C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 一般事項························································································································· 4
5 試験レベル ······················································································································ 4
6 ESD発生器 ····················································································································· 5
6.1 一般事項 ······················································································································ 5
6.2 ESD発生器の特性及び性能 ······························································································ 5
6.3 ESD試験セットアップの立証 ··························································································· 8
7 試験セットアップ ············································································································· 9
7.1 試験装置 ······················································································································ 9
7.2 試験室で行う試験セットアップ ························································································ 9
7.3 設置後試験のセットアップ ····························································································· 15
8 試験手順························································································································ 17
8.1 試験室の基準条件 ········································································································· 17
8.2 EUTの動作 ················································································································· 17
8.3 試験の実施 ·················································································································· 17
9 試験結果の評価 ··············································································································· 19
10 試験報告書 ··················································································································· 20
附属書A(参考)ESD及びESD試験に関する注釈····································································· 21
附属書B(規定)電流測定システムの校正及び放電電流測定 ························································ 25
附属書C(参考)附属書Bの要求事項に適合するターゲットの例 ················································· 31
附属書D(参考)人体と金属との間の放電及びESD発生器からの放電による放射電磁界 ·················· 36
附属書E(参考)測定不確かさ(MU)の考察 ··········································································· 45
附属書F(参考)試験結果のばらつき及び段階的な試験手順 ························································ 52
C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人電気
学会(IEEJ)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正す
べきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS C 61000-4-2:1999は改正されこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS C 61000-4の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 61000-4-2 第4-2部:試験及び測定技術−静電気放電イミュニティ試験
JIS C 61000-4-3 第4-3部:試験及び測定技術−放射無線周波電磁界イミュニティ試験
JIS C 61000-4-4 第4-4部:試験及び測定技術−電気的ファストトランジェント/バーストイミュニ
ティ試験
JIS C 61000-4-5 第4-5部:試験及び測定技術−サージイミュニティ試験
JIS C 61000-4-6 第4-6部:試験及び測定技術−無線周波電磁界によって誘導する伝導妨害に対する
イミュニティ
JIS C 61000-4-7 第4-7部:試験及び測定技術−電力供給システム及びこれに接続する機器のための
高調波及び次数間高調波の測定方法及び計装に関する指針
JIS C 61000-4-8 第4部:試験及び測定技術−第8節:電源周波数磁界イミュニティ試験
JIS C 61000-4-11 第4-11部:試験及び測定技術−電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対するイ
ミュニティ試験
JIS C 61000-4-14 第4部:試験及び測定技術−第14節:電圧変動イミュニティ試験
JIS C 61000-4-16 第4部:試験及び測定技術−第16節:直流から150 kHzまでの伝導コモンモード
妨害に対するイミュニティ試験
JIS C 61000-4-17 第4部:試験及び測定技術−第17節:直流入力電源端子におけるリプルに対する
イミュニティ試験
JIS C 61000-4-20 第4-20部:試験及び測定技術−TEM(横方向電磁界)導波管のエミッション及び
イミュニティ試験
JIS C 61000-4-34 第4-34部:試験及び測定技術−1相当たりの入力電流が16 Aを超える電気機器の
電圧ディップ,短時間停電及び電圧変動に対するイミュニティ試験
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日本工業規格 JIS
C 61000-4-2:2012
(IEC 61000-4-2:2008)
電磁両立性−第4-2部:試験及び測定技術−
静電気放電イミュニティ試験
Electromagnetic compatibility (EMC)-Part 4-2: Testing and measurement
techniques-Electrostatic discharge immunity test
序文
この規格は,2008年に第2版として発行されたIEC 61000-4-2を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,人体から直接の,又は人体から近接している物体への静電気放電(以下,ESDという。)
にさら(曝)される電気・電子装置に対するイミュニティ要求事項及び試験方法について規定する。さら
に,様々な環境及び設置条件に関する試験レベルの範囲を定義し,試験手順を確立する。
この規格は,電気・電子装置がESDを受けた場合の性能を評価するために,共通的で再現性のある基本
的な基準を規定することを目的とする。ESDには,人体から通電状態の装置に近接する物体に発生するも
のも含む。
この規格は,次の項目を規定する。
− 放電電流の理想的な波形
− 試験レベルの範囲
− 試験装置
− 試験のセットアップ
− 試験手順
− 校正手順
− 測定不確かさ
この規格は,“試験室での試験”及び最終設置状態での装置に対して実施する“設置後試験”を規定する。
この規格は,関連する製品規格委員会で参照する一般的な基本規格を提供することを目的とし,特定の
装置及びシステムだけに適用することを意図していない。製品規格委員会(又は使用者及び製造業者)に
は,当該装置に適切な試験及び適用する試験レベルの選定に責任がある。
製品規格委員会又は装置の使用者及び製造業者には,規格間の整合及び標準化の支障とならないように
するために,この規格に規定する関連のイミュニティ試験の採用(今後の規格制定又は既存規格の改正時)
が強く望まれる。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61000-4-2:2008,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 4-2: Testing and measurement
2
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techniques−Electrostatic discharge immunity test(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 60050-161 EMCに関するIEV用語
注記 対応国際規格:IEC 60050-161,International Electrotechnical Vocabulary. Chapter 161:
Electromagnetic compatibility(IDT)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 60050-161によるほか,次による。
3.1
気中放電法(air discharge method)
ESD発生器の帯電した放電電極をEUTに接触するまで近付けて試験する方法。
3.2
帯電防止材料(antistatic material)
同一若しくは類似材料を摩擦するか又はそれらを分離するときに,電荷の発生を最小にする特性をもつ
材料。
3.3
校正(calibration)
規定する条件の下で基準に照らし,表示値と測定値との間の関連性を確立するための一連の作業(IEV
311-01-09参照)。
注記1 この用語は,“不確かさ”の手法に基づいている。
注記2 表示値と測定値との間の関連性は,通常,校正図で説明できる。
3.4
適合性試験(conformance test)
設計・製作した装置が,規格の要求に適合するかどうかを決める目的で,装置の代表的なサンプルにつ
いて行う試験。
3.5
接触放電法(contact discharge method)
ESD発生器の放電電極をEUT又は結合板に接触させた状態で,ESD発生器内の放電スイッチの作動に
よって放電させる試験方法。
3.6
結合板(coupling plane)
EUTに近接している物体へのESDを模擬するために,放電を加える金属板又は金属面。
結合板には,水平結合板:HCP(Horizontal coupling plane)及び垂直結合板:VCP(Vertical coupling plane)
がある。
3
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3.7
(性能の)低下[degradation(of performance)]
機器,装置又はシステムの動作性能が,意図する性能から好ましくない方に外れること(JIS C 60050-161
の01-19参照)。
注記 用語“低下(degradation)”は,一時的な又は永久的な不具合にも使用することができる。
3.8
直接印加(direct application)
EUTへの直接の放電。
3.9
電磁両立性(EMC : electromagnetic compatibility)
装置又はシステムの存在する環境において,許容できないような電磁妨害をいかなるものに対しても与
えず,かつ,その電磁環境において満足に機能するための装置又はシステムの能力(JIS C 60050-161の
01-07参照)。
3.10
静電気放電[electrostatic discharge(ESD)]
静電気電位の異なる物体同士が,近接又は直接接触することによって,物体間に起こる電荷の移動(JIS
C 60050-161の01-22参照)。
注記 技術上の観点からは,このESDに対する正確な用語は “static electricity discharge”となる。た
だし,用語“electrostatic discharge(ESD)”は技術用語及び技術文献で広く用いている。したが
って,この規格でも“ESD”を使用することとした。
3.11
エネルギー蓄積コンデンサ(energy storage capacitor)
試験電圧値まで充電した人体容量に等価なESD発生器のコンデンサ。
注記 これは,個別コンデンサ部品又は分布容量である。
3.12
EUT(equipment under test)
供試装置。
3.13
基準グラウンド面[ground reference plane(GRP)]
共通の基準として使用する電位の,平たん(坦)な導電性の面(JIS C 60050-161の04-36参照)。
3.14
保持時間(holding time)
放電する前の漏えい(洩)によって起こる出力電圧の減少が10 %以下の時間間隔。
3.15
イミュニティ(妨害に対する)[immunity(to a disturbance)]
電磁妨害が存在する環境で,機器,装置又はシステムが性能低下せずに動作することができる能力(JIS
C 60050-161の01-20参照)。
3.16
間接印加(indirect application)
EUTの近くの物体への人体放電を模擬するための,EUTに近接した結合板への放電。
4
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3.17
立上り時間(rise time)
規定した下限値にパルスが到達し,その後,規定した上限値に到達するまでの時間間隔。
注記1 他に規定がなければ,パルス振幅の下限値及び上限値は,それぞれ10 %及び90 %である。
注記2 この定義は,JIS C 60050-161の02-05で規定する定義を変更している。
3.18
立証(verification)
試験装置システム(例えば,発生器と相互接続しているケーブル)を確認し,この試験システムの機能
を証明する一連の作業。
注記1 立証の方法は,校正の方法と異なってもよい。
注記2 この定義は,IEV 311-01-13(IEC 60050-311)で規定する定義と異なっている。
4
一般事項
この規格は,環境及び設置条件が原因となって発生するESDの影響を受ける装置,システム,サブシス
テム及び周辺装置を対象とする。この環境及び設置条件には,例えば,低い相対湿度,低い導電率の合成
繊維のカーペット,ビニル製の衣類などがある。このような環境は,電気・電子装置に関する規格の中で
分類される全ての場所に存在する可能性がある(詳細についてはA.1を参照)。
5
試験レベル
ESDに対する試験レベルを,表1に示す。
優先する試験方法は接触放電法であり,気中放電法は接触放電法が適用できない場合に用いる。
各試験方法での試験電圧を表1に示す。表のレベルごとの電圧値は,各々の試験方法によって異なるが,
同じレベルの試験の厳しさは,試験方法間で等価であることを意味していない。
人体に帯電する電圧レベルに影響する種々のパラメータについては,A.2を参照する。また,環境(設
置)クラスに関連した試験レベルの適用例を参考としてA.4に示す。
気中放電試験では,指定の試験レベル及び表1に示したその試験レベルを含む,全ての下位レベルの試
験を行う。
更なる情報は,A.3〜A.5を参照。
表1−試験レベル
単位 kV
レベル
接触放電
気中放電
試験電圧
試験電圧
1
2
2
2
4
4
3
6
8
4
8
15
X a)
特殊
特殊
注a) “X”は,任意のレベルで,ほかのレベルより高い若しくは低い,又
は間とすることができる。このレベルは装置仕様書で指定する。ここ
に規定するレベル4を超える電圧を指定する場合は,特別な試験装置
が必要となる場合がある。
5
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6
ESD発生器
6.1
一般事項
ESD発生器の主要な要素は,次による。
− 充電抵抗Rc
− エネルギー蓄積コンデンサCs
− 分布容量Cd
− 放電抵抗Rd
− 電圧表示器
− 放電スイッチ
− 充電スイッチ
− 交換可能な放電電極の先端(図3参照)
− 放電リターンケーブル
− 直流高圧電源
ESD発生器の基本構成図を図1に示す。
Cd:ESD発生器とその周囲との間に存在する分布容量
Cs+Cdの代表値:150 pF
Rdの代表値:330 Ω
図1−ESD発生器の基本構成図
ESD発生器は,附属書Bに規定する方法に従って測定し,6.2の要求事項に適合しなければならない。
このため,図1の回路図及び素子の特性値は詳細に規定していない。
6.2
ESD発生器の特性及び性能
ESD発生器は,附属書Bに規定する方法に従って測定し,表2及び表3の仕様に適合しなければならな
い。表3で規定する理想的な電流波形及び測定点を,図2に示す。
6
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表2−ESD発生器の仕様
項目
仕様
出力電圧,接触放電モードa)
1 kV〜8 kV(公称)
出力電圧,気中放電モードa)
2 kV〜15 kV(公称)c)
出力電圧の許容範囲
±5 %
出力電圧の極性
正及び負
保持時間
5秒以上
放電動作モード
単発b)
注a) ESD発生器の放電電極で測定する開放回路電圧。
b) 予備試験では,ESD発生器は,1秒に20回以上の放電繰返し率で放電できること
が望ましい。
c) 使用する最大試験電圧が15 kVより低い場合には,気中放電電圧15 kVの能力を
もつESD発生器を使用する必要はない。
表3−接触放電電流波形の仕様
レベル
試験電圧
kV
最初の放電ピーク
電流Ip
(±15 %)
A
立上り時間tr a)
(±25 %)
ns
30 nsでの
電流I30
(±30 %)
A
60 nsでの
電流I60
(±30 %)
A
1
2
7.5
0.8
4
2
2
4
15
0.8
8
4
3
6
22.5
0.8
12
6
4
8
30
0.8
16
8
30 ns及び60 nsを規定する時間軸の基準点は,電流が最初に放電電流の最初のピーク(Ip)の10 %に達
する瞬間である(図2参照)。
注a) 立上り時間trは,最初のピーク電流値の10 %と90 %との間の間隔である。
図中の記号は表3を参照する。
図2−試験電圧4 kVの場合の理想的な接触放電の電流波形
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図2に示す理想的な波形I(t)の式を,次に示す。
()
−
×
+
×
+
−
×
+
×
=
4
3
3
2
2
2
1
1
1
1
exp
1
exp
1
τ
τ
τ
τ
τ
τ
t
t
t
k
I
t
t
t
k
I
t
I
n
n
n
n
ここに,
−
=
n
n
k
/1
1
2
2
1
1
exp
τ
τ
τ
τ
−
=
n
n
k
/1
3
4
4
3
2
exp
τ
τ
τ
τ
τ1=1.1 ns τ2=2 ns τ3=12 ns τ4=37 ns
I1=16.6 A(4 kVのとき) I2=9.3 A(4 kVのとき)
n=1.8
k1,k2:式I(t)への代数
τ1,τ2,τ3,τ4:立上り時間,立下り時間を決定する変数
I1,I2:ピーク電流を決定する変数
n:係数
ESD発生器は,EUT及び補助試験装置を妨害しないように,パルス又は連続的な妨害を含む,意図しな
い放射又は伝導妨害を防ぐ手段を備えていることが望ましい(附属書D参照)。
放電電極は,図3に示す形状及び寸法に適合しなければならない。放電電極は絶縁被覆で覆ってもよい
が,放電電流波形仕様を満足しなければならない。
単位 mm
a) 接触放電のための放電電極
図3−ESD発生器の放電電極
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単位 mm
b) 気中放電のための放電電極
図3−ESD発生器の放電電極(続き)
接触放電試験及び気中放電試験(以下,ESD試験という。)には,同じESD発生器を用いる。接触放電
試験では,図1の放電スイッチは,放電するときに閉じる。気中放電の試験では,図1の放電スイッチは
閉じた状態を維持できなければならない。
接触放電の場合,図3 a) に示す先端がとが(尖)った放電電極を取り付ける。気中放電の場合,ESD発
生器は,図3 b) に示す先端が丸い放電電極を取り付ける。これ以外に接触放電試験と気中放電試験との仕
様に相違点はない。
ESD発生器の放電リターンケーブルは,長さ(2±0.05)mとし,ESD発生器の波形特性及び性能を満
足しなければならない。放電リターンケーブルの長さは,ESD発生器のきょう体から接続点の端の位置で
測定する。放電リターンケーブルは,ESD試験の間,終端部分を除いて,試験者又は導電性の表面への放
電電流の漏えいを防ぐために,十分に絶縁する。
試験に使用する放電リターンケーブルは,校正に使用したケーブルと同種又は同一でなければならない。
背の高いEUTを試験する場合など,放電リターンケーブルの長さが2 mでは足らない場合には,放電リ
ターンケーブルの長さを3 m以下としてもよい。試験に用いるケーブルは,波形仕様を満たさなければな
らない。
6.3
ESD試験セットアップの立証
立証の目的は,次のESD試験セットアップが機能していることを保証することである。
− ESD発生器
− 放電リターンケーブル
− 抵抗器,470 kΩ
− 基準グラウンド面
− 放電経路を形成する接続の全て
卓上形装置のESD試験セットアップの例を図4に,床置形装置のESD試験セットアップの例を図5に
示す。試験セットアップが適切であることを確認するため,立証方法として,低電圧設定において結合板
に対する気中放電中に小さなスパークが生じること,及び高電圧設定において大きなスパークが生じるこ
とによって確認してもよい。この立証に先立って,各装置の配置を確認することが重要である。
注記 ESD発生器の波形は,通常は変化しない(例えば,波形の立上り時間及び持続時間はドリフト
しない。)ため,ESD発生器のほとんどの故障は,電圧が放電電極に発生しない,又は電圧制
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御ができないことによる。放電パスを形成するいずれかのケーブル,抵抗又は接続部が,損傷,
緩み又は欠落している場合は,放電しないことがある。
ESD試験セットアップは,試験に先立って立証することが望ましい。
7
試験セットアップ
7.1
試験装置
試験セットアップは,ESD発生器,EUT及び補助機器で構成する。これらは,次の方法によってEUT
に対する直接印加及び間接印加を行うために用いる。
a) 導電性の表面及び結合板に対する接触放電
b) 絶縁性の表面での気中放電
試験は,次の2種類の試験に分類できる。
− 試験室で行う形式試験(適合性試験)
− 最終設置状態で行う設置後試験
試験室で行う形式試験を,推奨試験方法とする。
EUTは,製造業者の設置説明書がある場合,それに従って配置する。
7.2
試験室で行う試験セットアップ
7.2.1
試験要求事項
次の要求事項は,8.1に規定する環境基準条件の試験室で行う試験に適用する。
基準グラウンド面は,試験室の床に備える。基準グラウンド面は,厚さが0.25 mm以上の金属(銅又は
アルミニウム)シートとする。ほかの金属材料を用いてもよいが,この場合,厚さが0.65 mm以上でなけ
ればならない。
基準グラウンド面は,EUT及びHCP(適用する場合)の全ての側面から0.5 m以上大きく,かつ,我が
国の安全規制に適合した保護接地に接続する。
EUTは,その機能要求(設置仕様)に従って配置及び接続する。
EUTと試験室の壁との距離,及びEUTとその他の金属構造物との距離は,0.8 m以上とする。
EUT及びESD発生器は,それぞれの設置仕様に従って基準グラウンド面に接続する。これ以外のグラ
ウンド接続は,行ってはならない。
電源及び信号ケーブルは,実際の使用時の配置とする。
ESD発生器の放電リターンケーブルは,基準グラウンド面に接続する。放電リターンケーブル長が印加
点に対して必要な長さを超える場合だけ,超えた部分を可能な限り無誘導で基準グラウンド面に床置きす
る。放電リターンケーブルは,基準グラウンド面を除く試験セットアップの他の導電部分から0.2 m以内
に近付けてはならない。
注記1 試験室の金属製の壁を基準グラウンド面と電気的に接続している場合,放電リターンケーブ
ルを壁に接続してもよい。
基準グラウンド面の接地接続及び全ての接続は,低インピーダンスにする。例えば,高周波では機械的
な結合部品を使用することによって,低インピーダンスになる。
結合板を指定する場合,例えば,間接印加の適用が可能な場合,厚さが0.25 mm以上の金属(銅又はア
ルミニウム)シートから構成し(ほかの金属材を用いてもよいが,厚さが0.65 mm以上とする。),かつ,
両端に470 kΩの抵抗を付けたケーブルで基準グラウンド面に接続する。これらの抵抗は,放電電圧に耐え
なければならない。ケーブルを基準グラウンド面の上に配置する場合,抵抗及びケーブルは,基準グラウ
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ンド面への短絡を避けるために絶縁する。
注記2 HCP及びVCP(垂直結合板)のグラウンドケーブルにある470 kΩの抵抗器(図4〜図8参
照)は,ESD発生器から結合板への放電後,瞬時に結合板への電荷が消失することを防止す
るために用いる。これは,EUTへの静電気による影響を強める。抵抗は,試験中の結合板に
印加する最大放電電圧に耐える能力が必要である。抵抗は,抵抗値を分散するために,グラ
ウンドケーブルの両端近くに配置することが望ましい。
異なる種類のEUTへの追加仕様は,7.2.2〜7.2.4による。
7.2.2
卓上形装置
試験セットアップは,基準グラウンド面の上に置いた高さ (0.8±0.08) mの非導電性のテーブルで構成す
る。
(1.6±0.02) m×(0.8±0.02) mのHCPをテーブルの上に置く。EUT及びEUTに接続するケーブルは,厚
さ (0.5±0.05) mmの絶縁板によって結合板から絶縁する。
注記 絶縁物は,試験中に絶縁性能を維持することが望ましい。
HCPの全ての端面から0.1 m以上離して配置することができない大きなEUTの場合,元のHCPから (0.3
±0.02) m離して配置する追加の同等のHCPを用いる。HCPを設置するために,テーブルを拡張するか,
又は二つのテーブルを用いてもよい。HCPは,基準グラウンド面への抵抗器(470 kΩ×2)付きケーブル
を除いて,相互に接続してはならない。
EUTに取り付けている脚は,取り外してはならない。
卓上形装置の試験セットアップの例を,図4に示す。
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図4−卓上形装置に対する試験室での試験セットアップ例
7.2.3
床置形装置
EUTは,厚さ0.05 m〜0.15 mの絶縁支持台によって基準グラウンド面から絶縁する。EUTのケーブルは,
(0.5±0.05) mmの絶縁板によって基準グラウンド面から絶縁する。EUTのケーブルの絶縁板は,EUTの絶
縁支持台の端から設置する。
床置形装置の試験セットアップ例を,図5に示す。
EUTに取り付けている脚は,取り外してはならない。
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図5−床置形装置に対する試験室での試験セットアップ例
7.2.4
非接地装置
7.2.4.1
一般事項
この箇条に規定する試験セットアップは,いかなる接地システムにも接続しない設置仕様又は設計にな
っている装置又は装置の部品に適用する。これには,可搬形装置,(接地していない電源ケーブルをもつ)
充電器を含む又は含まない(内部若しくは外部)バッテリ駆動の装置,及び二重絶縁装置を含む。
注記1 対応国際規格では,二重絶縁装置について“class II equipment”と括弧書きしているが,クラ
スII装置は,規格及び/又は製品分野により一意とは限らないため,対応国際規格の誤記と
判断し,この規格では削除した。
注記2 非接地装置又は装置の非接地部品は,接地した装置のように除電できない。連続した静電気
試験を実施する場合,前の電荷を除去できないため,EUT又はEUTの部品に意図した試験
電圧の2倍の電圧を印加する可能性がある。したがって,非接地装置又は装置の非接地部品
では,複数回のESDによって電荷が蓄積し,非現実的な高電圧によって絶縁破壊が発生する。
一般的な試験セットアップは,それぞれ7.2.2及び7.2.3の規定に適合しなければならない。
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気中放電及び接触放電では,1回のESDを模擬するために,EUTに帯電した電荷は,各々の静電気の印
加前に除電しなければならない。
静電気の印加をする金属部分又は部品(例えば,コネクタシェル,充電ピン,金属アンテナなど)の帯
電は,ESD印加ごとに除電しなければならない。
一つ又は複数の接触可能な金属箇所にESD試験を実施する場合,印加ポイントと製品のその他の接触可
能なポイントとの間の抵抗が保証できないため,ESDを印加した箇所の電荷を取り除かなければならない。
帯電を除去するために,HCP及びVCPに使用している470 kΩの抵抗付きケーブルに類似したケーブル
を使用することが望ましい(7.2参照)。
卓上形のEUTとHCPとの間及び床置形のEUTと基準グラウンド面との間の静電容量は,EUTの大き
さによって決定するため,抵抗付きケーブルは,機能的に許容できる場合,ESD試験中は付けておいても
よい。抵抗付きケーブルの一端の抵抗は,EUTの試験ポイントから可能な限り20 mm未満の位置に接続す
る。他端の抵抗は,卓上形装置の場合のHCP(図6参照)又は床置形装置の場合の基準グラウンド面(図
7参照)に接続するケーブル端の近傍に接続する。
抵抗付きケーブルが存在することによって,機器によっては,試験結果に影響が出る場合がある。この
場合,次の放電までの間に,電荷を十分に減らすための抵抗付きケーブルを接続した試験より,抵抗付き
ケーブルを外した試験を優先する。
したがって,代替法として,次の方法を選択してもよい。
− EUTから電荷が自然に減少するのに必要な時間だけ,印加時間の間隔を延長する。
− 接地した抵抗付き(例えば,両端に470 kΩ)カーボンファイバブラシで,EUTの電荷を除電する。
注記3 電荷の減少に疑義が生じた場合,EUTの帯電は,非接触の電界計によってモニタすることが
できる。帯電が初期値の10 %未満に減少した場合,EUTは除電したとみなす。
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図6−非接地卓上形装置の試験セットアップ例
印加
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図7−非接地床置形装置の試験セットアップ例
7.2.4.2
卓上形装置
表面に金属部分を全くもたない卓上形装置については,7.2.2及び図4と同様に設置する。
EUTにESD印加が可能な金属部分がある場合,この部分は抵抗付きのケーブルによって,HCPに接続
する(図6参照)。
7.2.4.3
床置形装置
表面に金属部分を全くもたない床置形装置については,7.2.3及び図5と同様に設置する。
静電気の印加が可能なEUTの金属の接触可能部分と基準グラウンド面との間には,抵抗付きケーブルを
使用する(図7参照)。
7.3
設置後試験のセットアップ
設置後試験は,設置環境における性能の評価であり,製造業者と使用者との合意に従って実施できる。
併設した他の装置が,許容できない影響を受けることがあるので注意する。
注記 EUT自身も,設置後試験のESD試験によって重大な劣化を受ける可能性がある。ひとたび電
子回路に静電気を放電した場合,多くの最新電子回路の平均故障時間(MTTF)は,著しく減
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少する。機能障害不全は,ESD試験中にすぐに生じることはない。しかし,ESD試験を実施し
ていない機器よりはるかに早く故障することがある。これを考慮して,ESD試験を全く行わな
いことが適切な場合もある。
設置後のESD試験を行う決定をした場合は,EUTの最終設置状態の下で試験を行う。
放電リターンケーブルの接続を容易にするため,基準グラウンド面は,EUTに約0.1 m近付けて,設置
の床面上に置く。この基準グラウンド面は,厚さ0.25 mm以上の銅又はアルミニウムでなければならない。
他の金属材料を用いてもよいが,この場合,厚さ0.65 mm以上でなければならない。この基準グラウンド
面の大きさは,設置可能ならば幅0.3 m,長さ2 m程度あることが望ましい。
基準グラウンド面は,保護接地へ接続する。保護接地に接続できない場合,EUTの接地端子が使用でき
るときには,接地端子に接続する。
ESD発生器の放電リターンケーブルは,基準グラウンド面に接続する。EUTを金属テーブル上に設置す
る場合は,帯電を防ぐために,470 kΩの抵抗を両端に接続したケーブルでテーブルを基準グラウンド面に
接続する。
接地しない金属部品を7.2.4のように試験する場合は,抵抗を付けたケーブルでEUTの近傍の基準グラ
ウンド面に接続する。
設置後試験のセットアップ例を,図8に示す。
図8−床置形装置の設置後試験セットアップ例
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8
試験手順
8.1
試験室の基準条件
8.1.1
環境パラメータ
周囲の環境条件が試験結果に及ぼす影響を最小にするために,試験及び校正は8.1.2及び8.1.3に規定す
る気象条件及び電磁環境条件で行う。
8.1.2
気象条件
EUTは,EUTの使用環境を意図した気象条件内で動作させる。
気中放電試験の場合の気象条件は,次の範囲とする。
− 周囲温度 15 ℃〜35 ℃
− 相対湿度 30 %〜60 %
− 気圧 86 kPa〜106 kPa
注記 この範囲外の数値は,特定の気象環境においてだけ使用する装置に適用してもよい。
8.1.3
電磁環境条件
試験室の電磁環境条件は,試験結果に影響を与えないように,EUTの正常動作を保証するものでなけれ
ばならない。
8.2
EUTの動作
EUTの全ての標準動作モードを実行するように,テストプログラム及びソフトウェアを選定する。EUT
がより多くの機能を実行していることを証明できる場合だけ,特別のソフトウェアを使用してもよい。
適合性試験では,EUTは予備試験で把握した最も厳しい試験モード(プログラムサイクル)で連続的に
動作させる。
モニタ装置を使用する場合には,モニタ装置が誤作動して,間違った表示をしないように減結合するこ
とが望ましい。
8.3
試験の実施
8.3.1
EUTへの放電
試験は,試験計画に従って,EUTに対し直接印加及び/又は間接印加を行う。この計画には次のものを
含むことが望ましい。
− EUTの代表的動作条件
− EUTは卓上形又は床置形のいずれで試験することが望ましいか
− 放電を印加する箇所
− 各々の箇所は,接触放電又は気中放電のいずれを適用するか
− 適用する試験レベル
− 適合試験では,各々の箇所の放電回数
− 設置後試験の適用の有無
試験計画の幾つかの条件を決定するため,何回かの予備試験が必要な場合がある。
注記1 測定の不確かさを求める必要がある場合,附属書Eを参照する。
注記2 試験結果にばらつきがある場合,違いの原因を特定する手順を附属書Fに示す。
8.3.2
EUTに対する直接印加
共通規格,製品規格又は製品群規格で規定がない限り,ESDは,人が通常の使用状態で接触可能なEUT
の点又は表面に対してだけ行う。次に示す箇所には適用しない(すなわち,それらの箇所には放電しない。)。
a) 保守中にしか接触しない点及び表面。この場合,特別のESD試験の緩和措置を,製品に添付する文書
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で明示する。
b) 使用者が点検中にしか接触しない点及び表面。これらの通常接触しない点の例として,電池交換中の
電池接点,留守番電話機のカセットなどがある。
c) 据付固定後又は設置の指示に従った後では接触しない装置の点及び表面。例えば,装置の底面,壁側,
装着したコネクタで覆われる部分など。
d) 金属のコネクタシェルがある同軸及び多芯コネクタの接点。この場合,接触放電は,コネクタの金属
シェルだけに適用する。非導電性コネクタ(例えば,プラスチックシェル)で,人体が接触できる接
点は,気中放電試験だけ行う。この試験は,ESD発生器の先端が丸い放電電極を用いて行う。
一般的に,表4に示す六つの事例が考えられる。
表4−コネクタにESDを適用する事例
事例
コネクタシェル
カバーの材質
気中放電の印加箇所
接触放電の印加箇所
1
金属
なし
−
シェル
2
金属
絶縁
カバー
接触可能なシェル
3
金属
金属
−
シェル及びカバー
4
絶縁
なし
a)
−
5
絶縁
絶縁
カバー
−
6
絶縁
金属
−
カバー
注記 カバーがコネクタ接点のESD保護を目的としている場合,ESD警告ラベルをカバー又は装置のコネ
クタの近くに付けることが望ましい。
注a) 非導電性コネクタの個々の接点ピンに対する試験を,製品規格又は製品群規格で規定する場合,気
中放電を適用する。
e) 機能的な理由によってESDに敏感なコネクタの接点又は,ESD警告ラベルがあるその他の接触可能
な部分。例えば,測定,受信又はその他の通信機能からの高周波入力部。
注記1 多くのコネクタポートは,アナログ又はデジタルのいずれであっても,高周波信号を取り扱
うように設計している。したがって,十分な過電圧保護装置を付加することができない。ア
ナログの信号の場合,帯域通過フィルタによって解決する場合がある。過電圧保護ダイオー
ドは,多くの浮遊容量をもつためEUTが動作する周波数領域では,使用できない。
b)〜e) の場合は,製品に添付する文書にESDを緩和する特別な手順を示すことが望ましい。
最大試験レベルは,装置を破損しないように製品仕様の値を超えないことが望ましい。
試験は,単一放電で行う。あらかじめ選択した点に対して(最も敏感な極性で)10回以上の単一放電を
行う。
注記2 最小の放電回数は,EUTに依存する。同期回路を含む製品の放電回数は,多くすることが望
ましい。
連続した単一放電の時間間隔は,最初は1秒を推奨する。システムの障害の発生を確認するのに,より
長い時間間隔が必要になる場合がある。
注記3 放電点の選定は,1秒に20回以上の繰返し率で実施した放電による事前調査によって決定し
てもよい。
ESD発生器は,可能な場合,放電する表面に対して直角に設定する。これによって試験結果の再現性が
改善される。ESD発生器を放電する表面に対して直角にできない場合は,放電を実施した試験状態を,試
験報告書に記録する。
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ESD発生器の放電リターンケーブルは,放電している間,EUTから0.2 m以上離し,試験者が手で持っ
てはならない。
接触放電の場合,ESD発生器の放電スイッチを動作させる前に,放電電極の先端をEUTに接触させる。
導電材料の表面が塗装されている場合,次の手順で試験を行う。
製造業者によって,EUTが絶縁塗装されていると明示されていない場合は,とがった放電電極で塗膜を
貫通させ,導電材料に電極を接触させる。製造業者によって,絶縁塗装が明示されているときは,気中放
電だけを行う。そのような表面には,接触放電を実施しない。
気中放電試験の場合,放電スイッチは閉とする。ESD発生器の放電電極を,できるだけ速くEUTに接
近及び接触させる。このとき,機械的な損傷を与えないように注意する。放電終了後,ESD発生器(放電
電極)は,EUTから離す。新たな単一放電を行うために,ESD発生器の放電スイッチを再度,閉にする。
この手順は,必要な放電回数が完了するまで繰り返し行う。
8.3.3
EUTに対する間接印加
8.3.3.1
EUTの近傍の物体への放電
EUTの近傍に配置又は据え付けられた物体への放電は,接触放電モードでESD発生器を結合板に印加
することによって模擬する。
8.3.2に規定する試験手順に加え,8.3.3.2及び8.3.3.3も適用する。
8.3.3.2
HCP
HCPへの印加は,HCPの端面に対して水平方向から行う。(可能な場合)EUTの各ユニットの前面の中
央に対向する0.1 mの距離のHCPの端面に,(最も敏感な極性で)10回以上の単一放電を行う。放電の間,
放電電極は,HCPの前面の端面に対して直角にする(図4参照)。
ESD発生器の放電スイッチを動作させる前に,放電電極をHCPの端面に接触させる。
注記 製品規格では,この試験をEUTの全ての面に要求する場合がある。
8.3.3.3
VCP
VCPは,寸法0.5 m×0.5 mとし,EUTから0.1 mのところにEUTに平行に配置する。VCPの垂直な端
面の中央に対し,(最も敏感な極性で)10回以上の単一放電を行う(図4及び図5参照)。
EUT面が寸法0.5 m×0.5 mより大きい場合,EUT面を完全に照射するように,位置を変えて結合板に放
電する。EUTの各面に対して印加する。
9
試験結果の評価
試験結果は,EUTの機能損失又は性能低下の観点から,その装置の製造業者,又は試験の依頼者によっ
て定義された,又は製品の製造業者と購入者との間の協定によって合意された性能レベルと比較して分類
する。推奨する分類を,次に示す。
a) 製造業者若しくは試験の依頼者,又は購入者が指定する仕様限度内の正常な性能。
b) 妨害がなくなった後に消滅する一時的な機能損失又は性能低下。操作者が介在することなくEUTが正
常な性能に自己復帰する。
c) 操作者の介在が必要な,一時的な機能損失又は性能低下。
d) ハードウェア又はソフトウェアの破壊による修復不可能な機能損失若しくは性能低下,又はデータの
損失。
EUTへの影響のうち,重要ではないとみなす,許容できる影響を,製造業者の仕様書に指定してもよい。
この分類は,共通規格,製品規格及び製品群規格の原案作成委員会で性能基準を規定するときの指針と
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して,又は適切な共通規格,製品規格及び製品群規格が存在しない場合の製造業者と購入者との間で性能
基準に対する合意を行うための枠組みとして用いてもよい。
10 試験報告書
試験報告書は,試験を再現するために必要な全ての情報を含む。特に次の事項を記録する。
− 箇条8で要求する試験計画によって規定する項目。
− EUT及び関連装置の識別。例えば,商標,製品形式,製造番号。
− 試験装置の識別。例えば,商標,製品形式,製造番号。
− 試験を行った特別な環境条件。例えば,遮蔽きょう体。
− 試験を行うために必要な特別な条件。
− 製造業者と試験の依頼者又は購入者との間で指定する性能レベル。
− 共通規格,製品規格又は製品群規格で規定する性能基準。
− 静電気の印加中又は印加後に観測したEUTへの全ての影響,及びこれらの影響が持続した期間。
− 合否判定の根拠(共通規格,製品規格若しくは製品群規格で規定する性能基準,又は製造業者と購入
者との間で合意した性能基準に基づく。)。
− 装置の取扱いにおける特定の条件。例えば,適合するために必要なケーブルの長さ,形式,遮蔽若し
くは接地,又はEUTの動作条件。
− 気象条件。
− 試験セットアップ及びEUTの配置図及び/又は写真。
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附属書A
(参考)
ESD及びESD試験に関する注釈
A.1 一般的考察
ESDから装置を保護する問題は,製造業者及び使用者の双方にとってかなり重要になってきた。
マイクロエレクトロニクス素子が広く使用されることによって,装置及び/又はシステムの信頼性を向
上するために,問題点を明確にし,解決方法を見いだすことの必要性が高まってきている。
静電気の蓄積及びそれに続いて起こる放電の問題が,管理されていない環境,並びに装置及びシステム
の広範囲な応用に多くの関連をもつようになってきた。
人体から近接物体への放電が起こると,装置は電磁エネルギーを受ける。さらに,装置の近くの,例え
ば,椅子又は机のような金属物体間でも放電が起こる。この規格に規定した試験は,後者の現象の影響も
十分に模擬できるとみなされている。
操作者からの放電は,装置の単純な誤作動及び電子素子の破損につながる。それに影響する主なものは,
放電電流のパラメータ(立上り時間,継続時間など)である。
このような問題についての知識,及びESDによる装置への望ましくない影響を防ぐための手段をもつ必
要性から,この規格で規定する試験手順の開発が進められた。
A.2 帯電レベルに対する環境条件の影響度
静電気は,合成繊維と乾燥した空気との組合せで,特に起こりやすい。帯電する過程は,多くの形態が
ある。一般的な例としては,操作者がカーペットの上を歩くとき,一歩ごとに電子が人体からカーペット
に失われ,又は加えられる。また,操作者の衣服と椅子との間の摩擦によっても電荷の交換が起こり得る。
操作者の身体は,直接又は静電誘導によって帯電する。後者の場合は,操作者を適切に接地していない限
り,導電性カーペットでは保護されない。
図A.1のグラフは,種々の繊維が相対湿度の違いによって帯電する電圧値を示す。合成繊維の種類と環
境の相対湿度とによって,装置は数kVもの電圧の放電に直接さらされることがある。
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図A.1−A.2で記載する材料に操作者が接触するときに帯電する静電気電圧の最大値
A.3 放電電流と環境条件との関係
従来,通常の使用環境で発生する静電気電圧を測定し,その値によってイミュニティ要求事項を規定す
る量として適用してきた。しかし,エネルギーの移動は,放電前の静電気の電圧ばかりでなく,放電電流
の関数であることが明らかになってきた。さらに,より高電圧では,放電電流は,放電前の電圧にほとん
ど比例しないということも分かってきた。
放電前の電圧と放電電流とが比例しないことに対する妥当な理由は,次のとおりである。
− 帯電電圧が高くなるに従い,通常アーク放電路が長くなる。これによって立上り時間が遅くなり,ス
ペクトラムの高周波の成分が少なくなる。
− 通常の電荷発生現象では,電荷量は一定であるとみなせるので,高い帯電電圧は,小さい静電容量に
おいて発生しやすい。その逆に,大きな静電容量に高い電圧を帯電させるには,何回もの電荷発生を
必要とする。しかし,これは通常起こりにくい。すなわち,通常の使用環境では,帯電エネルギーは
高い帯電圧で一定になりやすいことを意味する。
上記の結果によって,通常の使用環境でのイミュニティ要求事項は,放電電流の大きさという項目で規
定することが必要である。
この考え方の認識によって,試験機器の設計は容易となる。試験機器の帯電電圧と放電インピーダンス
との釣合いを考慮して選択することによって,必要とする放電電流値が達成できる。
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A.4 試験レベルの選択
試験レベルは,最も現実に則した設置及び環境条件に基づいて選択することが望ましい(表A.1参照)。
表A.1−試験レベルの選択指針
クラス
最低相対湿度
%
帯電防止材料
合成繊維材料
最大電圧
kV
1
35
×
−
2
2
10
×
−
4
3
50
−
×
8
4
10
−
×
15
推奨する設置及び環境のクラスは,箇条5で規定する試験レベルに関連する。
幾つかの材料に対して,例えば,木材,コンクリート及びセラミックスの場合,推定するレベルは,レ
ベル2以下である。
特定の環境に対して適切な試験レベルの選択を考えるときは,ESD効果の重要なパラメータを理解する
ことが重要である。
最重要パラメータは,放電電流の変化率と想定され,これは,帯電電圧,ピーク放電電流及び立上り時
間の様々な組合せによって得られる場合がある。
例えば,15 kVの合成繊維の環境に対して要求するESD放電ストレスは,この規格に規定するESD発生
器の接触放電を用いた8 kV・30 Aのクラス4試験によって十分に包含できる。
しかし,非常に乾燥した環境での合成繊維では,15 kVよりも高い電圧が発生する。
絶縁表面をもつ装置を試験する場合,15 kVまでの電圧の気中放電試験を適用してもよい。
A.5 試験ポイントの選定
試験ポイントの例として,次のような箇所に印加することが望ましい。
− グラウンドから電気的に絶縁しているキャビネットの金属部分。
− 操作部又はキーボード部,並びにスイッチ,ノブ,ボタン,表示器,LED,スロット,グリル,コネ
クタカバー及びその他の操作者が触れることのできるマンマシンインターフェース部の全ての箇所。
A.6 接触放電試験のための技術的根拠
一般に,気中放電法の再現性は,例えば,放電電極の接近速度,湿度及びESD発生器の構造によって影
響を受けるため,パルスの立上り時間及び放電電流の大きさにばらつきをもたらす。
気中放電試験では,放電電極は,EUTの面でスパークギャップを形成し,蓄積コンデンサの電荷を放電
電極を通してEUTに放電することでESD現象を模擬する。
スパークは,非常に複雑な物理現象である。移動するスパークギャップの場合,放電電流の立上り時間
(立上り勾配)は,接近速度の変化に伴い1 ns未満から20 nsを超える範囲まで変化する。
接近速度を一定にしても,立上り時間は一定にならない。電圧及び速度の組合せによって,立上り時間
は,30倍まで変化する。
注記 高電圧の気中放電は,多重放電が発生することがある。
繰返し可能な高速立上り放電電流を得るための放電スイッチとして,リレーが一般に知られている。リ
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レーは,十分な耐電圧をもち,(立上り部分での二重放電を避けるため)単一接点であることが望ましい。
より高い電圧については,真空リレーが有効である。リレーを放電スイッチとして用いることは,放電波
形の立上り部分の再現性があるばかりでなく,実際のEUTによる試験結果も,より再現性をもつことが経
験的に分かっている。
このため,リレー駆動のESD発生器は,(振幅及び立上り時間を)規定した電流パルスを発生する装置
である。
この電流は,A.3に記載した実際のESD電圧と関連する。
A.7 ESD発生器の定数の選択
ESD発生器の定数として,人体の静電容量に相当する蓄積静電容量を使用する。この目的に適合した値
として,150 pFを標準値とした(図1参照)。
330 Ωの抵抗は,鍵,道具などの金属部を持った人体の抵抗を代表するものとして選択した。この金属
から放電する条件は,実際の人体放電を代表することに対して十分厳しいといえる。
A.8 ESD発生器仕様の理論的根拠
実際のEUTにESD試験を行う場合,試験結果の再現性が異なる原因として多くの理由が挙げられる。
試験セットアップ,校正法などをこの規格で考慮及び提案している。
ESD発生器の仕様の変更も考慮したが,この規格には盛り込まなかった。その決定の理論的根拠の概要
は次のとおりである。
ESD発生器仕様に関して,再現性に関する問題の原因として次の二つの潜在的な技術的要素が挙げられ
る。
− ESD発生器放電電流波形のうち,最初のピーク後の電流波形,すなわち2 ns〜60 ns間の電流波形
− EUTにESDを印加した場合の発生器からの電界放射。
一つ目の要素については,図2の理想電流波形に対して2 ns〜60 ns間で±35 %の許容差を設定し,かつ,
立下り波形については,最初のピーク電流値の60 %の電流時におけるパルス幅を(2.5±1)nsとする仕様
を検討した。
実際のEUTを用いて,5社のESD発生器製造業者のJIS C 61000-4-2:1999の仕様に適合するESD発生
器及び上記の改造仕様を検討した2種類のESD発生器を用意して,合わせて10台のESD発生器によって
ラウンドロビンテストを実施した。
ESD発生器のラウンドロビンテストの結果概要は,次のとおりであった。
− それぞれのESD発生器間で,EUTに影響したと考えられる試験レベルに差があった。
− 放電波形の仕様変更によって,時間領域及び周波数領域の両方で,放電電流波形のばらつきが改善さ
れた。
− しかしながら,実際のEUTでの試験結果の再現性では,仕様変更した電流波形は顕著な改善という結
果には至らなかった。
二つ目の要素も検討したが,このことが再現性問題のパラメータである保証がないため,追加のラウン
ドロビンテストを行う必要がある。EUTへの電界放射の影響を定量化し,試験結果の再現性に影響する関
連した要因を理解するためには,かなりの技術的研究が必要となる。
ここに記載の検討事項は,試験の再現性を改善するとみなせる。この規格の将来の改正のために,再現
性において,電界放射の影響の推定には,更なる調査が必要であると言える。
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
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附属書B
(規定)
電流測定システムの校正及び放電電流測定
B.1 同軸電流ターゲットの仕様−入力インピーダンス
ESD発生器の放電電流の測定には,同軸電流ターゲット(以下,ターゲットという。)(附属書C参照)
を用いる。ターゲットの内部電極とグラウンドとの間を測定した入力インピーダンスは,直流において2.1
Ωを超えてはならない。
注記1 ターゲットは,完全グラウンドプレーン(インピーダンスが0 Ω)に流れるESD電流を測定
することを仮定している。完全グラウンドプレーンのインピーダンスとターゲットの入力イ
ンピーダンスとの差によって起こる誤差を最小限にするために,入力インピーダンスは,2.1
Ωの上限値を設けた。しかし,ターゲットの入力インピーダンスが極めて低い場合,出力信
号が非常に小さくなり,ケーブル及びオシロスコープに結合するノイズによって誤差が大き
くなることがある。さらに,非常に低い抵抗値の場合,寄生インダクタンスが無視できなく
なる。
注記2 直流又は低周波においては,入力インピーダンス及び伝達インピーダンスZsys(B.3参照)は,
高い精度で測定できる。
B.2 ターゲットの仕様−挿入損失
B.2.1 測定チェーン(連鎖)
ターゲットの挿入損失の仕様を規定する代わりに,ターゲット・減衰器(アッテネータ)・ケーブルから
成る測定チェーンの挿入損失の仕様を規定する。減衰器の減衰比は,20 dB以上とする。各々の要素を個
別に扱う代わりに,測定チェーン及びオシロスコープだけで必要な特性付けを行うことによって,測定シ
ステムの特性を簡略化できる。
ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーンの挿入損失は,次の値を超えてはならない。
1 GHz以下の場合,±0.5 dB,
1 GHzを超え4 GHz以下の場合,±1.2 dB
挿入損失の公称値S21は,次の式で表す。
+
=
50
2
log
20
in
sys
21
R
Z
S
ここに,
S21: 挿入損失の公称値(dB)
Rin: 50 Ω負荷時のターゲット・減衰器・ケーブルから成る測
定チェーンの直流入力インピーダンス(Ω)
Zsys: 入力インピーダンス及び伝達インピーダンス(Ω)
注記1 直流入力インピーダンスの校正,及びより複雑な挿入損失測定の校正は,異なる頻度で実施
することができる。仮に,同じケーブル及び減衰器を使用し,かつ,他のいかなる兆候(例
えば,コネクタの緩み又は破損)を示さない限り,直流入力インピーダンス測定を繰り返し
た結果の値と最初の測定値との差が1 %未満の場合,操作者はターゲット・減衰器・ケーブ
ルから成る測定チェーンの挿入損失が変化していないとみなしてもよい。
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記2 ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーンは,常に一つの構成要素とみなすこと
ができる。一つの部品を交換するか,又は一度解体して組み立て直したときには,直ちに,
仕様を満足していることを確認するため,測定チェーン全体で再校正が必要となる。
B.2.2 ターゲットアダプタ
50 Ω同軸ケーブルをターゲットの入力面に接続するために,ターゲットアダプタを用いる(図B.1参照)。
ターゲットアダプタは,同軸コネクタの直径からターゲットの直径へと,幾何学的になだらかに広がって
いる。“d”と“D”(図B.2参照)との直径比から計算するインピーダンスが50 Ωに等しくないようにター
ゲットが作られている場合,ターゲットアダプタの内部導体の外径とターゲットの内部電極の直径とが等
しくなるように,ターゲットアダプタを作らなければならない。インピーダンスは,円すい形の接続線内
部を満たす材料(代表的には空気)の誘電率を用いて計算する。ターゲットアダプタのインピーダンスは,
4 GHz以下の周波数帯域で(50±1)Ωを維持するようにする。向かい合わせて置く二つのターゲットアダ
プタの反射減衰量は,1 GHz以下で30 dB以下,1 GHzを超え4 GHz以下の範囲で20 dB以下であり,か
つ,挿入損失は4 GHz以下で0.3 dBとする。
注記 円すい形でなくてもよい。
図B.1−ターゲットアダプタをターゲットに取り付けた例
図B.2−ターゲットの前面形状の例
d :内部電極の外径
D :グラウンド構造物の内径
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B.2.3 ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーンの挿入損失の測定
測定チェーンの挿入損失は,ベクトルネットワークアナライザ(VNA)で測定する。十分な精度で挿入
損失の大きさを測定できる場合,他の測定システムを使用してもよい。
挿入損失の測定手順は,次による。
− 図B.3のように,校正点でVNAを校正する(VNAの入力と減衰器−ターゲットアダプタとの間)。
注記1 VNAを使用しない場合,測定手順を適宜変更する必要がある。
注記2 VNAでは直流が測定できないので,VNAで測定できる最小周波数で行うことが望ましい。
直流特性は,別の測定となる。
注記3 ターゲット又はターゲットアダプタを外し,中心電極の接触部分を回転(例えば,45°ずつ
回転)して取り付け,測定を繰り返して行うことによって,二つのターゲットアダプタの中
心部分,又はターゲットアダプタとターゲットとの中心部分の接触の安定性を確認すること
が望ましい。
− 図B.3のように,ターゲットアダプタをターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーンに接続
する。
− 挿入損失を測定する。
挿入損失の測定値は,B.2に適合しなければならない。
図B.3−ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーンの挿入損失の測定例
B.3 ターゲット・減衰器・ケーブルの低周波伝達インピーダンスの決定
一般に,ESDの測定では,ESD電流をターゲットに注入した場合,オシロスコープは,電圧波形を表示
する。一方,ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーンの低周波伝達インピーダンスは,ター
ゲットに注入する電流とケーブルの出力部の高精度50 Ω負荷にかかる電圧V50との比で定義する(すなわ
ち,50 Ω負荷は,オシロスコープの代わりにケーブル端に接続している。)。表示した電圧値V50から未知
の電流値を計算するために,その電圧値を低周波システム伝達インピーダンスZsysで除す(図B.4参照)。
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
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注記 ターゲットの内部回路は,一例である。その他の内部回路でもよい。
図B.4−低周波システム伝達インピーダンスを決定する回路図
ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーンの低周波システム伝達インピーダンスは,次によ
って決定できる。
− 約1 Aの電流Isysをターゲットの前面に注入する。ESD発生器の放電電極先端が接触する側を,前面
とする。
− 発生器校正の要となる値であるZsys
− 最大許容差±1 %の50 Ω負荷に発生した測定電圧値V50
− 伝達インピーダンスの計算式
sys
50
sys
I
V
Z
=
注記 熱起電力による電圧が結果に影響していないことを立証するために,正及び負の電流を測定す
るとよい。二つの結果は,0.5 %未満となることが望ましい。
ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーン全体の低周波システム伝達インピーダンスを決定
するために,他の方法を用いてもよい。
B.4 ESD発生器の校正
B.4.1 校正結果
ESD試験において,校正結果は,極めて重要となる。様々な製造業者のESD発生器を使用して試験す
る場合,又は試験が長期間にわたる場合は,特に重要となる。評価においては,再現性が重要となる。ESD
発生器は,認定された品質保証システムにおいて規定した期間で校正する。
注記 この附属書の手順は,校正を目的としている。試験前のESD発生器立証のための各種の手順を
6.3に示す。
ESD発生器の校正は,8.1.2で規定する気象条件で行う。
B.4.2 ESD発生器校正に用いる装置
ESD発生器を校正するために必要な装置は,次による。
− 十分な帯域幅(2 GHz以上のアナログ帯域幅)があるオシロスコープ。
− ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーン。
− 15 kV以上の電圧を測定できる高電圧計。電圧計の負荷を避けるために,静電電圧計を使用してもよ
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
い。
− ターゲットを取り付けた中心から各辺まで0.6 m以上ある垂直校正板(図B.5参照)。
− 要求事項に対して十分な電力容量がある減衰器。
注記 適切なターゲットの例は,附属書Cを参照。
B.4.3 ESD発生器の接触放電における校正手順
ターゲットは,B.4.2を満足する垂直校正板の中央に取り付ける。ESD発生器の放電リターンケーブル
は,ターゲットの真下0.5 mの位置に接続する。放電リターンケーブルは,二等辺三角形を形成して,ケ
ーブルの中央を後方に引く。校正中に放電リターンケーブルは,床に接触してはならない。
ESD発生器の電流波形が仕様内にあることを確認するために,表B.1に示す手順に従う。電流波形を記
録し,次の値を測定する。
Ip :放電電流のピーク値(A)
I30 :Ipの10 %に達した時点から30 ns後の電流値(A)
I60 :Ipの10 %に達した時点から60 ns後の電流値(A)
tr :電流の立上り時間(ns)
表B.1−接触放電における校正手順
順番
項目
手順
説明
1
波形記録
表1で規定した各試験レベルを両方の極
性で5回放電し,各波形を記録する。
仕様は全て5回放電に合わせる。
2
測定
各波形のIp,I30,I60及びtrを測定する。
パラメータは各試験レベルで確認する。
3
30 ns点での
電流確認
I30が表3に従った値であることを確認す
る。
パラメータは各試験レベルで確認する。
例えば,試験レベル1のときは,4 A±30 %と
なる。
4
60 ns点での
電流確認
I60が表3に従った値であることを確認す
る。
パラメータは各試験レベルで確認する。
例えば,試験レベル1のときは,2 A±30 %と
なる。
5
最大電流確認 Ipが表3に従った値であることを確認す
る。
パラメータは各試験レベルで確認する。
例えば,試験レベル1のときは,7.5 A±15 %
となる。
6
立上り時間確
認
trが0.8 ns±25 %となることを確認する。 パラメータは各試験レベルで確認する。
30
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注記1 ESD発生器を,非金属で低損失な三脚又は支持台に設置する。
注記2 試験時と同様に,ESD発生器に電源を供給する。
注記3 この図とは逆に,ESD発生器及びターゲットを遮蔽きょう体の中に設置してもよい。
図B.5−ESD発生器の校正の代表的な配置例
ESD発生器からの電磁放射による測定システムへの間接結合が,校正結果に影響しないことを証明でき
る場合,オシロスコープの遮蔽は不要とする。
次の場合に,オシロスコープのトリガーが動作しないとき,測定システムは十分な耐性をもっている(す
なわち,遮蔽きょう体は不要)と判断できる。
− オシロスコープのトリガーレベルを最も低い校正レベルの10 %以下に設定する。
− ターゲットの(内側の電極の代わりに)外部導体にESD発生器を接触させ,最大校正レベルにして放
電する。
31
C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
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附属書C
(参考)
附属書Bの要求事項に適合するターゲットの例
附属書Bの要求事項に適合するターゲットの詳細構造を図C.1〜図C.5に示す。このターゲットは,長
さ1 mの同軸ケーブル(RG400)を使用した場合,平たんな挿入損失特性を示すように設計している。多
重反射を防ぐために,20 dB以上の減衰器をターゲットの出力ポートに直接接続することを推奨する。
注記 図C.1〜図C.5は一例であるので,寸法の許容差は指定していない。
単位 mm
図C.1−ターゲットの構造図(1/5)(① 真ちゅう製の本体部品)
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
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単位 mm
チップ抵抗 :0805
抵抗値
:例えば51 Ω
配置
:テンプレートを用いて正確に放射状に配置してはんだ付け
材料
:0.5 mm FR-4金めっき
スルーホール :抵抗の両側それぞれに2列のビアホール,及びプリント基板の外縁に近い部分に1列のスルーホール
を設ける。約25個の抵抗が必要になる。
注記 合成抵抗値が2.1 Ω以下となるように,抵抗値及び個数を選択する必要がある。
図C.2−ターゲットの構造図(2/5)(② プリント基板)
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
③ ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の絶縁部品I
⑤ 真ちゅう製の中心導体部品I
⑦ ステンレス製の中心導体部品II
④ PTFE製の絶縁部品II
⑥ SMAコネクタ
図C.3−ターゲットの構造図(3/5)
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
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単位 mm
図C.4−ターゲットの構造図(4/5)(⑧ ステンレス製のカバー部品)
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
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図C.5−ターゲットの構造図(5/5)
36
C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
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附属書D
(参考)
人体と金属との間の放電及びESD発生器からの放電による放射電磁界
D.1 意図的及び意図的でない電磁界を引き起こす過程に関する概説
D.1.1 一般
この規格及びそれ以前の版で規定した電流波形では,人体(手持ちの小さな金属を経由)からのESDを
扱う。人体からの放電は,ESD発生器からの放電と同様に,強電磁界を発生する原因となる。
D.1.2で人体による放電のプロセスを概説し,D.1.3でESD発生器によって起こるプロセスを概説する。
D.1.2 人体によるESD
人体からEUTへのESD現象では,次の現象が連続して生じる。
a) 手持ちの金属部分がEUTの金属表面に近接して,電流が流れる前は,静電界が存在する。電流が流れ
ず(又は僅かな電流が流れる。),かつ,関連した磁界も存在しない。
b) 手持ちの金属部分とEUTとの間で放電が始まると,静電界は,両者のギャップ間で急降下する。ギャ
ップ間電圧は,初期電圧から50 ps〜5 ns程度で降下して約25 V〜40 Vになる。降下時間は,アーク
放電に関連するパラメータ,電圧などに依存する。この電界の初期降下は,強い過渡的な電磁界を引
き起こす一連の現象の初期段階となる。
c) 電流は人が持つ金属部分及びEUTに流れ始める。流れ始めの電流は,光速で面拡散し,約0.8 ns以内
に,人の腕に達する。電流は,EUT及び腕に拡散し続けることによって,EUT及び人体の両方に電流
密度の複雑なパターンを発生させ,放射及び抵抗によって,反射し減衰する。
d) 放電プロセスが継続しているとき,電流の最も高い周波数成分は,主に放射によって急速に減衰する。
時間の経過に従って,電流は滑らかに(すなわち,より少ない高周波成分で)流れ,最終的に,人体
はEUTと新しい静電的な平衡状態に達する。しかし,人体が完全に放電する前に,アークが消えるこ
とがあるので,人体の残留電荷は,0ではないこともあり得る。手及び金属物を更にEUTに近付ける
と,高速な立上りの2回目のESDが,連続するESDに導かれて低電圧で発生する(これは,低電圧
で見られる特性である。)。
e) 各々の連続した放電では,手,人体又はEUTの幾つかの観測点に,放電前の電荷密度,放電段階での
急速充電電流,及び放電後の僅かな残留電荷が観測される。
f)
アンテナ理論では,変化する電荷密度及び変化する電流が,電磁界放射を引き起こすことが知られて
いる。極めて近傍では,直接電流及び電荷が電磁界を決定し,かつ,より遠方では,電流及び電荷の
時間微分が電磁界を決定する。極めて近傍(近傍界)及びより遠方(遠方界)での電磁界との間の変
遷領域は,より複雑となる。測定及びシミュレーションによって次のことが示されている。
− 最初の数nsで最も妨害を引き起こす。
− ESDの過渡的な電磁界は,アーク点から10 cmの距離では遠方界になる。
g) 上記によって,電流及び電荷の時間微分値は,電子システムの異常(非破壊的誤作動)に関して極め
て重要であることが明らかである。
h) 人体放電においては,電流及び電荷の時間微分値は,アークにおける電圧の絶縁破壊時間によって決
まることに注意することが重要である。したがって,放電時の電流立上り時間が,高周波成分を決定
する。
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
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上記によって,人体−金属ESDの過渡電磁界は,ESDプロセスの重要な部分であることは明らかであ
る。理想的なESD発生器は,それらを定量的な形で再現する。人体−金属ESDの電磁界強度などは,よ
く知られている。
D.1.3 ESD発生器
次のステップは,現状のESD発生器で起こるプロセスを解析し,比較することである。大部分のESD
試験は,再現性上の理由で,放電電極先端を接触状態で実行するので,次の事項は,ESD発生器の接触放
電に限定する。
a) ESD発生器の放電電極先端は,(ほとんどの場合)EUT接地部分に接触させる。
b) 放電に先立って,ESD発生器内でコンデンサに電荷が充電される。通常の設計では,充電プロセスに
よって,ほとんどの静電界は,ESD発生器のコンデンサに閉じ込められている。その結果,放電前の
近傍静電界は,同一電圧で充電された人体の同じ点で測定した静電界よりはるかに小さい。
c) 放電は,ESD発生器内部のリレーを閉じることによって開始する。この特殊なリレーの設計によって
は非常に良い放電電流の再現性が得られるが,リレーは内部にあり,ESD発生器がEUTに接触する
点にはないので,放電電流の始まりは,人体ESDと全く異なる。
d) リレー接点での電圧の降下時間は,100 ps未満と極めて速く,全ての方向及び全ての放電電極に接触
した金属部,並びに近接した他の金属部分に,リレーからの電流の波が進行する。電流は光速(誘電
体内は速度が落ちる)で伝搬する。この電流波形の立上り時間は,電圧の降下時間と等しい。
e) 電圧の降下時間は,100 ps未満であるが,この規格は,ターゲットに接触している点で測定した0.8 ns
±25 %の電流立上り時間を要求している。これを達成するために,リレー内の非常に短い立上り時間
ではなく,この規格で規定している放電電極先端での立上り時間を実現するESD発生器を設計する。
f)
過渡電磁界は,全ての電流の時間微分及び電荷密度の時間微分に起因する。ESD発生器からの放電と,
金属を持った人体からの放電との重要な相違点に注意する。人体の放電に対し,アーク電流の立上り
時間は,最速のプロセスであり,それは過渡電磁界のスペクトルを決定する。しかしながら,接触放
電におけるESD発生器では,高周波のスペクトルはリレー接点の電圧降下によって決まるため,放電
電極先端における電流立上り時間によるものではない。
g) ESD発生器内で変化する全ての電流は,過渡電磁界の原因となるため,放電点における0.8 ns±25 %
の立上りの電流の発生とともに,ESD発生器のリレー接点における100 psの立上りの電流によっても
過渡電磁界が発生する。ESD発生器におけるリレー接点での高速な現象による過渡電磁波は,一般に
不要な電磁界である。放電点における同じ電流立上り時間及びピーク値をもつ等価な人体−金属放電
による放射電磁界よりも高周波数成分が増加する。
上記によって,電流の高速な立上りによる過渡電磁界放射は,ESD発生器の設計に大きく依存する。こ
の電磁界の放射は,十分抑制される場合もあれば,ESD発生器の過渡電磁界に影響を与える場合もある。
ESD試験中の誤作動が,使用する特定のESD発生器に強く依存する可能性については,この規格では規
定していない。
D.2 ESD試験に対するEUTの応答
ESD試験中の広範囲な電気的妨害に対するEUTの応答を試験する。その範囲には,次を含む。
− 誘電体の絶縁破壊に対する電圧
− 印加点から離れたギャップに対する二次絶縁破壊
− 電圧降下(RI drop)に対する電流
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− 誘導負荷による電圧降下(L di/dt drop)に対する磁界
− 誘導電圧に対する電磁界(電磁界は遠方界及び近傍界の双方があり得る。)
この観点から,ESD試験は,これらの複数の試験を一つに集約することで放射電磁界試験(EMS)とは
異なる。
ESD試験での異なる妨害によるEUTの故障の幾つかの例を,次に示す。
− 集積回路(IC)に対するダメージを引き起こすコネクタピンへの放電
この例では,IC内で消費したエネルギー,最大電流,又はIC内で移動する電荷は,ダメージのしき
い値をほとんど決定する。
− 火花がICに到達可能なプラスチックきょう体内のギャップ間の放電
この場合,ESD試験は,プラスチックの継ぎ目の間のギャップにおける誘電体の絶縁破壊強度を決定
する。
− シャーシの中にあるシステムが,誤作動を引き起こす原因となる,シャーシへの放電
この例では,システムのICとの直接結合,又はプリント基板配線若しくは配線と結合するESD現象
の過渡電磁界のほとんどが,システムの論理機能を誤作動させるような電圧又は電流を発生させる。
ESD発生器内の電流から電磁界への結合のメカニズムは,ある程度離れた距離(例えば,20 cm)でも,
電流時間微分の影響が強い。さらに,電磁界とEUTの配線,プリント基板配線又はICとの間の結合は,
電界及び磁界の微分の関数である。要約すると,電磁界発生及び誘導プロセスにおける時間微分は,印加
電流に寄与する。そのため放電電極での電流とは異なるパルス波形が生じ,かつ,プリント基板配線には
その電磁界によって誘導される別の電圧が発生する結果となる。配線内の誘導電圧は,通常は規格で規定
した初期ESD電流より一層狭い時間幅をもち,リンギングが現れることもある。
特定のESD発生器の設計では,過渡電磁界(特に300 MHzを超える周波数領域でエネルギーをもつ電
磁界成分)の依存性によって,プリント基板配線,配線又はIC内部の誘導電流が,その設計に強く影響を
受けることを考慮する必要がある。このことは,同じEUTを異なるESD発生器で試験したとき,ESD発
生器の製造業者が,放電リレー内の高速電圧降下による不要電磁界の発生を最小にするような予防措置を
講じていない場合,試験結果(ほとんどの場合は,破壊ではなく誤作動)は大きく変動することを意味す
る。主に1 GHz以上の高周波電磁界に対してEUTが敏感である場合にだけ,このような試験結果におけ
る違いが起こることに注意する。
D.3 ESD関連現象の過渡電磁界
充電電圧5 kV,立上り時間850 psをもつ人体と金属との間のESD過渡電磁界を測定した。理想的なESD
発生器は,5 KVの接触モード試験に対し,それらの電磁界を再現する。データを取得するために,広帯域
(1.5 MHz〜1.5 GHzで±1 dB)の電磁界センサを,放電ポイント(すなわち,目標位置)から0.1 mの距
離にある垂直基準面上に設置した。
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図D.1−0.1 mの距離で測定した,5 kVに帯電した金属を持つ実際の人体からの放電による電界
(垂直基準面との放電距離は0.7 mm)
この電界は静電界が主である。この電界は,静電界の初期値から20 %まで減少し,その降下時間は電流
上昇時間と類似している(図D.1参照)。
500 psの立上り時間の放電電流による磁界の波形の例を,図D.2に示す。
図D.2−0.1 mの距離で測定した,5 kVに帯電した金属を持つ実際の人体からの放電による磁界
(人体と垂直基準面との放電距離は約0.5 mm)
40
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
磁界波形は,電流波形に従う。
ESD発生器からの電磁界波形で考えられる問題は,リンギングである。ESD発生器からの電磁界は,ESD
発生器及びグラウンドケーブルが,電磁界センサに対して向いている角度に大きく依存し,人体と金属間
との間の放電の電磁界波形より,はるかに小さいか又ははるかに大きいことがある。
D.4 微小ループアンテナにおける誘導電圧
ESDの過渡的な電磁界は,プリント基板上の配線に電圧を誘起する。微小ループアンテナをグラウンド
面に設置する場合,過渡電磁界の高周波成分の測定は,校正した広帯域電磁界センサを必要とせず,かつ,
それは配線への誘導のプロセスを,電磁界を測定するより直接的に反映できる。微小ループアンテナの構
造を,図D.3に示す。
図D.3−グラウンド面上の半円ループ
図D.3で,ループ半径は,14 mmで,ワイヤ直径は,0.7 mmである。そのループは,ESD発生器から
0.1 mの距離に設置する。
図D.3で示す半円ループで測定した約850 psの立上り時間の5 kVに帯電した人間と金属との間のESD
の典型的な誘導電圧を図D.4に示す(放電距離は約0.8 mm,半円ループの終端抵抗は,50 Ω)。
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図D.4−半円ループに誘導された電圧
D.5 市販の電磁界プローブ及びESD発生器を用いたESDによる放射電磁界の測定
放射ESD電磁界を測定するための試験セットアップ例を,図D.5に示す。
図D.5−ESD放射電磁界を測定するための試験セットアップの例
電界及び磁界を測定するために,次の機器を使用する。
− 2 GHz以上の帯域をもつデジタルメモリオシロスコープ
− 市販の(電界成分を受信しない構造の)微小シールドループアンテナ及び電界(小さいモノポール)
アンテナのセット
− 50 Ωの同軸ケーブル
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− ESD発生器
測定セットアップ(図D.5参照)を,次に示す。
− 測定は,遮蔽室で行うことが望ましい(重大な障害を発生しない環境では,必要としない)。
− ESD発生器は,5 kVに設定することが望ましい。
− ESD放電電流は,参考の数学的ESD波形(図2参照)との比較のために,この規格に示すセットア
ップに従って測定する。
− デジタルオシロスコープは,遮蔽したきょう体の中に設置するのが望ましい。
− ループアンテナ及び/又は電界アンテナは,50 Ωの同軸ケーブルによってオシロスコープに接続し,
図D.5に示すような遮蔽きょう体の縁に配置することが望ましい。
− 同軸ケーブルは,放射電磁界を受信する可能性を防ぐように配置することが望ましい(例えば,同軸
ケーブルは,遮蔽きょう体に近接し,同軸ケーブルの外皮導体は,遮蔽きょう体に接続する。)。
− オシロスコープの50 Ω入力インピーダンスでの電圧を測定する。
− ESDは,遮蔽きょう体の大きな面に,接触モードで行うことが望ましい。
− ESD発生器は,ループアンテナ及び/又は電界アンテナから複数の距離で放射電磁界を測定するため
に,移動することが望ましい。
アンテナ負荷への誘起電圧測定による電界及び磁界の計算手順を,次に示す。
− ESD発生器によって発生する放射電磁界による50 Ωの負荷の電圧v(t)をデジタルオシロスコープ
で測定する。
− v(t)をフーリエ変換したV(ω)を,計算する。
− 電磁界プローブを用いるための伝達関数T(ω)を,計算又は測定する。
− V(ω)/T(ω)の逆フーリエ変換によって,電界E(t)及び磁界H(t)を計算する。
結果の例を図D.6及び図D.7に示す。数値シミュレーションデータは,有効性の確認と,及び測定した
電圧降下データをループアンテナに加えたときの磁界を計算する手順に用いる。
図D.6−45 cmの距離でのループ上の電圧の測定(実線)と数値シミュレーション(点線)との比較
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図D.7−45 cmの距離での測定データから計算した磁界H(実線)と数値シミュレーションによる磁界H
(点線)との比較
D.6 ESD発生による放射電磁界及び誘起電圧を評価するための簡易手順
ESD電流の測定によってESD発生器の放射電磁界を推測する手順を,次に示す。
− 標準化した又は測定したESD電流は,放電電極でのレベルを用いる。
− 影響を受ける回路は,電気的に短絡とみなし,かつ,最初の近似では,単位ごとのラインパラメータ
は,無視できる。
− 時間領域で障害電磁界が分かれば,図D.8の等価回路で誘導する電圧を計算できる。
− 電界の影響は,少なくとも低インピーダンスの回路(例えば,高速デジタル装置)では,無視できる。
− 放電電極の電流と影響を受ける回路との距離をrとした場合,磁界は,簡易等価式H=I / (2πr) によっ
て計算する。ESD発生器のリレーの電流,変位電流,グラウンドケーブルなどの他の影響は,無視す
る。
− 推測(最悪の場合)と試験セットアップで実際の結果とを比較し,違いを定量化する(例えば,磁界
については図D.9参照)。
図D.8−放射電磁界及び等価回路の構造
図D.8の等価回路による電圧VS及び電流ISの計算式を,次に示す。
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()
()t
H
t
A
t
V
i
n
∂
∂
=μ
S
()
()t
E
t
h
l
C
t
I
i
t
∂
∂
×
×
=
S
ここに,
A=l×h: ループの面積
C: ラインの1 m当たりの静電容量
r=45 cmの距離における放射磁界
実線 測定値
点線 I / (2πr) を用いた計算値(Iは,ESD電流の測定値)
図D.9−放射磁界
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附属書E
(参考)
測定不確かさ(MU)の考察
E.1 一般
EMC試験の再現性は,多くの要因に依存し,試験結果に影響を与える。これらの影響によって,ランダ
ム又は系統的な効果に分類することができる妨害量を発生するために誤差が生じる。現実の妨害量とこの
規格で定義する妨害量との一致は,通常,一連の測定によって確認できる(例えば,減衰器を使用したオ
シロスコープでの立上り時間の測定)。各測定の結果は,測定量の近似にすぎず,測定した量は,真の値か
ら測定不確かさ(MU)に依存するある量だけ異なる場合がある。MUを決める決定的な要素は,試験機器
の校正に付随する不確かさである。
校正結果の高信頼性を達成するため,測定機器構成に含まれる不確かさの発生源を明確にし,測定の不
確かさを記載することが必要である。
E.2 不確かさの分類
測定の誤差は,一般的にランダム成分及び系統的成分の二つの成分がある。ランダム不確かさは,予測
できない要因に関連する。系統的不確かさは,一般に測定に用いる機器構成に関係する。系統的成分は,
ある場合には補正又は減少させることができるが,ランダム成分は定義上できない。与えられた測定シス
テム内に,それらの成分のいずれかに影響を与え得る多くの要因が存在する場合がある。
ある試験方法のランダム不確かさは,その結果を適用する別の試験方法では,系統的不確かさになる場
合がある。この起こり得る混乱を避けるために,ランダム不確かさ及び系統的不確かさの代わりに,不確
かさの寄与を,次の二つのタイプに分類する。
− タイプA:一連の試験の標準偏差を推定する統計的手法によって評価する方法。これは一般的には,
正規分布又はガウス分布に従う。
分布
合成標準不確かさ
注記
正規又はガウス
()
(
)(
)
∑
=
−
−
=
n
j
ju
u
n
y
U
1
2
C
1
1
一般に立証記録から得られる。
− タイプB:他の手段によって評価する方法。それらは通常,機器構成における,不整合,ケーブル損
失,及び非線形特性のような要因に関連する。分析では,タイプBの不確かさの大きさ及び分布は,
校正データ,機器製造業者の仕様,又は単純に知識及び経験に基づいて推定することができる。
成分の固有の性質の違いではなく,それらの性質の評価に基づいて,タイプA又はタイプBに分類する。
両タイプとも確率分布をもち,いずれかのタイプによって得られる不確かさ成分は,標準偏差によって定
量化する。
E.3 制限
この附属書は,次の制限及び条件を適用する。
− 不確かさバジェットは,測定機器構成(タイプB)による不確かさに限定する。ただし,試験所は,
タイプAの不確かさの影響を無視するのではなく,MUをより完全にするために,それを個別に別途
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評価することが望ましい。
− 全ての寄与は,相関がないと仮定している。
− 信頼水準95 %は,許容する。
注記 表E.1〜表E.3に,タイプBの不確かさバジェット例を示す。
E.4 タイプB不確かさの計算
標準不確かさは,その確率分布の除数を適用することによって決定した値で計算する。
この附属書で使う個々の確率分布の除数を,次に示す。
分布
除数
注記
正規
包含係数k
信頼水準95 %でk=2
一般に校正証明書から得られる。
方形
3
一般に測定器の製造業者のデータから得られる。
U形
2
不整合不確かさ
上下限で起こり得る不確かさの寄与
不確かさの分布が未知である場合は,全て方形分布とみなす。
試験の合成標準不確かさの計算では,個々の標準不確かさを組み合わせる。これは,全ての量が同じ単
位であり,相関がなく,対数スケール(通常dB)での加算で合成していれば成り立つ。しかしながら,測
定と同様にESD試験器を校正するときの単位は,次のように計算し,%の単位とすることが望ましい。
(
)
100
10
20
dB
in
unit
×
この計算の結果は,合成標準不確かさuC(y)となり,次の式で表す。
()
()
∑=
=
m
i
y
u
y
u
1
2
i
C
ここに,
ui(y): 個々の標準不確かさ
正規分布に従う出力変数yを仮定したとき,ステューデントt分布は,不確かさの包含係数(すなわち
乗数)を与える。
uC(y)に包含係数kを乗じることによって,より大きな信頼性レベルを与える拡張不確かさUCが得ら
れる。包含係数は,タイプA及びタイプBの不確かさの関係から,計算した自由度によって得られる。
E.5 不確かさのバジェット表の作成
不確かさのバジェットは,確率分布の推定を基に測定の誤差を引き起こす可能性のある要因を表にした
ものである。
不確かさのバジェットの計算は,次の手順で行う。
a) 妨害量の特性を特定する(すなわち,測定機器によって何が発生するか)。
b) 不確かさへの寄与成分及びその値を特定する。
c) 各寄与成分の確率分布を決める。
d) 各寄与成分の標準不確かさu(xi)を計算する。
e) 合成標準不確かさuC(y),包含係数k,及び拡張不確かさUC=uC(y)×kを計算する。
f)
計算した拡張不確かさを測定値に適用する。
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g) 必要に応じて,品質文書に拡張不確かさを表記する(要求されない限り,試験所は,これらの数値を
試験報告書に表記する必要はない。)。
寄与成分による不確かさのバジェットの例及び関連する値を,E.6に示す。校正機関又は試験所は,こ
れらが指針であることに注意し,個々の試験セットアップの実際の寄与成分及び値を確認することが望ま
しい(すなわち,最終的に考慮する要因の最低限のバジェットを決定してもよい。試験所は,追加の要因
を確認する必要がある。これは試験所間の,不確かさについてのよい比較となる。)。
E.6 ESDの不確かさ要因
ESD試験では,数値による結果を出すことはなく,試験結果を単に合否だけで判断することから,ESD
試験と同様に,ESD校正時の不確かさをエミッション測定及びその他の測定と同様の方法で扱うことはで
きない。ESD試験中では,幾つかのパラメータによって特徴付けた妨害量をEUTに適用する。EUTの一
つ以上の信号を監視又は観察し,試験結果(合否)の基準となる合意基準と比較する。
EUTの信号の測定には,通常一般のMUが適用できる。モニタリングのための測定プロセスは,EUT
特有なので,モニタリングシステム(観察者)のMUを基本規格で扱わないことが望ましいが,扱う場合
もある。
注記1 校正に関してのEUTは,校正時のESD発生器を示す。
不確かさは,妨害量のパラメータで指定することもできる。そのことは,この基本規格の仕様で規定し
た測定機器の合意度合いを記載している。
特定の測定機器で得られた不確かさは,この規格で定義した電磁現象を模擬したものと,試験所の外で
の実際の電磁現象との間で一致の程度を説明できない。したがって,妨害量の規定に関する疑義(例えば,
ESDガンのターゲット面に対する位置決め)は,測定機器の不確かさと関係しない。
注記2 ここでいう測定機器とは,校正に使う機器を指す。
EUTに対する妨害波の量のパラメータが及ぼす影響は,未知のものであり,ほとんどの場合,EUTは非
線形のシステム挙動を示すことから,単一の不確さの数値を,全体の不確かさとして決定することはでき
ない。妨害波の量の各パラメータには,特定の不確かさが伴うが,その特定の不確かさは,試験における
複数の不確かさのバジェットに置き換えることも可能である。
測定機器及び試験セットアップの影響を評価するためにに用いる寄与成分を,次に示す。
− ピーク値の指示値
− ピーク値10 %の指示値
− ピーク値90 %の指示値
− 30 ns及び60 nsでの指示値
− 低周波伝達インピーダンスZsys
− 静電電圧
− オシロスコープの接続部のミスマッチ
− ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーン
− オシロスコープの水平軸の寄与成分
− オシロスコープの垂直軸の寄与成分
− 測定系の再現性(タイプA)
− ESD発生器の角度(タイプA)
− ESD発生器の位置(タイプA)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− 試験セットアップの変化(タイプA)
− ターゲット,オシロスコープ及び減衰器の校正
試験及び校正に適用する寄与成分が同じでない場合もあることに注意する。これは,各プロセスの不確
かさのバジェットの(僅かな)違いとなる。
ESD発生器の印加角度などについては,タイプAの不確かさとみなす。そのような不確かさは,一般的
にこの規格では扱わない。この例外は,校正と同様に測定における再現性を保つために導入している。
注記3 この附属書は,一例として,校正のための不確かさに着目している。
E.7 校正結果の不確かさ
各校正項目Ip,I30,I60及びtrに対して,それぞれの不確かさのバジェットの作成を推奨する。ESD試験
での妨害量は,EUTに適用したESD発生器からの放電電流である。この妨害量の校正項目は,Ip,I30,I60
及びtrである。E.6で説明したように,それぞれの不確かさのバジェットは,これらのパラメータごとに
計算するのが望ましい。
これらのパラメータに関する不確かさのバジェットの計算例を,表E.1〜表E.3に示す。この表は例で
あり,最も重要と考えられる不確かさのバジェットの寄与成分及び各寄与成分の詳細(数値,分布タイプ
など),並びにそれぞれの不確かさのバジェットを決定するために必要な計算結果を含んでいる。
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表E.1−ESD発生器の立上り時間校正の不確かさバジェットの例
寄与成分
分布
値
ps
ui(y)
ps
ui(y)2
(ps)2
注記
ピーク値の指示値
正規
k=2
50
25
625
測定した立上り時間800 psにピー
ク値の不確かさ値6.3 %(表E.2)
を乗じた値
ピーク電流の90 %になる
までの時間の指示値
方形
除数=3
25
14
196
オシロスコープのサンプリングレ
ート20 GS/s
ピーク電流の10 %になる
までの時間の指示値
方形
除数=3
25
14
196
オシロスコープのサンプリングレ
ート20 GS/s
オシロスコープの水平軸
の総合a)
正規
k=2
36
18
324
オシロスコープの校正機関から
ターゲット・減衰器・ケ
ーブルから成る測定チェ
ーン
正規
k=2
30
15
225
オシロスコープの校正機関からb)
再現性
正規
除数=1
45
45
2 025
タイプA評価から得るc)
合計
3 591
立上り時間の合成標準不
確かさuC
合計の平方根
60 ps
立上り時間の拡張不確か
さU
正規
k=2
120 ps
(15 %)
信頼性レベル95 %
注a) オシロスコープの水平軸の総合寄与成分は,オシロスコープの水平分解能,補間の分解能,時間軸の分解能,
周波数測定,立上り時間補正などの不確かさの寄与成分を含んでいる。
b) ほとんどの場合,周波数減衰特性だけが測定チェーンの校正証明書に記載してある。ここでは,立上り時間
の不確かさの寄与成分も校正機関が提供するものとして,k=2と仮定する。
c) 再現性は通常5回以上の連続した測定から求める。これはタイプA評価であり,n回繰り返した測定の標準
偏差(q)の計算式は,次のようになる。
()
(
)
(
)
∑
=
−
−
=
n
j
jq
q
n
n
q
s
1
2
1
1
ここに, qj: j回の測定の結果
q: 結果の算術平均
50
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表E.2−ESD発生器のピーク電流校正の不確かさバジェット例
寄与成分
分布
値
%
ui(y)
%
ui(y)2
(%)2
注記
オシロスコープの垂直軸(電
圧)の総合寄与成分a)
正規
k=2
3.2
1.6
2.56
校正機関から
ターゲット・減衰器・ケーブル
から成る測定チェーン
正規
k=2
3.6
1.8
3.24
校正機関から
オシロスコープ接続部のミス
マッチ
U形
除数=2
2
1.4
2
校正又は仕様からb)
低周波伝達インピーダンス
正規
k=2
6×10−6
3×10−6
9×10−12
内部校正c)
再現性
除数=1
1.5
1.5
2.25
タイプA評価からd)
合計
10.05
−
ピーク電流の合成標準不確か
さuC
合計の平方根
3.17 %
−
ピーク電流の拡張不確かさU
k=2
6.3 %
−
−
信頼性レベル 95 %
注a) オシロスコープの垂直軸の総合寄与成分は,オシロスコープの垂直分解能,低周波直線性,高周波直線性,
オフセット分解能などである。校正は,全周波数レンジ(すなわち,2 GHz以下)を網羅しなければならな
い。しかし,2 GHzのオシロスコープを使用した場合,カットオフ周波数2 GHzの一次フィルタより平たん
特性が良くないことに注意する。すなわち,次の式による。
()
(
)2
1
1
Cf
f
f
A
+
≈
b) ミスマッチは,ターゲット・減衰器・ケーブルから成る測定チェーンの出力反射係数Γc及びオシロスコープ
の入力反射係数Γoによる。これらは,校正証書又は機器の仕様から得ることができる。反射係数Γにおける
誤差の2次的な寄与成分によって,信頼できる仕様で十分となる。しかし,これらの仕様も全周波数レンジ
を網羅しなければならない。また,これらはしばしばオシロスコープを使用しない場合,追加の測定が必要
となるときに注意する。
ミスマッチの寄与成分は,次の式による。
Γc×Γo
ここに, 確率分布: U形
除数: 2
このミスマッチの不確かさの計算式は,オシロスコープの振幅応答が,無線周波数の校正概念に従って校
正すると仮定する。すなわち,電圧誤差が入力における実際の電圧ではなく50 Ωの発生源に起因する電圧と
みなす。これは認定書によって立証するか,又は異なった公式を示さなければならない。
c) この校正の拡張不確かさUを与える不確かさの評価をもった別個の校正手順書を,試験所が備えていること
を想定している。
d) 再現性は,通常5回以上の連続した測定から得る。これはタイプA評価であり,n回繰り返した測定の標準
偏差の計算式を,次に示す。
()
(
)(
)
∑
=
−
−
=
n
j
jq
q
n
n
q
s
1
2
1
1
ここに,
qj: j回の測定結果
q: 結果の算術平均
51
C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表E.3−ESD発生器のI30,I60校正時の不確かさバジェットの例
寄与成分
除数
値
%
ui(y)
%
ui(y)2
(%)2
注記
表E.2の不確かさ
正規
k=2
6.3
3.15
9.92
ピーク電流の不確かさ(表
E.2)
30 ns又は60 ns時の指示値
方形
k=3
0.17
0.098
0.009 6
ピーク電流の10 %と30 ns又
は60 nsとの時間間隔の測定
に対する,30 ns又は60 nsの
電流の指示値の感度。
オシロスコープのサンプリン
グレートが20 GS/sの場合に
は,それぞれの指示値の不確
かさは50 psとなる。
合計
9.93
−
uC
合計の平方根
3.15 %
−
I30及びI60の拡張不確かさU
正規
k=2
6.3 %
−
−
信頼性レベル95 %
製品規格委員会又は認証機関は,他の不確かさバジェットを用いてもよい。
E.8 ESD発生器の適合性基準における不確かさの適用
一般的に,ESD発生器がその仕様の範囲内にあることを確認するために,校正結果は,この規格で規定
した限度値(許容範囲は,MUによって低減しない。)の範囲内であることが望ましい。
校正を行う試験所のために,次のMUを推奨する。
立上り時間tr
MU≦15 %
ピーク電流Ip
MU≦ 7 %
30 ns時の電流 MU≦ 7 %
60 ns時の電流 MU≦ 7 %
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書F
(参考)
試験結果のばらつき及び段階的な試験手順
F.1 試験結果のばらつき
ESDの性質が複雑で,試験機器に許容差があるため,ESD試験の結果には,多少のばらつきが予想でき
る。これらのばらつきは,誤作動が発生する試験レベルの違い,又は試験中にEUTに起こる誤作動のタイ
プによる違いである。誤作動が発生する試験レベルによって,このような試験結果のばらつきが,EUTの
試験の合否決定に影響することがある。
試験結果に違いがある場合は,違いの原因を特定するために,通常,次に示す手順を実施することが望
ましい。
− 試験セットアップを確認する。すなわち,各ケーブルの位置及びEUTの状態(例えば,カバー,ドア
など)を含め,全ての詳細を調べる。
− 試験手順を確認する。試験手順には,EUTの動作モード,補助機器の配置及び場所,操作者の位置,
ソフトウェアの状態,EUTへの放電印加などがある。
− ESD発生器を確認する。発生器は正確に動作しているか,最後に校正したのは何時か,仕様内での動
作か,異なる発生器の使用による試験結果の違いなどがある。
試験結果における違いが,異なるESD発生器の使用によるものである場合には,6.2に適合するESD発
生器を使用した結果は,この規格への適合を判定するために使用することができる。
F.2 段階的な試験手順
ESD発生器を含め,試験条件が全て同じであるのに試験結果に違いが生じた場合,この規格への適合を
判定するために,次の段階的な試験手順を適用する。この段階的な試験手順では,異なった試験結果を得
るために,各試験ポイントに個別に適用する。
a) 最初の試験では,意図した試験レベルで,8.3による試験ポイントに規定の放電回数(例えば,50回
の放電)を加える。この最初の一連の放電で誤作動が発生しなかった場合は,EUTは,この試験ポイ
ントでの試験に合格となる。この一連の放電において誤作動が1回発生した場合は,b) の記載に従っ
た更なる試験を実施する。一連の放電で,2回以上の誤作動が発生した場合,EUTは,この試験ポイ
ントでの試験に不合格となる。
b) 2番目の試験では,意図した試験レベルで,放電回数を2倍にした新しい一連の放電を,試験ポイン
トに加える。この一連の放電において誤作動が発生しなかった場合,EUTは,この試験ポイント及び
試験レベルで試験に合格となる。この一連の放電において誤作動が1回発生した場合は,c) の記載に
従って更なる試験を実施してもよい。実施しない場合,EUTは,この試験ポイントでの試験に不合格
となる。この一連の放電において誤作動が2回以上発生した場合,EUTは,この試験ポイントでの試
験に不合格となる。
c) 3番目の試験では,意図した試験レベルにおいて,b) に記載した同じ放電回数の新しい一連の放電を
加える。この一連の放電において誤作動が発生しなかった場合,EUTは,この試験ポイントでの試験
に合格となる。この一連の放電において誤作動が発生した場合,EUTは,この試験ポイントでの試験
に不合格となる。
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C 61000-4-2:2012 (IEC 61000-4-2:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献 JIS C 61000-6-1 電磁両立性−第6-1部:共通規格−住宅,商業及び軽工業環境におけるイミ
ュニティ
注記 対応国際規格:IEC 61000-6-1,Electromagnetic compatibility (EMC)−Part 6-1: Generic
standards−Immunity for residential, commercial and light-industrial environments(IDT)
IEC 60050-311,International electrotechnical vocabulary−Part 311: General terms relating to electrical
measurement
IEC Guide 107,Electromagnetic compatibility−Guide to the drafting of electromagnetic compatibility
publications
S.canigga, F.Maradei, Numerical Prediction and Measurement of ESD Radiated Fields by Free-Space
Field Sensors, IEEE Trans. On EMC, Vol.49, August 2007.