C 6829:2005 (IEC 61744:2001)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日
本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,IEC 61744:2001,Calibration of fibre optic
chromatic dispersion test setsを基礎として用いた。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会
は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の実用新
案登録出願について,責任はもたない。
JIS C 6829には,次に示す附属書がある。
附属書 A(規定)数学的根拠
附属書 B(規定)動作に伴う不確かさの評価
附属書 C(参考)波長分散
附属書 D(参考)波長分散測定器校正の補正
C 6829:2005 (IEC 61744:2001)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
まえがき
序文 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1. 適用範囲 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2. 引用規格 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
3. 定義 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
4. 校正 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
4. 1 波長分散測定器校正の原理説明・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
4. 2 校正のための準備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
4. 3 校正手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
4. 4 校正点検手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
5. 波長校正手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
5.1 一般事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
5.2 離散波長光源・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
5.3 波長可変光源・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 11
5.4 不確かさ及びレポート作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 13
6. 遅延(又は分散)校正手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
6.1 一般事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
6.2 装置及び準備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 14
6.3 校正手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
6.4 不確かさ及びレポート作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
7. 校正点検手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
7.1 一般事項・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
7.2 装置及び準備・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 16
7.3 手順・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 17
7.4 不確かさ及びレポート作成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
7.5 子の基準光ファイバの形成・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 18
8. ドキュメンテーション・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
8.1 仕様,測定データ及び不確かさ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
8.2 トレーサビリティ情報・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 20
附属書A(規定)数学的根拠・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 21
附属書B(規定)動作に伴う不確かさの評価・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 25
附属書C(参考)波長分散・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 31
附属書D(参考)波長分散測定器校正の補正・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 34
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
C 6829:2005
(IEC 61744:2001)
光ファイバ波長分散測定器校正方法
Calibration of fibre optic chromatic dispersion test sets
序文 この規格は,2001年に第1版として発行されたIEC 61744 Calibration of fibre optic chromatic dispersion
test setsを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
光ファイバにおける波長分散 波長分散とは,ある長さの光ファイバにおける光波長に対する光伝搬遅
延時間の変化を表し,光ファイバの波長分散は,通信信号伝送において帯域を制限する要因となる。更に
詳しくは,附属書C又はIEC 60793-1-1による。
波長分散測定器 波長分散測定器は,光ファイバの波長分散特性測定に使用し,概して,既知波長の光
源,光ファイバに光を入射する手段及び光を出射させる手段,光検出手段,並びに光源の波長における光
遅延若しくは分散を測定するための電子的又は光学的手段で構成する。波長分散測定器の形は,何種類か
存在し,それぞれが若干異なる校正方法を必要とする。更に詳しくは附属書Cによる。一般的に,すべて
の波長分散測定器は,光ファイバの遅延時間又は分散を波長の関数として,ほとんどの場合グラフ形式で
出力する。この場合の“x軸”は波長,“y軸”は遅延又は分散を表す。
この規格が規定する校正手順の概要 既知の標準に照らして波長分散測定器を校正することは,光ファ
イバの製造,研究その他の活動における品質管理に必要不可欠なことである。この規格は,波長分散測定
器を正確に校正するための手順を詳細に規定する。波長分散測定器の校正は,既知の校正ジグ及び標準(そ
れ自体が参照基準によって校正されている。)を波長分散測定器に適用してその応答を測定し,得られた
測定結果が標準による値と一致するように,波長分散測定器を調整(補正)することによって確立する。
この手法を採用することによって,この規格の規定に従って校正した波長分散測定器は,同じ方法で校正
した他の波長分散測定器とよく一致した測定結果が得られる。
使用する主要な校正ジグ及び標準は,次のとおりである。
a) 波長分散測定器に使用する光源波長校正用の波長校正ジグ。この校正ジグの目的は,測定器の励振
波長(x軸)を正確に評価し,それを用いて遅延又は分散(y軸)を正しく決定することである。
b) 波長分散測定器の遅延又は分散応答(y軸)を校正するための遅延又は分散校正ジグ。
校正を実行するには必ずこれらの校正ジグを使用する。校正が完了すると,被校正波長分散測定器が
校正時の特性をそのまま保持できるとみなす校正期間を明示する。校正期間の終りに,その波長分散測定
器の校正の更新(又は変更)が必要なときは,再び校正を行わなければならない。校正の更新には前述の
校正ジグを使用するか,又は波長分散特性が既知の標準となる光ファイバ(基準光ファイバ)を使用する。
この作業を校正の点検と呼ぶ。光ファイバは,既知の分散特性を示す安定した分散発生源であり,これを
簡便な分散校正ジグとして利用することができる。規定した不確かさの範囲内で校正の状態に変化が認め
られない場合は,定められた時間幅で校正期間を延長することができる。ただ,波長分散測定器の測定結
果が使用者の要求に対して明らかに変動(すなわち,測定器のドリフト)している場合は,校正ジグを使
用した校正を実行して校正を更新しなければならない。
前述の理論は,既知標準(校正ジグ)を使用して波長分散測定器を確実に校正する方法を説明したもの
2
C 6829:2005 (IEC 61744:2001)
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であるが,波長分散測定器が指定した校正期間にわたって十分に安定している場合は,より簡便な校正の
点検によって校正状態を確認し,校正期間を延長する(正当とする。)こともできる。校正期間は繰り返
し複数回にわたって延長することが可能であり,その全期間にわたって波長分散測定器の特性が許容した
不確かさの範囲に収まっている限り,延長回数についての制限はない。校正が実施済みで,かつ,この規
格を満足しているとみなすためには,波長分散測定器の主要パラメータである波長及び遅延(又は分散)
は,校正ジグとの比較によって校正しなければならない。
主要パラメータについては,すべてのケースで校正を実施しなければならないが,更に波長分散測定器
を要求する不確かさに対して校正するにはこれだけでは不十分な場合がある。これに加えて,波長分散測
定器の校正状態については,校正済み基準光ファイバを用いた確認又は補正が必要となる場合がある。波
長分散測定器校正の補正については,附属書Dで更に詳しく記載する。
校正済み基準光ファイバだけでは,波長分散測定器の正しい校正を実施するには不十分であるというこ
とに,注意が必要である。校正済みの波長分散測定器に校正済み基準光ファイバを利用した補正を行う場
合は,その校正の範囲及び限界は,校正の補正実施時の条件(波長,光ファイバのタイプ,損失領域など)
に限定されることに注意が必要である。すなわち,この方法で校正及び補正を行った測定器は,実際に校
正を行った範囲に限定して使用しなければならない。一組の波長を用いて一つのタイプの光ファイバに対
して補正を行った調整を,そのまま異なる最小分散波長をもつ別のタイプの光ファイバに適用した場合は,
測定の不確かさを増大させる可能性がある。
1. 適用範囲 この規格は,光ファイバの波長分散測定器を校正するときの標準的な手順について規定す
る。また,この規格は,波長分散測定器の校正の点検を実施する場合の作業手順を規定する。校正の点検
による測定器の校正期間延長の可否についてもこの規格に基づいて決定することができる。この規格は,
マルチモード光ファイバを使用する測定を除いて,あらゆる種別の波長分散測定器に適用することができ
る。この規格の目的は,光ファイバの波長分散測定器を校正する標準的な手順を明確にすることである。
この作業に用いる校正手順の詳細は,波長分散測定器に使用する測定技術によって異なる。マルチモード
光ファイバでも波長分散が起こることは一般に認識されており,多くの波長分散測定器は,この種の光フ
ァイバも測定の対象としているが,この規格では,対象をシングルモード光ファイバの測定に限定する。
この規格の手順は,波長分散測定器の製造業者及び使用者が考えるすべての条件下で,光ファイバの波長
分散測定における不確かさを減少させることを目的としている。この規格の手順は,校正機関はもとより,
波長分散測定器の製造業者及び使用者が次のa)〜c)を目的とする作業を行う場合に適用することができる。
a) 波長分散測定器の校正
b) 波長分散測定器の仕様設定
c) 校正済み波長分散測定器の校正期間延長
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),
MOD(修正している),NEQ(同等でない)とする。
IEC 61744:2001,Calibration of fibre optic chromatic dispersion test sets (IDT)
3
C 6829:2005 (IEC 61744:2001)
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2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発効年又は発行年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格
の規定を構成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年又は発行年を付記してい
ない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 6802:1997, レーザ製品の安全基準
備考 IEC 60825-1:1993, Safety of laser products - Part 1: Equipment classification, requirements and userʼs
guideからの引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
IEC 60050 (731):1991
International Electrotechnical Vocabulary (IEV) - Chapter 731: Optical fibre
communication
lEC 60793-1-1:1995
Optical fibres - Part 1: Generic specification - Section 1: General
IEC 62129
Calibration of optical spectrum analyzers
ISO 9000(全ての部)
Quality management and quality assurance standards
ISO 10012-1:1992,
Quality assurance requirements for measuring equipment - Part 1: Metrological
confirmation system for measuring equipment
ISO 10012-2:1997
Quality assurance for measuring equipment - Part 2: Guidelines for control of
measurement processes
ISO, ISBN 02-67-10188-9: 1993, Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement
EN 45001:1989
General criteria for the operation of testing laboratories
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,IEC 60050 (731)によるほか,次による。
3.1 認定校正機関(accredited calibration laboratry) 適切な国立標準機関から,規定する最小の不確か
さの範囲で検定を行い,校正証明を発行する認可を受けた校正機関。校正内容の国家標準へのトレーサビ
リティを保証している。
3.2 調整(adjustment) 波長分散測定器の測定結果を国家標準又は類似の校正済み波長分散測定器と一
致させることを目的として,波長分散測定器のハードウエア又はファームウエアを変更する。調整の結果
は,当該波長分散測定器が行うそれ以降のすべての測定に影響を与える。
3.3 校正ジグ(artefact) 波長分散測定器を校正する作業の過程で,波長及び遅延(又は分散)の測定
に使用するデバイス,計器,装置など。校正ジグは,これらのパラメータを波長分散測定器に移すための
手段である。
3.4 校正(calibration) 校正する波長分散測定器が示す値と校正標準が示す既知の値との相互関係を,
特定の条件下で確立するプロセス。校正を行う目的は,すべての波長分散測定器が示す値を適切な国立標
準機関の値に,基本的に一致させることである。校正作業は,第1段階として測定校正ジグが示すパラメ
ータと波長分散測定器が示す該当値との比較を行い,続いて,波長分散測定器の調整又は校正証明書に校
正係数を記録することによって,値付けを行う。通常は,使用した環境条件及び装置の状態についても記
録する。校正にはあらゆる測定の不確かさの評価を含む。基準光ファイバは,校正の点検用としてだけに
使用できる。
3.5 校正連鎖(calibration chain) 国家(一次)標準から参照標準,仲介(中間)及び/又は実用標準を
介して波長分散測定器に至る途切れない値付けの連鎖(図1参照)。
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C 6829:2005 (IEC 61744:2001)
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図1 波長分散測定器の代表的校正連鎖
3.6 校正の点検(calibration checking) 校正実施済みで,かつ,校正期間の終了時期に達した波長分散
測定器が,規定した不確かさの範囲内に収まっているか否かを確定させる作業。波長分散測定器の特性が
ドリフトして規定限界値を超えている場合は,校正が必要となる。それ以外の場合は,校正期間を規定の
期間だけ延長することができる。連続した校正期間にわたって波長分散測定器の特性を安定に維持してい
る場合には,校正の点検を反復することができ,その回数についての制限はない。校正の点検を実行する
ときは,基準光ファイバ又は実用標準を使用する。本質的に校正の点検は校正プロセスの最初の部分とい
うこともできるが,このプロセスには,値付け及び調整は含まない。
3.7 校正期間(calibration period)[確認する間隔(interval of confirmation)] この規格に基づいた手順に
よって実施した校正が,規定した不確かさの範囲内に収まっている(有効である)とみなすことのできる
期間。この期間は,個々の使用者の要求,波長分散測定器のもつ特性,過去の経験,環境条件などによっ
て規定する。また,通常使用条件下で取得した波長分散測定器測定結果の経験によっても規定する(ISO
10012-1及びISO 10012-2参照)。
3.8 校正標準(calibration standard) 参照標準を対照として校正し,波長分散測定器の校正に使用する
校正ジグ。この校正ジグには,遅延(又は分散)用又は波長基準用のものがある。校正標準の適正な利用
によってトレーサビリティを保証する。標準という用語には,計測学上の不確かさの小さい順に,国家標
準,参照標準,仲介標準及び実用標準を含む。
3.9 中心波長(central wavelength) 重み付け平均した光源の空気中での中心波長を,ナノメータ(nm)
で表現した値。 光源が連続スペクトルをもつ場合,その空気中における中心波長λCは,次の積分によっ
波長及び
遅延の国家標準
波長及び
遅延の参照標準
波長及び
遅延の仲介標準
波長及び
遅延の実用標準
不確かさ
値付けの
不確かさ
参照標準の
不確かさ
値付けの
不確かさ
仲介標準の
不確かさ
値付けの
不確かさ
実用標準の
不確かさ
値付けの
不確かさ
基準条件下での
波長分散測定器の不
確かさ
操作の
不確かさ
波長分散測定器の
不確かさ
基準条件下での
波長分散測定器
通常動作条件下での
波長分散測定器
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λC = (1/ Ptotal)×[ ∑piλi ]
i
(2)
(3)
(1)
て定義する。ここに,積分範囲は光源スペクトル全体を完全に含む。
λC = (1/ Ptotal)×[∫p(λ)×λdλ] ・・・・・・・・・・
ここに,
Ptotal = ∫p(λ) dλは,光源パワー全体である。
i本の離散スペクトルをもつ場合,空気中での中心波長λCは,次のように定義する。
・・・・・・・・
ここに,
p(λ):光源のスペクトルパワー密度(W/nm)
λC:空気中での中心波長(nm)
λi:第i番目の離散スペクトル波長(nm)
Pi:λi のパワーレベル(W)
∑
=
i
i
total
P
P
:全パワー(W)
3.10 波長分散測定器 [chromatic dispersion (CD) test sets] 伝送波長帯(代表値は1 310 nm及び/又は1
550 nm)に含む種々の波長におけるシングルモード光ファイバの波長分散を測定できる計測器。
3.11 合成標準不確かさ(combined standard uncertainty) 多数の標準不確かさ要素を組み合わせた値。
備考 この規格の文脈では,“確度”という表現は避けなければならない。
校正報告書及び技術データシートでは,波長分散測定器の合成標準不確かさとして,拡張不確かさ(U)
に該当する信頼水準(例えば,95.5%又は99.7%)を適用した値として報告しなければならない。
3.12 信頼水準(confidence level) 測定したパラメータの真の値が,規定の範囲内に存在する確率を評
価した値(拡張不確かさ)。
3.13 補正オフセットCO(correction offset CO) 既知の物理的効果に起因し又は系統的に侵入する不確
かさを排除するために,波長分散測定器の測定結果に加算又は減算する数値。
3.14 包含係数k(coverage factor k) 標準不確かさ(σ)(3.15参照)から拡張不確かさ(U)を計算
するときに使用する係数。
3.15 拡張不確かさU(expanded uncertainty U)[信頼区間 (confidence interval)] 測定パラメータの値が
指定する信頼水準で,その範囲に存在することを期待する区間。標準不確かさ(σ)に包含係数(k)を乗
じた値に等しい。
U = k×σ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
備考 不確かさが正規分布しているものとみなすことができ,かつ,測定数が非常に多い場合は,
信頼水準68.3 %,95.5 %及び99.7 %がそれぞれkの値として1,2及び3に対応する。
波長分散測定器の測定不確かさを規定するには,拡張不確かさ(U)を使用しなければならない。
3.16 子の基準光ファイバ(infant reference fibre) 親の基準光ファイバを対照として分散を測定する光
ファイバ。子の基準光ファイバは,波長分散測定器の校正の点検を目的として作成する。
3.17 測定器の状態(instrument state) 校正作業中の波長分散測定器の測定条件及び測定状態の完全な
記述。
備考 測定器の状態を表す代表的パラメータとしては,使用する波長範囲,データ近似モデル
(該当する場合だけ),ウォームアップ時間,その他の装置設定などがある。
3.18 測定結果(measurement result) ウォームアップなど,作業指示書に示すすべての操作を終了した
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後に,波長分散測定器に表示又は電気的に出力する値。
例 分散D(単位ps/nm・km)
ゼロ分散波長λ0(単位nm)
・ ゼロ分散スロープS0(単位ps/nm2・km)
3.19 国家標準(national standard) 測定値が基本の物性又は特性(例えば,光速)へ追跡可能な標準で,
量に関係する各種の標準の中で,国家によって値を決定するための標準として公式に認定した標準。
3.20 国立標準機関(national standards laboratory) 国家標準の維持管理及び運用を行う団体又は機関。
3.21 動作範囲(operating range) 規定する拡張不確かさの範囲内で,波長分散測定器が動作するよう
に設計したすべての条件の範囲(例えば,分散,温度,その他の影響する因子)。
3.22 親の基準光ファイバ(parent reference fibre) 子の基準光ファイバを作成するときの基準として使
用する基準光ファイバ。親の基準光ファイバを波長分散測定器の校正の点検に使用してもよい。
3.23 参照標準(reference standard) 国家標準を対照として校正し,波長分散測定器の校正に使用する
校正ジグ。この校正ジグは,遅延(又は分散)用又は波長基準用のものがある。校正標準の適正な利用に
よってトレーサビリティを保証する。標準という用語には,計測学上の不確かさの小さい順に,国家標準,
参照標準,仲介標準及び実用標準を含む。
備考 この規格では,参照標準を波長分散測定器の校正の点検で基準として使用する光ファイバ
(親又は子)の意味で使用することがある。
3.24 比例係数SF(scaling factor SF) 標準校正ジグに対応する既知の標準値と,波長分散測定器が示す
値との比率(補正オフセットは,使用しないもの。)。この係数は,波長及び遅延(又は分散)の校正に
適用することができるばかりでなく,校正済み基準光ファイバを使用する場合には,記録されたゼロ分散
波長,スロープ及び実際の分散データにも適用することができる(附属書D参照)。
3.25 スペクトル帯域幅(spectral bandwidth) 半値全幅(FWHM)で表現した光源のスペクトル幅。光
源が連続スペクトルをもつ場合,スペクトル帯域幅(B)はスペクトル幅を半値全幅(FWHM)で表現す
る。光源がi本の離散スペクトルをもつ場合(例えば,多重縦モードスペクトルをもつレーザダイオード)
FWHMスペクトル帯域幅(B)は,実効(r.m.s.)スペクトル帯域幅に係数2.35を乗じた値になる(光源が
ガウス形包絡線をもつものとする。)。
ここに, λC:レーザダイオードの中心波長(nm,3.9参照)
∑
=
λ
i
total
P
P
:全パワー(W)
Pi:i番目の縦モードのパワー(W)
λi:i番目の縦モードの波長(nm)
3.26 標準不確かさ(standard uncertainty) [標準偏差(standard deviation)] 標準偏差(σ)で表した測
定結果の不確かさ。更に詳しくは,附属書A及び“Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement”
による。
備考 異なる発生要因からの標準不確かさを組み合わせる場合(附属書A参照),それらがすべて
i
B = 2.35×[{(1/Ptotal)×(∑piλi2)} ‒ λc2]1/2
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同一の信頼水準で表現(例えば,正規分布したデータの場合は,信頼水準68.3%など)する
ことが重要である。これを実現するためには,不確かさ要素それぞれについてスチューデント
のt分布を適用して決定した包含係数(k)を使用する。
3.27 トレーサビリティ(traceability) 国家標準を起点として,途切れない校正連鎖をたどって波長分
散測定器の測定結果へたどり着く道筋を明示すること。この規格に基づいた手順で校正した波長分散測定
器は,トレーサビリティをもっている。この規格において,国立標準機関又は認定校正機関の測定結果は,
直接的なトレーサビリティをもつことが明らかである。このようなトレーサビリティには,校正連鎖に含
むすべての校正ジグを校正する日程管理及び校正連鎖に付随するすべての値付けによる(累積)不確かさ
の詳細な計算が必要になる。波長分散測定器校正の比較又は監視に基準光ファイバ及び実用標準を用いる
だけではトレーサビリティを確立(又は再構築)することはできず,変化が認められなかった場合に限り,
単にトレーサビリティの認定期間(校正期間)を延長できるに過ぎない。
3.28 値付け(transfer) 校正済み校正ジグの当該パラメータと,波長分散測定器の値との比較に続いて
行う校正プロセスの一部をいい,校正ジグの結果を波長分散測定器に値付けする。値付けを実施する方法
としては,波長分散測定器自体を調整する方法と,校正のための係数を校正証書に記録する方法とがある。
3.29 仲介標準(transfer standard) 値付けのために中間に介在する校正ジグ。例えば,対応するタイプ
の新しい実用標準を校正するための遅延(又は分散)及び波長校正ジグを意味する。
3.30 値付けの不確かさ(transfer uncertainty) 校正作業に伴う不確かさが原因となって波長分散測定器
に侵入する不確かさを,指定する信頼水準で評価した値。これらの不確かさは,波長分散測定器だけでな
く,校正標準及び校正ジグから発生することもある。
3.31 不確かさタイプA(uncertainty type A) 測定におけるある種のランダムな効果を処理する場合の
ように,一連の観測値を統計処理することによって得られる不確かさ。(“Guide to the Expression of
Uncertainty in Measurement”参照)
3.32 不確かさタイプB(uncertainty type B) 一連の観測値の統計処理以外で得られる不確かさ。例え
ば,測定の系統的効果を評価する場合に,不確かさを生じる可能性のある発生原因の評価などがこの例で
ある(“Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement”参照)。
備考 統計的処理以外の手段とは,例えば,従来からの測定データ,使用する材料,校正ジグ,計器
の挙動,特性についての経験,一般的知識,製造業者が発行する仕様,校正その他の証明書か
ら得られるデータ,ハンドブックの参照データに示す不確かさなどを含む。
3.33 不確かさの限度(uncertainty limits) (測定装置の)誤差許容限界,拡張不確かさに関する使用者
の要求,製造業者の仕様,規制条文などが許容する極限値(ISO 10012-1参照)。
3.34 実用標準(working standard) 通常は,参照標準又は仲介標準を対照として校正し,波長分散測定
器の日常の点検作業で使用する標準。
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4. 校正 この箇条では,波長分散測定器を校正する作業をまとめて説明し,校正用設備のための環境要件
についての推奨事項を詳細に解説する。
4.1 波長分散測定器校正の原理説明
4.1.1 (絶対)校正 波長分散測定には様々な技術を使用するが,次の二つの項目はすべてに共通,かつ,
基本的なものである(附属書C参照)。
a) 被試験光ファイバに入射する波長固定又は波長可変の試験用光源の使用。
b) 光ファイバ波長分散は,被試験光ファイバによって生じる光パルスの遅延,位相シフト,差分位相シ
フト,干渉しまピーク位置(波長分散測定器の種別によって異なる。)などを電気的又は光学的に測定
し,測定データに適切な計算処理を施して得ることができる。
波長分散測定器は,本質的に,波長をプログラム(独立)変数として通常は横軸(x軸)で使用し,分
散又は時間遅延を測定値(従属)変数として縦軸(y軸)で表すよう機能する。その基本的な性格から,
光ファイバの波長分散測定では,複数の波長をプログラムする必要がある。一方,微分位相法を用いて1
波長点における分散値を得る場合であっても,独立した二つの波長を使用する。当然ながら,測定する波
長範囲にわたる広い範囲の波長分散が存在することを考えなければならない。このため,波長分散測定器
の使用範囲を,光ファイバの測定済み分散値の範囲に限定する場合を除き,適切な一つの波長分散基準だ
けを使用して,一つの波長分散測定器から他の装置へ校正を値付けするということはできない(“序文”
の説明を参照)それぞれの波長分散測定器を最小の不確かさで校正するためには,波長と遅延(又は分散)
応答とを独立して校正する必要がある。したがって,波長分散測定器の校正作業は,次の二つに分類され
る。
a) プログラムした波長を校正して確認する。
b) 波長分散測定器の遅延(又は分散)応答は,基地の遅延(又は分散)基準に照らして校正する。
この2段階の校正作業は,一般的にはお互いに独立して実施するが,理想的には統合した一連の手順
として実行するのが望ましい。作業手順の詳細を,4.3に示す。それぞれのケースで,測定器を波長及び
遅延(又は分散)校正ジグの仲介標準と比較し校正を実施する。これらの標準は,校正連鎖を構成する
要素である(図1)。
4.1.2 校正の点検 4.1.1では(絶対)校正の原理を説明したが,日常作業として行う校正の確認(実際に
使用している波長分散測定器でしばしば実施する。)では,基準光ファイバを実用標準として使用する波
長分散測定器の校正の点検で十分な場合がある。校正の点検及び校正(例えば,補正オフセットの調整な
ど)は,明確に区別する必要がある。波長分散測定器の安定性の確認を目的とする場合,基準光ファイバ
の使用で十分であるが,これは実際の校正の代替にはならない(“序文”参照)。この基準光ファイバに
よる校正手順は,7. で説明する。
備考 基準光ファイバは,主として校正の点検に使用する。一方,波長分散測定器の製造(絶対)
校正に,基準光ファイバを使用することはできない。
a) 波長分散測定器の全波長範囲及び光ファイバ長の全範囲にわたって正しく評価するためには,分散の
異なる何種類かの基準光ファイバが必要となる。これは高価で,かつ,複雑であり,何段階かの値付け
操作によって校正の不確かさを生じる原因になる。
b) 基準光ファイバのゼロ分散波長(λ0),スロープ(S0)及び分散値を,ある波長範囲のデータ近似で
得ることは,その結果としてシステム間の比較を,使用した波長範囲内で行わなければならないことを
意味する。
c) この“λ0-スロープ”による表現は,光ファイバに関して十分な妥当性をもつが,ある波長分散試験
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装置が非線形な遅延(又は分散)及び波長挙動を示す可能性がある場合には,適用できない。非線形特
性を考慮しなければならないケースでは,より完全な遅延(又は分散)と波長応答に関する試験が必要
になる。
d) 基準光ファイバを用いて波長分散測定器を比較する場合は,その光ファイバを測定に使用するため
の 基準長の値が必要になる。物理的な光ファイバ長の短縮(例えば,切断による)の履歴を追跡でき
るようにしておき,これによる不確かさを説明できる必要がある。
計器並びに既存の補正オフセット及び比例係数を用いて,波長分散の測定結果を該当する不確かさの範
囲に収めるのに十分であることが証明できれば,基準光ファイバを使用して国家標準へのトレーサビリテ
ィを拡張することができる。これは,波長分散測定器が最後に実施した校正以後,その特性を安定に維持
していることを意味する。実際,波長分散測定器の特性がドリフトして不確かさの限界を超過したことが
校正の点検によって明らかになるまで,無制限に校正期間を延長することができる。不確かさの限界を超
過したことが明らかになった時点で,完全な再校正が必要になる。基準光ファイバは,同一条件下(試験
波長,光ファイバタイプ,光ファイバの長さ範囲など)での波長分散測定器の比較用(校正とは明確に区
別して)として使用することが考えられる(“序文”参照)。
4.2 校正のための準備
4.2.1 一般的注意事項及び組織体制 校正には,次の推奨事項を適用する。校正は,試験所(組織)内の
他の部署から可能な限り独立した施設(ISO 10012-1,ISO 10012-2及びEN 45001参照)で実施しなければ
ならない。測定機器についても同様に独立性を保つ必要がある。環境条件は,次のように,校正に必要と
する不確かさのレベルに見合ったものである必要がある。
a) 環境を清浄に保つ。
b) 温度の監視及び制御を行う。
c) 湿度の監視及び制御を行う。
d) レーザ光源は,安全な条件で作動させる(IEC 60825-1)。
校正プロセスで使用する標準器は,文書化したプログラムに従い,国立標準機関又は認定した標準器へ
のトレーサビリティが保証できる方法で校正する必要がある(図1参照)。校正連鎖のそれぞれの階層レ
ベルにおいて複数の標準を維持し,それによって同一レベルの各標準を検定できるようにすることを推奨
する。それぞれの校正実施には,文書化した測定手順を備え,操作手順及び必要な機器について説明する。
仮結果シート,不確かさの予想及び校正証明が必要である。校正機関は,自分が実施する測定の範囲に対
して妥当な品質システムを運用する必要がある(例えば,ISO 9000)。また,測定結果及び途中の計算並
びに校正証明書の作成を監査する独立した第3者機関を置く必要がある。
4.2.2 試験環境の要件 試験環境は,次の要件を満たさなければならない。
a) 特に指定のない場合は,すべての試験を周囲温度23 ℃±3 ℃,相対湿度(50±20 %)の環境で実施し
なければならない。
b) 校正作業のいかなる部分を行う場合でも,使用する波長分散測定器及び試験用器具並びに装置類を提供
する各製造業者の推奨条件に従って,十分な時間をおき,周囲環境と完全に温度平衡させてから試験を
開始しなければならない。
c) 再現性ある試験を行うための前提条件として,波長分散測定器及び測定器類の計器状態を記録しておく
必要がある。
d) 光コネクタ,光入力端子などは,測定開始前に常に清掃しておかなければならない。
校正を値付けする時点において,ある種の校正ジグがその校正の階層には存在しなかったことに起因す
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る不確かさ(例えば,エージング,温度差,光パワーレベル,光学的反射率など)が存在する可能性が
ある。それぞれの場合に,このような校正ジグに起因して値付け時に発生する不確かさは,それぞれの
発生源からの校正ジグの不確かさを累積したものになる。
4.2.3 測定機器の要件
校正 試験機器の校正は,国立(又は国際)標準機関に追跡可能であることが必須要件になる。この規格
で規定する試験では,次の項目の全部又は一部を使用しなければならない。
a) 光可変減衰器
b) 離散波長をもつ光源(例えば,レーザ)用の波長測定装置(光スペクトラムアナライザ,波長計など)
c) 波長可変モノクロメータを使用するシステム用の波長校正手段(例 He-Neレーザ又は波長標準)
d) 遅延(又は分散)校正用の光遅延線用校正ジグ(微分光遅延線用校正ジグ)
校正の点検 校正の点検の実施には,分散データのトレーサビリティを保証した基準光ファイバが必要で
ある。
4.2.4 トレーサビリティ 校正結果に影響を及ぼす測定器は,途切れない連鎖を介して適切な国家標準に
さかのぼることができる方法で校正しなければならない。また,再校正期間を明確に定義し,記録する必
要がある。測定器のトレーサビリティは,要求に応じて提出可能でなければならない(8. 参照)。
4.3 校正手順 波長分散測定器を校正する場合には,共通に満たさなければならない項目がある。すなわち,次
の項目を相互に独立し,かつ,その順序に従って校正する必要がある。
a) (プログラムした)光源の波長
b) 波長分散測定器の遅延(又は分散)応答
この二つのケースそれぞれについて,補正オフセット,比例係数及び線形性を決定しなければならない。
使用者がまずしなければならないことは,対象となる波長分散測定器が,どの種別の光源(レーザ,LED,
フィルタ又はモノクロメータ)を使用し,どの測定方法を使用するのか確認することである。
備考 波長分散測定器によっては,複数の測定方法を使用することができる場合がある。この場合,
測定方法ごとに独立させ,この規格に準拠して波長分散測定器を校正しなければならない。
波長分散測定器の校正は,次に示す手順に従って実施しなければならない。
a) 波長分散測定器が,波長校正に使用している測定方法に適した手順を使用する(5. 参照)。
1) 離散波長光源を使用するシステムは,5.2の波長校正手順を使用する。
2) 波長可変光源を使用するシステムは,5.3の波長校正手順を使用する。波長校正に使用する調整項目
をすべて計算し,その結果を波長分散測定器に適用(ハードウエア/ソフトウエア調整がこの典型
的な例)して,波長の不確かさをIEC 62129が規定する範囲に収める。
b) 波長分散測定器の測定方法に適した装置を使用し,6.3の手順に従って遅延(又は分散)パラメータを
校正する。遅延(又は分散)校正を行うための調整項目をすべて計算し,その結果を波長分散測定器に
適用(ほとんどがハードウエア/ソフトウエアの調整)して,遅延(又は分散)の不確かさを規定範囲
に収める。
c) 校正の結果を,8. の説明に従って記録し,証明書に記載する。以上の操作によって,波長分散測定は,
国家標準に準拠し,規定の不確かさの範囲内で完全に校正する。
備考 波長分散測定器が出力する“生”データをマニュアル調整するために,校正オフセット及び比例係
数を使用することがある。
4.4 校正点検手順 この手順は,4.3の規定に従って校正した波長分散測定器の校正を点検するために使
用する。基準光ファイバ測定による分散の値が,該当する不確かさの限度を超えていないことを確認する
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限り,校正の点検の結果を使用して,校正期間を延長することができる。厳密な手順及びレポート方法に
ついては,7. で詳しく規定する。
5. 波長校正手順
5.1 一般事項 この箇条では,波長分散測定器を波長校正する手順について規定する。校正原理は,校正
した波長校正ジグ(外部光源)及び光伝送素子その他の校正ジグを使用して,波長分散測定器が,波長分
散測定に使用する中心波長を決定することである。実際に使用する波長は,それをもとに調整する。校正
作業の手順は,対象となる波長分散測定器が使用する光源のタイプによって異なる。レーザその他の離散
波長光源を使用する波長分散測定器については,5.2に規定する。連続可変光源を使用する波長分散測定器
については,5.3に規定する。校正結果を報告する手順については,両者とも5.4に規定する。
5.2 離散波長光源 多くの波長分散測定器は,複数のレーザダイオード又はLED又は白色光源から光フィルタ
で波長を取り出す光源を使用する。このシステムの波長校正手順を,次に規定する。
この作業に使用する光源以外の機器,校正ジグ及び装置類は,校正に先立ってトレーサビリティを保証した基準
をもとに校正しなければならない。この計器では,次の手順で作業を行う。
a) 測定器に課す要件を満たしていることを確認する(4.2.3参照)。
b) 試験を実施する環境が,条件を適正に満たしていることを確認する(4.2.2参照)。
c) 波長分散測定器の状態を,校正手順に合わせて適正に設定する(4.2.2参照)。
d) 附属書Bの規定を参照し,不確かさが発生する技術的原因及び効果を考慮に入れる。
e) 次の装置を使用して,測定装置が適正に校正されていることを確認してから,それぞれの光源の波長を
測定する。
1) 光スペクトラムアナライザ
2) 波長計
3) モノクロメータを使用する検出システム
f) それぞれの波長について,中心波長(λc)及びスペクトル幅(B)を測定する(3.9,3.25の定義による。)。
g) 光源変調の条件が異なることによって,波長シフト(チャーピング)が起こる可能性を考慮しなければ
ならない。また,個々の光源波長の不確かさについても評価が必要である。波長の不確かさの程度は使
用する波長(波長領域)にも依存するので,これに続く分散の不確かさ評価でも正しい不確かさの値を
使用しなければならない。それ以降の時間遅延及び分散曲線の計算では,中心波長(λc)及びスペク
トル幅(B)を使用する。波長不確かさを近似するのに適した方法は,IEC 62129に規定している。
h) 選択した光源が発する波長の中で特性を確認したものを,モノクロメータのチューニング関係(校正曲
線)の計算に使用する。
5.3 波長可変光源 波長可変(チューナブル)光源を使用する波長分散測定器の場合,波長校正のために
は,波長選択に使用するモノクロメータを,波長分散測定器が使用する波長領域全体にわたって校正する
必要がある。これを実行するには,次に規定する三つの方法(5.3.1,5.3.2及び5.3.3参照)のいずれか又
はこれらの方法を組み合わせて用いる。この作業に使用する光源以外の機器,校正ジグ及び装置類は,校
正に先立ってトレーサビリティを保証した基準をもとに校正しなければならない。
備考 標準光源とフィルタは,あらゆる場合において,スペクトル幅のFWHMが5nm以下でなけれ
ばならない。同様に,波長測定装置は,要求する波長不確かさに見合ったスペクトル分解能を
もつ必要がある。
5.3.1 方法A この方法では,光波長(又は光波長セット)が既知の外部光源を必要な数だけ用意し,波長
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分散測定装置のモノクロメータに入力して使用する。
a) 複数の外部光源は,それぞれの波長を個別に校正し,安定性に優れ,明確に定義した波長及びスペクト
ルの離散特性をもっていなければならない。モノクロメータの校正には,離散波長をもつ古典的光源か
ら導いた基本的物理現象を基準として用いる。具体的には633 nm He-Neレーザ,アルゴンレーザ,
水銀ランプなどを用いて,波長分散測定器が内蔵するモノクロメータの種々の回折次数の波長を校正
する。この作業の目的は,モノクロメータドライブが,波長分散測定器(IEC 62129)の全波長範囲
をカバーするのに十分な数の校正点を得ることである。このような校正点を得るために,適切な広帯域
光源と既知の校正済みモノクロメータを使用することもできる。いずれの場合も,光源のスペクトル
幅は5 nm以下である必要がある(B.1.2参照)。
b) 校正ジグの光路が,通常の使用条件における波長分散測定器の光路を正確に再現するように注意する必
要がある。また,波長分散測定器の通常使用時及び校正時における光軸調整の変動に起因する不確かさ
を正しく評価することが重要である。
c) 測定器に課す要件を満たしていることを確認する(4.2.3参照)。
d) 試験を実施する環境が,条件を適正に満たしていることを確認する(4.2.2参照)。
e) 波長分散測定器の計器状態を,校正手順に合わせて適正に設定する(4.2.2参照)。
f) 附属書Bの説明を参照し,不確かさが発生する技術的原因及び効果を考慮に入れる。
g) それぞれの光源について,中心波長(λc)及びスペクトル幅(B)を決定する波長又は回折次数を測定
する(3.9,3.25参照)。
h) チューニング関係の計算をもとにして,それぞれの光源波長に付随する不確かさ及び全体としての波長
の不確かさを評価する。波長の不確かさは,実際に使用する波長(波長領域)によって変化する可能
性があるので,この後で行う分散の不確かさの評価では,波長の正しい不確かさ評価値を使用する必
要がある。波長の不確かさを近似するのに適した方法は,IEC 62129に規定している。
i) 選択した光源が発する波長の中で特性が確認されたものを,モノクロメータのチューニング関係(校正
曲線)の計算に使用する。
5.3.2 方法B この方法では,エタロン及び複数の光学フィルタなどの中心波長が既知の校正ジグを,波長
分散測定器の光路に(多くの場合,試験光ファイバ自体の代わりに)挿入する。この場合,校正作業過程
において完全な波長分散測定器を使用する。
a) 複数の波長標準を使用することによって,通常の1 310nm若しくは1 550nm波長帯又はその近傍に数点
の校正点を設けて,波長の非線形性及びモノクロメータのサインバーに起因する不確かさを減少させる
ことができる。この標準は,具体的には,校正済み中心波長をもつバンドパスフィルタ及びエタロンを,
波長分散光源モノクロメータから検出器に至る光路に置いたものである。十分な数の波長を使用しなけ
ればならない。モノクロメータ及びフィルタ又はエタロンは,要求する不確かさの範囲で校正点を明確
に区別するのに十分なスペクトル分解能をもっていなければならない。この条件を満たすためには,波
長分散測定器の調整が必要となることがある。
b) 校正ジグの光路が,通常の使用条件における波長分散測定器の光路を正確に再現するように注意す
る必要がある。また,波長分散測定器の通常使用時及び校正時における光軸調整の変動に起因する不確
かさを正しく評価することが重要である。
c) 測定器に課す要件を満たしていることを確認する(4.2.3参照)。
d) 試験を実施する環境が,条件を適正に満たしていることを確認する(4.2.2参照)。
e) 波長分散測定器の状態を,校正手順に合わせて適正に設定する(4.2.2参照)。
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f) 附属書Bの説明を参照し,不確かさが発生する技術的原因及び効果を考慮に入れる。
g) 装着している光源及びフィルタを順番に使用してモノクロメータの駆動を校正し,データポイントと
正しく一致するようにする。
h) 十分な数の光源波長とフィルタ波長を用いて,通常の1 310及び1 550nm波長帯に収まるように設定
する。
i) 使用するそれぞれの校正ジグについて,設置条件(フィルタの傾き角など)による効果を評価すること
が重要である。
j) それぞれの波長について,中心波長(λc)及びスペクトル幅(B)を,3.9及び3.25で規定する方法を
用いて測定する
k) チューニング関係の計算を基にして,それぞれの校正ジグの波長に付随する不確かさ及び全体としての
波長の不確かさを評価する。波長の不確かさは,実際に使用する波長(波長領域)によって変化する可
能性があるので,この後で行う分散の不確かさの評価では,波長の正しい不確かさの値を使用する必要
がある。波長の不確かさを近似するのに適した方法は,IEC 62129に規定している。
l) 選択した光源が発する波長の中で特性が確認されたものを,モノクロメータのチューニング関係(校正
曲線)の計算に使用する。
5.3.3 方法C この方法では,モノクロメータが出力する波長を,光スペクトラムアナライザ,波長計,モ
ノクロメータなどの計測器を使用して測定する。
備考 モノクロメータのスペクトル幅は,一般的に5 nm未満(B.1.2参照)でなければならず,波長
分散測定器内での十分なスペクトル分解能を確保する必要がある。
a) 波長分散測定器のモノクロメータ用に選択した何種類かの波長について,波長分散測定器モノクロメー
タからの出力波長を,光スペクトラムアナライザ,波長計又はモノクロメータを使用する検出システム
などで測定する。
b) 校正ジグの光路が,通常の使用条件における波長分散測定器の光路を正確に再現するように注意する
必要がある。また,波長分散測定器の通常使用時及び校正時における光軸調整の変動に起因する不確か
さを正しく評価することが重要である。
c) 測定器に課す要件を満たしていることを確認する(4.2.3参照)。
d) 試験を実施する環境が,条件を適正に満たしていることを確認する(4.2.2参照)。
e) 波長分散測定器の計測器状態を,校正手順に合わせて適正に設定する(4.2.2参照)。
f) 附属書Bの規定を参照し,不確かさが発生する技術的要因及び効果を考慮に入れる。
g) 波長計を使用する場合は,光が通過するたびに設置条件に起因する不確かさの効果を評価することが
重要である。
h) 使用するそれぞれの波長について,波長分散測定器を通過する光の中心波長(λc)及びスペクトル幅
(B)を,3.9及び3.25で規定する方法を用いて測定する。
i) 得られた中心波長及びスペクトル幅の値を使用して,モノクロメータのチューニング関係(校正曲線)
を評価する。
j) チューニング関係の計算を基にして,それぞれの波長に付随する不確かさを評価する。波長の不確かさ
は,実際に使用する波長(波長領域)によって変化する可能性があるので,この後で行う分散の不確か
さの評価では,波長の正しい不確かさ評価値を使用する必要がある。波長の不確かさを近似するのに適
した方法は,IEC 62129に規定している。
k) 選択した光源が出力する波長の中で特性を確認したものを,モノクロメータのチューニング関係(校正
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曲線)の計算に使用する。
5.4 不確かさ及びレポート作成 不確かさの取扱い及び波長校正に影響する不確かさの発生要因に関する
詳しい規定については,附属書A及び附属書Bを参照する。校正結果のレポート作成の詳細については,
8. を参照する。
6. 遅延(又は分散)校正手順
6.1 一般事項 この箇条では,波長分散測定器の遅延(又は分散)を校正する手順について規定する。具
体的操作については6.3,レポート作成については6.4に規定している。
6.2 装置及び準備 この箇条では,遅延(又は分散)校正ジグとその使用法について規定する。波長分散
システムの光伝搬遅延(又は分散)応答の特性を知るためには,校正済みの光学装置を使用して光ファイ
バの遅延(又は分散)を模擬する必要がある。その理由は,全波長範囲にわたる遅延変化が小さすぎるた
め,電子的な方法では,十分に正確な測定ができないからである。シミュレーションには,波長分散測定
器の光学システムと光軸とを合わせて置いた移動ミラー又は表面を鏡面処理したコーナプリズムによって
形成する光遅延線用校正ジグを使用する(図2及び図3参照)。
備考 波長変調(附属書C参照)を用いる微分位相法の波長分散測定器は,分散“シミュレータ”
を用いて校正を行う(例えば,図3に示す例では,波長変調クロックに合わせて同期をとりな
がら固定光遅延線及び可変光遅延線をチョッパで切り換えることによって変調を行う。)。
二つの光学アーム間の微分遅延が,光ファイバの波長分散をシミュレートする。
他のすべての波長分散測定器は,図2に示すような単純な遅延線を用いて光ファイバの遅延時間のシミ
ュレーションを行う。この校正ジグにおいて,ミラー又はプリズムがx移動すると,2x/c (s)の光遅延
(又は分散)が発生する。ここで,cは空気中の光速を表す。この変化に対応して発生するパルス遅延,
位相シフト,干渉しまの位置シフト又は微分位相シフト(すなわち,分散)を,波長分散測定器を使用し
て観測する。ミラー又はプリズムの位置を変えながら測定を繰り返すことによって,その波長分散測定器
に対応する遅延(又は分散)測定値と真の遅延時間との関係が得られる。
図2 波長分散測定器の遅延校正に使用する代表的な光遅延線用校正ジグ
ここに,cは波長と(この目的に関して)独立であり,ミラー又はプリズムの直線移動は,国家標準に
出力
入力
ファイバを取り付けた
コリメータレンズ
ディジタルマイクロメータに
装着した鏡面コーナプリズム
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トレーサビリティをもつ方法で校正が可能であるから,この光遅延線を使用する方法は,国家標準に対し
てトレーサビリティをもつことになる。光遅延線用校正ジグ(図2及び図3)は,測定器が使用する光フ
ァイバ長で発生する可能性のある相対遅延(又は分散)の全範囲をカバーするのに十分な長さをもつ必要
がある。また,直線移動分解能は,要求される不確かさに見合ったものでなければならない。
6.2.1 パルス法による波長分散測定器 パルス法による波長分散測定器では,原点における遅延の値を変
えた遅延線用校正ジグ(図2)を複数回使用する。その場合には,予期される光ファイバの最大長に達す
るまで何回かに分けて,種々の長さの光ファイバを追加していく。これは,通常の光ファイバ試験で現れ
る代表的な絶対遅延又は相対遅延に対して,全遅延応答が同一比率の不確かさを伴って線形性を保持する
のを保証するために行う。
6.2.2 位相法による波長分散測定器 位相法による波長分散測定器では,RF変調周波数の全位相サイクル
(2π)をカバーするのに十分な可変範囲をもち,RF変調周波数の全位相サイクル(2π)にわたり,原点
での異なる位相条件で,遅延線用校正ジグ(図2)を複数回使用する。これは,起こり得るすべての遅延,
位相条件に対して,全遅延応答が同一比率の不確かさを伴って線形性を保持するのを保証するために行う。
6.2.3 干渉法による波長分散測定器 干渉法を用いるシステムでは,原点における遅延の値を変えた遅延
線用校正ジグ(図2)を複数回使用する。その場合には,予期される光ファイバの最大長に達するまで何
回かに分けて,種々の長さの光ファイバを追加していく。これは,通常の試験で発生するあらゆる遅延の
トータルの値に対して,全遅延応答が同一比率の不確かさを伴って線形性を保持するのを保証するために
行う。遅延線用校正ジグ(図2)は,予期される装置遅延の全範囲をカバーするのに十分な変動範囲を備
えている必要がある。
6.2.4 微分位相法による波長分散測定器 微分位相法システムの分散応答は,光遅延線の原理を使用して
校正する。この方法は,波長分散測定器が使用する微分位相法のタイプによって若干異なる。
遅延間相互の差異に基づいて動作する微分位相法システム このタイプの波長分散測定器は,図2に示
すような装置を用いて校正する。この方法では,RF変調周波数の全位相サイクル(2π)をカバーする
広い範囲で遅延線用校正ジグを使用する。
波長変調法を用いる微分位相法システム このタイプのシステムは,図3に示すような装置を使用する。
この方法では,RF変調周波数の全位相サイクル(2π)をカバーする広い範囲で遅延線を使用する。
図3 波長分散測定器の校正に使用する代表的微分遅延(又は分散)シミュレータ
ディジタルマイクロメータ
に装着したミラー
固定遅延
可変遅延
チョッパ
シングル
モード
ファイバ用
カプラ(方向
性あり)
ファイバを取り付けたレンズ
チョッパ
コントローラ
クロック
出力
入力
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6.3 校正手順 光信号レベルに依存する効果を考慮に入れるため,減衰器で光パワーレベルを何段階かに
変化させて,次の校正手順を繰り返し実行しなければならない。これによって,光ファイバ損失及び光結
合効率による影響を明確にすることができる。この校正は,すべての波長分散測定器に共通であり,次の
手順に従って実行する。
a) 測定器に課する要件を満たしていることを確認する(4.2.3参照)。
b) 試験を実施する環境が条件を適正に満たしていることを確認する(4.2.2参照)。
c) 波長分散測定器の計器状態を,校正手順に合わせて適正に設定する(4.2.2参照)。
d) 附属書Bの説明を参照し,不確かさが発生する技術的原因及び効果を考慮に入れる。このとき,遅延
(又は分散)校正ジグに付加的な影響を及ぼすすべての不確かさ要素(例えば,温度,エージングの程
度など)に注意を払うことが必要である。
e) 校正に使用する波長を選択する(例 1 310 nm)。
f) ミラー又はプリズムを取り付けた遅延線(図2及び図3参照)を一方の端(例えば,原点)にセットし,
波長分散測定器が光学システムの全光遅延,位相シフト,干渉しまシフト又は微分位相シフトを測定で
きるように設定する。
g) ミラー又はプリズムを均等な間隔のステップで移動させながら,遅延,位相シフト,干渉しまシフト又
は微分位相シフトをステップごとに測定する。ノイズの影響を軽減するため,測定データを十分に平均
化する。また,遅延線のステップ数も,十分な数を使用する必要がある。ミラー位置xを逐次移動させ
ていくと,2x/cの遅延が起こり,それに対応する量の位相シフト又は微分位相シフトが発生する。でき
れば,位相シフトを遅延に変換する(微分位相法は,微分遅延に変換する。)。測定で得た全測定値は,
遅延(又は微分遅延),位相シフト,干渉しまシフト又は微分位相シフトをミラー位置xに対してプロ
ットした傾き2/cの直線上に乗るはずである。
h) 最小2乗法を用いて,最適な回帰直線を決定する。
i) 回帰直線の傾きsl及び切片(補正オフセットCO)を通常のデータフィッティング法で計算し,得ら
れた値を記録する。比例係数SFdelは,次式によって求める。
SFdel =sl×c/2
得られた結果に何らかの非線形性(又は過度に大きなデータ近似の残留誤差)及びノイズが認められる
場合には,それが不確かさの原因になることがある。遅延(微分遅延)比例係数SFdelを利用して,波長分
散測定器を調整することも可能である。前述の操作を何回か繰り返すことによって,より正確な(平均)
スケールの不確かさの値を得ることができる。平均遅延(微分遅延)比例係数SFdel,ゼロオフセット,そ
の他の不確かさを評価する(8.及び附属書A参照)。
6.4 不確かさ及びレポート作成 遅延(又は分散)校正に関連する不確かさの取扱い及び不確かさの発生
要因に関する詳しい規定については,附属書A及び附属書Bを参照する。校正結果のレポート作成の詳細
については,8.を参照する。
7. 校正点検手順
7.1 一般事項 この箇条では,波長分散測定器についての基準光ファイバを利用する校正の点検手順を説
明する。基準光ファイバの選択基準は,7.2及び7.3に示す。また,基準光ファイバを利用して波長分散測
定器の比較を行う校正の過程については,図4に示す。 7.5では,値付け可能な校正の点検の校正ジグと
して使用する基準光ファイバについて,新規に作成する方法を説明し,その手順を図5に示す。
7.2 装置及び準備 基準光ファイバとして使用できる光ファイバは,厳密ではないが一般的に,次の特性
(5)
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を必要とする。
a) 国立標準機関で校正した標準光ファイバ又は正しく校正したことを保証した波長分散測定器上で作成
した標準光ファイバとする。
b) 過大な光損失をもたない光ファイバとする。
c) 長さ方向の均一性に優れ,モードフィールド径,分散などファイバタイプの“典型的な”特性値をもっ
ていなければならない(附属書C参照)。
d) 理想的には,波長分散測定器を適用するものと同一製造ユニットから採った光ファイバでなければな
らない(特に,QAアプリケーションの場合)。
e) 波長分散測定器で測定可能な最短光ファイバよりも長く(例えば,>1 km),測定可能な最長光ファイ バ
よりは短くなっていなければならない(例えば,<25 km)。長さを正しく選択することによって,分
散測定の再現性を最適にできる。干渉法を用いる場合は,ファイバの長さを,ユニットが要求する値 (数
メートル)にする。
f) じんあい,光ファイバの巻上げによる張力変動,空気の流れ,物理的損傷などの環境因子から適切に保
護する。環境を制御できる囲いの中に置くこともできる。
備考 一つのタイプの光ファイバを複数又は複数のタイプの光ファイバを使用することもできる。
7.3 手順 次の手順で校正の点検を実行する(図4参照)。
a) 測定器に課す要件を満たしていることを確認する(4.2.3参照)。
b) 試験を実施する環境が条件を適正に満たしていることを確認する(4.2.2参照)。
c) 波長分散測定器の計器状態を,校正手順に合わせて適正に設定する(4.2.2参照)。
d) 附属書Bの規定を参照し,不確かさが発生する技術的原因及び効果を考慮に入れる。
e) 対象となる波長分散測定器に基準(標準)光ファイバを取り付ける。準備作業中に光ファイバを取り外
すためには,基準光ファイバの標準長及び任意の長さ補正値を使用する。
f) 適切な波長範囲のデータを一致させることによって,光ファイバのゼロ分散波長(λ0)及びスロープ(S0)
を決定する。必要な場合,測定を何回か繰り返してタイプAの不確かさの平均化処理を行う。
g) 得られたゼロ分散波長及びスロープの平均値を基準値と比較する。比較の結果得た偏差を,校正結果
の中で指定しなければならない。同様に,分散値及びデータ近似の残留誤差(データ近似を行った場合)
を比較して,異常の有無を点検する。最初に基準光ファイバの値の不確かさを評価し,続いて逐次
(累積)値付けによる不確かさを評価する必要がある(図4参照)。その結果が不確かさの限界を超過
しない場合には,校正期間を延長することができるので,新しい証明書を発行する(7.4及び8.参照)。
波長分散測定器の不確かさ評価結果が,現在の校正証明(8.参照)で指定している限界を超えている場
合は,完全な再校正が必要である。
h) 異常の有無の調査後,必要な場合,状況を改善するために完全な校正を実行する。
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図4 基準光ファイバの比較
7.4 不確かさ及びレポート作成 校正の点検に関連する不確かさの取扱い及び不確かさの発生要因に関す
る詳しい規定については,附属書A及び附属書Bを参照する。校正の点検のレポート作成の詳細について
は,8.を参照する。
7.5 子の基準光ファイバの形成 子の基準光ファイバを形成するときは,測定条件を厳密に記録すること
が重要である。また,子の基準光ファイバ形成に当たっては,幾つかの規定を適用する必要がある(図5
参照)。
図5 基準光ファイバの形成
a) 既知の遅延(又は分散)データ近似が厳密に適用できるように,限定した狭い波長範囲で親の光ファイ
バの測定を行う(附属書C参照)。
b) 子の光ファイバは,親の光ファイバと類似した特性(同一のクラス/タイプである,類似した長さであ
るなど)をもつ必要がある(8.2参照)。両者で一致する標準長及び光ファイバの群屈折率値を記録す
る。
c) 親の光ファイバの特性測定に使用した波長範囲及び厳密な波長の値を,その親から形成されるすべての
子の光ファイバに共通に使用しなければならない。これによって,すべての測定についてデータ近似の
重み付けが同一であることを保証し,近似モデルの偏りを排除することができる。
d) データ近似に使用する式は,親及びそれを基準に比較するすべての子の光ファイバと同一でなければ
ならない。
e) 子及び親の光ファイバの測定で光パワーレベルに違いがある場合には,必要に応じて,その効果を補正
しなければならない。又は,適切な光減衰器を用いて光パワーを同レベルに調整して測定する。
子の基準光ファイバの形成は,(理想的には校正済みの)波長分散測定器を暫定的な仲介標準として使
用し,次の手順で実行する。
a) 測定器に課す要件を満たしていることを確認する(4.2.3参照)。
基準光ファイバ
波長分散測定器
基準ファイバの
不確かさ
値付けによる
累積不確かさ
波長分散測定器の
トレーサビリティ不確かさ
親の基準光ファイバ
基準光ファイバ
の不確かさ
値付けによる
累積不確かさ
子の基準光ファイ
バの不確かさ
子の基準光ファイバ
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b) 試験を実施する環境が条件を適正に満たしていることを確認する(4.2.2参照)。
c) 波長分散測定器の計器状態を,校正手順に合わせて適正に設定する(4.2.2参照)。
d) 附属書Bの説明を参照し,不確かさが発生する技術的原因及び効果を考慮に入れる。
e) 親の基準光ファイバの標準長及びカットなどによって取り除いた光ファイバに対する,任意の長さ
補正値を使用する。
f) 親の光ファイバを装置に取り付け,ゼロ分散波長及びスロープを決定する。
g) 測定値の不確かさを減らすため,必要な回数だけ測定を繰り返す。
h) 親の光ファイバについて観測した偏差値が,値付けのために使用した波長分散測定器上で許容できる
不確かさの限界に収まっていることを確認する(図5参照)。
i) 新しい光ファイバの合意による標準長及びカットなどによって取り除いた光ファイバに対する任意の
長さ補正値を使用する。
j) 子の光ファイバ(前述の規定に従って選択する。)を取り付け,親の光ファイバに使用したものと同
じ測定装置を用いて,ゼロ分散波長及びスロープを決定する。
k) 測定値の不確かさを減らすため,必要な回数だけ測定を繰り返す。
l) 新しい基準光ファイバの校正証明書すべてに,次の項目を記入する(8.参照)。
1) ゼロ分散波長の値(複数の場合あり)
2) 光ファイバの長さ及び群屈折率値
3) 波長の点数及び使用したデータ近似法
4) ゼロ分散波長におけるスロープの値
5) 測定波長(及び必要に応じて指定された波長)における分散の値
6) 親の光ファイバの不確かさ,値付けプロセスによる累積値付けの不確かさから生じる校正の不確
かさ
7) その他の関連環境因子(光ファイバの温度など)
8. ドキュメンテーション この規格を基準として用いるすべての波長分散測定器について,次に規定する
校正レポートを作成しなければならない。不確かさに関するすべての規定は,附属書Aの数学的基礎をも
とにしている。
8.1 仕様,測定データ及び不確かさ 波長分散測定器の校正の完了後,適切な手順(5.及び6.参照)を実
行して調整の内容を検証し,波長分散測定器を正しく校正したことを点検する必要がある。代替法として,
基準光ファイバ(7.参照)を使用した校正の点検で置き換えることができる。この規格に準拠しているこ
とを示すためには,1台ごとの波長分散測定器についての不確かさを校正証明書に記載する必要がある。
これらの不確かさは,拡張した不確かさ(標準不確かさに包含係数kを乗じた値)として記載する。波長
分散測定器の製造業者は,自らが製造した同一形式の一連の波長分散測定器から得た不確かさデータをも
とにして,該当モデルの不確かさに関する技術仕様値を評価することができる。波長分散測定器の製造業
者は,一連の波長分散測定器から得た不確かさを,該当するデータシートに指定することができる。証明
書又は仕様書には,次の項目を記載する必要がある。
a) 被試験波長分散測定器のすべての値付け環境条件(4.参照)。
b) 値付け作業時に調整を実施せず,以後の光ファイバ測定時にマニュアル操作での適用を意図する場合に
は,校正オフセット及び比例係数を記録する。これに該当するケースでは,光ファイバのゼロ分散波長,
スロープ,分散及び遅延及び該当波長範囲についての校正オフセット及び比例係数を記録する。内部調整
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(ハードウエア又はソフトウエアの変更などによる。)を実施した場合には,その旨を明確に証明書に記
載する(実際のCO及びSF値を記録する必要はない。)。
備考 校正の点検の場合は,基準光ファイバパラメータ(7.3参照)と波長分散測定器測定結果との間
の偏りを記録する。子の基準光ファイバを形成(7.5参照)するときは,7.5にリストした光フ
ァイバパラメータを記録する。
c) 校正作業中における波長分散測定器の計器状態。特に重要なパラメータは,次のとおりである。校正日
付,波長分散測定器のシリアル番号(又はその他の識別情報),使用した試験波長,光ファイバのタイ
プ,計器設定,平均化時間/速度,データ近似モデル,測定器の動作モード及び使用した校正ジグのシ
リアル番号。
d) 校正期間及び次回の校正実施予定日。
e) 次の文を必ず記載する。
“波長分散測定器のトレーサビリティに関する情報は,請求次第,求めに応じられる。”
f) 校正作業実施担当者及び校正作業管理者の署名。
g) 校正の実施手順,使用した重要な装置及び校正ジグの詳細(例 校正ジグの形,識別情報,動作原理
など)。
8.2 トレーサビリティ情報 校正連鎖の例を図1に示す。8.1 e)に示すトレーサビリティ情報(次のa)〜e)
に示す情報を含む。)は,請求次第,必ず提供できるようにしなければならない。
a) 校正連鎖の頂点にある国立標準機関,適切な認定校正機関の名称。
b) 校正連鎖に含むすべての波長標準,遅延(又は分散)標準及び関連する計器(再校正期間なども記載す
る。)についての説明。国立標準機関又は認定校正機関から波長分散測定器に至る連鎖経路を説明する。
c) 校正連鎖に含む値付け環境条件(公称値だけ)の実際のセット。
d) 校正連鎖に含むすべての校正ジグ及び標準の不確かさ(拡張不確かさとして)。
e) 校正連鎖に含むすべての値付けプロセスに付随する値付け不確かさ(拡張不確かさとして)。
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(A.1)
附属書A(規定) 数学的根拠
校正に関する作業の主要な部分は,不確かさの評価に帰着する。この附属書では,不確かさを記録に残
し,累積するための標準形式について示す。次の規定は“Guide to the Expression of Uncertainty in
Measurement”を基礎としている。この附属書では,実際の測定値及び測定量の“真値”間の偏差を3種類
(A.1参照)に区別して取り扱う。すなわち,補正することのできる既知の偏差,同じ測定値から得られ
る不確かさタイプA,他の知識から得られる不確かさタイプBである。これらはそれぞれ複数の影響量の
影響を受ける。この附属書は,これらの寄与を評価,累積及び報告するための標準形式について示す。
A.1 偏差値 測定結果の既知の誤差を特徴付ける偏差。“誤差”という用語は“偏差”と等価であること
に注意する。線形スケールで表現した測定結果(例 波長又はパーセント)と対数スケールで表現した測
定結果(例:dBmで表示した光パワー)とを区別するのは有用である。いずれの表現でも偏差又は誤差Δ
yは,実際の測定結果yactualと測定量の“真値”yrefを定量的に表現する。
∆y = yactual - yref ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
測定結果から偏差を減じることによって,補正を行うことができる。
A.2 不確かさタイプA ランダムに変動する測定結果を特徴付けるのが,不確かさタイプAである。通
常,測定標本の分布としては,正規(ガウス)分布を仮定する。多数の測定標本を平均化することによっ
て,これらの不確かさをできるだけ小さく抑えることを推奨する。同一形式の一連の波長分散測定器を個
別に校正する場合の作業時間を短縮するため,それぞれのランダム(タイプA)不確かさを,二つの段階
に分けて評価する。
A.2.1 最初の段階として,大きな数の測定数mから典型的な測定状況を選択して,実験標準偏差Stype Aを
決定する。分布の中心をゼロ(すなわち,参照標準値)に一致させる。すべてのランダム(タイプA)不
確かさを,波長分散測定器応答の相対不確かさとして報告するわけではないことに注意する。実験標準偏
差(不確かさタイプAで特徴付ける。)は,近似的に次の式で表現する。
(
)
2
1
2
1
1
−
−
=
∑
m
mean
i
typeA
y
y
m
S
・・・・・・・・・・・・ (A.2)
ここに,
yi:一連の分散測定値から取り出した測定標本
ymean:分散したデータの平均値
m:標準偏差を決定するための測定数,mは大きな数(例えば,>30)である
A.2.2 第2の段階として,より小さな測定回数nから,個々のケースの標準不確かさσtype Aを決定する。
測定時間の節約のため,しばしばn = 1を使用することがある。標準不確かさタイプAは,次の式で表現
する。
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(A.4)
(A.3)
σtype A = Stype A / √n ・・・・・・・・・・・・・
ここに,σtype Aは平均値の不確かさを表し,n個の測定標本を平均化する。この二つの段階は,m = nと
することによって,一つの段階にまとめられることに注意する。これ以外にも,統計的手法,例えば,t-
分布が必要となる場合がある。
A.3 不確かさタイプB 不確かさタイプBは,測定値及び測定量の“真値”の間に存在する未知の固定
オフセット値を定量的に表現する。これらの不確かさは,図A.1に示すように不確かさ帯の幅として表現
する。測定結果の分布は一様(方形)であるとみなす。この規格では,相対不確かさ帯の半値幅Utype Bで
不確かさの程度を示す。この不確かさ帯は,影響する条件(温度など)の許容幅を,測定器がこの条件に
依存するワーストケースの値に乗じることによって計算する。これらの計算は,既知の物理法則,製造業
者の仕様,校正証明書に記載する数値又は同一形の測定器から得た十分に大きな数の特性測定値による裏
付けが必要である。また,測定における不確かさタイプAは,平均化などの手法によって可能な限り小さ
くする必要がある。
図A.1 偏差及び不確かさタイプB:両者をより大きな不確かさで正しく置き換える方法
図A.1に示すとおり,より幅が広く対称な不確かさ帯を指定すると,偏差を省略することができる。拡
大された不確かさを表現する別法として,等価標準不確かさσtype Bを使用することができる。
不確かさタイプB(半値幅):
Utype B =(パラメータの許容帯の半値幅)×(波長分散測定器の感度) ・・
オフセット(%で表現)
偏差>0を示す中心線
b) a)を対称な不確か
さで置き換えた
結果
方形分布
偏差 = 0
不確かさ帯半値幅
a) 偏差及び不確かさ
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(A.5)
(A.6)
(A.8)
標準不確かさタイプB(計算値):
σtype B = Stype B / √3 ・・・・・・・・・・・・・
A.4 不確かさの累積値 “合成標準不確かさ”は,多数の不確かさの要素(数をiとする。)を一つの数
値にまとめるために使用する。合成標準不確かさは,個々の不確かさ要素が統計的に独立していることに
基づき,各標準偏差の総和の平方根に帰着する。“Guide to the Expression of Uncertainty in Measurement”に
従い,次の式によって累積偏差,合成標準不確かさ及び合成拡張不確かさを決定する。
累積偏差(誤差):
∆Y = ∑∆yi ・・・・・・・・・・・・・・・
合成標準不確かさ:
(
)
(
)
2
1
2
,
2
,
+
=∑
∑
i
j
j
typeA
i
typeB
C
u
σ
σ
・・・・・・・・・・・ (A.7)
ここに,
σtype B,i:対称な(タイプB)不確かさを表す標準不確かさ(計算値),i番目の要素
σtype A,j:ランダム(タイプA)不確かさを表す標準不確かさ,j番目の要素
i:不確かさタイプBの要素を表す数
j:不確かさタイプAの要素を表す数
備考 式(A.7)の最初の項は,不確かさタイプBをすべて積算し,2番目の項は不確かさタイプA
を積算する。最大値を示す不確かさ要素と比較して,この式への寄与が1/10以下である不確か
さ要素を無視することができる(平方根計算後のこのような要素の寄与は,最大の寄与をもた
らす要素と比較して1/100以下となるからである。)。
合成拡張不確かさ:
U = ±uc×k ・・・・・・・・・・・・・・・・・
ここに,kは包含係数を表す(3.14及び3.15参照)。
ほとんどの測定において,不確かさタイプBを高い信頼性で測定することができる。さらに,測定時に
従うべき手順を明確に確立し,不確かさタイプAを十分に大きな測定回数をもとに評価するならば,包含
係数k = 2を指定すると,合成拡張不確かさUは信頼水準95.5 %での区間を提供し,k = 3は99.7 %の信頼
水準での区間を提供する。状況によっては,多数の読取り値をもとにタイプAを評価するのは実用的でな
い場合があり,その結果として,包含係数k = 2を使用した場合の信頼水準が95 %をかなり下回ることが
ある。このような状況では,正規分布ではなくt-分布を基礎としたkの値(より厳密にはkpの値,ここに,
pは信頼性の確率を%値,例えば,95 %で指定したもの。)を使用しなければならない。一般的に,不確
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かさの査定に関係するのが一つのタイプAの評価及び読取り値の数n(n>2)だけであり,かつ,タイプA
の不確かさが合成標準不確かさ(Uc)の1/2未満である場合は,大形の分布に対応する包含係数を使用す
ることができる。これに該当しない場合では,使用するkの値を正確に得るために,合成標準不確かさ(Uc)
の実効自由度(veff)の値を評価するための評価値が必要となる。不確かさに寄与する各要素(σi及びσj)
の自由度(νi及びνj)を用いてVeffの値を計算するには,次に示すWelch-Satterwaiteの式を使用する。
()
(
)
(
)
∑
∑
+
=
i
j
j
j
typeA
i
i
typeB
C
eff
u
ν
σ
ν
σ
ν
4
,
4
,
4
・・・・・・・・・・・(A.9)
タイプAの評価から得られるそれぞれの寄与の自由度(νj)は,j−1となる。タイプBの寄与につい
ては,利用可能な情報又は標準不確かさ評価値の信頼性から自由度を見積もらなければならない。タイプ
Bに属するそれぞれの寄与の自由度は,相対不確かさΔσi/σiから得ることができる。相対不確かさの値
は,入手可能な情報の累積をもとに科学的な判断を下すことによって得られる主観的な値である。タイプ
Bの寄与は,次の式で求める。
2
2
1
−
∆
=
i
i
iV
σ
σ
・・・・・・・・・・・・・ (A.10)
タイプBからの寄与の自由度(νi)を無限としてよい場合がしばしばある。このような場合では,σi
のもつ実効自由度はタイプAの寄与の自由度に依存し,その大きさはタイプBの寄与との相対的な関係で
決まる。Veffの値が得られたら,標準t-分布表を使用して,信頼水準95 %に対応するtの値を探す。こうし
て得られたのが,式(A.8)を用いて拡張不確かさUを計算するのに必要となるkの値である。
A.5 レポート作成 波長分散測定器出力の合成標準不確かさを校正レポート及び技術データシートに記
載する場合は,拡張不確かさとして表現する必要があり,同時に適用した信頼水準を記録しなければなら
ない。信頼水準の規定値は,95.5 %である。
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附属書B(規定) 動作に伴う不確かさの評価
この附属書では,不確かさの要因となる可能性のある項目及び個々の不確かさを試験する方法について
示す。この試験の目的は,波長分散測定器に使用する校正連鎖(5.参照)に含まれるすべての標準の絶対
不確かさを評価及び計算することである。ただし,考えられるすべての不確かさの要因を網羅したもので
はない。当然ながら,被校正波長分散測定器の動作条件は,校正実行時の諸条件によって大きく異なる。
操作上の不確かさとは,波長分散測定器をその想定された動作条件(温度,損失など)の極限まで動作さ
せることによって,追加的に引き起こされる不確かさを意味する。動作範囲は,波長分散測定器の製造業
者又は操作条件の校正を担当する校正機関が規定する。動作不確かさの計算には,附属書Aの数学的根拠
を用いる。動作不確かさの個々の要素については,実際の値付けプロセスに含まれる不確かさの要因に則
して評価することができる。すべての不確かさは,附属書Aの数学的根拠を用い,拡張不確かさタイプB
の形式で報告しなければならない。動作不確かさとは,一つの動作パラメータが指定した動作範囲内で変
化する場合に,波長分散測定器が示す応答の相対変化のスパンとして定義する。ゼロ点とは値付け条件に
おける応答を意味し,スパンは応答の正負方向への最大変化によって定義する。一般的に,不確かさはゼ
ロ点の周りに非対称に分布する。対象となるパラメータの動作帯が値付け中の同じパラメータの許容帯と
一致する場合は,動作不確かさをゼロとみなすことができる。一般的に,動作不確かさは,動作範囲が広
くなるに従って増大する。
B.1 波長校正の不確かさ
B.1.1 波長オフセット
離散波長光源(レーザ) 主要な不確かさの発生要因の一つは,システムの校正に使用する光スペクトラ
ムアナライザ(又は類似計測器)の校正にある。計器は,一般的に認められた標準を基準として,既知の
精度で校正しなければならない。計器の不確かさは,光ファイバの分散に依存する系統的不確かさへと変
化する。レーザのスペクトル分布及び中心波長の安定性が変動を及ぼす効果についても考慮する必要があ
る。
波長可変(プログラム可能な)光源 モノクロメータの校正に用いる各フィルタ又はレーザ(又は光源)
の波長精度が,不確かさを引き起こす要因になる。一般的には,適切なデータ近似処理を実施してモノク
ロメータの校正を行うので,個々の不確かさは平滑化されている。これ以外に,次のような要因で不確か
さが発生する。
a) (通常は)ディジタルモノクロメータドライブの信号の量子化
b) モノクロメータ及び標準フィルタ又はレーザの長期経時ドリフト
c) モノクロメータの熱ドリフト
d) モノクロメータの(機械的及び電気的)再現性
e) モノクロメータの機械的な位置調整
B.1.2 光源のスペクトル幅及び形状 分散は波長に依存して変化するから,波長分散測定器に使用する光
源のスペクトル幅が有限であることは,分散測定の精度に影響を与える。不確かさを減らすためには,単
に光源の最大パワー波長又はモノクロメータウィンドウの中心波長を取り出すだけではなく,式(1)を用
いて光源の中心波長を評価する必要がある。モノクロメータによってガウス形に近いスペクトル分布が得
られる広帯域光源(例えば,LED)を使用する場合は,この注意が特に重要である。この場合,モノクロ
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メータ通過後の光スペクトルは,一般に非対称なスペクトル形状をもち,光の中心波長がモノクロメータ
ウィンドウの中心と一致しない。実際上の問題として,LEDは少なくとも50 nm FWHMのスペクトル幅
をもつが,通常の光ファイバを測定する限りはモノクロメータの中心波長だけを基準として使用しても,
スペクトル幅5 nm以下については,ほとんど無視できる効果しかない(光ファイバのゼロ分散波長及び
ゼロ分散スロープの実測値に入り込む誤差は,それぞれ1 nmと1 %以下に過ぎない。)。この限界を超え
る領域では,使用する光源の中心波長を正しく評価することが必要になる[中心波長を評価する代表的な方
法としては,波長分散測定器の波長校正に使用する方法C(5.3.3)が使用できる。]。光源のスペクトル幅
が有限であることに関するそれ以外の影響は,遅延検出システムに依存するので,使用する波長分散測定
器に則して評価を行う必要がある。方法A(5.3.1)及び方法B(5.3.2)を用いて波長校正を行う場合は,
スペクトル基準光源のスペクトル幅を5 nm以下に維持することが望まれる。いずれの場合にも,スペク
トルに有意なサイドローブ又は迷光が発生しないようにすることが重要である。
B.2 光ファイバ長の不確かさ 分散は常に単位長に合わせて規格化されるので,被試験光ファイバの長さ
を決定することが必要になる。このための方法として,例えば,波長分散測定器及びOTDRを使用し,そ
れぞれが適切な光ファイバの群屈折率値を使用する。群屈折率の値は,標準的な測定法(例えば,“カッ
トバック”法,機械的な長さ比較,製造業者が提供するデータなど。)から得ることができる。長さ測定
用の装置も既知の標準をもとに校正する必要がある。群屈折率及び長さ測定値の不確かさも,考慮にいれ
る必要がある。標準光ファイバが使用されている場合は,近似的に同じ長さの光ファイバを親と子の波長
分散測定器の両方に使用することができる。光ファイバの接続などの作業では,切り落とす光ファイバの
長さを無視できる範囲に抑えるようにする注意が必要である。また,コネクタ付光ファイバも使用するこ
とができる(B.6.4)。
B.3 光遅延変動 全光伝搬遅延と比較すれば,波長分散による遅延は微小である。このため,少なくとも
分散測定中は,光ファイバ遅延を一定に保持することが必要になる。実際にこの要求を比較的単純に満足
させようとすれば,測定時間及び使用する分散測定技術の選択が重要になる。全遅延変動の主な発生要因
は,測定時間中に起こる光ファイバのひずみ及び温度の変化である。
B.3.1 光ファイバの軸方向のひずみ 光ファイバ内の軸方向のひずみ(例えば,ドラムに強く巻いた場合)
は,大きな遅延変化が生じる原因になることがある。ひずみ変動の原因としては,例えば,ドラム及び光
ファイバ布設ダクトの熱膨張が考えられる。ひずみ変化は,光ファイバの物理的な長さの変化(ΔL)及
び群屈折率の変化(Δn)の原因になる。ただし,一次近似dn/dλ(分散)には影響を与えない。しかし,
測定実行中にひずみが変動(ドラム温度の変化,ドリフトなど)すると,遅延ポイントが順番に得られる
ことから,有意な遅延不確かさが生じることになる。したがって,波長分散測定器の校正状態を保証する
ために,遅延測定及びすべての校正作業,実際の試験操作中は,光ファイバ温度及び光ファイバひずみの
変化を最小に抑える必要がある。許容できるひずみ変動範囲は,使用する測定方法に依存する。また,測
定の継続時間及び測定方法の形によっては,光ファイバ温度及び4.2.2で規定しているもの以外の環境条
件を安定化する特別な対策が必要となることがある。
B.3.2 光ファイバ温度 光ファイバの温度変化によって,次のような影響が生じる。
a) 光ファイバに自然熱膨張が起こると,物理的な長さ及び群屈折率が変化するため,光遅延に変化が生じ
る。したがって,前述したように光ファイバの温度変化を最小にする必要がある。温度変化の代表値
として,測定実行中に0.1 ℃の温度変化があったとすると,0.1 ps/nm・kmの不確かさが生じる。測定
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時間の長さ及び測定方法にもよるが,B.3.1で規定した通り光ファイバ環境を安定化する特別な対策
が必要となることがある。
b) 光ファイバの長さが,異なるひずみレベル及び温度で決定する場合は,ひずみ及び温度変化に起因する
物理的長さの変化が不確かさを発生させる原因になる。このため,分散測定の直前又は直後に時間を
お かずに光ファイバの長さの測定を行い,そのときの分散測定結果を使用することによって,不確
かさの 大きさを,無視できるレベルまで小さくすることを推奨する。
c) 温度はこのほかにも,dn/dλを一次のレベルで物理的に変化させる効果(一種の熱光学効果)を示
し,この効果によってゼロ分散波長が+0.03 nm/℃程度までシフトすることがある。温度による曲線の
変化は,通常は無視してよい。測定時間中における通常の温度ドリフトレベルは,1 ℃程度である。
これは,試験中の光ファイバに起こる“実際の”物理的効果であるから,あらゆる測定技術に同様に
適用する。熱光学効果に起因する不確かさを無視できるレベルに抑えるためには,近い温度(例えば,
23±2 ℃)で基準光ファイバの測定を行うことによって,温度効果を相殺することを推奨する。
B.4 計測器の不確かさ 波長分散測定器に関する不確かさの潜在的な発生要因は,パルス遅延及び位相シ
フトを決定するエレクトロニクスシステムにも存在する。この項では,これらの要因を順番に説明するが,
その効果は多くの論文で詳細に論じられている。
B.4.1 パルス遅延の決定 多くのパルス遅延波長分散測定器では,受信した光パルス及び入力光パルスに
ディジタル的に遅延を与えた波形を波形プロセッサ若しくはオシロスコープ上で重ねて目視で観察する方
法,又は電子的手段を用いて遅延を決定する。このような状況では,次の不確かさが発生する。
a) ディジタル遅延発生器の不確かさ。既知標準に合わせて校正する必要がある。
b) 時間軸の直線性又はプロセッサ及びスコープにおける不確かさ。既知標準に合わせて校正する必要があ
る。
c) 波形の位置決定。通常,波形位置はパルスの波形解析によって決定する。しかし,この方法は,ディ
ジタル量の量子化効果及び光パルスの広がりによる偏り(特に長い光ファイバ)の影響を受ける。目
視によって光軸調整されたシステムは,作業者による不確かさ(例えば,オシロスコープの視差)の
影響を受ける。
d) ディジタル遅延発生器及びスコープの時間遅延ジッタは,ランダムな不確かさ(タイプA)を生成する。
e) 受信器ノイズは,ランダムな不確かさ(タイプA)を発生させ,この効果は光ファイバが長くなるほど
大きくなる。
B.4.2 位相シフトの決定 位相シフトシステムでは,高周波信号を使用して光ファイバ内での群遅延に起
因する位相シフトを取り出す。この方法では,光ファイバ内で全位相シフトによる多数回の完全な2π位
相回転が起こる。位相計が与えてくれるのは最後の完全な2π位相サイクルに過ぎないが,検出される実
際の位相は全光ファイバ長によって作り出されたものである。したがって,周波数のわずかなシフトは,
光ファイバの長さに比例してはるかに大きな位相シフトとして測定(位相計指示値)される。位相検出の
不確かさは,次のような要因から発生する。
a) マスタ発振器の周波数ドリフト。ドリフトの結果として,光ファイバ中での大きな全遅延に起因する位
相シフト,場合によっては位相回転の跳びが起こる(位相シフトは,全遅延及び周波数に比例する。)。
測定実行中に起こる正常値からの周波数ドリフト(熱ドリフトなどの結果として起こる。)を,できる
限り小さく抑える必要がある。
b) 発振器の定格(中心)周波数。マスタ発振器の定格周波数に経時変化などによってある割合だけ不確
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かさが発生すると,全位相シフトにもほぼ同じ割合の不確かさが引き起こされ,その結果として分散
測 定値も相当分の不確かさを含むことになる。マスタ発振器を既知の標準に合わせて校正する必要
がある。
c) 位相計の非線形性。位相計は,入力信号及び基準信号の位相差に対して線形(又は数学的に補正可能な
非線形)に応答する。使用する電子回路システムに固有の性質として非線形性を示すことがある。
d) マスタ発振器及び位相計の位相ノイズ。両者の位相ノイズはともに,受信する光パワーの大きな領域に
おける主要なノイズ源となる(短い試験光ファイバ)。このノイズは,ランダムな不確かさ(タイプA)
の要因になる。
e) 光検出器及び受信器ノイズ。このノイズは長い光ファイバを使用し,受信する光パワーが低い場合に重
要
なノイズとなる。このノイズは,ランダムな不確かさ(タイプA)の要因になる。
f) 受信器内で発生する,動作周波数に依存する位相シフトの影響を考慮しなければならない。
B.4.3 微分位相シフトの決定 微分位相シフトシステムでは,波長間における位相差だけを測定する。位
相測定システム,光受信器などは,受信光信号及び発振器入力間で発生する完全な2π位相回転による位
相差には感応しないものとみなす。微分位相検出における不確かさは,次の要因によって発生する。
a) マスタ発振器の周波数ドリフト。ドリフトの結果として,光ファイバ中での大きな全遅延に起因する位
相シフト,場合によっては位相回転の跳びが起こる(位相シフトは,全遅延及び周波数に比例する。)。
ただし,微分位相シフトは,この結果を反映しない。その代わり,発振器周波数の変化は,厳密に同じ
割合だけ微分位相シフトとして現れる。測定実行中に起こる正常値からの周波数ドリフト(熱ドリフト
などの結果として起こる。)を,できる限り小さく抑える必要がある。
b) 発振器の定格(中心)周波数。マスタ発振器の定格周波数に経時変化などによってある割合だけ不確か
さが発生すると,位相シフト及び分散にもほぼ同じ割合の不確かさが引き起こされる。マスタ発振器を
既知の標準に合わせて校正する必要がある。
c) 位相計の非線形性。位相計は,入力信号及び基準信号の位相差に対して線形(又は数学的に補正可能な
非線形)に応答する。使用する電子回路システムに固有の性質として非線形性を示すことがある。
d) 電子回路周波数帯(例 DC又は波長変調周波数)におけるマスタ発振器及び位相計の位相ノイズ。
このノイズは,システムに不確かさタイプAを与える。この効果は,短い光ファイバを用いて強い光
パワーを受信するシステムにおいて特に顕著である。このノイズは,ランダムな不確かさ(タイプA)
の要因になる。
e) 光検出器及び受信器ノイズ。このノイズは長い光ファイバを使用し,受信する光パワーが低い場合に重
要なノイズとなる。このノイズは,ランダムな不確かさ(タイプA)の要因になる。
B.4.4 干渉しま位置の決定 干渉法を使用する場合,光遅延量は干渉しま包絡線のピーク位置によって決
定する。このピーク位置は,種々の光遅延線を直接スキャンすることによって測定する。干渉法における
不確かさは,次の要因によって発生することが知られている。
a) 遅延線のミラー位置の不確かさ。基本的にミラー移動ステージの移動位置不確かさによって発生する。
移動ステージは,その製造段階で既知標準と対照させながら機械的な寸法測定システムを使用して正確
に校正するか,又は校正した位置センサ(光エンコーダなど)を使用する必要がある。
b) 受信器ノイズは,スキャン中にパワーのランダムな不確かさ(タイプA)を発生させる要因となり,こ
れによって位置を近似させるアルゴリズムが影響を受けることがある。ノイズの影響を最小に抑えるた
めに,光ファイバのカップリング又は校正ジグによる校正の段階でシステムの光損失をできる限り小さ
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くする必要がある。
B.4.5 電子的比例係数の不確かさ 波長分散測定器の最も基本的な機能は,遅延分散信号を電気信号に変
換することである。変換後の電子回路によるすべての後処理は,スケール及びゲイン不確かさ,熱ドリフ
ト,計器のエージングなどによる影響を受ける。注意深く設計することによって,これらの影響を少なく
することは可能であるが,同時に全遅延又は分散の比例係数を3.3の説明に従って校正し,これらの影響
を補正することも必要になる。
B.4.6 時間遅延及び位相シフト範囲の不確かさ 波長分散測定器は,1 km〜100 kmを超える長さの光ファ
イバを対象とするのが普通である。パルス遅延測定システムの場合,光ファイバの長さの違いは単に,遅
延発生器が扱える遅延の幅が大きいことを意味し,おそらくはゼロ近傍から十分なステップ数及び/又は
分解能で線形性を保ちながら遅延を発生させる。遅延発生源に起因する不確かさの評価が必要となるが,
ディジタル遅延技術を利用すれば,この不確かさの要因を実際上無視することができる。位相シフト及び
微分位相シフトシステムの場合は,光ファイバ全長のいかなるポイントにおいてもサイクルの跳び及び過
大又は過小な信号に起因する不確かさの発生は許されない。実際問題としては,光源変調周波数を適切に
選択する,又は微分位相シフトシステムの場合には,波長段階(Δλ)を正しく選択することによってこ
れらの問題の発生を避けることができる(C.3.3参照)。選択した周波数及びΔλの値それぞれについて付
随する不確かさが存在するので,波長分散測定及び校正の過程で適切なタイミングをとらえて識別し,適
切な方法で対処する必要がある。
B.4.7 計算による不確かさ 多くの波長分散測定器では,生データの処理にマイクロコンピュータを使用
する。マイクロコンピュータの使用に当たっては,十分な数値精度を確保して計算による不確かさ及び打
切り誤差の影響を無視できるようにしなければならない。最小2乗法による遅延及び分散のデータ近似を
行う場合は,特にこの注意が必要である。
B.5 分散モデル法による効果 正確なデータ近似方法の選択は極めて重要なことであるが,ここにも誤差
の発生要因が存在していることがある。パルス遅延及び位相シフト法では,λ0,S0及び分散推定値を得る
ために群遅延測定データに関数近似を行い,その導関数を使用する。これを実行するために多くの経験的
手法(3項Sellmeier法,5項多項式など)が考案されている。微分位相シフト法では,測定波長における
分散測定値を直接的な方法で取得できるので,このような関数近似を行う必要はない。しかし,測定波長
以外の波長に着目し,その波長でのλ0,S0及び分散の値を得るためには,実際に測定した分散の値をパル
ス遅延及び位相シフト法で使用する数学関数の導関数に近似させる必要がある。データ近似を実行する場
合は,次のような規定が適用される。
a) 被試験光ファイバに適したデータ近似及びモデルを選択する必要がある(C.4参照)。例えば,非分散
シフ ト光ファイバには3項Sellmeier法が適している。
b) 十分に正確なデータ近似を行うためには,波長範囲を十分に狭く絞り込む必要がある。近似した結果に
標準的な“適合度評価”試験を実施して,正確さの程度を判定することができる。
c) 選択した波長範囲並びに測定点の位置及び数が,最終的なデータ近似の良否を決定する。このため,対
象となる波長分散測定器と同一パラメータを基準光ファイバに適用して,分散を比較することが非常
に 重要なこととなる(7.の校正手順を参照)。
微分位相シフト法を用いる場合は,更に,線形近似の使用に起因する不確かさが発生する。Δλとして十
分に小さな値を使用すれば(C.3.3参照),実際にはほとんどの目的においてこの影響を無視できるほど小
さくすることができるが,分散データの近似を使用する場合は,すべての光ファイバ種別に対して数学的
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なゼロ補正を行うことを推奨する。
B.6 光ファイバに関連する不確かさ
B.6.1 二次モード 通常,分散測定は,通信用光ファイバのカットオフ波長(例えば,1 270 nm)を超え
る領域に限定している。しかし,光ファイバに高次モードが存在する場合は,それが分散測定の不確かさ
を引き起こすので,校正の正確さを保証できるのは光ファイバのカットオフを超える領域だけであること
に注意しなければならない。この規定は,試験の対象となるすべての光ファイバだけでなく,波長分散測
定器の光ファイバ光学部品すべてにも適用する。光ファイバのカットオフが予想される波長の近傍又はそ
れ以下の領域で分散測定が必要な場合は,適切な光ファイバモードフィルタを用いて高次のモードを除去
する必要がある。
B.6.2 OH−基による吸収 近年の高品質光ファイバでは,1 240 nm及び1 380 nmにおける水酸基(OH−)
による吸収ピークはほとんど見られなくなった。しかし,大きなOH−ピーク(例えば,4dB km-1のような)
が存在する場合は,それ自体及びその近傍に存在する吸収帯のために,分散が影響を受けることがある。
この吸収は特に分散の校正精度に影響を及ぼすので,次の項目に注意する必要がある。
a) 1 240 nm及び1 380 nm領域は避ける。
b) 校正には,低OH−光ファイバだけを使用する。
B.6.3 全光ファイバ損失 装置及び光学的及び電子的減衰器に起因する不確かさを明確にするためには,
可変損失を測定系に直列に挿入して,光ファイバ上の分散測定の特性を明らかにする必要がある。波長分
散測定器のダイナミックレンジの上限まで損失を追加していくことによって,あらゆる損失範囲で作動さ
せた場合に発生する可能性のある不確かさを,明確に把握することができる。測定器のダイナミックレン
ジは,最終的には試験の対象となる光ファイバの全損失及び全分散を組み合わせた効果に関連付けられる。
したがって,直列に挿入した減衰器による測定だけでは,光ファイバ損失に起因する不確かさを完全,か
つ,正確に表現することはできない。
B.6.4 光反射 波長分散測定器内の光学系及び光ファイバの境界面で起こる光反射によって,光源及び検
出器間に逆行遅延経路が発生する。これが検出器上でパルスのひずみ及び位相オフセットを引き起こし,
分散測定結果に偏りを発生させる。適切な光学系設計若しくは低反射光コネクタの使用又は光ファイバの
接続時に屈折率を整合させるなどの方法によってできる限り光反射を小さく抑えることが重要である。精
度を0.01ps/nm・kmのレベル以下に保つためには,各境界面(光コネクタなど)での反射が−30dBを超
えないよう,かつ,反射点の数を最低に抑えるようにする必要がある。
B.7 システム分散の不確かさ あらゆる波長分散測定器は,それぞれが例外なく光ファイバ測定時の波長
分散発生に寄与する。波長分散が発生する要因は,次のとおりである。
a) 適正な補正がなされていない離散光源間で起こるパルス遅延及び位相の不整合。
b) LED光源内部で発生する波長遅延。
いずれの場合も,短い試験光ファイバ(約1 m〜5 m程度)を用いて“システム”の測定を行い,その
測定結果を使用して実際の光ファイバの測定結果に含まれる上記の効果を補正しなければならない。短い
光ファイバの測定では,光パワーレベルに依存する位相シフトを抑えるために光減衰器を使用する必要が
ある。この“システム基準測定”は一定期間ごとに繰り返し,補正データを更新していかなければならな
い(周期は,要求される測定精度,光源の経時変化及び温度変化による内部遅延の安定性に依存する。)。
システム基準測定自体も,自身の測定不確かさの影響を受けるので,これと試験測定の不確かさが複合す
ることになる。
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附属書C(参考) 波長分散
この附属書は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
C.1 光ファイバにおける波長分散 波長分散とは,シングルモード光ファイバ中を伝搬する光の波長に対
する群遅延の変化を表す。波長分散は,波長の単位変化当たりの遅延変化を光ファイバの長さで標準化し
て表現する。波長分散係数を表す単位はps/nm・km,すなわち,光源スペクトル幅のnm単位での変化に対
応するピコ秒単位の遅延変化を,1kmの光ファイバ長に割り付けた値である。波長分散の測定値及びその
効果は,光が光ファイバ中を伝搬する方向には依存せず,光ファイバの曲率及び光ファイバ温度に対して
だけ弱い依存性をもつ(B.3.2参照)。
波長分散は,次の原因によって発生する。
a) 光ファイバ中の材料分散
b) 使用する導波路の構造及び屈折率プロファイルによる構造分散効果
波長に対する全分散変化を考える場合は,分散の値がゼロになる波長領域に特に注意する必要がある
(この領域で光ファイバの情報伝達容量が最大になる。)。通常,この領域はスペクトルの1 270 nm
〜1 700 nm付近に現れる。
C.2 波長分散測定器の説明 波長分散測定器は,シングルモード光ファイバの波長分散を波長の関数とし
て測定するための計測器である(図C.1参照)。
注 * 必要な場合だけ(このデバイスは,被試験光ファイバ及び光検出器の中間に配置する。)。
**必要な場合だけ。
図C.1 波長分散測定器模式図
波長分散測定器は,例えば,光ファイバの製造又はQA管理を行う環境で一つのまとまったユニットと
して使用することもある。又は,布設済み光ファイバの測定を行う環境では,計測器を(可搬形の)送信
器及び受信器ユニットに分離して光ファイバの両端で動作しなければならない場合がある。この規格の内
波長セレクタ/
モニタ*
クラッドモード
ストリッパ
信号発生器
光検出器
時間遅延**
遅延検出器
信号プロセッサ+計算又は出力
被試験光ファイバ
光源
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容は,両方のタイプに共通に適用する。多くの波長分散測定器は,標準石英光ファイバの光損失が最も小
さくなる波長帯である1 310 nm又は1 550 nm(又はその両方)で動作する。測定結果の代表的な出力形態
は,波長に対して群遅延をプロットするグラフ,波長に対する分散をプロットするグラフ及び次の二つの
パラメータを含んでいる。
a) ゼロ分散波長(λ0),すなわち,分散がゼロになるポイント。
b) ゼロ分散スロープ(S0),すなわち, ps/nm・km単位で表示した分散曲線のゼロ分散波長におけるスロ
ープ。
C.3 測定技術 何種類かの測定技術が波長分散測定用として,一般的に使用されている。ここでは,次の
方法を考慮に入れる(JIS C 6827)。
− パルス法
− 位相法
− 微分位相法
− 干渉法
これらの測定方法のそれぞれは,ITU-T 勧告G.650でも解説している。パルス,干渉及び位相法は,特
定の数の波長で光ファイバの群遅延を測定し,遅延データを適切,かつ,認知済みの近似関数に当てはめ
る。この近似関数の波長導関数を計算することによって,各波長での分散を評価する。微分位相法は,隣
接する2波長での遅延の差を測定するので,分散を直接評価することができる。どの方法においても,ゼ
ロ分散波長(λ0)及びゼロ分散スロープ(S0)を評価するためには,近似関数が必要である(C.4参照)。
C.3.1 パルス法 この方法では,パルスレーザ(又はラマンレーザ光源)からの光を試験光ファイバに通
して光速検出器又はプリアンプへ導く。検出器のパルス波形信号を,サンプリングオシロスコープ又は波
形プロセッサで表示するが,このときのトリガ信号は適切な遅延発生器が供給する。マイクロプロセッサ
は,各波長における信号波形全体としての遅延を光パルス発生(オリジナル入力)時間に対して記録し,
この遅延データの近似を行って分散を計算する。
C.3.2 位相法 正弦波で光変調した単色光を試験光ファイバに通し,そのときに発生する位相シフトを測
定することによって光ファイバの群遅延を得る。それぞれの波長における群遅延は,測定された位相に直
接的に関係付けられる。この方法では,一つの高周波発振器からの信号を,光源の変調入力及び位相計の
基準信号の両方に使用する。マイクロプロセッサによって遅延特性の計算(複数のレーザ光源又は広帯域
光源及びモノクロメータを使用),データ近似及び分散計算を実行する。
C.3.3 微分位相法 この方法では,隣接する波長(波長差Δλ)での差分群遅延(Δτ)を測定すること
によって,分散を直接的な方法で測定する。すなわち,分散はΔτ/Δλから決定する。微分遅延測定には
位相法を,次のいずれかの方法で使用する。
a) 位相法を利用して群遅延の数学的減算を行う。
b) 二つの試験波長それぞれに光受信器を用いて,信号の位相の相対的関係を測定する。
c) 波長変調を行い,電子的な方法で分散値を得る(“二重復調法”と呼ぶこともある。)。
マイクロプロセッサによって,微分遅延データ又は分散データを記録し,必要に応じて分散近似を実行
する。
C.3.4 干渉法 この方法は,Mach-Zehnder干渉計を用い,光ファイバを通した光及び光遅延線を通して遅
延を与えた光との干渉を利用する。遅延線は長さを変えられるようになっており,長さを変えながら試験
光ファイバの遅延と分散を決定する。この方法では,比較的短い(数メートル)光ファイバを使用する。
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遅延は,可変遅延線の使用によって生じる光路長の差を測定することによって,直接的に測定する。干渉
しまの包絡線を検出し,遅延線位置の関数として取り込んでメモリに保存する。マイクロプロセッサによ
って,次の計算を実行する。
a) 保存された包絡線データから光源波長における光ファイバの遅延の計算
b) 遅延データの近似
c) 波長分散の計算
C.4 光ファイバ波長分散仕様 波長分散特性及び仕様に関して,光ファイバを三つの主要なグループに分
類することができる。
a) 非分散シフト光ファイバ このタイプの光ファイバは,1 310 nm領域にゼロ分散波長をもち,その分散
特性は1 310 nm領域においては3項Sellmeier方程式で,それよりも広い領域では5項Sellmeier方程
式で正確なモデル化が可能である。ITU-T勧告G.652又はIEC 60793-1-1に記載の光ファイバ,タイプ
B1に相当する。
b) 分散シフト光ファイバ このタイプの光ファイバは,1 310 nmよりもかなり高い波長領域(代表例は,
1 550 nm近傍)にゼロ分散波長をもち,その分散特性は,λ0を含む特定の波長領域では2次式を用
いた遅延データ近似(分散の直線近似と等価),より広い波長領域では5項Sellmeier方程式を用いて
正確なモデル化が可能である。ITU-T勧告G.653又はIEC 60793-1-1に記載の光ファイバ,タイプB2
に相当する。
c) 分散修正又は“分散フラット”光ファイバ このタイプの光ファイバは,二つ又はそれ以上のゼロ分散
波長をもち,現時点では一般に認知されたデータ近似法がない(ただし,注目する波長近傍に限定す
れば,5項Sellmeier方程式が有用であると認められている。)。IEC 60793-1-1に記載の光ファイバ,
タイプB3に相当する。
d) ノンゼロ分散シフト光ファイバ このタイプの光ファイバは,1 550 nm領域において小さな,しかし有
限な,波長分散を示す。現時点では一般に認知されたデータ近似法がない(ただし,注目する波長近
傍に限定すれば,5項Sellmeier方程式が有用な近似法として使用できる場合がある。)。 ITU-T勧
告G.655 又はIEC 60793-1-1に記載の光ファイバ,タイプB4に相当する。
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C 6829:2005 (IEC 61744:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D(参考) 波長分散測定器校正の補正
この附属書は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
波長分散測定器校正の補正 この附属書では,校正済み基準光ファイバを使用して以前に校正された波長
分散測定器を補正する方法について,より詳細に記載する(校正済み基準光ファイバとは,国立標準機関
においてゼロ分散波長,スロープ及び分散の校正を行った光ファイバ,又は国立標準機関へのトレーサビ
リティを保証した光ファイバを意味する。)。“校正済み基準光ファイバ”は,校正の点検にも使用する
ことができる(7.参照)。
D.1 校正の補正 既に注意したように,波長(5.)及び遅延(又は分散)(6.)が既知標準(校正ジグ)を
基準として校正したことのない波長分散測定器は,この規格の手順には適合しない。この規格に従って校
正した波長分散測定器は,その性能全体(全光ファイバ,光ファイバ長範囲,波長範囲など)をカバーす
る不確かさの限界,及びそれから導出する特性について校正することになり,かつ,正確な記録が残る(8.)。
しかしながら,波長分散測定器間又は既知の光ファイバ測定値間で,この規格の手順が提供するよりも更
に密接な数値的一致が望ましい場合があることが一般的に認められている。原則として,別の波長分散測
定器又は既知の光ファイバ測定値との比較を行うことによって,波長分散測定器が含む系統的な差異を除
去又は均一にすることができる。ただし,この比較によって入り込む可能性のあるランダムな不確かさタ
イプAを十分に小さくできる(例えば,測定値の平均化処理によって)ことが必要条件となる。数値的な
一致を実現するためには,トレーサビリティを保証している特定の既知光ファイバ標準(“校正済み基準
光ファイバ”と呼ぶ。)を使用して波長分散測定器の校正を“リセット”(すなわち,校正の補正又は調
整)することが一般的に行われている手法である。このような光ファイバを使用して測定すると,トレー
サビリティを保証するばかりでなく,クロスチェックの実行によって,特定の波長分散測定器のグループ
が同一条件下で数値的に類似した結果を出力することを示すことができる。この方法を使用することによ
って,個々の波長分散測定器についての系統的な不確かさタイプBを均一化することができる。校正の補
正は,その実行に当たって慎重でなければならない。補正を実行した波長分散測定器は,その波長分散測
定器の校正の補正を実行した現実の“測定条件”が,実際の試験光ファイバの使用条件に極めてよく一致
する場合(校正した基準光ファイバを適用する場合など)においてだけ,国家標準に対してトレーサビリ
ティをもつ。これに加えて,補正を行った波長分散測定器は,将来においてそれと同一の測定条件におい
てだけ校正が可能である。言い換えれば,補正によって特定の条件下でより“満足な”校正結果を得たと
しても,その代償としてそれ以外の条件では波長分散測定器の校正状態が劣化している可能性がある。し
たがって,補正した波長分散測定器は,補正実行時の条件に非常に類似した条件を使用する試験光ファイ
バにだけ,限定的に適用するべきものである。すなわち,理想的には,測定波長,データ近似モデル及び
光ファイバのタイプ(できる限り同一製造プロセス又は同一製造業者)が同じであり,光ファイバの基準
長が試験光ファイバと同一でなければならない。このような波長分散測定器は,上記のような条件の整備
が可能である試験光ファイバに限定して使用するように,厳格に管理することを強く推奨する。
D.2 校正した光ファイバ基準 校正済み基準光ファイバとは,単に国立標準機関又は国立標準機関へのト
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C 6829:2005 (IEC 61744:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
レーサビリティを保証した機関において,ゼロ分散波長,スロープ及び分散の校正を実施した基準光ファ
イバを意味する(3.22参照)。基準光ファイバについては,光ファイバの選択,校正及び包装(7.2参照)
に特別な注意が必要である。光ファイバの使用寿命,特に校正済み基準光ファイバの校正期間を通して,
物理特性を一定に保つことが必要条件である。光ファイバの使用準備時に光ファイバ長の誤差を生じさせ
ないために,あらかじめ光コネクタを装着しておくことが望まれる。
D.3 校正の補正手順 校正済み基準光ファイバを使用する代表的な補正手順を次に説明する。この手順は,
他の光ファイバ(タイプの異なる光ファイバ)へ繰り返して適用することができる。通常,波長分散測定
器の補正のために校正済み基準光ファイバを使用する場合は,種々の光ファイバパラメータ(ゼロ分散波
長,ゼロ分散スロープ,分散など)に対応する補正オフセット値を決定し,得たオフセット値を,以後の
試験光ファイバ測定に適用する。補正オフセット値は,マニュアル操作又はソフトウエアによって,測定
器の校正セットアップ条件に導入し,試験光ファイバ測定のレポート作成の段階で自動的に適用する。使
用する校正済み基準光ファイバによっては,校正の補正に使用できる波長領域が限定される場合があるの
で,実際に補正オフセット値を取得する場合は,該当波長領域でのゼロ分散波長,スロープ及び分散の値
を比較する。通常実施している例を挙げると,校正済み非分散シフト光ファイバ[C.4 a)]を適用できるの
は1 300 nm波長帯だけであり,分散シフト光ファイバ[(C.4 b)]を適用できるのは1 550 nm波長帯に限
られる。校正済み基準光ファイバを使用する代表的な補正手順を,次に記載する。
a) 測定器に課す要件を満たしていることを確認する(4.2.3参照)。
b) 試験を実施する環境が,条件を適正に満たしていることを確認する(4.2.2参照)。
c) 波長分散測定器の計器状態を,校正の補正手順(4.2.2参照)に合わせて適正に設定する。これには,
次の条件を含む。すなわち,国立標準機関が使用する測定条件及び基準光ファイバの校正証明書に記
載
した次の条件にできる限り一致させる。
1) 測定波長
2) データ近似モデル
3) 校正済み基準光ファイバの標準化した光ファイバ長の使用
d) 附属書Bの説明を参照し,不確かさが発生する技術的原因及び効果を考慮する。
e) 必要なら,短光ファイバ長測定器の規格化(システム基準)測定を行う(B.7参照)。
f) 対象となる波長分散測定器に校正済み基準光ファイバを取り付ける。光ファイバ長としては,その光フ
ァイバの標準長を使用するが,準備中に光ファイバのカット作業などを行うことを考慮して,長さ補
正 を行う。
g) 適切なデータ近似法及び波長範囲を使用して光ファイバのゼロ分散波長(λ0),スロープ(S0)及び分
散を決定する。必要な場合は,タイプAの不確かさを小さくするため,複数回の測定を実行して値平
均化する。
h) 得られたゼロ分散波長及びスロープの平均値を,校正済み基準光ファイバの校正証明書に記載の値と比
較する。両者の値の偏りを校正結果として記録する。同様に,分散の値及びデータ近似の残留誤差(使
用する場合だけ)を比較して異常な値ではないことを確認する。校正済み基準光ファイバに含む不確
かさを評価し,次に逐次(累積)値付けに伴う不確かさを評価する必要がある(図4参照)。
i) 補正オフセット値を計算する。校正補正後の波長分散測定器は,この値を利用して希望の数値を算出
する。
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C 6829:2005 (IEC 61744:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
j) 結果に異常な値が含まれていないかを点検する。異常値が含まれる場合は,波長分散測定器に完全な
校正を実施して補正する必要がある。
k) ステップのe)からj)までを反復し,補正オフセットを正しく計算して適用したことを確認する。
l) 7.2,7.5及び8.の規定に従い,必要となる補正オフセット一式を記録する。