C 60068-3-1:2016 (IEC 60068-3-1:2011)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 試験方法の選択 ················································································································ 2
4.1 一般的背景 ··················································································································· 2
4.2 熱伝達のメカニズム ······································································································· 3
4.3 試験槽 ························································································································· 6
4.4 測定 ···························································································································· 7
附属書A(参考)空気の流れが供試品の表面温度及び試験槽内の温度勾配に与える影響 ····················· 8
C 60068-3-1:2016 (IEC 60068-3-1:2011)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人日本
規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準
調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS C 60068-3-1:1995は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS C 60068-3の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 60068-3-1 第3-1部:低温(耐寒性)試験及び高温(耐熱性)試験の支援文書及び指針
JIS C 60068-3-2 第3-2部:温度/減圧複合試験を理解するための必す(須)情報
JIS C 60068-3-3 機器の耐震試験方法の指針
JIS C 60068-3-4 第3-4部:高温高湿試験の指針
JIS C 60068-3-5 第3-5部:温度試験槽の性能確認の指針
JIS C 60068-3-6 第3-6部:支援文書及び指針−温湿度試験槽の性能確認の指針
JIS C 60068-3-7 第3-7部:支援文書及び指針−負荷がある場合の低温試験(試験A)及び高温試験
(試験B)の試験槽の温度測定のための指針
JIS C 60068-3-8 第3-8部:振動試験方法の選択の指針
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日本工業規格 JIS
C 60068-3-1:2016
(IEC 60068-3-1:2011)
環境試験方法−電気・電子−
第3-1部:低温(耐寒性)試験及び高温(耐熱性)
試験の支援文書及び指針
Environmental testing-
Part 3-1: Supporting documentation and guidance-Cold and dry heat tests
序文
この規格は,2011年に第2版として発行されたIEC 60068-3-1を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本工業規格である。
1
適用範囲
この規格は,低温(耐寒性)試験及び高温(耐熱性)試験の支援文書であり,試験の実施についての指
針を示す。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60068-3-1:2011,Environmental testing−Part 3-1: Supporting documentation and guidance−Cold
and dry heat tests(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 60068-1 環境試験方法−電気・電子−第1部:通則及び指針
注記 対応国際規格:IEC 60068-1,Environmental testing−Part 1: General and guidance(IDT)
JIS C 60068-2-1 環境試験方法−電気・電子−第2-1部:低温(耐寒性)試験方法(試験記号:A)
注記 対応国際規格:IEC 60068-2-1,Environmental testing−Part 2-1: Tests−Test A: Cold(IDT)
JIS C 60068-2-2 環境試験方法−電気・電子−第2-2部:高温(耐熱性)試験方法(試験記号:B)
注記 対応国際規格:IEC 60068-2-2,Environmental testing−Part 2-2: Tests−Test B: Dry heat(IDT)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
発熱供試品(heat-dissipating specimen)
2
C 60068-3-1:2016 (IEC 60068-3-1:2011)
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表面上の最高温度点を,自由空間状態でJIS C 60068-1に規定する気圧で温度安定に達した後に測定した
とき,周囲雰囲気の温度と供試品との温度差が5 Kを超える供試品。
3.2
非発熱供試品(non heat-dissipating specimen)
供試品又は近くに置かれている他の供試品の周囲の空気温度に影響を与えるほどには熱を発生しない供
試品。
3.3
自由空間状態(free-air conditions)
空気の動きが,発熱供試品だけから影響を受けるような無限の広がりをもつ空間の状態。
4
試験方法の選択
4.1
一般的背景
4.1.1
一般事項
供試品の性能は,供試品が発生する熱によって,影響又は制約を受けることがある。影響の大きさは,
外部の周囲条件(気候又は試験槽)の温度勾配及び供試品自体の内部温度によって決まることがある。影
響の大きさを決定し,供試品が適切に設計されていることを確かめるために,低温試験及び/又は高温試
験を行う。
4.1.2
周囲温度
供試品が受ける周囲温度の上限値及び下限値は,指定することが望ましい。低温試験の推奨値は,JIS C
60068-2-1に規定している。高温試験の推奨値は,JIS C 60068-2-2に規定している。
熱伝達は,供試品周辺の温度勾配に関係する。したがって,供試品近傍では,周囲温度は,熱伝達によ
る影響を考慮して決めることが望ましい。試験の実施に当たっては,供試品の間隔に関係する空気の流れ
も考慮することが望ましい。
4.1.3
供試品の温度
発熱供試品の場合,供試品の性能は供試品自体の温度から影響を受けることがある。このため,試験環
境を制御する場合,試験中に供試品の内部及び外部の両方など,異なる場所の温度を測定する必要がある
ことを考慮することが望ましい。
4.1.4
非発熱供試品の場合
周囲温度が一様で一定であり,供試品内部に熱の発生がない場合,周囲の雰囲気が高温のときは熱が周
囲の雰囲気から供試品に流れる。逆に,周囲の雰囲気が低温のときは熱が供試品から周囲の雰囲気に流れ
る。この熱伝達は,供試品の温度と周囲の雰囲気とが完全に熱平衡に達するまで続く。その時点で熱伝達
は停止し,周囲温度が変化しない限り熱伝達は起こらない。
4.1.5
発熱供試品の場合
供試品内部で熱が発生する場合,供試品の温度は周囲温度を超える安定点まで上昇する。この温度上昇
は安定点に達するまで続き,熱の対流,放射,及び/又は伝導によって,熱は供試品から周囲の雰囲気に
継続的に流れ,このため供試品は冷却される。
複数の供試品の高温試験を同一の試験槽の中で行う場合,全ての供試品が,同一の周囲温度に置かれ,
同一の取付け条件であることを確かめる必要がある。ただし,低温試験を行う場合には,1個の供試品と
複数の供試品とを区別して試験する必要はない。
3
C 60068-3-1:2016 (IEC 60068-3-1:2011)
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4.2
熱伝達のメカニズム
4.2.1
対流
対流による熱伝達は,発熱供試品の試験を行う上で重要な要素となる。供試品表面から周囲雰囲気への
熱伝達係数は,周囲雰囲気の風速の影響を受ける。風速が大きくなるほど,熱伝達が大きくなる。したが
って,周囲雰囲気の温度が同じ場合,風速が大きいほど,供試品の表面温度は低くなる。この効果を図1
及び図2に示す。
500
400
300
200
100
50
0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
0.25 W
0.5 W
1 W
1.5 W
3 W
4.5 W
6 W
9 W
空気の流れ
ほうろう巻線抵抗器
風速(m/s)
温
度上
昇(
K
)
図1−空気の流れが巻線抵抗器の表面温度に与える影響の実験データ(垂直方向の空気の流れ)
4
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500
400
300
200
100
50
0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
0.25 W
0.5 W
1 W
1.5 W
3 W
4.5 W
6 W
9 W
空気の流れ
ほうろう巻線抵抗器
風速(m/s)
温度
上
昇(
K
)
図2−空気の流れが巻線抵抗器の表面温度に与える影響の実験データ(水平方向の空気の流れ)
風速による供試品の表面温度への影響に加えて,試験槽内の空気の流れも,試験中の供試品表面の温度
分布に影響を与える。このことを図3に示す。
したがって,発熱供試品を試験する場合,試験条件を一般的な自由空間状態又は供試品の実使用条件に
できるだけ近づけるために,供試品周辺又は表面の空気の流れの影響を把握しておくことが望ましい。
5
C 60068-3-1:2016 (IEC 60068-3-1:2011)
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90°
270°
180°
0°
空気の
流れ
∆T=100 K
90 K
80 K
70 K
60 K
50 K
40 K
30 K
20 K
10 K
曲線の算出に当たっては,供試品の
熱伝導は無視している(最悪値)。
ΔT:
周囲温度と供試品の表面温度との差
V:
風速(m/s)
空気温度: 70 ℃
円柱の直径: 6 mm
単位表面積当たりの放熱:1.5 kW /m2
V=2 m/s
V=1 m/s
V=0.5 m/ s
図3−風速0.5 m/s,1 m/s及び2 m/sの空気の流れの中に置かれた均一に発熱している円柱体の温度分布
4.2.2
放射
発熱供試品の試験のための試験槽の条件を考える場合,放射による熱伝達は無視できない。“自由空間状
態”では,供試品から伝わる熱は周囲雰囲気に吸収される。
4.2.3
伝導
伝導による熱伝達は,取付具及びその他の接続部品の熱的な特性によって決まる。試験の前にこれらの
特性を把握しておくとよい。
6
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発熱供試品の多くは,ヒートシンク又はその他の熱伝導の良い部品に取り付けているので,一定量の熱
が伝導によって移動する。
製品規格には,取付具の熱的な特性を規定し,試験を行うときに,これらの特性を再現することが望ま
しい。
供試品を熱伝導率の異なる方法で取り付けることができる場合には,発熱供試品の高温試験のときは熱
伝導率の低い取付具を用い,その他の試験(非発熱供試品の高温試験,及び発熱供試品又は非発熱供試品
の低温試験)のときは熱伝導率の高い取付具を用いることが望ましい。
4.2.4
強制空気循環
供試品の表面を代表する点の温度が試験槽内の風速に過度に影響を受けないことを確認するために,試
験槽内に供試品を置き,測定及び試験に用いる標準大気条件(JIS C 60068-1参照)で測定することが望ま
しい。試験槽内の強制空気循環の影響によって,供試品の全ての点の表面温度の低下が5 K以内の場合に
は,強制空気循環による冷却効果は無視してもよい。
表面温度の低下が5 Kを超える場合には,規定する試験条件における表面温度の算出の基礎とするため
に,供試品の表面の代表する幾つかの点の温度を測定することが望ましい。この測定は,製品規格に規定
する試験温度での負荷状態で行うことが望ましい。
周囲雰囲気と供試品表面との温度差が5 Kよりも小さい場合には,異なる周囲雰囲気温度で試験を行っ
ても,表面温度は同一とみなすことができる。
代表する温度測定点としてどこを選択するのかは,供試品の詳細情報(温度分布,熱的に重要な意味を
もつ点など)に基づくことが望ましい。類似する供試品に対して同じような試験を長期間行う場合には,
試験槽の性能を1回の確認試験で評価してもよいが,それ以外の場合には,異なる供試品の試験を行う前
に,試験槽の性能を評価する必要があるかもしれない。
4.3
試験槽
4.3.1
一般
非常に大形の試験槽であっても,供試品周囲の空気循環及び温度分布は,実際の自由空間状態とは同じ
にならない可能性がある。試験の目的として,自由空間状態を再現しようとすることは現実的ではないが,
これらの状態の影響をシミュレートすることは可能である。ただし,有効空間において空気の流れが小さ
い適切な大きさの試験槽では,供試品の温度に対して自由空間状態とほぼ同様の影響を与えることが,実
験結果及び試験経験から確認されている。
発熱供試品の試験に影響を与えると考えられる試験槽のパラメータを,表1に示す。
表1−発熱供試品の試験に影響を与えるパラメータ
熱の伝達機構
対流
放射
伝導
自由空間状態
強制空気循環
試験槽のパラメータ 試験槽の大きさ
試験槽の大きさ,
風速
試験槽壁の放射率
取付具の熱伝導率
4.3.2
試験槽の設定指針
4.3.2.1
自由空間状態の効果をシミュレートするための槽の設計
有効空間の温度調節に用いる加熱及び冷却部品は,有効空間内に取り付けないほうがよい。
7
C 60068-3-1:2016 (IEC 60068-3-1:2011)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.3.2.2
強制空気循環を行う槽の設計
空気の流れはできるだけ均一にして,対流によって起きる温度の変動を最小化する方向に向けることが
望ましい。空気の流れの影響を,附属書Aに詳細に示す。
4.4
測定
4.4.1
温度
自由空間状態以外で,発熱供試品に関する試験を行う場合,供試品の表面又は供試品の内部の種々の点
での温度を測定することを推奨する。代表する温度測定点としてどこを選択するのかは,供試品の詳細情
報(温度分布,熱的に重要な意味をもつ点など)に基づくことが望ましい。
4.4.2
風速
同一の試験槽内で複数の供試品の試験を行う場合には,試験槽内の状態が均一なことを確かめるために,
試験槽内の風速を把握しておくことが望ましい。風速は,試験槽内の有効空間,並びに供試品の寸法及び
形状に基づいて,測定することが望ましい。
8
C 60068-3-1:2016 (IEC 60068-3-1:2011)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A
(参考)
空気の流れが供試品の表面温度及び試験槽内の温度勾配に与える影響
A.1 算出に用いる記号
空気の流れが供試品の表面温度及び試験槽内の温度勾配に与える影響の算出には,次の記号を用いる。
V:
風速(m/s)
λ(V):
熱伝達率[W/(m2・K)]
P:
単位時間当たりの伝熱量(W)
F:
放熱面の有効面積(m2)
G:
単位時間当たりの出入りする空気の質量(kg/s)
Cp:
空気の定圧比熱[1 000 J/(kg・K)]
γ:
空気の密度(1.29 kg/m3)
S:
試験槽の断面積(m2)
T:
表面温度(K)
A.2 供試品の表面温度
供試品の表面温度は,次の式によって表すことができる。
F
P
V
λ
T
×
=
)
(
1
ここに,λ(V)は,切片a及び傾きbの一次関数で,次のとおり表す。
λ(V)=a+bV
a≒10
V<ba<3(m/s)
実験結果によって,試験に適する低い風速では,b≒3で,風速が上がるとともにbは増加し,風速3 m/s
で,b≒8となる。
V=0.3(m/s)の場合,Tの誤差は10 %以下である。
A.3 吸気温度と排気温度との間の温度勾配
吸気温度と排気温度との間の温度勾配は,次の式によって表すことができる。
G
C
P
T
×
p
air
Δ
=
例 各辺0.5 mの立方体の槽で,風速0.3 m/s,槽内の伝熱量100 Wの場合の温度勾配
S=0.25 m2
)
(
≒
K
1
1.29
0.3
0.25
000
1
100
Δ
p
air
×
×
×
=
×
×
×
=
γ
V
S
C
P
T
100 Wまでの放熱の場合には,温度勾配にあまり影響はない。1 kWになると,より大きな試験槽の使用
又はより速い空気循環を考えることが望ましい。