C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義··················································································································· 2
4 校正の準備······················································································································ 9
4.1 組織 ···························································································································· 9
4.2 トレーサビリティ ·········································································································· 9
4.3 測定及び校正に関する注意事項 ························································································ 9
4.4 使用者への推奨事項 ······································································································ 10
5 光パワーの絶対値の校正 ··································································································· 10
5.1 校正方法 ····················································································································· 10
5.2 校正条件の設定 ············································································································ 11
5.3 校正手順 ····················································································································· 12
5.4 校正不確かさ ··············································································································· 13
5.5 結果の報告 ·················································································································· 17
6 校正済み光パワーメータの測定不確かさ ·············································································· 18
6.1 概要 ··························································································································· 18
6.2 参照条件での不確かさ ··································································································· 18
6.3 動作条件での不確かさ ··································································································· 18
7 非直線性の校正··············································································································· 24
7.1 一般事項 ····················································································································· 24
7.2 重ね合せ法に基づく非直線性の校正 ················································································· 25
7.3 校正された光パワーメータとの比較に基づく非直線性の校正················································· 27
7.4 光減衰器との比較に基づく非直線性の校正 ········································································ 28
7.5 高光パワー測定のための光パワーメータの校正 ·································································· 28
附属書A(規定)測定の不確かさ計算のための数学的基礎 ·························································· 29
附属書B(参考)直線目盛から対数目盛への変換不確かさ ·························································· 31
参考文献 ···························································································································· 32
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人
光産業技術振興協会(OITDA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本
産業規格を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本
産業規格である。これによって,JIS C 6186:2008は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
C 6186:2020
(IEC 61315:2019)
光ファイバ用光パワーメータ校正方法
Calibration of fiber optic power meters
序文
この規格は,2019年に第3版として発行されたIEC 61315を基に,技術的内容及び対応国際規格の構成
を変更することなく作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
光ファイバ用光パワーメータは,光ファイバ用光源から出力される光パワーをできるだけ正確に測定す
るように設計されている。その性能は,校正手順の品質に大きく依存する。他の種類の測定器と比較する
と,光ファイバ用光パワーメータによる測定結果は,通常,多くの測定条件に依存する。校正手順上の測
定条件を校正条件という。校正条件を明確に記載することが,校正においては不可欠である。
この規格では,校正条件を明らかにし,校正を実行し,不確かさを計算し,不確かさ,校正条件及びト
レーサビリティを報告するまでの全ての校正手順を各段階にわたって規定している。
光パワーの絶対値の校正では,入力光パワーと光パワーメータの指示値との相関の決定法を示す。その
相関を表す比例定数を補正係数という。補正係数の測定の不確かさは,附属書Aに規定するように,参照
標準器,被校正器,測定系の構成及び測定手順を総合的に組み合わせて求める。
補正係数の測定の不確かさを計算によって求めるためには,それぞれの要素の不確かさを細かく分析す
ることになるが,次の点を考慮することが重要である。
a) 不確かさの幾つかは,経験に基づくタイプBの評価である。
b) 詳細な不確かさの解析は,各型番の被校正光パワーメータについて,通常,一度だけ行う。その後の
全ての校正においては,タイプA測定の寄与を適切に評価すれば,他の要因については,通常,当初
の評価結果を用いる。
c) 幾つかの不確かさについては,実質的に無視できる値として,単純にチェックリストの一部とみなす。
箇条5は,光パワーの絶対値の校正を規定し,この規格を参照する校正を報告するのに必須である。
箇条6は,参照条件又は動作条件における,校正済みの光パワーメータの測定不確かさの評価について
規定している。不確かさは,5.4で計算する光パワーメータの校正不確かさ,校正条件及びその校正条件
への依存性によって決まる。この不確かさの評価は,通常,光パワーメータの製造業者が光パワーメータ
の仕様を決めるために行うもので,この規格では,この不確かさの評価を報告することは必須ではない。
この不確かさの原因の一つである非直線性の校正は,別の校正で求める(箇条7参照)。
1
適用範囲
この規格は,校正機関又は光パワーメータの製造業者が行う,光伝送用に用いる一般的な光源から放射
した光パワーを測定する光パワーメータの校正方法について規定する。これらの光源には,レーザダイオ
ード,発光ダイオード(LED)及び光ファイバ出力の光源を含む。拡散光及び平行ビーム光の両方を取り
2
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
扱う。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61315:2019,Calibration of fibre-optic power meters(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)
は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 6820 光ファイバ通則
注記 対応国際規格:IEC 60793-2,Optical fibres−Part 2: Product specifications−General
IEC TR 61931:1998,Fibre optic−Terminology
ISO/IEC Guide 98-3:2008,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of uncertainty in
measurement (GUM:1995)
3
用語及び定義
この規格で用いる用語,定義及び略語は,IEC TR 61931:1998によるほか,次による。
ISO及びIECでは,標準化で用いる用語集のデータベースを管理している。
・ ISO Online browsing platform: http://www.iso.org/obp
・ IEC Electropedia: http://www.electropedia.org/
3.1
認定された校正機関(accredited calibration laboratory)
適切な国の機関の認定の下,規定した最小の不確かさで,国家標準(3.14)へのトレーサビリティを保
証する校正証明書を発行できる校正機関。
3.2
調整(adjustment)
測定対象の与えられた値に対応した測定指示値を表示するために,測定器に対して行う一連の操作。
注記1 測定対象の値が0で,対応する指示値も0となるように測定器を調整する場合,その操作を
ゼロ点調整という。
注記2 ISO/IEC Guide 99:2007の3.11参照。
(出典:IEC 60050-300:2001の311-03-16を基に,用語から“測定器の”の語句を削除。注記2を追加。)
3.3
校正(calibration)
測定器が示す値と,標準によって実現される値との関係を,規定した条件の下に確定する一連の操作。
注記1 校正の結果,指示値に測定量の数値を割り当てる場合,又は指示値の補正量を決定する場合
がある。
注記2 校正によっては,他の計量上の特性,例えば,影響量の効果などを決定することもある。
注記3 校正結果は,校正証明書又は校正報告書と呼ばれる文書に記録されることもある。
注記4 ISO/IEC Guide 99:2007の2.39参照。
3
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3.4
校正条件(calibration conditions)
校正を行う際の測定の条件。
3.5
中心波長,λc(centroidal wavelength)
真空中における光源の光パワー分布を重み付け平均した波長。
注記1 連続スペクトルの中心波長は,次の式(1)で定義される。
c
total
()
p
d
P
λλλ
λ=∫
········································································· (1)
光源が複数の線スペクトルで構成される場合,中心波長は,次の式(2)で定義される。
i i
c
i
P
P
λ
λ=∑∑
············································································· (2)
ここに,
p(λ): 光源の光パワースペクトル密度。例えば,ワット毎ナノメー
トル(W/nm)で表す。
λi: i番目の線スペクトルの真空中の波長
Pi: i番目の線スペクトルの光パワー。例えば,ワット(W)で表
す。
Ptotal: 総光パワー。例えば,ワット(W)で表す。
注記2 式(1)及び式(2)の積分又は積算は,理論上は,光源のスペクトル全域にわたるが,通常は,光
パワースペクトル密度p(λ)又は光パワーPiが最大値の0.1 %超えの領域で積分又は積算すれ
ば十分である。
3.6
補正係数,CF(correction factor)
未補正の測定結果に乗じ,系統誤差を補正するための係数。
3.7
検出器(detector)
光パワーを測定可能な,通常は,電気量に変換する光パワーメータの素子。
注記1 この規格では,検出器は,一つの光路を通じて光入力端子に接続されているものと仮定して
いる。
注記2 ISO/IEC Guide 99:2007の3.9参照。
3.8
偏差,D(deviation)
被校正器(3.32)による測定値PDUTと参照光パワーPrefとの相対的差分。
DUT
ref
ref
P
P
D
P
−
=
·········································································· (3)
3.9
励振(excitation)
光ファイバ内の伝搬モード間に光パワーが分布した状態。
注記 マルチモード光ファイバでは,光ファイバの励振は,次によって記載されている。
4
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
a) 光ファイバ端面でのスポット径(3.31)
b) 光ファイバ出射光の開口数(3.17)
シングルモード光ファイバは,一般的に一つのモード(基本モード)だけが励振されると仮
定している。
3.10
機器状態(instrument state)
測定器上で選定可能な一連のパラメータ群。
注記 機器状態に関する一般的なパラメータは,測定光パワーレンジ,波長設定,表示単位,及び測
定結果が得られる出力形態(例えば,ディスプレイ,インタフェースバス,アナログ出力)で
ある。
3.11
放射照度(irradiance)
光学的基準面上のある点において,微小面要素に入射する光パワー∂Pをその微小面要素面積∂Aで除し
たもので,次の式(4)で定義される。
2
(W/m)
P
E
A
∂
=∂
········································································· (4)
注記 IEC TR 61931:1998の2.1.15参照。
3.12
測定結果,y(measurement result)
取扱説明書に示す全ての作業,例えば,ウォームアップ,ゼロ点調整,波長補正などが完了した後の,
光パワーメータ(又は標準器)の(表示又は電気的)出力。
不確かさの解析のためには,その他の単位,例えば,ボルト(V)などで表示した測定結果は,ワット
に変換することが望ましい。ワットで表した測定結果に基づいて,全ての不確かさを累積するので,デシ
ベル(dB)での測定結果もワットに変換することが望ましい(附属書B参照)。
注記 測定結果は,ワット(W)の単位で表す。
3.13
測定範囲(measuring range)
測定器の誤差が規定の範囲内に収まるように定めた,測定量の値の集合。
ダイナミックレンジという用語は,この文脈において用いない方がよい。
注記1 この規格では,測定範囲とは,動作条件での不確かさが規定できる,光パワーの範囲(動作
範囲の一部)である。
注記2 ISO/IEC Guide 99:2007の4.7参照。
3.14
国家計量標準,国家標準(national measurement standard,national standard)
国内で当該量の他の標準に値付けする基礎となる,国が定め,供給を認めた標準。
注記 ISO/IEC Guide 99:2007の5.3参照。
3.15
国立標準機関(national standards laboratory)
国家標準(3.14)を維持管理する機関。
5
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
3.16
非直線性,NL(nonlinearity)
与えられた光パワーPにおける応答度(3.28)と,参照光パワーP0における応答度との相対的差分。次
の式(5)で表す。
0
/
0
()
1
( )
PP
rP
nl
rP
=
− ········································································· (5)
デシベルの単位で表示する非直線性は,次の式(6)で表す。
0
/
10
0
()
10log
(dB)
( )
PP
rP
NL
rP
=
×
·························································· (6)
注記1 参照光パワーにおける非直線性は,0に等しい。
注記2 “1区間の非直線性”という用語は,非線形性の校正で得られた(3.01 dB離れた)二つの異
なる光パワーレベルにおける応答度の相対的差分を意味する。“全区間の非直線性”という用
語は,(dB表記の)1区間の非直線性の総和を意味し,ここで定義する非直線性と同義であ
る。
3.17
開口数,NA(numerical aperture)
光源からのビーム広がりを表現するパラメータ。
注記1 この規格では,開口数は,放射照度が最大放射照度の5 %となる点のなす角の半分(ただし,
線形表示での半分)のサイン値(正弦値)。
注記2 この定義は,JIS C 6825の6.1のマルチモード光ファイバの開口数の定義を適用している。
この規格では,この定義は,全ての拡散光の広がりを記載するのに用いる。
3.18
動作条件(operating conditions)
測定器の測定値の不確かさを規定するための,一連の影響量の範囲を適切に規定したもの。通常,参照
条件よりも広い範囲に設定する。
注記 動作条件及び動作条件における測定値の不確かさは,通常,測定器の製造業者が使用者の便宜
のために指定する。
3.19
動作範囲(operating range)
一連の動作条件(3.18)の一つについて数値を規定した範囲。
3.20
光入力端子(optical input port)
光ファイバ端又は光パワーを接続するための光パワーメータ(又は,標準器)の物理的入力部。
注記 光路(光線の経路で途中にレンズ,絞り,光ガイドなどのような光学部品が介在することもあ
る。)によって,光入力端子及び光パワーメータの検出器が接続されていると想定している。
3.21
光学的基準面(optical reference plane)
ビームスポット径(3.31)を規定するために用いる面。光入力端子(3.20)上又はその近傍にある。光学
的基準面は,通常,光軸に垂直であると想定しており,光パワーメータの光入力端子に対して機械的寸法
で記載することが望ましい。
6
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
3.22
偏光依存感度,PDR(polarization dependent response)
入力光の全ての偏光状態に対する光パワーメータの応答度(3.28)の変動。次の式(7)で表す。
max
10
min
10log
(dB)
r
PDR
r
=
×
·························································· (7)
ここに, rmax及びrmin: 全ての偏光状態に対する応答度(3.28)の最大値及び
最小値
注記 偏光依存感度は,デシベルの単位で表記する。
3.23
光ファイバ用光パワーメータ(fiber-optic power meter)
一般に光伝送用に用いるレーザ,LEDなどの光ファイバ光源から放射した光パワーを測定できる機器。
注記1 拡散光又は平行ビーム光があり得る。放射した光は,規定の条件の範囲内で光学的基準面に
入射する。
注記2 光パワーメータには,一体形と,受光部が測定器本体から分離している分離形とがある。分
離形では,受光部を本体と独立して校正できる。しかし,測定器本体にアナログ回路が用い
られている場合は,受光部は測定器本体とともに校正しなければならない。
注記3 光パワーメータは,通常,変調光パワーの時間平均を測定できる。変調光のピーク光パワー
及びデューティ比によって,測定の不確かさが増すことがある。
3.24
光パワー,P(radiant power)
光の形態で放出,伝搬又は受光されるパワー(参考文献[1]参照)。
注記 光パワーは,ワット(W)の単位で表記する。
3.25
参照条件(reference conditions)
測定器の性能の試験又は測定結果の相互比較のために規定する使用条件。
注記 一般に,参照条件には,測定器に影響を及ぼす影響量の基準値又は基準範囲を含む。
3.26
参照標準器(reference meter)
被校正器(3.32)の校正(3.3)の基準として使用する標準器。
3.27
参照標準(reference standard)
一般に,一定の地域又は組織で得られる最も高い計量上の品質をもつ標準。そこで行う測定の基準とな
る。
注記 ISO/IEC Guide 99:2007の5.6参照。
3.28
応答度,r(response)
一定の測定条件の下,光パワーメータの測定結果yを,光パワーメータの光学的基準面上の光パワーP
で除した値。(ワット毎ワットとなるので)単位はなく無次元量。
y
rP
=
····················································································· (8)
7
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
注記 理想的な光パワーメータの応答度は,全ての動作条件の下で1となる。
3.29
分光応答度,R[(spectral) responsivity]
検出器の出力電流Iを単色の入射光パワーPで除した値。単位は,ワット毎アンペア。
(A/W)
I
RP
=
············································································· (9)
注記 分光応答度は,波長,温度などに依存する(図1参照)。
図1−光電検出器の典型的な分光応答度
3.30
スペクトルバンド幅,B(spectral bandwidth)
光源のスペクトルにおける半値全幅(FWHM)。
注記1 縦モードがマルチモードのレーザダイオードの場合,FWHMスペクトルバンド幅Bは,(ガ
ウス分布と仮定して)RMSスペクトルバンド幅を2.35倍する。
2
i
i
c
total
1
2.35
(
)
i
B
P
P
λλ
=
−
∑
······················································ (10)
total
i
i
P
P
=∑
············································································(11)
ここに,
λc: レーザダイオードの中心波長(3.5)。単位はナノメートル
(nm)。
Ptotal: 総光パワー。単位はワット(W)。
Pi: i番目の縦モードの光パワー。単位はワット(W)。
λi: i番目の縦モードの真空中の波長。単位はナノメートル(nm)。
注記2 単一波長(単一縦モード)の光源では,スペクトルバンド幅が1 nm未満のように,スペクト
ルバンド幅の上限を規定すればよい。
注記3 通常は,最大光パワーの0.1 %超えとなるスペクトル線の積分又は総和を取れば十分である。
3.31
スポット径(spot diameter)
0.0
0.2
0.4
0.6
0.8
1.0
1.2
400
500
600
700
800
900
10001100120013001400150016001700
波長 (nm)
ス
ペ
ク
ト
ル
感
度
R
(
A
/W
)
シリコン Si
ゲルマニウム Ge
インジュウムガリウムひ素 InGaAs
インジウムガリウムひ素InGaAs
分
光
応
答
度
8
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
光学的基準面上で照射された領域について,最大放射照度の5 %の放射照度(3.11)となる最良近似の
円で規定する直径。
注記 開口数の定義との整合上,5 %を採用した。レーザビームに対しては,例えば,1/e2又は1/eの
ように,5 %以外の基準を用いることもしばしばある。その場合はスポット径の値とともに,
その基準とした比率を記載する。
3.32
被校正器(test meter)
参照標準器(3.26)との比較に基づいて,校正する光ファイバ用光パワーメータ(3.23)(又は標準器)。
3.33
トレーサビリティ(traceability)
不確かさを全て表記した,切れ目のない比較の連鎖を通じて,通常は,国家標準又は国際標準で決めた
標準に関連付けられる,測定結果又は標準の値の性質。
注記 ISO/IEC Guide 99:2007の2.41参照。
3.34
トレーサビリティの連鎖(traceability chain)
切れ目のない比較の連鎖(図2参照)。
注記1 ISO/IEC Guide 99:2007の2.42参照。
注記2 JIS Z 8103:2019の404(トレーサビリティの連鎖)では,“測定結果を参照基準に関係付ける
ために用いる,測定標準及び校正の段階的なつながり。”と定義されているが,対応国際規格
の記載どおりとした。
図2−トレーサビリティの連鎖の例
3.35
実用標準(working standard)
測定器を日常的に校正又は確認するために用いる標準。
注記1 実用標準は,通常,参照標準(3.27)で校正する。
注記2 ISO/IEC Guide 99:2007の5.7参照。
国家標準
実用標準
仲介標準
実用標準
被校正器
国立標準機関
認定された校正機関
民間の校正機関
9
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
3.36
ゼロ点誤差(zero error)
光入力端子に光を入力しない状態における光パワーメータの測定結果。
注記1 ISO/IEC Guide 99:2007の4.28参照。
注記2 本体及び附属書で使用していないが,対応国際規格の記載どおりとした。
4
校正の準備
4.1
組織
校正機関は,校正に関する適切な要求に確実に従うことが望ましい。
注記 校正に関する実践の情報がJIS Q 17025 [18]にある。
各校正の段階を追った作業指示及び使用する装置を文書化した測定手順書をもつことが望ましい。
4.2
トレーサビリティ
校正機関は,適切な要求に確実に従うことが望ましい。
注記 校正に関する実践の情報がJIS Q 17025 [18]にある。
校正手順で使用する全ての標準器は,あらかじめ,国立標準機関又は認定された校正機関に対するトレ
ーサビリティを確保した上で,手順書に従って校正する。校正手順の階層ごとに複数の標準器を維持する
ことで,標準器の性能を階層ごとに比較検証できるようにすることが有効である。校正結果に重大な影響
を及ぼすその他全ての校正装置が,全て校正済みであることを確認する。また,要求に応じてこれらの校
正装置及びそのトレーサビリティの連鎖を規定する。再校正の周期を規定し文書化しなければならない。
4.3
測定及び校正に関する注意事項
ここでは,光パワーメータ又は光ファイバ用光パワーメータの全ての校正及び測定に関する一般的な注
意事項を示す。
温度制御機能のない検出器を用いる場合,校正は,温度制御室で行うことが望ましい。推奨温度は,23 ℃
である。湿度に敏感な検出器を用いる場合又は装置に結露の可能性のある場合は,湿度制御環境が必要と
なる。校正室の湿度変化は,空気の吸収を変化させるため,光パワーが変化する可能性がある。この影響
は,空間ビームで交互測定によって校正する際に湿度が変化するとき,1 360 nmと1 410 nmとの間で特に
顕著となる。参照標準器及び被校正器を,ほぼ等距離の空間ビーム光路で同時測定する場合は,ほぼ同時
に測定結果が変化するため,湿度の変動の影響は,校正結果において無視できる。
校正室は,きれいな状態を保つことが望ましい。コネクタ及び光入力端子は,測定前に常に清掃するこ
とが望ましい。検出器前面のコネクタの品質及び清潔さを確認することが望ましい。測定中は必要に応じ
て光ファイバを作業台に固定して,光ファイバの動きを極力抑えることが望ましい。光ファイバを動かす
よりも,検出器を光ファイバの方に移動することが望ましい。
光パワーメータの励振に使用する光源は,中心波長及びスペクトルバンド幅で規定し,十分狭いスペク
トルバンド幅の光源を用いて,測定値が広い波長域にわたり平均化されないようにすることが望ましい。
光源の安定性を確保するため,例えば,独立に光パワーをモニタすることなどは有効である。
レーザダイオードは,戻り光に敏感なので,安定性を増すため,レーザダイオードと被校正器との間に,
光減衰器又は光アイソレータを用いると有効である。レーザダイオードは,スペクトルバンド幅が狭いの
で,マルチモード光ファイバを用いると光学的基準面上にスペックルパターンを生じ,測定の不確かさが
増すことがある。
光ファイバコネクタ及びアダプタは,光源側と光入力端子又は検出器側との間で多重反射を生じ,測定
10
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
結果に誤差を生む可能性があるので[2],光ファイバコネクタ及びアダプタは,校正用には低反射のものが
望ましい。そうでなければ,補正係数の導入及び不確かさの増加を考慮することが必要となる場合がある。
参照標準器では,検出器の直径は3 mm以上とし,空間ビームを受光しやすく,また,ごみ及びほこり
の影響も抑えやすくすることが望ましい。参照標準器の表面反射は,可能な限り小さいことが望ましい。
光源が拡散光を放射する場合,参照標準器は,積分球タイプが望ましい。平面検出器を用いて数学的に補
正することも可能で,光の遠視野分布に,参照標準器の検出器の角度依存性の測定値を乗じ,遠視野での
光の放射角にわたって積分して補正できる。
検出器は,ある波長域で顕著な温度依存性を示すので,高精度な校正のためには,検出器の温度制御を
検討することが望ましい。
4.4
使用者への推奨事項
光パワーメータの使用者は,参照光パワーメータを1台以上維持して,光パワーメータ同士を比較し信
頼性を確認することが望ましい。この比較は,光パワーメータを再校正に出す前後で特に重要である。光
パワーメータが校正から戻った後,輸送などが原因で,その表示が変わっていないか,参照標準器との比
較を通じて使用者が判断できるからである。調整に起因する表示の変化は,校正証明書に記載がある。
定期的に,光パワーメータの補正係数又は偏差を比較することで,使用者は過度の経時劣化を検査でき,
再校正の間隔を適正化できる。
5
光パワーの絶対値の校正
5.1
校正方法
光パワーメータの校正は,通常,被校正器及び不確かさが既知の校正済光パワーメータ(参照標準器)
の両方に光を照射し,参照標準器の測定結果を被校正器に値付けすることによって行う。
許容できるスペクトルバンド幅は,被校正器の分光応答度に依存する。すなわち,波長依存性が強けれ
ば強いほど,光源のスペクトルバンド幅は狭いものを用いる。通常のスペクトルバンド幅は,10 nm以下
とし,スペクトルバンド幅の広いLEDは,校正に使用しない。したがって,光パワーメータの校正には,
“白色”光源及び狭帯域フィルタ(例えば,モノクロメータ)の組合せ,レーザダイオード,又はスーパ
ーコンティニウムレーザ及び可変バンドパスフィルタの組合せを使用する。
光源の種類及び励振ビームの形状によって,表1に示すような六つの校正方法に分類することができる。
表1−校正方法及び対応する代表的な光パワーレベル
光源
空間ビームでの校正
光ファイバ出射ビームでの校正
“白色”光源及び狭帯域フィルタ P≒10 µW
P≒10 nW〜0.3 µW(MMF)a)
P≒2 nW(SMF)b)
レーザダイオード
P≒10 µW〜数 mW
P≒10 µW〜数 mW[SMF b)及びMMF a)]
スーパーコンティニウムレーザ
及び可変バンドパスフィルタ
P≒1 µW〜数 mW
P≒1 µW〜700 µW[SMF b)及びMMF a)]
注a) MMF:マルチモード光ファイバ(通常,GIファイバ)
b) SMF:シングルモード光ファイバ
光ファイバ用光パワーメータの校正には,光ファイバ出射ビームを使用することが望ましい。空間ビー
ムでは,その校正結果を,幾つかの波長における光ファイバ出射ビームでの校正結果を用いて補正するこ
とが望ましい。
校正方法には,交互測定法及び同時測定法がある。被校正器及び参照標準器を光源で交互に照射すると
11
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
き,光パワーは,例えば,適切な安定化を行うなどして,できるだけ一定に保つことが望ましい。同時測
定法で校正する場合には,ビームスプリッタ又は光ブランチングデバイスを使用して,被校正器及び参照
標準器を二つのビームで同時に励振する。この場合,ビームスプリッタ又は光ブランチングデバイスの分
岐比をできるだけ正確に決定するとともに,その安定性を確認しなければならない。
一例として,交互測定法による光ファイバ出射ビームでの校正のための測定系を図3に示す。クラッド
モード除去及び適切なモード励振のための励振器も,測定系に含める。
図3−光ファイバを用いた交互測定法の校正測定系
5.2
校正条件の設定
校正条件は,校正手順における測定の条件である。校正条件のいかなる変化も,誤った測定結果を生じ
る可能性があるため,校正条件を設定し,保持することは,校正の重要な要素である。校正条件は,意図
する動作条件になるべく近い条件にすることが望ましい。これによって,動作環境における(追加の)不
確かさを最小限に抑えることができる。校正条件は,適用できる場合,不確かさを付記した公称値の形式
で規定することが望ましい。この規格の要求を満たすために,校正条件には少なくとも次の項目を含めな
ければならない。
a) 校正年月日
b) 周囲温度及びその不確かさ:例 23 ℃±1 ℃
c) 周囲の相対湿度。校正に影響する場合に示し,規定がない場合は,結露点以下の相対湿度とする。
d) 光学的基準面での公称光パワーレベル
e) 光ビームの形状
1) 空間ビーム(例 平行ビーム)では,光学的基準面でのスポット径,ビームの開口数及びビームの
放射照度分布で規定する。代表的な放射照度分布には,一様分布,ガウス分布又は不規則分布(ス
ペックル状態)がある。
2) 光ファイバの種類,及び適用可能な場合,励振の度合い(例 SGI-50/125又はSGI-62.5/125マルチ
モード光ファイバを用いる場合は,IEC 61280-4-1で定義するエンサークルドフラックスのテンプレ
ート)
f)
コネクタアダプタ対:コネクタの種類,研磨状態,及び励振源の一部としてのアダプタ(適用可能な
場合)
g) 励振源の中心波長
h) 励振源のスペクトルバンド幅
S
dB
Attenuator
Source
Cladding
Reference
power meter
光源
光減衰器
(オプション)
励振器
被校正器
参照標準器
12
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i)
偏光状態:“無偏光”又は“状態が不明の偏光”。後者を選択した場合,5.4.3及び5.4.5において偏光
依存感度による不確かさを考慮しなければならない。
校正条件は,a)〜i)の項目に限定するものではない。ほかに測定の不確かさに大きな影響を及ぼすパラメ
ータがある場合は,それらも報告しなければならない。
空間ビームを使用した校正では,光パワーメータの光学的基準面の受光径よりも直径の小さなビームを
使用し,光学的基準面の中心に照射することが望ましい。
光ファイバを使用する校正では,シングルモード光ファイバ,マルチモード光ファイバのいずれを使用
してもよい。再現性の良いビーム特性をもつことから,シングルモード光ファイバが望ましいが,全ての
波長には適用できない。マルチモード光ファイバを使用する場合は,励振の再現が比較的容易な85 %〜
95 %の励振(限定モード条件)が望ましい(IEC 61280-4-1で定義するエンサークルドフラックスのテン
プレートがこの条件の良い例である。)。適切な励振を得るために,励振器が必要となる場合がある。マル
チモード光ファイバをレーザダイオードで駆動した場合は,不規則なビームパターン(スペックルパター
ン)が生じることに留意する。この場合,不確かさが増加することになる。
コネクタアダプタ対は,校正に光ファイバを使用した場合,すなわち,空間ビームを使用しない場合に
だけ報告することが望ましい。コネクタアダプタ対は,光パワーメータへの戻り反射が十分に小さい組合
せのものを使用することが望ましい。
5.3
校正手順
校正手順は,次による。
a) 適切な校正条件を設定し,記録する(5.2参照)。全ての機器の電源を入れ,十分に時間をかけて安定
させる。
b) 取扱説明書に従って,参照標準器及び被校正器の機器状態を設定する。全ての機器の波長を光源波長
に設定する。適切な光パワーレンジを選択する。両測定器の機器状態を記録する。適用可能な場合,
両測定器のゼロ点調整を行う。
c) 参照標準器で光パワーPstd,1を測定する。参照標準器が調整済みでない場合は,参照標準器の校正証明
書に記載されている補正係数CFstdを測定結果に乗じる。必要ならば,5.4.4で算出した補正係数CFchange
も乗じる。測定結果Pref,1=Pstd,1×CFstd×CFchangeを記録する。
d) 被校正器で光パワーを測定する。取扱説明書に従って必要な補正を行う。測定結果PDUT,1を記録する。
e) 一連の補正係数の最初の係数を式(12)で算出する。
ref,1
comparison,1
DUT,1
P
CF
P
=
··································································· (12)
f)
ステップc)からe)までをn回繰り返し,CFcomparison,1からCFcomparison,nまでの補正係数を幾つか算出する。
g) 個々の補正係数から,平均補正係数CFDUTを式(13)で算出し,記録する。
DUT
comparison,i
1
1
n
i
CF
CF
n
=
=
∑
························································· (13)
必要ならば,偏差Dは補正係数から,式(14)で算出する。
DUT
1
1
DCF
=
− ········································································· (14)
算出後,被校正器の利用に当たっては,測定結果にCFDUTを乗じなければならない。また,補正係
数が1となるように被校正器を調整することができるが,その場合は,確認のため,再度比較測定を
することが望ましい。
13
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
5.4
校正不確かさ
5.4.1
一般事項
校正不確かさは,補正係数CFDUTの測定不確かさである。合成標準不確かさを,式(15)で算出する。
2
2
2
DUT
setup
ref
DUT
(
)
uCF
u
u
u
=
+
+
······················································ (15)
ここに,
usetup: 測定系による不確かさ(5.4.2)
uref: 参照標準器の不確かさ(5.4.3)
uDUT: 被校正器による不確かさ(5.4.5)
式(15)は,入力量が独立又は相関がない場合にだけ有効である。幾つかの入力量にかなりの相関がある
場合には,その相関を考慮する必要がある(ISO/IEC Guide 98-3:2008参照)。
次に,拡張不確かさを,式(16)で算出する。
U(CFDUT)=k×u(CFDUT) ····························································· (16)
ここに,
k: 包含係数(附属書Aを参照)
5.4.2
測定系による不確かさ
測定系によって,次の不確かさが発生することがある。
a) 光源の光パワーの不安定性による不確かさ:出力光パワーの固有の経時変化に加えて,レーザ光源の
光パワーは,反射戻り光の変動及び反射戻り光の偏光状態の変動に応じて不安定になることがある。
b) ビームスプリッタ又は光ブランチングデバイスの分岐比による不確かさ(同時測定法の場合):例えば,
それらのデバイスの偏光依存性に起因する。
c) 測定系及び測定方法によっては,a)及びb)のほかにも不確かさの考慮が必要な場合がある。
光源の光パワーの不安定性及びビームスプリッタ,又は光ブランチングデバイスの分岐比(同時測定法
の場合)の不安定性は,補正係数の測定にばらつきをもたらす。これらの不安定性による不確かさは,校
正中に測定した補正係数CFcomparison,1〜CFcomparison,n[式(12)]の実験標準偏差から算出できる。この不確か
さを減少させるために,比較の回数は多くすることが望ましい。
不確かさのタイプA評価の詳細は,附属書Aに規定する。
comparison
setup,typeA
(
)
sCF
u
n
=
····························································· (17)
ここに, s(CFcomparison): 補正係数の実験標準偏差
n: 校正手順における測定サイクルの回数
この不確かさは,測定によって一度評価した標準偏差から算出し,全ての校正に用いてもよいし,タイ
プBの評価から算出してもよい。したがって,不安定性は,校正ごとに大幅に変化したり,被校正器には
依存しないことが望ましい。式(17)のnは,常に現在の校正手順における測定サイクルの回数である。
このタイプA評価の不確かさは,交互測定法を使用する場合の接続の繰返し性,又は校正手順における
測定条件の僅かな変化の影響を受ける。参照標準器(5.4.3)又は被校正器(5.4.5)に起因する不確かさも
(ある程度)考慮に入ることがある。不確かさの要因は漏れなく考慮するが,二重カウントしないことが
望ましい。
5.4.2に示した全ての部分不確かさを合成して,測定系による不確かさを式(18)で算出する。
2
setup
setup,i
1
m
i
u
u
=
=∑
·································································· (18)
5.4.3
参照標準器の不確かさ
参照標準器の不確かさは,主として,参照標準器の校正,現在の校正条件の不確かさ及びこれらの校正
14
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
条件における参照標準器の依存性に起因する。
次の不確かさを評価しなければならない。この評価は,測定若しくは推定又は両者の組合せに基づいて
行う。不確かさの計算は,附属書Aに,校正条件の依存性の測定は,6.3.2に規定する。
a) 参照標準器の校正の不確かさ。これは,校正証明書から得なければならない。
b) 参照標準器の,(以前に)校正したときの条件と現在の校正条件との差異による不確かさuchange。5.4.4
で算出する。
c) 参照標準器の温度依存性による不確かさ。
d) 参照標準器の相対湿度依存性による不確かさ。積分球を備えた光パワーメータは,狭帯域レーザ光源
を使用する場合には,特に水の吸収ピークに敏感である。
e) 参照標準器のビーム形状の依存性による不確かさ。
f)
多重反射の依存性による不確かさ。多重反射は,光入力端子と光源(例えば,コネクタアダプタ対)
との間に発生することがある。器具が異なると,測定光パワーは,変わる場合がある。
g) 参照標準器の波長依存性による不確かさ。
h) 参照標準器のスペクトルバンド幅依存性による不確かさ。
i)
参照標準器の偏光状態の依存性による不確かさ。ただし,無偏光又は無偏光化された光を用いた場合
を除く。
j)
光学干渉による不確かさ。検出器表面,検出器窓の表面,及びコネクタ端面の各間にファブリーペロ
ー共振器が形成されることがある。
k) 参照標準器の分解能による不確かさ。参照標準器の分解能がδyrefならば,標準不確かさは,式(19)で
算出する(ISO/IEC Guide 98-3:2008のF.2.2.1を参照)。
ref,resolution
ref
1
23
u
y
δ
=
································································ (19)
l)
参照標準器のその他の依存性による不確かさ。参照標準器の種類によっては,a)〜k)以外の不確かさ
もあり得る。これらも,測定又は推定することが望ましい。
m) 参照標準器の経時変化による不確かさ。
以上から,参照標準器の合成標準不確かさは,a)〜m)の各標準不確かさから,式(20)で算出する。
2
2
ref
ref,i
change
1
n
i
u
u
u
=
=
+
∑
···························································· (20)
ここに, uchange: 条件の変化による不確かさ(5.4.4)
5.4.4
補正係数及び条件の変化による不確かさ
5.4.4.1
一般事項
参照標準器は,現在の校正条件とは異なる条件で校正されたことで,異なる応答度を示すことがある。
現在及び以前の測定条件の差異例は,平行ビーム対拡散光ビーム,光源スペクトルの差異,無反射性の測
定系対多重反射性の測定系,校正周期が長い場合の標準器の経時変化などである。
参照標準器を校正するときの条件が名目上現在の校正条件と同一であり(ただし,それらの不確かさは
異なる場合がある。),参照標準器の経時変化が無視できる場合は,5.4.4は,省略することが可能である
(CFchange=1)。
図4に示すように,それぞれの変化は,条件の公称変化及び不確かさの変化を含む。
15
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
図4−条件及び不確かさの変化
5.4.4.2〜5.4.4.8に記載する各々の潜在的な誤差要因に対し,補正係数を算出する必要があるかを判断す
ることが望ましい。
方法Aは,補正係数を算出する方法で比較的小さな不確かさとなる。方法Bは,補正係数を適用しない
方法であり(CFchange=1),最悪条件を包含するように,更に大きな不確かさを考慮することが望ましい。
方法Aを選択する場合には,(累積)補正係数は,式(21)又は式(22)で算出する。
previous
change
current
r
CF
r
=
······································································· (21)
又は,
CFchange=1−∆r ········································································ (22)
ここに,
rprevious: 以前校正した条件での参照標準器の励振に対する応答
度
rcurrent: 現在の校正条件での参照標準器の励振に対する応答度
∆r: 応答度の相対変化∆r=(rprevious−rcurrent)/rcurrent
5.4.4.2〜5.4.4.8に記載する各補正係数CFchange,iを累積することによって,参照標準器の(累積)変化に
関連した補正係数を算出する。各影響量Xiに対して,補正係数を,式(23)で算出する。
CFchange,i=1−∆ri ······································································ (23)
応答度の相対変化∆riは,“以前”の校正条件から“現在”の校正条件へ影響量を変化させて直接測定す
るか,又は影響量∆xiの公称変化及び参照標準器の影響量∆xiに対する公称相対依存性から,式(24)で算出
する。
CFchange,i=1−ci×∆xi ································································· (24)
ここに,
ci: 相対応答度の影響量Xiでの偏微分。感度係数(ISO/IEC Guide
98-3:2008の5.1.3及び5.1.4参照)。
感度係数が明確でない場合には,次のタイプB不確かさを考慮することが望ましい。
uchange,i=u(ci)×∆xi····································································· (25)
ここに, u(ci): 感度係数の標準不確かさであり,その依存性の測定は,6.3で
規定する。
最後に,5.4.4.2〜5.4.4.8に記載する各補正係数CFchange,iから参照標準器の累積補正係数を,式(26)を用い
16
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
て算出する。
change
change,i
1
n
i
CF
CF
=
=∏
····························································· (26)
校正条件の変化による合成標準不確かさは,式(27)で算出する。
2
change
change,i
1
n
i
u
u
=
=∑
································································ (27)
この補正係数は,測定条件の差異に起因する参照標準器の既知の応答度変化に対応し,参照標準器の光
パワー読取値の補正係数である(5.3参照)。
5.4.4.2
温度変化に起因する補正係数
補正係数CFchange,Θは,“以前”の温度と“現在”の温度との公称温度差∆Θ及び参照標準器の温度感度係
数cΘ(例えば,%/℃)に基づいて,式(28)で算出することが望ましい。
CFchange, Θ=1−cΘ×∆Θ ······························································· (28)
5.4.4.3
光パワーレベルの変化に起因する補正係数
不確かさは,参照標準器の“以前”の光パワーレベルと“現在”の光パワーレベルとの間の非直線性か
ら算出することが望ましい。
必要に応じて,補正係数は,式(29)を用いて算出する。
10
change,
10
NL
NL
CF
−
=
····································································· (29)
ここに,
NL: 非直線性であり,デシベル(dB)で表現したものである。非
直線性の測定は,箇条7に記載する。
5.4.4.4
ビーム形状の変化に起因する補正係数
補正係数は,ビーム形状を変えたときの応答度変化を測定して算出することが望ましい。
5.4.4.5
コネクタアダプタ対の変化に起因する補正係数
一般に,参照標準器の光入力端子では,反射が生じるものと想定することが望ましい。こうした反射は,
光源,例えば,光コネクタに戻って,再度反射され,表示する光パワーレベルが増加することになる。こ
の影響によって,補正係数(通常,1未満)が必要となり,不確かさ増大の原因となる。
例えば,参照標準器の校正で非反射性の光源を使用し,被校正器の校正で(光コネクタに起因する)反
射性をもつ光源を使用した場合は,参照標準器に表示される総光パワーは二次反射分だけずれる。この二
次反射が,総光パワーを5 %増加させると仮定した場合,固有の補正係数は0.95となる。この種類の誤差
は,高吸収率のエンクロージャをもち,低反射率のコネクタアダプタ対を組み込んでいる光源を使用する
ことによって低減することができる。
この測定方法を6.3.7に記載する。
5.4.4.6
波長変化に起因する補正係数
補正係数は,波長の公称変化∆λ,及び,波長に対する参照標準器の公称波長依存性cλに基づいて,式(30)
で算出することが望ましい。
CFchange,λ=1−cλ×∆λ ································································ (30)
5.4.4.7
スペクトルバンド幅変化に起因する補正係数
補正係数は,スペクトルバンド幅の公称変化及びスペクトルバンド幅に対する参照標準器の公称依存性
に基づいて算出することが望ましい。発光源のスペクトルバンド幅内で(未補正の)波長依存性が線形で
ある限り,補正係数は1となることに留意する。波長依存性が曲線の場合は,参照標準器の波長依存性,
17
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
及び両光源(参照標準器の校正で使用した光源及び被校正器の校正で使用した光源)のスペクトルに基づ
いて補正係数を算出する。
5.4.4.8
その他の補正係数
参照標準器の種類及び校正条件によっては,その他の補正係数が必要となる場合がある。これらについ
ても,5.4.4.1に記載している測定又は推定を行うことが望ましい。
5.4.5
被校正器に起因する不確かさ
被校正器に起因する不確かさは,主に校正条件の不確かさ及びその条件における被校正器の依存性が原
因である。次の不確かさを評価しなければならない。これらの決定は,5.4.3に規定した評価と同様である。
不確かさの算出は,附属書Aに規定し,条件の依存性の測定は,6.3.2に規定する。
a) 被校正器の温度依存性による不確かさ
b) 被校正器の相対湿度依存性による不確かさ。積分球を備えた光パワーメータは,狭帯域レーザ光源を
使用する場合には,特に水の吸収ピークに敏感である。
c) ビーム形状の依存性による不確かさ。この不確かさは,被校正器の光入力端子の不均一性及び角度依
存性に起因する。
d) 多重反射の依存性による不確かさ。多重反射は,光入力端子と光源(例えば,コネクタアダプタ対)
との間に発生することがある。器具が異なると,測定光パワーは変わる場合がある。
e) 被校正器の波長依存性による不確かさ
f)
被校正器のスペクトルバンド幅依存性による不確かさ
g) 被校正器の偏光状態の依存性による不確かさ。ただし,無偏光又は無偏光化された光を用いた場合を
除く。
h) 光学干渉による不確かさ。検出器表面,検出器窓の表面及びコネクタ端面の各間にファブリーペロー
共振器が形成されることがある。
i)
被校正器の分解能による不確かさ。被校正器の分解能が,δyDUTである場合には,標準不確かさは式(31)
のようになる(ISO/IEC Guide 98-3:2008のF.2.2.1を参照)。
DUT,resolution
DUT
1
23
u
y
δ
=
····························································· (31)
j)
被校正器のその他の依存性による不確かさ。被校正器の種類及び校正手順によっては,ほかにも不確
かさ要因となる条件がある。
以上から,被校正器の合成標準不確かさを,a)〜j)の各標準不確かさから,式(32)で算出する。
2
DUT
DUT,i
1
n
i
u
u
=
=∑
·································································· (32)
5.5
結果の報告
各校正結果の報告に関する要求事項は,次のとおりであることが望ましい。
注記 校正の結果の報告に関する実践の情報がJIS Q 17025 [18]にある。
この規格に適合した校正証明書又は校正報告書には,少なくとも,次の情報を含む必要がある。
a) 5.2で規定した全ての校正条件
b) 被校正器の調整が行われなかった場合は,被校正器の補正係数又は偏差
c) 調整が行われた場合は,被校正器の受領時の補正係数又は偏差及び調整後の補正係数又は偏差
d) 5.4で規定した拡張不確かさの形式における校正不確かさ
e) 校正中の,被校正器の機器状態
18
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
f)
測定のトレーサビリティの証拠(JIS Q 17025参照)
6
校正済み光パワーメータの測定不確かさ
6.1
概要
校正済み光パワーメータの測定不確かさは,校正不確かさと光パワーメータの各種測定条件に対する依
存性による不確かさとの組合せとなるため,校正不確かさ単独よりも大きい数値となる。
参照条件又は動作条件において校正済み光パワーメータを使用する際の測定不確かさの決定は,校正手
順には含まない。使用時の測定不確かさは,例えば,光パワーメータの製造業者が製品仕様を確定する目
的で評価する。この場合,この規格が規定する校正証明書又は校正報告書の発行は必須ではない。
6.2
参照条件での不確かさ
参照条件は,光パワーメータの性能試験又は相互比較に使用する。参照条件は,通常,測定機器の不確
かさが最小となるように製造業者が定めるため,校正条件と同一又は近い条件になることが多い。
参照条件での不確かさとは,参照条件で動作している,校正済み,かつ,調整済みの光パワーメータに
よる測定結果の不確かさである。参照条件での不確かさは,光パワーメータの校正不確かさ及び参照条件,
並びに光パワーメータの参照条件に対する依存性に依存する。このため,参照条件での不確かさは,校正
不確かさよりも常に大きくなる。参照条件が校正条件と同じ(条件の違いによる不確かさはなし)でも,
参照条件に対する被測定器の依存性を再度加味して,校正不確かさと合成しなければならない。校正済み
光パワーメータの参照条件での不確かさの算出は,式(33)を用い,5.4.3に規定した参照標準器の校正条件
における測定不確かさの算出と同様である。
2
2
DUT,ref̲conditions
DUT
DUT
(
)
u
uCF
u
=
+
················································ (33)
ここに,
u(CFDUT): 5.4で規定する,被校正器の校正不確かさ
uDUT: 5.4.5で規定する,被校正器の参照条件に対する依存性に
よる不確かさ
参照条件の記載は,5.2に規定した校正条件と同様に行うことが望ましい。
6.3
動作条件での不確かさ
6.3.1
一般事項
動作条件での不確かさ(又は動作計器不確かさ。JIS C 1005:2006の3.2.11参照。)とは,動作条件の範
囲内で動作する,校正済み,かつ,調整済みの光パワーメータによる測定結果の不確かさである。動作条
件での不確かさは,式(34)を用い,校正不確かさ,動作条件及び光パワーメータの動作条件に対する依存
性に依存する。
2
2
DUT,operating
DUT
extension
(
)
u
uCF
u
=
+
················································ (34)
ここに,
u(CFDUT): 5.4で規定する,被校正器の校正不確かさ
uextension: 式(35)で規定する,光パワーメータの動作条件に対する
依存性による不確かさ
5.2に規定した校正条件とは逆に,各動作条件は,可能であれば,範囲で記載することが望ましい。一連
の動作条件は,次に規定する。
a) 再校正の最大時間間隔
b) 周囲の温度範囲
c) 光パワーレベルの範囲(測定範囲)
19
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
d) スポット径及び開口数で規定するビーム形状の範囲,又は適用可能な光ファイバの種類の範囲
e) 適用可能なコネクタアダプタ対(存在する場合)
f)
光源の波長の範囲
g) 光源の最大スペクトルバンド幅
特に規定がない限り,動作条件には,とり得る全ての偏光状態を含む。また,結露点以下の相対湿度を
想定している。
a)〜g)の条件は,光パワーメータの製造業者又は動作条件での校正を行う校正機関のいずれが指定して
もよい。式(35)を用い,不確かさを算出するためには,各条件に対する依存性による全ての不確かさを合
成する。
2
extension
extension,i
1
n
i
u
u
=
=∑
···························································· (35)
ここに, uextension,i: 不確かさに寄与する項目
n: 寄与する項目の総数
6.3.2
測定条件依存性の決定
個々の依存性は,動作範囲内で関連条件を変化させた際に生じる,光パワーメータの応答度の相対変化
として記録することが望ましい。試験の間,その他の全ての条件は校正条件に保持することが望ましい。
校正条件における応答度をゼロ点と定義する。この方法では,応答度の正及び負の最大変化の範囲を,各
依存性と定義する。通常,図5に示すように,ゼロ点に対して非対称な範囲が得られる。
図5−不確かさの決定及び記録
高い測定精度を得るために,箇条4のガイドラインを守ることが望ましい。測定中の不確かさは,可能
な限り小さくすることが望ましい。なぜならば,測定結果には,測定中の不確かさも含めなければならな
いからである。測定によらず,既知の物理的関係,又は同形の被校正器での十分な特性データに基づいて,
測定条件依存性を推定してもよい。
動作条件における被校正器の合成標準不確かさを決定するためには,個々の依存性を定量化した限界値
を,式(A.5)を用いて標準不確かさに変換しなければならない。
個々の不確かさは,通常,独立していると仮定する。ただし,一部の事例では,不確かさが複数の条件
に強く依存することがある。幾つかの例を,6.3.5,6.3.7及び6.3.8に示す。(指定動作範囲内の)その他の
動作条件を変化させることによって不確かさが実質的に増大する場合は,大きい方の不確かさを記録しな
ければならない。その後,不確かさの算出は,この大きい方の不確かさを基に行わなければならない。
6.3.3
経時変化
経時変化は,与えられた期間にわたる応答度の相対変化である。経時変化は,同一条件における光パワ
20
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
ーメータの継続的な校正の結果,又は製造業者の指定によって決定できる。
製造業者において,与えられた期間にわたる応答度の相対変化は,測定器を注意深く使用する想定の下
で決定しなければならない。光パワーメータは,典型的な環境条件の下で試験することが望ましい。例え
ば,実験室仕様の機器については,23 ℃±1 ℃の周囲温度で,光入力端子には光を照射しないで,12時
間の電源オン及び12時間の電源オフの連続反復サイクル試験を行う。総試験時間は,一定の再校正周期と
等しくなるようにする。応答度の変化は,実用標準との比較によって測定することが望ましい。実用標準
の経時変化を排除するには,実用標準の定期的でトレーサブルな再校正が必要になる。いつものように,
測定不確かさを,この場合は主に実用標準の不確かさを考慮しなければならない。
上述のようにして得られたく(矩)形分布から経時変化の不確かさを算出することが望ましい(A.3参
照)。例えば,特定の波長で検出器の応答度が1年当たり最大0.1 %の割合で増大することが知られている
場合,経時変化の不確かさは,0 %(時点0のとき)から+0.1 %(1年時点のとき)まで広がるく(矩)
形分布によって特徴付けられる。
6.3.4
温度依存性
校正条件における応答度の相対変化は,動作温度範囲内で温度を変化させて測定することが望ましい。
応答度の正及び負の最大変化の範囲で,不確かさのく(矩)形分布を定義する。この場合,温度の関数と
しての応答度の最大最小だけが対象であり,最高最低温度での応答度ではないことに注意する(図5参照)。
なお,半導体検出器の分光応答度の温度依存性は,波長にも依存することに注意する。
6.3.5
光パワーレベル依存性(非直線性)
校正光パワーレベルに対する応答度の相対変化は,箇条7に従って測定することが望ましい。
6.3.6
光ファイバの種類又はビーム形状の依存性
6.3.6.1
一般事項
光ファイバ用光パワーメータは,光ファイバ又は空間ビームを受光できるように設計してもよい。光パ
ワーメータの応答度は,例えば,光パワーメータの光入力端子の不均一性及び角度依存性のために,光ビ
ームの形状に依存すると考えられる。
応答度の相対変化は,次の条件を満足する実用標準を使用して測定することが望ましい。
− 角度依存性が無視できる。
− 表面反射が無視できる。
− 光ファイバビーム又は空間ビームを受光するのに十分に大きい受光面である。
図6−空間応答度測定のための光学的基準面の分割区分の例,10個×10個の正方形
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C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
もう一つの方法は,光学的基準面上における被校正器の応答度の空間的な不均一性に全ての不確かさが
起因しているとの仮定に基づき,数学的解析によって評価することである。この解析を行うには,最初に,
光学的基準面上の受光面を正方形の配列,例えば,図6に示すように10個×10個に細分することが望ま
しい。
続いて,次の2種類の測定を実施することが望ましい。
a) 適切なビーム形状によって発生する光学的基準面上の空間光パワー密度及び入射角度の測定
b) 被校正器の光学的基準面上での斜め入射角依存性(角度依存性)を表す適切な乗数で重み付けした,
被校正器の空間応答度の測定。この空間応答度は,細分割された正方形の一辺の長さに等しい直径を
もつ光ビームで測定することが望ましい。
必要な測定結果のモデル化に基づき,(空間的)光パワーレベルに空間応答度を乗じ,これら全ての積を
加算することによって,ビームパラメータの変化に対する応答度の変化を評価することができる。空間応
答度は,通常,波長にも依存することに留意する。
6.3.6.2
光ファイバ依存性の測定
光ファイバに関係する不確かさの測定では,使用するマルチモード光ファイバは,限定モード励振状態
とすることが望ましい(5.2参照)。光ファイバは,校正条件で規定するコネクタアダプタ対によって結合
することが望ましい。コネクタアダプタ対及び検出器の間の多重反射が測定結果に影響を与えないように
するためには,コネクタ及びアダプタが共に低反射率であることが望ましい。また,光源のスペクトルバ
ンド幅は,広範囲の波長にわたっての平均化を避けるために十分狭くすることが望ましい。
ステップ1: 基準光ファイバの出力を実用標準及び被校正器の両方で測定し,その差を(数学的に)補
正して0にする。
ステップ2: 上記の手順を次に適用する。
a) JIS C 6820によって規定する標準シングルモード光ファイバ
b) (指定した)最大のコア径をもつ光ファイバ,及び/又は最大の開口数をもつ光ファ
イバ
この試験の意図は,被校正器の,光ファイバの種類に対する依存性,及び伝搬モードに対する依存性を
測定することである。光ファイバに関係する不確かさを決定するためには,ステップ1に対する応答度の
正及び負の最大変化を用いることが望ましい。この不確かさには,実用標準で光ファイバ出力を測定する
ときの不確かさ,例えば,実用標準の不均一性,ビーム拡散放射,及び多重反射の影響を原因とする不確
かさを含めなければならない。
これらの測定では,光入力端子の不均一性に関連した“スペックル”を原因として,著しいタイプA不
確かさが生じることがある。スペックルは,マルチモード光ファイバ中の異なるモード間の干渉によって
生じる不規則な放射照度分布である。この影響は,レーザダイオードからの(高い可干渉性の)光によっ
て光ファイバが励振されるときに,顕著である。この不確かさは,光ファイバを僅かに動かしては測定し
た,一連の測定結果を平均化することで低減できる。光ファイバの動きは,スペックルパターンを変化さ
せる。この光ファイバの移動によって,総光パワーが変化し得ることに留意する。総光パワーの変化は,
反射光パワー変動及びレーザダイオードの反射戻り光依存性に起因している。
励振波長が,光ファイバのカットオフ波長よりも十分に長い場合,シングルモード光ファイバ中には,
スペックルは存在しない。スペックルパターンを除去できる別の方法は,LED又はフィルタされた“白色”
光源のような低コヒーレンス光源を用いることである。
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C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
6.3.6.3
空間ビーム依存性の測定
光ファイバ依存性の測定と同様に,空間光ビームのスポット径及び開口数に対する依存性は,均一な大
面積検出器をもち,角度依存性が無視できる実用標準との比較によって評価できる。
スポット径及び開口数に対する依存性の組合せの問題に対処するのに,次の事項を評価すれば十分な場
合がある。
a) 指定する最小のスポット径,及び最小の開口数で励振することによる(校正条件における応答度に対
する)応答度の相対変化。
b) 指定する最大のスポット径,及び最大の開口数で励振することによる応答度の相対的変化。
6.3.7
コネクタアダプタ対依存性
この細分箇条では,光源からの反射に対する被校正器の依存性について記載する(例えば,光源及び光
入力端子との間のビーム経路中にある光コネクタ又はその他の機械的な部品)。反射には正反射又は拡散反
射があり得ることに留意する。
角度依存性及び表面反射が無視できる実用標準を用いて,応答度の相対変化を測定することが望ましい。
光ファイバは,校正で用いたものと同一とすることが望ましい。測定中,曲げに起因する光パワーレベル
の変化を避けるため,光ファイバの端を定位置に保持することが望ましい。使用する光源は,ファブリー
ペロー形干渉の影響を避けるため,高い可干渉性をもたない方がよい(6.3.8.2参照)。スペクトルバンド
幅が十分に広いことが望ましい(例えば,1 nm以上)。
ステップ1: 基準コネクタアダプタ対とともに,光源又は基準光ファイバからの基準ビーム形状に対し
て,実用標準及び被校正器の両方で光パワーを測定し,差を(数学的に)補正して0にす
る。
ステップ2: 上記手順を,指定する全てのコネクタアダプタ対に適用する。タイプA不確かさを低減さ
せるため,各接続を数回繰り返す。不確かさを決定するためには,ステップ1に対する応
答度の正及び負の最大変化を用いることが望ましい。不確かさには,実用標準との様々な
組合せの測定におけるタイプB不確かさも含めなければならない。このタイプB不確かさ
には,例えば,実用標準における反射を原因として生じるものがある。
6.3.2の最後の段落に従い,6.3.6.2に列記したような最大口径の光ファイバを用いて,依存性の測定が必
要な場合がある。大口径の光ファイバは,光学的基準面上に大きな像を作り,したがって,位置決め精度
の制限が,更に明確になる可能性がある。この場合,増加した依存性を記録することが望ましい。
6.3.8
波長依存性
6.3.8.1
一般事項
校正波長における応答度に対する分光応答度の相対変化を測定することが望ましい。この測定は,通常,
集光した連続スペクトル光源,及びスペクトル弁別器,例えば,モノクロメータ,又は多数の分光フィル
タを用いて行う。測定結果が正確であることを保証するためには,迷光,すなわち,選択した波長以外の
光の存在も評価することが望ましい。光源の中心波長及びスペクトルバンド幅も測定することが望ましい。
スペクトルバンド幅は狭いことが望ましい。スペクトルバンド幅が広いと,被校正器の波長依存性の急し
ゅん(峻)なカーブが関連して,誤った測定結果を生じることがある。スペクトルバンド幅が極端に狭い
と,ビーム経路に1個以上の光共振器が含まれる場合,光学干渉の問題,すなわち,くし(櫛)の歯状の
波長依存性の原因となることがあるので留意する。
ビーム形状は,波長依存性の決定に適したものであることが望ましい。レンズ及びアパーチャの組合せ
を使用して,光ファイバビームを代替してもよい。この場合,光学的基準面上でのスポット径及び位置が,
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C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
光ファイバ入力の際に得られるものと整合するように注意することが望ましい。また,光入力端子からの
後方反射によって,測定結果の不確かさが増えないように注意を払うことが望ましい。
測定は,置換法によって,実用標準と直接比較して実施することが望ましい。実用標準は,相対分光応
答度を校正しておくことが望ましい。
この測定は,比較的低い光パワーレベルで行うため,双方の光パワーメータのゼロ点調整が必要である。
測定器が,例えば,校正曲線,又はメモリ中に保存した補正表をもっている場合には,補正後の応答度か
らの相対変化を測定する。
温度変化は,波長依存性に大きい影響を及ぼすことがある。例えば,波長1 550 nmにおけるゲルマニウ
ムフォトダイオードの0 ℃での波長依存性は,室温での波長依存性よりもはるかに大きい。一般に,波長
依存性の不確かさは,最大の波長依存性,この場合は0 ℃での波長依存性に基づいて算出しなければなら
ない。
6.3.8.2
ファブリーペロー形干渉による波長依存性
狭いスペクトルバンド幅のレーザ(B≪1 nm)を使用する場合には,図7に示すように,分光応答度が
波長に対して急激に変化する場合がある。これは,通常,検出器までの光路中に形成されたファブリーペ
ロー共振器で生じる。ファブリーペロー共振器は,検出器の窓の両表面間,窓の一つの表面と検出器自体
との間,又は光ファイバを使用の場合は,光ファイバ端面とその他の表面との間に形成される。
図7−ファブリーペロー形干渉による応答度の波長依存性
図7では,極大極小間の変動は,∆dB=0.2 dB(∆%=4.6 %)に達し,影響が大きい。光学干渉に起因す
る標準不確かさは,正弦波パターンの標準偏差とし,式(36)となる。
%
int
Δ
1
1.6%
2
2
u=
×
=
······························································· (36)
6.3.9
スペクトルバンド幅依存性
スペクトルバンド幅依存性は,検出器の波長依存性の曲線形状に伴って増加する。指定したスペクトル
バンド幅の範囲内で,応答度の相対変化を光源のスペクトルバンド幅の関数として測定する。モノクロメ
ータを使用することで,可変なスペクトルバンド幅が得られる。波長依存性が無視できる実用標準で,実
24
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
際の光パワーレベルを測定することが望ましい。被校正器の分光応答度及び光源の分光分布が既知の場合
には,スペクトルバンド幅依存性も,数学的解析によって求めることが可能である。
6.3.10 偏光依存性
被校正器の偏光依存感度(PDR)は,異なる偏光状態において,光パワーメータの応答度測定を複数回
行うことによって評価する。ほぼ100 %偏光した安定な光源を使用するか,又は図8に示すような偏光子
を光源の後に入れて使用することが望ましい。偏光制御器は,固定した入力偏光状態を任意の偏光状態に
変換するために使用する。
図8−光パワーメータの偏光依存性の測定系
光源の光パワーの不安定性及び偏光制御器の損失変動は,被校正器の偏光依存性よりも十分に小さいこ
とが望ましい。これは,被校正器を,偏光依存感度が非常に小さい検出器と置き換えて確認することが望
ましい。
レーザ光源は,偏光状態が変動している光が後方反射する場合に出力光パワーが不安定となるので,光
源と偏光制御器との間に光減衰器又は光アイソレータの挿入を必要とする場合がある。
別のPDR測定方法であるマトリクス法は,JIS C 61300-3-2:2012で規定する偏光依存性損失(PDL)の
ミューラーマトリクス法を適用できる[3]。
6.3.11 その他の依存性
被校正器の種類によっては,その他のパラメータに対する依存性も存在することがある。これらは,校
正条件での応答度に対する,応答度の相対変化として求めることが望ましい。
一例としては,変調周波数及びデューティサイクルの範囲を規定した,強度変調光信号を動作条件に含
め,変調に起因するタイプB不確かさを評価してもよい。極端なデューティサイクルは,光検出器及び電
子回路のいずれか一方,又は両方を飽和させる場合があることに注意することが重要である。
7
非直線性の校正
7.1
一般事項
校正レベルから離れた光パワーレベルでの高精度測定,又は,損失若しくは利得といった相対計測を行
うには,光パワーメータの非直線性を校正することが望ましい。校正は,光パワーレベルを増減すること
で行うことが望ましい。これは光パワーメータの信号増幅器の各測定レンジの境界における非直線性を盛
り込むためで,測定レンジ切替による非直線性を検出すること,又は各測定レンジ境界の両側での測定結
果をできる限り含めることが目的である。検出器の非直線性に波長依存性があることに留意する。例えば,
インジウムガリウムひ素(InGaAs)検出器は,1 310 nm及び1 550 nmでは直線性があるが,850 nmでは
非直線性を示す可能性がある。
幾つかの校正方法が可能であるが,重ね合せ法は最も高精度で参照標準を必要としない基準試験法(自
己校正法)である。
全ての方法で,光パワーレベルが選択可能な光源を使用する。例えば,(安定化)レーザダイオード光源
と可変光減衰器とを組み合わせたものである。生成できる光パワーレベルは,規定の測定範囲をカバーす
S
Polarization
光パワーメータ
光源
偏光子
偏光制御器
25
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
ることが望ましい。測定中において,光入力端子の最大許容放射照度は,シングルモード光ファイバで励
振する条件下で,かつ,測定範囲の上限の光パワーで定義することが望ましい。
検出器の飽和光パワーレベルは,ビームの幾何学的形状に依存する。小さいスポット径の方が大きいス
ポット径よりも低い光パワーで,検出器を飽和させることがある。
極端な周囲温度では,非直線性が増す可能性がある。6.3.2の最後の段落に記載したように,幾つかの不
確かさは一つ以上の動作条件に依存する可能性があり,動作温度範囲の上下限で非直線性を追加測定して,
動作条件における不確かさの増加を記録することが必要な場合がある。
7.2
重ね合せ法に基づく非直線性の校正
7.2.1
一般事項
高精度な非直線性の校正は,重ね合せ法(重畳法ともいう。)で行うことができる[4] [5]。空間ビーム二
重開口法の光ファイバ版[6] [7]では,シングルモード光ファイバを使用してもよい。測定系の一例を,図9
に示す。光パワーを,シャッタを設けた二つの異なる経路に分け,被校正光パワーメータの前で再結合さ
せる。
図9−重ね合せ法に基づく非直線性の校正
光アイソレータ(反射の影響を抑えるため)をもつ,安定な分布帰還形(DFB)レーザを用いることが
できるが,絶対光パワー校正の手順と同様に,線幅を広げてコヒーレンスを適度に調整する。(マッハツェ
ンダ形の)干渉による強度変動を避けるため,測定系の二つの光路長を異なる長さ(DFBレーザの場合,
約100 m)にすることが望ましく,光ブランチングデバイスの未使用端は無反射終端しなければならない。
重ね合せ法は,挿入損失が大きい欠点がある。一般に,最初の光減衰器で約1.5 dB,最初の光ブランチン
グデバイスで0.5 dB,2番目の光減衰器がそれぞれ1.5 dB,及び再結合用の光ブランチングデバイスで約
3.5 dB,合計で約7 dBである。より高い光パワーで測定する場合は,光源と最初の光減衰器との間に[1 550
nm用のエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)のような]光増幅器を任意で挿入することができる。
7.2.2
手順
手順は,次による。
a) いずれの光路(それぞれ光路a,光路bとする)からでも光パワーメータで測定する光パワーが等し
くなるように,二つの光路の光減衰器を調整する。
b) 両方のシャッタを開き,同時に両方の光路からの総光パワーPab,iを測定する。
c) 光路bのシャッタを閉じ,光路aからの光パワーPa,iを測定する。
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C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
d) 光路aのシャッタを閉じ,光路bのシャッタを開け,光路bからの光パワーPb,iを測定する。
e) 個々の光パワーの測定値の和が総光パワーに等しくない場合は非直線性がある。この1区間の非直線
性の値は,式(37)によって算出する。
ab,i
i
10
a,i
b,i
10log
(dB)
P
NL
P
P
=
×
+
······················································· (37)
f)
最初の光減衰器で,光パワーを半分(10 log10 2≒3.01 dB)に減衰させ,総光パワーが前の区間の個々
の光パワーのレベルになるようにする。
g) 測定したいレンジ全域について,b)〜f)を繰り返す。
h) 最終的には,デシベル(dB)表記の1区間の非直線性の総和として全区間の非直線性を算出する。全
区間の非直線性は,(高次の項は無視して)非直線性を0とした基準光パワーレベルから起算して計算
する。
1
global
n
i
0
()
n
i
NL
P
NL
+
=
=−∑
(n=−1, −2, −3, …) ···························· (38)
global
0
() 0
NL
P=(基準光パワー)
global
n
i
1
()
n
i
NL
P
NL
=
=+∑
(n=1, 2, 3, …)
ここに, n<0: 基準光パワーよりも低い光パワーレベルを示す。
n>0: 基準光パワーよりも高い光パワーレベルを示す。
NLi: i番目の1区間の非直線性(Pabが基準光パワーに一致する区
間に対してi=0とする。)
以上の結果,表2で示すように,3.01 dBごとの区間で刻んだ光パワー範囲全体について,全区間の非直
線性のリストを得る。
表2−非直線性
i
Pa,i
(W)
Pb,i
(W)
Pa,i+Pb,i
(W)
Pab,i
(W)
NLi
(dB)
NLglobal(Pab,i)
(dB)
2
NL2
NL1+NL2
1
NL1
NL1
0
P0
NL0
0
−1
NL−1
−NL0
−2
NL−2
−NL0−NL−1
基準光パワーに対する最大の非直線性は,式(39)による。
(
)
max
global
max
(dB)
NL
NL
=±
······················································· (39)
非直線性校正の結果は,5.5に規定した,被校正器の校正証明書又は校正報告書に含めることができる。
必要ならば,NLmaxは,7.2.3で計算するように,適用できる不確かさとともに,別々に報告してもよい。
3 dBの光パワーの区間は,光パワーメータの信号増幅器のレンジ境界での非直線性を測定するには,刻
み幅が大きすぎることがある。この制約は,幾つかの基準光パワーから校正を開始するか,又は信号増幅
器のレンジ境界の両側で同じ光パワーレベルの測定を別に行うことによって,回避できることがある。
7.2.3
不確かさ
重ね合せ法における典型的な不確かさには,一連の三つの測定中に起こり得る全ての光パワー変動,例
えば,ドリフト又は反射戻り光の変化に敏感な光源揺らぎ,コヒーレンス長の長いレーザの場合に干渉で
27
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
生じる不安定性,並びに光パワーメータの偏光依存性及び分解能が含まれる。各区間でのこれらの誤差は
累積して,その後の区間で生じる誤差に加算する。
もう一つの不確かさは,各区間で各光路の光パワーが完全には同じにならないこと,及び次の区間の総
光パワーが,前の区間での各光路の光パワーに完全には一致しないことで生じる。各光路の光パワーが適
切に釣り合わないと,測定結果は信頼できないものとなる。このため,図9に示すように各光路でオプシ
ョンの光減衰器を使うことが望ましい(通常,シャッタは,光減衰器に含む。)。各々の光減衰器によって,
測定開始時に各光路の光パワーを等しくできる。このアプローチを活用した別の測定系として,それぞれ
第2,第3の光減衰器と直結した二つのレーザ光源を使う方法がある。この方法は,より高い光パワーで
測定を始められる利点があるが,光減衰器を各区間で調節するために被校正器との通信が必要となる。
最初に,関連する全ての標準不確かさの二乗和平方根をとって各区間ごとの1区間の非直線性に対する
合成標準不確かさu(NLi)を計算する。次に,全区間の非直線性の標準不確かさを,式(40)から求める。
global
i
(
)
(
)
uNL
nuNL
=
×
····························································· (40)
ここに,
n: 基準レベルから繰り返した3.01 dBごとの区間数
7.3
校正された光パワーメータとの比較に基づく非直線性の校正
7.3.1
一般事項
置換法によって,被校正器と参照標準器とを直接比較する測定方法も考えられる。参照光パワーメータ
で出力光パワーを測定した後,被校正器につなぎ換え,両方の測定器の測定結果を記録する。ここでの誤
差は,光減衰器の再現性,光減衰器の偏光依存性損失,光源の光パワーの安定性,及び参照光パワーメー
タの非直線性に起因する。参照光パワーメータの非直線性は,より高精度な方法で校正しておくことが望
ましい。
実用標準で測定を繰返し,測定中のドリフトを確認することが望ましい。低い光パワーレベルまで測定
を拡張するため,参照光パワーメータには低ノイズの検出器を使用するのがよい。
交互に測定する代わりに,図10のようにビームスプリッタ又は光ブランチングデバイスを用いて,被校
正器及び参照標準器を同時に測定することもできる。非対称な分岐比の光ブランチングデバイスを使用す
るか,又は第2の光減衰器を使用すれば,光パワー測定の範囲を拡大できる。光パワーレベル及び偏光変
動に依存するかを調査しなければならない。
図10−比較による非直線性の校正のための測定系
7.3.2
手順
手順は,次による。
a) 初段の減衰器で,必要な基準光パワーを設定する。
28
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
b) 参照光パワーメータPref,0及び被校正光パワーメータPDUT,0で光パワーをそれぞれ測定する。
c) 初段の減衰器で,光パワーを増加(又は減少)して参照光パワーメータPref,i及び被校正器PDUT,iで測
定した光パワーを記録する。
d) 非直線性を,式(41)によって計算する。
DUT,i
ref,i
i
10
10
DUT,0
ref,0
10log
10log
(dB)
P
P
NL
P
P
=
×
−
×
······································ (41)
e) 光パワー範囲をカバーするまで,ステップc)及びd)を繰り返す。
7.3.3
不確かさ
考えられる測定不確かさの要因を,次に示すが,網羅的ではない可能性がある。測定系及び手順に依存
して,追加の不確かさ要因の考慮が必要な場合がある。不確かさの計算及び言明は,附属書Aに規定する
数学的根拠によることが望ましい。
a) 直線性の標準器の非直線性(通常,重ね合せ法で校正する。)
b) 光源の不安定性(反射戻り光が,光源の不安定性を引き起こす可能性がある。)
c) 光の干渉(光源のコヒーレンス長は,反射点間の距離よりも小さいことが望ましい。)
d) 光伝送用部品の偏光依存性
e) 被校正器の分解能
f)
ビームスプリッタ又は光ブランチングデバイスを使用した場合は,分岐比の安定性
g) 手順によっては,光減衰器の再現性
7.4
光減衰器との比較に基づく非直線性の校正
非直線性の測定で最も簡単だが最も精度の低い方法は,校正済みの光減衰器で光パワーレベルを変えて
測定することである。ここで用いる光減衰器は,トレーサビリティの連鎖を取らなければならない。光減
衰器の校正は,それ自体,校正済みの光パワーメータの直線性に基づいているので,不確かさの計算には
注意が必要である。この方法は,2番目の光パワーメータを必要としない。その代わり,基準光パワーレ
ベルを,光減衰器の既知の減衰量を用いて計算することができる。主な誤差は,可変光減衰器の非直線性,
シングルモード光ファイバの場合は可変光減衰器のPDL,及び光源の光パワーの安定性から生じる。また,
光減衰器の再現性及び波長依存性にも留意することが重要である。それでも,高精度を必要としない場合
は,この方法は簡単であるので有益である。挿入損失が(光減衰器の損失だけだと)少ないので,他の方
法に比べて高い光パワー(光減衰器が直線性を維持できる最大入力光パワー)まで測定が可能である。
7.5
高光パワー測定のための光パワーメータの校正
ほとんどの光電検出器は,約10 mW超の光パワーで非直線性になる。より高い光パワーを測定できる検
出器は,通常,検出器の前に光減衰器を組み込んでいる。
高い光パワーでの絶対光パワー校正[8]は,広く利用可能とは限らない。そこで,高い光パワーまで光パ
ワーメータの非直線性を校正することが必要である。この文脈では,高い光パワーとは10 mWを超える光
パワーと定義する。幾つかの光伝送用部品は非線形効果を示す可能性があるので,7.2〜7.4に規定したの
と同じ測定系をそのまま使用できるとは限らない。校正の測定系に用いる全ての光伝送用部品(コネクタ,
光減衰器,光ブランチングデバイスなど)の高光パワーでの特性を調査することが望ましい。重ね合せ法
は,参照標準に頼らないという点で望ましいが,測定系の一光路における長尺光ファイバの使用は,高光
パワーでは非線形光学効果を引き起こす可能性があり,光パワーメータに見かけ上の非直線性を引き起こ
すことに留意する。
29
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
附属書A
(規定)
測定の不確かさ計算のための数学的基礎
A.1 一般事項
この附属書は,測定における不確かさの評価,合成及び報告について規定する。この附属書は,ISO/IEC
Guide 98-3:2008に基づいている。この附属書は,詳細な内容については,ISO/IEC Guide 98-3:2008を併読
しなければならない。
この規格では,測定の不確かさの評価方法を二つのタイプに区別している。タイプAは,同じ測定に対
する一連の繰返し測定を統計的に分析し,不確かさを評価する方法である。タイプBは,他の知識に基づ
いて,不確かさを評価する方法である。
A.2 タイプA評価の不確かさ
標準不確かさのタイプA評価は,同じ測定条件の下で,ある量を何回か独立に測定した場合に適用でき
る。
量Xについて,n回の独立な繰返し測定で得られたXkに対しての算術平均は,式(A.1)で算出する。
k
1
1
n
k
X
X
n
=
=∑
······································································ (A.1)
この平均は,その量の推定値として用いる。つまり,x=Xとする。この測定の実験標準偏差は,式(A.2)
で算出する。
(
)
1/2
2
k
1
1
()
1
n
k
sX
X
X
n
=
=
−
−
∑
·················································· (A.2)
ここに,
X: 測定値の算術平均
Xk: 一連の測定の測定サンプル
n: 測定の回数で,例えば,n≧10のような大きな数字を想定する。
推定値をxとするとき,タイプAの標準不確かさutypeA(x)は,式(A.3)で算出し,平均値の実験標準偏差
で表す。
()
typeA
()
()
sX
u
x
sX
n
=
=
···························································· (A.3)
A.3 タイプB評価の不確かさ
標準不確かさのタイプB評価は,一連の測定の統計的な分析以外の手段によって不確かさを評価する方
法である。ここでは,量の変動に関して得られるあらゆる情報に基づいた科学的な判断によって評価する。
量Xの推定値xが,製造業者の仕様,校正証明書,ハンドブック又は他の情報源から得られ,その引用
した不確かさU(x)が,標準偏差のk倍ある場合,標準不確かさu(x)は,単に,式(A.4)となる。
u(x)=U(x)/k ··········································································· (A.4)
量Xについて,上限値Xmax及び下限値Xminだけが評価できる場合,く(矩)形状の確率分布を仮定して,
標準不確かさは,式(A.5)で算出する。
(
)
max
min
MAX
,
()
3
X
xX
x
ux
−
−
=
·················································· (A.5)
30
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
出力推定値yに関する標準不確かさへの寄与のうち,入力推定値xに関する標準不確かさが要因となっ
て生じるものは,式(A.6)で算出する
u(y)=c×u(x) ·········································································· (A.6)
ここに,cは,入力推定値xに関する感度係数であって,これは,モデル関数y(x)の入力推定値xに関す
る偏導関数である。
y
c
x
∂
=∂ ·················································································· (A.7)
感度係数cは,出力推定値yが,入力推定値xの変化によってどの程度影響されるかを示す。感度係数
cは,式(A.7)で算出するか,又はモデル関数y(x)で入力推定値xが変化したときの出力推定値yの変化か
ら,数値計算でも評価できる。xの変化によって生じる出力推定値yの変化は,実験で求めるのがより適
切となる場合がある。
A.4 標準不確かさの合成
合成標準不確かさとは,個々の不確かさを集めて一つの量にまとめたものである。標準不確かさは,個々
の不確かさが統計上互いに独立であるとして,タイプA及びタイプB評価によって見積もった全ての不確
かさの二乗和平方根をとって合成する。
2
c
i
1
()
()
n
i
uy
uy
=
=∑
································································ (A.8)
ここに,
i: 個々の要因の番号
ui(y): それぞれの標準不確かさ
n: 不確かさの数
注記 この式では,最大の不確かさの1/10未満の不確かさは,二乗すると最大要因の寄与の1/100以
下となるので無視できる。
式(A.8)で求めた合成標準不確かさの量を基に,更に詳細に不確かさを計算する場合は,合成標準不確か
さucを式(A.8)に再代入することができる。ここに,ucは,部分的にはタイプAに由来しているが,タイ
プBの不確かさを示すものとして取り扱うことが望ましい。
A.5 結果の報告
校正報告書及び技術的なデータシートにおいて,合成標準不確かさは,適用できる信頼水準とともに拡
張不確かさの形で報告しなければならない。それぞれの補正係数又は偏差も報告しなければならない。拡
張不確かさUは,標準不確かさuc(y)に包含係数kを乗じることによって得る。
U=k×uc(y) ··········································································· (A.9)
約95 %の信頼水準(通常の信頼水準)においては,k=2となる。約99 %の信頼水準では,k=3となる。
上記のkの値は,ある条件の下で有効である(ISO/IEC Guide 98-3:2008参照)。その条件が満たされない
場合,これらの信頼水準を達成するには,より大きい包含係数を用いる。
31
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
附属書B
(参考)
直線目盛から対数目盛への変換不確かさ
B.1
デシベルの定義
デシベル(dB)は,ベルBの約数(1 dB=0.1 B)である。この単位は,光パワーレベルを対数目盛で表
した値として用いる。光パワーレベルは,常に基準光パワーP0に対する相対値として表す。
0
/
10
0
10log
(dB)
PP
P
L
P
=
×
························································· (B.1)
ここに,P及びP0は,同一の線形単位をもつものとする。
B.2
変換の相対的不確かさ
上記の定義と同様に,相対的不確かさUlin又は相対偏差は,デシベル(dB)で表すと,式(B.2)となる。
dB
10
%
10log(1
)
U
U
=
×
+
····························································· (B.2)
逆に,%表記の相対的不確かさUlinは,式(B.3)で表せる。
dB
10
%
10
1
100
U
U =
−
×
····························································· (B.3)
Ulinの値が小さい場合は,テイラー級数の第1項で近似できる。すなわち,
1
1
1
ln(1
)
n
n
n
x
x
n
+
∞
=
−
+
=∑
及び
10
ln()
log()
ln(10)
x
x=
································· (B.4)
であるから,式(B.5)が得られる。
1
dB
lin
lin
1
10
1
10
ln(10)
ln(10)
n
n
n
U
U
U
n
+
∞
=
−
=
≈
∑
········································ (B.5)
以上から,二つの有用な関係式(B.6)が得られる。
dB
lin
lin
dB
4.34
0.23
U
U
U
U
≈
×
⇔
≈
×
·············································· (B.6)
32
C 6186:2020 (IEC 61315:2019)
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[11] JIS C 6825 光ファイバ構造パラメータ試験方法−光学的特性
注記 対応国際規格:IEC 60793-1-43,Optical fibres−Part 1-43: Measurement methods and test
procedures−Numerical aperture measurement
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dependent loss in a single-mode fibre optic device
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注記 対応国際規格:IEC 60359:2001,Electrical and electronic measurement equipment−Expression of
performance
[18] JIS Q 17025 試験所及び校正機関の能力に関する一般要求事項
注記 対応国際規格:ISO/IEC 17025,General requirements for the competence of testing and calibration
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