C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲及び目的 ············································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 空間距離及び沿面距離の規定値の決定ルール ········································································· 3
4.1 (対応国際規格の序文を削除した。) ················································································· 3
4.2 基本原則 ······················································································································ 3
4.3 電圧及び電圧定格 ·········································································································· 4
4.4 周波数 ························································································································· 5
4.5 電圧ストレスの加わる時間······························································································· 5
4.6 汚損 ···························································································································· 5
4.7 機器とともに提供される情報···························································································· 6
4.8 絶縁材料 ······················································································································ 6
5 要求事項及び規定値の決定ルール ························································································ 7
5.1 一般事項 ······················································································································ 7
5.2 空間距離の規定値の決定 ································································································· 7
5.3 沿面距離の規定値の決定 ································································································ 11
5.4 固体絶縁物の設計要求 ··································································································· 16
6 試験及び測定 ·················································································································· 18
6.1 試験 ··························································································································· 18
6.2 沿面距離及び空間距離の測定··························································································· 24
附属書A(参考)絶縁抵抗を維持するための距離の決定······························································ 25
附属書B(規定)水分吸着試験 ······························································································ 27
附属書C(参考)規定値の決定図 ··························································································· 31
附属書D(参考)湿度条件下での沿面距離の耐電圧試験······························································ 34
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人電気学会(IEEJ)及び財団法人日本規
格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会
の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責
任はもたない。
JIS C 60664の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 60664-1 第1部:基本原則,要求事項及び試験
JIS C 60664-3 第3部:汚損保護のためのコーティング,ポッティング及びモールディングの使用
JIS C 60664-4 第4部:高周波電圧ストレスの考慮
JIS C 60664-5 第5部:2 mm以下の空間距離及び沿面距離を決定するための包括的方法
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
C 60664-5:2009
(IEC 60664-5:2007)
低圧系統内機器の絶縁協調−
第5部:2 mm以下の空間距離及び沿面距離を
決定するための包括的方法
Insulation coordination for equipment within low-voltage systems−
Part 5: Comprehensive method for determining
clearances and creepage distances equal to or less than 2 mm
序文
この規格は,2007年に第2版として発行されたIEC 60664-5を基に,技術的内容及び対応国際規格の構
成を変更することなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲及び目的
この規格は,空間距離及び沿面距離が同一で,JIS C 60664-1の6.2に記載されている経路(JIS C 60664-1
の例1,例5及び例11)のような固体絶縁物の表面に沿った,プリント配線板及び同等の構造物に対する
2 mm以下の間隔をもつ空間距離及び沿面距離について規定する。
この規格における距離の規定値は,JIS C 60664-1に規定されているものよりも厳密である。ただし,こ
の規格が規定する精度が要求されていなければ,代わりにJIS C 60664-1を適用してもよい。
この規格は,部分的に使用することはできない。この規格から一つ又は複数の箇条を選択して,それを
JIS C 60664-1の対応する箇条の代わりに使用してはならない。さらに,この規格は,JIS C 60664-1と併
せて使用しなければならない。
この規格を2 mm以下の空間距離及び沿面距離の規定に適用する場合は,すべての箇条を,JIS C 60664-1
の対応する箇条の代わりに使用する。2 mmを超える空間距離及び沿面距離,更に固体絶縁物一般につい
ては,JIS C 60664-1を適用する。
注記1 2 mm以下の距離の制限は,基礎又は付加絶縁に適用する。強化又は二重絶縁の合計距離は2
mmを超えてもよい。
この規格は,次の距離を規定する。
− ミクロ環境から独立した最小空間距離(表2参照)
− トラッキングによる障害を回避するための汚損度1,汚損度2及び汚損度3に対する最小沿面距離(表
4参照)
− 絶縁表面をわたるフラッシオーバを回避するための最小沿面距離(表5参照)
注記2 適切な絶縁抵抗を維持するための最小沿面距離については,表A.2を参照。
注記3 この規格は,汚損度3又は湿度レベル3よりも過酷なミクロ環境状態には適用しない。
2
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.3.2.3.5で分類していない絶縁材料を該当する水分吸着グループに割り当てるための試験方法を附属書
Bに規定する。
注記4 分類してある材料を附属書Bで試験した場合,試験結果の優先順位を明確にするため,附属
書Bは,5.3.2.3.5で分類していない材料に対する試験方法であることを明確にした。
注記5 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60664-5:2007,Insulation coordination for equipment within low-voltage systems−Part 5:
Comprehensive method for determining clearances and creepage distances equal to or less than 2
mm (IDT)
なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,一致していることを
示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)は適用しない。JIS C 60664-1の箇
条2を適用するほか,次を適用する。
JIS C 60364-5-51:2006 建築電気設備−第5-51部:電気機器の選定及び施工−共通規定
注記 対応国際規格:IEC 60364-5-51:2001,Electrical installations of buildings−Part 5-51: Selection and
erection of electrical equipment−Common rules (MOD)
JIS C 60664-1:2009 低圧系統内機器の絶縁協調−第1部:基本原則,要求事項及び試験
注記 対応国際規格:IEC 60664-1:2007,Insulation coordination for equipment within low-voltage
systems−Part 1: Principles, requirements and tests (IDT)
JIS C 60721-3-3:1997 環境条件の分類 環境パラメータとその厳しさのグループ別分類 屋内固定
使用の条件
注記 対応国際規格:IEC 60721-3-3:1994,Classification of environmental conditions−Part 3-3:
Classification of groups of environmental parameters and their severities−Stationary use at
weatherprotected locations (IDT)
JIS C 60721-3-7:1999 環境条件の分類−環境パラメータとその厳しさのグループ別分類 携帯及び
移動使用の条件
注記 対応国際規格:IEC 60721-3-7:1995,Classification of environmental conditions−Part 3-7:
Classification of groups of environmental parameters and their severities−Portable and
non-stationary use (IDT)
JIS C 60721-3-9:2000 環境条件の分類 環境パラメータとその厳しさのグループ別分類 製品内部
の環境条件
注記 対応国際規格:IEC 60721-3-9:1993,Classification of environmental conditions−Part 3-9:
Classification of groups of environmental parameters and their severities−Microclimates inside
products (IDT)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 60664-1によるほか,次による。
3
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3.1
水分吸着 (water adsorption)
水分を,表面に吸着する絶縁材料の能力。
3.2
臨界相対湿度 (critical relative humidity)
沿面距離のインパルス耐電圧が,70 %の相対湿度で測定した値の95 %まで低下したときの相対湿度の値。
4
空間距離及び沿面距離の規定値の決定ルール
4.1
(対応国際規格の序文を削除した。)
注記 “このテーマに関する最初の出版物は,1980年のIEC 60664であった。同規格は空間距離だけ
を対象としており,データは破壊電圧の基本的データに基づいていた。その後,1981年に,長
年にわたる経験から得られたデータのほか,プリント配線板の試験から得られたデータに基づ
いて,沿面距離に関するIEC 60664Aが発行された。1992年にはこれらの出版物が合本され,
IEC 60664-1として発行された。ただし,この改正版で基本的データが変更されることはなか
った。”という序文を削除した。
4.2
基本原則
絶縁協調には,機器の用途及びその周囲環境に関連して,その適切な電気的絶縁特性を選択することを
含む。
絶縁協調は,機器がその予想寿命の間に受けると想定されるストレスを前提にして,設計されたときに
だけ達成できる。
次に規定されていない限り,JIS C 60664-1の4.2を適用する。
4.2.5
短時間過電圧に関する絶縁協調
短時間過電圧に関する絶縁協調は,JIS C 60364-4-44の箇条442(この規格の5.4.3.2.3参照)に規定され
ている短時間過電圧に基づいている。
注記 現在利用可能なサージ防止装置(SPD)では,短時間過電圧に付随するエネルギーを適切に処理で
きない。
4.2.6
環境状態に関する絶縁協調
絶縁のミクロ環境状態を考慮しなければならない。これらは主に,機器を設置するマクロ環境状態に依
存するもので,多くの場合,その両環境は同一である。ただし,ミクロ環境は,マクロ環境よりも,良く
も悪くもなり得る。例えば,外郭,加熱,換気又はじんあい(塵埃)はミクロ環境に影響を及ぼす。
注記 JIS C 0920に規定する分類に従った外郭による保護は,ミクロ環境の湿度を上昇させることが
ある。
主要な環境要素には,次のものがある。
− 空間距離に対して
− 空気圧
− 広範囲に変動する場合の温度
− 沿面距離に対して
− 空気圧
− 汚損
4
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− 相対湿度
− 結露
− 固体絶縁物に対して
− 温度
− 相対湿度
4.3
電圧及び電圧定格
4.3.1
一般事項
JIS C 60664-1の4.3.1を適用する。
4.3.2
長時間のストレスに対する電圧の決定
4.3.2.1
一般事項
JIS C 60664-1の4.3.2.1を適用する。
4.3.2.2
基礎絶縁の規定値を決定するための電圧
4.3.2.2.1
低圧系統電源から直接給電される機器
低圧系統電源の公称電圧は,JIS C 60664-1の表F.3a及び表F.3bに示すように集約されている。また,
これらの電圧は,沿面距離を選択するために用いる最低の電圧である。これらは,定格絶縁電圧の選択に
も用いることができる。
低圧系統電源の異なる公称電圧で使用できるように幾つかの定格電圧をもつ機器の場合には,選択され
る電圧は,その機器の最も高い定格電圧に適したものでなければならない。
製品規格は,電圧を,次のいずれに選択すべきであるかを考慮しなければならない。
− 充電線間電圧を基礎とする。
− 充電線と大地との間の電圧を基礎とする。
後者の場合,製品規格には,機器が中性点接地方式だけで使用できることを使用者に知らせる方法を規
定しなければならない。
4.3.2.2.2
低圧系統電源から直接給電されない系統,機器及び内部回路
JIS C 60664-1の4.3.2.2.2を適用する。
4.3.2.3
機能絶縁の規定値を決定するための電圧
JIS C 60664-1の4.3.2.3を適用する。
4.3.3
定格インパルス電圧の決定
4.3.3.1
一般事項
JIS C 60664-1の4.3.3.1を適用する。
4.3.3.2
過電圧カテゴリ
4.3.3.2.1
一般事項
JIS C 60664-1の4.3.3.2.1を適用する。
4.3.3.2.2
低圧系統電源から直接給電される機器
JIS C 60664-1の4.3.3.2.2を適用する。
4.3.3.2.3
低圧系統電源から直接給電されない系統及び機器
JIS C 60664-1の4.3.3.2.3を適用する。
4.3.3.3
機器に適用する定格インパルス電圧の選択
JIS C 60664-1の4.3.3.3を適用する。
5
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.3.3.4
機器内のインパルス電圧絶縁協調
4.3.3.4.1
外来の過渡過電圧によって著しく影響を受ける機器内の部分又は回路
JIS C 60664-1の4.3.3.4.1を適用する。
4.3.3.4.2
過渡過電圧に対して特別に保護される機器内の部分又は回路
外来の過渡過電圧の影響を著しく受けない部分の場合,基礎絶縁に要求するインパルス耐電圧は,その
機器の定格インパルス電圧に関係なく,その部分又は回路の実際の状態に合った値とする。ただし,JIS C
60664-1の4.2.3のインパルス電圧の数値の適用を標準値として使うことを推奨する。その他の場合は,表
2の値の内挿値を使うことができる。
4.3.3.5
機器から発生する開閉過電圧
JIS C 60664-1の4.3.3.5を適用する。
4.3.3.6
インタフェース要求事項
JIS C 60664-1の4.3.3.6を適用する。
4.3.4
反復ピーク電圧の決定
JIS C 60664-1の4.3.4を適用する。
4.3.5
短時間過電圧の決定
4.3.5.1
一般事項
JIS C 60664-1の4.3.5.1を適用する。
4.3.5.2
故障電圧
JIS C 60664-1の4.3.5.2を適用する。
4.3.5.3
短時間過電圧ストレス
高圧系統における地絡故障によって起こる低圧機器での短時間過電圧の大きさ及び持続時間は,5.4.3.2.3
に示す。
4.4
周波数
JIS C 60664-1の4.4を適用する。
4.5
電圧ストレスの加わる時間
電圧ストレスの加わる時間は,適用しない。
4.6
汚損
4.6.1
一般事項
汚損は,トラッキングを引き起こす長時間実効値電圧ストレスに関連して絶縁を損なうだけではなく,
ピーク電圧及び水分吸着にも関連して絶縁を損なう。汚損は,小さな距離のインパルス耐電圧機能の低下
を引き起こし,そのために絶縁物の表面にわたってフラッシオーバが発生することがある。
絶縁の表面に対する湿度の影響は,4.6.4に規定する湿度レベルによって識別する。絶縁の表面に対する
水分吸着特性の影響は,4.8.6に規定する水分吸着グループによって識別する。
4.6.2
ミクロ環境における汚損の等級
JIS C 60664-1の4.6.2を適用する。
4.6.3
導電性汚損に対する対応
導電性汚損に対する対応は,適用しない。
4.6.4
湿度レベル
表面をわたるフラッシオーバに関連して沿面距離又は最小絶縁抵抗を評価するために,次のように三つ
のレベルをミクロ環境で規定する。
6
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− 湿度レベル1 (HL 1):絶縁表面の相対湿度は,決して結露が発生するレベルに達することはない。し
たがって,フラッシオーバは湿度に影響されない。
− 湿度レベル2 (HL 2):絶縁表面の相対湿度は,ミクロ環境での過渡的変化の間に結露が発生すること
がある程度のものである。したがって,フラッシオーバは湿度に影響される。
− 湿度レベル3 (HL 3):絶縁表面の相対湿度は,結露が頻繁に発生する程度のものである。したがって,
フラッシオーバは湿度に大きく影響される。
4.6.5
湿度レベルのマクロ環境に対する関係
マクロ環境状態は,JIS C 60364-5-51,JIS C 60721-3-3,JIS C 60721-3-7及びJIS C 60721-3-9に規定さ
れている。
注記 JIS C 60721-3-9では,異なる気候クラスの表現が使用されている。
ミクロ環境の湿度レベルと定義されたマクロ環境クラスとの関係を,表1に示す。
表1−湿度レベルとマクロ環境クラスとの間の関係
気候クラスを
規定している規格
気候(マクロ環境)クラス
湿度レベル
JIS C 60721-3-9
Y2
Y3
Y4
JIS C 60721-3-3
3K1
3K3
3K6
JIS C 60721-3-7
7K1
7K3
JIS C 60346-5-51
AB5
AB7
↓
↓
↓
=
(−)
(−)
→ HL 1
(+)
=
(−)
→ HL 2
(+)
(+)
=
→ HL 3
= ミクロ環境は,マクロ環境と同じ湿度をもつ。
(−) ミクロ環境は,マクロ環境よりも湿度が低い。
(+) ミクロ環境は,マクロ環境よりも湿度が高い。
4.7
機器とともに提供される情報
JIS C 60664-1の4.7を適用する。
4.8
絶縁材料
4.8.1
一般事項
絶縁材料は,そのCTI値に従ってグループに分類しなければならない。
製品規格は,絶縁材料の耐電圧特性,並びに温度,機械的,化学的及び水分吸着特性を考慮しなければ
ならない。固体絶縁物の要求事項に関しては,5.4を適用する。
4.8.2
比較トラッキング指数 (CTI)
4.8.2.1
シンチレーションがある場合の絶縁材料で起こる反応
JIS C 60664-1の4.8.1.1を適用する。
4.8.2.2
絶縁材料を分類するためのCTI値
JIS C 60664-1の4.8.1.2を適用する。
4.8.2.3
材料グループ
JIS C 60664-1の4.8.1.3を適用する。
7
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.8.2.4
比較トラッキング指数 (CTI) の試験
JIS C 60664-1の4.8.1.4を適用する。
4.8.2.5
導電路を形成しない材料
導電路を形成しないガラス,セラミック又はその他の無機物の場合,沿面距離は絶縁協調のために関連
空間距離の値よりも大きい必要はない。表2の不平等電界に対する規定値が適している。
4.8.3
耐電圧特性
JIS C 60664-1の4.8.2を適用する。
4.8.4
温度特性
JIS C 60664-1の4.8.3を適用する。
4.8.5
機械的及び化学的特性
JIS C 60664-1の4.8.4を適用する。
4.8.6
水分吸着特性
水分吸着とは,絶縁材料の特性による表面関連現象である。耐電圧性能に対する水分吸着の影響に関し
て,絶縁材料は,附属書Bの試験手順に従って,次のように水分吸着グループに割り当てられる。
− 水分吸着グループWAG 1(無視できる影響)
− 水分吸着グループWAG 2(弱い影響)
− 水分吸着グループWAG 3(中程度の影響)
− 水分吸着グループWAG 4(強い影響)
注記1 水分吸着グループに関する材料の分類は,フィルタ,添加剤及び製造方法の影響を受けるこ
とがある。
注記2 水分吸着グループに関する絶縁材料の分類例を,5.3.2.3.5に示す。
5
要求事項及び規定値の決定ルール
5.1
一般事項
空間距離は,5.2.2に従って,電圧に耐えるように決定しなければならない。関連沿面距離は,5.3.2.3.3
及び5.3.2.3.4の要求事項を満たさなければならない。固体絶縁物は,5.4の要求事項を満たす設計でなけ
ればならない。
5.2
空間距離の規定値の決定
5.2.1
一般事項
空間距離は,要求されるインパルス耐電圧に耐えるように規定しなければならない。低圧系統電源に直
接接続する機器の場合,要求されるインパルス耐電圧は,JIS C 60664-1の4.3.3.3を基に規定する定格イ
ンパルス耐電圧とする。定常状態の実効値電圧,短時間過電圧又は反復ピーク電圧が,インパルス耐電圧
のために要求されるものより大きな空間距離を必要とする場合は,表3の該当値を使用しなければならな
い。インパルス耐電圧,定常状態の実効値電圧,短時間過電圧及び反復ピーク電圧を考慮した結果から最
大の空間距離を選択しなければならない。
注記 定常状態の実効値電圧又は反復ピーク電圧に対する規定値を決めると,これらの電圧を連続的
に印加したとき絶縁破壊にマージンがない状況になる。製品規格では,このことを考慮するの
が望ましい。
8
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.2.2
規定値の決定の基準
5.2.2.1
一般事項
空間距離の規定値は,次の影響因子を考慮して選択しなければならない。
− 機能絶縁のためには5.2.5を,基礎,付加及び強化絶縁では5.2.6によるインパルス耐電圧
− 定常状態耐電圧及び短時間過電圧(5.2.2.3参照)
− 反復ピーク電圧(5.2.2.3参照)
− 電界状態(5.2.3参照)
− 標高。表2及び表3に規定する空間距離は,2 000 mまでの標高で使用する機器に対する耐電圧性能
を示している。より高い標高で使用する機器の場合は,5.2.4を適用する。
振動,外力などの機械的な影響は,より大きな空間距離を必要とすることがある。
5.2.2.2
過渡過電圧に耐える規定値の決定
表2に従って,要求されるインパルス耐電圧に耐えるように空間距離を規定しなければならない。低圧
系統電源に直接接続される機器の場合,要求されるインパルス耐電圧は,JIS C 60664-1の表F.1を基に規
定された定格インパルス電圧とする。
表2−過渡過電圧に耐える空間距離
要求されるインパルス耐電圧a), c)
標高2 000 mまでの空気中の最小空間距離
kV
ケースA
不平等電界状態
(JIS C 60664-1の3.15参照)
mm
ケースB
平等電界状態
(JIS C 60664-1の3.14参照)
mm
0.33 b)
0.01
0.01
0.40
0.02
0.02
0.50 b)
0.04
0.04
0.60
0.06
0.06
0.80 b)
0.10
0.10
1.0
0.15
0.15
1.2
0.25
0.20
1.5 b)
0.50
0.30
2.0
1.0
0.45
2.5 b)
1.5
0.60
3.0
2.0
0.80
4.0 b)
1.2
5.0
1.5
6.0 b)
2.0
注a) この電圧は,絶縁ごとに次のようになる。
− 機能絶縁の場合,空間距離の両端に発生すると予想される最大インパルス電圧(5.2.5参照)。
− 低圧系統電源からの過渡過電圧に直接さらされる,又はそれによって著しく影響される基礎絶縁の場合
(JIS C 60664-1の4.3.3.3,JIS C 60664-1の4.3.3.4.1及びこの規格の5.2.6参照),機器の定格インパルス
電圧。
− その他の基礎絶縁の場合(4.3.3.4.2参照),回路内で発生し得る最高インパルス電圧。
− 強化絶縁については,5.2.6参照。
b) JIS C 60664-1の4.2.3に規定する推奨値。
c) 4.3.3.4.2に規定するインパルス電圧が加わる機器内の部分又は回路の場合,内挿法が許される。ただし,規定
値の標準化を考慮すると,JIS C 60664-1の4.2.3で推奨するインパルス電圧値を使用することが望ましい。
9
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.2.2.3
定常電圧,短時間過電圧又は反復ピーク電圧に耐える規定値の決定
定常電圧(直流又は50/60 Hz),短時間過電圧又は反復ピーク電圧のピーク値に耐えるように,空間距離
は,表3に基づいて規定しなければならない。
空間距離は,表2に従った規定値と表3とを比較し,大きいほうの値を選択する。
注記1 30 kHzを超える周波数に対する要求事項は,JIS C 60664-4で規定している。
表3−定常電圧,短時間過電圧又は反復ピーク電圧に耐える空間距離
電圧a)
(ピーク値)b)
kV
標高2 000 mまでの空気中の最小空間距離
ケースA
不平等電界状態
(JIS C 60664-1の3.15参照)
mm
ケースB
平等電界状態
(JIS C 60664-1の3.14参照)
mm
0.04
0.001 c)
0.001 c)
0.06
0.002 c)
0.002 c)
0.10
0.003 c)
0.003 c)
0.12
0.004 c)
0.004 c)
0.15
0.005 c)
0.005 c)
0.20
0.006 c)
0.006 c)
0.25
0.008 c)
0.008 c)
0.33
0.01
0.01
0.4
0.02
0.02
0.5
0.04
0.04
0.6
0.06
0.06
0.8
0.13
0.10
1.0
0.26
0.15
1.2
0.42
0.20
1.5
0.76
0.30
2.0
1.27
0.45
2.5
1.8
0.6
3.0
2.4 d)
0.8
4.0
1.2
5.0
1.5
6.0
2.0
注a) 他の電圧に対する空間距離は,内挿法によって得られる。
b) 反復ピーク電圧については,JIS C 60664-1の図1を参照。
c) これらの値は,大気圧で得られた実験データに基づく。
d) この値は,2 mm(この規格による最大値)に該当するピーク電圧を内挿法で計算できるように示している。
これによれば,最小空間距離2.0 mmに該当するピーク電圧は,2.67 kVとなる。
注記2 2.5 kV(ピーク)以上の定常電圧のストレスを受ける空間距離の場合,表3による規定値で
は,特に不平等電界において,コロナ(部分放電)を伴うことがある。コロナが許容されな
い場合には,JIS C 60664-1の表F.7bに規定されているような大きな空間距離を使用するか,
電界の平等性(電極の形状)を改善する必要がある。
10
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.2.3
電界の状態
5.2.3.1
一般事項
導電性部分(電極)の形状及び配置は,電界の平等性に影響を及ぼすので,定められた電圧に耐える空
間距離が必要である(この規格の表2,表3及びJIS C 60664-1の表A.1参照)。
5.2.3.2
不平等電界の状態(表2のケースA)
不平等電界の状態では表2の値以上の空間距離は,導電性部分の形状及び配置に関係なく,また,耐電
圧試験の検証なしで用いることができる。
絶縁物の外郭にある開口部を通しての空間距離は,電極の形状がコントロールできないため電界の平等
性に悪影響を及ぼすおそれがあるので,不平等電界の規定値を下回ってはならない。
5.2.3.3
平等電界の状態(表2のケースB)
ケースBのための表2の空間距離の値は,平等電界の状態だけに適用する。その値は,導電性部分の形
状及び配置が通常一定の電界が得られるよう設計されている場合だけに使用できる。
不平等電界における規定値より小さい空間距離は,耐電圧試験の検証を必要とする(6.1.2参照)。
注記 空間距離が小さい値の場合には,汚損があると電界の平等性が低下することがあるので,ケー
スBの値より大きな空間距離を必要とする。
5.2.4
標高
表2及び表3の規定値は,海抜2 000 mまでの標高に対して有効であるので,2 000 mを超える標高の場
合の空間距離では,JIS C 60664-1の表A.2で規定する標高補正係数を適用する。
注記 平等電界の場合の空気中における空間距離の破壊電圧(JIS C 60664-1の表A.1のケースB)は,
パッシェンの法則に従って電極間の距離と気圧との積に比例する。そのため,ほぼ海面で記録
された実験データは,海抜2 000 mと海面との間の気圧差に従って修正する。同様の補正を,
不平等電界及びフラッシオーバに関する沿面距離に対しても行う(5.3.2.3.4参照)。
5.2.5
機能絶縁の空間距離の決定
機能絶縁の空間距離の場合,要求される耐電圧は,機器の定格状態[特に定格電圧及び定格インパルス
電圧(表2参照)]の下で空間距離の両端に発生すると予想される最大インパルス電圧,定常電圧(表3
参照)又は反復ピーク電圧(表3参照)とする。
5.2.6
基礎,付加及び強化絶縁の空間距離の決定
基礎及び付加絶縁の空間距離は,それぞれ次を考慮して,表2に規定するように決定しなければならな
い。
− JIS C 60664-1の4.3.3.3又はJIS C 60664-1の4.3.3.4.1による定格インパルス電圧
− 4.3.3.4.2によるインパルス耐電圧要求事項
また,次を考慮して,表3に規定するように決定しなければならない。
− 4.3.2.2による定常電圧
− JIS C 60664-1の4.3.4による反復ピーク電圧
− 4.3.5による短時間過電圧
インパルス電圧に対する強化絶縁の空間距離は,表2に規定するように定格インパルス電圧に対応して
決定しなければならないが,JIS C 60664-1の4.2.3に規定する推奨値のうち基礎絶縁に対する規定値の1
段階上の値としなければならない。この規格の4.3.3.4.2に従って基礎絶縁に対して要求されるインパルス
耐電圧が,推奨値以外の場合には,強化絶縁は,基礎絶縁に対して要求されるインパルス耐電圧の160 %
に耐えるように規定値を決定する。
11
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記1 この規格の2 mm以下の制限は,基礎又は付加絶縁に適用される。強化又は二重絶縁の距離
は2 mmより大きいこともある。
注記2 協調が得られている系統において,要求されるインパルス耐電圧には,要求される最小値を
超える空間距離は不必要である。ただし,絶縁協調以外の理由で,空間距離を大きくするこ
とが必要である場合もある(例えば,機械的影響によって)。このような場合であっても,
6.1.2.2の試験電圧は,機器の定格インパルス電圧に基づいた値にとどめる。なぜなら,関連
固体絶縁物に過度のストレスが加わることがあるからである。
定常電圧,反復ピーク電圧及び短時間過電圧に対する強化絶縁の空間距離の規定値は,基礎絶縁に対し
て要求される耐電圧の160 %に耐えるように,表3の規定値から決定しなければならない。
基礎絶縁及び付加絶縁を別々に試験することができない二重絶縁を施した機器の場合,この絶縁システ
ムは,強化絶縁とみなす。
注記3 絶縁材料の接触可能な表面に対する空間距離の規定値を決定する場合には,その表面は金属
はく(箔)で覆われたものと仮定する。詳細については,製品規格で規定することができる。
5.2.7
絶縁距離
JIS C 0365の8.3.2を参照。
5.3
沿面距離の規定値の決定
5.3.1
一般事項
沿面距離は,5.3.2を考慮して決定しなければならない。トラッキングに関しては表4から,及びフラッ
シオーバに関しては表5から得た距離の数値を比較して,いずれか大きい数値を選択しなければならない
(附属書Cの沿面距離の決定図を参照)。
5.3.2
影響因子
5.3.2.1
一般事項
トラッキングに関しては,次の影響因子を考慮する。
− 4.3.2による電圧(5.3.2.2も参照)
− ミクロ環境における汚損度(JIS C 60664-1の4.6.2及びこの規格の5.3.2.3参照)
− 沿面距離の配置及び場所(JIS C 60664-1の5.2.2.4参照)
− 絶縁材料の特性(4.8.2参照)
絶縁材料の表面をわたるフラッシオーバに関しては,次の影響因子を考慮する。
− 4.3.3による電圧(5.3.2.2も参照)
− ミクロ環境における湿度レベル(4.6.4参照)
− 絶縁材料の特性(4.8.2及び4.8.6参照)
− 沿面距離の配置及び場所(JIS C 60664-1の5.2.2.4参照)
− 標高:表5に規定する沿面距離は,2 000 mまでの標高で使用する機器に対するインパルス耐電圧性
能を与える。より高い標高で使用する機器の場合は,5.2.4を適用する。
5.3.2.2
電圧
トラッキングに関する沿面距離を決定するために基準となる電圧は,該当箇所に長時間加わる電圧の実
効値とする。この電圧は,次のとおりとする。
− 機能絶縁のための動作電圧(5.3.3参照)
− 基礎,付加及び強化絶縁のための定格絶縁電圧又は定格電圧(5.3.4参照)
フラッシオーバに関しては,沿面距離を規定している電圧は,表5(5.3.2.3.4参照)による該当電圧のピ
12
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ーク値である。このピーク電圧は,次のような,沿面距離に加わることが予想される電圧の最大値である。
− 機能絶縁の場合,機器の定格状態下で沿面距離に加わることが予想される電圧の最大ピーク値。
− 低圧系統電源からの過渡過電圧(JIS C 60664-1の4.3.3.3,JIS C 60664-1の4.3.3.4.1及びこの規格の
5.2.6参照),又は反復ピーク電圧に直接さらされるか又はそれによって著しく影響される基礎絶縁の
場合は,機器に定められた電圧定格(定格インパルス電圧,定格ピーク電圧など)の最大ピーク値。
− その他の基礎絶縁(4.3.3.4.2参照)の場合,回路内で発生し得る電圧の最大ピーク値。
− 強化絶縁の場合は,5.3.4参照。
5.3.2.3
気候条件に関する規定値の決定の基準
5.3.2.3.1
一般事項
4.6.4に規定する湿度レベルにおけるミクロ環境内の気候条件の影響については,表5で湿度レベルごと
に示している。規定値の決定には,次の条件を考慮しなければならない。
− 最小絶縁抵抗(5.3.2.3.2参照)
− トラッキングによる障害(5.3.2.3.3参照)
− フラッシオーバ(5.3.2.3.4参照)
注記 一つの機器内に,様々なミクロ環境状態が存在することがある。
5.3.2.3.2
絶縁抵抗を維持するための規定値の決定
製品規格で,充電部間又は充電部と機器の接触可能な表面との間の最大漏れ電流を規定する場合,規定
値の決定のために絶縁抵抗を考慮している。絶縁抵抗が不十分で,機器の適切な機能を損なう過度の漏れ
電流をもたらすことがある場合は,機能絶縁にも同じことを適用する。
機器の設計に関する手引きとなる情報及びデータを,附属書Aに示す。
注記 このように規定された沿面距離は,シンチレーションのエネルギーが十分に低く,かつ,材料
のCTI値は関係しないため,トラッキングを起こしにくくなっている。
5.3.2.3.3
トラッキングによる障害を回避するための規定値の決定
トラッキングによる障害を回避するために,沿面距離は表4によって決定しなければならない。
13
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表4−トラッキングによる障害を回避するための沿面距離
電圧実効値a)
最小沿面距離b)
汚損度1
汚損度2
汚損度3
V
全材料グループ
mm
IIIbを除き,
全材料グループ
mm
材料グループ
I
mm
II
mm
IIIa
mm
≦40
0.025
0.040
1.00
1.00
1.00
50
0.025
0.040
1.00
1.00
1.00
63
0.040
0.063
1.00
1.00
1.00
80
0.063
0.10
1.00
1.10
1.25
100
0.10
0.16
1.25
1.40
1.60
125
0.16
0.25
1.60
1.80
2.00
160
0.25
0.40
2.00
2.20 c)
JIS C 60664-1
参照
200
0.40
0.63
JIS C 60664-1
参照
JIS C 60664-1
参照
250
0.56
1.0
320
0.75
1.6
400
1.0
2.0
500
1.3
JIS C 60664-1
参照
630
1.8
800
2.4 c)
注a) この電圧は,絶縁ごとに次のようになる。
− 機能絶縁の場合,動作電圧。
− 低圧系統電源から直接給電される回路(4.3.2.2.1参照)の基礎及び付加絶縁の場合,機器の定格電圧に基
づいてJIS C 60664-1の表F.3a又は表F.3bに集約して示した電圧,又は定格絶縁電圧。
− 低圧系統電源から直接給電されない系統,機器及び内部回路(JIS C 60664-1の4.3.2.2.2参照)の基礎及
び付加絶縁の場合,定格電圧で供給し,かつ,機器の定格の動作状態で最も厳しい条件の組合せにおけ
る系統,機器又は内部回路に発生し得る最高実効値電圧。
b) ガラス,セラミック又はその他の無機物などのトラッキングを起こさない絶縁材料の場合,絶縁協調を目的
とした沿面距離の規定値としては,関連する空間距離の規定値よりも大きくする必要はない。
なお,この場合の空間距離の規定値は,表2の不平等電界状態の数値が適切である。ただし,フラッシオ
ーバについては,5.3.2.3.4を考慮しなければならない。
c) この値は,2 mm(この規格による最大値)に該当する実効値電圧を内挿法で計算できるように示している。
注記 沿面距離の測定の精度は,表4に示す沿面距離の有効けた(桁)数ほどの高さである必要はな
い。
5.3.2.3.4
フラッシオーバを回避するための規定値の決定
絶縁材料の表面に沿ったフラッシオーバを回避するために,沿面距離は表5によって決定しなければな
らない。
HL 1の場合,表2及び表3の空間距離を適用する。
表5によって決定した沿面距離が約500 V(ピーク)を超える定常電圧でストレスを受ける場合には,
部分放電(コロナ)も予想される。部分放電に関しては,絶縁材料を水分吸着グループ(5.3.2.3.5参照)
によって等級分けする。
注記 絶縁材料の汚損表面における部分放電は,表面層における電界分布の局所的な集中によって引
14
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
き起こされる。これらの部分放電(コロナ)は,固体絶縁物内部の部分放電とは異なり,開始
レベルが固体絶縁物内部の部分放電の700 V(ピーク)と比べて,500 V(ピーク)と低い。
表5の沿面距離は,海抜2 000 mまでの標高に有効なものであり,2 000 mを超える標高のフラッシオー
バを回避するための沿面距離には,JIS C 60664-1の表A.2で規定されている標高補正係数を適用する。
表5−フラッシオーバを回避するための沿面距離
ピーク
電圧a)
標高2 000 mまでの空気中の最小沿面距離
湿度レベル c)
HL 2
HL 3
水分吸着グループ
水分吸着グループ
kV
WAG 1
材料
mm
WAG 2
材料
mm
WAG 3
材料
mm
WAG 4
材料
mm
WAG 1
材料
mm
WAG 2
材料
mm
WAG 3
材料
mm
WAG 4
材料
mm
0.10
0.030
0.042
0.055
0.095
0.12
0.020
0.022
0.024
0.025
0.037
0.053
0.07
0.115
0.15
0.028
0.029
0.032
0.035
0.050
0.070
0.09
0.15
0.20
0.043
0.046
0.049
0.052
0.075
0.105
0.13
0.20
0.25
0.06
0.065
0.07
0.075
0.10
0.14
0.17
0.26
0.33
0.09
0.09
0.10
0.11
0.14
0.19
0.23
0.34
0.40
0.12
0.13
0.14
0.15
0.19
0.24
0.30
0.44
0.50
0.17
0.18
0.20
0.22
0.26
0.32
0.39
0.56
0.60
0.23
0.26
0.29
0.32
0.33
0.41
0.50
0.70
0.80
0.35
0.41
0.47
0.54
0.47
0.58
0.69
0.95
1.0
0.50
0.57
0.64
0.72
0.63
0.76
0.90
1.2
1.2
0.68
0.76
0.84
0.93
0.82
0.96
1.1
1.5
1.5
0.93
1.02
1.11
1.2
1.1
1.3
1.5
2.0
2.0
1.4
1.53
1.66
1.8
1.6
1.8
2.0
2.5
1.9
2.10 b)
2.25 b)
2.4 b)
2.1 b)
2.4 b)
3.0
2.5 b)
注記 この規格では,“電圧定格”の意味を明確にした。
湿度クラスと汚損度との関係を明確にした。
注a) この電圧は,絶縁ごとに次のようになる。
− 機能絶縁の場合,機器の定格条件下で沿面距離に加わることが予想される電圧の最大ピーク値。
− 低圧系統電源からの過電圧(JIS C 60664-1の4.3.3.3,JIS C 60664-1の4.3.3.4.1及びこの規格の5.2.6参
照),又は反復ピーク電圧に直接さらされるか又はそれによって著しく影響される基礎絶縁の場合,機器
に定められた電圧定格(定格インパルス電圧,定格ピーク電圧など)の最大ピーク値。
− その他の基礎絶縁(4.3.3.4.2参照)の場合,回路内で発生し得る電圧の最大ピーク値。
− 強化絶縁の場合,5.3.4を参照。
b) この値は,2 mm(この規格による最大値)に該当するピーク電圧を内挿法で計算できるように示している。
c) HL 2及びHL 3は,それぞれ汚損度2及び汚損度3に対応する。
5.3.2.3.5
水分吸着グループ
絶縁材料の水分吸着特性は,水分吸着グループによって識別する。次の材料について,等級分けする。
− WAG 1:臨界相対湿度が沿面距離によらず低下しない材料
− ポリエステル樹脂(熱硬化性),タイプ802
− メラミン樹脂,タイプ150
15
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− WAG 2:臨界相対湿度が1 mm以上の沿面距離で低下しない材料
− フェノール樹脂,タイプ31.5
− ポリカーボネート
− WAG 3:臨界相対湿度が2.5 mm以上の沿面距離で低下しない材料
− ガラス−エポキシ積層板FR4
− ガラス−エポキシ積層板FR4に積層したポリイミドフィルム
− フェノール樹脂板紙FR2
− ポリブチレンテレフタレート
− WAG 4:臨界相対湿度が6.3 mm以上の沿面距離で低下しない材料
− セラミック(97 % Al2O3,つやなし)
− ポリエステル積層板GPO III
5.3.2.4
沿面距離の配置及び場所
JIS C 60664-1の5.2.2.4を適用する。
5.3.2.5
絶縁物表面の形状
絶縁物表面の形状は,適用しない。
5.3.2.6
空間距離との関係
沿面距離は,トラッキングに関しては表4で,及びフラッシオーバに関しては表5で規定するように決
定して,いずれか大きい数値を使用しなければならない。沿面距離は,その部分の空間距離よりも小さく
できない。すなわち,許容される最小の沿面距離は,要求される空間距離と等しい。
沿面距離がその部分の空間距離に対し要求されるインパルス電圧に耐えるとき,湿度条件がHL 1及び
HL 2の場合は,表2の不平等電界状態で要求している空間距離より小さい沿面距離を適用してよい。さら
に,このインパルス耐電圧の実証試験を行う場合には,標高補正係数を考慮しなければならない。HL 2で
の適用の場合,湿気のある状態でインパルス耐電圧試験を実施しなければならない。
注記1 試験のための湿度条件の例を,表A.1に示す。
注記2 HL 2条件下における完成機器の沿面距離の耐電圧試験方法を,附属書Dに示す。
5.3.2.7
複数の材料を使用する場合又は複数の汚損度が生じる場合の沿面距離
JIS C 60664-1の5.2.2.7を適用する。
5.3.2.8
浮遊導電部によって分割される沿面距離
JIS C 60664-1の5.2.2.8を適用する。
5.3.3
機能絶縁の沿面距離の決定
機能絶縁の沿面距離は,トラッキングに関しては表4で,及びフラッシオーバに関しては表5で規定す
るように決定して,いずれか大きい数値を使用しなければならない。
規定値の決定のために動作電圧を用いる場合には,中間の電圧については内挿法を用いてもよい。内挿
法を用いる場合は,直線補間法でなければならず,求めた値は表から得た値と同じけた(桁)数に丸めな
ければならない。
5.3.4
基礎,付加及び強化絶縁の沿面距離の決定
基礎及び付加絶縁の沿面距離は,トラッキングに関しては表4から,及びフラッシオーバに関しては表
5から選択して,いずれか大きい数値を使用しなければならない。表4及び表5において規定値の決定の
ために使用する電圧は,5.3.2.2に規定している。
注記1 付加絶縁の場合には,その湿度レベル,絶縁材料,機械的ストレス及び環境条件は,基礎絶
16
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
縁の場合と異なることがあってもよい。
JIS C 60664-1の4.3.2.2.2に規定する電圧を規定値の決定のために使用する場合には,中間の電圧につい
ては内挿法を用いてもよい。内挿法を用いる場合は,直線補間法でなければならず,求めた値は表から得
た値と同じけた数に丸めなければならない。
二重絶縁の沿面距離は,その二重絶縁システムを構成する基礎及び付加絶縁の値の和とする。
強化絶縁の沿面距離は,基礎絶縁に定めた沿面距離の2倍にしなければならない。
注記2 2 mm以下の距離の制限は,基礎又は付加絶縁に適用する。強化又は二重絶縁の合計距離は2
mmを超えてもよい。
注記3 絶縁材料の接触可能な表面に対する沿面距離の規定値を決定する場合には,このような表面
は,金属はく(箔)で覆われていると仮定する。詳細については,製品規格で規定すること
ができる。
5.3.5
リブ(ひだ)を使用する沿面距離の短縮
リブ(ひだ)を使用する沿面距離の短縮は,適用しない。
5.4
固体絶縁物の設計要求
5.4.1
一般事項
JIS C 60664-1の5.3.1を適用する。
5.4.2
ストレス
5.4.2.1
一般事項
JIS C 60664-1の5.3.2.1を適用する。
5.4.2.2
短時間のストレス及びその影響
5.4.2.2.1
電圧の周波数
JIS C 60664-1の5.3.2.2.1を適用する。
5.4.2.2.2
加熱
JIS C 60664-1の5.3.2.2.2を適用する。
5.4.2.2.3
機械的衝撃
JIS C 60664-1の5.3.2.2.3を適用する。
5.4.2.3
長時間のストレス及びその影響
5.4.2.3.1
部分放電 (PD)
JIS C 60664-1の5.3.2.3.1を適用する。
5.4.2.3.2
加熱
JIS C 60664-1の5.3.2.3.2を適用する。
5.4.2.3.3
機械的ストレス
JIS C 60664-1の5.3.2.3.3を適用する。
5.4.2.3.4
湿度
JIS C 60664-1の5.3.2.3.4を適用する。
5.4.2.4
その他のストレス
JIS C 60664-1の5.3.2.4を適用する。
5.4.3
要求事項
5.4.3.1
一般事項
JIS C 60664-1の5.3.3.1を適用する。
17
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.4.3.2
耐電圧ストレス
5.4.3.2.1
一般事項
JIS C 60664-1の5.3.3.2.1を適用する。
5.4.3.2.2
過渡過電圧
基礎及び付加絶縁は,次に適合しなければならない。
− 系統電源の公称電圧に対応するインパルス耐電圧の要求事項(JIS C 60664-1の4.3.3.3参照)及びJIS
C 60664-1の表F.1による関連過電圧カテゴリ,又は,
− 回路に予想される過渡過電圧に従って定められた機器の内部回路のインパルス耐電圧(4.3.3.4参照)
強化絶縁は,定格インパルス電圧に対応するインパルス耐電圧をもたなければならないが,基礎絶縁に
定めたものよりもJIS C 60664-1の4.2.3の推奨値より一段階高いインパルス耐電圧をもたなければならな
い。この規格の4.3.3.4.2に従って基礎絶縁に要求されるインパルス耐電圧が,推奨値から採用された値以
外の場合,強化絶縁は,基礎絶縁に要求される値の160 %に耐えるような規定値とする。
試験による検証は,6.1.3.3を参照する。
5.4.3.2.3
短時間過電圧
基礎及び付加の固体絶縁物は,次の短時間過電圧に耐えなければならない。
− 5秒以下で継続するUn+1 200 Vの短期の短時間過電圧
− 5秒を超えて継続するUn+250 Vの長期の短時間過電圧
Unは,中性点非接地の供給系統においては,低圧系統電源の公称電圧とする。また,中性点接地の供給
系統においては,ラインと中性点との公称電圧とする。
注記1 日本の三相電源などは,デルタ結線であり中性点がないものがあるため,中性点非接地の供
給系統の公称電圧を追加した。
強化絶縁は,基礎絶縁に対して規定する短時間過電圧の2倍の値に耐えなければならない。
試験による検証は,6.1.3を参照する。
注記2 この値は,JIS C 60364-4-44の箇条442による。JIS C 60364-4-44では,UnがUoになってい
る。
注記3 値は実効値である。
5.4.3.2.4
反復ピーク電圧
低圧系統電源で発生する最大反復ピーク電圧は,暫定的にF4×2Un,すなわち,Unでのピーク値の1.1
倍と仮定する。反復ピーク電圧値が存在する場合には,放電停止電圧は,少なくとも次のとおりとする。
− F1×F4×2Un,すなわち,各基礎及び付加絶縁に対して1.322Un,及び,
− F1×F3×F4×2Un,すなわち,強化絶縁に対して1.652Un
注記1
2Unは,中性点非接地の供給系統においては,低圧系統電源の基本波(ひずみなし)電圧
のピーク値とする。また,中性点接地の供給系統においては,ラインと中性点との間の基本
波(ひずみなし)電圧のピーク値とする。ここで用いる係数は,JIS C 60664-1のD.4で説明
する。
係数Fの説明は,6.1.3.5を参照。
注記2 日本の三相電源などは,デルタ結線であり中性点がないものがあるため,中性点非接地の供
給系統の公称電圧を追加した。
内部回路では,F4×2Unではなくその最大反復ピーク電圧を評価しなければならず,固体絶縁物も,
同様の要求を満たさなければならない。
18
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
試験による検証は,6.1.3.5を参照する。
5.4.3.2.5
高周波電圧
商用周波数を超えた周波数をもつ電圧の場合には,5.4.2.2.1及び5.4.2.3.1に従って周波数の影響を考慮
しなければならない。1 kHzを超える周波数は,この規格では高周波とみなす。
製品規格には,6.1.3.7による試験が必要かどうかを規定しなければならない。
5.4.3.3
短時間の熱的ストレスに対する耐力
JIS C 60664-1の5.3.3.3を適用する。
5.4.3.4
機械的ストレスに対する耐力
JIS C 60664-1の5.3.3.4を適用する。
5.4.3.5
長時間の熱的ストレスに対する耐力
JIS C 60664-1の5.3.3.5を適用する。
5.4.3.6
湿度に対する耐力
JIS C 60664-1の5.3.3.6を適用する。
5.4.3.7
その他のストレスに対する耐力
JIS C 60664-1の5.3.3.7を適用する。
6
試験及び測定
6.1
試験
6.1.1
一般事項
次の試験手順は,形式試験に適用する。そのため,試料に発生する可能性のある劣化があってもよい。
試料の再利用は意図されていないと仮定する。
注記1 試料の再利用を意図しているか又は必要としている場合は,製品規格は特別の考慮が必要で
ある。この場合,あらゆる高電圧試験を,6.1.3.5及びJIS C 60664-1の附属書Cに基づいた
部分放電測定と組み合わせるのがよい。
次について,試験手順を規定する。
− 空間距離の検証(6.1.2参照)
− 固体絶縁物の検証(6.1.3参照)
− 完成機器での耐電圧試験(6.1.4参照)
− その他の試験(JIS C 60664-1の6.1.5参照)
過渡過電圧による空間距離及び固体絶縁物に対するストレスは,インパルス耐電圧試験によって評価す
る。この場合のインパルス耐電圧試験は,交流又は直流耐電圧試験によって代用することがある。表2の
ケースAと同等又はそれを超える空間距離は,測定又は耐電圧試験によって検証してもよい。空間距離が
表2のケースAの値よりも小さい場合,耐電圧試験で検証しなければならない。
いかなる場合も,固体絶縁物の耐電圧性能は,耐電圧試験で検証しなければならない。過渡過電圧を原
因とするストレスはインパルス耐電圧試験で評価するが,これは,交流耐電圧試験又は直流耐電圧試験で
代替してもよい。交流定常電圧を原因とするストレスは,交流耐電圧試験でしか評価できない。交流電圧
のピーク値に等しい試験電圧による直流耐電圧試験は,直流電圧と交流電圧との固体絶縁物の絶縁特性が
異なるために,交流耐電圧試験と完全に等価ではない。ただし,純粋な直流電圧ストレスの場合は,直流
耐電圧試験が適切である。
注記2 空間距離のインパルス耐電圧試験を交流又は直流耐電圧試験に置き換えることは可能である
19
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
が,固体絶縁物の交流耐電圧試験をインパルス耐電圧試験に置き換えることは,通常,不可
能である。その主な理由は,特に複雑な回路においてインパルス電圧の伝搬は商用周波電圧
と比較して異なること,並びに固体絶縁物の耐電圧性能が電圧ストレスの波形及び継続時間
に依存することによる。
6.1.2
空間距離を検証する試験
6.1.2.1
一般事項
電気機器の空間距離を検証するために試験をする場合,試験は,5.2に規定する耐電圧要求事項によらな
ければならない。空間距離の検証に適した試験はインパルス耐電圧試験であるが,5.2.3に規定するインパ
ルス耐電圧試験は,表2のケースAの値よりも小さい空間距離に対してだけ適用する。
5.2に従った定常電圧,反復ピーク電圧又は短時間過電圧に対する耐電圧性能が空間距離の規定値の決定
にとって重要な要素であり,かつ,この空間距離が表3のケースAの値よりも小さい場合には,JIS C
60664-1の6.1.2.2.2.2の試験による交流耐試験電圧を適用する。
機器内の空間距離をインパルス耐電圧試験によって検証する場合,規定のインパルス電圧が試験される
空間に確実に加わるようにしなければならない。
注記1 空間距離の耐電圧試験は,付随する固体絶縁物にもストレスを与えることになる。
注記2 多くの場合,これらの試験は沿面距離にも適用できる(5.3.2.6を参照)。
注記3 完成機器の試験は,6.1.4を参照。
6.1.2.2
試験電圧
6.1.2.2.1
インパルス耐電圧試験
6.1.2.2.1.1
一般事項
この試験の目的は,空間距離が規定の過渡過電圧に耐えることを検証することである。インパルス耐電
圧試験は,JIS C 60664-1の表F.5による1.2/50 μsの波形をもつ電圧を用いて行う。波形は,IEC 61180-1
の6.1及び6.2による。これは,大気中に原因がある過電圧を模擬することを意図している。また,低圧
機器のスイッチングによる過電圧も対象とする。
インパルス耐電圧試験の結果のばらつきのために,試験は,少なくとも1秒のパルス間隔で各極性につ
き最低3インパルス行わなければならない。
注記1 インパルス発生器の出力インピーダンスは,500 Ω以下にすることが望ましい。試験回路間
に構成部品を組み込んだ機器を試験する場合は,更に低いインパルス発生器のインピーダン
スを規定することが望ましい(IEC 61180-2の9.2参照)。このような場合,試験電圧のピー
ク値を上げる共振効果が発生する可能性を考慮した上で,試験電圧値を規定することが望ま
しい。
製品規格には,6.1.2.2.2に従って代替の耐電圧試験を規定してもよい。
注記2 JIS C 60664-1の表F.5に示す値は,JIS C 60664-1の6.1.2.2.1.3の計算から導き出したもので
ある。情報の正確さのために,有効けた数を多く示しているが,実際上の適用については,
製品規格で値を丸めてもよい。
6.1.2.2.1.2
インパルス試験電圧の選択
空間距離に関して,機器の絶縁協調に対する耐電圧試験が要求される場合(表2に規定するケースAよ
り小さい空間距離に対して),機器は,4.3.3に従って定められた定格インパルス電圧に相当するインパル
ス試験電圧で試験しなければならない。JIS C 60664-1の表F.5のインパルス試験電圧を適用する。
試験条件について,製品規格には,温度及び湿度の値を規定しなければならない。
20
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
製品規格では,抜取試験又はルーチン試験を形式試験に追加して行わなければならないかどうかを考慮
しなければならない。
6.1.2.2.1.3
JIS C 60664-1の表F.5の説明
JIS C 60664-1の6.1.2.2.1.3を適用する。
6.1.2.2.2
インパルス耐電圧試験の代替試験
6.1.2.2.2.1
一般事項
製品規格では,特定の機器に対する代替方法として交流又は直流耐電圧試験を規定してもよい。
注記 JIS C 60664-1の表F.5に定めるインパルス試験電圧と同じピーク値の交流及び直流の電圧を用
いて行う試験は,空間距離の耐電圧性能を検証する一方で,電圧が長時間印加されることから
固体絶縁物に高いストレスを加えることになる。試験は,ある種の固体絶縁物に過負荷及び損
傷を与えることがある。したがって,製品規格で,6.1.2.2.1に示すインパルス耐電圧試験の代
替として交流又は直流電圧を用いる試験を規定する場合,このことを考慮することが望ましい。
6.1.2.2.2.2
交流電圧を用いる耐電圧試験
JIS C 60664-1の6.1.2.2.2.2を適用する。
6.1.2.2.2.3
直流電圧を用いる耐電圧試験
JIS C 60664-1の6.1.2.2.2.3を適用する。
6.1.3
固体絶縁物の検証試験
6.1.3.1
試験の選択
運転,保管,輸送又は設置の間に機械的ストレスを受けることがある固体絶縁物は,耐電圧試験を実施
する前に,振動及び衝撃に関する試験をしなければならない。製品規格には,試験の方法を規定してもよ
い。
注記 標準試験方法は,JIS C 60068規格群(JISの環境試験方法)の関連の部に規定されている。
絶縁協調に関する試験は形式試験とする。これらの試験は,次を目的とする。
a) 定格インパルス電圧に耐える固体絶縁物の耐電圧性能を検証するインパルス耐電圧試験(5.4.3.2.2参
照)
b) 固体絶縁物の耐電圧性能を検証する交流耐電圧試験
− 短期の短時間過電圧(5.4.3.2.3参照)
− 最大定常電圧
− 反復ピーク電圧(5.4.3.2.4参照)
交流耐電圧試験のピーク値が定格インパルス電圧と等しいか,それよりも大きい場合は,インパル
ス耐電圧試験は交流耐電圧試験によってカバーできる。
ストレスの加わる時間が長くなると,固体絶縁物は,空間距離と比較して異なる耐電圧特性をもつ。
この場合,一般に,耐電圧性能は著しく低下する。したがって,固体絶縁物の耐電圧性能の検証のた
めに規定された交流耐電圧試験を,インパルス耐電圧試験に置き換えてはならない。
c) 固体絶縁物の内部で,次の電圧において部分放電が存在しないことを検証する部分放電試験
− 最大定常電圧
− 長期の短時間過電圧(5.4.3.2.3参照)
− 反復ピーク電圧(5.4.3.2.4参照)
d) 5.4.3.2.5に従って,誘電加熱による破壊がないことを検証する高周波耐電圧試験
製品規格には,機器に発生するそれぞれのストレスについて,どの形式試験が必要かを規定しなければ
21
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ならない。
c) に記載する各電圧のピーク値が,700 Vを超えた場合で,かつ,平均電界強度が1 kV/mmを超える場
合は,固体絶縁物に対する部分放電試験を規定しなければならない。平均電界強度は,ピーク電圧値を,
異なる電位の二つの部分間の距離で除した値とする。
上記の試験は,抜取試験又はルーチン試験としても適切なことがある。ただし,製造中における絶縁の
品質を保証するために,抜取試験及びルーチン試験として,製品規格ではどの試験を実施するかを規定し
なければならない。試験及び適切なコンディショニングは,実際に使用される絶縁システムを損傷するこ
となく障害を検出するのに適切な試験パラメータとともに規定しなければならない。
完成機器を試験する場合は,6.1.4の手順を適用する。
6.1.3.2
コンディショニング
JIS C 60664-1の6.1.3.2を適用する。
6.1.3.3
インパルス耐電圧試験
6.1.3.3.1
試験方法
6.1.2.2.1のインパルス耐電圧試験方法は,固体絶縁物にも適用する。ただし,JIS C 60664-1の表F.5に
よる標高補正係数は適用しない。試験は,各インパルスの間隔を1秒以上とし,各極性について5インパ
ルス行わなければならない。各インパルスの波形は,記録しなければならない(JIS C 60664-1の6.1.3.3.2
参照)。
6.1.3.3.2
合格基準
JIS C 60664-1の6.1.3.3.2を適用する。
6.1.3.4
交流商用周波耐電圧試験
6.1.3.4.1
試験方法
交流商用周波試験電圧の波形は,実質的に正弦波でなければならない。この要求事項は,実効値に対す
るピーク値の値が2(±3 %) であれば満たされる。ピーク値は,6.1.3.1 b) に規定する電圧の最高値に等
しくなければならない。
基礎絶縁及び付加絶縁の場合,試験電圧は,6.1.3.1 b) に規定する電圧と同じ値を用いる。強化絶縁の試
験電圧は,基礎絶縁に対して用いる値の2倍とする。
交流耐電圧試験の電圧は,5秒以内に0 Vから5.4.3.2に規定する値まで一様に上昇させ,60秒以上その
値を維持しなければならない。
製品規格において,短期の短時間過電圧を試験電圧として印加するような過酷な試験では,試験時間を
5秒という最小値に短縮してもよい。
注記1 特定のタイプの絶縁の場合,固体絶縁物の弱点を検出するために,より長い試験時間が必要
になることがある。
注記2 高い反復ピーク電圧を含む高い定常ストレスに関する試験については,製品規格で試験電圧
に安全マージンを導入することを考慮することが望ましい。
交流耐電圧試験を交流電圧のピーク値に等しい値の直流電圧で代替する必要がある場合があるが,この
試験は,交流耐電圧試験よりも過酷ではない。製品規格では,この状況を考慮しなければならない(6.1.3.6
参照)。
試験機器は,IEC 61180-2で規定する。発生器の短絡出力電流は,200 mA以上が望ましい。
注記3 3 kVを超える試験電圧に対しては,試験機器の定格容量は600 VA以上で十分である。
試験機器のトリップ電流は,100 mAトリップ電流か,又は6 kVを超える試験電圧の場合は,可能な最
22
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
高値に調節しなければならない。
注記4 ルーチン試験の場合は,より低いレベルにトリップ電流を調整できるが,最低3.5 mAまでで
ある。
6.1.3.4.2
合格基準
固体絶縁物は,いかなる破壊も生じてはならない。
6.1.3.5
部分放電試験(PD試験)
6.1.3.5.1
一般事項
正弦商用周波試験電圧の波形は,実質的な正弦波とする。この要求事項は,実効値に対するピーク値の
値が2(±3 %) であれば満たされる。Utのピーク値(図1参照)は,適切である限り,係数F1,F3及び
F4を考慮して,6.1.3.1 c) に規定する電圧の最高値に等しくなければならない。
部分放電試験方法は,JIS C 60664-1の附属書Cで説明している。この試験を行う場合は,次の係数を用
いる。これらの例は,反復ピーク電圧Urpについて示すものであるが,この係数は同様に,最高定常電圧
及び長期の短時間過電圧にも適用できる。
F1: 基礎及び付加絶縁の部分放電試験及び規定値の決定のための基本安全係数
部分放電停止電圧は,温度のような環境条件によって影響されることがある。基本安全係数F1は,
これらの影響を考慮し,1.2とする。したがって,基礎及び付加絶縁に対する部分放電停止電圧は,少
なくとも1.2 Urpとする。
F2: 部分放電ヒステリシス係数
部分放電開始電圧Uiと部分放電停止電圧Ueとの間でヒステリシスが生じる。実際の試験では,F2
は1.25を上回ることはない。したがって,基礎及び付加絶縁の場合,試験電圧の初期値はF1×F2×
Urp,すなわち,1.2×1.25 Urp=1.5 Urpとする。
注記 これは,部分放電がUiを超える過渡過電圧によって開始され,かつ,例えば,Ueを超える反復
ピーク電圧値によって持続されることがあることを考慮している。この状況は,試験に対しイ
ンパルスと交流電圧との組合せを必要とし,実際的ではない。したがって,交流試験は,最初
に大きくした電圧を使って行われる。
F3: 強化絶縁の部分放電試験及び規定値の決定のための付加的な安全係数
強化絶縁の場合,より厳密な危険評価を要求する。したがって,付加的な安全係数F3=1.25を必要
とする。試験電圧の初期値はF1×F2×F3×Urp,すなわち,1.2×1.25×1.25 Urp=1.875 Urpとする。
F4: 低圧系統の公称電圧Unからの偏差を補正する係数
低圧系統に接続する回路の場合,この係数は,その公称値から電源電圧の最大の偏差を考慮する。
したがって,公称電圧Unでの波高値は,F4=1.1を乗じなければならない。
6.1.3.5.2
検証
この試験は,いかなる部分放電も次の最も高い値で持続しないことを検証するためのものである。
− 最大定常電圧のピーク値
− 長期の短時間過電圧のピーク値(5.4.3.2.3参照)
− 反復ピーク電圧(5.4.3.2.4参照)
注記 更に部分放電の開始及び停止電圧の実際の値が重要な場合について,その測定手順はJIS C
60664-1のD.1に記述されている。
試験を行うとき,部分放電試験は,一般的に構成部品,小形アセンブリ及び小形機器に適用する。複雑
な機器を試験するときには,機器の端子間で測定するとき,部分放電信号に極度の減衰があることを考慮
23
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
しなければならない。
最低の放電停止電圧の要求値は,前記の最高電圧より係数F1だけ高いものでなければならない。
試料の種類に従って,製品規格には,次のことを規定しなければならない。
− 試験回路(JIS C 60664-1のC.1)
− 測定器(JIS C 60664-1のC.3及びJIS C 60664-1のD.2)
− 測定周波数(JIS C 60664-1のC.3.1及びJIS C 60664-1のD.3.3)
− 試験手順 (6.1.3.5.3)
6.1.3.5.3
試験手順
試験電圧Utの値は,要求部分放電停止電圧Ueの1.2倍とする。部分放電ヒステリシス(6.1.3.5.1参照)
に従って,試験電圧の1.25倍の初期値を適用しなければならない。
電圧は,0 Vから初期試験電圧F2×Ut,すなわち,6.1.3.5.2の最高電圧にF1×F2=1.2×1.25=1.5を乗じ
た値まで一様に上げる。そこで規定時間t1の間,一定の値に維持する。ただし,t1は5秒以下とする。部
分放電が発生しなかった場合は,t1後に試験電圧を0にする。部分放電が発生したら,その電圧を試験電
圧Utまで下げ,部分放電の大きさが測定されるまで,それを規定時間t2の間,一定に維持する。
図1−試験電圧
6.1.3.5.4
合格基準
JIS C 60664-1の6.1.3.5.4を適用する。
6.1.3.6
直流耐電圧試験
交流電圧のピーク値に等しい試験電圧を用いる直流耐電圧試験は,交流電圧及び直流電圧に対する固体
絶縁物の絶縁特性が異なるために,交流耐電圧試験と完全に等価ではない。ただし,純粋な直流電圧スト
レスの場合は,直流耐電圧試験が適切である。
直流試験電圧は,実質的にリプルがないものでなければならない。この要求事項は,電圧の平均値に対
するピーク値の値が1.0 (±3 %) であれば満たされる。直流試験電圧の平均値は,6.1.3.1 b) に規定する交
流試験電圧のピーク値に等しくなければならない。
基礎絶縁及び付加絶縁の場合,試験電圧は,6.1.3.1 b) に規定する電圧と同じ値を用いる。強化絶縁の試
験電圧は,基礎絶縁に対して用いる値の2倍とする。
直流試験電圧は,5秒以内で0 Vから5.4.3.2に規定する値まで一様に上昇させ,60秒以上,その値を維
持しなければならない。
24
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記1 場合によっては,静電容量による充電電流が大きすぎて,より長い上昇時間が必要なことが
ある。
試験機器は,IEC 61180-2で規定する。発生器の短絡出力電流は,200 mA以上が望ましい。
注記2 3 kVを超える試験電圧の場合,試験機器の定格容量は,600 VA以上で十分である。
試験機器のトリップ電流は,100 mAトリップ電流か,又は6 kVを超える試験電圧の場合は,可能な最
高値に調節しなければならない。
注記3 ルーチン試験の場合,より低いレベルにトリップ電流を調節できるが,最低10 mAまでであ
る。
6.1.3.7
高周波耐電圧試験
5.4.3.2.5による高周波電圧の場合,6.1.3.4による交流耐電圧試験又は6.1.3.5による部分放電試験の追加
又は代替試験が必要になることがある。
注記 高周波における絶縁の耐電圧性能及び試験方法については,JIS C 60664-4に規定している。
6.1.4
完成機器での耐電圧試験の実施
6.1.4.1
一般事項
JIS C 60664-1の6.1.4.1を適用する。
6.1.4.2
試験すべき部分
JIS C 60664-1の6.1.4.2を適用する。
6.1.4.3
機器回路の準備
JIS C 60664-1の6.1.4.3を適用する。
6.1.4.4
試験電圧値
低圧系統電源に接続される回路は,6.1.2及び6.1.3に従って試験する。
機器の二つの回路間の試験電圧は,これらの回路間で実際に発生し得る最高電圧に対応する値とする。
6.1.4.5
試験判定基準
JIS C 60664-1の6.1.4.5を適用する。
6.1.5
その他の試験
JIS C 60664-1の6.1.5を適用する。
6.1.6
試験パラメータの測定精度
JIS C 60664-1の6.1.6を適用する。
6.2
沿面距離及び空間距離の測定
この規格では,JIS C 60664-1の6.2の例1,例5及び例11だけを適用する。
25
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A
(参考)
絶縁抵抗を維持するための距離の決定
A.1 序文
この附属書は,250 mmまでの沿面距離に関連する10 000 Vまでの実効値電圧に対して,適切な絶縁抵
抗を維持するための沿面距離の決定に関する情報を提供する。適用範囲は2 mmまでの距離に制限されて
いるが,この沿面距離の特性が湿度レベルに基づいたものであり,汚損度に基づいたものでないために,
この情報を提供する。
A.2 最小絶縁抵抗と湿度レベルとの相関関係
規定の最大漏れ電流又は最小絶縁抵抗要求事項への適合は,表A.1の抵抗値を用いて,かつ,絶縁表面
に予想される最高相対湿度を考慮することで,確認することができる。表A.1の値は,長さが50 mmの並
行導体間の,表A.2に示す沿面距離に対する研究データに基づいている。その他の長手方向距離について
は,絶縁抵抗は反比例の関係をもつと推定することができる。
表A.1の値は,湿度レベルとミクロ環境の相対湿度との間の関係を示し,絶縁表面上に結露がない限り
有効である。
表A.1−最小絶縁抵抗
湿度レベル
相対湿度
最小絶縁抵抗
連続
%
短時間
%
Ω
HL 2 a)
≦75
≦75
>106
HL 2
≦75
≦85
>105
HL 3
≦95
≦95
>104
注記1 長時間にわたって存在する95 %よりも高い相対湿度は,絶縁抵抗を更に低下させることがある。ただし,
一般に,絶縁抵抗は103 Ωよりも上にとどまる。
注記2 最小絶縁抵抗の値は,最悪の状態に対して適用する。平均最小値は,少なくとも一段階高い大きさのレベ
ルである。
注記3 試験結果から,相対湿度を50 %から75 %に増大させた場合,絶縁抵抗は大きさのレベルが二段階低下する。
相対湿度を75 %から95 %に増大させると,絶縁抵抗は更に大きさのレベルが約二段階低下する。
注a) 106 Ωを超える最低絶縁抵抗は,相対湿度が短時間の間でも75 %を超えない場合は,HL 2の状態の下でだけ
維持することができる。
A.3 規定値の決定
表A.2及び表5の距離は,表A.1に規定する最高湿度について適用する。沿面距離に電圧を印加してい
る間の95 %を超える湿度又は結露は,絶縁抵抗を永久的に低下させる。
表A.2の沿面距離の最小距離は,体系的に収集したデータの評価によって判定され,少なくとも15年間
の連続電圧ストレスにある機器の予想寿命について計算されている。
26
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表A.2−最小絶縁抵抗を維持するための沿面距離
電圧実効値a)
最小沿面距離
湿度レベル
V
HL 2
直流電圧
mm
HL 2
交流電圧
mm
HL 3
直流電圧
mm
HL 3
交流電圧b)
mm
≦40
1.0
1.00
50
1.0
1.25
63
0.16
0.16
1.0
1.6
80
0.19
0.19
1.2
2.0
100
0.22
0.22
1.4
2.5
125
0.25
0.27
1.6
3.1
160
0.30
0.42
1.9
4.0
200
0.35
0.66
2.2
5.0
250
0.40
1.0
2.5
6.3
320
0.63
1.6
3.2
8.0 c)
400
1.0
2.5
4.0
10.0
500
1.5
4.0
5.0
12.5
630
2.5
6.3
6.3
16
800
4.0 c)
8.0 c)
8.0 c)
20
1 000
5.0
10.0
10.0
25
1 250
6.3
12.5
12.5
32
1 600
8.0
16
16
40
2 000
10.0
20
20
50
2 500
12.5
25
25
63
3 200
16
32
32
80
4 000
20
40
40
100
5 000
25
50
50
125
6 300
32
63
63
160
8 000
40
80
80
200
10 000
50
100
100
250
注a) この電圧は,絶縁ごとに次のようになる。
− 機能絶縁の場合,動作電圧
− 低圧系統電源から直接給電される回路(4.3.2.2.1参照)の基礎及び付加絶縁の場合,機器の定格電圧に基
づいてJIS C 60664-1の表F.3a又は表F.3bに集約して示した電圧,又は定格絶縁電圧
− 低圧系統電源から直接給電されない系統,機器及び内部回路(JIS C 60664-1の4.3.2.2.2参照)の基礎及
び付加絶縁の場合,定格電圧で供給し,かつ,機器の定格の動作状態で最も好ましくない組合せ条件に
おける系統,機器又は内部回路に発生し得る最高実効値電圧
b) ガラス−エポキシ積層板 (FR4) 及びポリカーボネートは,これらの条件下では使用しないことが望ましい。
c) これらの値及びより高い電圧の値は,研究データの内挿法によって決定されている。
27
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B
(規定)
水分吸着試験
B.1 目的
フラッシオーバに関する沿面距離の規定値の決定の場合は,絶縁材料の水分吸着特性が関連する。湿度
がある場合の様々な絶縁材料の表面のインパルス耐電圧性能によって,水分吸着グループWAG 1,WAG 2,
WAG 3及びWAG 4が定められている。この試験の目的は,臨界相対湿度を求めて,絶縁材料の表面に対
する水分吸着グループを評価することである。
B.2 高湿度下の沿面距離の耐性
沿面距離の耐電圧性能は,湿度が高いと著しく低下することがある。これらの条件下では,水は絶縁材
料の表面上に吸着する。沿面距離が小さければ小さいほど,この現象の影響は大きくなる。
B.3 試験方法
B.3.1 試料
厚さがほぼ1.5 mmで,図B.1による寸法及び電極構成をもつ絶縁材料の新しい試料を使用する。これは,
プリント配線板処理法によって作成することができ,その場合は,生産残留物が試験結果に著しく影響す
ることがあるために,適切な清浄化が不可欠である。試験の評価には,すべての測定点の試験結果を含め
なければならない。
注記 プリント配線板処理法によって試料を作成できない場合は,平らな表面をもつ一片の材料を,
図B.1に示すような平面電極をその表面に押し付けて使用してよい。複合材料の不均一な構造
を原因とする臨界相対湿度のばらつきを考慮するために,同一試料の異なる場所で,試験を最
低10回は行うことが望ましい。ばらつきが容認される場合には,結果の平均値を計算する。
B.3.2 インパルス耐電圧の測定
試験回路を,図B.2に示す。電圧波形が1.2/50 μs(IEC 61180-1参照)で,出力インピーダンスが50 Ω
〜500 Ωのインパルス発生器で,負極性の試験電圧を印加する。試料を恒温恒湿槽内に置き,相対湿度を
適切な値に設定する。試料にインパルス発生器で電圧を印加する。インパルス耐電圧の統計的ばらつきは,
例えば,水銀ランプによって得られるUV照射で減少させることができる。フラッシオーバ試験を,同一
試料上で連続10回〜20回実施することが可能な場合は,UV照射の必要はない。この場合,フラッシオー
バ電圧値のばらつきを統計的に解析し,耐電圧は下限値 (−3σ) とする。印加試験電圧は,高電圧プロー
ブ及びデジタルストレージオシロスコープを用いて測定することができる。
注記 適切なインタフェースが得られるなら,試験手順をコンピュータで制御してもよい。
B.3.3 試験手順
図B.1に示すように,試料を6.3 mm,2.5 mm,1 mm,0.4 mm及び0.16 mmの電極間隔で作成する。試
料は,例えば,成形,機械加工など,材料の表面に対する製造法の影響を考慮することが望ましい。
次の手順を提案する。
試料を,(25±1) ℃の温度及び (70±3) %の相対湿度で最低4時間,維持する。このコンディショニング
の後,B.3.2に従って,インパルス耐電圧を様々な相対湿度の下で測定する。
28
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
初期相対湿度は70 %とし,5 %刻みでできるだけ迅速に,95 %の最大値まで増大させる。各段階で,イ
ンパルス耐電圧を測定する。インパルス耐電圧が70 %の相対湿度における値の95 %まで低下したとき,
臨界湿度に到達する。
フラッシオーバが発生するまで,各電極の間に加わるインパルス電圧の振幅を増加させる。B.3.2に従っ
て,インパルス耐電圧を評価する。
各電極間隔について臨界相対湿度を求め,その水分吸着グループを5.3.2.3.5に従って確定する。5.3.2.3.5
に記載する材料に関する臨界相対湿度の試験結果のグラフ表示を,図B.3に示す。
注記1 図B.1による試料には,各電極間隔について複数の測定点(供試体)が含まれており,電圧
調節のための初期試験を考慮している。
注記2 図B.3の縦軸は,1 %の湿度の目盛になっている。
単位 mm
図B.1−試料のレイアウト
29
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
1
インパルス発生器
2
恒温恒湿槽
3
試料
4
デジタルストレージオシロスコープ
5
コンピュータ
6
UV照射(B.3.2参照)
7
高電圧プローブ
8
データバス
図B.2−試験回路
30
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
A セラミック(97 % Al2O3,つやなし)
B ガラス−エポキシ積層板FR4
C ポリエステル樹脂(熱硬化性),タイプ802
D フェノール樹脂,タイプ31.5
E ガラス−エポキシ積層板FR4に積層したポリイミドフィルム
F
フェノール樹脂板紙FR2
G ポリエステル積層板GPO III
H メラミン樹脂,タイプ150
I
ポリブチレンテレフタレート
K ポリカーボネート
図B.3−絶縁材料の臨界相対湿度
31
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
規定値の決定図
次の線図は,絶縁協調のための空間距離及び沿面距離の規定値の決定に影響を与える各要因間の関係を
示す。この図では,主要な要因に焦点を当てており,関連項目を全面的に見直そうとするものではない。
なお,空間距離及び沿面距離の規定値の決定は,独立したものであることに注意が必要である。したが
って,空間距離と沿面距離とが同一絶縁面にわたって一致する場合,空間距離又は沿面距離のうちいずれ
か大きい方を使用する。
注記
外部電圧の影響を受けるすべての回路を含む。
図C.1−低圧系統電源に直接接続される回路の空間距離の決定図
低圧系統電源に
直接接続される回路
(注記参照)
最小空間距離は表2又は表3からの値のより大きい方
定格インパルス電圧
JIS C 60664-1の表F.1
定常状態電圧
又は反復ピーク電圧
若しくは短時間過電圧
過電圧カテゴリ
電源系統の公称電圧
空間距離
表2
不平等電界状態
空間距離
表3
不平等電界状態
32
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記
外部過渡電圧による著しい影響を受けることのないすべての回路を含む。
図C.2−低圧系統電源に直接接続されない回路の空間距離の決定図
低圧系統電源に
直接接続されない回路
(注記参照)
最小空間距離は表2又は表3からの値のより大きい方
空間距離
表2
不平等電界状態
測定又は制御する
過電圧
空間距離
表3
不平等電界状態
定常状態電圧
又は反復ピーク電圧
若しくは短時間過電圧
33
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 点線で示している枠は,単なる参考である。
注a) 最大値の電圧を使用する。
b) 導電路を形成しないガラス,セラミック又はその他の無機物の場合,沿面距離は関連空間距離の値よりも大き
い必要はないが,5.3.2.3.4を参照。
c) HL 1の場合は,関連空間距離の値を用いる。HL 2又はHL 3の場合は,表5を用いる。
d) 水分吸着グループは,附属書Bの試験で決定してよい。
e) HL 1の場合は,関連空間距離の値を用いる。HL 2又はHL 3の場合は,表A.2を用いる。
図C.3−沿面距離の決定図
トラッキング
(又は侵食)を
回避するため
の距離の決定
表4
動作電圧
定格電圧
定格絶縁
電圧
汚損度
絶縁材料
グループ
(CTI)
すべての回路
フラッシ
オーバを
回避するため
の距離の決定
表5
最小沿面距離は
値の大きい方
沿面距離は沿面距離及び空間距離について決定した最小値の大きい方
定格インパルス
電圧
反復ピーク電圧
定常状態ピーク
電圧
短時間ピーク
過電圧
湿度レベル
絶縁材料
水分吸着
グループ
WAG 1,WAG 2
WAG 3又は
WAG 4
最小絶縁抵抗
を維持する
ための距離の
決定
表A.2
動作電圧
定格電圧
定格絶縁電圧
湿度レベル
HL 2及び
HL 3
a)
a)
a)
b)
c)
d)
e)
34
C 60664-5:2009 (IEC 60664-5:2007)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
湿度条件下での沿面距離の耐電圧試験
湿度条件下での耐電圧性能に関して沿面距離を試験するための適切な試験は,インパルス電圧試験であ
る。分離した沿面距離に対してこの試験を適用することは難しいことではないが,沿面距離を分離するこ
とは必ずしも可能とは限らないため,完成機器に対してこの試験を用いることは実際的でないことがある。
次の試験手順は,湿度条件下での機器に対するインパルス電圧試験に取って代わることができる,交流
又は直流試験を導入する。この試験はまた,短期の短時間過電圧に関する耐電圧要求事項も満たす。
湿度条件は,適切な湿度レベルに従って選択する。次のレベルの相対湿度を推奨する。HL 2,85 %及び
HL 3,95 %。機器は,試験前の少なくとも4時間,その湿度レベル及び (25±1) ℃の温度に維持する。
回路は,JIS C 60664-1の6.1.4.3に従って,かつ,図D.1に示すように準備する。試験電圧は,50/60 Hz
の周波数をもつか,又は電圧値が交流ピーク電圧に等しい直流である。基礎絶縁の場合,試験電圧の実効
値は,1 200+Un又は,JIS C 60664-1の6.1.2.2.1.3による補正係数で補正した,JIS C 60664-1の表F.1に従
った関連定格インパルス電圧の0.707倍の,いずれか高い方である。電圧は,6.1.3.4.1に規定した時間,
印加する。
注記 標高2 000 mでの定格電圧Unが250 Vの過電圧カテゴリII内の機器の例として,基礎絶縁の交
流試験電圧の値は1 200 V+250 V又は0.707×2 500 V×1のいずれか高い方であり,したがっ
て,実効値試験電圧は1 768 Vである。該当する直流試験電圧は1.414×(1 200 V+250 V) 又は
2 500 Vのいずれかより高い方であり,したがって,直流試験電圧は2 500 Vである。
図D.1−耐電圧試験のための配置
参考文献 JIS C 0920 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)
JIS C 60364-4-44 建築電気設備−第4-44部:安全保護−妨害電圧及び電磁妨害に対する保護
IEC 61180-1,High-voltage test techniques for low-voltage equipment−Part 1: Definitions, test and
procedure requirements
IEC 61180-2,High-voltage test techniques for low-voltage equipment−Part 2: Test equipment
試験発生器
(交流又は直流)
相及び中性端子
機器のサンプル
接地端子