C 6122-4-1:2013 (IEC 61290-4-1:2011)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 用語,定義及び略語 ·········································································································· 2
3.1 一般的事項 ··················································································································· 2
3.2 用語及び定義 ················································································································ 4
3.3 略語 ···························································································································· 7
4 装置······························································································································· 7
5 供試OFA ························································································································ 7
6 手順······························································································································· 8
7 データ分析 ······················································································································ 8
8 測定結果 ························································································································· 9
附属書A(参考)光増幅器における過渡応答現象······································································· 10
附属書B(参考)過渡利得応答へのスルーレート効果 ································································· 14
参考文献 ···························································································································· 17
C 6122-4-1:2013 (IEC 61290-4-1:2011)
(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般財団法人光産業技術振興協会(OITDA)
及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出
があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS C 6122の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 6122-1-1 第1-1部:パワーパラメータ及び利得パラメータ−光スペクトラムアナライザ法
JIS C 6122-1-2 第1-2部:パワーパラメータ及び利得パラメータ−電気スペクトラムアナライザ法
JIS C 6122-1-3 第1-3部:パワーパラメータ及び利得パラメータ−光パワーメータ法
JIS C 6122-3 第3部:雑音指数パラメータ
JIS C 6122-3-1 第3-1部:雑音指数パラメータ−光スペクトラムアナライザ法
JIS C 6122-3-2 第3-2部:雑音指数パラメータ−電気スペクトラムアナライザ試験方法
JIS C 6122-4-1 第4-1部:過渡パラメータ−二波長法を用いた利得パラメータ測定
JIS C 6122-4-2 第4-2部:過渡パラメータ−広帯域光源法を用いた利得パラメータ測定
JIS C 6122-5-1 第5-1部:光反射率パラメータ測定方法−光スペクトラムアナライザを用いた測定方
法
JIS C 6122-6 第6部:漏れ励起光パラメータ測定方法
JIS C 6122-7 第7部:波長帯域外挿入損失測定方法
JIS C 6122-10-1 第10-1部:マルチチャネルパラメータ−光スイッチ及び光スペクトラムアナライザ
を用いたパルス法
JIS C 6122-10-2 第10-2部:マルチチャネルパラメータ−ゲート付き光スペクトラムアナライザを用
いたパルス法
JIS C 6122-10-3 第10-3部:マルチチャネルパラメータ−プローブ法
JIS C 6122-10-4 第10-4部:マルチチャネルパラメータ−光スペクトラムアナライザを用いた補間法
JIS C 6122-11-1 第11-1部:偏波モード分散パラメータ−ジョーンズマトリクス固有値解析(JME)
法
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日本工業規格 JIS
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光増幅器−測定方法−
第4-1部:過渡パラメータ−
二波長法を用いた利得パラメータ測定
Optical amplifiers-Test methods-Part 4-1: Transient parameters-
Measurement of gain parameters using two-wavelength method
序文
この規格は,2011年に第1版として発行されたIEC 61290-4-1を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
また,エルビウム添加光ファイバ増幅器(EDFA)における過渡現象,及びその光ファイバ伝送システム
に与える影響に関する技術情報を附属書Aに,スルーレート効果に関する技術情報を附属書Bに記載する。
1
適用範囲
この規格は,EDFA及び光増幅器(OA)を含む光サブシステムの,二波長法による過渡パラメータ測定
方法を規定する。この規格を適用するOAは,希土類のドーパントを含むアクティブ光ファイバを使った
OA[光ファイバ増幅器(OFA)]である。これらの増幅器は商用のネットワークで広く普及している。
この規格は,EDFA過渡現象及びそれに関連するパラメータに関する一般的な背景情報を提供するとと
もに,次の過渡パラメータについて正確,かつ,信頼性のある測定を行うための標準的な試験方法につい
て規定する。
− チャネルの増設又は減設による過渡利得オーバシュート及びネット過渡利得オーバシュート
− チャネルの増設又は減設による過渡利得アンダシュート及びネット過渡利得アンダシュート
− チャネルの増設又は減設による利得オフセット
− チャネルの増設又は減設による過渡利得応答時定数(整定時間)
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 61290-4-1:2011,Optical amplifiers−Test methods−Part 4-1: Gain transient parameters−
Two-wavelength method(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
2
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JIS C 6121 光増幅器−通則
注記 対応国際規格:IEC 61291-1,Optical amplifiers−Part 1: Generic specification(IDT)
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用語,定義及び略語
3.1
一般的事項
飽和状態で動作するOFAへの入力光パワーが急激に変化した場合,増幅器の利得は,一般に,設定した
利得に戻るまで過渡応答を示す。この応答は,OFA内のアクティブ光ファイバの光学特性,及び自動利得
制御(AGC)の性能の両方に支配される。
入力光パワーの変化は,一般に,特定の伝送帯域内の高密度波長分割多重(DWDM)チャネルの一部を
減設又は増設した場合に発生することから,この箇条では,過渡応答を表すパラメータを定義する。立ち
上がり時間及び立ち下がり時間の定義を,図1に示す。
3
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a) チャネル増設における立ち上がり時間の定義
b) チャネル減設における立ち下がり時間の定義
注記1 EDFAへの入力光パワーの単位は,mWを用いることが望ましい。
注記2 変化量とは,初期入力光パワーレベルと最終入力光パワーレベルとの差を示す。
図1−立ち上がり時間及び立ち下がり時間の定義
チャネルを増減設する場合の,自動利得制御のOFAの過渡利得の挙動について,その特徴を記述すると
きに一般的に用いるパラメータを図2に示す。図2 a)は特に,チャネルを減設した場合の,ある一つの残
存チャネルの利得の時間依存性を示している。同様に,チャネルを増設した場合の,ある一つの既存チャ
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ネルの過渡利得の挙動を図2 b)に示す。主な過渡パラメータは,過渡利得応答時定数(整定時間),利得オ
フセット,ネット過渡利得オーバシュート及びネット過渡利得アンダシュートとなる。光信号が通過する
増幅器の段数が重なって,利得変動の応答時間及び振幅がネットワークの中で積み重なることを考えると,
過渡利得オーバシュート及び過渡利得アンダシュートは,通信事業者及びネットワーク機器製造業者
(NEM)にとって極めて重要である。適切に設計した光増幅器では,これらの過渡パラメータの値は極め
て小さい。
a) チャネル減設におけるOFAの過渡利得応答
b) チャネル増設におけるOFAの過渡利得応答
図2−OFAの過渡利得応答
3.2
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS C 6121によるほか,次による。
5
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3.2.1
残存チャネル(surviving channel)
チャネル減設後に残存するチャネル。
既存チャネル(pre-existing channel)
チャネル増設前に存在するチャネル。
[対応国際規格の“信号”に関する用語(残存信号及び既存信号)は,対応国際規格でも用いていない
ので,この規格では不採用とした。]
3.2.2
飽和信号(saturating signal)
(対応国際規格のこの用語は,対応国際規格でも用いていないので,この規格では不採用とした。)
3.2.3
チャネル減設(増設)レベル[drop (add) level]
(対応国際規格のこの用語は,対応国際規格でも用いていないので,この規格では不採用とした。)
3.2.4
立ち上がり時間(add rise time)
チャネル増設中に,入力光パワーが,初期入力光パワーレベルと最終入力光パワーレベルとの差の10 %
から90 %(線形表示)まで上昇するために要する時間[図1 a)参照]。
3.2.5
立ち下がり時間(drop fall time)
チャネル減設中に,入力光パワーが,初期入力光パワーレベルと最終入力光パワーレベルとの差の10 %
から90 %(線形表示)まで下降するために要する時間[図1 b)参照]。
3.2.6
初期利得(initial gain)
チャネル減設前の残存チャネルの利得,又はチャネル増設前の既存チャネルの利得。
3.2.7
最終利得(final gain)
チャネル減設後,十分な時間を経た後の(利得が安定した後の)残存チャネルにおける定常状態の利得,
又はチャネル増設後,十分な時間を経た後の(利得が安定した後の)既存チャネルにおける定常状態の利
得。
3.2.8
利得オフセット(gain offset)
初期状態と最終状態との間の利得の変化を表し,初期利得に対する最終利得の比をデシベル(dB)で表
した値。
注記 利得オフセットは,チャネルの増設及び減設両方の場合で,正又は負のいずれの値をとる場合
もある。
3.2.9
利得安定性(gain stability)
定常状態における,OFAのピークツーピークの利得変動幅。過渡事象に対する応答ではない。
3.2.10
過渡利得応答時定数,整定時間(transient gain response time constant,settling time)
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残存又は既存チャネルの利得が最終利得に達するために必要な時間。このパラメータは,過渡利得応答
を引き起こすチャネル減設又は増設の開始時間から,それぞれ残存又は既存チャネル利得が最終利得を中
心とする利得安定帯域内に最初に入るまでの時間を測定したものである。
3.2.11
過渡利得オーバシュート(transient gain overshoot)
次のいずれかの値。
− チャネル減設におけるOFAの,初期利得又は最終利得のどちらか小さい方に対する,過渡応答の間に
到達した残存チャネルの最大利得の比をデシベル(dB)で表した値。
− チャネル増設におけるOFAの,初期利得又は最終利得のどちらか小さい方に対する,過渡応答の間に
到達した既存チャネルの最大利得の比をデシベル(dB)で表した値。
注記 これを利得オーバシュートともいう。
3.2.12
ネット過渡利得オーバシュート(transient net gain overshoot)
次のいずれかの値。
− チャネル減設におけるOFAの,初期利得又は最終利得のどちらか大きい方に対する,過渡応答の間に
到達した残存チャネルの最大利得の比をデシベル(dB)で表した値。
− チャネル増設におけるOFAの,初期利得又は最終利得のどちらか大きい方に対する,過渡応答の間に
到達した既存チャネルの最大利得の比をデシベル(dB)で表した値。
ネット過渡利得オーバシュートは,過渡利得オーバシュートから利得オフセットを差し引いたもので,
増幅器の初期の定常状態と最終的な定常状態との間の利得の増減分を含まない,実質の過渡応答を表す。
注記 これをネット利得オーバシュートともいう。
3.2.13
過渡利得アンダシュート(transient gain undershoot)
次のいずれかの値。
− チャネル減設におけるOFAの,初期利得又は最終利得のどちらか大きい方に対する,過渡応答の間に
到達した残存チャネルの最小利得の比をデシベル(dB)で表した値。
− チャネル増設におけるOFAの,初期利得又は最終利得のどちらか大きい方に対する,過渡応答の間に
到達した既存チャネルの最小利得の比をデシベル(dB)で表した値。
注記 これを利得アンダシュートともいう。
3.2.14
ネット過渡利得アンダシュート(transient net gain undershoot)
次のいずれかの値。
− チャネル減設におけるOFAの,初期利得又は最終利得のどちらか小さい方に対する,過渡応答の間に
到達した残存チャネルの最小利得の比をデシベル(dB)で表した値。
− チャネル増設におけるOFAの,初期利得又は最終利得のどちらか小さい方に対する,過渡応答の間に
到達した既存チャネルの最小利得の比をデシベル(dB)で表した値。
ネット過渡利得アンダシュートは,過渡利得アンダシュートから利得オフセットを差し引いたもので,
増幅器が初期の定常状態と最終的な定常状態との間の利得の増減分を含まない,実質の過渡応答を表す。
注記 これをネット利得アンダシュートともいう。
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3.3
略語
この規格で用いる主な略語は,JIS C 6121によるほか,次による。
AGC
自動利得制御(automatic gain control)
AOM
音響光学変調器(acousto-optic modulator)
BER
ビット誤り率(bit error ratio)
DFB
分布帰還(distributed feedback)
DWDM 高密度波長分割多重(dense wavelength division multiplexing)
EDFA
エルビウム添加光ファイバ増幅器(erbium-doped fibre amplifier)
FWHM 半値全幅(full width half maximum)
NEM
ネットワーク機器製造業者(network equipment manufacturer)
NSP
ネットワークサービス業者(network service provider)
OA
光増幅器(optical amplifier)
OFA
光ファイバ増幅器(optical fibre amplifier)
OSNR
光信号対雑音比(optical signal-to-noise ratio)
SHB
スペクトルホールバーニング(spectral-hole-burning)
VOA
光可変減衰器(variable optical attenuator)
WDM
波長分割多重(wavelength division multiplexing)
4
装置
OFAの過渡応答特性の一般的な測定系を,図3に示す。
注記 実線は光信号の経路を表し,点線は電気信号の経路を表す。
図3−OFAの過渡応答特性の一般的な測定系
5
供試OFA
供試OFAは,標準条件で動作させる。供試OFAが反射光によってレーザ発振する可能性がある場合に
は,試験では供試OFAの前後に光アイソレータを用いることが望ましい。光アイソレータを用いることに
よって,信号の不安定性及び測定の不確さが最小限に抑えられる。
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手順
図3に示す測定系では,波長がおよそ1 nm離れている二つの分布帰還形(DFB)レーザの出力を供試
OFAに信号光として入射する。各チャネルは,光可変減衰器(VOA)で所望の入力光パワーに調整する。
チャネル増減設をシミュレーションするため,光変調器をパルス発生器で駆動し,オン・オフのスイッチ
とする。供試OFAに信号光を入射する前に,二つの光チャネルを同じ光ファイバに結合する。帯域通過フ
ィルタ,光検出器及びオシロスコープを,供試OFAの出力側に接続する。帯域通過フィルタで残存チャネ
ルを選び,その過渡応答を光検出器及びオシロスコープで測定する。図2に示す波形に類似した波形が,
オシロスコープに表示される。
供試OFAの入力でのチャネル減設をシミュレーションするために,二つのレーザを,その合計出力パワ
ーが供試OFAの標準入力光パワー(例えば,1 dBm)と同じになるように設定する。この場合,−2 dBm
出力の2個のレーザは,それぞれ1チャネル当たり−15 dBm出力の20個の光チャネルに相当する。パル
ス発生器が光変調器をオフに切り替えた時点で,2番目のレーザ出力は完全に抑制されて,供試OFAに入
力するチャネル数が変化することに相当する。例えば,一つのレーザをオフに切り替えた場合,3 dBの減
設,すなわち供試OFAに入力する チャネル数を40チャネルから20チャネルに減少させるシミュレーシ
ョンとなる。同様に,光変調器をオンに切り替えると,二つ目のレーザが追加され,3 dBの増設,すなわ
ち供試OFAに入力するチャネル数を20チャネルから40チャネルに増加させたシミュレーションとなる。
他の条件の過渡応答測定の場合には,VOAを調整して,条件に応じた適切な入力光パワーを設定すること
ができる。
指定の動作条件及び仕様に従って,幾つかの条件における過渡応答測定を実施できる。また,表1に示
すような様々なチャネル増減設条件についても,測定することができる。これらの測定は,一般には幅広
い入力光パワー範囲にわたって実施する。
表1−過渡応答測定のためのチャネル増設及び減設条件の例
条件
総チャネル数
既存又は残存
チャネル数
増設又は減設する
チャネル数
20 dBの増減設
100
1
99
16 dBの増減設
40
1
39
13 dBの増減設
40
2
38
10 dBの増減設
40
4
36
6 dBの増減設
40
10
30
3 dBの増減設
40
20
20
7
データ分析
過渡応答測定の結果を,次のパラメータで示す。
− チャネルの増設又は減設による過渡利得オーバシュート及びネット過渡利得オーバシュート
− チャネルの増設又は減設による過渡利得アンダシュート及びネット過渡利得アンダシュート
− チャネルの増設又は減設による利得オフセット
− チャネルの増設又は減設による過渡利得応答時定数(整定時間)
これらのパラメータは,図2で示すとおり,オシロスコープの表示から読み取ることができる。
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測定結果
一般的な測定条件におけるCバンドEDFAの典型的な測定条件及び過渡応答測定の典型的な結果の例を,
表2に示す。この測定条件には,利得,残存チャネルの波長,入力光パワー,過渡事象の種類(3 dBのチ
ャネル減設,1 dBのチャネル増設など)及び種々の過渡パラメータを含む。供試OFAの過渡応答特性を
評価するために,使用者は,供試OFAのダイナミックレンジ特性に適する測定条件を選択する。
過渡パラメータの典型的な値を,表2の最終行に記載する。
表2−CバンドEDFAの過渡応答測定の典型的な結果(及び書式)の例
増幅器の利得 dB
既存又は残存チャネル波長 nm
過渡事象
入力
光パワー
dBm
ネット過渡利得
オーバシュートdB
ネット過渡利得
アンダシュート
dB
過渡利得応答
時定数
μs
利得
オフセット
dB
3 dBのチャネル
増設又は減設
−4
0.5
0.2
10
−0.2
x dBのチャネル
増設又は減設
典型的な値
1未満
0.5未満
100未満
0.5未満
10
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附属書A
(参考)
光増幅器における過渡応答現象
光パワーの過度応答は,ネットワークの光パワーレベルをサブミリ秒の時間スケールで変動させる。こ
れは,チャネル数の変化,受動損失変動及びネットワーク保護スイッチの切替えなどで起こる。動的なネ
ットワーク環境においては,サービス品質の劣化を防ぐために,このような光パワー変動を光増幅器で補
償する必要がある。例えば,ネットワークを再構成する場合,EDFA入力におけるDWDMチャネル数が突
然減少すると,マイクロ秒の時間スケールで光増幅器の反転分布が増加し,利得が増大する。この利得変
化は,ネットワークサービス業者(NSP)にとっては有害である。すなわち,NSPのネットワークに最適
化された利得レベルで運用することができなくなり,潜在的にサービス品質に影響を与えるからである。
サービス品質の劣化は,典型的にはビット誤り率(BER)の増大として現れる。チャネルパワーの減少は
光信号対雑音比(OSNR)を減少させる。一方,光パワーの増大は,伝送に用いる光ファイバの非線形効
果を引き起こし,増幅された入力信号のショット雑音による信号ショット雑音係数Fshot,sigの増大をもたら
すため,劣化の影響が大きくなる。
入力光パワー,励起光パワー及び光増幅器の反転レベルなどの要素が,EDFAの利得を決定する。EDFA
の反転レベルは,入力信号光にエネルギーを与えるエルビウム原子の割合,すなわち光利得に寄与するエ
ルビウム原子の割合で決まる。一般的に,励起光パワーが増加すると反転レベルは上昇し,入力光パワー
が増加すると反転レベルは低下する。EDFAへ入力するチャネルを増設するとEDFAへ入力する光パワー
が増加するので,反転分布のレベルを維持するために励起光パワーを増加させてチャネル当たりの利得を
維持する必要がある。光ネットワークのパフォーマンスを最適化するために,チャネル当たりの利得を一
定に保つことが重要である。同様に,EDFAへ入力するチャネルを減設した場合,残存チャネルごとの利
得を一定に維持するために励起光パワーを速やかに低減する必要がある。
励起光源電流を調整することで,EDFAの利得を制御することができる。励起光源制御の基本的な構成
を,図A.1に示す。この構成には,信号タップ及びモニタフォトダイオードによるEDFAの入力及び出力
光パワーの測定を含む。EDFAにおける自然放出光寿命程度の時間スケールで行う励起光源制御が初期に
報告されている。低周波数制御ループを用いて,低周波数のフィードフォワード補償を行う研究結果があ
る。エルビウムの自然放出光寿命よりはる(遙)かに短い時間スケールで励起光パワーを制御することで,
残存チャネルの光パワー変動を抑制できることを,図A.1に示す。減設チャネルを遮断した後の遅延時間
の関数として残存チャネルの光パワーを計測し,必要な応答時間を求めている。その後,残存チャネルの
利得を一定に保つために,第2段目の増幅器の励起光パワーを適切に減少させる。信号光パワー及び励起
光パワーがそれぞれ変化する時間スケールは同程度であり,信号光パワーの変動から励起光パワーを減少
させるまでの遅延時間が十分に短い場合は,残存チャネルの光パワー変動を任意に制限することができる
ということを,実験で明らかにしている。例えば,数マイクロ秒の遅延で励起光パワーを制御すれば,出
力光パワー変動は無視できる程度になるということが,図A.1の右下の図に示されている。これは,標準
的な励起状態において,励起光パワーの調整を短時間で決定することができれば,残存チャネルの変動を
抑制するのに十分な速度で励起光パワーを低減できるということを示している。このような測定結果は,
チャネルを減設した場合,残存チャネルの光パワー変動を最小にする励起光パワー制御における制御系の
応答速度は数十マイクロ秒より速くなければならないことを示している。
11
C 6122-4-1:2013 (IEC 61290-4-1:2011)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 半分のチャネルを周期的に増設又は減設している。全てのEDFAにおいて励起制御した場合,及び励起制御し
ない場合について,残存チャネルの相対光パワーを右の図に示す。
図A.1−五つのEDFAを四つの光ファイバスパンで接続した場合のEDFA励起制御
光伝送システムに用いる場合は,EDFAは飽和モードで動作する。EDFAにおける利得飽和は波長に対
して極めて均一である。これは,複数チャネルのWDMシステムでは,一旦,チャネルの一つの利得が分
かれば,他のチャネルの利得は直接計算できることを意味する。この結果は,EDFAモデルの均一性から
得られる。EDFAの利得スペクトルは非常に均一であるが,僅かの不均一性が観察されている。不均一広
がりが,光増幅器の利得スペクトルにスペクトルホールバーニング(SHB)を引き起こす。厳密な差分測
定技術を用いることで,EDFAにおけるSHBを室温で測定している。異なる飽和レベルにおけるSHBの
測定結果を,図A.2に示す。この図は,FWHM(半値全幅)8 nmのスペクトルホールの存在を示している。
小信号利得に対する利得圧縮が1 dB増加するごとに,0.027 dBの割合で比例してホールの深さが増えてい
る。10 dBの利得圧縮に対しては,SHBによって利得スペクトルに0.28 dBの落ち込みを観察している。
SHBは波長依存性が強く,波長1 532 nmでは波長1 551 nmの4倍の大きさであることが示されている。
飽和が生じる波長に対するスペクトルホール幅の依存性を,図A.3に示す。飽和する波長が長いほど,ス
ペクトルホールの半値全幅は増大する。
利得制御オン
時間(ms)
エルビウム添加
光ファイバ
利得制御回路
1スパン,制御オフ
2スパン,制御オフ
3スパン,制御オフ
4スパン,制御オフ
残
存
チ
ャ
ネ
ル
の
相
対
光
パ
ワ
ー
(
d
B
)
残
存
チ
ャ
ネ
ル
の
相
対
光
パ
ワ
ー
(
d
B
)
4スパン,320 km伝送後の残存チャネルの光パワー
利得制御オフ
時間(ms)
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C 6122-4-1:2013 (IEC 61290-4-1:2011)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図A.2−様々な利得圧縮におけるEDFAスペクトルホールの深さ
図A.3−異なる波長におけるEDFAスペクトルホールの深さ
SHB効果は,長距離光伝送システムの利得形状に影響を与える。この効果は,システムの各WDMチャ
ネルが,スペクトルホールの帯域内に含まれる近隣チャネルの利得を減少させるが,離れたチャネルには
大きな影響を与えない。したがって,利得スペクトルを評価する場合は,チャネル間隔がスペクトルホー
ルの帯域幅より狭い多波長入力信号を用いることが重要である。一つの光増幅器におけるSHBの影響は
波長(nm)
利
得
差
(
0
.1
d
B
/目
盛
)
波長(nm)
利得圧縮
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C 6122-4-1:2013 (IEC 61290-4-1:2011)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
0.2 dBから0.3 dB程度と小さいが,長距離又は海底伝送システムのように光増幅器を多数個直列に接続し
た場合は,互いに足し合わさり,スペクトル全体で相当目立つ変化を引き起こす可能性がある。9 300 km
を超える長距離伝送では,SHBの効果を十分に考慮しなければならない。SHBはチャネルパワーの発散を
軽減する効果があり,WDMシステムに良い意味で影響を与えており,そのため,システム設計に含める
必要がある。
注記 SHBが発生する波長域では信号の利得が減少するので,SHBが発生していない波長域に存在す
る信号に対して利得の偏差が増大する。そのため,SHBは抑圧しなければならない効果と考え
るのが一般的である。
しかし,多数のEDFAを直列に接続する長距離伝送システムにおいてWDM伝送を考えた場
合,直列に接続するEDFAの利得リップルの波長依存性が同じだと,EDFAの利得リップルが
段数ごとに加算される。その結果,利得リップルが発生する波長域ではチャネル当たりの光パ
ワーが平均出力から逸脱する。この場合,利得リップルが正の方向で加算される波長における
利得は,SHBの効果によって,段数分の増幅器の利得リップルを加算して与えられる利得より
も減少する。一方,光パワーに比例してSHBのホールの深さが大きくなるため,利得リップル
が正の方向で加算される波長におけるSHBによる利得低下と比較して,利得リップルが負の方
向で加算される波長においてはSHBによる利得低下は小さくなる。結果として,SHBの効果
がない場合の利得の重ね合わせよりも,SHBが加わった方が,利得リップルによる利得偏差が
圧縮される。
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附属書B
(参考)
過渡利得応答へのスルーレート効果
B.1
入力光パワーの立ち上がり時間及び立ち下がり時間の重要性
チャネルを増設又は減設した場合には,過渡利得を測定する間に,入力光パワーがどの程度速く変化し
たかを考慮する必要がある。EDFAの利得制御は,一般に,入出力レベルの光パワーモニタと,励起レー
ザの電流を制御する励起光パワー調整によって行う。附属書Aに記載するとおり,チャネル増設又は減設
においては,光学的な設計と制御アルゴリズムとが,利得の過渡応答に影響を与える。さらに,入力光パ
ワーのスルーレート(時間的変化率)も,利得の過渡応答に影響を与える。
EDFAの入力光パワーがゆっくりと変化した場合,EDFAの素早い利得制御手法によって,過渡利得応
答を抑制できる場合がある。穏やかな傾斜の入力光パワー変動の場合には,励起光パワーの調整プロセス
によって,過渡利得応答を最小化できる。したがって,EDFAの過渡応答は抑制されて小さい過渡利得応
答になる。
EDFAの入力光パワーがステップ入力のように急激に変動した場合,EDFAの利得制御手法は急激な入
力光パワー変動に伴う過渡利得応答を抑制するには十分でないため,過渡利得応答を抑制できない場合が
ある。結果としてEDFAの過渡応答が増加する。
B.2
測定データ
チャネル増設における立ち上がり時間,及びチャネル減設における立ち下がり時間(以下,立ち上がり
時間及び立ち下がり時間という。)の様々な条件での測定データを,一般的な実験データとともに示す。16
dBのチャネル増減設条件での過渡利得応答を,1段のEDFAの場合について評価する。過渡利得応答に対
する様々な立ち上がり時間及び立ち下がり時間の条件の影響を評価するために,立ち上がり時間及び立ち
下がり時間を,10 μsから1 000 μsまで変化させる。
測定系を,図3に示す。この実験では,残存チャネルの波長及び増減設チャネルの波長は,それぞれ1 561
nm及び1 545 nmである。光変調器として音響光学変調器(AOM)を用いる。立ち上がり時間及び立ち下
がり時間は,任意の信号発生器を用いて,10 μsから1 000 μsまでの値に調整する。パルス発生器の出力は,
AOMの入力端子に接続する。過渡利得応答及び安定状態での利得応答を定量化するために,過渡利得応
答は,オシロスコープで記録する。表B.1は,様々な立ち上がり時間及び立ち下がり時間条件での過渡利
得応答をまとめたものである。ここで,正の値は,チャネル減設における過渡利得オーバシュートを意味
し,負の値は,チャネル増設における過渡利得アンダシュートを意味する。過渡利得応答のオーバシュー
ト値及びアンダシュート値のプロットを,図B.1に示す。
立ち上がり時間及び立ち下がり時間が増加すると,過渡利得応答が緩和されることが,図B.1から分か
る。図B.2及び図B.3は,10 μsの立ち上がり時間及び立ち下がり時間並びに1 000 μsの立ち上がり時間及
び立ち下がり時間の場合の過渡利得応答を示している。
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表B.1−様々な立ち上がり時間及び立ち下がり時間での過渡利得応答(16 dBのチャネル増設又は減設)
残存チャネル又
は既存チャネル
の波長
λ1
nm
増減設チャネル
の波長
λ2
nm
立ち上がり時間
又は
立ち下がり時間
μs
過渡利得応答
利得オフセットの
絶対値
dB
16 dBの
チャネル増設
dB
16 dBの
チャネル減設
dB
1 561
1 545
10
−0.76
0.74
0.29
50
−0.76
0.58
100
−0.63
0.52
1 000
−0.56
0.29
図B.1−様々なスルーレートでの過渡利得応答
図B.2−16 dBのチャネル増減設(立ち上がり時間及び立ち下がり時間:10 μs)
既存チャネル出力
過渡利得応答
全入力光パワー
全入力光パワー
過渡利得応答
残存チャネル出力
a) 16 dB増設の場合(立ち上がり時間:10 μs)
b) 16 dB減設の場合(立ち下がり時間:10 μs)
チャネル増設における立ち上がり時間,チャネル減設における立ち下がり時間(μs)
チャネル増設条件でのアンダシュート
チャネル減設条件でのオーバシュート
過
渡
利
得
応
答
(
オ
ー
バ
シ
ュ
ー
ト
,
ア
ン
ダ
シ
ュ
ー
ト
)(
d
B
)
16
C 6122-4-1:2013 (IEC 61290-4-1:2011)
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図B.3−16 dBのチャネル増減設(立ち上がり時間及び立ち下がり時間:1 000 μs)
既存チャネル出力
残存チャネル出力
過渡利得応答
過渡利得応答
全入力光パワー
全入力光パワー
a) 16 dB増設の場合(立ち上がり時間:1 000 μs)
b) 16 dB減設の場合(立ち下がり時間:1 000 μs)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
JIS C 6122-1-1 光増幅器−測定方法−第1-1部:パワーパラメータ及び利得パラメータ−光スペクトラ
ムアナライザ法
注記 対応国際規格:IEC 61290-1-1,Optical amplifiers−Test methods−Part 1-1: Power and gain
parameters−Optical spectrum analyzer method(IDT)
JIS C 6122-1-2 光増幅器−測定方法−第1-2部:パワーパラメータ及び利得パラメータ−電気スペクト
ラムアナライザ法
注記 対応国際規格:IEC 61290-1-2,Optical amplifiers−Test methods−Part 1-2: Power and gain
parameters−Electrical spectrum analyzer method(IDT)
JIS C 6122-1-3 光増幅器−測定方法−第1-3部:パワーパラメータ及び利得パラメータ−光パワーメー
タ法
注記 対応国際規格:IEC 61290-1-3,Optical amplifiers−Test methods−Part 1-3: Power and gain
parameters−Optical power meter method(MOD)
JIS C 6122-3-1 光増幅器−測定方法−第3-1部:雑音指数パラメータ−光スペクトラムアナライザ法
注記 対応国際規格:IEC 61290-3-1,Optical amplifiers−Test methods−Part 3-1: Noise figure parameters
−Optical spectrum analyzer method(IDT)
JIS C 6122-3-2 光増幅器−測定方法−第3-2部:雑音指数パラメータ−電気スペクトラムアナライザ試
験方法
注記 対応国際規格:IEC 61290-3-2,Optical amplifiers−Test methods−Part 3-2: Noise figure parameters
−Electrical spectrum analyzer method(IDT)
JIS C 6122-4-2 光増幅器−測定方法−第4-2部:過渡パラメータ−広帯域光源法を用いた利得パラメー
タ測定
注記 対応国際規格:IEC 61290-4-2,Optical amplifiers−Test methods−Part 4-2: Gain transient parameters
−Broadband source method(IDT)
Emmanuel Desurvire, Erbium-Doped Fiber Amplifiers, John Wiley & Sons, (1994).
P. C. Becker, N. A. Olsson and J. R. Simpson, Erbium-Doped Fiber Amplifiers: Fundamentals and Technology,
Academic Press, (1999).
Emmanuel Desurvire, Dominique Bayart, Bertrand Desthieux and Sebastien Bigo, Erbium-Doped Fiber
Amplifiers, Device and System Developments, John Wiley & Sons, (2002).
J. L. Zyskind, Jonathan A. Nagel and Howard D. Kidorf, “Erbium-Doped Fiber Amplifiers for Optical
Communications”, pp. 13-68 in Optical Fiber Telecommunications IIIB, edited by Ivan Kaminow and
Thomas Koch, Academic Press (1997).
Douglas M. Baney, “Characterization of Erbium-Doped Fiber Amplifiers”, Chapter 13, pp. 519-595 in Fiber Optic
Test and Measurement edited by Dennis Derickson, Prentice Hall, New Jersey, (1998).
Atul Srivastava and Yan Sun, “Advances in Erbium-Doped Fiber Amplifiers”, Chapter 4, pp.174-212 in Optical
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Atul Srivastava and Yan Sun, “Erbium Doped Fiber Amplifiers for Dynamic Optical Networks”, Chapter 12, pp.
181-203 in Guided Wave Optical Components and Devices edited by Bishnu P. Pal, Elsevier Academic Press,
San Diego, (2006)