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C 61000-3-100:2020  

(1) 

目 次 

ページ 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義··················································································································· 1 

4 一般要求事項··················································································································· 3 

4.1 判定方法 ······················································································································ 3 

4.2 設計判定 ······················································································································ 3 

4.3 測定判定 ······················································································································ 9 

附属書A(規定)測定回路 ···································································································· 13 

附属書B(参考)電流制御モード及び換算係数 ········································································· 15 

附属書C(参考)限度値の算出 ······························································································ 19 

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(2) 

まえがき 

この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人電気学会(IEEJ)及び一般財団

法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,日本

産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本産業規格である。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

日本産業規格          JIS 

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電磁両立性−第3-100部:限度値− 

2 kHzを超え9 kHz以下の周波数帯における 

電流エミッション限度値 

Electromagnetic compatibility (EMC)-Part 3-100: Limits- 

Limits for current emissions in frequency band of over 2 kHz up to 9 kHz 

適用範囲 

この規格は,商用電源系統に流入する2 kHzを超え9 kHz以下の周波数の電流エミッションの限度値及

び判定方法について規定する。ただし,60 Hz専用機器においては,“2 kHzを超え9 kHz以下”を“2.4 kHz

を超え9 kHz以下”と読み替える。 

この規格は,100 V商用電源系統に接続する電気・電子機器に適用する。 

この規格の目的は,100 V商用電源系統に接続する電気・電子機器を対象に,2 kHzを超え9 kHz以下の

周波数の電流エミッションの限度値及び判定方法を設定し,100 V商用電源系統に接続する他の電気・電

子機器に対して,性能低下及び障害を与えることを防止することである。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS C 60050-161 EMCに関するIEV用語 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 60050-161によるほか,次による。 

3.1 

商用電源系統 

一般送配電事業の用に供する配電系統,及びそれと電気的に接続されている需要家配線(コンセントを

含む。)。 

3.2 

供試機器 

適用範囲に該当し,判定を行う電気・電子機器。 

3.3 

スイッチング回路 

電源回路において,スイッチング(オンオフ制御)を行う半導体デバイスによって電力変換を行う回路。 

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3.4 

スイッチング周波数,fs 

スイッチング回路によって電源回路の直流分に重畳するリプル成分の周波数。半導体デバイスのスイッ

チング周波数とは限らない。 

3.5 

換算係数,K 

設計判定において,スイッチング電流波形の違いによるリプル電流の大きさの違いを考慮するための係

数。 

3.6 

換算電力,Pk 

設計判定において,適否を判定するために,供試機器の最大入力に換算係数を乗じた値。 

3.7 

インターリーブ動作 

電源回路において,複数のスイッチング回路を用いて多相運転する動作。 

3.8 

電流制御モード 

スイッチング回路において,半導体デバイスのオンオフ制御のタイミングを制御する方式。“不連続”,

“臨界”及び“連続”の3種類がある。 

3.9 

(電流制御モードの)連続 

スイッチング回路の電流がゼロになる前に,半導体デバイスがオンオフを切り替える制御モード。 

3.10 

(電流制御モードの)不連続 

スイッチング回路の電流がゼロを保った後に,半導体デバイスがオンオフを切り替える制御モード。 

3.11 

(電流制御モードの)臨界 

スイッチング回路の電流がゼロになると同時に,半導体デバイスがオンオフを切り替える制御モード。 

3.12 

アクティブ力率改善回路 

スイッチング回路を用いて,電源回路の入力電流波形を正弦波に近付け,基本周波数における力率を改

善する回路。PFC(Power Factor Correction)コンバータともいう。 

3.13 

DFT処理 

離散フーリエ変換(discrete Fourier transformation)による処理。 

3.14 

FFT処理 

高速フーリエ変換(fast Fourier transformation)による処理。 

3.15 

リニアアンプ方式 

測定回路に用いる電源方式であり,正弦波基準電圧をリニアアンプによって電力増幅して出力を得る方

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式。 

3.16 

限度値グラフ 

換算電力,線間コンデンサ容量C0及びスイッチング周波数によって,供試機器がこの規格に適合するか

を判定するグラフ。 

一般要求事項 

4.1 

判定方法 

この規格の判定方法は,図1に示すように,機器の設計情報を用いて判定する“設計判定”,及び測定か

ら判定する“測定判定”によって構成する。 

“設計判定”に適合した機器は,この規格に適合していると判定する。“設計判定”に適合しない機器で

あっても,“測定判定”に適合した場合は,この規格に適合していると判定する。 

なお,“設計判定”を実施せずに,“測定判定”に適合した場合でも,この規格に適合していると判定す

る。 

判定開始

設計判定

測定判定

この規格に適合しない

適合

この規格に適合

適合

不適合又は設計判定未実施

不適合

設計変更

図1−判定フロー 

4.2 

設計判定 

4.2.1 

設計判定の手順 

図2に設計判定の手順を示す。供試機器の電源回路の設計情報から,図2のフローに従って決定したス

イッチング周波数,換算電力及び線間コンデンサ容量C0を用いて,この規格への適合可否を判定する。 

なお,供試機器は,機器の容量を基に設計することから,設計判定では,電流エミッションの代わりに

換算電力を用いてこの規格への適合可否を判定する。 

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限度値(Pklimit,f)
以下

スイッチング回路の有無の確認

(4.2.2)

スイッチング周波数fsの決定

(4.2.3)

換算係数を含む換算電力Pkの算出(4.2.4)

線間コンデンサ容量C0の確認(4.2.5)

限度値による判定

(4.2.6)

限度値(周波数別)による判定

(4.2.7)

測定判定又は設計変更

あり

なし

スイッチング周波数が

2kHzを超え9kHz以下の範囲外

スイッチング周波数が

2kHzを超え9kHz以下

限度値
(Pklimit)以下

この規格に適合

この規格に適合

設計判定開始

限度値(Pklimit)
超過

限度値(Pklimit,f)
超過

図2−設計判定フロー 

4.2.2 

スイッチング回路の有無の確認 

供試機器のスイッチング回路の有無を確認する。供試機器にスイッチング回路がない場合は,この規格

に適合していると判定する。 

4.2.3 

スイッチング周波数fsの決定 

供試機器を判定するための周波数となるスイッチング周波数fsを,次によって決定する。決定したスイ

ッチング周波数が2 kHz以下,又は9 kHzを超える場合は,この規格に適合していると判定する。 

− 供試機器のスイッチング回路が一つの場合は,その周波数とする。 

− 図3のように,供試機器に複数のスイッチング回路が並列接続されることによって,スイッチング周

波数が複数存在する場合は,最大入力となる回路の周波数とする。 

− 図4のように,供試機器に複数のスイッチング回路が縦続接続される場合は,商用電源系統に近い回

路の周波数とする。 

− スイッチング回路がインターリーブ動作を行う場合は,インターリーブ動作時及び不動作時の両方の

周波数を対象とする。ただし,2 kHz以下,又は9 kHzを超えているスイッチング周波数での動作は,

考慮しない。 

注記 インターリーブ回路は,複数の回路によって構成されるため,インターリーブ動作時のスイ

ッチング周波数は,インターリーブ不動作時の整数倍になる。 

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供試機器

供試機器

供試機器

図3−複数のスイッチング回路が並列接続された例 

供試機器

インバータドライバ

(対象外)

スイッチング電源

(対象)

図4−複数のスイッチング回路が縦続接続された例 

4.2.4 

換算電力Pkの算出 

スイッチング回路の電流制御モードを確認し,式(1)によって換算電力Pkを算出する。ただし,スイッ

チング回路がインターリーブ動作を行う場合は,それぞれの換算電力を算出する。 

Pk=K×Pmax ·············································································· (1) 

ここに, 

Pk: 換算電力(W) 

K: 換算係数 

Pmax: 最大入力(W) 

ここで,最大入力は,供試機器の入力電力の最大値とする。 

換算係数は,次のいずれかによって決定する。 

− 表1に相当する換算係数とする(算出条件は,附属書B参照)。 

− 直流側の電流波形が明らかな場合には,表1によらず電流振幅及び電流実効値から算出した換算係数

とする(直流側電流波形が三角波の場合の換算係数算出例を,附属書Bに示す。)。 

− 直流側の電流波形及び電流制御モードが不明な場合には,表1の“電流制御モード”の“不連続”,か

つ,“インターリーブ動作の有無”の“なし”に相当する換算係数(1.4)とする。 

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表1−電流制御モード及びインターリーブ動作の有無による換算係数 

電流制御モード 

インターリーブ動作の有無 

換算係数 

不連続 

なし 

1.4 

臨界 

なし 

1.0 

連続 

なし 

0.6 

不連続 

あり 

1.0 

臨界 

あり 

0.5 

連続 

あり 

0.3 

4.2.5 

線間コンデンサ容量C0の確認 

供試機器の線間コンデンサ容量C0を,次によって確認する。 

a) アクティブ力率改善回路がない場合 図5のようにアクティブ力率改善回路がない場合は,商用電源

系統側の交流回路の線間に接続する“交流側線間コンデンサ”の容量Caに,ダイオードブリッジ(整

流器)を介した直流側回路との線間に接続する“平滑用コンデンサ”の容量Cbを加えた値とする。 

b) アクティブ力率改善回路がある場合 図6のようにダイオードブリッジ(整流器)を介した直流側に

アクティブ力率改善回路がある場合は,商用電源系統側の交流回路の線間に接続したコンデンサの容

量Caとする。 

ダイオード

ブリッジ

インバータ

ドライバ

DC/DC

コンバータ

平滑用

コンデンサ容量Cb

交流側線間

コンデンサ容量Ca

線間コンデンサ容量C0=Ca+Cb

供試機器

図5−アクティブ力率改善回路がない場合 

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ダイオード

ブリッジ

アクティブ

力率改善回路

供試機器

交流側線間

インバータ

ドライバ

DC/DC

コンバータ

コンデンサ容量Ca

線間コンデンサ容量C0=Ca

図6−アクティブ力率改善回路がある場合 

4.2.6 

設計判定に用いる限度値グラフによる判定 

4.2.4で算出した換算電力Pkと,4.2.5で確認した線間コンデンサ容量C0に対応する図7の限度値Pklimit

とを比較して,この規格への適合可否を判定する。ここで,線間コンデンサ容量C0が図7に記載する数値

の間の値となる場合は,直線補間した換算電力を限度値とする。 

インターリーブ動作によって複数のスイッチング周波数となる場合は,最大の換算電力で判定する。 

換算電力が限度値以下の場合,この規格に適合していると判定する。換算電力が限度値を超えている場

合は,引き続き4.2.7によって判定する。 

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線間コンデンサ容量 

C0(μF) 

0.1 

0.5 

10 

20 

50 

100 

200 

500 

750 

1 000 

換算電力の限度値 

Pklimit(W) 

5.23 

5.58 

6.19 

10.5 

9.29 

16.1 

59.4 

180 

860 

2 860 4 390 5 930 

1

10

100

1000

0

1

10

100

1,000




(

W

)

線間コンデンサ容量Co (μF)

限度値以下

限度値超過

2 000

1 000

1 000

0.1

P

k

W

線間コンデンサC0μF

換算電力の限度値Pklimit

2 000

1 000

100

10

1

1

限度値超過

限度値以下

P

k

W

0.1

10

100

1 000

線間コンデンサ容量C0(μF)

図7−設計判定に用いる限度値グラフ 

4.2.7 

設計判定に用いる限度値グラフ(スイッチング周波数別)による判定 

4.2.3で決定したスイッチング周波数fs,及び4.2.5で確認した線間コンデンサ容量C0に対応する図8の

限度値Pklimit,f(C.1及びC.3参照)を求める。次に,4.2.4で算出した換算電力Pkと,求めた限度値Pklimit,f

とを比較して,この規格への適合可否を判定する。 

ここで,線間コンデンサ容量C0が図8に記載している数値の間に位置する値となる場合は,直線補間し

た換算電力を限度値とする。スイッチング周波数が図8に記載している数値の間に位置する値となる場合

は,直近上位の周波数の換算電力と,直近下位の周波数の換算電力とを比較し,低い換算電力を限度値と

する。 

インターリーブ動作によって,複数のスイッチング周波数となる場合は,それぞれの周波数でこの規格

への適合可否を判定する。 

換算電力が限度値以下の場合,この規格に適合していると判定する。換算電力が限度値を超えている場

合は,測定判定又は設計変更を実施する。 

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線間コンデンサ容量 

C0(μF) 

0.1 

0.5 

10 

20 

50 

100 

200 

500 

750 

1 000 

換算電力の 

限度値 

Pklimit,f(W) 

(スイッチ
ング周波数

fs別) 

2 kHz 

103 

96.8 

88.3 

73.1 

68.8 

68.8 

71.2 

180 

860 

5 080 

7 950 10 800 

3 kHz 

38.6 

37.6 

36.5 

32.5 

32.7 

37.0 

59.4 

720 1042 

2 860 

4 390 

5 930 

4 kHz 

22.8 

22.0 

21.1 

19.7 

24.9 

64.2  395 

520 1114 

2 960 

4 510 

6 060 

5 kHz 

15.2 

14.5 

13.8 

19.8 

19.9 

16.1  267 

544 1158 

3 020 

4 570 

6 120 

6 kHz 

10.9 

10.3 

9.72 

10.8 

25.5 

82.2  263 

565 1183 

3 050 

4 600 

6 150 

7 kHz 

8.19 

7.58 

7.59 

11.1 

9.29  143 

272 

578 1199 

3 060 

4 620 

6 170 

8 kHz 

6.38 

6.21 

6.19 

17.2 

21.1 

108 

311 

681 1404 

3 580 

5 390 

7 200 

9 kHz 

5.23 

5.58 10.1 

10.5 

80.8 

118 

561 

1620 3750 10 100 15 100 20 100 

1

10

100

1000

0

1

10

100

1,000




(

W

)

線間コンデンサ容量Co (μF)

2 kHz
3 kHz
4 kHz

限度値以下

限度値超過

1

10

100

1000

0

1

10

100

1,000




(

W

)

線間コンデンサ容量Co(μF)

8 kHz

9 kHz

限度値以下

限度値超過

1

10

100

1000

0

1

10

100

1,000




(

W

)

線間コンデンサ容量Co(μF)

6 kHz
7 kHz
8 kHz

限度値以下

限度値超過

1

10

100

1000

0

1

10

100

1,000




(

W

)

線間コンデンサ容量Co (μF)

4 kHz
5 kHz
6 kHz

限度値以下

限度値超過

2 000

1 000

1 000

2 000

1 000

1 000

2 000

1 000

2 000

1 000

1 000

1 000

0.1

0.1

0.1

1

1

1

1

P

k

W

P

k

W

P

k

W

P

k

W

P

k

W

P

k

W

P

k

W

P

k

W

0.1

1

10

100

1 000

P

k

W

0.1

1

10

100

1 000

P

k

W

0.1

1

10

100

1 000

P

k

W

0.1

1

10

100

1 000

限度値超過

限度値以下

限度値超過

限度値以下

限度値超過

限度値以下

限度値超過

限度値以下

換算電力の限度値Pklimit,f

換算電力の限度値Pklimit,f

換算電力の限度値Pklimit,f

a)2 kHz〜4 kHz用

線間コンデンサ容量C0(μF)

線間コンデンサ容量C0(μF)

b)4 kHz〜6 kHz用

線間コンデンサ容量C0(μF)

線間コンデンサ容量C0(μF)

c)6 kHz〜8 kHz用

d)8 kHz〜9 kHz用

換算電力の限度値Pklimit,f

2 000

1 000

100

10

1

2 000

1 000

100

10

1

fs=2 kHz
fs=3 kHz
fs=4 kHz

fs=4 kHz
fs=5 kHz
fs=6 kHz

2 000

1 000

100

10

1

fs=6 kHz
fs=7 kHz
fs=8 kHz

fs=8 kHz
fs=9 kHz

2 000

1 000

100

10

1

図8−設計判定に用いる限度値グラフ(スイッチング周波数別) 

4.3 

測定判定 

4.3.1 

測定判定の手順 

図9に測定判定の手順を示す。測定した電流エミッションの電流波高値,及びその限度値を用いて,こ

の規格への適合可否を判定する。 

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10 

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測定判定に用いる限度値

グラフ(スイッチング周波数

別)による判定(4.3.7)

2 kHzを超え9 kHz以下の周波数の

電流波高値の算出(4.3.4)

スイッチング周波数fsの確認(4.3.5)

線間コンデンサ容量C0の確認(4.3.6)

この規格に適合しない

測定判定開始

この規格に適合

限度値[I(0-p)limit,f]
以下

限度値[I(0-p)limit,f]超過

図9−測定判定フロー 

4.3.2 

測定回路 

測定回路は,附属書Aによる。 

4.3.3 

供試機器の運転条件 

4.3.4で取り出す電流エミッションが最大となる運転条件で判定する。 

なお,電流エミッションが最大となる運転条件が不明の場合には,供試機器が最大入力となる運転条件

で判定する。 

4.3.4 

2 kHzを超え9 kHz以下の周波数の電流波高値の算出 

2 kHzを超え9 kHz以下の波形を取り出したときの“ピークトゥピーク”の最大値I(p-p)を読み取ることが

可能な算出方法を用いる。 

測定した電流波形にフィルタを適用する場合,2 kHzを超え9 kHz以下の周波数の電流エミッションを

取り出し,波形の“ピークトゥピーク”の最大値I(p-p)を読み取り,これを2で除した値を電流波高値I(0-p)

として算出する。ただし,適用するフィルタの入出力特性は,2 kHz〜9 kHzの周波数帯域において平たん

(坦)であり,かつ,入出力の誤差が1 %以下とする。 

注記 測定に用いた電源及び配線のインダクタンスによっては,補正が必要となる(附属書A参照)。 

4.3.5 

スイッチング周波数fsの確認 

設計情報から,4.2.3によってスイッチング周波数fsを確認する。4.2.3によって確認できない場合には,

測定した電流波形をDFT処理又はFFT処理を実施し,2 kHzを超え9 kHz以下の周波数帯域における振幅

最大スペクトルとなる周波数をスイッチング周波数とする。 

4.3.6 

線間コンデンサ容量C0の確認 

設計情報から,4.2.5によって線間コンデンサ容量C0を確認する。4.2.5によって確認できない場合には,

測定器などを用いて確認する。 

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11 

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4.3.7 

測定判定に用いる限度値グラフ(スイッチング周波数別)による判定 

図10に測定判定フロー図解を示す。4.3.5で確認したスイッチング周波数fs,及び4.3.6で確認した線間

コンデンサ容量C0に対応する図11の限度値I(0-p)limit,f(C.2及びC.3参照)を求める。次に,4.3.4で算出し

た電流波高値I(0-p)と,求めた限度値I(0-p)limit,fとを比較して,この規格への適合可否を判定する。 

ここで,線間コンデンサ容量C0が図11に記載している数値の間に位置する値となる場合は,直線補間

した電流値を限度値とする。スイッチング周波数が図11に記載している数値の間に位置する値となる場合

は,直近上位の周波数の電流波高値と直近下位の周波数の電流波高値とを比較し,低い方を限度値とする。 

4.3.4で算出した電流波高値が限度値以下の場合,この規格に適合していると判定する。4.3.4で算出した

電流波高値が限度値を超えている場合は,この規格に適合しないと判定する。 

附属書Aの回路を用いて

供試機器の電流波形を測定

フィルタによって2kHz〜9kHz

の電流波形を抽出

I(p-p)

スイッチング周波数の確認

判定

DFT

fHz

設計書による確認

電流波高値の算出

線間コンデンサ容量の確認

設計書による確認

又は

測定による確認

又は

スイッチング

周波数

I(0-p)の算出

IA

図10−測定判定フロー図解 

background image

12 

C 61000-3-100:2020  

線間コンデンサ 

容量 

C0(μF) 

0.1 

0.5 

10 

20 

50 

100 

200 

500 

750 

1 000 

電流波
高値の
限度値 

I(0-p)limit,f

(A) 

(スイ
ッチン
グ周波

数fs別) 

2 kHz 

0.575 

0.539 

0.492 

0.407 

0.383 

0.383 

0.397 

1.00 

4.79 

28.3 

44.3 

60.3 

3 kHz 

0.215 

0.210 

0.204 

0.181 

0.182 

0.206 

0.331 

4.01 

5.81 

15.9 

24.5 

33.1 

4 kHz 

0.127 

0.123 

0.117 

0.110 

0.139 

0.357 

2.20 

2.90 

6.21 

16.5 

25.1 

33.7 

5 kHz 

0.084 8 0.080 7 0.076 6 0.110 

0.111 

0.089 5 1.49 

3.03 

6.45 

16.8 

25.4 

34.1 

6 kHz 

0.060 9 0.057 3 0.054 1 0.060 2 0.142 

0.458 

1.47 

3.15 

6.59 

17.0 

25.6 

34.3 

7 kHz 

0.045 6 0.042 2 0.042 3 0.061 6 0.051 8 0.794 

1.51 

3.22 

6.68 

17.1 

25.7 

34.4 

8 kHz 

0.035 5 0.034 6 0.034 5 0.096 0 0.118 

0.603 

1.73 

3.79 

7.82 

19.9 

30.0 

40.1 

9 kHz 

0.029 1 0.031 1 0.056 0 0.058 7 0.045 0 0.656 

3.13 

9.00 

20.9 

56.1 

84.0 

112 

0.01

0.10

1.00

10.00

100.00

1000.00

0

1

10

100

1,000

線間コンデンサ容量Co (μF)

調

(波

A

0

-p

)

0.01

0.10

1.00

10.00

100.00

1000.00

0

1

10

100

1,000

線間コンデンサ容量 Co  μF

0.01

0.10

1.00

10.00

100.00

1000.00

0

1

10

100

1,000

線間コンデンサ容量Co (μF)

調

(波

A

0

-p

)

0.01

0.10

1.00

10.00

100.00

1000.00

0

1

10

100

1,000

線間コンデンサ容量Co (μF)

調

(波

A

0

-p

)

a)2 kHz〜4 kHz用

1 000

100

0.1

1 000

1 000

1 000

100

10

1 000

1 000

限度値超過

限度値以下

限度値超過

限度値以下

限度値超過

限度値以下

限度値超過

限度値以下

0.1

0.1

0.1

I

(0

-p

A

I

(0

-p

A

電流波高値の限度値I(0-p) limit,f

電流波高値の限度値I(0-p) limit,f

電流波高値の限度値I(0-p) limit,f

電流波高値の限度値I(0-p) limit,f

線間コンデンサ容量C0(μF)

線間コンデンサ容量C0(μF)

線間コンデンサ容量C0(μF)

b)4 kHz〜6 kHz用

c)6 kHz〜8 kHz用

d)8 kHz〜9 kHz用

I

(0

-p

)l

im

it

,f

(A

1 000

100

10

1

0.1

0.01

I

(0

-p

)l

im

it

,f

A

1 000

100

10

1

0.1

0.01

I

(0

-p

)l

im

it

,f

A

1 000

100

10

1

0.1

0.01

I

(0

-p

)l

im

it

,f

A

1 000

100

10

1

0.1

0.01

0.1

1

10

100

1 000

0.1

1

10

100

1 000

0.1

1

10

100

1 000

0.1

1

10

100

1 000

fs=2 kHz
fs=3 kHz
fs=4 kHz

fs=4 kHz
fs=5 kHz
fs=6 kHz

fs=6 kHz
fs=7 kHz
fs=8 kHz

fs=8 kHz
fs=9 kHz

線間コンデンサ容量C0(μF)

図11−測定判定に用いる限度値グラフ(スイッチング周波数別) 

background image

13 

C 61000-3-100:2020  

附属書A 

(規定) 
測定回路 

A.1 概要 

図A.1に示す測定回路に基づいて測定を実施する。測定に用いる電源は,リニアアンプ方式の電源とし,

電源と供試機器とを直接接続するか,又はできるだけインピーダンスが小さい配線で接続する。 

リニアアンプ方式

交流電源

計器

リニアアンプ方式

交流電源

If

計器

供試機器

電流入力回路

図A.1−測定回路 

A.2 電源 

電源は,できるだけ内部インピーダンスが小さいリニアアンプ方式を用いる。2 kHzを超え9 kHz以下

の周波数範囲における電源と配線との合成インダクタンスは,10 μH以下とする。合成インダクタンスが

10 μHを超える場合は,判定に用いる電流値を表A.1によって補正する。ここで,配線のインダクタンス

はA.4によって算出した値とし,電源のインダクタンスは製造業者から入手する値とする。電源インダク

タンスが不明な場合には,電源と配線との合成インダクタンスは,一律50 μHとする。 

表A.1−電流補正値 

電源と配線との 

合成インダクタンス 

μH 

補正後の電流 

10以下 

If 

10を超え20以下 

If/0.9 

20を超え50以下 

If/0.8 

Ifは,4.3.4で読み取った電流値。 

A.3 計器(電流入力回路を含む) 

計器は,2 kHzを超え9 kHz以下の周波数範囲に適したものとする。 

なお,周波数帯域幅50 kHz以上であることが望ましい。測定系全体の誤差は,±5 %であることが望ま

しい。 

注記 計測誤差の要因としては,電流センサの誤差,計器の誤差及びフィルタ処理の誤差が挙げられ

る。 

background image

14 

C 61000-3-100:2020  

A.4 配線のインダクタンス 

配線のインダクタンスは,式(A.1)によって求める。配線のインダクタンスのモデルは,図A.2を参照す

る。 

+

=

4

log

0

μ

a

d

μ

π

l

L

 ································································ (A.1) 

ここに, 

L: 配線のインダクタンス(H) 

l: 配線長(m) 

d: 導体間の距離(m) 

a: 導体半径(m) 

μ: 導体の透磁率(H/m) 

μ0: 真空中の透磁率(H/m) 

a

d

l

a

d

l

d

a

l

図A.2−配線のインダクタンスのモデル 

15 

C 61000-3-100:2020  

附属書B 

(参考) 

電流制御モード及び換算係数 

スイッチング電源回路の設計に関わる電流制御モードによって,直流側スイッチング電流波形が異なり,

交流入力側への電流エミッションに影響する。このため,電流制御モードに応じた換算係数を設定し,こ

れを供試機器の最大入力に乗じた換算電力とその限度値とを比較する手法を採用した。 

“インターリーブ動作の有無”の“なし”の場合の各電流制御モードでの電流波形の概念図を図B.1に,

各電流制御モード(実効値一定で図示)における電流振幅と電流実効値との関係を図B.2に,それぞれ示

す。 

なお,電流波形は,三角波と仮定している。 

実効値が同じという条件から,“電流制御モード”の“不連続”における電流振幅値IAは,“電流制御モ

ード”の“臨界”における電流振幅値IBを用いて,式(B.1)で求められる。 

α

I

I

B

A=

 ··············································································· (B.1) 

ここに, 

IA: “電流制御モード”の“不連続”における電流振幅値 

IB: “電流制御モード”の“臨界”における電流振幅値 

α: 導通角[α<1(不連続時)] 

式(B.1)から,IAはIBに比べて大きくなる。 

同様に,“電流制御モード”の“連続”の場合の電流振幅値は,式(B.2)で求められる。 

(

)

(

)

2

B

C2

C1

1

1

k

k

k

I

I

I

+

+

×

=

 ······················································· (B.2) 

ここに, 

IC1: “電流制御モード”の“連続”における最大電流値 

IC2: “電流制御モード”の“連続”における最小電流値 

k: 電流振幅比

1

C1

C2<

II

式(B.2)から,IC1−IC2は,IBに比べて小さくなる。 

電流制御モードの違いによる直流側の電流振幅値が,交流入力側に流出する電流エミッションに直接影

響するため,“電流制御モード”の“臨界”を基準とした電流振幅値の大きさを表す換算係数Kを定義し,

判定に用いる。換算係数は,“電流制御モード”の“不連続”の場合は式(B.3),又は“電流制御モード”

の“連続”の場合は式(B.4)で求められる。 

α

K

1

=

 ··············································································· (B.3) 

(

)

(

)

2

1

1

k

k

k

K

+

+

=

 ···································································· (B.4) 

ここに, 

K: 換算係数 

表1の換算係数は,“インターリーブ動作の有無”の“なし”では,“電流制御モード”の“不連続”の

導通角αを0.5とし,“電流制御モード”の“連続”の電流振幅比kを0.3として算出している。 

表1の換算係数は,“インターリーブ動作の有無”の“あり”では,“電流制御モード”の“不連続”の

導通角αを0.5とし,“電流制御モード”の“連続”の電流振幅比kを0.6,かつ,“電流制御モード”の“臨

background image

16 

C 61000-3-100:2020  

界”の電流振幅比kを0.4として算出している。また,直流側スイッチング電流波形が明らかな場合には,

表1によらずに,式(B.3),式(B.4),又は電流振幅及び電流実効値から換算係数を求めることができる。 

“インターリーブ動作の有無”の“あり”かつ “電流制御モード”の“臨界”の場合の電流波形の概念

図を図B.3に,インターリーブ動作の有無による電流波形の比較を図B.4にそれぞれ示す。インターリー

ブ動作によって電流エミッションの周波数は高くなり,“インターリーブ動作の有無”の“なし”の場合と

同じ実効値を得るときには,電流振幅が小さくなることが分かる。 

0

電流I

電流制御モード
の不連続

電流制御モード
の連続

電流制御モード
の臨界

実効値

I

0

A

時間t

図B.1−“インターリーブ動作の有無”の“なし”の場合の各電流制御モードの電流波形(概念図) 

background image

17 

C 61000-3-100:2020  

IB

IC1

0

IC2

0

T/2

T

2T

3T/2

IA

(T:周期)

ただし,

電流制御

モード

電流波形の例

(実効値一定で図示)

実効値計算に用いる

電流波形の式

実効値と振幅との関係式

不連続

臨界

連続

(T:周期)

α= 0.5の場合

α< 1の場合

α=1の場合

0

0

T/2

T

2T

3T/2

(T:周期)

T/2

T

2T

3T/2

図B.2−“インターリーブ動作の有無”の“なし”の場合の各電流制御モードにおける 

電流振幅と電流実効値との関係(実効値一定) 

Isw

0

I1

実効値

合成電流(I1+I2)波形

I2

リプル電流
成分

合成電流(I1+I2)

I1

I2

時間t

図B.3−“インターリーブ動作の有無”の“あり”かつ“電流制御モード”の 

“臨界”の電流波形(概念図) 

background image

18 

C 61000-3-100:2020  

Isw1

Isw1

Isw1

Isw2

電流制御モード

臨界

電流制御モード

不連続

電流制御モード

連続

Isw1

Isw1

Isw1

Isw2

インターリーブ動作

なし

インターリーブ動作

あり

Isw2

α=1.0

K=1.0

導通角

α=0.5

換算係数K=1.4

Isw2/Isw1=0.3

K=0.6

0

T/2

T

2T

3T/2

(T:周期)

換算係数K=1.0

Isw2/Isw1=0.6

K=0.3

Isw2/Isw1=0.4

K=0.5

0

T/2

T

2T

3T/2

(T:周期)

0

T/2

T

2T

3T/2

(T:周期)

0

T/2

T

2T

3T/2

(T:周期)

0

T/2

T

2T

3T/2

(T:周期)

0

T/2

T

2T

3T/2

(T:周期)

図B.4−インターリーブ動作の有無による電流波形の比較(実効値一定) 

background image

19 

C 61000-3-100:2020  

附属書C 
(参考) 

限度値の算出 

C.1 設計判定における限度値の算出式 

設計判定における換算電力の限度値について説明する。 

供試機器の概念図を図C.1に,このときの直流側電圧及び直流側電流の波形(概念図)を図C.2及び図

C.3にそれぞれ示す。スイッチング回路は,“電流制御モード”の“臨界”かつ“インターリーブ動作の有

無”の“なし”とし,電流波形は,三角波と仮定している。 

入力:Pi

ダイオード

ブリッジ

インバータ

ドライバ

DC/DC

コンバータ

平滑用

コンデンサ

Isw

Vsw

交流側線間
コンデンサ

図C.1−供試機器の概念図 

0

ピーク値約140V

約126V

Vsw(RMS)

実効値

図C.2−直流側電圧の波形(概念図) 

実効値

Isw(RMS)

0

I

(P-P)

Isw(p-p) : リプル電流

Isw(p-p)

図C.3−直流側電流の波形(概念図) 

交流側からの入力Piと直流側に変換される電力とが等しいと仮定した場合,Piは式(C.1)で表される。 

Pi=Vsw(RMS)×Isw(RMS) ································································ (C.1) 

ここに, Vsw(RMS): 直流側電圧実効値(V) 
 

Isw(RMS): 直流側電流実効値(A) 

直流側電圧は,ほぼ直流となることから,実効値を電圧ピーク値の0.9倍とし,交流入力電圧を100 V

(ピーク値:141 V),及びダイオードブリッジでの電圧降下を1 Vと仮定した場合,Vsw(RMS)は式(C.2)で表

される。 

Vsw(RMS)=(141−1)×0.9=126 ····················································· (C.2) 

20 

C 61000-3-100:2020  

直流側電流の振幅Isw(p-p)は,図B.2,式(B.3)及び式(B.4)から,式(C.3)で表される。 

sw(RMS)

p)

(p

sw

3

I

K

I

×

×

=

 ························································· (C.3) 

式(C.1)との関係から,式(C.3)は,式(C.4)で表される。 

sw(RMS)

i

p)

(p

sw

3

V

P

K

I

×

×

=

 ························································ (C.4) 

一方,振幅2 Aの三角波電流をフーリエ級数展開した場合,式(C.5)で表される。 

+

×

=

Λ

ωt

ωt

ωt

π

t

f

5

sin

25

1

3

sin

9

1

sin

8

)

(

2

 ······························· (C.5) 

ここに, 

f(t): リプル電流(A) 

式(C.5)の右辺第1項の角周波数ωの最大振幅は,8/π2となることが知られている。 

この関係から,直流側電流に含まれている角周波数ωの電流エミッションの振幅IHH(p-p)は,式(C.6)とな

る。 

)

RMS

(

i

2

p)

(p

sw

2

p)

HH(p

3

8

8

V

P

K

π

I

π

I

×

×

×

=

×

=

 ································ (C.6) 

ここで,ダイオードブリッジは,導通中には電流エミッションの良好な通路となるため,交流電流IHH(p-p)

が直流側から交流側へそのまま流出する。一方,平滑コンデンサによる電流エミッションの吸収効果は,

交流側の線間コンデンサと合わせて共振拡大倍率(C.3参照)に含まれている。 

許容できる電流エミッションの電流波高値の限度値IMAX(p-p)は,式(C.7)となる。 

0

c

p)

0(

p)

MAX(p

2

I

V

V

I

×

=

································································ (C.7) 

ここに, V(0-p): 過電圧限度値(V) 
 

Vc/I0: 共振拡大倍率(V/A) 

式(C.7)から,式(C.8)が限度値の条件となる。 

IHH(p-p)=IMAX(p-p) ······································································ (C.8) 

なお,電気用品の技術上の基準を定める省令の解釈において,110 Vが最も試験電圧(過電圧)として

小さいことから,この規格では,2 kHzを超え9 kHz以下の周波数の電流エミッションによって被害宅に

発生する過電圧限度値をV(0−p)=102=14.1と想定している。 

式(C.6)及び式(C.7)から,式(C.8)を展開すると式(C.9)となり,換算電力は,式(C.10)で表される。 

0

c

p)

(0

(RMS)

i

2

2

3

8

I

V

V

V

P

K

π

×

=

×

×

×

 ················································· (C.9) 

0

c

0

c

RMS)

(

p)

(0

2

i

4

538

2

8

3

2

I

V

.

I

V

V

V

P

K

=

×

×

×

×

×

=

×

π

 ······································· (C.10) 

ここに, K×Pi: 交流側からの入力Piに対する換算電力 

式(C.10)のとおり,一般に,換算電力は,回路定数及び周波数に依存した共振拡大倍率によって表すこ

とができる。設計判定における限度値は,式(C.10)へ表C.2の共振拡大倍率を代入することで算出できる。 

C.2 測定判定における限度値の算出式 

式(C.7)を展開すると,式(C.11)となる。測定判定における電流エミッションの電流波高値の限度値は,

式(C.11)へ表C.2の共振拡大倍率を代入することで算出できる。 

background image

21 

C 61000-3-100:2020  

0

c

0

c

p)

(0

p)

MAX(p

p)

MAX(0

1.

14

2

I

V

I

V

V

I

I

=

=

=

 ········································· (C.11) 

C.3 共振拡大倍率 

この箇条では,限度値の算出に用いた共振拡大倍率について説明する。 

障害事例の調査,再現試験を通じて共振の影響が確認され,電流エミッション限度値の検討に共振拡大

倍率を考慮する必要性が明らかになった。しかし,共振に関与する要素が多種多様にわたっており,実機

を用いて実験することが現実的ではないことから,共振拡大倍率の算出にはEMTP(過渡現象解析プログ

ラム)によるシミュレーションを用いた。 

2 kHzを超え9 kHz以下の周波数領域での,共振拡大倍率算出のための低圧配電系統のEMTP解析モデ

ルの例を,図C.4に示す。機器のインピーダンス,低圧配電系統のインピーダンス,及び他の電気・電子

機器のインピーダンスによる共振によって機器から発生した電流エミッションが拡大され,2 kHzを超え9 

kHz以下の周波数の電圧が大きく重畳した電圧を他の機器が受けることによって,その機器に障害が発生

する。すなわち,共振現象によって被害が拡大する。このことから,発生源から流出する2 kHzを超え9 kHz

以下の周波数の電流エミッション1 A当たりの被害宅における発生電圧を共振拡大倍率と定義し,想定さ

れる低圧配電系統,電気・電子機器のインピーダンスなどを基に共振拡大倍率を算出した。 

柱上Tr

高調波発生源

隣家C

家屋1-1

家屋2-1

家屋3-1

家屋1-2

家屋4-2

家屋4-1

発生源

柱上変圧器

被害宅

電柱1

電柱2

電柱3

電柱4

低圧線

低圧線

低圧線

引込線

引込線

引込線

引込線

引込線

引込線

C0L0

C1

図C.4−共振拡大倍率算出のための低圧配電系統のEMTP解析モデル例 

低圧配電系統は,昭和58年に社団法人日本電設工業協会(当時)がまとめた国内の低圧配電系統のイン

ピーダンスの90 %累積百分率(図C.5)を用い,低圧本線(低圧線)はそれぞれ電圧線及び中性線の値を,

引込線はそのままの値を適用した。変圧器は,住宅地などに多く用いられる単相30 kVAの柱上変圧器を

想定し,100 kHz以下のインピーダンス特性を模擬する等価回路の一例(図C.6)を適用した。 

発生源は,電気・電子機器の電源スイッチが入って稼動している状態を,交流電源側から見た2 kHzを

超え9 kHz以下の周波数領域でモデル化したものである。機器の実測結果,文献調査結果などから,発生

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22 

C 61000-3-100:2020  

源のインダクタンス(チョークコイル)L0と,発生源の線間コンデンサ容量C0とを並列にした電流源とし

て模擬している。 

一方,被害宅は,複数の電気・電子機器がコンセントに接続されているが,電源スイッチが入っていな

い状態を想定して被害宅の線間コンデンサ容量C1(電気・電子機器などのコンデンサの総計)として模擬

した。 

変圧器

低圧本線

引込線

電圧線

中性線

電圧線

0.092 Ω+j0.128 mH

0.146 Ω+j0.132 mH

0.0615 Ω+j0.008 mH

0.0615 Ω+j0.008 mH

0.092 Ω+j0.128 mH

0.0615 Ω+j0.008 mH

 出典:“低圧回路の高調波対策の調査研究に関する中間報告” 

   社団法人日本電設工業協会 技術委員会低圧回路高調波対策専門委員会(昭和58年9月) 
 

図C.5−低圧配電系統等価回路のインピーダンス 

1290pF

1290pF

6.37μH

5.47μH

2.59μH

1.72μH

1.72μH

0.02Ω

0.02Ω

0.183Ω

1.52Ω

2次側中性線

2次側

電圧線

2次側

電圧線

理想変圧器

1:1

1290pF

1290pF

6.37μH

5.47μH

2.59μH

1.72μH

1.72μH

0.02Ω

0.02Ω

0.183Ω

1.52Ω

2次側中性線

2次側

電圧線

2次側

電圧線

理想変圧器

1:1

0.02 Ω1.72 μH

6.37 μH

5.47 μH

2.59 μH

0.183 Ω

1.52 Ω

0.02 Ω1.72 μH

1290 pF

1 : 1

1290 pF

2次側

電圧線

2次側

電圧線

理想変圧器

2次側中性線

図C.6−30 kVA柱上変圧器の解析モデル 

パラメータ(L0,C0,C1)は,電気・電子機器などの調査結果から表C.1のように値を変化させ,更に

発生源と被害宅との位置関係を示す系統パターンも図C.7のように変化させた。図C.8は,系統パターン

Eにおいて,発生源の線間コンデンサ容量C0を0.5 μFとしたときの被害宅の線間コンデンサ容量C1によ

る共振の変化の一例を示す。 

同様に系統パターンA,B,C,D及びEに適用し,発生源の線間コンデンサ容量C0に対する拡大倍率

の最大値を共振拡大倍率(Vc/I0)として,表C.2に示す。 

図C.8及び表C.2は,発生源の線間コンデンサ容量C0も被害宅の線間コンデンサ容量C1も容量が大き

くなるほど,共振拡大倍率が減少することを示している。 

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23 

C 61000-3-100:2020  

表C.1−パラメータ(L0,C0,C1)の変化 

パラメータ 

単位 

容量 

C0(発生源の線間コンデンサ) 

μF 

0.1,0.5,1,5,10,20,50,

100,200,500,750,1 000 

L0[発生源のインダクタンス(チョークコイル)] 

μH 

50,150,500,1 000 

C1(被害宅の線間コンデンサ) 

μF 

1〜20(1刻み) 

系統パターンA

系統パターンB

・・・発生源

・・・被害宅

引込線

引込線

変圧器電柱1

電柱1

変圧器

電柱2

電柱3

電柱

変圧器

引込線

引込線

電柱

電柱

電柱

電柱

電柱3

電柱4

電柱1

変圧器

引込線

引込線

電柱2

電柱

電柱

1-1

1-2

2-1

2-2

3-1

4-1

電柱

電柱

電柱3

電柱4

1

2

引込線

引込線

3-1

4-1

電柱

電柱

電柱3

電柱4

1

2

引込線

4-1

引込線

4-2

変圧器

変圧器

系統パターンC

系統パターンD

系統パターンE

4-2

引込線

図C.7−発生源と被害宅との位置関係を示す系統パターン 

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24 

C 61000-3-100:2020  

0

50

100

150

200

250

1000

10000

V

Hz

VC/I0

2 μF

3 μF

4 μF

20 μF

周波数f(Hz)

発生源の線間コンデンサ容量

C0=0.5 μFの場合

1

A

発生電

V

V

1 000

10 000

0

50

100

150

200

250

20 μF

4 μF

3 μF

2 μF

図C.8−共振状況の変化(系統パターンEの例) 

表C.2−算出した共振拡大倍率 

線間コンデ

ンサ容量 

C0(μF) 

0.1 

0.5 

10 

20 

50 

100 

200 

500 

750 

1 000 

2 kHz 

24.6 

26.2 

28.8 

34.7 

36.9 

36.9 

35.6 

14.1 

2.95 

0.500 

0.320 

0.235 

3 kHz 

65.8 

67.5 

69.5 

78.1 

77.6 

68.6 

42.7 

3.53 

2.43 

0.889 

0.578 

0.428 

4 kHz 

112 

115 

120 

129 

102 

39.6 

6.43 

4.88 

2.28 

0.857 

0.563 

0.419 

5 kHz 

167 

175 

185 

128 

128 

158 

9.50 

4.66 

2.19 

0.842 

0.556 

0.415 

6 kHz 

232 

247 

261 

235 

99.5 

30.9 

9.64 

4.50 

2.15 

0.833 

0.552 

0.413 

7 kHz 

310 

335 

335 

230 

273 

17.8 

9.34 

4.39 

2.12 

0.829 

0.550 

0.411 

8 kHz 

398 

409 

410 

147 

120 

23.5 

8.17 

3.73 

1.81 

0.710 

0.471 

0.353 

9 kHz 

486 

455 

253 

241 

31.4 

21.5 

4.52 

1.57 

0.678 

0.252 

0.168 

0.126