C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 2
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 3
4 燃焼毒性危険性を決定する要因 ··························································································· 9
4.1 燃焼毒性危険性の評価 ···································································································· 9
4.2 燃焼速度 ······················································································································ 9
4.3 燃焼放出物の毒性 ·········································································································· 9
4.4 分散容量 ····················································································································· 11
4.5 避難時間 ····················································································································· 11
5 燃焼放出ガスによる燃焼毒性危険性を評価するための小規模試験法の一般的な解釈 ····················· 12
5.1 一般 ··························································································································· 12
5.2 物理火災モデル ············································································································ 12
5.3 静的試験方法 ··············································································································· 15
5.4 動的試験方法 ··············································································································· 15
5.5 毒性の測定 ·················································································································· 15
6 試験方法の評価 ··············································································································· 16
6.1 考慮する要素 ··············································································································· 16
6.2 試験片の選定 ··············································································································· 16
7 火災危険性評価への燃焼毒性危険性データの適用 ·································································· 16
参考文献 ···························································································································· 19
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人
日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を改正すべきとの申出があり,日本産業
標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規格である。これによって,JIS C 60695-7-1:
1997は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
C 60695-7-1:2020
(IEC 60695-7-1:2010)
耐火性試験−電気・電子−第7-1部:
火災による毒物危険性を最小にするための指針−
一般指針
Fire hazard testing-Part 7-1: Toxicity of fire effluent-General guidance
序文
この規格は,2010年に第3版として発行されたIEC 60695-7-1を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
電気・電子製品は,火災に巻き込まれる場合があるが,特別な場所(例えば,発電所,大量の物を輸送
するトンネル,データセンター)を除き,通常燃焼毒性危険性の主原因となるほどの量は存在しない。例
えば,一般住宅,公共施設では,通常電気・電子製品からの火災放出物は,家具などから発生する火災放
出物と比較した場合,ごく僅かである。
一連のIEC 60695-7規格群は,ISO/TC 92(火災安全)において進化し続けている火災安全性の原理を対
象にしている。
この規格のガイドは,ISO/TC92/SC3(人身及び環境に対する火災の脅威)が開発したISO 19706に記載
する火災による燃焼毒性危険性に関する火災安全性の原理と整合している。
電気・電気製品の一般的な火災危険性評価の指針は,IEC 60695-1-10及びIEC 60695-1-11が提供してい
る。火災時の避難時間の見積りは,ISO 13571が提供している。火災放出物が死に至らしめる燃焼毒性強
度の決定については,ISO 13344に記載がある。
1989年に,次の視点が,ISO/TR 9122-1に導入された。
現在既知の小規模燃焼毒性強度試験を規制に用いることは,不適切である。それらの試験は,材料の火
災時に毒性雰囲気を生成する性状に関する序列を提供することができない。現在利用可能な全ての試験の
利用は,実規模火災における放出物濃度の経時変化を決定する火災の成長過程及び単に材料として把握す
ることができない電気・電子製品の火災に対する反応を再現することができないことから,限定的である。
燃焼放出物の毒性効果は,燃焼する材料の化学的構造よりも燃焼の速度及び条件に依存することが分かっ
ていることから,これは,重大な弱みとなる。
これらの制限が存在することから,IEC/TC 89(耐火性試験)は,IEC/TS 60695-7-50(廃止)を開発し,
ISO(国際標準化機構)も続けてISO/TS 19700を開発した。これらの標準仕様書は,同一の試験装置を用
いる。この試験装置は実用の小規模試験装置であり,定義した火災の段階を具現化できる燃焼毒性強度を
測定して火災危険性評価に用いるのに適した燃焼毒性強度のデータを取得することができる。両者の方法
は,異なる物理的火災モデルを実現するために,様々な空気流量及び温度を用いるが,ISOの試験方法は,
重要な要素としての等量比の使用を追加している。
2
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
実験的火災及び燃焼毒性の研究の情報に基づいて解析した火災及び火災の犠牲者に関する調査結果は,
異常に高い毒性をもつ化学物質(4.3.4参照)が,それほど重要でなく,一酸化炭素が毒性危険性に影響す
る最も重要な物質であることを示唆している。他の物質としては,シアン化水素,二酸化炭素及び刺激物
が主に重要となる。ISO 13571で考慮する,熱,放射エネルギー,酸欠,煙による視界の低下などの毒性
に関連しない生命への脅威も存在する。JIS C 60695-6-1は,煙による視界低下に関する一般指針を提供す
る。
IEC/TC 89は,火災放出物への暴露レベルを制限するための耐着火性の改良及び火災成長速度の低下を
導く試験及び規制によって,電気・電子製品に起因する毒性危険性を効果的に軽減できると認識している。
1
適用範囲
この規格は,火災に巻き込まれた電気・電子製品が燃焼毒性危険性に及ぼす影響に関する指針及びISO
TC 92/SC 3が推奨するISO 19706,ISO 13344及びISO 13571に基づく火災による燃焼毒性危険性の見積
手法及び低減手法に関する情報を提供する。
燃焼毒性危険性を現実的に評価する単一の試験は存在しない。小規模の燃焼毒性強度試験では,火災に
おける燃焼毒性危険性を評価することはできない。現状の燃焼毒性試験は,研究室レベルで生成する火災
放出物の燃焼毒性強度を評価することを意図している。燃焼毒性強度を燃焼毒性危険性と混同してはなら
ない。
製品安全規格を作成するときは,JIS Z 8051及び IEC Guide 104に従って,基本安全規格(basic safety
publication)を引用することが望ましい。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60695-7-1:2010,Fire hazard testing−Part 7-1: Toxicity of fire effluent−General guidance(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)
は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 60695-4:2010 耐火性試験−電気・電子−第4部−電気・電子製品のための耐火性試験用語
注記1 対応国際規格:IEC 60695-4:2005,Fire hazard testing−Part 4: Terminology concerning fire tests
for electrotechnical products
注記2 JIS C 60695-4:2010は,最新版のIEC 60695-4:2012, Fire hazard testing−Part 4: Terminology
concerning fire tests for electrotechnical productsと該当する事項が一致しない場合がある。両
者で引用する細分箇条に相異がある場合は,IEC 60695-4:2012の細分箇条を併記している。
JIS Z 8051 安全側面−規格への導入指針
注記 対応国際規格:ISO/IEC Guide 51:1999, Safety aspects−Guidelines for their inclusion in standards
IEC 60695-7-2, Fire hazard testing−Part 7-2: Toxicity of fire effluent−Summary and relevance of test
methods
IEC 60695-7-3, Fire hazard testing−Part 7-3: Toxicity of fire effluent−Use and interpretation of test results
IEC Guide 104:1997, The preparation of safety publications and the use of basic safety publications and group
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C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
safety publications
ISO 13344:2004, Estimation of the lethal toxic potency of fire effluents
ISO 13571:2007, Life-threatening components of fire−Guidelines for the estimation of time available for
escape using fire data
ISO 13943:2008, Fire safety−Vocabulary
注記 ISO 13943:2008に規定する用語及び定義が,JIS C 60695-4:2010の附属書JAに記載してある。
ISO 16312-1, Guidance for assessing the validity of physical fire models for obtaining fire effluent toxicity data
for fire hazard and risk assessment−Part 1: Criteria
ISO/TR 16312-2, Guidance for assessing the validity of physical fire models for obtaining fire effluent toxicity
data for fire hazard and risk assessment−Part 2: Evaluation of individual physical fire models
ISO 19701, Methods for sampling and analysis of fire effluents
ISO 19702, Toxicity testing of fire effluents−Guidance for analysis of gases and vapours in fire effluents using
FTIR gas analysis
ISO 19703:2005, Generation and analysis of toxic gases in fire−Calculation of species yields, equivalence
ratios and combustion efficiency in experimental fires
ISO 19706:2007, Guidelines for assessing the fire threat to people
注記 ISO/TR 9122-1:1989, Toxicity testing of fire effluents−Part 1: Generalは廃止され,ISO
19706:2007に切り替えられた。
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次によるほか,JIS C 60695-4及びISO 13943による。
3.1
急性毒性(acute toxicity)
急速に発生する毒性作用を引き起こす毒性。
注記1 燃焼毒性強度(3.36)参照。
注記2 JIS C 60695-4:2010の3.2を対応国際規格に応じて一部変更。
3.2
窒息性物質(asphyxiant)
低酸素を引き起こし,中枢神経系の低下又は心臓血管の影響をもたらし得る毒物。
注記1 意識の損失及び最終的な死が起きる。
注記2 JIS C 60695-4:2010の3.5を対応国際規格に応じて一部変更。
3.3
燃焼する(burn)(自動詞)
自ら燃焼すること。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.28参照。
3.4
燃焼させる(burn)(他動詞)
燃焼を起こさせること。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.29参照。
4
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
3.5
可燃性の(combustible)(形容詞)
着火することができ,燃焼することができること。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.43参照。
3.6
可燃物(combustible)(名詞)
燃焼することができる物質。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.44参照。
3.7
燃焼(combustion)
物資と酸化剤との発熱反応。
注記1 燃焼は,一般に火炎及び/又は赤熱を伴い,燃焼放出物を発生する。
注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.46参照。
3.8
濃度(concentration)
単位容積当たりの質量。
注記1 燃焼放出物の濃度の代表的な単位は,g
m‒3である。
注記2 有毒ガスの濃度は,通常,絶対温度298 Kで,かつ,1気圧のときの体積分率で表し,代表
的な単位はリットル当たりのマイクロリットル,すなわち,cm3/m3又は10−6である。
注記3 温度Tかつ圧力Pにおける気体の濃度は,理想気体の体積分率に,温度Tかつ圧力Pにおけ
る気体の密度を乗じて計算できる。
注記4 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.52参照。
3.9
等量比(equivalence ratio)
空気に対する燃料の比を,化学論理的混合物のために必要な空気に対する燃料の比で除した値。
注記1 標準乾燥空気は,20.95 %の酸素を含有する。 実際には,空気中の酸素濃度が変化し,標準
乾燥空気基準に対する当量比の計算が必要となる。
注記2 等量比は無次元である。
注記3 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.81を対応国際規格に応じて一部変更。
3.10
暴露用量(exposure dose)
気体濃度・時間曲線を積分した面積から算出する吸引する可能性のある燃焼毒性ガス又は火災放出物の
最大量。
注記1 火災放出物としての,代表的な単位は,g
min
m‒3である。
注記2 有毒ガスとしての代表的な単位は,μL
min
L‒1(T =298 K及び P=1 atmにおける)である。
注記3 JIS C 60695-4:2010の3.14を対応国際規格に応じて一部変更。
3.11
火,火災(fire)
<一般>熱及び火炎流出の排出,並びに通常に煙,火炎,白熱又はそれらの組合せによって,通常に付
随している特徴付けられる燃焼の過程。
5
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
注記1 英語でfireは三つの概念を表すものとして用いられる。3.12に示す火及び3.13に示す火災は,
特定の種類の異なる意味を持つ自己燃焼を表す。
注記2 JIS C 60695-4:2010の3.19を対応国際規格に応じて一部変更。
3.12
火(fire)
(制御された)有効な効果が得られるように意図的に設定され,時間及び場所を制限され,自己継続す
る制御された燃焼。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.97を対応国際規格に応じて一部変更。
3.13
火災(fire)
(制御されない)有効な効果が得られるように意図的に設定されたものではなく,時間及び場所を制限
されない,自己継続する制御されない燃焼。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.98を対応国際規格に応じて一部変更。
3.14
燃焼放出物(fire effluent)
燃焼又は熱分解によって生じる気体状,粒子状又はエアロゾル状の放出物の全量。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.23参照。
3.15
火災危険性(fire hazard)
火災による傷害,若しくは生命の喪失,及び/又は財産の損傷が生じる可能性。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.26を対応国際規格に応じて一部変更。
3.16
火災リスク(fire risk)
a) 火災が発生する確率。
b) 火災の結果を数量化した値
注記1 一般に、a)の確率とb)の結果との積によって算出する。
注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.124を対応国際規格に応じて一部変更。
3.17
火災シナリオ(fire scenario)
調査した火災を特徴付ける重要な出来事を特定し,それを他の起こり得る火災と区別する,火災の時間
的変化の定性的な記述。
注記1 一般的には,着火及び火災成長プロセス,最盛期火災段階,火災減衰段階,並びに火災の過
程に影響を与える環境及びシステムを定義する。
注記2 JIS C 60695-4:2010の3.32を対応国際規格に応じて一部変更。
3.18
炎の広がり(flame spread)
炎の前線の広がり。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.36を対応国際規格に応じて一部変更。
6
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
3.19
フラッシュオーバ(flashover)
<火災の段階>エンクロージャ内の可燃性物質の全表面が火災に関与する状態への移行。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.42を対応国際規格に応じて一部変更。
3.20
有効濃度率,FEC(fractional effective concentration)
平均的な感受性をもつ被爆者が影響を受けることが予想される刺激物の濃度比。
注記1 FECは,概念として,行動不能,致死性又は更なる他の終点を含む全ての効果について言及
してもよい。
注記2 特定の刺激物を明示しない場合,FECは燃焼雰囲気中の全刺激物のFECの総和を表す。
注記3 有効濃度率は,無次元である。
注記4 JIS C 60695-4:2010の3.44を対応国際規格に応じて一部変更。
3.21
有効暴露量率,FED(fractional effective dose)
平均的な感受性をもつ被爆者が影響を受けることが予想される窒息性物質の暴露量比。
注記1 FEDの概念は,行動不能,致死性又は更なる他の終点を含む全ての効果について言及するも
のである。
注記2 特定の刺激物を明示しない場合,FEDは燃焼雰囲気中の全刺激物のFEDの総和を表す。
注記3 有効暴露量率は,無次元である。
注記4 JIS C 60695-4:2010の3.45を対応国際規格に応じて一部変更。
3.22
最盛期火災(fully developed fire)
全ての可燃性物質が火災に関与する状態。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.164を対応国際規格に応じて一部変更。
3.23
過換気(hyperventilation)
通常より過大な呼吸の速さ及び/又は深さ。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.50参照。
3.24
着火(ignition)
望ましくない着火が継続する状態。
<一般>燃焼が開始すること。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.187を対応国際規格に応じて一部変更。
3.25
行動不能(incapacitation)
特定の行動を達成することが物理的に不可能な状態。
注記1 例えば,火災から避難するための効果的な行動ができない状態。
注記2 JIS C 60695-4:2010の3.52を対応国際規格に応じて一部変更。
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C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
3.26
刺激物(irritant)(名詞)
<感覚/上気道>眼,鼻,口,のど及び呼吸器系統の神経受容体を刺激して,生理的防御反応を伴い様々
な程度の不快感又は痛みを引き起こすガス又はエアロゾル。
注記1 生理的防御反応には,反射性まばたき,涙,せき(咳)及び気管支収縮を含む。
注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.203を対応国際規格に応じて一部変更。
3.27
刺激物(irritant)(名詞)
<肺>呼吸に不快感をもたらすことがある下気道の神経受容器を刺激するガス又はエアロゾル。
注記1 呼吸の不快感には,呼吸困難及び呼吸回数の増加がある。重傷の場合には,肺炎又は肺水し
ゅ(腫)(致命的なこともある)が暴露後数時間たって起きることもある。
注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.204を対応国際規格に応じて一部変更。
3.28
50 %致死暴露量,LCt50(lethal exposure dose 50)
LC50と決められた暴露時間との積。
注記1 LCt50は,致死燃焼毒性強度の尺度である。
注記2 火災放出物としての,代表的な単位は,g
min
m‒3である。
注記3 有毒ガスとしては,代表的な単位は,μL
min
L‒1(T=298 K 及び P=1 atmにおける)であ
る。
注記4 JIS C 60695-4:2010の3.55を対応国際規格に応じて一部変更。
3.29
物理火災モデル(physical fire model)
火災のある過程の表現を意図した装置,環境及び火災試験手順を含む試験過程。
注記 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.252参照。
3.30
熱分解(pyrolysis)
熱の作用による物質の化学分解。
注記1 熱分解は,燃焼が始まる前に火,火災の段階を参照するためにしばしば用いられる。
注記2 火災科学では,酸素の有無に関する仮定は行われない。
注記3 JIS C 60695-4:2010の3.70を対応国際規格に応じて一部変更。
3.31
小規模試験(small-scale fire test)
寸法の小さな試験片に対して実施する火災試験。
注記1 最大寸法が1m未満である供試品によって行われる火災試験は,通常小規模火災試験と呼ば
れる。
注記2 JIS C 60695-4:2010の3.77を対応国際規格に応じて一部変更。
3.32
煙(smoke)
火災流出の可視部分。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.79を対応国際規格に応じて一部変更。
8
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
3.33
毒性の(toxic)
毒であること。
注記1 毒性物質は生物に悪影響を及ぼす。 刺激,麻酔又は死亡。
注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.336を対応国際規格に応じて一部変更。
3.34
有毒ガス(toxic gas)
有毒な蒸気。
注記1 火災放出物については,この用語は通常,単一の化学元素又は化合物に適用される。
注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.337を対応国際規格に応じて一部変更。
3.35
燃焼毒性危険性(toxic hazard)
有毒な燃焼生成物への暴露による害の可能性。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.91を対応国際規格に応じて一部変更。
3.36
燃焼毒性強度(toxic potency)
特定の毒物作用を起こすのに必要な毒物の量の目安。
注記1 毒性強度の値が小さいほど,毒性は高い。
注記2 ISO 13943:2008の定義169を変更している。
注記3 JIS C 60695-4:2010の3.92参照。
3.37
燃焼毒性リスク(toxic risk)
次の乗算の結果。
− 所与の技術的操作又は状態において予想される有害危険性の発生確率。
− 燃焼毒性有害性の発生に予想される傷害の結果又は程度。
注記1 燃焼毒性リスクは火災リスクの一部である。
注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.340を対応国際規格に応じて一部変更。
3.38
毒物,有毒物(toxin)
有毒な物質。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.89を対応国際規格に応じて一部変更。
3.39
毒性,有毒性(toxicity)
毒の特性。
注記 JIS C 60695-4:2010の3.90を対応国際規格に応じて一部変更。
3.40
体積分率(volume fraction)
<混合気体中の気体>次の比。
− 規定する温度及び気圧である気体が単独で占めることであろう体積。
− 同じ温度及び気圧での混合気体が占める体積。
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C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
注記1 ある温度T及び圧力Pにおける混合気体中の気体の濃度は,理想気体として挙動すると仮定
するとその体積分率にその温度T及び圧力Pにおける密度を乗ずることによって求めること
が可能である。
注記2 他に規定がない場合,298 K及び1気圧を仮定する。
注記3 体積分率は,無次元であり,通常 cm3/m3(又は 10‒6)に等しいリットル当たりのマイクロ
リットル(μL/L)又は百分率で表す。
注記4 JIS C 60695-4:2010の3.96を対応国際規格に応じて一部変更。
3.41
生成速度,収率(yield)
燃焼中に生成される燃焼生成物の質量を,試験片の喪失質量で除した値。
注記1 生成速度又は収率は,無次元である。
注記2 JIS C 60695-4:2010,附属書JAの4.355参照。
4
燃焼毒性危険性を決定する要因
4.1
燃焼毒性危険性の評価
火災による燃焼毒性危険性の評価に関する主な論題は,次による。
a) 製品の燃焼又は熱分解した量に応じた毒性の割合
b) その燃焼放出物の毒性
c) その燃焼放出物の拡散量
d) 避難の障害
4.2
燃焼速度
生成される放出物の量は,燃焼又は熱分解された生成物の量に比例する。放出物の発生比率は,燃焼速
度又は熱分解速度によって決まる。したがって,燃焼毒性危険性を最小限に抑えるためには,着火し難く
し,燃焼速度を低下すること,すなわち,火災成長速度及び火炎拡散速度を低下することが必要となる。
4.3
燃焼放出物の毒性
4.3.1
一般
燃焼放出物は,固体微粒子,液体エアロゾル及びガスの複雑な混合状態で構成されている。火災は多様
な異なる組成の放出物を生成するが,急性毒性の原因の中でガスが主要因であることを毒性試験が明らか
にしている。顕著な急性毒性影響は,次の二つに分類できる。
a) 窒息作用
b) 感覚刺激及び/又は上気道刺激
窒息作用については4.3.2に記載する。感覚刺激及び/又は上気道刺激については4.3.4に記載する。
注記 ISO 13344は,30分間の致死率FED値の計算式に,幾つかの式を与えている。これらの式はラ
ットにおける30分間でのLC50値(致死率50 %に対応する指数)を用いて窒息性と刺激性の両
方を述べている。ISO 13571では,そのような式を用いる場合,行動不能を致死性に関連付け
る場合にはLCt50の半分の値を近似的な暴露用量とすることを推奨している。
他に,毒性ではないが重要な生命への脅威がある。これらには,熱及び放射エネルギーの影響,酸素濃
度低下の影響,煙の遮光による視界低下の影響が含まれる。
多くの技術的研究によって,大半の製品及び材料は,同様の毒性強度をもつ火災様相を示すことが広く
認識されている。異常に高い毒性をもつ物質が火災において重要であるという証拠は見つかっていない。
10
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
火災において可燃性燃料を想定する場合,性質と相対量が特定されていない材料と製品とが混在する場
合が多い。このような場合,燃焼毒性危険性を推定するためには,“一般的な”LCt50値として,換気支配
型火災発展シナリオとして,フラッシュオーバ前においては900 g・min・m−3,フラッシュオーバ後におい
ては450 g・min・m−3を用いる場合がある(参考文献[3],[4]及び[5]参照)。在館者又は搭乗者(輸送移動体
の場合)の避難の評価のためにISO 13571では,それぞれを450g・min・m−3及び220g・min・m−3の値を推奨
している。
試験データでは,電気・電子製品からの燃焼放出物が,他の材料又は製品(例えば,家具及び建築材料)
からの燃焼放出物よりも毒性が大きいということは示されていない。ISO 19706では,参考文献[5],[6],
及び[7]を追加のデータとして提供している。
4.3.2
窒息性
窒息は,火災における死因の主な原因である。窒息性物質は,低酸素(生体内組織に供給する,又は組
織内で用いる酸素の減少)を引き起こす毒性物質であり,意識消失を伴う中枢神経系の機能低下を引き起
こし,最終的には死に至る。これらの毒性物質の影響は,累積した吸収量に依存しており,すなわち,濃
度と暴露時間(又は,暴露している期間)との両方に依存する。用量の増大に伴い,その影響による重症
度も増大する。火災燃焼ガスの毒性物質の中で一酸化炭素(CO)及びシアン化水素(HCN)は最も多くの
研究があり,暴露された人の行動不能及び死に至る原因となる量的限度値(限界量)について最もよく分
かっている(参考文献[8]及び[9]参照)。
燃焼毒性危険性分析において窒息性物質の成分を算定評価するための基本的な事項は,それぞれの毒性
物質の暴露用量,すなわち,それぞれの濃度−時間曲線の積分面積(ISO 13571参照)である。それぞれ
の窒息性物質の時間積分が,それぞれの有効暴露量率(FED)を決定する。それらの累積合算量(積分量)
が規定したしきい(閾)値を上回るまでの時間が,選定する安全基準において,避難可能な時間を意味す
る。
一酸化炭素については,行動不能となる用量(体積分率×時間)は0.035分間である(参考文献[10]参照)。
シアン化水素については,行動不能となる用量は一定ではなく,体積分率によって変化する量である(参
考文献[8]参照)。 30×10−6から400×10−6までの範囲の体積分率について得られたデータの実証分析は,
指数関数式を用いてFEDを計算することが可能であることを示している
(
)
t
X
FED
t
t
HCN
∆
×
×
=∑
−
2
1
5
min
220
10
3.4
/
exp
ここに,
XHCN: 時間増分ΔtにおけるHCNの平均体積分率
(ISO 13571参照)。
30×10−6以下の体積分率では,次の式を用いる必要がある
(
)
∑
∆
×
×
=
−
2
1
1
min
4.
304
t
t
t
X
FED
HCN
4.3.3
二酸化炭素
二酸化炭素(CO2)の体積分率が0.02を超えるとexp(XCO2 / 0.05)の因子,すなわち,二酸化炭素の体
積分率が時間増分ΔtにおけるCO2の平均体積分率(XCO2)に等しくなる状態を表す過換気によって窒息性
物質の実効暴露用量が増大すると考えられる(ISO 13571参照)。
11
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
4.3.4
感覚刺激物及び/又は上気道刺激物
感覚刺激及び/又は上気道刺激は,目,鼻,喉及び上気道の神経受容体を刺激する。濃度だけに関連付
ける場合,その影響は,眼及び上気道の軽度の不快感から始まり,激しい痛みになるまで連続して起こる。
これらの急性な影響は,安全な避難の脅威となる可能性がある。
十分に高い濃度では,ほとんどの感覚刺激物及び/又は上気道刺激物は肺に深く浸透して,濃度と暴露
期間(すなわち,用量)との両方に一般的に関係性をもつ肺の炎症効果を引き起こす。一般に,これらの
影響は重大ではないため,安全な避難を脅かすものとはみなされない。しかしながら,肺の炎症は暴露後
の呼吸困難及び肺水腫が原因で暴露後の数時間から数日までに死に至る場合もある。
燃焼毒性危険性分析における刺激性ガス成分を算定評価するための基本的な原理は,各刺激性物質の濃
度だけが対象である。特定の時間おけるそれぞれの刺激物濃度の増加量が,それぞれの有効濃度率(FEC)
を決定する。それらの合算量が規定したしきい(閾)値を上回るまでの時間が,選定した安全基準におけ
る避難可能な時間を意味する。
幾つかの重大な刺激物から避難する時,有効な避難手段を講じようとする在館者又は搭乗者(輸送移動
体の場合)の能力を著しく損なうことを予想する刺激物の体積割合(F値)を表1に示す(ISO 13571参
照)。
表1−刺激物の体積割合(F値)(ISO 13571から抜粋)
刺激物
F値×106
アクロレイン
30
二酸化硫黄
150
ホルムアルデヒド
250
二酸化窒素
250
フッ化水素
500
臭化水素
1 000
塩化水素
1 000
ISO 19701は,これらのガス種の分析方法に関する指針を提供している。
4.3.5
異常に高い毒性及び極度の毒性強度
異常に高い毒性とは,火災において(すなわち,窒息性又は刺激性を除く)通常ではあり得ない毒性影
響をもつタイプの生成物質群の毒性を示す。序文で述べているように,異常に高い毒性をもつ生成物質群
が,火災において重要であるという報告はない。極端な毒性強度とは,生成物質の毒性が,通常の火災放
出物の毒性よりも質量ベースではるかに大きいことを示唆している。
これまでのところ,極度な毒性強度に起因した危険性が伴う火災事例の記録はない。
4.4
分散容量
放出物を希釈するとその毒性は低下するため,燃焼毒性危険性を評価するためには,放出物が分散する
容量を既知量とするか,又は仮定しなければならない。
4.5
避難時間
火災での避難を許容する時間を超える時間帯では,在館者又は搭乗者(輸送移動体の場合)が自らの避
難を実行する時の有効な手段を講じることができなくなる。この時間は,次の事項から見積った異なる時
間の中で,最短の時間となる。
a) 窒息性の火災ガス
12
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
b) 刺激性の火災ガス
c) 熱
d) 煙による視力低下
ISO 13571は,火災データを利用して避難を許容する時間を見積るための指針を提供する。
5
燃焼放出ガスによる燃焼毒性危険性を評価するための小規模試験法の一般的な解釈
5.1
一般
小規模の毒性試験は,基本的に次の二つで構成する。
a) 望ましくは,火災のある特定の段階での生成する燃焼放出物と同じ相対組成をもつ燃焼放出物が発生
する分解条件(物理火災モデル−5.2参照)。
b) 燃焼放出物を制御した方法で動物に暴露し,その応答をモニタリングできる評価方法又は燃焼放出物
の化学分析を行い,その濃度から毒性強度を推定できる毒性強度の評価又は毒性強度を計算する燃焼
放出物の評価方法。
IEC 60695-7-2は,致死性及び亜致死性の急性毒性強度及び他の毒性試験の評価において一般的に用いる
試験方法をまとめている。これは,火災シナリオと関連する特別な所見を含み,その使用に関する推奨事
項を示している。
ISO 16312-1は,燃焼放出物の毒性データを得るための物理火災モデルの妥当性を評価するための指針
を提供し,ISO/TR 16312-2は,ISO 16312-1に示した基準を用いて12種類の試験方法を評価している。
幾つかの方法では,試験中のその材料の質量損失と観察した毒性影響(作用)又は毒性濃度とを関連付
けることができる。この情報がない場合,得たデータを既定の火災シナリオにおける燃焼毒性危険性評価
に用いることが不可能となる。これは,小規模毒性強度試験が燃焼毒性危険性を評価できない理由となっ
ている。 毒性強度データは,燃焼毒性危険性を推定するために,個別に決定された燃焼データ及び他の関
連データ(例えば,想定される分散量:分布が想定される拡散量)と組み合わせなければならない。
燃焼毒性強度を燃焼毒性危険性と混同してはならない。
ISO 19706の4.3において,“人々への燃焼放出物の影響は,放出物源としての可燃物だけに依存するの
ではないことから,燃焼放出物組成データを火災の危険性又は危険性の指標として単独で用いるのではな
く,火災の危険性評価又はリスク評価をとおして施設,火災及び人に関する追加情報と組み合わせなけれ
ばならない。”と述べている。
着火の可能性の低減とその後の炎の広がり速度の低下は,燃焼毒性危険性が低下する主要な検討事項で
ある。
5.2
物理火災モデル
既知の物質から発生する燃焼放出物の組成は,その物質の固有な性質ではなく,その物質が燃焼する条
件に極めて依存する。したがって,燃焼毒性生成物の収率及び燃焼放出物の毒性強度は,燃焼条件に依存
する。燃料の化学組成,分解温度及び換気量は,燃焼放出物の組成,すなわち,毒性強度に影響を及ぼす
主な変数である。
これらの変数は,炭素の酸化物への酸化効率[重要となるCO2 / CO比に関連する一酸化炭素(CO)及
び二酸化炭素(CO2)]に作用するため,決定的な影響を与える。低いCO2/CO比は,一酸化炭素の割合が
高いことを示しており,結果として燃焼毒性強度値が低いことを示す(すなわち,毒性放出物が高いこと
を示す)。
ISO 19703は,毒性生成物の収率を当量比として,火災条件を燃焼効率として計算するための定義及び
13
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
式を示している。さらに,実際の事例の計算例を提供している。これらの方法は,時間分解データが入手
できる実験的な火災に対して瞬間値又は平均値のいずれかを得るために使用可能である。
標準化した試験方法を規定した試験条件(物理火災モデル)が適切であり,火災で予想する段階を再現
していることを示すことは必須である。ISO 19706は,表2に示す火災の種類の一般的分類を公開してい
る。燃焼放出物の毒性強度に影響を与える重要な要因は,酸素濃度及び放射量(irradiance)/温度である。
この表から試験室規模の試験では,用いる試験条件を実規模火災に可能な限り対応するように導き出すこ
とができる。ただし,火災は一連の物理的及び化学的現象の複雑で相互に関係した一連の現象を伴う結果
であるため,試験室規模の装置では火災の全ての側面を模擬することは困難である。この物理火災モデル
の有効性の問題は,全ての火災試験に伴う最も困難で唯一の技術的課題である。
着火後,環境条件に加え可燃物の物理的配置次第で,異なる方法で火災が成長することがある。ただし,
一般的な温度−時間曲線は,三つの段階と衰退段階とを示しているので(図1を参照),区画内での火災
成長を一般的なパターンとして確立することが可能となる。
第一段階(無炎燃焼分解)は,持続的な有炎燃焼(火炎燃焼)の前段階としての火災の初期段階であり,
火災室温度はほとんど上昇しない。この段階では,煙及び毒性の放出生成物が主な危険性である。この段
階では,火災の種類1a),1b)及び1c)の全てが発生する可能性がある。第二段階(火災成長期)は,着火で
始まり,火災室温度が指数関数的に上昇する。この段階では,炎の広がり,発熱,煙及び毒性放出物が主
な危険性である。火災の種類2はこの段階に対応している。第三段階(最盛期火災)は,部屋の全ての可
燃性物の表面が分解し,部屋全体に一気に着火が起こり,急激な温度上昇が始まる。(フラッシュオーバ)
火災の種類3b)はこの段階に対応している。
第三段階の終わりでは,可燃物及び/又は酸素の大部分を消費するため,換気,並びにそのシステムの
熱及び質量の移動特性に依存する速度で温度が低下する。これが衰退段階として知られている。
これらの段階のそれぞれにおいて,分解生成物は,異なる混合物を形成し,その段階で生成する燃焼放
出物の毒性の性質などに影響する。
第一段階
無炎燃焼
第二段階
火災成長期
第三段階
最盛期火災
衰退段階
着火
フラッシュオーバ
時間
区
画
内
温
度
火災の種類
1a), 1b) 及び1c)
換気支配型
有炎燃焼
火災の種類
2
火災の種類
3b)
図1−区画内での火災の成長が異なる様相
14
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
表2−火災の種類ごとの特徴(ISO 19706から抜粋)
火災の種類
燃料表面へ
の熱流束
kW/m2
最高温度
℃
酸素
体積%
燃料/空気
等量比
(上昇流)
CO/CO2
体積比
100×CO2
(CO+CO2)
%効率
燃料表面
上層
流入
流出
1 無炎
a) 自己継続(くすぶり)
該当しない
450〜800
25〜85d
20
0.2
−
0.1〜1
50〜90
b) 外部熱放射による酸化を伴う熱分解
−
300〜600a
b
20
20
<1
c
c
c) 外部熱放射による嫌気性の熱分解
−
100〜500
b
0
0
≫1
c
c
2 良好な換気の下の有炎燃焼
0〜60
350〜650
50〜500
≒20
0.2
<1
<0.05e
>95
3 換気の悪い状態での有炎燃焼f
a) 換気状態の悪い区画での小さな局所的な火災
0〜30
300〜600a
50〜500
15〜20
5〜10
>1
0.2〜0.4
70〜80
b) フラッシュオーバ後の火災
50〜150
350〜650g
>600
<15
<5
>1h
0.1〜0.4i
70〜90
a 上限は換気状態のよい燃焼を下回る。
b 火災室の上層の温度はほとんどの場合,外部熱放射源及び部屋の形状によって決まる。
c データ数は少ない。しかし熱分解では,この比は,材料の化学的性質,換気及び熱的条件に非常に大きく影響される。
d 火災による酸素消費は,部屋又は流入空気の酸素量に対して小さい。炎の先端は,上層の熱いガスの下にあるか又はCO収量が大幅に増加するまでの大きな
上層の低下はない。他の物体との接触によって炎の先端が切り取られることはない。燃焼速度は,燃料の供給力に制御される。
e この比は,耐火性材料の場合一桁高くなる。等量比が約0.75まではこの比は大きく増加することはない。約0.75から1までの間では,幾らかの増加が起こ
り得る。
f 火災の酸素要求は,換気口によって制限される。炎は,上層まで延びる。
g 換気状態のよい有炎燃焼の場合と同様とみなす。
h 上昇流等量比は,測定されていない。全体的な等量比の使用は,不適切である。
i より低い比も測定されている。一般的にこれらの結果は部屋の通気口外部の二次的燃焼によるものである。
2
C
6
0
6
9
5
-7
-1
:
2
0
2
0
(I
E
C
6
0
6
9
5
-7
-1
:
2
0
1
0
)
15
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5.3
静的試験方法
静的試験では,試料(試験体)を密閉したチャンバー内で燃焼し,チャンバー内では生成した放出物が
時間の経過とともに増大する。幾つかの試験では,層の分離を防ぐために放出物をファンでかくはん(攪
拌)し均質にする。その後に分析のために放出物のサンプル採取を行う。
5.4
動的試験方法
動的試験では,試料(試験体)からの放出物を,吸引流量を実測しながら吸引システムで吸引する。分
析のためにサンプルの採取を行うか,又は赤外分析システムを用いて連続測定することが可能である。
5.5
毒性の測定
5.5.1
一般
燃焼放出物の毒性に関する初期の研究は,主に火災ガスの化学分析に基づいており,個々のガスの毒性
強度に関するデータが不十分であり,分解温度及び換気の効果に関する理解が不十分であっために結論を
誤ることが多かった。
1970年代から1980年代前半までの研究は,燃焼放出物の個々の成分間の潜在的な相互作用の完全な理
解を基礎として動物実験に絞り,異常に高い毒性を示す製品の存在の可能性を動物の暴露によってだけ判
断することが可能であった。
この研究の結論では,燃焼放出物の成分間にはある程度の相互作用はあるが,燃焼放出物中には異常に
高い特異な毒性を示す生成物が存在する例はなかったとしている。大半の物質からの燃焼放出物の毒性強
度は,1桁半以内であることが明らかになっている。
この結論はまた,化学分析の結果,及び動物実験で得ている毒性学的データに基づいて,妥当な程度で
の正しさで火災ガス混合物の有害強度を計算することは可能である。特定の燃焼放出物の基礎となる毒性
学的データが入手できない場合には,動物を用いた実験を限定的に利用することは必要という認識されて
いる。ただし,毒性強度を日常的に測定する場合では,動物使用の必要性を回避できるとしている。
5.5.2
化学分析に基づく方法
化学分析に基づく方法は,物理火災モデルによって生成された燃焼放出物中の様々なガスの濃度を静的
又は動的に測定するために従来の試験室(レベルの)分析技術を利用するものである。方法には,検知管,
湿式化学分析のための燃焼放出物のサンプリング,フーリエ変換及び非分散を含む赤外線(IR)分光法,
ガスクロマトグラフィー質量分析,及びイオンクロマトグラフィーが含まれる。
ISO 19701は,サンプリング方法と燃焼放出物の分析方法を記載している。ISO 19702は,フーリエ変換
IR(FTIR)を用いた燃焼放出物中のガス及び蒸発物の分析に関する指針を示している。
化学分析を用いた技術の精度に重大な影響を与える,次に示す幾つかの要因がある。
a) 分析対象として選定した放出物の種類は,試験材料の組成の知識に基づいて,放出するだろうと合理
的に予想できる種類を十分に網羅しなければならない。
全ての場合において,二酸化炭素,一酸化炭素及び酸素を測定することが望ましい。
b) 測定したガス濃度を試験体の単位減少質量当たりの濃度に変換するために,信頼できる試験中の試験
体の質量減少の信頼できる評価が必要である。
c) 測定したガス濃度及び質量減少データを毒性強度値に変換することが可能でなければならない。計算
方法については,IEC 60695-7-3を参照。
5.5.3
動物への暴露に基づく評価方法
IEC/TC 89においては,動物試験に基づく評価方法について,さらなる研究を行うことは想定していな
い。
16
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
6
試験方法の評価
6.1
考慮する要素
物理的火災モデル又は評価対象の危険性に最も関連するモデルを考慮すること,及び評価対象と同様の
物理的火災モデルをもつ試験方法を選定することが重要である(IEC 60695-7-2及びISO/TR 16312-2参照)。
試験方法の選定においては,検討対象のそれぞれの試験方法について次の事項に関して評価することが
望ましい。
・ 製品試験の場合,評価対象製品の形状及び配置に適応可能である
・ 試験方法は,意図する火災の段階を再現している
・ 試験は,十分な差別化及び分解能をもつ適切な形式でデータを提供する
これらのいずれかが実現できない場合は,検討対象の試験方法を修正する必要がある。又は代替試験方
法を検討することが望ましい。
図2のフローチャートに,既存の試験方法を新たに適用する際の妥当性評価のためにたど(辿)る段階
の概要を示す。
6.2
試験片の選定
異なる種類の試験片を試験してもよい。小規模燃焼毒性試験においては,試験片は基礎材料(固体又は
液体)又は複合材料である場合が多い。このような場合,試験条件はできる限り関連する火災シナリオで
材料がさら(曝)される条件を選定するのが望ましい。
製品試験では,試験片は製造した製品となる。模擬製品の試験では,試験片は製品を代表する部分とな
る。
試験規模は,試験片の性状による。小規模試験は,材料及び寸法が小さい製品又は寸法が大きい製品を
代表する試料品の試験に適している。大規模試験では,製品全体を試験することができる。選択肢がある
場合は,常に最終使用を最も忠実に反映した試験片を選定することが望ましい。
7
火災危険性評価への燃焼毒性危険性データの適用
火災危険性評価における火災安全工学の使用は,ISO/TC 92及びIEC/TC 89が開発中である。このよう
な火災安全に係る意思決定の助けとなる火災危険性評価は,合否判定に使用することを意図して開発した
個々の既存試験規格のもつ考え方とは異なるものである。毒性強度に特化した試験を合否判定に用いるこ
とはできないが,その試験結果は,他の火災試験データとともに燃焼毒性危険性の総合的な分析に用いる
ことが可能である。
燃焼毒性危険性の大きさに影響する最も重要な要因は,生成する放出物の量である。これは,着火のし
やすさ及び火災成長速度に支配される火災の規模に比例する。したがって,この規格では,火災による燃
焼毒性危険性を最小化する(すなわち,生命安全性の向上)ためには,着火を遅くすること及び火災成長
速度を低下することによって達成することを,現状では推奨する。これらの要素によって,酸素減少速度,
発熱速度及び煙生成速度も低下する。
火災放出物の毒性強度データが危険分析に適用できない場合,毒性強度は,現段階では全ての火災シナ
リオにおいて共通のものとして扱うことが望ましい。重量減少モデルを基本とした初期の分析では,燃焼
毒性危険性は,発散する放出物の算出量に比例するものとして考慮することが望ましい。
製品の燃焼特性の現実的な評価は,実際に使用する形態及び配置の実規模試験片の試験によってだけ可
能となる。製品の最終使用を代表していない個々の小規模試験は,選定した物理的火災モデルに対する製
品の反応だけを示すものである。通常の状況においては,いかなる火災試験も単独では,火災危険性を測
17
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
定することは不可能である。また個別の標準火災試験での満足する結果が,欲する安全性レベルを担保す
るものと仮定することは不可能である。様々な火災試験の結果が,火災危険性の決定及びそれに続く制御
を支援する情報を提供する。
18
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
図2−毒性試験方法の評価及び考慮
開始
候補試験を選択
試験を採用
新しい試験の開発
試験を修正
ラウンドロ
ビンプログ
ラムを実施
試験を修正
フォーマッ
ト又は分解
能を変更す
る。
方法の改善
方法を更に改
善できるか?
結果は受入可
能か?
試験方法は最初
の方法から大幅
に変更されてい
るか?
フォーマット
又は分解能を
改善できる
か?
試験は,十分な差
別化及び分解能
をもつ適切な形
式のデータを提
供するか?
制限を克服す
るために試験
を修正できる
か?
試験は意図する
火災の段階を再
現するか?
制限を克服する
ために試験を修
正できるか?
試験が製品試験
の場合,代表的な
形状及び構成の
製品を収容でき
るか?
他の候補試験
が利用可能
か?
はい
はい
はい
はい
はい
はい
はい
はい
いいえ
いいえ
いいえ
いいえ
いいえ
いいえ
はい
いいえ
いいえ
いいえ
はい
いいえ
19
C 60695-7-1:2020 (IEC 60695-7-1:2010)
参考文献
[1] ISO/TS 19700:2007,Controlled equivalence ratio method for the determination of hazardous components of
fire effluents
[2] JIS C 60695-6-1 耐火性試験−電気・電子−第6-1部:煙不透過性−一般指針
注記 対応国際規格:IEC 60695-6-1:2001,Fire hazard testing−Part 6-1: Smoke opacity−General
guidance
[3] Peacock, R.D., Jones, W.W., Bukowski, R. W., and Forney, C. L., Technical Reference Guide for the HAZARD
I Fire Hazard Assessment Method, Version 1.1., NIST Handbook 146, Volume II, National Institute of Standards
and Technology, Gaithersburg, MD (1991)
[4] Gann, R. G., Averill, J. D., Butler, K., Jones, W. W., Mulholland, G. W., Neviaser, J. L., Ohlemiller, T. J.,
Peacock, R. D., Reneke, P. A., and Hall, J. R., Jr., International Study of the Sublethal Effects of Fire Smoke on
Survival and Health: Phase I Final Report, Technical Note 1439, National Institute of Standards and Technology
(2001)
[5] Anderson, R. A.; Willetts, P.; Cheng, K.N. and Harland, W.A. Fire Deaths in the United Kingdom, 1976-82.,
Fire and Materials, 7 (2), pp. 67-72 (1983)
[6] Kaufman, S.; Refi, J.J., and Anderson, R. C., USA Approach to Combustion Toxicity of Cables., Plastics and
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[7] Purser, D.A., Proceedings of the First International Fire and Materials Conference, Washington, USA. 24-25
September 1992, p. 179-200. ISBN 0 9516320 2 7
[8] Purser, D. A., Toxicity Assessment of Combustion Products, in the "SFPE Handbook of Fire Protection
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[9] Hartzell, G. E., Combustion Products and Their Effects on Life Safety, in the "Fire Protection Handbook", A. E.
Cote, Ed., 18th ed., National Fire Protection Association, Quincy, MA, Sect. 4, p. 10-21 (1997)
[10] Kaplan, H. L., Grand, A. F., Switzer, W. G., Mitchell, D. S., Rogers, W. R. and Hartzell, G. E., Effects of
Combustion Gases on Escape Performance of the Baboon and the Rat, J. Fire Sciences, 3 (4), p. 228-244 (1985)
[11] JIS C 60695-1-101) 耐火性試験−電気・電子−第1-10部:電気・電子製品の火災危険性評価のための
指針−一般指針
注記 対応国際規格:IEC 60695-1-10,Fire hazard testing−Part 1-10: Guidance for assessing the fire
hazard of electrotechnical products−General guidelines
[12] IEC 60695-1-112),Fire hazard testing−Part 1-11: Guidance for assessing the fire hazard of electrotechnical
products−Fire hazard assessment
[13] IEC/TS 60695-7-502),Fire hazard testing−Part 7-50:Toxicity of fire effluent−Estimation of toxic potency−
Apparatus and test method
注1) これらの出版物は,この規格では参照しないが,採番した。
2) 検討中