C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 一般事項及び校正準備 ······································································································· 4
4.1 光ファイバの構造パラメータ ··························································································· 4
4.2 構造パラメータ測定器の説明 ··························································································· 4
4.3 校正標準に関する要求事項 ······························································································ 5
5 校正······························································································································· 7
5.1 概要 ···························································································································· 7
5.2 構造パラメータ測定器の校正の理論的根拠 ·········································································· 7
5.3 校正の手順 ··················································································································· 8
5.4 校正の点検の手順 ········································································································· 10
5.5 空間的線形性 ··············································································································· 10
5.6 コア・クラッド偏心量測定結果の校正··············································································· 10
5.7 非円率測定結果の校正 ··································································································· 11
6 不確かさの評価 ··············································································································· 11
6.1 概要 ··························································································································· 11
6.2 構造パラメータ測定器の校正における不確かさの評価 ·························································· 11
6.3 光ファイバ測定における不確かさの評価············································································ 13
6.4 クロムマスク測定における不確かさの評価 ········································································· 14
6.5 まとめ ························································································································ 14
7 文書化··························································································································· 14
7.1 記録 ··························································································································· 14
附属書A(規定)測定の不確かさのための数学的基礎 ································································ 16
附属書B(参考)校正係数の算出 ··························································································· 18
附属書C(参考)校正係数の決定の実施例 ··············································································· 21
附属書D(参考)不確かさの計算 ··························································································· 22
附属書E(参考)不確かさの決定の実施例················································································ 25
附属書F(参考)実用標準の作成 ···························································································· 27
附属書G(参考)コア・クラッド偏心量測定における不確かさの評価 ··········································· 28
附属書H(参考)非円率測定における不確かさの評価 ································································ 31
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人
光産業技術振興協会(OITDA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本
産業規格を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本
産業規格である。これによって,JIS C 6828:2004は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
C 6828:2019
(IEC 61745:2017)
光ファイバ構造パラメータ測定器校正方法
End-face image analysis procedure for the calibration of optical fiber
geometry test sets
序文
この規格は,2017年に第2版として発行されたIEC 61745を基に,技術的内容及び構成を変更すること
なく作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,ニアフィールド法又はグレースケール法としても知られている端面画像解析を行う構造パ
ラメータ測定器(以下,測定器という。)の校正方法について規定する。
なお,その原理は,異なる形式の測定器にも適用することができる。
この規格で規定する手順は,測定器を校正する目的及び校正済み測定器を用いた測定における不確かさ
を評価する目的で,校正機関,校正測定器の製造業者又は使用者が実行することができる。この規格では,
光ファイバ被覆又はケーブル測定に用いる測定器の校正については扱わない。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61745:2017,End-face image analysis procedure for the calibration of optical fibre geometry test
sets(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
この規格は引用規格をもたない。
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
認定された校正機関(accredited calibration laboratory)
適切な国家機関の認定の下,国家規格へのトレーサビリティを保証する校正証明書を発行する校正機関。
3.2
校正用試料(artefact)
測定器を用いて測定する試料又は測定器を校正するために用いる物体。
2
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3.3
校正(calibration)
規定の条件の下,測定器が示した量の値と標準器が示すその量の標準値との関係を確立する一連の作業。
注記1 校正の結果によって,指示値に対応する測定値の指定又は指示値に対する補正の決定が可能
となる。
注記2 校正によって,影響量の効果などの他の計量特性を決定できる場合もある。
注記3 校正の結果は,校正証明書又は校正報告書の文書に記録される場合もある。
3.4
校正連鎖(calibration chain)
国家標準から仲介標準又は実用標準を経て,測定器に至る値付けの連鎖(図1参照)。
3.5
校正の点検(calibration checking)
校正の有効期限が経過した校正済みの測定器が,まだ規定の不確かさの限界内に留まっていることの確
認。
注記1 測定器がこの限界から逸脱している場合には,再校正が必要になる。一方,測定器がこの限
界内に留まっている場合には,再校正までの期限を規定の期間だけ延長することができる。
注記2 測定器に対し,実用標準を用いて校正の点検を行ってもよい。
3.6
校正標準(calibration standard)
参照標準に基づいて校正し,測定器の校正に用いる校正用試料。
注記1 校正用試料は,光ファイバの場合又はガラス上のクロムマスクの場合がある。
注記2 校正標準を正しく使用することによってトレーサビリティが保証される。
注記3 校正標準という用語は,計測の不確かさの小さい順に,参照標準,仲介標準及び実用標準を
含む。
3.7
合成標準不確かさ(combined standard uncertainty)
個々の標準不確かさを幾つか合成したもの。
注記1 この意味での,“精確さ(accuracy)”という用語の使用は,避ける。
注記2 校正報告書及び技術データシートでは,測定器の測定における合成標準不確かさは,適切な
信頼水準(例えば,95.5 %又は99.7 %)をもった総合拡張不確かさとして報告する。
3.8
信頼水準(confidence level)
測定されたパラメータの真の値が,規定の範囲内にある確率の推定(拡張不確かさ)。
3.9
補正オフセット(correction offset)
既知の物理的効果を補正するため,測定器の測定結果に加える値又は測定結果から減じる値。
3.10
包含係数,k(coverage factor)
標準不確かさu(3.20参照)から,拡張不確かさU(3.11参照)を求めるのに用いる係数。
3
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3.11
拡張不確かさ,U(expanded uncertainty)
規定の信頼水準で,測定した量の真の値が収まると期待される値の範囲。
注記1 拡張不確かさUは,標準不確かさuに包含係数kを乗じた値に等しい。
u
k
U
×
=
················································································· (1)
注記2 不確かさの分布が正規分布であると仮定し,多数の測定を行う場合,68.3 %,95.5 %及び
99.7 %の信頼水準(3.8参照)は,それぞれ包含係数k=1,2及び3に対応する。
3.12
構造パラメータ測定器(geometry test set)
光ファイバの構造パラメータを測定するために用いる装置。測定されるパラメータは,構造パラメータ
測定器の形式によって異なる。
3.13
被測定光ファイバ(infant fiber)
校正済みの測定器によって構造が測定される光ファイバ。
3.14
構造パラメータ測定器の状態(instrument state)
ここでは,校正中及び測定中の測定器の動作条件を記述したものを意味する。
注記 例えば,使用する形状近似モデル,使用するデータフィルタリング方法,及び測定器のウォー
ムアップ時間,校正実施日などの測定器に関するその他の重要な情報。
3.15
国家標準(national standard)
国家的な決定によって認められた標準。当該量のその他の標準への値付けの基礎として国家内で適用さ
れる(ISO/IEC Guide 99の5.3を修正)。
3.16
国立標準機関(national standards laboratory)
国家標準を維持している機関。
3.17
動作範囲(operating range)
測定器が,規定の拡張不確かさの範囲内で機能するように設計する条件の範囲。
注記 そのような条件には,例えば,測定する光ファイバの直径及び温度のような環境条件を含む。
3.18
参照標準(reference standard)
測定結果の国家標準に対するトレーサビリティが確保されている校正機関で測定された校正用試料。
3.19
補正係数(scaling factor)
補正オフセットを適用しない場合の,測定器が示した値と校正標準の既知の標準値との比率。
3.20
標準不確かさ,u(standard uncertainty)
標準偏差で表した測定結果の不確かさ。詳細は,附属書Aによる。
注記 ISO/IEC Guide 98-3を参照。
4
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3.21
トレーサビリティ(traceability)
測定結果又は測定器が,国家標準を基とする校正の連鎖をもつ根拠を提示できること。
注記1 この規格に規定する手順で校正された測定器は,トレーサビリティが確保される。測定結果
には,国立標準機関又は認定された校正機関に対する直接的なトレーサビリティの提示が必
要である。このようなトレーサビリティは,校正の連鎖に含まれる全ての校正用試料の校正
記録の明細及び校正連鎖における全ての(累積の)値付けの不確かさの詳細な計算を含む。
注記2 実用標準を単独で用いて測定器の校正の比較又は監視を行っても,トレーサビリティを立証
又は再証明することはできない。しかし,比較又は監視の結果に変化が認められなければ,
トレーサビリティの認証期間の延長は可能である。
3.22
仲介標準(transfer standard)
参照標準に照らして校正し,測定器の校正に用いる校正用試料。
3.23
値付けの不確かさ(transfer uncertainty)
上位の標準を用いて下位の標準に値付けを行う過程で環境条件の変化などが引き起こす測定不確かさの,
与えられた信頼水準での推定値。これらの不確かさは,測定器だけでなく,用いた校正標準によって生じ
ることもある。
3.24
実用標準(working standard)
測定器の点検又は校正のために日常的に用いる校正用試料。
4
一般事項及び校正準備
4.1
光ファイバの構造パラメータ
十分な機械的及び光学的な性能を保証するために,光ファイバの構造の特性値を決定しなければならな
い。測定器によって測定される構造パラメータは,次の項目からなる。
a) クラッド(又は基準面)の直径
b) クラッドの非円率
c) コア・クラッド偏心量
4.2
構造パラメータ測定器の説明
一般に,端面画像又はグレースケールを解析する測定器は,光学顕微鏡,照明用の光源,カメラなどの
電子画像記録装置及びデジタルコンピュータで処理する目的で画像データを保存する手段によって構成す
る。通常,光ファイバのもう一方の端面から光を入射するために,もう一つ別の光源を用いる。これによ
って,光ファイバのコアの位置測定も可能になる。典型的な測定手順は,次による。
a) カットされた光ファイバの端面を測定装置の測定台にセットし,光ファイバの端面画像をカメラ上に
映し出す。
b) 光ファイバの像に焦点を合わせ(通常は,コンピュータの自動制御下で行われる。),光ファイバの像
をデジタル化した後,コンピュータにデータを送って光ファイバの構造パラメータを決定する。
この方法では,光ファイバの端面の状態が極めて重要であり,欠け又はエッジの粗さのようなカット面
の損傷が,測定結果に重大な影響を及ぼすことがある。したがって,カット面の損傷が測定結果に及ぼす
5
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影響を減らすために,データをフィルタ処理するのが普通である。
4.3
校正標準に関する要求事項
この規格で規定する校正手順では,トレーサビリティが確立した校正用試料を用いる必要がある。これ
らの校正用試料は,校正済みの光ファイバ端面及びガラス上のクロムマスクからなる。それらの公称寸法
については,5.3.3及び5.5に規定する。
6
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図1−校正連鎖及び不確かさの累積の例
不確かさ
国家標準
値付けの不確かさ
参照標準の不確かさ
参照標準
仲介標準の不確かさ
値付けの不確かさ
実用標準の不確かさ
仲介標準
値付けの不確かさ
測定器の不確かさ
実用標準
値付けの不確かさ
構造パラメータ測定器
操作の不確かさ
動作条件
測定器の
合成不確かさ
2
C
6
8
2
8
:
2
0
1
9
(I
E
C
6
1
7
4
5
:
2
0
1
7
)
7
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5
校正
5.1
概要
校正手順は,次の二つの操作で構成する。
a) 画像システムの倍率又は補正係数を校正する。これは,光学顕微鏡に対する従来の校正方法と似てい
るが,この場合,2次元の校正が必要である点が異なる。
b) 補正オフセットを決定する。このオフセットは,光ファイバ端面での回折,校正用試料の校正方法及
び測定器での測定方法の違い,カメラのサンプリングによる光ファイバ端面の像のひずみなどの系統
的影響を補正するために必要である。
校正係数の決定に関する実施例を,附属書Cに示す。
校正は,次の方法で測定を行うときだけ有効となる。
− 補正係数は,形状近似モデルを使用して被測定光ファイバのクラッド径を計算する前に,カメラから
の生データに乗じる。
− 補正オフセットは,被測定光ファイバのクラッド径の計算値に加える。
注記1 クラッド端部の位置を決定する光ファイバ端面の位置決め基準の選択は,重要である。校正
は,校正時と同じ基準を用いて行った測定結果だけに適用する。
注記2 特定の状況下では,光ファイバ標準又はガラス上のクロムマスク標準を用いて補正係数を校
正するだけで十分である。しかし,この方法は,用いる校正標準と直径が著しく異なる光フ
ァイバを測定するときには,不確かさの増大を招く可能性がある。
5.2
構造パラメータ測定器の校正の理論的根拠
5.2.1
概要
クラッド径の測定は,ほとんどの形式の測定器で共通して行われる。このため,このパラメータの校正
は,異なる形式の測定器を比較するときに非常に重要である。しかし,この規格では,端面画像解析を行
う測定器の校正だけを規定する。
基本的に,校正は,測定器を独立した構造パラメータ校正標準によって評価することで達成される。校
正連鎖を形成し,それによって値付けの不確かさに寄与するのは,これらの標準である。手順は,5.3に規
定する。完全な校正連鎖を,図1に示す。
コア・クラッド偏心量及びクラッド非円率の測定についての校正は,この規格の作成時点では適切な標
準光ファイバ(standard reference material : SRM)が入手できていないため,ここでは説明しない。しかし,
これらのパラメータの測定で得られた不確かさの評価を可能にする手順については,それぞれ附属書G及
び附属書Hに示す。
5.2.2
校正状態の確認
日常的な確認作業は,使用中の測定器について頻繁に実施される可能性がある。こうした日常的な確認
については,実用標準を用いて測定器の校正の状態をチェックする(ただし,再設定はしない。)ことで十
分に対応できる。実用標準には,光ファイバの場合とガラス上のクロムマスクの場合とがある。
実用標準の作成手順を,附属書Fに示す。
校正の状態の点検と校正そのものとを,明確に区別しなければならない。実用標準を用いて測定器の安
定性を確立することは十分にできても,これは完全な校正の代わりにはならない。
実用標準を用いることによって,国家標準への連続的なトレーサビリティを主張することができるが,
これは,既存の構造パラメータ測定器の状態,補正係数などが,規定された不確かさの範囲内で変動する
ことのない構造パラメータの測定結果を提供するのに十分であることが条件である。このことは,測定器
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が,最後に校正されてからずっと安定を保っていることを意味する。
実用標準の測定値が不確かさの範囲内で校正値と一致する場合には,校正済みの測定器について,連続
的なトレーサビリティを主張することができる。
校正は,測定器の稼働に不可欠である。一方,実用標準は,日常的な校正の点検に用いる。
校正の点検の手順を,5.4に示す。
5.3
校正の手順
5.3.1
一般的助言及び体制
環境条件が,製造業者の規定どおりの作業環境に見合ったものであることを確認する。いかなる場合に
も,適正な計測方法を用いる。
校正に用いる全ての校正標準が,国立標準機関又は認定された校正機関までのトレーサビリティをもつ
文書化されたプログラムに従って校正済みであることを確認する。標準の性能を同じ水準での比較によっ
て確認できるように,可能ならば,校正連鎖の各階層レベルで複数の標準を維持する。実行する校正の種
類ごとに,文書化された測定手順を作成し,手順を追った操作方法及び使用装置を記載する。見積結果シ
ート,不確かさの予測及び校正証明書を用いる。
測定の範囲に適した品質システムを運用する。測定結果についての独立した精密な調査が行われ,中間
の計算及び校正証明書が必ず用意されるようにする。
5.3.2
試験に関する要求事項
試験に関する要求事項は,次による。
a) 全ての試験を,測定器に対して製造業者が定める仕様内の温度及び相対湿度で行う。
b) 測定器及び試験機器が,校正する測定器及び校正標準に対して製造業者が推奨する環境で熱平衡に達
するように,十分な時間が経過してから校正手順を開始する。
c) 測定器は,製造業者の推奨事項に従って,校正手順に適した設定に合わせて準備する。
d) 可能な場合には,アクセス可能な全ての光学的表面及び校正標準が,測定前に清潔な状態にあること
を確認する。
5.3.3
校正標準に関する要求事項
国立標準機関までのトレーサビリティをもつ校正標準の使用が必須である。校正手順では,次のものを
用いなければならない。
a) 校正済みの測定スケール。これは,一般的に点,線,円又は環状のパターンをもつガラス上のクロム
マスクである。
b) クラッド径が校正済みの光ファイバ端面。この光ファイバは,測定器によって測定する光ファイバと
類似した材質のもので,クラッド径が被測定光ファイバの公称クラッド径の5.0 µm以内,非円率が
0.5 %未満であることが望ましい。
校正済みの光ファイバ端面は,再カットしてはならない。これは,光ファイバの長さ方向での直径の変
動の原因となるためである。
光ファイバの端面が損傷した場合,又は十分清浄にすることができない場合には,その光ファイバは,
校正に用いないほうがよい。
校正の点検(5.4参照)に用いる標準は,トレーサビリティのある構造パラメータ値をもった光ファイバ
又はガラス上のクロムパターンのいずれかである。
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C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
5.3.4
校正係数の決定
5.3.4.1
一般
使用する校正係数の算出方法を,附属書Bに示す。
5.3.4.2
補正係数
補正係数の校正には,ガラス上のクロムマスクを用いる。これは,点若しくは線の並び又は環状構造か
らなる。校正の原理は,目盛間の距離を測定することである。
注記 画像システムの視野全体にわたる補正係数の均一性(空間的線形性として知られる)は,光フ
ァイバの測定結果及びコア・クラッド偏心量の測定結果に含まれる不確かさに影響を及ぼす。
空間的線形性の評価方法については,5.5を参照。
カメラのx軸及びy軸の補正係数は,それぞれ次の式(2)及び式(3)によって算出する。
m
c
x
x
x
D
D
S=
················································································ (2)
m
c
y
y
y
D
D
S=
················································································ (3)
ここに,
Dxm: x軸に沿った目盛間隔の測定値
Dym: y軸に沿った目盛間隔の測定値
Dxc: x軸に沿った目盛間隔の校正値
Dyc: y軸に沿った目盛間隔の校正値
目盛間の距離を測定する手順は,次に示すように,用いるクロムマスクの種類によって異なる。
a) 点又は線の規則的な配列 測定器の通常の操作と同じ方法で,配列の画像を作る。カメラの走査軸に
それぞれ平行な直交する二つの方向について,目盛間の距離を測定する。校正を実施する距離は,測
定器によって測定する光ファイバの公称径の5 µm以内とすることが望ましい。カメラの軸と平行に
なるように,配列の軸を調整することが望ましい。しかし,配列の軸をそのように調整できない場合
には,角度のずれに関する補正を適用する必要がある。
b) 環 測定器の通常の操作と同じ方法で,環の画像を作る。環の内側及び外側の縁に,だ円近似を適用
する。次の式(4)及び式(5)によって,x軸及びy軸に沿った直径Dxm及びDymの測定値を求める。
2
x
x
x
outer
inner
m
D
D
D
+
=
································································ (4)
及び
2
y
y
y
outer
inner
m
D
D
D
+
=
································································· (5)
ここに,
Dxinner: x軸方向の環の内径の測定値
Dyinner: y軸方向の環の内径の測定値
Dxouter: x軸方向の環の外径の測定値
Dyouter: y軸方向の環の外径の測定値
環の直径は,測定器によって測定する光ファイバの公称径の±5 µmとすることが望ましい。使用上便利
なように,DxmとDymとの値が等しいと仮定する場合には,環の真円からのずれは,光ファイバの非円率
を測定するときの不確かさの決定に影響を与える(5.7参照)。
箇条6によって,補正係数を決定するときの不確かさを算出する。
5.3.4.3
補正オフセット
補正オフセットを校正するには,校正済みの光ファイバが必要である。測定器の通常の操作と同じ方法
10
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
で,光ファイバ端面の画像を作成し,光ファイバ端面に形状近似アルゴリズムを適用する。次の式(6)によ
って,補正オフセットOを求める。
S
D'
D
O
×
−
=
F
P,
F
P,
····································································· (6)
ここに,
DP,F: 光ファイバの直径の校正値
D'P,F: 光ファイバの直径の測定値(補正係数は,
適用しない。)
添字のPは,親(parent)で校正済みの試料であることを意味し,Fは,光ファイバ(fiber)を表す。ま
た,平均補正係数Sは,
2
S
S
y
x+
=
S
である。
したがって,
S
D'×
F
P,
は,光ファイバ直径の測定値(単位µm)に等しい。箇条6によって,補正オフセ
ットを決定するときの不確かさを算出する。
5.4
校正の点検の手順
この手順は,測定器の校正の点検に用いる。この手順は,校正係数を決定するためには用いないが,最
後に校正が行われてからの測定器の安定性を確認するためには用いることができる。
測定器の校正が既に終了していて,その結果,実用標準の測定結果が,許容される総合不確かさよりも
大きな構造パラメータの不確かさを示さない場合には,トレーサビリティの証明期間を延長してもよい。
a) 5.3.2に規定する試験に関する要求事項が満たされていることを確認する。
b) 点検中の測定器を用いて,実用標準を測定する。
c) 実用標準の違いによって,次のいずれかとする。
− 光ファイバの場合には,平均クラッド径を測定する。
− ガラス上のクロムマスクの場合には,目盛間の距離を測定する。
測定結果と基準値とを比較し,両者の差を記録する。測定された平均値に含まれる不確かさを統計的に
小さくするためには,測定を数回繰り返すことが必要である。
5.5
空間的線形性
校正に用いる光ファイバに比べて,直径が5 µm以上異なる光ファイバを測定するときの不確かさは,
次のいずれかの方法を用いて評価することができる。
a) 視野内の様々な位置で,ガラス上のクロムマスクの校正用試料を測定する。
b) 視野全体について,線又は点配列の目盛間の距離を測定する。
いずれの場合も,校正用試料の目盛間隔又は直線寸法は,用いる校正用光ファイバ直径の1/4未満でな
ければならない。方法a) を用いる場合には,校正用試料に対する形式どおりの校正だけが必要である。
また,方法b) を用いる場合には,個々の目盛間隔が校正済みの校正用試料を用いなければならない。
視野全体の補正係数の変動は,測定器の補正係数を校正するときの不確かさの原因となる。この不確か
さのもつ重要性は,校正済みの測定器によって測定しようとする光ファイバの直径の範囲に依存する。不
確かさの大きさを推定し,6.2.2で算出する補正係数の不確かさuSに加える。
5.6
コア・クラッド偏心量測定結果の校正
コア・クラッド偏心量は,光ファイバのコア中心とクラッド中心との間の距離として定義する。
この規格を作成している時点では,このパラメータを直接校正するための標準光ファイバ(SRM)を標
準機関から入手することはできない。偏心量測定によって得られる不確かさの評価方法手順を,附属書G
に示す。
11
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
5.7
非円率測定結果の校正
非円率は,近似中心から最も遠い端点と最も近い端点との半径方向の距離の差を,近似半径で除した値
として定義する。だ円近似の場合には,非円率は,長軸と短軸との長さの差を両者の平均値で除した値で
ある。
この規格を作成している時点では,このパラメータを直接校正するための標準光ファイバ(SRM)を標
準機関から入手することはできない。非円率測定によって得られる不確かさの評価方法の手順を,附属書
Hに示す。
6
不確かさの評価
6.1
概要
箇条6では,測定器の校正における不確かさ及びその後の測定における不確かさの報告について規定す
る。分析は,附属書Dに示す統計的な手法に基づいて行われる。不確かさを計算するための信頼水準選び
は,各計算において,適切な包含係数の値を用いることが重要である(3.10及びD.3参照)。
測定器の校正における不確かさについては,6.2に規定する。光ファイバの測定における不確かさについ
ては,6.3に規定する。また,クロムマスク測定における不確かさについては,6.4に規定する。
不確かさの決定の実施例を,附属書Eに示す。
6.2
構造パラメータ測定器の校正における不確かさの評価
6.2.1
一般
校正手順(5.3.4参照)は,二つの作業からなる。まず,補正係数を決定し,次に補正オフセットを決定
する。測定器の校正の不確かさを評価するには,これらのパラメータにおける不確かさの要因を評価しな
ければならない。
6.2.2
補正係数の不確かさ
6.2.2.1
一般
次の記号を用いる。
S 補正係数
DP,C 校正済みのクロムマスク標準の目盛間隔の校正値
uP,C 校正済みのクロムマスク標準の校正値の不確かさ
D'P,C 校正済みのクロムマスク標準の目盛間隔の測定値(生データ)
u'P,C 校正済みのクロムマスク標準の測定値の統計的不確かさ(生データ)
uTr,P,C 校正済みのクロムマスク標準の値付けの不確かさ
nC 測定回数
ここに,添字のPは,親(parent)で校正済みであることを,Cは,クロム(chromium)を,Trは,値
付け(transfer)を意味する。
補正係数の決定については,5.3.4.2による。また,補正係数は,二つのカメラ軸それぞれ一つずつの二
つの補正係数に関して与えられる。補正係数の不確かさを評価するため,この二つの補正係数を組み合わ
せることによって,次の式(7)を得る。
C
P,
C
P,
'
D
D
S=
················································································· (7)
補正係数の不確かさuSは,校正済みのクロムマスク標準の校正値の不確かさuP,C,校正済みのクロムマ
スク標準の校正後に生じた変化に伴う値付けの不確かさuTr,P,C,及び測定器による校正済みのクロムマスク
12
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
標準の測定値の統計的不確かさu'P,Cで構成する。
補正係数の不確かさuSは,次の式(8)によって算出する。
2
C
P,
2
C
C
P,
2
C
P,
2
C
P,
Tr,
S
D
n
S
u'
u
u
u
×
+
+
=
······················································ (8)
6.2.2.2
uP,Cの決定
校正済みの標準の校正値の不確かさuP,Cは,校正済みの標準の校正証明書又はデータシートから求めて
もよい。また,校正済みの標準の拡張不確かさUP,Cを用いて,次の式(9)からuP,Cを算出する。
k
U
u
P,C
P,C=
··············································································· (9)
ここに,kは,包含係数である。
kの値は,校正済みの標準の校正証明書から求める。
6.2.2.3
uTr,P,Cの決定
値付けの不確かさは,例えば,エージング,温度変化及び清浄度のように,校正済みのクロムマスク標
準の校正に影響する要因による可能性がある。値付けの不確かさは,式(A.5)を用いて評価する。
6.2.2.4
u'P,Cの決定
校正済みのクロムマスク標準の測定値の統計的不確かさu'P,Cは,A.2を用いて決定する。
6.2.3
補正オフセットの不確かさ
6.2.3.1
一般
次の記号を用いる。
S
補正係数
DP,F
校正済みの光ファイバ標準の直径の校正値
uP,F
校正済みの光ファイバ標準の校正値の不確かさ
D'P,F
校正済みの光ファイバ標準の直径の測定値(生データ)
u'P,F
校正済みの光ファイバ標準の測定値の統計的不確かさ(生データ)
uTr,P,F
校正済みの光ファイバ標準の値付けの不確かさ
nF
測定回数
ここに,添字のPは,親(parent)で校正済みの試料であることを,Fは,光ファイバ(fiber)を,Tr
は,値付け(transfer)を意味する。
補正オフセットの決定については,5.3.4.3による。補正オフセットOは,次の式(10)によって算出する。
S
D'
D
O
×
−
=
F
P,
F
P,
··································································· (10)
補正オフセットの不確かさuOは,校正済みの光ファイバ標準の校正値の不確かさuP,F,校正済みの光フ
ァイバ標準の校正後に生じた変化に伴う値付けの不確かさuTr,P,F,及び測定器による校正済みの光ファイバ
標準の測定値の統計的不確かさu'P,Fで構成する。
補正オフセットの不確かさuOは,次の式(11)によって算出する。
2
F
F
P,
2
F
P,
Tr,
2
F
P,
O
×
+
+
=
n
S
u'
u
u
u
·····················································(11)
注記 式(11)を算出する過程には,補正係数の不確かさuSは含まない。これは,補正係数に含まれる
13
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
誤差が,式(10)に従って補正オフセットを決定するときに相殺されるためである。しかし,測
定しようとする光ファイバの直径と補正オフセットの決定に用いる校正用光ファイバの直径と
が異なるときには,uSは,光ファイバ径を測定するときに不確かさの要因となる(6.3参照)。
6.2.3.2
uP,Fの決定
校正済みの光ファイバ標準の校正値の不確かさuP,Fは,校正済みの標準の校正証明書又はデータシート
に引用された拡張不確かさUP,Fから求めてもよい。次の式(12)によって,これを標準不確かさuP,Fとして表
す。
k
U
u
F
P,
F
P,=
············································································· (12)
ここに,kは,包含係数である。
kは,校正済みの標準の校正証明書から求める。
6.2.3.3
uTr,P,Fの決定
値付けの不確かさは,例えば,エージング,温度変化及び清浄度のように,校正済みの光ファイバ標準
の校正に影響する要因による可能性がある。値付けの不確かさは,式(A.5)を用いて評価する。
6.2.3.4
u'P,Fの決定
校正済みの光ファイバ標準の測定値の統計的不確かさu'P,Fは,A.2を用いて決定する。
6.3
光ファイバ測定における不確かさの評価
6.3.1
一般
次の記号を用いる。
DP,F
オフセットの決定に用いた校正済みの光ファイバ標準の直径の校正値
DI,F
被測定光ファイバの直径[式(13)で決定する。]
D'I,F
被測定光ファイバの直径の測定値(生データ)
u'I,F
被測定光ファイバの測定値の統計的不確かさ(生データ)
uOp,I,F
被測定光ファイバの動作条件の変化に伴う不確かさ
nF
測定回数
ここに,添字のIは,子(infant)で被測定試料であることを,Fは,光ファイバ(fiber)を,Opは,動
作(operating)を意味する。
校正後の被測定光ファイバの直径の測定値は,次の式(13)によって算出する。
O
S
D'
D
+
×
=
F
I,
F
I,
···································································· (13)
測定における不確かさuI,Fは,補正係数の不確かさuS,補正オフセットの不確かさuO,及び測定器によ
る被測定光ファイバの測定値の統計的不確かさu'I,Fからなる。さらに,測定が校正中に起こった動作範囲
の条件の変化の影響を受ける場合には,これらの変化を動作不確かさuOp,I,Fとして考慮しなければならな
い。試験中の光ファイバ径が補正オフセットの決定に用いた校正用光ファイバの直径と異なる場合には,
補正係数の決定における不確かさが光ファイバ径を決定するときの不確かさの要因となる(6.2.3参照)。
この影響は,次の式(14)の最後の項に表す。
被測定光ファイバの直径の測定における不確かさuI,Fは,次の式(14)によって算出する。
(
)
2
S
2
F
P,
F
I,
2
F
F
I,
2
F
I,
Op,
2
O
F
I,
u
D
S
D'
n
S
u'
u
u
u
×
−
×
+
×
+
+
=
························· (14)
14
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
6.3.2
uOp,I,Fの決定
動作不確かさuOp,I,Fは,校正時とは異なる動作条件に起因する。例えば,カットの品質,清浄度及び動
作温度である。動作不確かさは,式(A.5)を用いて評価する。
6.3.3
u'I,Fの決定
被測定光ファイバの測定値の統計的不確かさは,A.2を用いて決定する。
6.4
クロムマスク測定における不確かさの評価
6.4.1
一般
次の記号を用いる。
DI,C
被測定クロムマスクの目盛間隔[式(15)で決定する。]
D'I,C
被測定クロムマスクの目盛間隔の測定値(生データ)
u'I,C
被測定クロムマスクの測定値の統計的不確かさ(生データ)
uOp,I,C
被測定クロムマスクの動作条件の変化に伴う不確かさ
nC
測定回数
ここに,添字のIは,子(infant)で被測定試料であることを意味し,Cは,クロム(chromium)を意味
する。
校正後の被測定クロムマスクの直径の測定値は,次の式(15)によって算出する。
S
D'
D
×
=
C
I,
C
I,
········································································· (15)
直径の測定における不確かさuI,Cは,補正係数の不確かさuS,及び測定器による被測定クロムマスクの
測定値の統計的不確かさu'I,Cからなる。さらに,測定が校正中に起こった動作条件の変化の影響を受ける
場合には,これらの変化を動作不確かさuOp,I,Cとして考慮しなければならない。
被測定クロムマスクの直径の測定における不確かさuI,Cは,次の式(16)によって算出する。
(
)2
S
C
I,
2
C
C
I,
2
C
I,
Op,
C
I,
u
D'
n
S
u'
u
u
×
+
×
+
=
·········································· (16)
6.4.2
uOp,I,Cの決定
動作不確かさは,校正時とは異なる動作条件に起因する。例えば,カットの品質,清浄度及び動作温度
である。動作不確かさは,式(A.5)を用いて評価する。
6.4.3
u'I,Cの決定
被測定クロムマスクの測定値の統計的不確かさu'I,Cは,A.2を用いて決定する。
6.5
まとめ
測定器の校正における不確かさは,補正係数の不確かさ(6.2.2参照)及び補正オフセットの不確かさ
(6.2.3参照)によって評価する。
光ファイバ及びクロムマスクの測定における不確かさは,それぞれ6.3及び6.4で評価する。
光ファイバ又はクロムマスクに基づく測定における不確かさの記載は,測定器の校正に用いた校正標準
に関する不確かさ,統計的測定に関する不確かさ及びその他の測定に関する不確かさを含む。
7
文書化
7.1
記録
この手順に従って測定器を校正するときには,適切な記録を保存しなければならない。この記録には,
次の情報を含めなければならない。
15
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
a) 測定器の説明及び測定器に固有の識別情報(シリアルナンバ)
b) 校正実施日
c) 校正手順から得られた結果(箇条6参照)
d) 使用した校正手順を識別する情報
e) 使用した全ての校正標準を個別に識別する情報,及びトレーサビリティを証明する証明書
f)
校正を実施した人員を識別する情報
g) 測定器の校正に伴う不確かさ並びに補正係数及び補正オフセットの不確かさに対する蓄積効果に関す
る記載(箇条6参照)
h) 測定器の状態,例えば,エッジ位置の選択のしきい値レベル,異常値の点(画素)を除外する際の基
準及び適用した形状近似の種類
16
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
附属書A
(規定)
測定の不確かさのための数学的基礎
A.1 一般事項
この附属書は,測定における不確かさの評価,合成及び報告の仕方について規定する。これは,ISO/IEC
Guide 98-3(GUM)の“計測における不確かさの表現の指針”に基づいている。詳細な内容については,
この指針を参照。
この規格では,測定の不確かさの評価方法を二つのタイプに区別している。タイプAは,同じ測定に対
する一連の繰返し測定を統計的に分析し,不確かさを評価する方法である。タイプBは,他の知識に基づ
いて,不確かさを評価する方法である。
A.2 不確かさのタイプA評価
標準不確かさのタイプA評価は,同じ測定条件の下で,個別の独立した測定の場合に適用できる。
量Xについて,n回の独立した測定で得られたXkに対しての算術平均は,式(A.1)で算出する。
∑
=
=
n
k
X
n
X
1
k
1
·········································································· (A.1)
この平均は,その量の推定値として使用する。つまり,
X
x=
とする。測定に基づいて実験の標準偏差
は,式(A.2)で算出する。
()
(
)
2
1
1
2
k
1
1
−
−
=
∑
=
n
k
X
X
n
X
s
····················································· (A.2)
ここに,
X: 測定された値の算術平均
Xk: 一連の測定の測定サンプル
n: 測定の回数で,例えば,n≧10のような大きな数字を
想定する。
推定値をxとするとき,タイプAの標準不確かさutypeA(x)は,式(A.3)で算出し,実験の平均値における
標準偏差で表す。
()()
()
n
X
s
X
s
x
u
=
=
typeA
······························································ (A.3)
A.3 不確かさのタイプB評価
標準不確かさのタイプB評価は,一連の測定の統計的な分析以外によって不確かさを評価する方法であ
る。ここでは,数値の変動に関して得られるあらゆる情報に基づいた科学的な判断によって評価する。
量Xの推定値xが,製造業者の仕様,校正証明書,ハンドブック又は他の情報源から得られ,その引用
した不確かさU(x)が,標準偏差のk倍ある場合,標準不確かさu(x)は,単純に,式(A.4)となる。
()
()
k
x
U
x
u
=
··········································································· (A.4)
量Xについて,上限値Xmax及び下限値Xminだけが評価できる場合,一様の確率分布を仮定して,推定値
xの標準不確かさは,式(A.5)で算出できる。
17
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
()(
)
3
,
MAX
min
max
x
X
x
X
X
u
−
−
=
··················································· (A.5)
出力推定値yの標準不確かさへの寄与のうち,入力推定値xの標準不確かさが要因となって生じるもの
は,式(A.6)となる。
)
(
)
(
x
u
c
y
u
×
=
········································································ (A.6)
ここに,cは,入力推定値xに関連付けられる感度係数であって,これは,モデル関数y(x)の入力推定値
xに関する偏導関数である。
x
y
c
∂
∂
=
·················································································· (A.7)
感度係数cは,出力推定値yが,入力推定値xの変化によってどの程度影響されるかを示す。感度係数
cは,式(A.7) で算出するか,又はモデル関数y(x)で入力推定値xが変化したときの出力推定値yの変化か
ら,数値計算でも評価できる。また,xの変化によって生じる出力推定値yの変化は,実験で求めること
がより適切となる場合もある。
A.4 合成標準不確かさの定義
合成標準不確かさとは,個々の不確かさを集めて一つの量にまとめたものである。
合成標準不確かさは,個々の不確かさが統計上互いに独立であるとして,タイプA評価及びタイプB評
価によって見積もった全ての不確かさの二乗和の平方根をとって合成する。
()
()
∑
=
n
i
iy
u
y
u
1
=
2
c
···································································· (A.8)
ここに,
i: 個々の要因の数
ui(y): それぞれの標準不確かさ
n: 不確かさの数
注記 この式(A.8)では,最大の不確かさの1/10以下の不確かさは,二乗すると1/100以下となるので
無視してもよい。
これらの量を基に,更に他の不確かさを合成する場合は,合成標準不確かさucを再度式(A.8)に代入すれ
ばよい。ucは,一部にタイプA起源の不確かさを含んでいても,タイプBの不確かさを示していると考え
なければならない。
A.5 報告
校正報告書及び技術的なデータシートによって,合成標準不確かさを,適切な信頼水準とともに拡張不
確かさの形で報告しなければならない。補正係数又は偏差も報告しなければならない。拡張不確かさUは
標準不確かさに包含係数kを乗じることによって求める。
)
(
cy
u
k
U
×
=
·········································································· (A.9)
18
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
附属書B
(参考)
校正係数の算出
B.1
補正係数の算出
5.3.4.2を参照。
使用記号:
Dxc
マスクのx軸に沿った目盛間隔の校正値
Dyc
マスクのy軸に沿った目盛間隔の校正値
Dxm
マスクのx軸に沿った目盛間隔の測定値
Dym
マスクのy軸に沿った目盛間隔の測定値
Dxinner
x軸方向の環の内径の測定値
Dyinner
y軸方向の環の内径の測定値
Dxouter
x軸方向の環の外径の測定値
Dyouter
y軸方向の環の外径の測定値
ここに,x軸及びy軸は,カメラの走査軸として定義している。
図B.1は,格子状に配列された線で構成されたマスクにおいて,目盛間隔の測定値Dxm及びDymがどの
ように定義されるかを表したものである。
環のx軸方向及びy軸方向の内径及び外径は,環の内側及び外側の縁にだ円形近似することによって求
める。図B.2は,環の直径の測定値がどのように定義されるかを表したものである。環の目盛間隔は,次
の式(B.1)及び式(B.2)によって算出する。
2
x
x
x
outer
inner
m
D
D
D
+
=
······························································ (B.1)
2
y
y
y
outer
inner
m
D
D
D
+
=
······························································ (B.2)
カメラ走査軸の補正係数Sx及びSyは,両方のマスク配置について次の式(B.3)及び式(B.4)によって算出
する。
m
C
x
x
x
D
D
S=
············································································· (B.3)
m
C
y
y
y
D
D
S=
············································································· (B.4)
B.2
補正オフセットの算出
5.3.4.3を参照。
補正オフセットは,光ファイバ端部での回折のような系統的な影響を補正するために必要である。補正
オフセットは,光ファイバの直径Dcalにおける校正値と,オフセットしない補正係数適用後の測定値Dmeas
との差であると定義する。補正オフセットOは,次の式(B.5)によって算出する。
meas
calD
D
O
−
=
······································································· (B.5)
直径の校正値と測定値との関係を,図B.3に示す。
19
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
Dym
Dxm
図B.1−格子型校正用マスクの図
Dxinner
Dxouter
Dyinner
Dyouter
図B.2−環型校正用マスクの図
20
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
Dmeas
Dcal
O/2
O/2
図B.3−オフセット補正因子の誘導
21
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
附属書C
(参考)
校正係数の決定の実施例
C.1 補正係数の決定例
5.3.4.2を参照。
各パラメータの値が,次のとおりであるとする。
Dxc =125.60 µm(マスクのx軸に沿った目盛間隔の校正値)
Dyc =125.60 µm(マスクのy軸に沿った目盛間隔の校正値)
Dxm =125.46(マスクのx軸に沿った目盛間隔の測定値,生データ)
Dym =124.84(マスクのy軸に沿った目盛間隔の測定値,生データ)
式(2)及び式(3)から,補正係数Sx及びSyは,それぞれ
Sx=1.001 1
Sy=1.006 1
である。
C.2 補正オフセットの決定例
5.3.4.3を参照。
各パラメータの値が,次のとおりであるとする。
DP,F =125.64 µm(光ファイバ直径の校正値)
D'P,F =124.77(光ファイバ直径の測定値,生データ)
S =(1.001 1+1.006 1)/2=1.003 6(C.1参照)
式(6)から,補正オフセットOは
O=0.42 µm
である。
22
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
附属書D
(参考)
不確かさの計算
D.1 一般
D.1.1 概要
一般的に,測定結果に含まれる不確かさは複数の要素からなっている。これらの要素は,不確かさを評
価する方法によって,次の2種類に大別することができる。
− タイプAの不確かさ:統計的な手法によって評価する不確かさ
− タイプBの不確かさ:その他の方法によって評価する不確かさ
この附属書では,これらの不確かさの評価方法について説明する。不確かさのタイプ及び初期の計算は,
附属書Aに示す。
D.1.2 タイプBの不確かさの評価例
例A:影響量(例えば,温度の変化)によって不確かさが生じ,かつ,同じ量を複数回にわたって測定し
ている間,不確かさが一定又は予想される変動を示す場合には,次の方法に従って不確かさを算出するこ
とができる。
a) 影響量の変化の大きさを求める。
b) パラメータの測定値に,その量に対する計測器の依存性によって生じる影響量の変化を乗じ,不確か
さの上限及び下限を求める。式(A.5)を用いて標準不確かさを算出する。
例B: 影響量の効果を定量化することが困難な場合には,経験と判断とを利用しなければならない。例え
ば,測定しようとする光ファイバ端面の汚れの影響は容易に決定することができないが,そうした測定の
経験があれば,このような影響に伴う不確かさを推定することができる。
例C:校正標準に関連する不確かさは,その標準の校正証明書に記載する。不確かさを上限値及び下限値
として記載している場合には,式(A.5)を用いて標準不確かさを求めることができる。また,不確かさを特
定の信頼水準で指定している場合には,例えば,信頼水準68.3 %での標準不確かさは,記載された不確か
さの値を適切な包含係数で除した値に等しい。
D.2 不確かさの要因の合成
D.2.1 一般
幾つかの標準不確かさの要因は,統計学的に独立性を仮定すると,次の式(D.1)で示すように一つの不確
かさに合成してもよい。
∑
=
i
2
i
com
u
u
········································································ (D.1)
ここに,uiは,標準不確かさであり,n個の不確かさ発生源の一つである。
複数の標準不確かさを合成するときには,不確かさの各要素が同じ信頼水準で規定されていることが不
可欠である。それぞれの不確かさについて用いられたものとは異なる信頼水準で,拡張不確かさUcomを規
定するには,まず,不確かさの各要素uiに,その不確かさを決定するために用いた標本数に対応する適切
な包含係数kiを乗じ,次の式(D.2)によって合成する。
23
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
∑
×
=
i
2
i
2
i
com
u
k
U
·································································· (D.2)
注記 不確かさの各要素のサンプル数(測定回数)が全て大きい場合には,式(A.8)によって得られる
個々の不確かさの合成値に一つの包含係数を乗じることによって,拡張不確かさが得られるこ
とに注意する。
サンプル数(測定回数)が少ない場合の包含係数kは,当該サンプル数に対応した(自由度がサンプル
数−1の)スチューデントのt分布から得られるt係数に等しいとする。
D.2.2 複数の不確かさ要因の合成例
不確かさの三つの構成要素として次の値を考える。
u1 =0.052 µm
n1 =8
u2 =0.069 µm
n2 =12
u3 =0.034 µm
n2 =9
t値についての表D.1から,信頼水準95.5 %における対応するkの値は,次のようになる。
k1 =2.43
k2 =2.25
k3 =2.37
式(D.2)によって,信頼水準95.5 %における拡張総合不確かさは,
Ucom =0.22 µm
となる。
D.3 スチューデントのt分布
表D.1は,指定された信頼水準におけるtの値を,測定回数nの関数として表したものである。
24
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
表D.1−指定された信頼水準におけるtの値
測定回数
信頼水準
n
68.3 %
95.5 %
99.7 %
2
1.84
14.0
−
3
1.32
4.53
−
4
1.20
3.31
9.22
5
1.14
2.87
6.62
6
1.11
2.65
5.51
7
1.09
2.52
4.90
8
1.08
2.43
4.53
9
1.07
2.37
4.28
10
1.06
2.32
4.09
11
1.05
2.28
3.96
12
1.05
2.25
3.85
13
1.04
2.23
3.76
14
1.04
2.21
3.69
15
1.04
2.20
3.64
16
1.03
2.18
3.59
17
1.03
2.17
3.54
18
1.03
2.16
3.51
19
1.03
2.15
3.48
20
1.03
2.14
3.45
∞
1
2
3
特定の測定回数及び要求される信頼水準に対する包含係数kiは,次の式(D.3)によって表す。
t
ki= ··················································································· (D.3)
25
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
附属書E
(参考)
不確かさの決定の実施例
E.1
一般
この附属書では,補正係数,補正オフセット,光ファイバ測定及びクロムマスク測定における不確かさ
の決定に関する実施例を示す。全体を通じて信頼水準は,68.3 %であると仮定する。
E.2
補正係数の不確かさの決定例
6.2.2及び附属書Dを参照。
各パラメータの値が,次のとおりであるとする。
DP,C =125.60 µm(校正済みの標準の校正値)
uP,C =0.07 µm(校正済みの標準の校正値の不確かさ)
D'P,C =125.15(校正済みの標準の測定値,生データ)
u'P,C =0.05(測定値の統計的不確かさ,生データ)
nC =10(測定回数)
附属書Dから,t=1.06
補正後の不確かさ:u'P,C=0.05×1.06=0.053
この例において,温度変化を10 ℃,校正済みの標準の温度依存性を0.001 µm/℃とすると,
式(A.5)から,
μm
0.006
3
0.001
10
C
P,
Tr,
=
×
=
u
また,式(7)から,
6
1.003
125.15
125.60=
=
S
したがって,式(8)から,補正係数の不確かさは,uS=5.8×10−4である。
E.3
補正オフセットの不確かさの決定例
6.2.3及び附属書Dを参照。
各パラメータの値が,次のとおりであるとする。
uP,F =0.05 µm(校正済みの光ファイバ標準の校正値の不確かさ)
u'P,F =0.05(測定値の統計的不確かさ,生データ)
nF =10(測定回数)
S (補正係数)=1.003 6(E.2から)
附属書Dから,t=1.06
補正後の不確かさu'P,C=0.05×1.06=0.053
この例において,校正用光ファイバの清浄度が,測定結果に及ぼす影響を0.02 µmと評価すると,
u'Tr,P,F =0.02 µm
したがって,式(11)から,オフセット係数の不確かさは,uO=0.06 µmとなる。
26
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
E.4
光ファイバ測定の不確かさの決定例
6.3及び附属書Dを参照。
各パラメータの値が,次のとおりであるとする。
D'I,F =124.50(被測定光ファイバの直径の測定値,生データ)
D'P,F =125.64(オフセットの校正に用いた校正済み光ファイバの直径。附属書C参照)
u'I,F =0.05(測定値の統計的不確かさ,生データ)
nF =10(測定回数)
S (補正係数)=1.0036(E.2から)
uS (補正係数の不確かさ)=5.8×10−4(E.2から)
uO (オフセット係数の不確かさ)=0.06 µm(E.3から)
附属書Dから,t=1.06
補正後の不確かさ:u'I,F=0.05×1.06=0.053
この例において,清浄度及びカットのきずの形状が測定結果に及ぼす影響を0.02 µmと評価すると,
uOp,I,F =0.02 µm
したがって,式(14)から,光ファイバ測定結果の不確かさは,uI,F=0.07 µmとなる。
E.5
クロムマスク測定の不確かさの決定例
6.4及び附属書Dを参照。
各パラメータの値が,次のとおりであるとする。
D'I,C =125.40(被測定クロムマスクの測定値,生データ)
u'I,C =0.05(測定値の統計的不確かさ,生データ)
nC =10(測定回数)
S (補正係数)=1.0036(E.2から)
uS (補正係数の不確かさ)=5.8×10−4(E.2から)
附属書Dから,t=1.06
補正後の不確かさ:u'I,C=0.05×1.06=0.053
この例において,清浄度が測定結果に及ぼす影響を0.007 µmと評価すると,
uOp,I,C =0.007 µm
したがって,式(16)から,マスク測定結果における不確かさは,uI,C=0.08 µmとなる。
27
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
附属書F
(参考)
実用標準の作成
F.1
実用標準の作成
F.1.1
一般
校正の点検のための実用標準は,光ファイバ又はガラス上のクロムマスクである。実用標準は,校正済
みの測定器を用いて実用標準とする校正用試料を測定することによって作成する。
F.1.2
測定条件
新しい実用標準を作成するときには,不確かさを最小にするため,測定器の校正時とできる限り同じ測
定条件を用いる。次の事項は,そうした測定条件の詳細である。
a) 光ファイバの場合には,同じ種類の光ファイバを用いる。ガラス上のクロムマスクの場合には,同様
の形状にする(例えば,点又は線の配列,円又は環など)。
b) 形状近似のアルゴリズムは,同じにする。
c) 形状近似にカメラから利用可能なデータを全て用いるわけではないとき,例えば,ノイズフィルタを
用いるときには,同じデータ選択プロセスを用いる。
d) 焦点合わせのアルゴリズムは,同じにする。
e) 照明条件は,同じにする。
f)
同じ端面設定基準を用いる。
F.2
実用標準の作成手順
F.2.1
実用標準とする校正用試料が光ファイバの場合
a) 校正済みの測定器を基準にして,校正済みの補正係数を用いて実用標準とする校正用試料の構造パラ
メータを測定する(5.3.4.2参照)。測定結果に補正オフセット(5.3.4.3参照)を適用する。統計的不確
かさを小さくするため,必要に応じて複数回測定を繰り返す。
b) 次の測定条件及び測定パラメータを報告する。
1) 平均径及び非円率
2) 使用した形状近似アルゴリズム
3) 測定における不確かさ(不確かさの評価の説明については,6.3参照)
F.2.2
実用標準とする校正用試料がガラス上のクロムマスクの場合
a) 校正済みの測定器を基準にして,校正済みの補正係数を用いて実用標準とする校正用試料の構造パラ
メータを測定する(5.3.4.2参照)。測定結果に補正オフセット(5.3.4.3参照)を適用しない。統計的不
確かさを小さくするため,必要に応じて複数回測定を繰り返す。
b) 次の測定条件及び測定パラメータを報告する。
1) x軸及びy軸方向の目盛間隔
2) 使用した形状近似アルゴリズム
3) 測定における不確かさ(不確かさの評価の説明については,6.4参照)
28
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
附属書G
(参考)
コア・クラッド偏心量測定における不確かさの評価
G.1
偏心量の測定における不確かさの評価方法
G.1.1 一般
偏心量測定における不確かさは,例えば,次の要因の影響を受ける。
a) 測定器の空間的均一性
b) コア及びクラッドの中心を決定するときの不確かさ。これは,使用した曲線近似の方法,入手できた
データポイント数,並びに光ファイバ端面の清浄度及びカットの品質によって異なる。
c) 光学式撮像又は照明システムのひずみに起因する偏心バイアスの存在及び偏心量測定における不確か
さを評価するには,次の記号を用いる。
C
測定された偏心量
u
測定値の統計的不確かさ
n
実施した測定回数
CB
偏心バイアス
uCB
偏心バイアスの不確かさ
uOP
光ファイバの影響による動作不確かさ
偏心量の不確かさuCは,次の式(G.1)によって算出する。
(
)CB
u
n
u
u
u
+
+
+
=
2
CB
2
2
OP
C
/
··················································· (G.1)
G.1.2 uの決定
式(A.2)を用いて,測定における統計的不確かさを求める。
G.1.3 uOPの決定
動作不確かさは,コア中心及びクラッド中心を決定するときの不確かさである。例えば,コアの光分布
の中心は,光ファイバに対する外乱によって影響を受ける場合がある。動作不確かさは,式(A.5)を用いて
評価することができる。
G.1.4 CBの決定
G.1.4.1 一般
偏心バイアスは,コア中心とクラッド中心との間の直線距離のひずみとして定義する。偏心バイアスが
測定値に及ぼす影響は,光ファイバ端面の向きに依存する。ここでは,偏心バイアスの決定方法について
説明する。
校正済みの測定器によって測定される光ファイバと,クラッド径がほぼ等しい光ファイバとが必要であ
る。例えば,同様の種類のマルチモードグレーデッドインデックス形光ファイバ,マルチモードステップ
インデックス形光ファイバ又はシングルモード光ファイバであることが望ましい。試験では,三つの異な
る回転位置で光ファイバの偏心量を測定する。測定値のばらつきは,測定器に偏心があることを示してい
る。偏心バイアスを評価する手順は,次による。
a) 計測機器の所定の位置に光ファイバを置き,偏心量を測定する。偏心の大きさ及び方向が必要である。
観察モニタ上に映し出された光ファイバの像の角位置を記録する。このとき,カット時の損傷箇所の
29
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
ような光ファイバ端面を基準にして校正用試料の位置を決める。この位置決めマークは,光ファイバ
の角度をきちんと管理しながら回転させるために必要である。
b) 手順a)で定めた位置決めマークを用いて,光ファイバを軸の回りで約120°回転させる。光ファイバ
の端面が視野の端から端まで移動しないように注意する。偏心量を測定する。
c) 次の回転位置について,手順b)を繰り返す。
d) 次の式(G.2)及び式(G.3)を用いて,3か所の測定位置iについて,クラッド中心に対するコア中心の座
標(xi, yi)を算出する。
xi=Ci×cos(θi) ········································································ (G.2)
yi=Ci×sin(θi) ········································································· (G.3)
ここに,
Ci: 測定位置iにおける偏心量
θi: 基準軸に対するi番目の測定位置の偏心量
の角度
e) 偏心バイアスCBは,3点(xi, yi)を頂点とする三角形の外接円の中心(X0, Y0)とクラッド中心との距離に
等しい。次の式(G.4),式(G.5)及び式(G.6)を用いてCBを算出する。
(
)(
)(
)(
)
(
)(
)(
)(
)
{
}
1
3
1
2
1
2
1
3
2
1
2
3
1
2
2
1
2
2
1
3
0
2
x
x
y
y
x
x
y
y
C
C
y
y
C
C
y
y
X
−
×
−
−
−
×
−
×
−
×
−
−
−
×
−
=
······························· (G.4)
(
)
(
)
1
3
2
1
1
3
0
2
3
0
2
2
y
y
C
x
x
X
C
Y
−
×
−
−
×
×
−
=
···················································· (G.5)
2
0
2
0
Y
X
CB
+
=
······································································ (G.6)
G.1.4.2 CBの決定の例
三つの角位置についての測定値が,表G.1のとおりであるとする。
表G.1−それぞれの角位置での測定結果
角位置
偏心の測定値
大きさ
角度
0°
0.198 µm
326°
120°
0.238 µm
239°
240°
0.172 µm
122°
式(G.2),(G.3),(G.4)及び(G.5)を用いて,バイアスは,次のように求める。
X0 =−0.018 µm,
Y0 =−0.037 µm
式(G.6)を用いて算出されたバイアスの大きさは,
CB =0.041 µm
である。
G.1.5 uCBの決定
偏心バイアスの不確かさは,次の式(G.7)を用いて求める。
3
2
i
CB
u
u
∑
=
·········································································· (G.7)
ここに,uiは,角回転位置iで測定された偏心の統計的不確かさである。
30
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
G.2
偏心バイアスの修正
一旦偏心バイアスが決定されれば,その後の測定については,次の方法でバイアスを修正してもよい。
a) 測定された偏心量のxi成分及びyi成分を式(G.2)及び式(G.3)を用いて計算する。
b) 測定された偏心量のxi成分及びyi成分から,バイアスの成分X0及びY0をそれぞれ差し引く。
c) 次の式(G.8)によって,補正後の偏心値C̲corを算出する。
(
)(
)2
0
i
2
0
i
̲cor
Y
y
X
x
C
−
+
−
=
····················································· (G.8)
偏心量測定によって生じる不確かさは,式(G.1)を用いて計算してもよい。この場合には,結果からCB
を差し引く。
31
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
附属書H
(参考)
非円率測定における不確かさの評価
H.1 非円率の測定における不確かさの評価方法
非円率の測定における不確かさは,系の補正係数の校正による影響を受けない。これは,非円率は,比
の形で表されるためである(5.7参照)。不確かさに影響を与える要因としては,次のようなものがある。
a) コア中心又はクラッド中心の決定は,測定対象にもよるが,使用する曲線近似の方法,利用可能なデ
ータポイントの数,並びに光ファイバ端面の清浄度及びカット品質に左右される。
b) 光ファイバコアを測定するとき,コアの像の非円率は,光ファイバの配置の影響を受けやすい。
c) 光学的撮像又は照明システムのひずみに起因する非円率バイアスが存在する場合がある。
非円率の測定における不確かさを評価するには,次の記号を用いる。
u 測定値の統計的不確かさ
n 実施した測定回数
NCB 非円率バイアス
uNCB 非円率バイアスの不確かさ
uOp カット品質の影響に起因する動作不確かさ
非円率の不確かさuNCは,次の式(H.1)によって算出する。
(
)NCB
u
n
u
u
u
+
+
+
=
2
NCB
2
2
Op
NC
/
················································· (H.1)
H.2 uの決定
式(A.2)を用いて,測定の統計的不確かさを求める。
H.3 uOpの決定
動作不確かさは,非円率を測定するときの,カットのきずの影響に起因する不確かさを含む。動作不確
かさは,式(A.5)を用いて評価することができる。
H.4 NCBの決定
H.4.1 一般
非円率のバイアスは,撮像システムによる光ファイバの形状のひずみと定義する。非円率バイアスが測
定値に与える影響は,光ファイバ端面の方向性に依存する。非円率を評価する2種類の方法を,次に示す。
H.4.2 A法:未校正の校正用試料
光ファイバ又はガラス上の,クロムの環又は円が必要である。それらの直径と,校正済みの測定器を用
いて測定される光ファイバ径との差は,5 µm以下であることが望ましい。試験では,幾つかの回転位置で
校正用試料の非円率を測定する。代表的な角度間隔は,60°である。測定値のばらつきは,測定器にバイ
アスが存在することを示している。
非円率バイアスは,次の式(H.2)によって,測定された非円率の値の範囲の1/2で近似する。
(
)
2
min
maxNC
NC
NCB
−
=
···························································· (H.2)
32
C 6828:2019 (IEC 61745:2017)
ここに,NCmax及びNCminは,それぞれ非円率の最大値及び最小値である。
H.4.3 B法:校正済みの校正用試料
使用する校正用試料の非円率が,校正済みの値ucalよりも明らかに小さい場合には,非円率のバイアス
を直接測定してもよい。任意の方向について,校正用試料の非円率NCを測定する。非円率のバイアスは
次の式(H.3)によって表す。
cal
u
NC
NCB
+
≦
····································································· (H.3)
注記 B法を用いて決定するNCBの値は,測定器のバイアスの最大値であり,A法を用いて得られる
値よりも僅かに大きい場合がある。
H.5 uNCBの決定
a) H.4.2のA法を用いる場合には,非円率バイアスの不確かさは,次の式(H.4)によって算出する。
2
NCB
u
u
=
············································································ (H.4)
ここに,uは,非円率の測定における統計的不確かさである。
b) H.4.3のB法を用いる場合には,非円率バイアスの不確かさは,次の式(H.5)によって算出する。
cal
NCB
u
u
u
+
=
········································································· (H.5)
参考文献
[1] ISO/IEC Guide 98-3 Uncertainty of measurement−Part 3:Guide to the expression of uncertainty in
measurement(GUM:1995)
[2] ISO/IEC Guide 99 International vocabulary of metrology−Basic and general concepts and associated terms
(VIM)