C 4608:2015
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 使用状態························································································································· 6
4.1 常規使用状態 ················································································································ 6
4.2 特殊使用状態 ················································································································ 6
5 定格及び性能 ··················································································································· 6
5.1 定格 ···························································································································· 6
5.2 性能 ···························································································································· 6
6 構造······························································································································· 7
6.1 構造一般 ······················································································································ 7
6.2 塗装及びめっき ············································································································· 8
7 試験······························································································································· 8
7.1 試験の種類 ··················································································································· 8
7.2 形式試験 ······················································································································ 8
7.3 受渡試験 ······················································································································ 8
7.4 試験条件 ······················································································································ 8
7.5 試験方法 ······················································································································ 9
8 製品の呼び方 ·················································································································· 12
9 表示······························································································································ 12
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(2)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本
電機工業会(JEMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を
改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格で
ある。
これによって,JIS C 4608:1991は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
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6.6 kVキュービクル用高圧避雷器
Surge arresters for 6.6 kV cubicle type unit substation
序文
この規格は,1974年に制定され,その後3回の改正を経て今日に至っている。前回の改正は1991年に
行われたが,その後の国内の使用条件・使用実績に対応するために改正した。
なお,対応国際規格は現時点で制定されておらず,この規格に規定する避雷器の定格事項及び保護特性
は,国内の使用条件及び使用実績に基づいて規定している。
1
適用範囲
この規格は,JIS C 4620に規定する公称電圧6.6 kV及び定格周波数50 Hz又は60 Hzのキュービクル式
高圧受電設備に用いる公称放電電流2 500 A又は5 000 Aの,酸化亜鉛形直列ギャップ付避雷器(以下,“高
圧避雷器”という。)について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 4620 キュービクル式高圧受電設備
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
避雷器に関する用語
3.1.1
避雷器(surge arrester)
雷,回路の開閉などに起因する過電圧の波高値がある値を超えた場合,放電することによって過電圧を
制限して電気施設の絶縁を保護し,かつ,続流を短時間のうちに遮断して,系統の正常な状態を乱すこと
なく原状に復帰する機能をもつ装置。一切のギャップを使用しないギャップレス避雷器と何らかのギャッ
プを使用するギャップ付避雷器とがある。
3.1.2
酸化亜鉛形直列ギャップ付避雷器(surge arrester with series gap)
直列ギャップ及び非直線抵抗特性をもつ酸化亜鉛素子を磁器がい管などの絶縁容器に収容した避雷器。
3.1.3
直列ギャップ(series gap)
酸化亜鉛素子と直列に結ばれる単一又は複数個の直列の組合せから成る火花ギャップで,常時は実質的
2
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に避雷器回路を開き,過電圧印加時に火花放電によってその回路を閉じ,その後酸化亜鉛素子で制限され
た続流を遮断する作用を行う避雷器の構成部分。
3.1.4
酸化亜鉛素子(non-linear metal-oxide resistor)
酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする焼結体で,その非直線電圧電流特性によって,放電時は大電流を通過
させて端子間電圧を制限し,放電後は原状に復帰する作用を行う避雷器の構成要素。
3.1.5
公称放電電流(nominal discharge current)
避雷器の保護性能及び復帰性能を表現する雷インパルス放電電流の規定値。
3.1.6
定格電圧(rated voltage)
電圧を避雷器端子間に印加した状態で,指定の単位動作責務を指定の回数,反復遂行できる電圧値。
3.1.7
連続使用電圧(continuous operating voltage)
避雷器端子間に連続して印加できる電圧。
3.1.8
過電圧(over-voltage)
通常の運転状態における最大商用周波電圧を超える電圧。
3.1.9
放電(discharge)
過電圧が避雷器端子間に加わったときに,避雷器内部を通して電流を流す作用。
3.1.10
放電電流(discharge current)
避雷器が放電するときの通電電流。
3.1.11
続流(follow current)
放電現象が実質的に終了した後,引き続き電力系統から供給されて避雷器に流れる電流。
3.2
試験一般に関する用語
3.2.1
インパルス電圧(impulse voltage)
過渡的に短時間(通常,マイクロ秒単位からミリ秒単位程度)出現する電圧で,原点から急激に波高値
に達し,それ以後,緩やかに降下する電圧。図1に示すように,波高値,極性及び波形によって表示する。
また,その表示は±T1/T2 μsで表す。
3
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O1
規約原点(波頭における30 %波高点Aと90 %
波高点Bとを結ぶ直線が時間軸と交わる点)
Q1,Q2
半波高点
P
波高点
UCF
波高値
UCF/T1 規約波頭しゅん度
T1
規約波頭長
T2
規約波尾長
注記 “規約”という用語を用いる理由は,実際に雷インパルスが発生すると,原点,波頭長,波頭しゅん度など画
一的に決定することが困難になる場合があるからで,それぞれに“規約”を付けて表示する。ただし,規約で
あることが明らかな場合には,一般的に“規約”の用語は省略する。
図1−規約によるインパルス電圧
3.2.2
インパルス電流(impulse current)
過渡的に短時間出現する電流。図2に示すように,波高値,極性及び波形によって表示する。また,そ
の表示は±T1/T2 μsで表す。
O
原点
O1
規約原点(波頭における10 %波高点Aと90 %
波高点Bとを結ぶ直線が時間軸と交わる点)
Q1,Q2
半波高点
P
波高点
ICF
波高値
ICF/T1
規約波頭しゅん度
T1
規約波頭長
T2
規約波尾長
図2−規約によるインパルス電流
4
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3.2.3
標準雷インパルス電圧(standard lightning impulse voltage)
雷インパルス電圧試験に用いる ±1.2/50 μs波形の電圧。
3.2.4
標準雷インパルス電流(standard lightning impulse current)
雷インパルス電流試験に用いる ±4/10 μs及び ±8/20 μs波形の電流。
3.2.5
形式試験(type test)
ある形式の避雷器の保護性能,動作責務などに関する諸性能が,この規格を満足するか否かを検証する
ための試験。
3.2.6
受渡試験(routine test)
形式試験に合格した避雷器の性能を個々に検証するための試験。
3.3
避雷器特性及び試験方法に関する用語
3.3.1
商用周波放電開始電圧(power-frequency sparkover voltage)
避雷器端子間に商用周波電圧を印加したときに波高値付近において直列ギャップで火花放電が起こるな
ど,実質的に避雷器に電流が流れ始める最低の商用周波電圧。実効値で表示する。
3.3.2
インパルス放電開始電圧(impulse sparkover voltage)
避雷器端子間にインパルス電圧が印加された避雷器が放電する場合,その初期において,放電電流が十
分に形成され,端子間電圧の降下が始まる以前に達し得る端子間電圧の最高瞬時値(図3のEs参照)。
5
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a)
b)
時間尺度を引き伸ばしたもの
Es インパルス放電開始電圧
Ia 放電電流波高値
ea
(α点以後) 制限電圧
Ts インパルス放電開始までの時間
Ea 制限電圧波高値
e0 原電圧(避雷器が放電しない場合の端子間電圧)
ia
放電電流
注記 b)はa)の時間軸を引き伸ばした波頭部分の拡大図を示す。
図3−避雷器放電時の端子間電圧及び放電電流の例
3.3.3
放電開始電圧時間特性,V−t特性(impulse sparkover voltage versus time characteristics)
一定極性・一定波形で波高値の異なる種々の電圧を印加して避雷器を放電させた場合の,放電開始電圧
と,放電開始までの時間との関係。
3.3.4
制限電圧(residual voltage)
避雷器の放電中,放電電流の波形及び波高値によって決まる,避雷器端子間に発生する電圧(図3のea
参照)。制限電圧の規定値は,波高値(Ea)で表示する。
3.3.5
雷サージ動作責務試験(lightning surge operating duty test)
実系統における動作状態を模擬して行うために,規定電圧の電源に接続した避雷器が,雷サージ過電圧
によって放電し,規定の放電電流を,規定の回数反復遂行できることを検証する試験。
3.3.6
放電耐量(current impulse withstand capability)
避雷器が障害を起こすことなく,規定の回数流すことができる規定の波形の放電電流波高値の最大限度。
6
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4
使用状態
4.1
常規使用状態
常規使用状態とは,次の全ての各項を満足する使用状態をいう。特に指定がない限り,高圧避雷器は,
常規使用状態で使用する。
a) 高圧避雷器の周囲温度が−20〜+40 ℃の範囲内。
b) 標高が1 000 m以下。
c) 最高系統電圧が,高圧避雷器の定格電圧以下。
4.2
特殊使用状態
特殊使用状態とは,次のいずれかの事項に該当する使用状態をいう。高圧避雷器を特殊使用状態で使用
する場合は,受渡当事者間の協定による。
a) 4.1に規定する以外の状態で使用する場合。
b) 異常な振動,曲げ荷重又は衝撃を受ける条件。
c) キュービクル内部が導電性じんあい汚損を受ける条件。
d) 保護する機器の絶縁強度から,特別な性能を必要とする条件。
e) その他,特殊な条件の下で使用する場合。
5
定格及び性能
5.1
定格
5.1.1
定格電圧
定格電圧は,8.4 kVとする。
5.1.2
定格周波数
定格周波数は,50 Hz又は60 Hzとする。
5.1.3
公称放電電流及びその波形
公称放電電流は,2 500 A又は5 000 Aとし,その波形は,8/20 μsとする。
5.1.4
連続使用電圧
連続使用電圧の標準値は,6.9/3 kVとする。
5.2
性能
5.2.1
構造
構造は,7.5.1によって試験を行ったとき,箇条6及び箇条9に適合しなければならない。
5.2.2
耐電圧
耐電圧は,表1の電圧で7.5.2によって試験を行ったとき,次の要求事項に適合しなければならない。
a) 商用周波耐電圧は,フラッシオーバを生じることなく,かつ,容器の各部に異状がない。
b) 雷インパルス耐電圧は,フラッシオーバを生じることなく,かつ,容器の各部に異状がない。
7
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表1−耐電圧,放電開始電圧及び制限電圧
単位 kV
公称放電電流
耐電圧
商用周波
放電開始電圧
(実効値)
雷インパルス放電
開始電圧(波高値)
公称放電電流にお
ける制限電圧
(波高値)
商用周波
電圧
(実効値)
雷インパルス
電圧
(波高値)
標準 a)
0.5 μs b)
2 500 A
22
60
13.9
33
38
33
5 000 A
22
60
13.9
33
38
30
注a) 正負両極性の標準波形 1.2/50 μsの雷インパルス放電開始電圧とする。
b) 0.5〜5 μsにおけるV−t曲線上の0.5 μsに相当する点の放電開始電圧とする。
5.2.3
絶縁抵抗
絶縁抵抗は,7.5.3によって試験を行ったとき,2 000 MΩ以上でなければならない。
5.2.4
商用周波放電開始電圧
商用周波放電開始電圧は,7.5.4.1によって試験を行ったとき,表1の値以上でなければならない。
5.2.5
雷インパルス放電開始電圧
雷インパルス放電開始電圧は,7.5.4.2によって試験を行ったとき,表1の値以下でなければならない。
5.2.6
制限電圧
公称放電電流における制限電圧は,7.5.5によって試験を行ったとき,表1の値以下でなければならない。
5.2.7
雷サージ動作責務
動作責務は,7.5.6によって試験を行ったときに毎回続流を遮断し,かつ,この試験前後に測定した公称
放電電流における制限電圧の変化,及び商用周波放電開始電圧の平均値の変化が,それぞれ10 %以下でな
ければならない。
5.2.8
放電耐量
放電耐量は,7.5.7によって試験を行ったとき,次の要求事項に適合しなければならない。ただし,雷イ
ンパルス大電流放電耐量試験の特別試験を行ったときは,a)にだけ適合すればよい。
a) 供試品は,貫通,破壊及び外面フラッシオーバを起こさず,かつ,このとき測定した電圧波形に異常
があってはならない。
b) 高圧避雷器は,試験の前後に求めた商用周波放電開始電圧の5回の平均値(周囲温度で測定)の変化
率が10 %以内でなければならない。
c) 高圧避雷器は,試験の前後に求めた公称放電電流に対する制限電圧(周囲温度で測定)の変化率が10 %
以内でなければならない。
5.2.9
耐久性能
耐久性能は,7.5.8によって試験したとき,長時間の使用に対して,電気的・機械的に十分な耐久性をも
ち,構造及び性能の劣化があってはならない。気密構造の耐久性は,温度変化による影響などにも十分配
慮しなければならない。
6
構造
6.1
構造一般
構造は,電気的・機械的に十分な耐久性をもち,保守が容易なものでなければならない。また,高圧避
8
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雷器の各部は,地震などに対する機械的強度が十分でなければならない。
6.2
塗装及びめっき
さびが予想される部分には,十分なさび止めを行い,塗装は完全に密着し,容易に剝離を起こしてはな
らない。
めっきを施す部分には,十分な前処理を行い,完全なめっきを施さなければならない。
7
試験
7.1
試験の種類
試験の種類は,次による。
a) 形式試験
b) 受渡試験
7.2
形式試験
高圧避雷器の形式試験は,その形式の高圧避雷器の保護特性・動作責務などに関する諸性能が,この規
格を満足するか否か検証するために行う試験で,全ての形式の高圧避雷器について行う。b)の耐電圧試験
以外は,一つの形式について1台の供試器で次の試験項目の順序によって行う。ただし,f),g)及びh)は,
別の供試品で行ってもよい。
a) 構造試験
b) 耐電圧試験
c) 絶縁抵抗試験
d) 商用周波放電開始電圧試験
e) 雷インパルス放電開始電圧試験
f)
制限電圧試験
g) 雷サージ動作責務試験
h) 放電耐量試験
i)
耐久性能試験
7.3
受渡試験
高圧避雷器の受渡試験は,形式試験に適合したものと同一形式のものに,次の試験を行う。ただし,受
渡当事者間の協定によって,試験の一部を省略してもよい。
a) 構造試験
b) 絶縁抵抗試験
c) 商用周波放電開始電圧試験
d) 雷インパルス放電開始電圧試験(標準雷インパルス放電開始電圧試験だけ行う。)
7.4
試験条件
7.4.1
標準試験状態
試験は,常温及び常湿(温度5〜30 ℃及び相対湿度45〜85 %)の状態で行う。
7.4.2
標準波形の裕度
特に指定がない限り,標準波形の裕度は,表2による。
9
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表2−波形の裕度
単位 %
波頭長
波尾長
波高値
標準雷インパルス電圧
±30
±20
±3
標準雷インパルス電流
±20
±10
±10
7.5
試験方法
7.5.1
構造試験
構造試験は,箇条6及び箇条9の規定する事項について調べる。
7.5.2
耐電圧試験
耐電圧試験は,次の事項に従って,高圧避雷器絶縁容器の商用周波耐電圧試験及び雷インパルス耐電圧
試験の2種類を行う。
a) 試験電圧 印加電圧は,表1による。
b) 供試品 直列ギャップ及び特性要素を収容する容器など,平常時及び動作時に加圧する部分に対して
行う。
c) 商用周波試験電圧の加圧方法 初めに試験電圧の1/2以下の電圧を加え,それから試験電圧まで電圧
計にその時々の電圧が表示できる範囲で,できるだけ早く上昇させ,試験電圧に達した後,1分間連
続加圧する。
試験電圧の周波数は,50 Hz又は60 Hzとし,その波形は,できるだけ正弦波に近いものとする。
波形が正弦波と著しく異なる場合には,波高値を測定し,その値を2で除した値を実効値とする。
d) 雷インパルス試験電圧の加圧方法 正負極性別に各3回印加する。波形は,1.2/50 μsとする。
7.5.3
絶縁抵抗試験
絶縁抵抗試験は,高圧避雷器端子間の絶縁抵抗を直流1 000 Vの絶縁抵抗計で測定する。
7.5.4
放電開始電圧試験
7.5.4.1
商用周波放電開始電圧試験
商用周波放電開始電圧試験の試験方法は,次による。
a) 状態 乾燥状態とする。
b) 電圧印加方法 高圧避雷器が放電しない十分低い電圧から,電圧計によってその時々の電圧が読み取
れる範囲で,できるだけ早く電圧を上昇する。ただし,ギャップに並列抵抗を挿入した高圧避雷器で,
抵抗体が試験中に著しく発熱する場合には,使用者と製造業者との協定によって別の電圧印加方法で
行う。
c) 回数 形式試験は10回,受渡試験は5回試験する。
d) 時間間隔 2分以内とする。
7.5.4.2
雷インパルス放電開始電圧試験
雷インパルス放電開始電圧試験は,a)及びb)とする。
a) 標準雷インパルス放電開始電圧試験の試験方法
1) 状態 乾燥状態とする。
2) 電圧印加方法 表1の波高値をもつ正負両極性の標準波形1.2/50 μsの雷インパルス電圧をそれぞれ
10回印加する。
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b) 雷インパルス放電開始電圧時間試験の試験方法
1) 状態 乾燥状態とする。
2) 電圧印加方法 印加電圧は,正負両極性の標準波形1.2/50 μsの雷インパルス電圧とし,3種類以上
の波高値の電圧をそれぞれ5回程度印加して試験する。各回の試験値のうち,できるだけ高い値を
とって,0.5〜5 μsにおいてV−t特性を図形で表示した曲線を作り,この曲線上の0.5 μsに相当する
点の放電電圧を求める。
7.5.5
制限電圧試験
制限電圧試験は,公称放電電流の0.5倍,1倍及び2倍の正及び負の雷インパルス電流を高圧避雷器に流
し,公称放電電流に相当する制限電圧値を測定する。
雷インパルス電流の波形は,8/20 μsとする。
7.5.6
雷サージ動作責務試験
雷サージ動作責務試験は,次の条件で毎回続流が遮断されるかどうかを調べる。
なお,試験前後に公称放電電流における制限電圧及び商用周波放電開始電圧(5回)を求める。
a) 電源電圧 高圧避雷器に定格電圧印加中,高圧避雷器端子間で測定した商用周波電圧波高値が,高圧
避雷器定格電圧波高値を下回らない。試験電圧の周波数は,50 Hz又は60 Hzとする。
b) 雷インパルス電流印加位相 印加電源電圧の波高値付近で,同極性及び逆極性を印加する。
c) 回数 同極性・逆極性について各5回,合計10回とする。
d) 時間間隔 約1分間とする。
e) 放電電流 公称放電電流とする。
f)
放電電流波形 8/20 μsとする。
7.5.7
放電耐量試験
放電耐量試験は,雷インパルス大電流試験及び方形波インパルス電流試験の2種類を行い,それぞれ別
の供試品を用いて表3によって行う。雷インパルス大電流試験は,通常の試験及び特別試験とする。特別
試験は,酸化亜鉛素子単体で行うことができる。
方形波インパルス電流試験は,図4の方形波電流で試験する。
方形波インパルス電流発生のための試験回路は,次の要求事項に適合しなければならない。
a) 規約電流波高値継続時間は,表3の規定値の100〜120 %とする。
b) 規約電流全継続時間は,規約電流波高値継続時間の150 %以下とする。
c) 波高値付近の高周波振動の振幅は,波高値の10 %以内とする。また,波高値は,高周波振動の平均値
とする。
d) 電流発生器は,規約電流全継続時間の1倍〜2倍の時間に供試器から切り離してよい。
e) 方形波インパルス電流試験回路は,多段のインダクタンス−コンデンサを用いる。ただし,回路の抵
抗損失はできるだけ小さくし,段数は,5段以上とする。方形波インパルス電流試験回路の例を,図5
に示す。
雷インパルス大電流放電耐量の特別試験を除いて,試験前後の商用周波放電開始電圧を5回測定し,平
均値を求め,公称放電電流に相当する制限電圧を測定する。
11
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表3−放電耐量試験
項目
雷インパルス
大電流放電耐
量試験
雷インパルス大
電流放電耐量試
験特別試験
雷インパルス
大電流放電耐
量試験
雷インパルス大
電流放電耐量試
験特別試験
方形波インパルス電流
放電耐量試験
公称放電電流
5 000 A
2 500 A
5 000 A
2 500 A
供試品
高圧避雷器
高圧避雷器又は
酸化亜鉛素子単
体
高圧避雷器
高圧避雷器又は
酸化亜鉛素子単
体
高圧避雷器
放電電流波高値
20 kA
65 kA
10 kA
25 kA
150 A
75 A
放電電流波形
4/10 µs(正又は負)
継続時間2 000 μs(正又
は負)
回数
同極性 2回
同極性 18回
時間間隔
約5分間
5分以内の時間間隔で
連続3回の通電を1群
とし,6群a)
注a) 各郡間の時間間隔は,供試品の温度が周囲温度まで冷却できる間隔であることが望ましい。
注a) 規約電流半波高値継続時間は,規約電流波高値継続時間の100〜120 %とする。
b) 規約電流全継続時間は,規約電流波高値継続時間の150 %以下とする。
c) 波高値(100 %)は,高周波振動の平均値とする。
d) 波高値付近の高周波振動の振幅は,波高値の10 %以内とする。
図4−脈動をもつ方形波インパルス電流波形
12
C 4608:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
Ar 供試器
VD 分圧器
L
インダクタンス
Sh
分流器
C
コンデンサ
M
測定器
S
スイッチ
図5−方形波インパルス電流放電耐量試験回路の例
7.5.8
耐久性能試験
耐久性能試験の試験方法は,製造業者と使用者との協定による。
8
製品の呼び方
製品の呼び方は,名称,定格電圧及び公称放電電流とする。
例 高圧避雷器8.4 kV 5 000 A
9
表示
高圧避雷器には,見やすいところに,容易に消えない方法で次の事項を表示した銘板を取り付けなけれ
ばならない。
なお,がい管本体に字句を焼き込んだ場合など,本体で次の事項が分かる場合は,銘板を省略してもよ
い。
a) 名称
b) 形式
c) 定格電圧(kV又はV)
d) 公称放電電流(kA又はA)
e) 製造業者名又は商標
f)
製造年