サージ電圧及び電流
波形に影響する。この校正のためのパラメータは,表8による。
20
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表8−非対称相互接続線用CDNのEUTポートにおけるサージ波形特性
結合方法
CWG
出力
電圧
a), b)
CDNの
EUT出力
Voc
±10 %
電圧フロント
タイム
Tf
Tf=1.67×Tr
±30 %
電圧持続
時間
Td
Td=Tw
±30 %
CDNのEUT
出力
Isc
±20 %
電流フロント
タイム
Tf
Tf=1.25×Tr
±30 %
電流持続
時間
Td
Td=1.18×Tw
±30 %
ライン−PE間
R:40 Ω
CD:0.5 µF
4 kV
4 kV
1.2 µs
38 µs
87 A
1.3 µs
13 µs
ライン−PE間
R:40 Ω
CD:GDT
4 kV
4 kV
1.2 µs
42 µs
95 A
1.5 µs
48 µs
ライン−ライン間
R:40 Ω
CD:0.5 µF
4 kV
4 kV
1.2 µs
42 µs
87 A
1.3 µs
13 µs
ライン−ライン間
R:40 Ω
CD:GDT
4 kV
4 kV
1.2 µs
47 µs
95 A
1.5 µs
48 µs
注a) CDNの校正は,CWGの設定を4 kVとする。CLD及びGDTによるスイッチングノイズの影響を最小限に抑
えるため,CDNの最大定格電圧が4 kVを超える場合,CDN校正は,最大定格電圧で行うことを推奨する。
CDNの最大定格電圧が4 kV未満の場合,校正は,CDNの最大定格電圧で行う。この表の値は,CWGの設定
を4 kVにしたときのものであるため,短絡ピーク電流は,最大定格電圧に応じて変える。例えば,最大定格
電圧が1 kVの場合,この表の短絡電流値を1/4とする。
b) ガスアレスタ,クランプ又はアバランシェ素子を通した結合は,サージ波形に幾つかのスイッチングノイズ
が見える。最大定格電圧での校正は,フロントタイム及び持続時間の測定に対するこれらのスイッチングノ
イズの影響を最小にできる。
6.4.3.3
対称相互接続線用CDNの校正
校正における測定は,CDNの定格最大電圧で,表9に従って行う。ピーク値,フロントタイム及び持続
時間は,表9に従って,CDNのEUTポートで測定する。
EUTポートのサージ電圧及び電流を測定する場合,AEポートは,PEに短絡する。
残留電圧の値は,実際に用いるAEの仕様に基づく。したがって,この規格では,規定しない。
ペア線ともう一つのペア線との間の開回路電圧も測定することを推奨する。ペア線間同士の電圧は,平
衡度が高く通信するよう設計したEUTを誤動作させる。この値の許容値はEUTの設計によって決まる。
したがって,この規格では,規定しない。
21
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
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表9−対称相互接続線用CDNの校正手順
項目
結合
測定
AE側
EUT側
EUT側のサージ電圧
全ライン−PE間
合成抵抗40 Ω a)
全ラインをまとめて接続
ピーク電圧,フロントタ
イム及び持続時間
全ラインをPEに短絡
開回路
全ラインをまとめ
て接続
EUT側のサージ電流
全ライン−PE間
合成抵抗40 Ω a)
全ラインをまとめて接続
ピーク電圧,フロントタ
イム及び持続時間
全ラインをPEに短絡
全ラインをPEに
短絡
AE側の残留電圧
(保護素子含む。)
全ライン−PE間
合成抵抗40 Ω a)
PE対して各ラインを順番
に測定
ピーク電圧
開回路
開回路
注a) 合成抵抗40 Ωというのは,伝送インピーダンスが常に40 Ωという意味である。例えば,2ペアのポートを試
験する場合,四つの抵抗が各々160 Ωである。4ペアのポートを試験する場合,八つの抵抗が各々320 Ωであ
る。例えば,2ペアのポートを試験する場合,二つの抵抗が各々80 Ωである。4ペアのポートを試験する場合,
四つの抵抗が各々160 Ωである。図11の例では,2ペアのポートを試験する場合,二つの抵抗は各々80 Ωで
ある。
この校正手順の目的は,素子の適切な機能,減結合用チョークコイルの飽和,DNの減結合効果,並び
にCNの電流容量及び結合効果を確認することである。ここで規定する結合方法は,サージ電圧及び電流
波形に影響する。この校正のためのパラメータは,表10による。
表10−対称相互接続線用CDNのEUTポートにおけるサージ波形特性
結合方法
CWG
出力電圧
a), b)
CDNの
EUT出力
Voc
±10 %
電圧フロント
タイム
Tf
Tf=1.67×Tr
±30 %
電圧持続
時間
Td
Td=Tw
±30 %
CDNの
EUT出力
Isc
±20 %
電流フロント
タイム
Tf
Tf=1.25×Tr
±30 %
電流持続
時間
Td
Td=1.18×Tw
±30 %
コモンモー
ドCD c)
40 Ω経由
2 kV
2 kV
1.2 µs
45 µs
48 A
1.5 µs
45 µs
注a) CDNの校正は,CWGの設定を2 kVとする。CLD及びGDTによるスイッチングノイズの影響を最小限に抑
えるため,CDNの最大定格電圧が2 kVを超える場合,CDN校正は,最大定格電圧で行うことを推奨する。
CDNの最大定格電圧が2 kV未満の場合,校正は,CDNの最大定格電圧で行う。この表の値は,CWGの設定
を2 kVにしたときのものであるため,短絡ピーク電流は,最大定格電圧に応じて変える。例えば,最大定格
電圧が4 kVの場合,この表の短絡電流値を2倍とする。
b) ガスアレスタ,クランプ又はアバランシェ素子を通した結合は,サージ波形に幾つかのスイッチングノイズ
が見える。最大定格電圧での校正は,フロントタイム及び持続時間の測定に対するこれらのスイッチングノ
イズの影響を最小にできる。
c) CDは,コンデンサ,ガスアレスタ,アバランシェ素子,又はEUTが正常に操作するための必要なデータ伝
送を阻害せず,この表のサージ波形のパラメータに適合する方法を用いることができる。
7
試験セットアップ
7.1
試験装置
試験セットアップには,次の装置を用いる。
− EUT
− AE(必要な場合)
22
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− ケーブル(指定の形式及び長さ)
− CDN
− CWG
− シールド線への試験に用いるための基準グラウンド面(RGP)(7.6及び図12参照)
注記 JIS C 61000-4-4に規定するRGPを用いた試験セットアップを用いることもできる。
7.2
試験装置の検証
試験装置の検証の目的は,試験セットアップが適切かどうかを確かめることにある。試験セットアップ
は,次の装置で構成する。
− CWG
− CDN
− 試験装置の相互接続線
システムが正しく機能することを確かめるために,次の信号を確認する。
− CDNの出力端子におけるサージ波形
システムにEUTを接続しない状態で,任意のレベルのサージ波形が発生していることを,適切な測定装
置(例えば,オシロスコープ)を用いて確かめる。
注記 試験所は,この検証手順において試験所独自の基準値を定めることができる。
7.3
EUTの電源ポートにサージを印加するときの試験セットアップ
1.2/50 µsのサージは,容量性のCN(図5〜図8参照)を介して,EUTの電源端子に印加する。同じラ
インで電源の供給を受けているが,試験を行わない装置への影響を避け,かつ,試験するラインに規定の
サージを印加するために,サージに対し十分な減結合インピーダンスをもつDNを用いる。
CDNは,表4に規定するEUTの定格電流に適合するように選択する(例えば,定格電流が5 AのEUT
は,定格電流が16 AのCDNで試験する。)。表4の要求事項を満たしている場合,より高い定格電流のCDN
をそれよりも低い定格電流のEUTの試験に用いてもよい(例えば,定格電流が64 AのCDNが,定格電流
16 AのCDNの要求事項を満たす場合,このCDNを定格電流5 AのEUTの試験に用いることができる。)。
特に指定がない場合は,EUTとCNとの間の電源コードの長さは,2 m以下とする。
この規格では,交流電源又は直流電源の配電システムに直接接続された電源ポートを対象とする。
注記 電源配電システムに接続しない電源ポートに対して,6.3.2又は6.3.3に規定するCDNを用いた
試験を,製品規格に規定してもよい。
直流電源への試験は,ライン−ライン間(例えば,0 Vと−48 Vとの間)及び各ライン−グラウンド間
(例えば,0 Vとグラウンドとの間及び−48 Vとグラウンドとの間)を順次行う。
二重絶縁された製品(例えば,専用の接地端子をもたない製品など)には,ライン−グラウンド間の試
験を行わない。
PE以外の接地接続をもつ二重絶縁された製品に対して,ライン−グラウンド間の試験を,製品規格に規
定してもよい。
7.4
非シールド非対称相互接続線に印加するときの試験セットアップ
CDNは,試験する回路がもつ機能的条件に影響を及ぼさないようにする。CDNの例を,図9に示す。
特に指定がない場合,EUTとCNとの間の相互接続線の長さは,2 m以下とする。
二重絶縁された製品(例えば,専用の接地端子をもたない製品など)には,ライン−グラウンド間の試
験を行わない。
23
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
7.5
非シールド対称相互接続線に印加するときの試験セットアップ
対称相互接続線に用いるCDNの例を,図10及び図11に示す。
注記 結合素子としてアレスタを用いる場合,アレスタの放電電圧(定格電圧90 Vのガスアレスタの
場合,放電電圧は約300 V)よりも低い試験レベルは,指定できない。
特に指定がない場合,EUTとCNとの間の相互接続線の長さは,2 m以下とする。
高速信号伝送線に対する試験の場合,EUTに接続したCDNの影響によって正常に動作しないときは,
サージ試験を行わない。
7.6
シールド線を用いた装置の試験セットアップ
EUTを基準グラウンドに接続しないで,サージをその金属きょう(筐)体に印加する。試験するシール
ド線の末端(AEの接地端子)を,基準グラウンドに接続する。この試験は,単一又は複数のシールド線
をもつ装置に適用する(図12参照)。
注記 図12に示す基準グラウンドは,低インピーダンスを実現するために専用ケーブル又は金属板を
用いることが望ましい。
試験中のポートを除く全てのEUTへの接続は,保護接地端子をもつ絶縁変圧器,DNなどの適切な方法
で,グラウンドから分離する。
EUTとAE(図12のAE)との間のシールド線の長さは,20 mとする。ただし,実際に動作させるため
製造業者が提供する場合は,最も短いケーブルが10 mを超える長さでもよい。
製造業者の仕様が10 m以下のシールド線に対しては,試験を行わない。
EUTとAEとの間のケーブルは,無誘導で折り畳み,かつ,絶縁支持台の上に置く。
シールド線へサージを印加する方法は,次による。
a) 両端接地したシールド線の場合 シールド線へのサージの印加は,図12に従って行う。
サージは,出力インピーダンス2 ΩのCWGに18 µFのコンデンサを介して,シールドに印加する
(6.2.3参照)。
b) 片端接地したシールド線の場合 試験は,接地されていない側のシールド線に対して,7.4又は7.5(図
4参照)に従って行う。
注記 端だけ接地されているシールド線に対しては,この箇条に従ったサージ試験を行わない。
きょう(筐)体が金属ではないEUTに対しては,サージをシールド線のEUT側に直接印加する。
24
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
EUT及び/又はAEへの電源供給は,絶縁変圧器を介するより,DNを介したほうがよい。この場合,EUTのPEは,
DNに接続しないほうがよい。
直流電源で動作するEUT及び/又はAEには,DNを介して直流電源を供給することが望ましい。
AEをサージから絶縁するために,試験するケーブルのAE側の基準グラウンド面の接続は,AEのきょう(筐)体
に接続するよりもコネクタシェルに直接接続したほうがよい。更なる絶縁が必要な場合は,ケーブルの特性に影響を
与えないように(シールド付き中継アダプタ又はシールド付きイーサネット中継アダプタを用いて)ケーブルを延長
し,中継アダプタからグラウンドに接続してもよい。この場合,ケーブルの長さはEUTと中継アダプタとの間の長さ
となり,EUTとAEとの間の長さではない。中継アダプタとAEとの間の長さは重要ではない。
図12−シールド線を用いた装置の試験セットアップの例
8
試験手順
8.1
一般
試験手順には,次の事項を含む。
− 7.2に規定する試験装置の検証
− 試験室の基準条件の検証
− EUTの正常動作の検証
− 試験の実施
− 試験結果の評価(箇条9参照)
8.2
試験室の基準条件
8.2.1
気象条件
共通規格,製品群規格又は製品規格に規定がない限り,試験室の気象条件は,EUT及び試験装置の動作
に関してそれぞれの製造業者が指定する限度内とする。
EUT又は試験装置に結露が生じるほど相対湿度が高い場合には,試験を行わない。
8.2.2
電磁環境条件
試験室の電磁環境条件は,試験結果に影響を与えないように,EUTの正常動作を保証するものとする。
8.3
試験の実施
試験に先立って,試験装置の検証を行う(7.2参照)。
試験は,試験セットアップ及び次の事項を含む試験計画に従って行う。
− 試験レベル
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C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− サージの回数(各結合経路での回数) 製品規格に規定がない場合のサージ回数は,次に従う。
a) 直流電源ポート及び相互接続線に対しては,5回の正極性及び5回の負極性サージ
b) 交流電源ポートに対しては,0°,90°,180°及び270°の位相角で,それぞれ5回の正極性及び5
回の負極性サージ
− 連続するサージの時間間隔は,1分間以下とする。
注記0A 時間間隔は,製品規格で別の規定がある場合がある。
− EUTの代表的な動作条件
− サージを印加する場所
交流又は直流電源ポートは,入力ポートの場合も,出力ポートの場合もある。
EUTの出力ポートを経由してサージが侵入することがある場合には,出力ポートへのサージ印加を推奨
する(例えば,大きい消費電力をもつ負荷の切換え)。
三相電源システムを試験するとき,位相角に対する同期は,サージを印加するライン基準にする。例え
ば,サージをL2とL3との間に印加する場合,位相角の同期はL2とL3との間の電圧を基準とする。
意図する電源電圧がない線間にサージを結合する場合,位相同期は取らない。例えば,TN-S配電システ
ムのNとPEとの間。この場合には,5回の正極サージ及び5回の負極サージを印加する。
交流電源から分離した過渡過電圧の影響を受けない二次側回路(例えば,確実に接地接続し,容量性フ
ィルタをもち,リプルの振幅電圧が直流成分の10 %未満の直流二次側回路)の場合,60 V以下の直流入
出力ポートには,サージを印加しない。
注記1 複数の同じ回路がある場合,選択した数の回路で代表した試験を行えば十分である。
1分間に1回よりも短い間隔で行った試験結果が不適合であっても,1分間に1回の試験結果が適合する
場合は,これを優先する。
注記2 製品にとって適切な場合,製品規格は,異なる位相角を選択でき,位相角当たりのサージの
印加回数を増減することができる。
注記3 通常用いられる多くの保護素子は,ピーク電力又はピークエネルギーに対して大電流を処理
できるが,平均電力に対する能力は限定されている。したがって,二つのサージの時間間隔
は,EUTの内蔵保護素子に依存する。
注記4 試験の適用についての詳細を,C.2に示す。
ライン−グラウンド間の試験をする場合,ほかに規定がないときはは,1ラインずつ試験する。
EUTは,サージに対する電流−電圧特性が非線形であることを考慮し,選択した試験レベルを含む,全
てのより低い試験レベル(表1参照)でも試験する。
9
試験結果の評価
試験結果は,EUTの機能損失又は性能低下の観点から,その装置の製造業者,試験の依頼者又は製品の
受渡当事者間の協定によって指定した性能レベルと比較して分類する。推奨する分類を,次に示す。
a) 製造業者,試験の依頼者又は使用者が指定する仕様限度内の正常な性能。
b) 妨害がなくなった後に復帰する一時的な機能損失又は性能低下。操作者が介在することなく,EUTが
正常な性能に自己復帰する場合に限る。
c) 操作者の介在が必要な,一時的な機能損失又は性能低下。
d) ハードウェア又はソフトウェアの損傷によって復帰できない機能損失若しくは性能低下,又はデータ
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C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
の損失。
製造業者は,EUTへの影響のうち,重要ではないとみなして許容できる影響を,仕様書に指定してもよ
い。
上記の分類は,共通規格,製品群規格及び製品規格で性能基準を規定するときの指針として,又は適切
な共通規格,製品群規格及び製品規格が存在しない場合の受渡当事者間で性能基準に対する合意を行うた
めの枠組みとして用いてもよい。
装置は,試験を適用した結果として,危険な状態又は安全を欠いた状態になってはならない。
注記 イミュニティ達成への考察は,附属書Dを参照する。
10
試験報告書
試験報告書には,試験を再現するために必要な全ての情報を含める。特に,次の事項を記載する。
− 箇条8で要求する試験計画書で指定する項目。
− EUT及び関連装置の識別。例えば,商標,製品形式,製造番号。
− 試験装置の識別。例えば,商標,製品形式,製造番号。
− 試験を行った特別な環境条件。例えば,シールドルーム。
− 試験を行うために必要とする具体的な条件。
− 試験セットアップ及びEUT配置の図及び/又は写真。
− 受渡当事者間で指定する性能レベル。
− 共通規格,製品規格又は製品群規格に規定する性能基準。
− 妨害の印加中又は印加後に観測したEUTへの全ての影響,及びこれらの影響が持続した期間。
− 試験に用いた全てのケーブルの種類及び長さ,並びに接続したEUTのポート。
− 合否判定の根拠(共通規格,製品群規格若しくは製品規格に規定する,又は製造業者及び要求元若し
くは使用者との間で合意した性能評価基準に基づく。)。
− 適合性を達成するために必要な具体的な使用条件。例えば,ケーブルの長さ,ケーブルの種類,遮蔽,
接地又はEUTの動作条件。
− 結合方法を含む試験構成(ハードウェア)。
− 試験構成(ソフトウェア)。
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C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
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附属書A
(規定)
広域分散システムに相互接続することを意図した
屋外用非シールド対称通信線へのサージ試験
A.1 一般
屋外の電気通信ネットワーク[例えば,公衆交換電話網(PSTN)]に,直接接続することを意図した対
称通信線を試験するとき,1.2/50 µs及び8/20 µsの波形は適切ではない場合がある。屋外の電気通信ネット
ワークは,一般的にケーブルの長さは300 mを超え,数キロメートルの場合がある。これらのネットワー
クの特性として,10/700 µs及び5/320 µsの波形は,現場で遭遇する実際のサージの代表的なものである。
この附属書では,10/700 µs及び5/320 µsのCWGを用いて試験するときの試験方法及びCWGの特性を規
定する。
このような屋外の電気通信ネットワークは,一般的に建物又は設備の入口で一次保護された状態で用い
られている。試験対象ポートの正常な通信状態を確実にするために,この一次保護の性能を考慮する。一
次保護とEUT内部の二次保護との保護協調が検証できるように,意図した一次保護を含んだ状態で試験す
ることが望ましい。一次保護の正確な特性を指定できない場合は,一次保護のある場合及びない場合のい
ずれでも評価できるように,製品規格で異なる試験レベルを規定してもよい。
この現象の詳細は,ITU-T K.44に示されている。
A.2 10/700 μs CWG
A.2.1 CWGの特性
このCWGは,次の特性のサージを発生することを意図している。
− 開回路電圧のフロントタイム:10 µs
− 開回路電圧の持続時間:700 µs
− 短絡電流のフロントタイム:5 µs
− 短絡電流の持続時間:320 µs
このCWGの簡易回路図を,図A.1に示す。各種の構成部品の値は,CWGが10/700 µs開回路電圧サー
ジ及び5/320 µs短絡電流サージを出力するように選択する。
28
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
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U
Rc
Cc
Rm1
Rs
Rm2
Cs
S1
S
U:高電圧源
Rc:充電抵抗
Cc:エネルギー蓄積コンデンサ
Rs:パルス幅形成抵抗
Rm1,Rm2:インピーダンス整合抵抗
Cs:フロントタイム形成コンデンサ
S1:外部整合抵抗使用時に閉路するスイッチ
S:放電スイッチ
図A.1−CWGの簡易回路図
このCWGのピーク開回路出力電圧とピーク短絡電流との比は,実効出力インピーダンスとみなす。こ
のCWGでは,実効出力インピーダンスは40 Ωとなる。
A.2.2 CWGの性能特性
このCWGの性能特性は,次による。
− 極性
正及び負
− 繰返し率
1分間に1回以上
− ピーク開回路出力電圧
0.5 kVから要求試験レベルまで可変である。
− サージ電圧波形
表A.1及び図A.2参照
− 出力電圧の許容差
±10 %
− ピーク短絡出力電流
ピーク電圧の設定によって決まる(表A.1及び表A.2参照)
− 短絡出力電流の許容差
±10 %
注記 実効出力インピーダンスは,内部の15 Ω(Rm1)及び25 Ω(Rm2)抵抗からなる。抵抗Rm2は,
バイパス,並列回路の付加又は短絡ができ,更に,CDNを用いて結合する場合には外部整合抵
抗に置き換えることができる(図A.1参照)。
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C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
フロントタイム:
Tf=1.67×T=10 µs±30 %
持続時間:
Td=Tw=700 µs±20 %
図A.2−開回路電圧(10/700 µs)の波形
Tr
Tw
1.0
0.9
0.5
0.1
0.0
正
規
化
電
流
t
時間
フロントタイム:
Tf=1.25×Tr=5 µs±20 %
持続時間:
Td=Tw=320 µs±20 %
図A.3−短絡電流(5/320 µs)の波形
表A.1−10/700 μs及び5/320 μsの波形パラメータ
フロントタイム
µs
持続時間
µs
開回路電圧
10±30 %
700±20 %
短絡電流
5±20 %
320±20 %
T
1.0
0.9
0.5
0.3
0.1
0.0
正
規
化
電
圧
t
Tw
時間
Tw
30
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表A.2−ピーク開回路出力電圧とピーク短絡出力電流との関係
CWG出力のピーク開回路電圧
kV
CWG出力のピーク短絡電流
A
0.5
12.5
1.0
25
2.0
50
4.0
100
注記 ピーク短絡電流は,図A.1のスイッチS1を開いた状態で測定する。
ピーク開回路電圧及びピーク短絡電流は,同一のCWGで同じ設定で測定する。
A.2.3 CWGの校正
CWGは,異なるCWGからの試験結果に差異が出ないように,定期的に校正する。校正は,次の手順に
よって,CWGの重要な特性を測定する。
このCWGの出力は,波形の特性を観測するために十分な帯域幅,電圧及び電流の仕様をもつ測定シス
テムに接続する。サージ波形の帯域幅に関する情報を,附属書Eに示す。
短絡電流を測定するために電流プローブを用いる場合は,磁気コアの飽和が生じないように選択する。
プローブの低域カットオフ周波数は,10 Hz未満であることが望ましい。
このCWGの特性は,同じ試験電圧で,開回路(10 kΩ以上の負荷)及び短絡(0.1 Ω以下の負荷)の状
態で測定する。
このCWGの出力は,A.2.2に規定する全ての性能特性を満足させる。
A.3 CDN
A.3.1 一般
屋外用非シールド対称通信線(ツイストペア)の結合は,配線の特性によって,常にコモンモードであ
る。この場合の結合回路網及び減結合回路網を,図A.4に示す。
屋外用非シールド対称通信線に対しては,アレスタを経由した結合方法が望ましい(図A.4参照)。結合
回路網は,サージ電流をケーブル内のペアのラインに分配する機能ももつ。インピーダンス整合抵抗Rm2
(25 Ω)は,CDN側の結合抵抗Rc(25 Ω)に置き換える。
CDNの推奨特性は,次による。
− ライン当たりの結合インピーダンス:
Rc(25 Ω)とアレスタのインピーダンスとの和
− 減結合インダクタンスL:
20 mH
上記のCDNの回路及び部品定数は,データ転送の性能を低下させる可能性があるため,高速ネットワ
ーク(例えば,DSL)では適さない場合がある。
A.3.2 屋外用通信線のためのCDN
屋外用通信線のためのCDNの構成図及び試験セットアップを,図A.4に示す。
31
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
CWGのインピーダンス整合抵抗Rm2(25 Ω)は,結合抵抗Rc(25 Ω)に置き換える。
注記1 ガスアレスタは,図9のCDに示すようなクランプ素子に置き換えることができる。
注記2 ポートに指定の一次保護を用いることを意図している場合,保護素子との協調を確実にするために一次保護
を定位置に取り付けて試験を行う。
図A.4−屋外用非シールド対称通信線に対する試験セットアップの例:
一次保護を備えたガスアレスタ経由のライン−グラウンド間結合
A.4 CDNの校正
測定は,一つの結合ペア線にサージを同時に印加して行う。
CDNのピーク振幅,フロントタイム及び持続時間は,開回路状態のサージ電圧及び短絡状態の電流で測
定する。波形特性は,表A.4による。
EUTポートにおけるサージ電圧及びサージ電流は,DNのAE側入力をPEに短絡して測定する。
残留電圧の値は,AEの保護要求によって決まる。したがって,この規格では,規定しない。
校正方法は,表A.3による。
表A.3−屋外用非シールド対称通信線に対するCDNの校正方法の概要
測定項目
結合
測定
AE側
EUT側
EUT側のサージ電圧
ペア線−PE間
ペア線の両線を共に短絡:
ピーク電圧,フロントタイム
及び持続時間
用いる全ての線を
PEに短絡
開回路及びペア線
の両線を共に接続
EUT側のサージ電流
ペア線−PE間
ペア線の両線を共に短絡:
ピーク電流,フロントタイム
及び持続時間
用いる全ての線を
PEに短絡
ペア線の両線をPE
に短絡
AE側の残留電圧
(保護素子あり)
ペア線−PE間
ペア線の両線を共に短絡:
ピーク電圧
開回路
開回路
32
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
この校正手順の目的は,素子の適切な機能,減結合用チョークコイルの飽和,DNの減結合効果,並び
にCNの電流容量及び結合効果を確認することである。ここで規定する結合方法は,サージ電圧及び電流
波形に影響する。この校正のためのパラメータは,表A.4による。
表A.4−屋外用非シールド対称通信線に対するCDNのEUTポートでのサージ波形特性
結合方法
CWG
出力電圧の
設定値
a), b)
CDNのEUT
出力
Voc
±10 %
電圧フロン
トタイム
Tf
±30 %
電圧持続
時間
Td
±30 %
CDNの
EUT出力
Isc
±20 %
電流フロン
トタイム
Tf
±30 %
電流持続
時間
Td
±30 %
コモンモード
ペア線
27.5 Ω経由
4 kV
4 kV
8 μs
250 μs
145 A
3.2 μs
250 μs
注a) 二つ以上のペアの信号線をもつCDNの場合,表A.3に従ってペア線ごとに校正する。
b) ガスアレスタ,クランプ又はアバランシェ素子を通した結合は,サージ波形に幾つかのスイッチングノイズ
が見える。最大定格電圧での校正は,フロントタイム及び持続時間の測定に対するこれらのスイッチングノ
イズの影響を最小にできる。
A.5 屋外用非シールド対称通信線に印加するサージ試験のためのセットアップ
対称的な通信回路(図A.4参照)に対しては,通常,容量性結合方法を用いることができないため,ガ
スアレスタを介して結合を行う。結合ガスアレスタの放電電圧よりも低い試験レベル(定格電圧90 Vのガ
スアレスタの場合,放電電圧は約300 V)は,指定できない。
次のいずれかの試験を選択する。
a) 装置レベルのイミュニティを評価するために,二次保護だけをもつEUTに対して低い試験レベルで試
験する(例えば,0.5 kV又は1 kV)。
b) システムレベルのイミュニティを評価するために,一次保護を追加して高い試験レベルで試験する(例
えば,2 kV又は4 kV)。
特に規定がない場合,EUTとCDNとの間の通信線は,2 m以下とする。
常に,基準グラウンドに対して全ての導体をコモンモードで同時に結合する(図A.4参照)。
注記 試験しない導体は,試験ポートの必要なデータに影響を与えない結合デバイス(例えば,GDT)
を介して基準グラウンドに接続する。
33
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B
(参考)
CWG及び試験レベルの選択
B.1
一般
試験レベルの選択は,設置条件に基づくことが望ましい。試験レベルは,製品規格又は製品群規格に規
定されている場合がある。規定された試験レベルがない場合,表B.1及び表B.2をC.3に示す情報ととも
に用いることが望ましい。これらの値は,要求事項ではない。
B.2
環境条件の種別
環境条件の種別を,次に示す。
クラス0:
十分に保護された電気的環境で,通常は専用の室内
クラス1:
部分的に保護された電気的環境
クラス2:
短い配線でもケーブルが十分に分離された電気的環境
クラス3:
電力ケーブルと相互接続線とが平行に配線された電気的環境
クラス4:
相互接続線が電源ケーブルに沿って屋外ケーブルとして配線され,ケーブルが電子及び
電気回路の両方に用いられる電気的環境
クラス5:
非人口密集地域の通信線及び/又は架空電力線に接続された電子装置に対する電気的
環境
クラスX:
製品仕様で指定する特別な条件
システムレベルのイミュニティを実証するために,実際の設置条件(例えば,一次保護)に関する追加
試験を行うことが望ましい。設置条件に関する追加の情報を,附属書Cに示す。
B.3
ポートの種類
内部システムのポートは,同じシステム内のポートに接続するものと定義する。
内部ポートは,次のとおり定義する。
− 同じ建物内のケーブルだけに接続する。
− ポートは,屋外の端子に直接接続できる運用を意図しない。
− ポートは,他の装置(例えば,スプリッタ)を介して建物の外に出るケーブルと伝導的な接続を意図
していない。
外部ポートは,次のとおり定義する。
− ポートは,建物外の信号線に直接接続を意図する。
− ポートは,他の装置(例えば,スプリッタ)を介して建物の外に出るケーブルに伝導的な接続をもつ。
B.4
CWG及びサージの種類
それぞれのクラスに対するサージ(及びCWG)を,次に示す。
クラス1〜5: 電源ライン,短距離信号回路又はライン,ローカルエリアネットワーク(例えば,イー
サネット,トークンリングなど)及び類似のネットワークのポートに対して,1.2/50 µs
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C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
電圧サージ及び8/20 µs電流サージを印加する。
クラス4〜5: マルチユーザ電気通信ネットワーク[例えば,公衆交換電話網(PSTN),デジタル加入
者線(xDSL)など]への直接接続によって広域分散システムの相互接続を目的とする対
称通信線に対して,10/700 µs電圧サージ及び5/320 µs電流サージを印加する。代表的な
通信線の長さは,300 m以上を適用する。
CWG及びCDNのインピーダンスは,対応する試験セットアップの図を参照する。
B.5
試験レベル
電源ポート,及び回路又はラインに対する試験レベルを,それぞれ表B.1及び表B.2に示す。
表B.1−電源ポートに対する試験レベルの選択(設置クラス別)
設置
クラス
試験レベル
kV
交流電源
及び交流入出力
外部ポートa)
交流電源
及び交流入出力
内部ポートa), d)
直流電源
及び直流入出力
外部ポートa)
直流電源
及び直流入出力
内部ポートa), d)
結合モード
結合モード
結合モード
結合モード
ライン−ラ
イン間
ライン−グ
ラウンド間
ライン−ラ
イン間
ライン−グ
ラウンド間
ライン−ラ
イン間
ライン−グ
ラウンド間
ライン−ラ
イン間
ライン−グ
ラウンド間
0
−
−
−
−
−
−
−
−
1
−
0.5
−
−
−
−
−
−
2
0.5
1.0
−
−
−
−
−
−
3
1.0
2.0
1.0
2.0
−
−
−
−
4
2.0 b)
4.0 b)
2.0 b)
4.0 b)
2.0 b)
4.0 b)
2.0 b)
4.0 b)
5
c), b)
c), b)
2.0 b)
4.0 b)
2.0 b)
4.0 b)
2.0 b)
4.0 b)
注a) ケーブル長が10 m以下の場合,データ接続を意図する試験を推奨しない。
b) ポートに通常,規定する一次保護を用いることを意図している場合,保護素子との協調を確実にするために
一次保護を定位置に取り付けて試験を行う。一次保護は,インタフェースを保護するために要求するが,準
備できない場合,試験は,規定する一次保護レベルを通して最大レベルで,代表的な一次保護器によって行
う。
c) 用いる電源系統のクラスによる。
d) 内部システムポートの試験は,通常,要求しない。
35
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表B.2−回路又はラインに対する試験レベルの選択(設置クラス別)
設置
クラス
試験レベル
kV
非対称動作の
回路又はラインa), c), e)
対称動作の
回路又はラインa), c), e)
シールドされた
回路又はラインa), d), e)
外部ポート
内部ポート
外部ポート
内部ポート
外部ポート
内部ポート
ライン
−ライ
ン間
ライン
−グラ
ウンド
間
ライン
−ライ
ン間
ライン
−グラ
ウンド
間
ライン
−ライ
ン間
ライン
−グラ
ウンド
間
ライン
−ライ
ン間
ライン
−グラ
ウンド
間
ライン
−ライ
ン間
シール
ド−グ
ラウン
ド間
ライン
−ライ
ン間
シール
ド−グ
ラウン
ド間
0
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
−
1
−
−
−
0.5
−
−
−
0.5
−
−
−
−
2
−
−
0.5
1.0
−
−
−
1.0
−
−
−
0.5
3
−
−
1.0
2.0
−
−
−
2.0
−
−
−
2.0
4
2.0 b)
4.0 b)
2.0 b)
4.0 b)
−
4.0 b)
−
4.0 b)
−
4.0 b)
−
4.0 b)
5
2.0 b)
4.0 b)
2.0 b)
4.0 b)
−
4.0 b)
−
4.0 b)
−
4.0 b)
−
4.0 b)
注a) 10 m未満のケーブルに対しては,データ接続を意図する試験を推奨しない。
b) ポートに通常,規定の一次保護を用いることを意図する場合,保護素子との協調を確実にするために一次保
護を定位置に取り付けて試験を行う。一次保護は,インタフェースを保護するために要求するが,準備でき
ない場合,試験は,規定の一次保護レベルを通して最大レベルで,代表的な一次保護器によって行う。
c) 保護目的にグラウンドに接続するSPD(サージ保護デバイス)を用いる場合,ライン−ライン間サージ(ト
ランスバース)がネットワーク内に発生することがある。そのようなサージは,この規格の適用範囲外であ
る。しかしながら,この現象は,規定する一時保護素子を通したコモンモードのサージを適用することで模
擬することができる。
d) アンテナに接続するポートの試験は,この規格の適用範囲外である。
e) 内部システムポートの試験は,通常,要求しない。
36
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
補足説明
C.1 種々の出力インピーダンス
CWGの出力インピーダンスの選択は,次に依存する。
− 交流電源,直流電源,相互接続線などのケーブル,導体又はラインの種類
− ケーブル又はラインの長さ
− 屋外又は屋内の条件
− 適用する試験電圧(ラインーライン間又はライン−グラウンド間)
2 Ωのインピーダンスは,低電圧電源系統の電源インピーダンスを摸擬している。したがって,CWGの
実効出力インピーダンスを,2 Ωとしている。
12 Ω(10 Ω+2 Ω)のインピーダンスは,低電圧電源系統とグラウンドとの間のインピーダンスを摸擬し
ている。したがって,CWGの実効出力インピーダンスと直列に接続する追加抵抗を,10 Ωとしている。
42 Ω(40 Ω+2 Ω)のインピーダンスは,相互接続線のライン−ライン間及び/又はライン−グラウンド
間のインピーダンスを摸擬している。したがって,CWGの実効出力インピーダンスと直列に接続する追
加抵抗を,40 Ωとしている。
注記 AC/DCコンバータ(例えば,ノートパソコンのAC/DCアダプタ)に接続することを意図した
直流電源ポートのインピーダンスは,低電圧電源系統のインピーダンスの考え方とは異なる。
直流電源が信号ケーブルに含まれるラインで供給される場合,これらの接続は低電圧電源ポー
トのインピーダンスの考え方とは異なる。
幾つかの国(例えば,米国)では,交流線路に対するIEC規格ではないほかの規格で,2 Ωのインピー
ダンスを用いる図5及び図7による試験を要求する場合がある。これらは,更に厳しい試験である。
C.2 試験の適用
C.2.1 装置レベルのイミュニティ
試験は,試験室で単体のEUTに対して行う。このように試験したEUTのイミュニティは,装置レベル
のイミュニティという。
試験電圧は,EUTのサージ耐電圧値以下とする。
C.2.2 システムレベル
システムに対して推奨する試験レベルの範囲を,表B.1及び表B.2に示す。
EUT単体で行うイミュニティ試験は,そのEUTを含むシステム全体のイミュニティを保証するもので
はない。システムレベルのイミュニティを確保するために,試験は,実際の設置状態を模擬することが望
ましい。システム運用マニュアル又はシステム若しくはネットワークの管理者によって要求されている場
合,模擬した設置状態は,システムを構成するEUTを用い,かつ,SPDも含める。相互接続線は,実際
に用いる長さ及び種類とする。これらの全てがシステム全体の保護レベルに影響する。
内部のSPDと協調が取られていない外部のSPDの単純な追加は,効果がないか,システム全体の保護
効果を減少させるか,又はシステム全体の保護効果を改善することもある。
IEC 61643規格群及びJIS Z 9290-1には,SPDの付加情報が記載されている。
37
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
この試験は,EUTが意図する機能にできるだけ近い状態に設置して模擬することを目的とする。
実際の設置では,より高い電圧レベルが印加されることがあるが,サージエネルギーは,実装したSPD
の特性に従って制限される。
システムレベルの試験は,SPDによる二次効果(波形,モード,電圧又は電流の振幅の変化)がEUT
に影響を及ぼさないことの確認も意図している。指定した試験電圧範囲内でEUTが損傷しないことを確認
するには,段階的に試験電圧を指定した電圧まで上昇させることが必要である。この指定した試験電圧は,
EUTの保護素子又は保護装置の動作点に依存する(IEC 61643-21:2000及び追補2:2012の6.2.1.8を参照)。
C.3 設置条件の分類
設置条件は,次のように分類する。
クラス0
十分に保護された電気的環境で,通常は専用の室内。
全ての外部との接続ケーブルは,過電圧(一次及び二次)保護を備える。電子装置のユニッ
トは,電力設備又は雷によって重大な影響を受けないように,適切に設計された接地系統に相
互接続している。
電子装置は,専用の電源から供給を受ける(表B.1参照)。
サージ電圧は,25 Vを超えない。
クラス1
部分的に保護された電気的環境。
部屋に入ってくる全てのケーブルは,過電圧(一次)保護を備える。装置のユニットは,電
力設備又は雷によって重大な影響を受けないように,接地系統に確実に相互接続されている。
電子装置の電源供給は,ほかの装置から完全に分離している。
室内で開閉操作による妨害電圧が発生することがある。
サージ電圧は,500 Vを超えない。
これらの記載事項は,表1で定義する試験レベル1でカバーされている。
クラス2
短い配線でもケーブルが十分に分離された電気的環境。
装置が設置される環境の設備は,その設備又は雷によって発生する妨害電圧にさらされる可
能性がある電力設備の接地系統へ分離された接続線を経由して接地する。電子装置の電源は,
通常,専用の変圧器を用いてほかの回路と分離している。
装置に保護回路がないが,他の装置と十分に分離し,装置の数を制限している。
サージ電圧は,1 kVを超えない。
これらの記載事項は,表1で定義する試験レベル2でカバーされている。
クラス3
電力ケーブルと相互接続線とが平行に配線された電気的環境。
装置が設置される環境の設備は,その設備又は雷によって発生する妨害電圧にさらされる可
能性がある電力設備と共通の接地系統へ接地されている。
電力設備の地絡,開閉動作及び雷に起因する電流は,接地系統に比較的高い振幅の妨害電圧
を発生させる可能性がある。保護回路をもつ電子装置及び影響を受けにくい電気装置は,同じ
低電圧電源系統につなぐ。相互接続ケーブルは,部分的に屋外ケーブルでもよいが,接地系統
に近づける。
妨害電圧を抑制できない誘導負荷が設備に存在し,かつ,通常,ケーブルは,異なる回路ご
とに分離されてない。
サージ電圧は,2 kVを超えない。
38
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
これらの記載事項は,表1で定義する試験レベル3でカバーされている。
クラス4
相互接続線が電源ケーブルに沿って屋外ケーブルとして配線され,ケーブルが電子及び電気回
路の両方に用いられる電気的環境。
装置が設置される環境の設備は,その設備又は雷によって発生する妨害電圧にさらされる可
能性がある電力設備の接地系統へ接続されている。
電力系統の地絡,開閉動作及び雷に起因するキロアンペア(kA)オーダの電流は,接地系統
に比較的高い振幅の妨害電圧を発生させる可能性がある。電源回路は,電子装置及びほかの電
気機器のものと同じであってもよい。相互接続ケーブルは,高電圧装置への接続の場合も,屋
外ケーブルとして配線されている。
この環境の特別な状態として,電子装置が人口密集地域の通信ネットワークに接続している
場合がある。系統的に構成されたグラウンドシステムが電子装置の周辺になく,接地は,パイ
プ,ケーブルなどで構成する。
サージ電圧は,4 kVを超えない。
これらの記載事項は,表1で定義する試験レベル4でカバーされている。
クラス5
非人口密集地域の通信線及び/又は架空電力線に接続された電子装置に対する電気的環境。
これら全てのケーブル及び配線は,過電圧(一次)保護を備えている。電子装置の周辺に,
広範な接地系統がない。地絡(10 kA以下)及び雷(100 kA以下)による妨害電圧は,非常に
高い可能性がある。
クラスX 製品仕様で指定する特別な条件。
C.4 交流又は直流電力系統に接続するポートの最小イミュニティレベル
電力系統への接続に対する最小イミュニティレベルを,次に示す。
− ライン−ライン間結合:
0.5 kV
− ライン−グラウンド間結合:
1 kV
C.5 相互接続線に接続するポートの装置レベルのイミュニティ
相互接続線回路でのサージ試験は,外部[きょう(筐)体の外]の接続に対してだけに適用される。
システムレベル(相互接続線を接続したEUT)での試験が可能な場合,特に相互接続線のシールドが保
護手段のときには,装置レベルでの試験は必要としない。装置の製造業者以外の人が設備への設置を行う
場合,EUTの入出力に対して許容できる電圧を指定することが望ましい。
製造業者は,装置レベルのイミュニティを確認するために,指定する試験レベル(例えば,二次保護を
備えたEUTのポートに対して0.5 kV)に基づいて装置を試験することが望ましい。設備の使用者又は設置
に対する責任者は,例えば雷などによって発生する妨害電圧が,選択したイミュニティレベルを超えない
ことを確実にするために,必要な対策(例えば,シールド,ボンディング,接地など)を施すことが望ま
しい。
39
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
低電圧配電系統へ接続される装置のイミュニティ達成への考察
この規格は,電子装置及びシステムの電圧及び電流サージイミュニティを決定する試験を規定している。
試験される装置及びシステムは,ブラックボックスとして扱い,試験結果は,次の判断基準によって判断
する。
a) 正常な性能
b) 操作者の介在を必要としない,一時的な機能損失又は性能低下
c) 操作者の介在を必要とする,一時的な機能損失又は性能低下
d) 装置への永久的な損傷による機能損失(試験不合格を意味する。)
この規格の試験は,電子装置及びシステムに対する永久的な損傷及び破壊を含む,電子装置及びシステ
ムへの比較的低い電流サージによって発生する可能性があるあらゆる影響を調査する。その一方,一時的
な機能損失については関与せず,実際に発生する装置及びシステムの損傷及び破壊に関するほかの試験規
格がある。
JIS C 60664-1は,低電圧配電系統の装置の絶縁協調に関係する。また,JIS C 5381-11は,低電圧配電系
統に接続されるSPDの試験規格である。これら二つの規格は,いずれも装置への一時的な過電圧印加の影
響に関係する。
この規格を含むJIS C 61000規格群及び/又はIEC 61000規格群では,上記で示す装置又はシステムに
対する一時的な過電圧状態の影響は,考慮していない。
永久的な損傷は,システム故障時間,及び修理又は交換費用の理由から,ほとんど許容されない。この
種の機能停止は,通常,サージ保護が不適切又は全くないことによって生じる。これによって,高電圧及
び過度のサージ電流が装置の回路へ侵入し,その結果として,動作の中断,部品故障,永久的な絶縁破壊,
火災事故,発煙及び感電が発生する。また,装置又はシステムが非常に重要で,サージ発生中であっても
運転を継続しなければならない場合,いかなる機能損失及び性能低下も望ましくない。
この規格に規定する試験では,印加する電圧試験レベルの大きさ及びその結果流れたサージ電流は,装
置の応答に直接影響する。すなわち,装置が適切なサージイミュニティをもつように設計されていない場
合,サージの電圧レベルが高くなればなるほど,機能の損失又は性能低下の発生頻度は高い。
低電圧配電系統で用いるSPDを試験するために,JIS C 5381-11のクラスIII試験では,8/20 µsの短絡電
流波形及び1.2/50 µsの開回路電圧波形を発生する実効出力インピーダンス2 ΩのCWGを規定している。
この規格では,通電された装置及びシステムのサージイミュニティ試験に,同一のCWGを用いるが,異
なる結合素子及び場合によっては追加の直列接続インピーダンスを用いる。この規格の電圧試験レベルと
JIS C 5381-11に規定する開回路ピーク電圧Uocとは,同一のものである。この電圧は,CWGの端子にお
けるピークの短絡電流値を決定する。ただし,試験方法の違いによって,試験結果は,直接比較すること
はできない場合がある。
装置又はシステムのサージイミュニティは,内蔵のSPD,又は外付けのSPDによって実現する。SPD
の最も重要な選択基準は,JIS C 5381-11に定義及び規定する電圧防護レベルUpである。この値は,JIS C
60664-1に規定する装置の耐電圧Uwと,特定の条件における試験期間中にSPDの端子間に発生する可能
性がある最大電圧とで協調することが望ましい。
40
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
なお,電圧防護レベルUpは,装置の耐電圧Uwとの絶縁協調のため,JIS C 5381-12だけに用いられてい
る。保護デバイスの電圧保護レベルは,ほぼ同等のストレスが印加されるこの規格の試験のイミュニティ
電圧レベル未満であることが望ましいが,特に二つの規格間の波形は,常に比較可能ではないため,現在
のところ,これは取り扱わない。
一般的に,この規格による装置のサージイミュニティレベルは,JIS C 60664-1に規定する絶縁耐圧より
も低い。ただし,JIS C 60364-4-44に規定する極端に低い保護電圧レベルをもつSPD(又は内蔵の保護素
子)の一時的過電圧の影響に,注意することが望ましい。サージ印加中に装置を故障から保護し,動作を
継続し,かつ,ほとんどの一時的な過電圧状態に耐えるSPDを選択することは,十分可能である。
41
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書E
(参考)
サージ波形の数理モデル化
E.1
一般
この附属書では,次のために用いる数理的な基準波形を示す。
− サージ発生器の設計
− EUTにおけるサージ性能のシミュレーション
この附属書に示す数式は,次の要求事項を考慮して定義した。
− ESD,EFT/B,サージなど過度現象に関するIEC規格で用いられているものと同じ基本式を用いる。
− この規格に規定する開放及び短絡状態でフロントタイム及び持続時間の公称値を再現する。
− 該当する場合,EUTの設計者が,この規格に規定した簡易回路図及びその公称値を用いたCWGの回
路モデルを組み立てることを支援する。
− 数値的シミュレーションを行うときの不安定さを回避するために,開始時にゼロに等しい導関数を用
いる。
注記 電圧サージ(1.2/50 µs)及び電流サージ(8/20 µs)について,この附属書に示す波形の数理モ
デルは,IEEE Std C62.45-2002に規定したものと一致する。ただし,IEEE Std C62.45-2002が
電圧サージ(10/1 000 µs)の値を規定しているため,電圧サージ(10/700 µs)との比較はでき
ない。また,電流サージ(5/320 µs)については,IEEE Std C62.45-2002では規定していない。
この附属書に用いるパラメータの定義は,次による。
a) Twは,最初にピーク値の50 %に達してから,次にピーク値の50 %に達するまでの時間間隔
b) Tは,サージ電圧がピーク値の30 %における時間と90 %における時間との時間間隔
c) Trは,サージ電流がピーク値の10 %における時間と90 %における時間との時間間隔
d) Tdは,最初の立ち上がり時間と立ち下がり時間の50 %の時間との間の時間間隔
e) Tfは,フロントタイム。次の値は,モデルシミュレーションに用いる簡易回路から発生する波形と一
致するように定義した。
1.2/50 µs電圧サージ:
Tf=1.67×T,Td=Tw
8/20 µs電流サージ:
Tf=1.25×Tr,Td=1.18×Tw
10/700 µs電圧サージ:
Tf=1.67×T,Td=Tw
5/320 µs電流サージ:
Tf=1.25×Tr,Td=Tw
f)
BWは,スペクトル応答が−60 dB/decの傾斜で下降を開始する周波数を上限とするサージ波形の帯域
幅
E.2
正規化した時間領域の1.2/50 μs電圧サージ
1.2/50 µs電圧サージの正規化した時間領域の式を,式(E.1)に示す。
42
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
()
+
=
−
2
SURGE
SURGE
1
1
SURGE
1
V
SURGE
1
τ
η
η
τ
τ
t
e
t
t
k
v
k
t
v
····································· (E.1)
式(E.1)の係数は,次の値を用いる。
kV=1
τ1=0.356 μs
τ2=65.845 μs
v1=0.94
ηSURGE=1.852
SURGE
1
1
2
SURGE
2
1
SURGE
η
τ
τ
η
τ
τ
−
=e
k
時間関数としての1.2/50 μs電圧サージ波形を,図E.1に示す。
図E.1−1.2/50 µs電圧サージ
立ち上がり波形の拡大図を,図E.2に示す。
時間 (μs)
Tw = 50μs
正規化電圧
1
0.8
0.6
0.5
0.4
0.2
0
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
Tw = 50 μs
時間 (μs)
43
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図E.2−1.2/50 µs電圧サージの立ち上がり波形の拡大図
式(E.1)による電圧サージ波形の周波数スペクトラムの応答(周波数分解能 fを3.333 kHzとした場合)
を,図E.3に示す。
図E.3−1.2/50 µs電圧サージの周波数スペクトラムの応答
時間領域での電圧サージは,2 MHzまでの周波数で十分なシミュレーションができるため,帯域幅BW
の上限を2 MHzとする。
E.3
正規化した時間領域の8/20 µs電流サージ
8/20 µs電流サージの正規化した時間領域の式を,式(E.2)に示す。
周波数 (MHz)
−20 dB/dec
スペクトラム密度(dB)
−120
0.001
0.01
0.1
10
1
−100
−80
−60
−40
−20
0
0.85 MHz
−60 dB/dec
2 MHz
周波数 (MHz)
−60 dB/dec
−20 dB/dec
時間 (μs)
T = 0.72μs
正規化電圧
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
0
0.25
0.5
0.75
1
1.25
1.5
1.75
2
2.25
2.5
0.9
0.3
0.9
T = 0.72 μs
時間 (μs)
44
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
()
+
=
−
2
SURGE
SURGE
1
1
SURGE
1
i
SURGE
1
τ
η
η
τ
τ
t
e
t
t
k
i
k
t
I
······································ (E.2)
式(E.2)の係数は,次の値を用いる。
ki=1
τ1=47.52 μs
τ2=4.296 μs
i1=0.939
ηSURGE=2.741
SURGE
1
1
2
SURGE
2
1
SURGE
η
τ
τ
η
τ
τ
−
=e
k
時間関数としての8/20 µs電流サージ波形を,図E.4に示す。
図E.4−8/20 μs電流サージ
立ち上がり波形の拡大図を,図E.5に示す。
時間 (μs)
Tw = 17μs
正規化電流
1
0.8
0.6
0.5
0.4
0.2
0 0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
Tw = 17 μs
時間 (μs)
45
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図E.5−8/20 μs電流サージの立ち上がり波形の拡大図
式(E.2)による電流サージ波形の周波数スペクトラムの応答(周波数分解能 fを10 kHzとした場合)を,
図E.6に示す。
図E.6−8/20 µs電流サージの周波数スペクトラムの応答
時間領域での電圧サージは,0.15 MHzまでの周波数で十分なシミュレーションができるため,帯域幅
BWの上限を0.15 MHzとする。
E.4
正規化した時間領域の10/700 μs電圧サージ
10/700 µs電圧サージの正規化した時間領域の式を,式(E.3)に示す。
周波数 (MHz)
−20 dB/dec
スぺクトラム密度(dB)
−120
0,001
0,01
0,1
10
1
−100
−80
−60
−40
−20
0
0.05 MHz
−60 dB/dec
0.15 MHz
0.001
0.01
0.1
周波数 (MHz)
−20 dB/dec
−60 dB/dec
0.15 MHz
0.05 MHz
時間 (μs)
Tr = 6.4μs
正規化電流
1
0,9
0,6
0,4
0,2
0
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
0.1
0.8
1
0.9
0.8
0.6
0.4
0.2
0.1
0
Tr = 6.4 μs
時間 (μs)
46
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
()
+
=
−
2
SURGE
SURGE
1
1
SURGE
1
V
SURGE
1
τ
η
η
τ
τ
t
e
t
t
k
v
k
t
v
····································· (E.3)
式(E.3)の係数は,次の値を用いる。
kV=1
τ1=2.574 μs
τ2=945.1 μs
v1=0.937
ηSURGE=1.749
SURGE
1
1
2
SURGE
2
1
SURGE
η
τ
τ
η
τ
τ
−
=e
k
時間関数としての10/700 µs電圧サージ波形を,図E.7に示す。
図E.7−10/700 µs電圧サージ
立ち上がり波形の拡大図を,図E.8に示す。
.
時間 (μs)
Tw = 700μs
正規化電圧
1
0.8
0.6
0.5
0.4
0.2
0
1 000
0.9
0.7
0.3
0.1
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
0.9
Tw = 700 μs
時間 (μs)
47
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図E.8−10/700 μs電圧サージの立ち上がり波形の拡大図
式(E.3)による電圧サージ波形の周波数スペクトラムの応答(周波数分解能 fを0.2 kHzとした場合)を,
図E.9に示す。
図E.9−10/700 µs電圧サージの周波数スペクトラムの応答
時間領域での電圧サージは,0.4 MHzまでの周波数で十分なシミュレーションができるため,帯域幅BW
の上限を0.4 MHzとする。
E.5
正規化した時間領域の5/320 µs電流サージ
5/320 µs電流サージの正規化した時間領域の式を,式(E.4)に示す。
周波数 (MHz)
−60 dB/dec
スペクトラム密度(dB)
−120
0.001
0.01
0.1
1
−100
−80
−60
−40
−20
0.4 MHz
−140
−20 dB/dec
−20 dB/dec
−60 dB/dec
0.4 MHz
周波数 (MHz)
1
0,8
0,6
0,5
0,4
0,2
0
0,9
0,7
0,3
0,1
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
t (μs)
T = 6μs
Vsurge (t)
1
0.9
0.8
0.7
0.6
0.5
0.4
0.3
0.2
0.1
0
T = 6 μs
48
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
()
+
=
−
2
SURGE
SURGE
1
1
SURGE
1
i
SURGE
1
τ
η
η
τ
τ
t
e
t
t
k
i
k
t
I
······································ (E.4)
式(E.4)の係数は,次の値を用いる。
ki=1
τ1=1.355 μs
τ2=429.1 μs
i1=0.895
ηSURGE=1.556
SURGE
1
1
2
SURGE
2
1
SURGE
η
τ
τ
η
τ
τ
−
=e
k
時間関数としての5/320 µs電流サージ波形を,図E.10に示す。
図E.10−5/320 µs電流サージ
立ち上がり波形の拡大図を,図E.11に示す。
時間 (μs)
Tw = 320μs
正規化電流
1
1 000
0.8
900
800
700
600
500
400
300
200
100
0
0.6
0.5
0.4
0.2
0
Tw = 320 μs
時間 (μs)
49
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図E.11−5/320 µs電流サージの立ち上がり波形の拡大図
式(E.4)による電流サージ波形の周波数スペクトラムの応答(周波数分解能 fを0.4 kHzとした場合)を,
図E.12に示す。
図E.12−5/320 µs電流サージの周波数スペクトラムの応答
時間領域での電圧サージは,1 MHzまでの周波数で十分なシミュレーションができるため,帯域幅BW
の上限を1 MHzとする。
周波数 (MHz)
−20 dB/dec
スペクトラム密度(dB)
−120
0.001
0.01
0.1
1
−100
−80
−60
−40
−20
1 MHz
−140
10
−60 dB/dec
周波数 (MHz)
時間 (μs)
Tr = 4μs
正規化電流
1
0.9
0.6
0.4
0.2
0
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
0.1
0.8
0
1
0.9
0.8
0.6
0.4
0.2
0.1
0
Tr = 4 μs
時間 (μs)
50
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書F
(参考)
測定不確かさ(MU)の考察
F.1
符号説明
この附属書に用いる符号の説明は,次による。
− VP
開回路電圧サージのピーク値
− TfV
開回路電圧サージのフロントタイム:TfV=1.67×TV
− TV
ピーク値の30 %から90 %に達するまでの時間間隔と定義した開回路電圧サージの立ち上がり時
間
− TrV
ピーク値の10 %から90 %に達するまでの時間間隔と定義した開回路電圧サージの立ち上がり時
間:TrV=0.80×TfV=1.33×TV
− Tw
開回路電圧サージの時間間隔
− IP
短絡電流サージのピーク値
− TfI
短絡電流サージのフロントタイム:TfI=1.25×TrI
− TrI
ピーク値の10 %から90 %に達するまでの時間間隔と定義した短絡電流サージの立ち上がり時間
− Td
短絡電流サージの持続時間
注記 符号u(xi),ci,ui(y),uc(y),U(y) 及びyのもつ意味及び関係は,IEC/TR 61000-1-6で説明して
いる。
F.2
一般
実際の妨害量とこの規格に規定する妨害量との整合性は,通常,一連の測定(例えば,減衰器を用いた
オシロスコープでのサージの立ち上がり時間の測定)を通じて確認できる。各測定の結果は,測定器の不
完全性と同様に測定の再現性の悪さによる測定不確かさ(MU)を含んでいる。この附属書では,IEC/TR
61000-1-6に示す原理及び方法に従ったMUの評価について示す。
MUを評価するために必要な事項を,次に示す。
a) 測定器及び測定量の両方に関連した不確かさの要因を特定する。
b) 影響(入力)量と測定(出力)量との間で,機能的関係(測定モデル)を特定する。
c) 入力量に対する標準不確かさ及び推定値を得る。
d) 高い水準の信頼性をもつ測定量に対する真値を含む値の幅の推定値を得る。
詳細は,IEC/TR 61000-1-6による。
イミュニティ試験では,推定値及び不確かさは,妨害量に対するパラメータ(例えば,立ち上がり時間,
ピーク値,持続時間など)によって評価する。そのため,これらのパラメータは,この規格に定義した適
切な妨害量の一致度として記載している。
特定な妨害量として得た推定値及び不確かさでは,この規格に規定する疑似電磁現象と実際の電磁現象
との間の一致度としては記載していない。
EUTにおける妨害量のパラメータの影響は未知であり,ほとんどの場合,EUTは非線形な挙動を示すこ
とから,妨害量を単一の推定値及び不確かさの数値として定義できない。したがって,それぞれの妨害量
のパラメータは,対応する推定値及び不確かさが付随する。これによって,複数の不確かさのバジェット
51
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
が生じる。
F.3
サージ測定不確かさのための不確かさの寄与
測定器及び試験セットアップの影響評価に用いる不確かさの寄与を,次に示す。
− ピーク値の読み値
− 10 %(又は30 %)レベルの読み値
− 90 %のレベルの読み値
− 50 %のレベルの読み値
− 測定システムの帯域幅
− 測定システムのサージ応答の形状状態
− オシロスコープ水平軸の測定誤差
− オシロスコープ垂直軸の測定誤差
− 測定システム,測定量及びセットアップの再現性(タイプA)
− オシロスコープ及び測定システムの校正
F.4
サージ校正の不確かさ
F.4.1
一般
サージ試験の場合,EUTに印加するCWGによる妨害量は,サージ電圧及びサージ電流である。F.2に
示すように,妨害量の測定したパラメータごとの不確かさのバジェットが必要である。これらの妨害量の
パラメータは,開回路電圧のためのVP,TfV及びTw並びに短絡電流のためのIp,TfI及びTdとする。
ここでのインパルスサージのMUを評価するために採用した手順を,F.4.6及びF.4.7に示す。サージパ
ラメータの不確かさのバジェットの例を,表F.1〜表F.3に示す。これらの表には,これらの例に対して最
も重要とみなす入力量,MUへの各寄与成分の詳細(数値,確率密度関数のタイプなど)及び各々の不確
かさのバジェットを決定するために必要な計算結果を含む。
F.4.2
ザージ開回路電圧のフロントタイム
測定量は,サージ開回路電圧波形のフロントタイムであり,式(F.1)を用いて計算する。
(
)
[
]
2
MS
2
%
30
%
90
fV
33
.1
25
.1
T
R
T
T
T
−
+
−
=
δ
·········································· (F.1)
B
T
α
=
MS
ここに,
T30%: ピーク振幅の30 %の時間
T90%: ピーク振幅の90 %の時間
δR: 繰返しばらつきの補正値
TMS: 測定システムのステップ応答の立ち上がり時間(10 %〜
90 %)(µs)
B: 測定システムの−3 dB周波数帯域幅(kHz)
α: 係数。(360±40)µs・kHz
52
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表F.1−サージ開回路電圧フロントタイム(TfV)の不確かさのバジェットの例
記号
推定値
単位
誤り限界
単位
PDF a)
除数
u(xi)
ci
単位
ui(y)
単位
T30%
0.25
μs
0.005 0
μs
三角
2.45
0.002 0
−2.08
1
0.004 3
μs
T90%
1.15
μs
0.005 0
μs
三角
2.45
0.002 0
2.08
1
0.004 3
μs
δR
0
μs
0.025
μs
正規(k=1) 1.00
0.025
2.08
1
0.052
μs
α
360
μs・kHz
40
μs・kHz
一様
(方形)
1.73
23.1
−0.001 9
1/kHz
0.043
μs
B
500
kHz
50
kHz
一様
(方形)
1.73
28.9
0.001 4
μs/kHz
0.039
μs
注a) 確率密度関数(Probability Density Function)
uc(y)=√Σui(y)2
0.08
μs
U(y)=2uc(y)
0.16
μs
T30%及びT90%は,ピーク振幅値の30 %及び90 %における時間の読み値である。誤り限界は,毎秒100
メガサンプリング周波数のオシロスコープのトレース補間機能を用いたと想定して得られた値である(確
率密度関数は,三角分布)。これ以外の場合は,一様の確率密度関数と仮定することが望ましい。ここでは,
サンプリング周波数によるMUの寄与成分だけを考慮する。追加の寄与成分に関しては,F.4.5を参照する。
読み値は,T30%=0.25 µs及びT90%=1.15 µsと仮定する。
TMSは,測定システムのステップ応答の計算による立ち上がり時間である。係数α[式(F.1)参照]は,測
定システムのインパルス応答の形状に依存し,係数αの推定値360 μs・kHzに対する誤り限界±40 μs・kHz
は,様々な測定システムの代表値で,各々異なるインパルス応答の形状をもつ(F.4.6及び表F.4参照)。
測定システムの周波数帯域幅Bは,実験的(周波数帯域幅の直接測定)に求めるか,又は測定システムの
各要素(基本は,電圧プローブ,ケーブル及びオシロスコープ)の周波数帯域幅Biによって次の式を用い
て計算して求める。
Κ
+
+
=
2
2
2
1
1
1
1
B
B
B
Bは,一様確率密度関数50 kHzの誤り限界をもつ500 kHzの推定値と仮定する。
δRは,30 %から90 %までの立ち上がり時間の繰返しのばらつき補正で,測定機器,測定セットアップ
の配置及びCWG自身によるT30%〜T90%の測定の再現性の欠如を定量化したものであり,実験によって決
定する。δRは,n回繰り返した測定サンプルqjの実験的標準偏差s(qk) に基づいたタイプA評価であり,
次の式による。
()
(
)
∑
=
−
−
=
n
j
q
q
n
q
s
1
2
j
k
1
1
ここで,qはqjの算術的平均値で,誤り限界25 ns(正規確率密度分布の1σ)をもつ0 nsの推定値を仮
定する。
注記 短絡電流のバジェットは,同様にして得ることができる。この場合,TMSは電圧プローブの代
わりに電流プローブの帯域幅を含める。さらに,機能的関係は,次の式によって修正する。
(
)
2
MS
2
%
10
%
90
fV
25
.1
T
R
T
T
T
−
+
−
=
δ
53
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
F.4.3
サージ開回路電圧のピーク電圧
測定量Vpは,サージ開回路電圧のピーク電圧読み値を基にして,次の式を用いて計算する。
(
)A
B
V
R
V
V
2
PR
p
1
1
−
+
+
=
β
δ
δ
ここに,
VPR: ピーク電圧の読み値
A: 電圧プローブの直流減衰量
δR: 非再現性の補正値
δV: 直流電圧に対するオシロスコープの垂直軸の精度
B: 測定システムの−3 dB周波数帯域幅
β: 帯域に関する係数。(12.7±1.4)kHzとする。
表F.2−サージ開回路電圧ピーク値(VP)の不確かさのバジェットの例
記号
推定値
単位
誤り限界
単位
PDF a)
除数
u(xi)
ci
単位
ui(y)
単位
VPR
3.84
V
0.007 5
V
三角
2.45
0.003 1
100 1
1
3.06
V
A
1 000
1
50
1
一様
(方形)
1.73
28.9
3.84
V
111
V
δR
0
1
0.03
1
正規(k=1) 1.00
0.03
3.84・103
V
115
V
δV
0
1
0.02
1
一様
(方形)
1.73
0.012
3.84・103
V
44.4
V
β
12.7
kHz
1.4
kHz
一様
(方形)
1.73
0.81
0.38
V/kHz
0.32
V
B
500
kHz
50
kHz
一様
(方形)
1.73
28.9
−0.009 6
V/kHz
0.29
V
注a) 確率密度関数
uc(y)=√Σui(y)2
0.166
kV
U(y)=2 uc(y)
0.33
kV
VPRは,ピーク電圧の読み値である。誤り限界は,8ビット垂直分解能のオシロスコープの補間機能(不
確かさの確率密度関数を三角分布)と仮定して算出する。
Aは,電圧プローブの直流減衰量である。ここでは,直流減衰量を1 000とし,かつ,誤り限界を5 %
(不確かさの確率密度関数は一様分布)と仮定して算出している。
注記1 誤り限界は,例えば,8ビットの分解能に依存する測定読み値の差の範囲である。
δRは,測定セットアップ,配置及び測定装置の非再現性を定量化している。ここでは,ピーク電圧の繰
返し測定値から求めた標準偏差によるタイプAとし,推定値0 %及び誤り限界3 %[1標準偏差(1σ)]と
仮定している。
δVは,オシロスコープの直流電圧測定の誤りを定量化している。ここでは,推定値0及び誤り限界2 %
(確率密度関数は,一様分布)と仮定している。
βは,測定システムのピーク近傍のインパルス応答及び標準インパルス波形の応答の両方の波形形状に
依存する係数である(F.4.7参照)。(12.7±1.4)kHzは,それぞれ異なったインパルス応答形状をもつ,様々
なクラスのシステムを代表している。
Bは,F.4.2を参照する。推定値及び誤り限界に対して同じ意味及び同じ値をもつ。
注記2 短絡電流のバジェットは,同様にして得ることができる。この場合,Bは,電圧プローブの
代わりに電流プローブの帯域幅を含める。さらに,パラメータβを,表F.5に従って修正す
54
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
る。
F.4.4
サージ開回路電圧波形の持続時間
測定量は,サージ開回路電圧波形の持続時間であり,次の式を用いて計算する。
(
)
−
+
−
=
2
R
%,
50
F
%,
50
w
1
B
R
T
T
T
β
δ
ここに,
T50%,R: サージ波形の立ち上がり部分でのピーク電圧の50 %に
なる時間軸の読み値
T50%,F: サージ波形の立ち下がり部分でのピーク電圧の50 %に
なる時間軸の読み値
δR: 非再現性の補正値
B: 測定システムの−3 dB周波数帯域幅
β: 帯域に関する係数。(12.7±1.4)kHzとする。
表F.3−サージ開回路電圧波形の持続時間(Td)に対する不確かさのバジェットの例
記号
推定値
単位
誤り限界
単位
PDF a)
除数
u(xi)
ci
単位
ui(y)
単位
T50%,R
0.5
μs
0.005 0
μs
三角
2.45
0.002 0
−1.00
μs
0.002
μs
T50%,F
51.2
μs
0.005 0
μs
三角
2.45
0.002 0
1.00
μs
0.002
μs
δR
0
μs
0.15
μs
正規(k=1) 1.00
0.15
1.00
μs
0.15
μs
β
12.7
kHz
1.4
kHz
一様
(方形)
1.73
0.81
−0.005 2 μs/kHz 0.004 2
μs
B
500
kHz
50
kHz
一様
(方形)
1.73
28.9
0.000 13
μs/kHz 0.003 8
μs
注a) 確率密度関数
uc(y)=√Σui(y)2
0.15
μs
U(y)=2 uc(y)
0.3
μs
T50%,R及びT50%,Fは,サージ開回路電圧波形の立ち上がり又は立ち下がりにおいて,ピーク電圧の50 %
になったときの時間軸の読み値である。誤り限界(F.4.2と同様)は,毎秒100メガサンプリング周波数の
オシロスコープのトレース補間機能を用いたと想定して得られた値である(確率密度関数は,三角分布)。
これ以外の場合には,一様の確率密度関数と仮定することが望ましい。ここでは,サンプリング周波数に
よるMUの寄与成分だけを考慮する。追加の寄与成分に関しては,F.4.5を参照する。読み値は,T50%,R=
0.5 µs及びT50%,F=51.2 µsと仮定する。
δRは,測定装置,測定セットアップの配置及びCWGの違いによるT50%,F〜T50%,Rの時間測定の非再現性
を定量化した数値であり,実験によって決定する。δRは,多くの測定サンプルの標準偏差によるタイプA
であり,この誤り限界150 ns[確率密度関数の1標準偏差(1σ)]及び推定値0 nsと仮定する。
βは,F.4.3を参照する。推定値及び誤り限界に対して同じ意味及び同じ値をもつ。
Bは,F.4.2を参照する。推定値及び誤り限界に対して同じ意味及び同じ値をもつ。
注記 短絡電流波形の持続時間Tdのバジェットも同様に取り扱うことができる。この場合,Bは,電
圧プローブの代わりに電流プローブの帯域幅に置き換える。さらに,パラメータβを表F.5に
従って修正する。機能関数は,次の式による。
(
)
−
+
−
=
2
R
%,
50
F
%,
50
d
1
18
.1
B
R
T
T
T
β
δ
55
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F.4.5
時間測定及び振幅測定のMUの寄与
時間測定及び振幅測定のMUの寄与を,次に示す。
− 時間軸エラー及びジッタ オシロスコープの仕様は,一様分布での誤り限界としてもよい。通常,こ
れらの寄与は無視できる。
− 垂直分解能 垂直分解能のMUに対する寄与は,垂直振幅分解能ΔA及び波形の傾きdA/dtに依存する。
不確かさは,分解能幅の1/2の値を元に算出し,(ΔA/2)/(dA/dt) で表す。補間が行われる場合(オシロ
スコープの説明書を参照する。),確率密度関数は,三角分布を用い,補間をしない場合は,確率密度
関数は,一様分布を用いる。Tiは,オシロスコープのサンプリング時間で,|dA/dt| < (ΔA/Ti) である場
合,この寄与は無視できない。
− DCオフセット ピークをオシロスコープの公称DCゼロラインから測定する場合,オシロスコープ
のDCオフセットは,電圧ピーク測定の不確かさに寄与する。オシロスコープの読取りソフトウェア
がサージ基線からピークを測定する場合,この寄与は無視できる。
F.4.6
測定システムの帯域幅制限による立ち上がり時間のひずみ
立ち上がり時間のひずみは,立ち上がり時間の通常の組合せ原則によって評価する。これは,二つの相
互作用のないシステムが従属になっており,かつ,そのステップ応答が単調に増大する場合に有効である
[式(F.2)参照]。
2
MS
2
r
rd
T
T
T
+
=
······································································· (F.2)
ここに,
Trd: 測定システムの出力における信号の立ち上がり時間(ひ
ずんだ立ち上がり時間)
Tr: 測定システムの入力における信号の立ち上がり時間
TMS: 測定システムのステップ応答の立ち上がり時間
式(F.2)の算出において,式(F.3)に示す測定システムのステップ応答の立ち上がり時間(TMS)の定義を用
いる(参考文献のW.C.Elmore参照)。
(
)
()
∫∞−
=
0
0
2
S
MS
2
dt
t
h
T
t
T
π
·························································· (F.3)
ここに,h0(t) は,正規化した面積,例えば,
()
∫∞
=
0
0
1
dt
t
h
をもつ測定システムのインパルス応答であり,
TSは式(F.4)から得られる遅延時間である。
()
∫∞
=
0
0
S
dt
t
th
T
·········································································· (F.4)
数学的観点から,式(F.3)は,10 %及び90 %のしきい値レベルに基づく通常の式よりも取り扱いやすい。
いずれにせよ,技術的適用においては,10 %〜90 %の立ち上がり時間は,通常,式(F.2)によって組み合わ
せる。測定システムの帯域幅を与えると,式(F.3)による定義又はしきい値レベルに基づく定義によって,
比較可能な立ち上がり時間を導くことができる。ここで,αを式(F.5)のように定義する。
B
T
=
MS
α
············································································· (F.5)
二つの立ち上がり時間の定義から導びかれるαの値は,余り異ならない。サージ応答h(t) の様々な形状
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に対応するαの値を,表F.4に示す。表F.4から明らかなように,αの固有値を特定することはできない。
これは,αが採用された立ち上がり時間の定義[例えば,しきい値又は式(F.3)に基づくもの]及び測定シ
ステムのインパルス応答の形状の両方に依存しているからである。αの妥当な推定値を,表F.4に示す最
小値(321×10−3)と最大値(399×10−3)との間の算術平均値として得ることができる。すなわち,(360
×10−3)となる。さらに,測定システムについて,その帯域幅以外の情報を得ることができない場合,(321
×10−3)と(399×10−3)との間の全てのαの値が等しい可能性をもつと仮定できる。したがって,αは,
上方限界及び下方限界がそれぞれ(321×10−3)及び(399×10−3)である一様分布の確率密度関数をもつ
確率変数とみなす。αの標準不確かさは,次の両方を定量化する。
a) 立ち上がり時間の定義のために採用した数学的モデルとの均等性。
b) システムのサージ応答の形状との均等性。
表F.4−式(F.5)の測定システムの帯域幅Bに対応する異なる単一方向のサージ応答
α
ガウス
一次
二次
(限界減衰)
一様
三角
α:式(F.3)
332×10−3
399×10−3
363×10−3
321×10−3
326×10−3
α:10 %〜90 %
339×10−3
350×10−3
344×10−3
354×10−3
353×10−3
F.4.7
測定システムの帯域幅制限によるサージピーク及びパルス幅ひずみ
測定システムの出力におけるひずんだサージ波形Vout(t) は,式(F.6)に示す畳込み積分によって求める。
()
()(
)
∫
−
=
t
d
t
h
t
V
t
V
0
in
out
τ
τ
··························································· (F.6)
ここに,Vin(t) は入力サージ波形,及びh(t) は測定システムのサージ応答である。また,A・h(t)=h0(t) で
あることに注意する。ここで,Aは測定システムのDC減衰である。入力波形は,入力がそのピーク電圧
VPに達したときの時間tPに関するテイラー級数展開によって入力波形を近似させることができる[式(F.7)
参照]。
()
()(
)
()(
)
Κ
+
−
′′′
+
−
′′
+
=
3
p
p
in
2
p
p
in
p
in
6
2
t
t
t
V
t
t
t
V
V
t
V
································ (F.7)
ここで,Vin'(tP)=0であるため,式(F.7)から一次項は,除かれている。へこみは下方(最大値)を指すた
め,Vin''(tP)<0となる。また,対象が標準波形であるため,立ち上がり時間は,立ち下がり時間よりも小
さいため,Vin'''(tP)>0となる。したがって,測定システムの帯域幅が入力信号の帯域幅に対して大きい場
合,式(F.6)に式(F.7)を代入し,(階級が2よりも大きいべき級数は,無視することができる。)更に単純化
することによって,式(F.8)を得ることができる。
−
=
2
p
pd
1
B
A
V
V
β
··································································· (F.8)
ここに,Vpdは出力サージピーク,及びAは測定システムのDC減衰であり,式(F.9)に展開できる。
()
p
p
in
4V
t
V
π
α
β
′′
=
······································································ (F.9)
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パラメータβは,標準入力波形の二次導関数及びF.4.6で定義し導き出したパラメータαに依存する。
標準サージ波形に対する数学的表現は,この附属書に示しているため,βの値は,数値的に計算すること
ができ,その値を表F.5に示す。
入力サージ幅Twのひずみの推定値は,出力サージの面積がDC減衰Aで除した入力サージの面積である
ことから,式(F.10)によって容易に求めることができる。
wd
pd
w
p
T
AV
T
V
=
······································································· (F.10)
ここに,Twdは出力サージ幅であり,式(F.11)で求めることができる。
w
2
w
pd
p
wd
1
1
T
B
T
AV
V
T
−
=
=
β
···················································· (F.11)
表F.5−式(F.9)に対応する標準サージ波形の係数β
単位 kHz
係数
1.2/50 µs
8/20 µs
10/700 µs
5/320 µs
β
12.7±1.4
14.8±1.6
1.05±0.11
2.00±0.22
F.5
サージ発生器の適合性基準における不確かさの適用
一般的に発生器の校正結果は,この規格に規定する範囲内であることが望ましい。この規格に規定する
許容差の範囲は,MUによって影響されることはない(IEC/TR 61000-1-6:2012の箇条6を参照)。
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附属書G
(参考)
サージ測定システムの校正方法
G.1
一般
サージ発生器の校正では,サージ波形の測定に用いる測定システムによって生じるひずみも含めて評価
する必要がある。すなわち,測定結果で得られた波形には,適用するサージ及び用いる測定システムの特
性の作用で生じたひずみが含まれている。
標準化されたサージに対する測定システムの応答は,畳込み積分から推定することができる(IEEE Std
4-1995及びIEC 60060-2参照)。
そのためには測定システムの実験に基づくステップ応答の値が必要となるが,これを数値計算すること
によって,理論的なサージ波形に重畳する測定システムのひずみを求めることができる。
これによって,測定システム応答のサージのパラメータ(すなわち,立ち上がり時間,ピーク値及び持
続時間)に対する一つの影響を推定できる。
検出した系統的な誤差は,校正結果の補正に用いることができ,校正の精度の向上を可能にする。
G.2
畳込み積分を用いる測定システム応答の評価
理論的には,校正に用いる測定システム(電圧変換器又は電流変換器並びにオシロスコープ)の伝達作
用は,ディラック理想サージをシステムの入力に印加することによって決定できる。
伝達作用の有効性は,測定システムで生じる一つのひずみを推定することができる。
Vin(t) を測定システムの入力に印加するサージとする。出力Vout(t) のサージは,畳込み積分を用いて計
算できる[式(G.1)参照]。
()
()
(
)
∫
−
=
t
d
t
h
V
t
V
0
0
in
out
τ
τ
τ
························································· (G.1)
ここに,h0(t) は測定システムの正規化したサージ応答であり,すなわち,次の式による。
()
∫∞
=
0
0
1
dt
t
h
ステップ応答は測定システムのサージ応答から測定することが実際的であり,実験に基づいた正規化ス
テップ応答g(t) をh0(t) の代わりに用いる。したがって,式(G.1)は,式(G.2)のように修正できる。
()
()(
)
∫
−
=
t
d
t
g
V
dt
d
t
V
0
in
out
τ
τ
τ
······················································ (G.2)
ここに,g(t) を次のように定義する。
()
()
∫
=
t
d
h
t
g
0
0
τ
τ
g(t) の決定のために,測定システムは電圧又は電流のステップ波形を入力し,その出力応答を測定する。
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理想的な信号源(立ち上がり時間が0)は実際にはなく,それが測定システムのVout(t) に影響し理想的
な特性とはならない。適用するステップ波形の立ち上がり時間は,サージのフロントタイム(表2参照)
の1/10よりも小さいことが望ましい。
さらに,電圧変換器及び電流変換器の減衰を考慮しても十分なダイナミックレンジを得るため,ステッ
プ信号の振幅は,オシロスコープの入力において必要十分であることが望ましい。
1.2/50 µs及び10/700 µsのコンビネーション波形発生器のサージの標準波形の数理モデルを,附属書E
に示す。このような標準波形を,入力Vin(t) として用いることができる。
このように,入力に対応するひずみをもつ出力Vout(t) は,式(G.2)によって計算できる。Vin(t) とVout(t) と
の間の比較によって,標準波形のパラメータ(立ち上がり時間,ピーク値及び持続時間)で測定システム
によって生じる系統的誤差は,容易に検出することができる。
校正は,電圧変換器及び電流変換器並びにオシロスコープの影響を受ける。
電圧変換器,電流変換器及びオシロスコープは,いずれも,開回路電圧及び短絡電流波形を取り扱うの
に十分な帯域幅,電圧容量及び電流容量をもっていなければならない。オシロスコープは,10 MHz以上
の帯域幅及び毎秒100メガサンプルのサンプリングレートを必要とする。
G.3
開回路電圧(1.2/50 µs及び10/700 µs)のためのサージ測定システムの校正
電圧ステップ信号を電圧変換器に入力し,デジタルストレージオシロスコープを用いてステップ応答を
記録する。
電圧ステップを発生する発生器は,G.2の事項を満たすことが望ましい。
定常レベルの範囲で評価できるように,記録されたステップ応答を正規化する。
標準化した開回路電圧に対する測定システム(オシロスコープ及び電圧変換器)の応答Uout(t) は,式(G.3)
で計算できる。
()
()
(
)τ
τ
τ
d
t
g
U
dt
d
t
U
t
−
=∫
u
0
in
out
··················································· (G.3)
ここに,
gu(t): 電圧測定システムの評価に基づく正規化したステップ
応答
Uin(t): 標準化した開回路電圧波形
測定システムのもつ系統誤差は,Uin(t) をUout(t) と比較することによって評価できる。サージの校正結
果は,その系統誤差によって補正する。
開回路電圧波形を校正するために,電圧変換器の倍率は,直流で評価する。
測定不確かさを減らすために,測定システムのステップ応答を記録するとき,及びサージ発生器の波形
校正のとき,同じオシロスコープを用いることが望ましい。二つの測定を実行するとき,ステップ信号の
電圧振幅は,サージの電圧振幅よりも非常に低いため,オシロスコープの垂直軸(電圧レンジ)の変更が
必要になることがある。
垂直軸の電圧レンジを変更した場合の不正確さは,選択した電圧レンジの設定によって異なるため,オ
シロスコープの電圧レンジごとの校正を推奨する。
G.4
短絡電流(8/20 µs及び5/320 µs)のためのサージ測定システムの校正
電流ステップ信号は,電流変換を行うシャント抵抗器に入力し,デジタルストレージオシロスコープを
60
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用いてステップ応答を記録する。
電流ステップ発生器の簡易回路図を,図G.1に示す。電流ステップ発生器は,G.2の事項を満たすこと
が望ましい。
UDC 直流安定化電圧源(電圧調整可能なもの)
R
電流制限用抵抗
L
エネルギー蓄積インダクタ
SW
半導体スイッチ(高速大電流)
D
ダイオード(高速大電流)
図G.1−電流ステップ発生器の簡易回路図
定常レベルの範囲で評価できるように,記録されたステップ応答を正規化する。
標準化した短絡電流に対する測定システム(オシロスコープ及びシャント抵抗器)の応答Uout(t) は,式
(G.4)で計算できる。
()
()
(
)
∫
−
=
t
d
t
g
I
dt
d
t
I
0
i
in
out
τ
τ
τ
····················································· (G.4)
ここに,
gi(t): 電流測定システムの評価に基づく正規化したステップ
応答
Iin(t): 標準化した短絡電流波形
測定システムのもつ系統誤差は,Iin(t) をIout(t) と比較することによって評価できる。サージの校正結果
は,その系統誤差によって補正する。
短絡電流波形を校正するために,校正したシャント抵抗器又は電流変換器を用いることが望ましい。
測定不確かさを減らすために,測定システムのステップ応答を記録するとき,及びサージ発生器の波形
校正のとき,同じオシロスコープを用いることが望ましい。二つの測定を実行するとき,ステップ信号の
電圧振幅は,サージの電圧振幅よりも非常に低いため,オシロスコープの垂直軸(電圧レンジ)の変更が
必要になることがある。
垂直軸の電圧レンジを変更した場合の不正確さは,選択した電圧レンジの設定によって異なるため,オ
シロスコープの電圧レンジごとの校正を推奨する。
61
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附属書H
(参考)
定格200 Aを超える電源線に対するサージの結合及び減結合
H.1 一般
大電流のEUTは,サージ発生器からみると低いインピーダンスの負荷になるため,サージエネルギーの
ほとんどがサージ発生器の出力インピーダンスで消費される。
そのため,次の事項の検討が必要な場合がある。
− サージ試験は効果的であるか。
− ユニットごとに分けて個別に試験できるか。
− EUTが低消費電流モードで試験できるか(6.3参照)。
大電流のEUTは,実際の設置場所で試験することが多い。
内蔵のサージ保護デバイス(SPD)の影響を考慮することが望ましい。SPDは印加したサージがしきい
値よりも十分高い場合に,効果を発揮する。SPDは,一般的に,ほとんどのサージを吸収する。サージ電
圧がSPDのしきい値よりも低い場合は,EUTは保護されない。
H.2 結合及び減結合の考察
市販のCDNが適用できない大電流のEUTを試験する場合,次の試験セットアップを用いることができ
る。
− CNは,図7及び図8に示すものを用いる。
− DNは,一つのチョークコイル又は十分な長さのケーブルを用いて規定のインダクタンスを構成して
もよい。1 mの直線に伸ばした単線のケーブルは,約1 µHと仮定できる。推奨するインダクタンス値
を,表H.1に示す。ディファレンシャルモードの減結合を確実にするために,一つのチョークコイル
又は単線ケーブルは,ラインごとに用いることが望ましい。
コンデンサ,金属酸化物バリスタ(MOV)又はその複合デバイスによる減結合素子は,減結合回路網に
必要にならない場合がある。
表H.1−200 A超の減結合回路網のインダクタンスの推奨値
EUTの定格電流I
A
減結合インダクタンスの推奨値a)
µH
200<I≦ 400
200〜100
400<I≦ 800
100〜 50
800<I≦1 600
50〜 25
上の行の値の2倍以下の電流値
上の行の値の1/2のインダクタンス
注a) 定格電流と減結合インダクタンス値とは,逆比例の関係があるが,この範囲内にあ
る任意のインダクタンス値を用いてもよい。
H.3 更なる予防措置
三相機器の相間当たり415 Vを超える高い電源電圧のEUTを試験するとき,供給電圧によってサージ発
62
C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
生器に損害を与える場合がある。
結合デバイスは,少なくともEUTと同じ定格電圧をもつものを用いる。
63
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
IEC 60060-2,High-voltage test techniques−Part 2: Measuring systems
JIS C 60364-4-44 低圧電気設備−第4-44部:安全保護−妨害電圧及び電磁妨害に対する保護
注記 対応国際規格:IEC 60364-4-44,Low-voltage electrical installations−Part 4-44: Protection for
safety−Protection against voltage disturbances and electromagnetic disturbances
JIS C 60664-1 低圧系統内機器の絶縁強調−第1部:基本原則,要求事項及び試験
注記 対応国際規格:IEC 60664-1,Insulation coordination for equipment within low-voltage systems−
Part 1: Principles, requirements and tests
IEC/TR 61000-1-6:2012,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 1-6: General−Guide to the assessment
of measurement uncertainty
JIS C 61000-4-4 電磁両立性−第4-4部:試験及び測定技術−電気的ファストトランジェント/バー
ストイミュニティ試験
注記 対応国際規格:IEC 61000-4-4,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 4-4: Testing and
measurement techniques−Electrical fast transient/burst immunity test
IEC 60050-195:1998,International Electrotechnical Vocabulary−Part 195: Earthing and protection against
electric shock
IEC 60050-311,International Electrotechnical Vocabulary. Chapter 311, Electromagnetic compatibility
Electrical and electronic measurements−General terms relating to measurements
IEC 61643 (all parts),Low-voltage surge protective devices
JIS C 5381-11 低圧サージ防護デバイス−第11部:低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デバ
イスの要求性能及び試験方法
注記 対応国際規格:IEC 61643-11,Low-voltage surge protective devices−Part 11: Surge protective
devices connected to low-voltage power systems−Requirements and test methods
JIS C 5381-12 低圧サージ防護デバイス−第12部:低圧配電システムに接続する低圧サージ防護デ
バイスの選定及び適用基準
注記 対応国際規格:IEC 61643-12,Low-voltage surge protective devices−Part 12: Surge protective
devices connected to low-voltage power distribution systems−Selection and application principles
IEC 61643-21:2000,Low voltage surge protective devices−Part 21: Surge protective devices connected to
telecommunications and signalling networks−Performance requirements and testing methods
Amendment 1:2008
Amendment 2:2012
JIS Z 9290-1 雷保護−第1部:一般原則
注記 対応国際規格:IEC 62305-1,Protection against lightning−Part 1: General principles
IEEE Std 4-1995,IEEE Standard Techniques for High-Voltage Testing
IEEE Std C62.45-2002,IEEE Recommended Practice on Surge Testing for Equipment Connected to
Low-Voltage (1000 V and Less) AC Power Circuits
ITU-T K.44,Resistibility tests for telecommunication equipment exposed to overvoltages and overcurrents−
Basic Recommendation
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C 61000-4-5:2018 (IEC 61000-4-5:2014)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
W.C. Elmore, "The Transient Response of Damped Linear Networks with Particular Regard t