C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 2
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義··················································································································· 3
4 試験装置に対する要求事項 ································································································· 5
4.1 一般事項 ······················································································································ 5
4.2 基本動作 ······················································································································ 5
4.3 横運動 ························································································································· 5
4.4 取付け ························································································································· 5
4.5 計測システム ················································································································ 6
5 厳しさ···························································································································· 6
6 前処理···························································································································· 6
7 初期測定及び機能確認試験 ································································································· 6
8 試験······························································································································· 6
8.1 一般事項 ······················································································································ 6
8.2 初期振動応答検査 ·········································································································· 6
8.3 等化のための低レベル予備加振 ························································································ 7
8.4 供試品の機能試験 ·········································································································· 8
8.5 最終振動応答検査 ·········································································································· 8
9 後処理···························································································································· 8
10 最終検査及び機能検査 ····································································································· 8
11 製品規格に規定すべき事項 ······························································································· 8
12 試験報告書に記載する事項 ······························································································· 9
附属書A(参考)指針 ·········································································································· 11
参考文献 ···························································································································· 16
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第14条第1項の規定に基づき,認定産業標準作成機関である一般財団法人
日本規格協会(JSA)から,産業標準の案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があり,経済産業
大臣が制定した日本産業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実用新案権に関わる確認に
ついて,責任はもたない。
JIS C 60068規格群(環境試験方法−電気・電子)は,次に示す部で構成する。
JIS C 60068-1 第1部:通則及び指針
JIS C 60068-2-1 第2-1部:低温(耐寒性)試験方法(試験記号:A)
JIS C 60068-2-2 第2-2部:高温(耐熱性)試験方法(試験記号:B)
JIS C 60068-2-6 第2-6部:正弦波振動試験方法(試験記号:Fc)
JIS C 60068-2-7 加速度(定常)試験方法
JIS C 60068-2-11 塩水噴霧試験方法
JIS C 60068-2-13 減圧試験方法
JIS C 60068-2-14 第2-14部:温度変化試験方法(試験記号:N)
JIS C 60068-2-17 封止(気密性)試験方法
JIS C 60068-2-18 第2-18部:耐水性試験及び指針
JIS C 60068-2-20 第2-20部:試験−試験T−端子付部品のはんだ付け性及びはんだ耐熱性試験方法
JIS C 60068-2-21 第2-21部:試験−試験U:端子強度試験方法
JIS C 60068-2-27 第2-27部:衝撃試験方法(試験記号:Ea)
JIS C 60068-2-30 第2-30部:温湿度サイクル(12+12時間サイクル)試験方法(試験記号:Db)
JIS C 60068-2-31 第2-31部:落下試験及び転倒試験方法(試験記号:Ec)
JIS C 60068-2-38 第2-38部:温湿度組合せ(サイクル)試験方法(試験記号:Z/AD)
JIS C 60068-2-39 第2-39部:減圧下の温度又は温湿度複合試験及び指針
JIS C 60068-2-40 低温・減圧複合試験方法
JIS C 60068-2-41 高温・減圧複合試験方法
JIS C 60068-2-42 接点及び接続部の二酸化硫黄試験方法
JIS C 60068-2-43 接点及び接続部の硫化水素試験方法
JIS C 60068-2-45 耐溶剤性(洗浄溶剤浸せき)試験方法
JIS C 60068-2-46 接点及び接続部の硫化水素試験−指針
JIS C 60068-2-47 第2-47部:動的試験での供試品の取付方法
JIS C 60068-2-49 接点及び接続部の二酸化硫黄試験−指針
JIS C 60068-2-52 第2-52部:塩水噴霧サイクル試験方法(塩化ナトリウム水溶液)(試験記号:
Kb)
JIS C 60068-2-53 第2-53部:耐候性(温度・湿度)と動的(振動・衝撃)との複合試験及び指針
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
(3)
JIS C 60068-2-55 第2-55部:ルーズカーゴに対するバウンス試験及び指針(試験記号:Ee)
JIS C 60068-2-57 第2-57部:時刻歴及びサインビート振動試験方法(試験記号:Ff)
JIS C 60068-2-58 第2-58部:表面実装部品(SMD)のはんだ付け性,電極の耐はんだ食われ性及び
はんだ耐熱性試験方法
JIS C 60068-2-60 第2-60部:混合ガス流腐食試験(試験記号:Ke)
JIS C 60068-2-61 一連耐候性試験
JIS C 60068-2-64 第2-64部:広帯域ランダム振動試験方法及び指針(試験記号:Fh)
JIS C 60068-2-65 第2-65部:音響振動(試験記号:Fg)
JIS C 60068-2-66 高温高湿,定常(不飽和加圧水蒸気)
JIS C 60068-2-67 基本的に構成部品を対象とした高温高湿,定常状態の促進試験
JIS C 60068-2-68 砂じん(塵)試験
JIS C 60068-2-69 第2-69部:試験−試験Te/Tc:電子部品及びプリント配線板のはんだ付け性試験
方法(平衡法)
JIS C 60068-2-70 第2-70部:指及び手の擦れによる印字の摩滅試験
JIS C 60068-2-75 第2-75部:ハンマ試験(試験記号:Eh)
JIS C 60068-2-77 表面実装部品(SMD)の本体強度及び耐衝撃性試験方法
JIS C 60068-2-78 第2-78部:高温高湿(定常)試験方法(試験記号:Cab)
JIS C 60068-2-80 第2-80部:混合モード振動試験方法(試験記号:Fi)
JIS C 60068-2-81 第2-81部:衝撃応答スペクトル合成による衝撃試験方法
JIS C 60068-2-82 第2-82部:試験−試験XW1:電気・電子部品のウィスカ試験方法
JIS C 60068-2-83 第2-83部:試験Tf−ソルダペーストを用いた平衡法による表面実装部品
(SMD)のはんだ付け性試験方法
JIS C 60068-2-85 第2-85部:長時間時刻歴再現振動試験方法(試験記号:Fj)
JIS C 60068-3-1 第3-1部:低温(耐寒性)試験及び高温(耐熱性)試験の支援文書及び指針
JIS C 60068-3-2 第3-2部:温度/減圧複合試験を理解するための必す(須)情報
JIS C 60068-3-3 機器の耐震試験方法の指針
JIS C 60068-3-4 第3-4部:高温高湿試験の指針
JIS C 60068-3-5 第3-5部:支援文書及び指針−温度試験槽の性能確認
JIS C 60068-3-6 第3-6部:支援文書及び指針−温湿度試験槽の性能確認
JIS C 60068-3-7 第3-7部:支援文書及び指針−負荷がある場合の低温試験(試験A)及び高温試験
(試験B)の試験槽の温度測定のための指針
JIS C 60068-3-8 第3-8部:振動試験方法の選択の指針
JIS C 60068-3-13 第3-13部:支援文書及び指針−はんだ付け
日本産業規格 JIS
C 60068-2-85:2020
(IEC 60068-2-85:2019)
環境試験方法−電気・電子−第2-85部:
長時間時刻歴再現振動試験方法(試験記号:Fj)
Environmental testing-
Part 2-85: Tests-Test Fj: Vibration-Long time history replication
序文
この規格は,2019年に第1版として発行されたIEC 60068-2-85を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
この規格は,他の既存の方法ではカバーされていない任意の性質の振動にさらされる可能性がある部品,
機器及びその他の製品(以下,供試品という。)への一般的な適用を意図した長時間の時刻歴波形を再現す
る振動試験を扱う。この規格で規定する試験方法及び技術は,時間領域における振動のデジタル制御に基
づいており,製品規格・試験方法規格で規定する個々のケースに合うように振動入力信号の柔軟な定義を
可能とする。
他のほとんどの試験と比較して,試験Fjは確定した手法に基づいており,長時間の時刻歴試験を想定し
たものである。試験装置の技術的制限以外に振動特性に及ぼす制限はほとんどない。
この試験における振動入力信号は,ファイルに格納されたデジタル時刻歴データによって規定されるた
め,二つの異なる試験の厳しさを比較するための一般的な方法は存在しない。振動の許容差は,試験の目
的によって異なるため,単一の尺度では与えられない。したがって,長時間の時刻歴の再現試験では,常
に使用者と仕様書作成者とによる高度な技術的判断が強く要求される。製品規格・試験方法規格の作成者
は,供試品とその用途に適した,試験手順,試験時刻歴,試験時刻歴の厳しさ及び許容差並びに分析方法
を選択することが望ましい。
この試験方法は,振動試験装置として使えるコンピュータベースの制御システムを備えた動電式又はサ
ーボ油圧式の振動発生機を使うことを前提としている。
長時間の時刻歴再現試験は,蓄積された応力の影響と,その結果としての機械的ぜい(脆)弱性及び性
能の劣化を識別するために使用可能である。この情報は,製品規格と合わせて,供試品の受入評価に使用
可能である。
供試品が,他の試験方法によってカバーされる輸送環境又は実際の使用環境から生じる確定した過度的
性質又は周期的性質の振動を受ける場合,他の適した試験方法を採用するのがよい。供試品の動的振動環
境を推定し,それに基づいて適切な試験方法を選択するには,JIS C 60068-3-8 [1] 1)を参照する。
附属書Aに,仕様書の作成に当たって考慮する可能性のある指針と詳細なリストを示す。
2
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
注1) 角括弧内の数字は,参考文献に対応。
1
適用範囲
この規格は,時刻歴(長時間の時刻歴再現)によって定義される特定の振動試験要件を供試品に与え,
その機能及び/又は構造的な一体性を低下させることなく動荷重に耐える能力の評価を目的とする試験方
法について規定する。これらの時刻歴は,実環境で測定されたもの,又は人工的に生成されたものを使用
する。両方の場合において,この方法は特定の用途に合わせた試験条件を生成することが可能である。
典型的な用途は,非常に具体的で確定した過渡的,周期的又は非周期的な加振で,かつ,動特性が他の
試験規格でカバーできない試験である。JIS C 60068-2-27 [2]の標準的な衝撃試験では十分に表現されない
時刻歴,又はJIS C 60068-2-81 [3]のような衝撃応答スペクトルによる一般的な試験,JIS C 60068-2-6の正
弦波ではカバーできない周期的振動及びJIS C 60068-2-64:2011のガウス又は非ガウス[高せん(尖)度]
広帯域ランダム振動試験ではカバーできないランダム振動を含む。ただし,長時間の時刻歴の再現では確
定した時刻歴が使用されるとユーザは認識しておく。あらゆる種類のランダム振動のシミュレーションは,
疑似ランダムで近似される。
さらに,この試験方法では,要求される試験信号を表す時刻歴を生成することによって,混合モード試
験を可能にする。この試験は,非常に複雑な試験条件を含む。
この試験の目的は,JIS C 60068-2-57 [4]とは異なる。JIS C 60068-2-57の目的は,主に合成された時刻歴
を使用して過渡振動を評価する。長時間の時刻歴試験は,実時間環境で測定された実際の時刻歴を使用し
た耐久性及び機能試験に主に使用する。シミュレーションされた非ガウスの時刻歴を適用する方法として
も使用可能である。
この規格は,例えば,航空機,宇宙船,陸上車などの輸送又は動作環境に起因する非常に特殊な性質の
振動にさらされる可能性がある供試品に適用可能である。主に包装されていない供試品を対象とするが,
輸送コンテナが供試品の一部とみなされる場合,輸送コンテナ用容器を含めて対象とする。ただし,品目
が包装されている場合,品目自体を製品と呼び,品目とその包装を合わせて供試品と呼ぶ。この規格は,
包装製品の試験としてJIS C 60068-2-47と組み合わせて使用可能である。
この規格は,主に電気・電子製品の供試品を対象とするが,それらに限定されるものではなく,必要に
応じて他の分野で使用可能である(附属書Aを参照)。
この規格は,一軸加振に適用する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60068-2-85:2019,Environmental testing−Part 2-85: Tests−Test Fj: Vibration−Long time history
replication(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こと
を示す。
2
引用規格
次に掲げる引用規格は,この規格に引用されることによって,その一部又は全部がこの規格の要求事項
を構成している。これらの引用規格のうち,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その
後の改正版(追補を含む。)は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)
3
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
を適用する。
JIS C 60068-2-6 環境試験方法−電気・電子−第2-6部:正弦波振動試験方法(試験記号:Fc)
注記 対応国際規格における引用規格:IEC 60068-2-6,Environmental testing−Part 2-6: Tests−Test
Fc: Vibration (sinusoidal)
JIS C 60068-2-47 環境試験方法−電気・電子−第2-47部:動的試験での供試品の取付方法
注記 対応国際規格における引用規格:IEC 60068-2-47,Environmental testing−Part 2-47: Tests−
Mounting of specimens for vibration, impact and similar dynamic tests
JIS C 60068-2-64:2011 環境試験方法−電気・電子−第2-64部:広帯域ランダム振動試験方法及び指
針(試験記号:Fh)
注記 対応国際規格における引用規格:IEC 60068-2-64:2008,Environmental testing−Part 2-64: Tests
−Test Fh: Vibration, broadband random and guidance
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
注記 使用する用語は,一般的にIEC 60050-300 [5],JIS C 60068-1 [6],JIS C 60068-2-6,IEC 60068-5-
2 [7]及びJIS B 0153 [8]で定義されている。
3.1
横運動(cross-axis motion)
一般に加振する軸に直交する2軸で規定する,加振方向以外の運動
注釈1 横運動は,固定点の近傍で計測するのが望ましい。
(出典:JIS C 60068-2-64:2011,3.1)
3.2
固定点(fixing point)
通常,供試品が運用中に固定されている点で,取付具又は振動台に接している供試品の部分
注釈1 実際の取付け構造物の一部を取付具として使用する場合,固定点は,供試品上の点でなく,取
付け構造物上の点とする。
(出典:JIS C 60068-2-64:2011,3.3)
3.3
計測点(measuring points)
試験を実施するときにデータを収集する特定の点
注釈1 特定の点には3.4〜3.6で定義されている,三つのタイプがある。
(出典:JIS C 60068-2-64:2011,3.6)
3.4
監視点(checkpoint)
取付具,振動台又は供試品上の点で,固定点の一つに可能な限り近く,取付具,振動台又は供試品と強
固に結合している点
(出典:JIS C 60068-2-64:2011,3.7を修正し,注記1〜注記4を削除)
3.5
制御点(control point)
4
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
この規格の要求事項を満たすように,試験の制御用として監視点の中から選択された点
3.6
応答点(response points)
供試品の振動応答検査の目的のためにデータを収集する供試品上の特定の点
注釈1 これらの点は,監視点又は制御点と同一ではない。
(出典:JIS C 60068-2-64:2011,3.10)
3.7
推奨試験軸(preferred testing axes)
供試品の最も弱い軸を含む直交する3軸
(出典:JIS C 60068-2-64:2011,3.11)
3.8
指定時刻歴(specified time history)
再現試験中に時間とともに変化する加速度のデジタル値を含むデータファイル
注釈1 指定時刻歴は,通常,記録された“実振動”のデジタル化されたデータに基づいて,振動テー
ブル上での再現性のために適切に変更される(例えば,フィルタリングなど)。
3.9
制御時刻歴(control time history)
指定時刻歴を模擬したとき,制御点で測定される時刻歴
3.10
時刻歴エラー(error time history)
指定時刻歴と制御時刻歴との差
3.11
等化(equalization)
時刻歴エラーの実効値の最小化
3.12
実効値(RMS value)
振動数のf1とf2との間の区間全体にわたる関数の二乗平均の平方根
(出典:JIS C 60068-2-64:2011の3.33を修正し,定義を簡素化した。)
3.13
試験振動数範囲(test frequency range)
製品規格(試験規格の場合もある。)に規定されているプロセス制御における試験の振動数範囲
3.14
確率密度(probability density)
指定された振幅で,振幅が指定された増分範囲内にある確率と増分範囲との比
3.15
最大応答スペクトル(maximum response spectrum)
与えられた減衰比に対して,固有振動数における振動の線形一自由度系(SDOF)の応答において最大
ピーク値を示す曲線
5
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
注釈1 応答は,システムの質量の支持系における相対的な動きによって説明可能である。
3.16
疲労損傷スペクトル,FDS(fatigue damage spectrum)
与えられた減衰比に対して,固有振動数における線形一自由度系(SDOF)によって受ける材料のパラ
メータbの値に依存する疲労損傷を示す損傷スペクトル
注釈1 パラメータbは,構造物を構成する材料のヴェーラー曲線を表すバスキンの法則に由来する。
注釈2 この注釈1はこの規格のフランス語版だけに適用される。
4
試験装置に対する要求事項
4.1
一般事項
要求する特性は,試験のために負荷された電力増幅器,振動器,試験取付具,供試品及び制御システム
を含む全振動システムに適用する。
規定する試験方法は,供試品の互いに直角に交わる軸のそれぞれに通常適用される次の試験シーケンス
から成っている。
a) 低レベルの正弦波加振又は低レベルのランダム加振による初期振動応答の検査(8.2及びA.1を参照)
b) 機械的負荷試験又はストレス試験としての長時間の時刻歴の再現
c) 初期のものと結果とを比較し,動的動作の変化による機械的な故障の可能性を検出するための最終的
な振動応答検査(8.2及び8.5参照)
動的動作が既知で関連性がない,又は十分なデータがフルレベルの試験中に収集可能な場合は,製品規
格は試験前後の振動応答検査を必要としない場合がある。
4.2
基本動作
供試品の固定点における基本動作は,製品規格で規定する。固定点は,位相及び振幅において実質的に
同一の動作で,かつ,加振方向に対して直線的とする。
4.3
横運動
横運動について製品規格で要求されている場合,試験前に製品規格で規定されたレベルで正弦波振動若
しくはランダム振動で調査するか,又は試験中に直交する2軸に追加モニタチャネルを使用して監視する。
制御点における最大横振幅は,製品規格で規定された軸の実効値の50 %を超えてはならない。大形又は
大質量の供試品では,この要求を満たすのが難しい場合がある。そのような場合,製品規格には,次の要
求事項を規定する。
a) 上記を超える横運動は,必ず試験報告書に記載する。
b) 供試品に損傷を与える可能性がない横運動は監視する必要はない。
4.4
取付け
供試品は,JIS C 60068-2-47に従って取り付ける。
6
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
4.5
計測システム
測定システムの特性は,制御点で意図する軸で測定された振動数の値が試験で要求される許容範囲内に
あるか否かを決定できるものを用いる。
長時間の時刻歴再現の振動数範囲は,従来の振動試験よりも高い振動数まで広げる必要がある。
トランスデューサ,信号調節装置,及びデータ収集・処理装置を含む測定システム全体の振動数応答は,
測定精度に大きな影響を与える。測定システムの振動数応答は,試験振動数範囲において±5 %で平たん
(坦)とする。この範囲を逸脱したものについては,試験報告書に記載する(A.8を参照)。
5
厳しさ
試験パラメータは,実施する試験の目的及び機器が使用中に遭遇する可能性がある条件に基づかなけれ
ばならない。試験の時刻歴は,通常,使用稼働中の状態及び使用条件から測定データに基づいている。時
刻歴は,システム処理に適するように編集してもよい。意図した試験目的がこれらの変更によって損なわ
れない限り,試験パラメータは時刻歴の繰り返しを含めてもよい。
6
前処理
供試品は,製品規格で規定された前処理を実施する。
7
初期測定及び機能確認試験
供試品に対して,製品規格で規定された目視試験,寸法試験,機能試験及びその他の試験を実施する。
8
試験
8.1
一般事項
試験は,製品規格で規定された順序に従う。各手順は,以下のとおりとする。
− 規定がある場合は,初期振動応答検査
− 連続加振モードでフルレベルの試験を実施する前の等価な低レベルの加振
− 長時間の時刻歴の再現試験
− 規定がある場合,最終振動応答検査
供試品は,製品規格に規定がない限り,推奨試験軸の3軸について順次加振する。製品規格で規定され
ない限り,加振軸の順序は重要ではない。供試品が重力に敏感な場合,例えば,水銀傾斜スイッチの場合,
振動は通常の使用時の位置だけに適用され,製品規格に規定する。
防振台と共に使用することを意図している供試品を防振台なしで試験する必要がある場合には,特別な
対応が必要である(A.3及びA.4を参照。JIS C 60068-2-47も参照)。
8.2
初期振動応答検査
製品規格に,長時間の時刻歴再現試験の前,又は前後の両方における各軸の振動応答検査を規定しても
7
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
よい。
製品規格に規定されている場合,定義された振動数範囲内で供試品上の1点以上の動的応答を検査する。
応答点の数及び位置は,製品規格で明確に定義する。振動応答検査は,試験振動数範囲内の正弦波振動又
はランダム振動,及び製品規格によって規定された試験レベルで実行してもよい。正弦波振動については
JIS C 60068-2-6を,ランダム振動についてはJIS C 60068-2-64:2011を参照する。各方法の詳細な長所及び
短所については,JIS C 60068-3-8も参照する。
応答検査は,供試品の応答が長時間の時刻歴再現よりも短いが,臨界振動数を検出するのに十分な試験
レベルで実行する。
正弦波加振を使用する場合,製品規格で規定されている試験振動数範囲にわたって1回以上の掃引サイ
クルを10 m/s2以下の加速度又は±1 mmの変位振幅のいずれか小さい方で実施する。振動振幅は,長時間
時刻歴再現中よりも大きな応力が供試品にかかるのを防ぐために調節する。共振振動数の振動数及び振幅
を決定するために,毎分1オクターブの掃引速度が適用される。構造物が完全共振する懸念がある場合,
対象とする振動数帯の共振振動数及び相対振幅の指標として,より速い掃引速度を適用してもよい。遅い
掃引速度での調査,又は既知の共振点の前後で掃引する検査が必要かもしれないが,必要な結果を得るた
めの最小時間に制限する。過度の滞留時間は避ける。振動振幅は必要に応じて変更してよい。
正弦波加振の場合,最大応答に対応する振動数は,非線形挙動の場合には掃引中の振動数変動の方向に
応じて変化することに注意する必要がある。ランダム加振の場合,非線形性が共振挙動に影響を与える場
合がある。正弦波及びランダム加振の場合,共振時の増幅は入力振動の大きさに依存する場合がある。
ランダム振動による応答検査は,試験時間が応答の統計的変動を最小にするのに十分な長さであること
を考慮して実施する。ランダム振動応答試験は,規定された試験振動数範囲にわたって実施する。最低共
振振動数では,共振ピークの−3 dBの振動数帯域内に最低5本のスペクトル線がなければならない。
ランダム加振を使用する場合,長時間時刻歴再現中に供試品にかかる応力が25 %を超えないように,加
速度の実効値を選択する。時間は可能な限り短くしなければならないが,少なくとも自由度(DOF)=120
の分析が可能な長さでなければならない。共振応答がフルレベルの試験中に定期的に観察及び記録されて
いる場合は,特別な共振検査は必要としない。
製品規格で要求されている場合,この検査中,供試品は動作モードとする。供試品が動作しているため
に機械的振動特性が評価できない場合,供試品が機能していない状態で追加の振動応答検査を実施する。
この段階で,試験報告書に記載する臨界振動数を決定するために供試品を検査する。
未定義タイプ”の供試品又はパッケージでの振動応答の検査では,駆動力,速度などの様々な信号を測
定する必要がある場合がある。例えば,製品規格で規定されている場合,試験の前後に供試品の機械イン
ピーダンスを計算する。
注記 機械インピーダンス及びその他の同類語は,JIS B 0153で定義されている。
8.3
等化のための低レベル予備加振
製品規格の規定レベルでの長時間時刻歴再現の前に,信号の等化及び予備解析のために,実際の供試品
を使用した,より低レベルでの予備加振をする必要がある。この段階では,加えられる加速度のレベルを
最低限にすることが重要である。
予備加振の許容持続時間は,次のとおりである。
8
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
− 規定レベル(加速度の実効値)の−12 dB以下:時間無制限
− 規定レベル(加速度の実効値)の−12 dBから−6 dB:規定の試験持続時間の1.5倍以下
− 規定レベル(加速度の実効値) の−6 dBから0 dBの間:規定試験持続時間の50 %以下
− −6 dBを超える予備加振の持続時間は,絶対最小値に維持する。ただし,時刻歴には複雑な性質があ
る可能性があるため,予備加振の時間が長くなる場合がある。このプロセスのパラメータは記録し,
試験報告書に記載する。
− 製品規格で規定のない限り,予備加振の持続時間は指定された試験持続時間に含めない。
8.4
供試品の機能試験
製品規格で規定されている場合,試験中の供試品は指定された時間間隔で動作させ,その性能を確認す
る。
8.5
最終振動応答検査
製品規格が初期振動応答検査を規定する場合,初期振動応答検査の後で変更又は故障が発生したかどう
かを確認するために,長時間時刻歴試験の完了時に,追加の振動応答検査が必要になることがある。最終
振動応答検査は,初期振動応答検査に使用したのと同じ方法で,同じ応答点で,同じパラメータを使用し
て実施する。振動応答の変化,例えば,臨界振動数の変化を使用するためのガイドラインは,JIS C 60068-
3-8に規定されている。製品規格には,二つの検査で異なる結果が得られた場合にとる措置を規定する。
9
後処理
供試品の条件,例えば,温度のような条件を,初期測定のときと同じにするために,試験後と最終測定
との間に,一定の時間が必要な場合がある。製品規格には後処理のための条件を規定する。
10 最終検査及び機能検査
製品規格の規定に従って,供試品の目視検査,寸法検査,機能検査及び規定されたその他の検査を実施
する。
製品規格に,供試品の合否判定基準を規定する。
振動応答結果の評価については,JIS C 60068-3-8を参照。
11 製品規格に規定すべき事項
この試験を製品規格に規定する場合は,適用可能な限り,次の事項を規定する。なお,アスタリスク(*)
付きの事項は,必須である。
関連箇条番号
a) 制御点*
A.2.2及びA.2.3
b) 計測点*
3.3
c) 基本動作*
4.2
d) 固定点*
3.2
9
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
e) 横運動
4.3
f)
供試品取付け*
4.4
g) 大形又は大質量の供試品の振動許容差
4.3
h) 試験振動数範囲*
i)
必要な厳しさを達成するための諸要因を含む,指定時刻歴
j)
時刻歴の時間及び再現数,又は試験の総時間
A.3
k) 該当休止時間
l)
前処理
6
m) 初期測定値*
7
n) 推奨試験軸及び試験順序*
8.1
o) 初期及び最終振動応答検査
8.2及び8.5
p) 中間測定
q) 後処理
9
r) 最終測定値及び合否基準*
10
s)
測定システムの不確かさ
t)
性能及び機能の確認
10
12 試験報告書に記載する事項
試験報告書には,少なくとも,次の事項を記載する。
1) 顧客
(名称及び所在地)
2) 試験所
(名称及び所在地)
3) 試験報告書の識別
(発行日及び識別番号)
4) 試験日
5) 試験の目的
(開発試験,認証試験など)
6) 試験規格,発行年
(関連試験手順)
7) 供試品の詳細
(初期状態,識別番号,数量,写真,図面など)
8) 供試品の取付け
(取付具の識別番号,図面,写真など)
9) 試験装置の性能
(横運動など)
10) 測定系及びセンサの位置
(説明,図面,写真など。4.5も参照)
11) 測定系の不確かさ
(全体的な不確かさ,校正データ,製品規格に規定されてい
る場合には校正実施日及び次回校正日)
12) 初期,中間又は最終測定
13) 文書による試験仕様
(測定点,指定された時刻歴ファイル名,識別番号,指定時
刻歴のファイル名又は識別番号,試験時間,繰り返し回数)
14) 試験結果(供試品の最終状態)
15) 試験中の観察事項及び実施した処置
16) 試験概要
10
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
17) 試験管理者(氏名及び署名)
18) 送付先(報告書の受領者リスト)
注記1 テストログには,例えば,テストパラメータ,テスト時の見解及び実行アクション,測定デー
タシートを含めてテスト実行順に記載する。テストログは,テストレポートに添付が可能であ
る。
注記2 JIS Q 17025 [9]も参照する。
11
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
附属書A
(参考)
指針
A.1 一般事項
長時間時刻歴再現試験方法は,閉ループ制御下の加振器による試験場での試験で測定された時刻歴応答
データを利用する。複雑な時刻歴を詳細に再現する必要がある場合は,長時間時刻歴再現試験方法はラン
ダム振動又は衝撃応答スペクトル(SRS)によるアプローチよりも適している。長時間時刻歴再現試験に
よる損傷ポテンシャルの程度は,稼働中の環境,すなわち供試品の内部応力強度及びその他の内部荷重の
影響と最もよく一致することがその長所である。さらに,未知の影響を考慮し,信頼度に適切なマージン
をもたせる要因を時刻歴に含むことが比較的簡単であるという長所もある。
長時間時刻歴再現試験が加振器の性能内にあることを確認するためには,実測時刻歴に何らかの操作が
必ず必要となる。一般的に,二段階レベルの加振試験を採用するか,又はフィルタなどのデータ操作ツー
ルを使用する必要がある。
この試験方法に規定している試験要求事項を満たすことが可能な場合,他の振動誘導装置を使用しても
よい。
長時間時刻歴再現試験に使用されるデジタル振動制御装置の性能は類似していると考えられる。振動制
御装置の選択可能な幾つかのパラメータを使って,指定時刻歴と制御時刻歴との差を推定することが可能
である。これには,JIS Q 17025 [9]で定義されている他の不確かさの要因を考慮に入れていない。したが
って,これらのパラメータは相互に依存しているために,二つの時刻歴の最適な一致が得られるように選
択可能である。
指定時刻歴の等化には,制御ループの数回の繰り返しが必要で,ハードウェア構成系全体の伝達関数,
制御アルゴリズム,試験前に調整可能な試験パラメータなどの要素に影響される。
振動応答検査よって,供試品及び振動発生器の相互作用に関する必須の情報が得られる。例えば,この
検査では,試験取付具の極端な振動応答増幅,又は試験用取付具及び供試品の同時共振を明らかにするこ
とが可能である。したがって,再現性を高めるために最適な試験用取付具及びパラメータを選択すること
が可能となる。そのために,取付具に供試品を取り付ける前に取付具の動的応答の検査又はモーダル試験
を実施し,供試品に非現実的な負荷がかからないような修正が望ましい。
A.2 試験要求事項
A.2.1 1点制御
時刻歴加振は,特定の位置で試験中の供試品の振動運動をサンプリングすることで規定された範囲内で
制御される。この位置は,供試品の固定点(制御入力)若しくは供試品上の定義された点(制御応答),又
はそれらの近傍でもよい。長時間時刻歴再現試験のための振動動作は,一点でサンプリングされる(1点
制御)。
制御入力試験によって,装置の通常の取付位置一つで指定された範囲内で加振時刻歴が制御される。制
御応答試験は,指定時刻歴が供試品の応答となることを保証する。製品規格に規定された厳しさが実際の
12
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
稼働中の機器の応答を示す場合,両方の制御方法が適用可能である。制御応答試験では,機器及び取付具
の動特性が稼働中と類似していることが必要である。これには一般に装置及び取付具の動特性の知識が必
要で,それは試験によって評価可能である。
通常,長時間時刻歴再現試験では,稼働中のデータを取得するために使用される制御位置と一致した制
御位置を使用する必要がある。一致しない制御位置の場合,この試験方法の多くの利点がなくなる。ただ
し,この要求事項の達成が困難な場合,以下の手順が適用可能である。
A.2.2 制御入力試験
ガイダンスは,制御入力試験に適用される。制御点は次の基準で選択する必要がある。
1) 供試品の固定点が一つの場合は,制御点は固定点に隣接させる。
2) 供試品に複数の固定点があり,それらの固定点での時刻歴の厳しさが類似している場合,試験規格
において最も時刻歴試験の厳しさを生成する点を選択する必要がある。
どの場合でも,制御点は製品規格に規定する必要がある。
A.2.3 制御応答試験
ガイダンスは,制御応答試験に適用する。制御点は次の基準で選択する必要がある。
1) 測定データから制御位置を選択する場合,制御位置は供試品上の代表的で測定可能な位置を選択す
る必要がある。この位置は全体的な動的応答を最適化して動作条件を適切に再現するよう選択する
必要がある。
2) 供試品の過剰試験又は過小試験を避けるために,供試品の先端に追加の限界制御点を含める必要が
ある場合がある。
制御応答試験を実施するには,供試品の動的応答特性と試験装置との相互作用に関する知識が必要であ
る。そのような情報は前段階の試験から得られる。この試験を周囲温度以外の温度で実施する必要がある
場合,特性評価は製品規格に規定された寒暖差の大きな温度で実施する。
A.2.4 検証パラメータ
下記に記載する各検証方法は,時刻歴に関連する様々なパラメータに対応している。二つの時刻歴の類
似性を総合評価するには,記載された複数の方法を採用する必要がある。これらの方法は,試験仕様書作
成者に定量的及び定性的評価を提供し,検証プロセスに信用・信頼をもたらす。
次のパラメータを使用して,長時間の時刻歴再現試験を検証してもよい。ただし,検証方法には,何ら
かの制約がある。そのため,検証プロセスでは複数の検証方法を適用することを推奨する。
− 時刻歴波形の比較,差異と重ね合わせ
− 時刻歴エラーの実効値
− 瞬間的なピークレベル
− ピークホールドスペクトル
− 振幅の確率密度
− 最大応答スペクトル
− 疲労損傷スペクトル
− レベルクロッシング,レインフローなどのサイクルカウント方法
13
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
− パワースペクトル密度
− 平均及び標準偏差を含むブロック統計モーメント,わい(歪)度及びせん(尖)度
要求される試験仕様の時刻歴と測定された供試品との応答時刻歴に関連するピークレベル間の比較は,
顕著な過渡現象を含む時刻歴の定量的比較に有効である。ピークホールドレベルは,追加の比較方法を提
供するが,これは比較的粗い定量的アプローチとみなすことが可能である。
より長い持続時間,振動タイプ及び時刻歴が比較される場合,振幅の確率密度の比較は,時刻歴の振幅
を比較する有益な方法である。繰り返しになるが,規定された制約内での定量的比較が可能となる。
指定時刻歴と測定された供試品の時刻歴間の最大応答スペクトル(MRS)との比較は,広い振動数範囲
にわたる時刻歴の影響を比較する分析方法を提供する。簡単な視覚による比較手段は,供試品のMRSを
規定された時刻歴と重ねることである。疲労損傷スペクトル(FDS)を利用する場合,時刻歴の振動数成
分に関する情報を保持しながら,潜在的な疲労損傷が時刻歴に与える影響を比較できる。FDSにおける制
約は,供試品の疲労特性に関する仮定を必要とすることである。
レベルクロッシング又はサイクルカウント(例えば,レインフロー法[3])技術を利用する場合,時刻歴
内に発生する相対振幅を比較できる。これらの振幅の発生は,供試品の疲労及びその他の損傷モードに関
係する。制約は,レベルクロッシング又はサイクルカウントが時刻歴の振動数成分を示さないことである。
指定時刻歴のレベルクロッシングのヒストグラムと制御時刻歴のうちの一つとの比較は,振幅依存誤差の
確認及び制御最適化を可能とする。
パワースペクトル密度(PSD)を利用する場合,より長時間における時刻歴の振動数成分を知ることが
できる。ただし,記録時間が不十分なため,統計誤差が大きくなる可能性がある。そのような場合,ブロ
ック統計はより正しい統計的なアプローチになるであろう。
より長時間の時刻歴については,振幅の実効値,平均,標準偏差,わい(歪)度,せん(尖)度などの
ブロック統計の使用を定量的に行うことができ,制約に適合可能となる。
試験仕様書は,それらが適用される許容差とパラメータとを規定するのがよい。次の許容レベルが目安
として提供される。
1) 制御時刻歴の振幅は,指定時刻歴から90 %以上の時間について,20 %以上の逸脱は望ましくない。
2) 瞬間的なピークレベルとブロック実効値とは10 %以内が望ましい。
3) 特定の振幅確率に対する振幅は,規定された振幅の20 %以内が望ましい。
4) 最大応答スペクトルは,指定時刻歴から計算されたものの±3 dBが望ましい。
5) 疲労損傷スペクトルは,指定時刻歴から計算されたものの±6 dBが望ましい。
6) サイクル数及びレベルクロッシング数は,指定時刻歴の波形の数の10 %以内が望ましい。
7) パワースペクトル密度(PSD)は,指定時刻歴のPSDの±3 dBが望ましい。
8) 試験時間は規定された時間の±2 %が望ましい。
A.3 試験手順
試験が適切な加振レベルで持続して動作する供試品の能力を単に実証する場合,この要求を実証するの
に十分な時間だけ継続する必要がある。品目が,振動の蓄積効果(例えば,疲労,機械的変形)に耐える
能力を実証する場合,例えば,製品規格に規定された時間を超えたとしても,必要な応力サイクルを累積
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C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
するのに十分な時間であるのが望ましい。
通常,防振装置に取り付ける機器の耐久試験には,防振装置が取り付けられる。機器が他の機器と一緒
に共通の取付装置に取り付けられている場合など,適切な防振装置を使用して試験ができない場合,防振
装置なしで規定された異なる厳しさで試験してもよい。厳しさは,試験される各軸における絶縁システム
の伝達率を考慮して決定するのがよい。防振装置の特性が不明な場合は,A.4を参照する。
製品規格は,最小許容構造耐力が達成されたことを実証するために,外部防振装置を取り外した又はブ
ロックした状態での供試品の追加試験を要求してもよい。この場合,適用される厳しさは製品規格によっ
て規定するのがよい。
A.4 防振装置で通常使用される装置
A.4.1 防振装置の伝達係数
JIS C 60068-2-47には,防振装置を使用して試験を実施する必要があるが,試験に使用できない場合の
対処方法の詳細な説明が規定されている。
A.4.2 温度効果
多くの防振装置には,機械的特性が温度に敏感な材料が含まれていることに注意することが重要である。
防振装置上の供試品の基本共振振動数が試験振動数範囲内にある場合,加振する時間の決定には注意が必
要である。ただし,状況によっては,後処理をせずに継続的に加振を実施するのは不適切かもしれない。
この基本共振振動数の加振の実時間分布が分かっている場合は,それをシミュレーションすることが必要
である。実時間分布が分からない場合,加振時間を工学的な判断で制限し,過度の過熱を回避する必要が
ある。
A.5 試験の厳しさ
可能な限り,供試品に適用される試験の厳しさは,供試品がさらされる環境と関連付けるのがよい。
試験の厳しさを決定する際には,試験の厳しさと実際の環境の条件との間に十分な安全マージンを考慮
する必要がある。
A.6 装置の性能
必要に応じて,試験中又は試験の適切な段階において,代表的な機能条件で供試品を動作させるのがよ
い。
振動がスイッチのオン及びオフ機能に影響を与える可能性がある供試品で,例えば,リレーの動作を妨
げる可能性のある場合,試験中にその動作を繰り返して,その性能に問題がないことを確認するのがよい。
試験が正常動作を実証する場合,供試品の機能的性能は振動試験完了後に評価するのがよい。
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C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
A.7 初期及び最終測定
初期及び最終測定の目的は,供試品に対する振動の影響を評価するための特定のパラメータを比較する
ことである。
測定には,視覚的要件と同様に,電気的及び機械的な動作上及び構造物上の特性を含めてもよい。
A.8 振動数範囲
時刻歴には,必ずしも定常的又はガウス的ではない波形を用いることができる。時刻歴再現方法を利用
するための主な要件としては,再現波形の振動数範囲が,使用する加振設備の振動数範囲内であることが
必要とされる。時刻歴再現方法が単に振動応答を再現するだけの場合,波形の振動数範囲は加振設備の振
動数範囲内よりも少し狭いだけでよい。ただし,衝撃波形の再現に使用する場合は,波形の振動数範囲は
著しく制限され,通常,加振設備の振動数範囲能力の10分の1となる場合がある。実際には,時刻歴再現
試験は,純粋な振動と隠れた過渡現象とが混在している場合に最もよく使用される。
製品規格には,時刻歴再現波形が重大な影響を与える振動数範囲を規定するのがよい。任意の過渡的要
素の波形を再現するために,振動数範囲の上限振動数の設定が必要な場合がある。このような事象を適切
に定義するために,試験振動数範囲の上限振動数は,同等の従来のガウス的振動試験に通常要求されるも
のより高くする必要があるかもしれない。
実際には,要求される波形と加振制御システムへの入力は,供試品上の制御点で測定された波形と大抵
僅かに異なる。これは,制御点における波形は,加振制御システムによって加振器による波形再現に必要
な波形のデジタル表現で表されるからである。加振制御システムは,波形特性が加振システムの能力(通
常,加速度,速度及び変位特性)内に収まるよう保証するとともに,加振システムの振動数応答特性を補
正すべく要求波形を修正する。加振システムの振動数応答特性に適用される補正は,線形性を前提として
いる。その結果,加振システム,装置(リグ)及び供試品の非線形動作は,正しく補正されない可能性が
ある。実際には,必要な波形と達成された波形との違いとして現れる。このような非線形性による誤差を
減らすために,一部の市販の時刻歴再現試験の制御システムは,波形の異なる部分に対して種々の補正モ
デルが使用できるようにしている。
時刻歴再現試験が加振装置の能力範囲内であることを保証するためには,測定波形に何らかの操作が必
ず必要となる。要求波形が使用する加振システムの振動数範囲内にあるためには,ローパスフィルタを通
す必要があるかもしれない。また,変位のオーバートラベル状態又は加振器に対する速度制限超過を引き
起こす低振動数成分を除去するために,ハイパスフィルタを通す必要があるかもしれない。ハイパスフィ
ルタ処理の必要性は,加速度波形を数値的に積分して速度波形を求め,その速度波形を数値的に更に積分
して変位波形を得ることで立証可能である。時刻歴データに関連するこの積分プロセスには,特にデータ
内の低振幅平均オフセットに関連する積分誤差が含まれる。さらに,必要な波形のピーク加速度は,駆動
する質量全体を考慮した場合,加振力のリミットを超えない方がよい。測定波形への必要な操作を行った
後は,時刻歴振動試験が使用する励振装置の物理的及び制御能力の範囲内にあることを常に確認する必要
がある。
時刻歴振動試験制御ソフトウェアの現在の能力では,10 kHz程度までの試験が可能である。ただし,大
部分の機械的加振システムの振動数特性はこれよりも低い。2 kHz〜3 kHzの能力が一般に利用可能である
が,大きなスリップテーブルに結合された大きな動電型加振器は,これよりも低い可能性がある。電気油
圧システムは,実質的に500 Hzに制限される場合がある。
16
C 60068-2-85:2020 (IEC 60068-2-85:2019)
参考文献
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Volume 4, Issue 1, January, 31-40
注2) 廃止