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C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

(1) 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 2 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 炎の広がりの原理 ············································································································· 6 

4.1 液体 ···························································································································· 6 

4.2 固体 ···························································································································· 7 

5 試験方法選択のための検討 ································································································· 7 

5.1 火災シナリオ ················································································································ 7 

5.2 着火源 ························································································································· 7 

5.3 試料の種類 ··················································································································· 8 

5.4 試験手順及び試験設備 ···································································································· 8 

5.5 測定方法 ······················································································································ 8 

6 結果の用い方及び解釈 ······································································································· 8 

参考文献 ···························································································································· 10 

C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

(2) 

まえがき 

この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人

日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を改正すべきとの申出があり,日本産業

標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格である。これによって,JIS C 60695-9-1: 

2008は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

日本産業規格          JIS 

C 60695-9-1:2020 

(IEC 60695-9-1:2013) 

耐火性試験−電気・電子−第9-1部: 

表面の炎の広がり−一般指針 

Fire hazard testing-Part 9-1:Surface spread of flame-General guidance 

序文 

この規格は,2013年に第3版として発行されたIEC 60695-9-1を基に,技術的内容及び構成を変更する

ことなく作成した日本産業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

火災は,熱(熱的危険)並びに毒性生成物,腐食性生成物及び煙(非熱的危険)の生成によって,人命

及び財産に危険を及ぼす原因となる。火災危険性は,フラッシュオーバ及び火ざかりといった場合での燃

焼面積の拡大とともに増加する。これは,建築での典型的な火災シナリオである。 

着火部分を越えた炎の表面広がりは,材料表面の熱分解最前部の生成,炎前線の前進,炎からの熱及び

外部熱源の結果として生じる。熱分解最前部とは,材料表面での熱分解部分と非熱分解部分との境界であ

る。熱分解した材料から生じる可燃蒸気は,空気と混じりあって着火し,炎前線を生成する。 

表面の炎広がり速度は,炎前線の移動距離を移動した距離に達するまでの時間で除したものである。炎

の表面広がり速度は,外部から加わる熱及び/又は材料の燃焼によって,燃焼部分から前方に加わる熱並

びに材料の着火のしやすさに依存する。着火のしやすさとは,材料の最小着火温度,厚み,密度,比熱及

び熱伝導度に関係する。炎が供給する熱は,燃焼発熱速度,試料の位置,空気の流速及び表面上で炎が広

がる方向に対する空気の流れの方向に依存する。一般的に,材料表面の炎の広がりには次のようなものが

ある。 

a) 非伝ぱ:着火部分を越えた炎の広がりがない。 

b) 低伝ぱ:炎の広がりが材料の終端まで達する前に停止する 

c) 伝ぱ:着火部分を越え,材料の全表面に渡って炎が広がる。 

炎の表面広がり挙動を表すために用いる材料の特性は,表面の予熱及び熱分解,蒸気(熱分解ガス)の

生成,熱分解ガスと空気との混合,混合気の燃焼及び熱,並びに燃焼生成物の発生に関係する。表面炎広

がり挙動を緩和するために難燃剤及び表面難燃処理剤が用いられる。炎の表面広がり挙動を評価するため

に考慮すべき要因には,次のようなものがある。 

1) 表面の配置,換気及び着火源の特性のような要素を含む火災シナリオ 

2) 測定方法(5.5参照) 

3) 得られた結果の用い方及び解釈(箇条6参照) 

適用範囲 

この規格は,電気・電子製品及びこれらを構成する材料表面の炎の広がりの評価について,次の事項に

関する指針を示す。 

C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

・ 液体及び固体の炎の広がりの法則に関する解説 

・ 試験方法の選定に関する指針 

・ 試験結果の使用及び解釈に関する指針 

・ 参考文献の情報 

製品安全規格を作成するときは,JIS Z 8051及びIEC Guide 104に従って,基本安全規格(basic safety 

publication)を引用することが望ましい。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

IEC 60695-9-1:2013,Fire hazard testing−Part 9-1:Surface spread of flame−General guidance(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)

は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS C 60695-4:2010 耐火性試験−電気・電子−第4部−電気・電子製品のための耐火性試験用語 

注記1 対応国際規格:IEC 60695-4:2005, Fire hazard testing−Part 4: Terminology concerning fire tests 

for electrotechnical products 

注記2 JIS C 60695-4:2010は,最新版のIEC 60695-4:2012, Fire hazard testing−Part 4: Terminology 

concerning fire tests for electrotechnical productsと該当する事項が一致しない場合がある。両

者で引用する細分箇条に相異がある場合は,IEC 60695-4:2012の細分箇条を併記している。 

JIS K 2265-4 引火点の求め方−第4部:クリーブランド開放法 

注記 対応国際規格:ISO 2592: 2000,Determination of flash and fire points−Cleveland open cup method  

JIS Z 8051 安全側面−規格への導入指針 

注記 対応国際規格:ISO/IEC Guide 51:1999,Safety aspects−Guidelines for their inclusion in standards  

ISO 13943:2008,Fire safety−Vocabulary 

注記 ISO 13943:2008に規定する用語及び定義が,JIS C 60695-4:2010の附属書JAに記載してある。 

IEC Guide 104:1997,The preparation of safety publications and the use of basic safety publications and group 

safety publications 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次によるほか,JIS C 60695-4及びISO 13943による。 

3.1 

燃焼(combustion) 

物質と酸化剤との発熱反応。 

注記1 燃焼は,一般的に火炎(3.11参照)及び/又は赤熱を伴い,燃焼放出物を発生する。 

注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.46参照。 

3.2 

損傷面積(damaged area) 

規定の条件において,火(3.6参照)によって恒久的に損傷を受けた表面の総面積。 

C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

注記1 この用語の使用者は,対象となる損傷の形態を規定する必要がある。これには,例えば,材

料の損失,変形,軟化,溶融挙動,炭化の形成,燃焼(3.1参照),熱分解(3.25参照)又は

化学作用がある影響を含む。 

注記2 典型的な損傷面積の単位は,平方メートル(m2)で表す。 

注記3 JIS C 60695-4:2010の附属書JAの4.59を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.3 

損傷長さ(damaged length) 

損傷面積(3.2参照)の特定の方向への最大の広がり。 

注記1 JIS C 60695-4:2010の附属書JAの4.60参照。本文に使用はないが、対応国際規格に応じて残

す。 

3.4 

燃焼長さ(extent of combustion) 

<電気・電子>規定の試験条件で,燃焼(3.1参照)又は熱分解(3.25参照)によって試験片が損傷した

部分の最大長さ。ただし,変形だけの部分を除く。 

注記1 JIS C 60695-4:2010の3.16参照。本文に使用はないが,対応国際規格に応じて残す。 

3.5 

火,火災(fire) 

<一般>熱及び火炎流出の排出,並びに通常に煙,火炎,白熱又はそれらの組合せによって,通常に付

随している特徴付けられる燃焼の過程。 

注記1 英語でfireは三つの概念を表すものとして用いられる。3.6に示す火及び3.7に示す火災は,

特定の種類の異なる意味を持つ自己燃焼を表す。 

注記2 JIS C 60695-4:2010の3.19を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.6 

火(fire) 

<制御された>有効な効果が得られるように意図的に設定され,時間及び場所を制限され,自己継続す

る制御された燃焼。 

注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.97を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.7 

火災(fire) 

<制御されない>有効な効果が得られるように意図的に設定されたものではなく,時間及び場所を制限

されない,自己継続する制御されない燃焼。 

注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.98を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.8 

火災危険性(fire hazard) 

火災(3.7参照)による傷害若しくは生命の喪失及び/又は財産の損傷が生じる可能性。 

注記 JIS C 60695-4:2010の3.26参照。 

3.9 

燃焼点(fire point) 

標準化した小さな火炎(3.11参照)を規定の試験条件で材料の表面に当てた後に,その材料が着火し,

規定の時間燃焼し続けるための最低温度。 

C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

注記1 英語では“fire point”という用語には,火災指示書を含む消防設備を設置する場所である。 

注記2 燃焼点は,セルシウス温度(℃)で表す。 

注記3 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.119を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.10 

火災シナリオ(fire scenario) 

調査した火災を特徴付ける重要な出来事を特定し,それを他の起こり得る火災と区別する,火災の時間

的変化の定性的な記述。 

注記1 一般的には,着火及び火災成長プロセス,最盛期火災段階,火災減衰段階,並びに火災の過

程に影響を与える環境及びシステムを定義する。 

注記2 JIS C 60695-4:2010の3.32を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.11 

火炎(flame)(名詞) 

通常は光の放射を伴う,気相における燃焼の急速,持続的かつ亜音速の燃焼(3.1参照)が存在する部分。 

注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.133に“が存在する部分”を加えて修正。 

3.12 

炎の前線(flame front) 

材料表面上で又は混合気体に沿って広がって燃焼(3.1参照)している部分の境界。 

注記 JIS C 60695-4:2010の3.34を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.13 

難燃剤(flame retardant)(名詞) 

火炎(3.11参照)の出現を抑制若しくは遅延するために,又は炎の広がり速度(3.15参照)を低下させ

るために,材料に添加する薬剤又は材料を処理する方法。 

注記1 難燃剤の使用若しくは難燃処理が必ずしも火,火災(3.5参照)を抑制する,又は炎を伴う燃

焼(3.1参照)を止めるとはいえない。 

注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.139を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.14 

炎の広がり(flame spread) 

炎の前線(3.12参照)の広がり。 

注記 JIS C 60695-4:2010の3.36を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.15 

炎の広がり速度(flame spread rate, surface spread of flame rate) 

燃焼速度とは異なる特定の条件下での炎の広がりでの炎の前線(3.12参照)の移動距離を移動時間で除

したもの。 

注記 JIS C 60695-4:2010の3.37を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.16 

フラッシュオーバ(flashover) 

<火災の段階>エンクロージャ内の可燃材料表面の全てが,火災(3.7参照)に包まれた状態に変化する

現象。 

注記 JIS C 60695-4:2010の3.42を対応国際規格に応じて一部変更。 

C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

3.17 

引火点(flash point) 

規定の試験条件で,材料又は製品を加熱することによって発生した気体が,火炎(3.11参照)によって

瞬間的に着火するための最低温度。 

注記 JIS C 60695-4:2010の3.43を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.18 

火盛期火災(fully developed fire) 

可燃物の全体が燃焼状態にある火,火災(3.5参照)の状態。 

注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.164参照。本文に使用はないが,対応国際規格に応じて残

す。 

3.19 

熱流束(heat flux) 

単位面積及び単位時間当たりに伝達,入射又は放出した熱エネルギー量。 

注記1 熱流束は,W・m−2で表す。 

注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.173参照。 

3.20 

燃焼発熱速度(heat release rate) 

燃焼(3.1参照)によって単位時間当たりに生成する熱エネルギー。 

注記1 燃焼発熱速度は,ワット(W)で表す。 

注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.177参照。 

3.21 

着火(ignition) 

<一般>燃焼(3.1参照)が開始すること。 

注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.187参照。 

3.22 

着火(ignition)(有炎燃焼) 

<有炎燃焼>持続火炎(3.11参照)が開始すること。 

注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.188参照。 

3.23 

着火源(ignition source) 

燃焼(3.1参照)を開始するエネルギー源。 

注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.189参照。 

3.24 

最低着火温度,着火点(minimum ignition temperature, ignition point) 

規定の試験条件で,持続燃焼(3.1参照)を開始できる温度。 

注記1 最低着火温度及び着火点とは,無限の長さの時間熱応力を加えることを意味する。 

注記2 一般的に着火温度は,セルシウス温度(℃)で表す。 

注記3 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.231参照。 

C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

3.25 

熱分解(pyrolysis) 

熱の作用による物質の化学分解。 

注記1 熱分解は,有炎燃焼(3.1参照)開始前の火,火災(3.5参照)の一段階を表すものとしてよ

く用いられる。 

注記2 火災科学では,酸素の有無に関する仮定は,行わない。 

注記3 JIS C 60695-4:2010の3.70を対応国際規格に応じて一部変更。 

3.26 

熱分解最前部(pyrolysis front) 

材料表面における熱分解(3.25参照)部分と影響を受けていない部分との間の境界。 

注記 JIS C 60695-4:2010の4.268参照。 

3.27 

表面の炎の広がり(surface spread of flame) 

着火(3.22参照)した場所から,液体又は固体の表面に沿って伝わる炎の広がり(3.14参照)。 

注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.318参照。 

3.28 

熱慣性(thermal inertia) 

熱伝導率,密度及び比熱容量の積。 

注記1 例えば,鉄の熱慣性は,2.3×108J2・s−1・m−4・K−2, ポリスチレンフォームの熱慣性は, 1.4

×103J2・s−1・m−4・K−2.である。 

注記2 材料が熱流束にさら(曝)された場合,表面温度の上昇速度は熱慣性の値に強く関係する。

低い熱慣性をもつ材料の表面温度は,その材料が加熱された場合,素早く上昇する。また,

この逆も同様である。 

注記3 熱慣性の標準的な単位は,J2・s−1・m−4・K−2で表す。 

注記4 JIS C 60695-4:2010の3.86を対応国際規格に応じて一部変更 

炎の広がりの原理 

4.1 

液体 

液体表面の炎の広がりは,液体の引火点と燃焼点とによって決まる。引火点は,規定する条件の炎の存

在下で,加熱した液体から発生した蒸気が瞬間的に着火する最低温度である。この場合,引火点は,JIS K 

2265-4に規定するクリーブランド開放式引火点試験によって測定する。 

注記 炎の広がりは,JIS K 2265-4が適用する開放表面上について規定することになるため,試験方

法を規定しておくことが重要になる。引火点を測定する代替方法として,絶縁液体で規定され

ているJIS K 2265-3(ペンスキーマルテンス密閉法)がある。この試験方法は,少量の蒸発物

質について閉鎖空間の中で引火点を測定する。この方法で測定した引火点は,JIS K 2265-4の

クリーブランド開放式引火点試験による引火点よりもかなり低い値となる。 

燃焼点は,液体が着火し,更に燃え続ける温度である。 

表面の炎の広がり速度は,液体温度がその液体の引火点よりも高い場合には,気相の特性(parameter)

によって決まり,液体温度がその引火点よりも低い場合には,液層の特性によって決まる。気相の特性は,

気流,炎及び熱的放射の影響を含む。液相の特性は,対流,表面張力及び粘度を含む。 

C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

4.2 

固体 

固体表面の炎の広がりは,風及び換気という外部因子並びに炎自身が誘起する気流と常に関係がある。

表面の炎の広がりに対して反対の方向への気流(逆風)は,表面の炎の広がり速度を低下させる。そして

表面の炎の広がりと同じ方向への気流(順風)は,表面の炎の広がり速度を増加させる。 

下端で着火した垂直の試料では,炎は頂点の方へと動き,上方への表面の炎の広がりと定義する。上端

で着火した垂直の試験体では,炎は下端の方へと動き,下方への表面の炎の広がりと定義する。水平の試

料では,炎は着火部分から横方向へと動き,横方向への表面の炎の広がりと定義する。 

試験片の着火後,炎が熱分解及び着火を十分な速度で継続するための十分な熱流束[大半が熱ふく(輻)

射である]を熱分解最前部の前方に加えた場合,炎の広がりが起こる。 

熱分解最前部の前方に伝わる熱流束の大きさは,試験片の燃焼発熱速度に関係する。一方,耐着火性は,

試験片の最低着火温度及び表面の加熱速度に関係する。 

表面の温度上昇速度は,次に示す試験片の特性による。 

a) 厚さ 

b) 熱伝導率(κ) 

c) 密度(ρ) 

d) 比熱容量(c) 

厚い試験片では,表面下の材料が熱を伝達するため,表面の温度上昇速度が減少し,耐着火性が高くな

る。薄い試験片では,この効果が大幅に減少するため,耐着火性が低くなる。 

κ,ρ及びcの積は,熱慣性として知られている。固体金属のように熱慣性が高い場合,表面の温度上昇

速度は相対的に低く,したがって,着火温度に至るまでの時間が相対的に長くなる。プラスチック成形品

又は低密度の可燃材料のように,熱慣性が低い場合,表面の温度上昇速度が相対的に高く,したがって,

着火に至るまでの時間が相対的に短くなる。 

ISO/TS 5658-1は,個体の炎の広がりに関する詳細なガイドを提供している。 

試験方法選択のための検討 

5.1 

火災シナリオ 

選択した試験方法は,着目する火災シナリオに相当するものが望ましい。考慮すべき重要な要素には,

次のものが含まれる。 

a) エッジ,角及び接続部の存在を含む試験片の形状 

b) 表面の向き 

c) 炎の広がりの方向 

d) 空気の流れの方向及び速度 

e) 着火源の性質及び位置 

f) 

全ての外部からの熱流束の大きさ及び位置 

g) 可燃材料が固体又は液体であるか 

5.2 

着火源 

試験には,火災シナリオに関連する着火源を用いることが望ましい。実際の電気・電子機器の火災危険

性では,次の2種類の着火源に関係する。 

a) 電気・電子機器及びシステムの内部の異常で局所的な過剰発熱 

b) 電気・電子機器及びシステムに対する外部からの炎又は過剰加熱 

C 60695-9-1:2020 (IEC 60695-9-1:2013) 

5.3 

試料の種類 

製品,組立部品,(製品を代表する)模擬製品,基礎材料(固体又は液体)又は材料を複合したものを試

料としてもよい。ただし,試料の形状,大きさ及び配置は,制限するのが望ましい。 

押出成形又は射出成形した熱可塑性材料のように,異方性をもつ試料もある。 

意図した用法及び実際の設置において,炎の2方向への広がりが火災危険性を示す場合には(例えば,

コンピュータのきょう体),試料を“x”及び“y”の両方向で試験することが望ましい。 

注記 この方法は,通常細長く設置する製品(例えば,電線,電線管)には適用しない。 

5.4 

試験手順及び試験設備 

試験手順は,試験結果が危険分析に役立つように考慮することが望ましい。ただし,品質管理又は規制

の目的だけを意図した簡易試験においては,考慮する必要はない。 

試験装置は,5.3に規定する実際の電気・電子製品,模擬製品,単一材料及び複合材料を試験できる能力

をもつ装置が望ましい。 

試験装置は,試料の着火が起こると予想される部分に,外部熱源又は炎からの熱流束をほぼ均一に当て

る能力をもつことが望ましい。 

外部熱源からの熱流束を加える試験装置は,材料から発生する蒸気−空気混合物を着火させる装置をも

つことが望ましい。その装置は,電気的火花発生器又はガス−空気予混合炎発生器が適している。 

換気のよい状態での表面の炎の広がりの試験は,火災シナリオに関連する換気率の下で行うことが望ま

しい。 

5.5 

測定方法 

5.5.1 

直接測定 

炎の前線の位置を目視で測定する。炎の前線の位置は,時間の関数として記録してもよいし,判定基準

(距離)に対する合否をチェックしてもよい。 

5.5.2 

間接測定 

炎の広がりの速さ又は量を間接的に評価するために,2種類の方法を用いる。 

一つの方法は,指示材料(紙旗,木綿くず又は木綿糸)が燃えたり損傷したりすることに着目する方法

である。これらの指示材料は,試験体の上又は近くの決められた位置に配置する。 

もう一つの方法は,炭化及び損傷を受けた表面の位置及び量に着目する。測定は,時間の関数として記

録してもよく,又は判定基準(距離若しくは面積)に対する合否だけを記録してもよい。 

直接測定及び間接測定は,一般には同等の結果を与えないことに注意する。 

この2種類の方法を用いた表面の炎の広がりの速度と距離との間の,相関関係は,限定的であることが

分かっている。 

結果の用い方及び解釈 

表面の炎の広がりは,材料の熱分解,着火及び燃焼挙動に依存する。材料の燃焼発熱速度が増加するに

つれて,材料表面の炎の広がりが増加し,また,燃焼生成物の発生も増加する。このようにして,特定の

火(火災)において,表面の炎の広がり,燃焼発熱速度,燃焼生成物の発生,燃焼のもつ潜在的危険性及

び消防活動の困難さが共に増加する。 

表面の炎の広がり速度(並びに関連する燃焼発熱速度及び燃焼生成物の発生速度)を決定することによ

って,電気・電子製品の予想される相対的な火災危険性を評価できる。評価は,表面の炎の広がりが遅け

れば遅いほど,予想される潜在的危険性が小さくなるという原理に基づいて行う。表面の炎の広がりがな

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いか又は緩やかであることが常に望ましい。 

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参考文献 

JIS C 3665規格群 電気ケーブル及び光ファイバケーブルの燃焼試験 

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