C 60068-2-48
:2004 (IEC 60068-2-48:1982)
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日
本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,IEC 60068-2-48:1982,Environmental
testing
−Part 2 : Tests.Guidance on the application of tests of IEC 68 to simulate the effects of storage を基礎とし
て用いた。
JIS C 60068-2-48
には,次に示す附属書がある。
附属書(参考)JIS と対応する国際規格との対比表
C 60068-2-48
:2004 (IEC 60068-2-48:1982)
(2)
目 次
ページ
序文
1
1.
適用範囲
1
2.
引用規格
1
3.
保存の定義
1
4.
“保存試験”の定義及び目的
2
5.
保存中の劣化のメカニズム及び故障のタイプの例
2
6.
適用可能な試験の選択
3
7.
試験手順の詳細
4
附属書(参考)JIS と対応する国際規格との対比表
5
日本工業規格
JIS
C
60068-2-48
:2004
(IEC 60068-2-48
:1982
)
環境試験方法−電気・電子−第2−48部:
保存の影響をシミュレートするために,
環境試験方法に関する JIS 規格群の試験を
適用する場合の指針
Environmental testing
−Part 2: Tests.Guidance on the application of tests of
JIS environmental testing series to simulate the effects of storage
序文 この規格は,1982 に第 1 版として発行された IEC 60068-2-48:1982,Environmental testing−Part 2:
Tests.Guidance on the application of tests of IEC 68 to simulate the effects of storage
を元に,対応する部分につ
いては対応国際規格を翻訳し,技術的内容を変更することなく作成した日本工業規格である。
1.
適用範囲 この規格は,電気・電子製品を保存したときに受ける影響をシミュレートするために,JIS
C 60068-1
及びその一連の日本工業規格(以下,環境試験方法に関する JIS 規格群という。
)の試験を適用
する場合の指針を規定する。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21 に基づき,IDT(一致している)
,MOD(修
正している)
,NEQ(同等でない)とする。
IEC 60068-2-48:1982
,Environmental testing−Part 2:Tests.Guidance on the application of tests of IEC
68 to simulate the effects of storage (IDT)
2.
引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。
)を適用する。
JIS C 60068-1
環境試験方法−電気・電子−通則
JIS C 60068-2-3:1987
環境試験方法−電気・電子−高温高湿(定常)試験方法
3.
保存の定義 この規格で“保存”とは,稼動しない状態で比較的長い一定の期間(数週間から多年に
及ぶ)部品,装置又は他の物品を保存することをいい,次のいずれかに該当する。
a)
産業用倉庫,小売店などにおける代表的な環境状態での保存。
b)
予備用又は緊急用装置として,若しくはプラントにおける例えば火災報知器,補助モータ,予備発電
機などの保存。この場合,製品はプラント周辺の機器類稼動のため,特に劣悪な環境ストレスを受け
るかもしれない。
c)
稼動環境より初期環境の方がより厳しいかもしれない設備,例えば,大型電話交換機用オフィス,大
2
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:2004 (IEC 60068-2-48:1982)
型コンピュータ用設備,電源供給設備などの完成するまでに長期間かかる設備の保存。
備考 これらの条件に関連した環境のデータについては,特定の標準を参照するのが望ましい。
4.
“保存試験”の定義及び目的 “保存試験”は,標準的な保存期間中に製品に作用する一つ又は複数
の環境ストレスの影響をシミュレートすることを意図している。さらに,疲労の蓄積を仮定するとき,次
のいずれかを見極めることを意図している。
a)
製品を保存することによって,その性能が損なわれることがあるかどうか。例えば,部品のリード及
びプリント配線板のはんだ付け性の劣化,電気的特性の著しい変動,断線又は短絡に至ることがある
かどうか。
b)
保存後動作させた製品において,性能及び/又は信頼性の著しい低下が起っていないかどうか。
c)
緊急用装置の場合は,長期にわたる非動作状態の後も,製品の信頼性が保たれ機能低下がないかどう
か。
備考 比較的新しい製品又は長期間保存された製品の信頼性を決定するために,及び保存後の機能の
信頼性を決定するために,信頼性と保全性を取り扱った日本工業規格を参照するのが望ましい。
5.
保存中の劣化のメカニズム及び故障のタイプの例 保存の結果として生じる劣化のメカニズム及び故
障のタイプの例は,次のとおりである。
5.1
部品のリード及びプリント配線板のはんだ付け性は,酸化又は下地金属とめっき層間との拡散作用
によって低下する。これらの過程は温度上昇によって加速され,その結果はんだ付け性が著しく低下する
表面組成となる。おそらく大気中の汚染物質によって加速される湿食現象も活発になる場合がある。
5.2
湿度変化による故障メカニズムの他の例
5.2.1
比較的低い温度でも,非常に低湿の状態が長く続く場合,プラスチックはかなり乾燥する。このよ
うな条件で保存された材料は電気的及び機械的特性が劣化することがあり,その結果使用中に損傷又は故
障することがある。
5.2.2
保存中の高湿度条件は,製品に自己発熱効果がないため使用中の高湿度条件よりも更に危険である。
その製品を,引き続き相対湿度が 80 %未満で長期保存する場合も製品の機能特性及び信頼性に影響する。
5.2.3
不完全なシール状態の容器の内部湿度は,高いピーク値が繰り返し生じる高い相対湿度の条件下,
又は適度に高い相対湿度でも温度変化があるような条件下で保存した場合にはかなり増加する。
その結果長期保存後においては,急速かつわずかの温度低下でも容器内に凝縮(結露)が発生する可能
性がある。
5.2.4
高温高湿状態で保存された製品は,特に有機材料が存在する場合,かびの発生によって影響を受け
る。このような状態は塩霧及び工業用ガスのような化学作用の影響も加速させる。
5.3
故障メカニズムの他の例
5.3.1
高温環境中での長期の暴露によって,電解コンデンサ及びバッテリは乾燥することがある。熱可塑
性材料の剛性の消失,保護化合物及び含浸したワックスの軟化並びにクリープが生じる。
一般に,材料の劣化はこれらの条件によって促進される。
5.3.2
低温環境下での長期暴露によって,ゴム及びプラスチックだけでなく金属部品の砕け,ひび割れ,
破壊が生じる。あるシール材は劣化して縮むか割れる。
5.4
高温酸化又は湿度腐食による機構部品のかみ付き(焼き付き)。
3
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5.5
製品の機能上のパラメータは,仕様範囲を超えて変動することがある。断線又は短絡が起こること
もある。
6.
適用可能な試験の選択 異なる要因は異なるストレスを生じ,その結果異なる劣化のタイプ又は故障
モードを引き起こすためただ一つの保存試験を決めることは明らかに不可能である。
環境試験方法に関する JIS 規格群に記述されている標準試験は,規定の保存条件のシミュレートに使用
するには便利である。通例保存試験は:低温(耐寒性)
,高温(耐熱性)又は高温高湿(定常)に基づいて
いる。試験期間は一般に長く,場合によっては何箇月かに及ぶ(高温高湿試験に対する最長期間は,2 か
月になる)
。ある場合(例えば,塩霧,工場雰囲気)においては他の試験の方がより重要になることがある。
そのような場合は,詳細な保存仕様の準備期間中に考慮することが望ましい。
明らかに標準試験は実際の条件をシミュレートするつもりではなく,幾つかの状況においては特別な試
験を行うことが必要となる。しかし,技術的な又は経済的な観点からすると,標準試験はいつでも行える
ことを示唆している。
適用可能な試験の選択において,製品規格では次の事項を考慮する。
a)
要求された目的(4.参照)
b)
予想される劣化メカニズム及び故障モード。これらは以前の経験又は環境と材料の相互作用に関して
の製品の特性及び保存条件の解析から知ることができる。
(5.参照)
c)
製品が遭遇する環境に含まれる重要な環境ストレス及びそれらがここに作用するか,複合的に作用す
るか,又は順々に作用するかを考慮する。
d)
実質的に故障モードを変えずに又は新しい故障モードを導入することなしに,劣化のメカニズムを加
速させることの可能性。
6.1
環境試験方法に関する JIS 規格群の試験方法へ適用すべき指針の文書を参照するとよい。試験の厳し
さの選択において注意すべき特別な基準に関して,保存試験の目的を考慮していくつかの考慮すべき点が
与えられる。
6.2
試験期間を短縮させるために有効な,強化ストレスを用いる加速試験がいつも得られるとは限らな
い。なぜならば,劣化メカニズムの重要な変化が起こるからであり,そのときには実際上役に立たないか
らである。例えば,このような考慮すべき点としては次のものがある。
a)
大気中の環境汚染物質の作用の有無による湿度腐食現象:相対湿度を増すことが自然の条件下で形成
されるものとまったく形態学的に異なった腐食を生成する。
b)
断熱材料による水蒸気の吸収は,特に構造的な変化による不可逆な影響と関係がある。JIS C 60068-2-3
で規定されているよりも緩い湿度条件(より低い温度及び/又はより低い相対湿度)は特にあまり密
閉度を考慮していない製品における影響を分析するとき適している。
c)
電子部品のパラメータのドリフトに対して非常に重要となるある種の物質におけるゆっくりとした変
形現象。自然の条件下でのこのような現象は,広い温度範囲での速い温度変化によって生じるものと
は大きく違ってくる。
6.3
ある場合には,保存試験は長い時間続くかもしれない。試験の有効性はその時結果を得るに必要な
時間の短縮ではなくその現象が制御された再現可能な条件の下で起こるという事実によることが望ましい。
一般に長期間にわたり軽いストレスを与えるこれらの試験に対しては,高い加速性をもった試験に比べ
試験条件が大幅に変わっても許容される。したがって,試験装置の制御及び調整は簡素化できる。
4
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6.4
他の場合,試験を実質的に劣化のメカニズムを変更することなしにストレス増加によって加速する
ことができる。例えば,次のような例がある。
a)
試験温度を高くすることは,例えば,電解コンデンサ及びバッテリの乾燥を加速する。
また,一般に高温にさらされた物質のすべてのエージング過程を加速する。
b)
低温によって引き起こされるゴム,プラスチック及びある種の金属部品のもろさ,ひび及び割れは,
実際の保存条件の温度よりも適度に低い温度にさらすことによって加速できる。
7.
試験手順の詳細 保存試験は,他の目的(特性の確認,品質認定など)に対して適用される試験ほど
多くの注意を必要としない。試験を行う上での特に試験装置及び関連する機器の制御に関してとられる一
般的な注意は,保存試験にも適用される。
非常に長い試験時間の途中又は試験後の機能パラメータの測定においては,特別な注意を払うのがよい。
試験に続く後処理の条件は,重要である。
例えば,脱水した物質は,水分の吸収が始まる場合,又は吸収した物質,若しくは吸収された水分が乾
き始めるかもしれない。
このような場合,後処理の条件は
環境試験方法に関する JIS 規格群の試験を参照して明確に規定し,綿
密に制御するのが望ましい。
備考 制御された後処理条件は,JIS C 60068-1 の 5.4.1 参照。
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