日本工業規格
JIS
C
4552
-1984
ソレノイド通則
General Rules for Solenoids (Plunger Type)
1.
適用範囲 この規格は,周波数 50Hz 又は 60Hz の単相交流 250V 以下及び直流 150V 以下の電路で,
各種機構の操作に使用するソレノイドの共通事項について規定する。
引用規格:
JIS C 0704
制御機器の絶縁距離・絶縁抵抗及び耐電圧
JIS C 1302
絶縁抵抗計(電池式)
JIS C 1502
普通騒音計
JIS C 3306
ビニルコード
JIS C 3316
電気機器用ビニル絶縁電線 (KIV)
関連規格 JIS C 4553 一般用直流ソレノイド
JIS C 4554
一般用交流ソレノイド
2.
用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,次による。
(1)
ソレノイド 交流又は直流の励磁コイル(以下,コイルという。)に通電し,可動鉄心を動かすことに
よって,電磁エネルギーを機械的運動に変換するプランジャ形の電磁石。
(2)
自己保持形ソレノイド 磁気回路の一部に永久磁石を使用し,可動鉄心が固定鉄心に吸着した永久磁
石による吸着力で保持するソレノイド。
(3)
定格ストローク ソレノイドに保証された可動鉄心の移動距離。
(4)
定格吸引力 定格電圧を加えたとき定格ストロークまでの全ストロークにおける最小の吸引力。
(5)
定格消費電力 定格電圧を加え可動鉄心を固定鉄心に吸着させた状態において,コイル抵抗によって
消費される電力。
(6)
保持電流 可動鉄心を固定鉄心に吸着した位置に保ち,定格電圧を加えたときの励磁電流。
(7)
始動電流 可動鉄心を定格ストロークの位置に保ち,定格電圧を加えたときの励磁電流。
(8)
固定鉄心 ソレノイドの磁気回路を形成する鉄心の固定した部分。
(9)
可動鉄心 固定鉄心に吸引される鉄心。プランジャともいう。
(10)
連続定格 指定条件の下で連続使用するとき,定められた温度上昇限度を超過せず,その他の制限に
外れない定格。
(11)
短時間定格 冷状態から始めて,指定条件の下で短時間使用するとき,定められた温度上昇限度を超
過せず,その他の制限に外れない定格。
(12)
保持力 可動鉄心を固定鉄心に吸着した位置に保ち,定格電圧を加えたとき(自己保持形は,通電を
断った後)離脱しない最大負荷荷重。
2
C 4552-1984
(13)
残留吸着力 定格電圧を加え可動鉄心を固定鉄心に吸着させた状態において,通電を断った後の残留
磁気による吸着力。
(14)
動作頻度 ソレノイドが規定の温度上昇を超過しない範囲で連続的に繰り返し作動できる 1 分間当た
りの最高頻度。
3.
標準使用状態及び電源
3.1
標準使用状態 標準使用状態は,次による。
(1)
周囲温度 屋内用 − 5∼40℃ ただし,ソレノイドが氷結しないこと。
屋外用 −20∼40℃ ただし,ソレノイドが氷結しないこと。
(2)
相対湿度 45∼85% ただし,ソレノイドに結露しないこと。
(3)
標高 2 000m 以下
3.2
標準使用電源 交流のときは,定格周波数の正弦波に近い波形の交流電源,直流のときは,蓄電池
電源を使用する。ただし,直流のときは,できるだけ脈流分の少ない直流電源(例えば,三相全波整流電
源)を使用してもよい。
4.
定格
4.1
定格電圧 定格電圧は,表 1 のとおりとする。
表 1
単位 V
交流 100 200
直流
6
12 24 48 100
4.2
定格周波数 交流用ソレノイドの定格周波数は,表 2 のとおりとする。
表 2
単位 Hz
定格周波数
50
60 50/60
4.3
定格ストローク ソレノイドの定格ストロークは,表 3 のとおりとする。
表 3
単位 mm
定格ストローク
1
2 3 4 5 6 8 10 15 20 25 30
4.4
定格吸引力 ソレノイドの定格吸引力は,表 4 のとおりとする。
表 4
単位 N
定格吸引力
1
2 3 5 7 8 10 12 15 20 25 30 40 50 60 70 80 100
4.5
耐久性 耐久回数は,表 5 のとおりとする。
表 5
耐久回数(万回)
5
10 30 50 100 150 300 500 1 000 3 000
3
C 4552-1984
4.6
短時間定格 短時間定格は,表 6 のとおりとする。
表 6
単位 分
短時間定格
0.5
1 2 3 5 10 15 30
5.1
性能
5.1
動作 7.2.2 の試験を行ったとき,円滑に作動しなければならない。
5.2
騒音 7.2.3 の試験を行ったとき,2 回以上 60dB (A) を超えてはならない。
5.3
消費電力 7.2.4 の試験を行ったとき,定められた値を超えてはならない。
5.4
保持電流 7.2.5 の試験を行ったとき,定められた値を超えてはならない。
5.5
始動電流 7.2.6 の試験を行ったとき,定められた値を超えてはならない。
5.6
保持力 7.2.7 の試験を行ったとき,定められた値以上でなければならない。
5.7
吸引力 7.2.8 の試験を行ったとき,定格値以上でなければならない。
5.8
残留吸着力 7.2.9 の試験を行ったとき,定められた値を超えてはならない。
5.9
温度上昇 7.2.10 の試験を行ったとき,コイルの温度上昇値が表 7 の値を超えてはならない。
表 7
単位 ℃
絶縁の種別
温度上昇値
A
種絶縁コイル 85
E
種絶縁コイル 100
B
種絶縁コイル 110
備考1. 基準周囲温度の限度は,40℃とする。
2.
温度上昇の測定は,抵抗法による。
5.10
絶縁抵抗 7.2.11 の試験を行ったとき,その値が 20M
Ω以上でなければならない。
5.11
耐電圧 7.2.12 の試験を行ったとき,これに耐えなければならない。
5.12
耐湿性 7.2.13 の試験を行ったとき,5.1 及び 5.11 の規定を満足し,絶縁抵抗は,5M
Ω以上でなけれ
ばならない。
5.13
保管耐寒性 7.2.14 の試験を行ったとき,5.1 及び 5.11 の規定を満足し,絶縁抵抗は,5M
Ω以上でな
ければならない。
5.14
保管耐熱性 7.2.15 の試験を行ったとき、5.1 及び 5.11 の規定を満足し,絶縁抵抗は,5M
Ω以上でな
ければならない。
5.15
端子強度 7.2.16 の試験を行ったとき,有害な損傷があってはならない。
5.16
耐久性 7.2.17 の試験を行ったとき,5.1,5.7 及び 5.8 の規定を満足し,絶縁抵抗は,5M
Ω以上でな
ければならない。
6.
構造
6.1
構造一般 ソレノイドの構造は,次に適合しなければならない。
(1)
鉄又は鋼(ステンレス鋼は除く。
)は,めっき,塗装などの適当なさび止めを施してあること。ただし,
交流用ソレノイドの吸着面は除く。
(2)
導電材料は,銅若しくは銅合金又はこれらと同等以上の電気的・熱的及び機械的な安定性をもち,さ
びにくいものであること。
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(3)
電気絶縁物は,これに接触又は接近する部分の温度に耐え,かつ吸湿性の少ないものであること。
(4)
端子部分を除くコイル充電部は,露出しない構造であること。
(5)
端子及びリード線は,容易に抜けない構造であること。
6.2
絶縁距離 ソレノイドのコイル端子間,コイル端子と非充電金属部間の絶縁距離の最小値は,JIS C
0704
(制御機器の絶縁距離・絶縁抵抗及び耐電圧)の
表 4 による。
6.3
コイルの口出部
6.3.1
リード線式 リード線は,JIS C 3306(ビニルコード)若しくは JIS C 3316[電気機器用ビニル絶
縁電線 (KIV)]又は耐熱温度がこれらと同等以上のものを用い,長さ 180mm 以上とする。
なお,リード線は,電圧,周波数によって
表 8 のとおり色別してあること。
表 8
50 60
50/60
共用
定格周波数 Hz
黄
灰色
定格電圧の色表示による
100 200 100 200 100 200
交流用
定格電圧 V
青
赤
青
赤
青
赤
定格電圧 V 6
12
24
48
100
+側
灰色
黒
茶色
黄赤
青
直流用
−側
白
例
6.3.2
端子式 端子は,ラグ端子とし,交流で 50Hz,60Hz それぞれ別端子の場合は,周波数を明示しな
ければならない。
7.
試験
7.1
標準試験状態及び電源
7.1.1
標準試験状態 標準試験状態は,次による。
(1)
周囲温度 20±2℃
(2)
相対湿度 65±5%
(3)
気圧 1 013hPa(
1
)
ただし,試験結果の判定に疑義を生じない場合は,周囲温度 20±15℃,相対湿度 65±20%,気圧
860
∼1 060hPa(
1
)
の範囲内で試験してもよい。
注(
1
) 1hPa
=1mbar
7.1.2
標準試験電源 標準試験電源は,原則として,交流のときは定格周波数の正弦波電源,直流のとき
は蓄電池電源とする。ただし,試験結果の判定に疑義を生じない場合は,交流のときは正弦波に近い波形
の交流電源で,直流のときは,できるだけ脈流分の少ない直流電源(例えば,三相全波整流電源)で試験
してもよく,また定格周波数が 50/60Hz 共用の場合は,試験結果の判定に疑義を生じない限り,いずれか
一方の周波数で試験してもよい。
5
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7.2
試験方法
7.2.1
構造試験 6.1 及び 8.に規定する事項について調べる。
7.2.2
動作試験 ソレノイドに定格電圧の 85∼110%を加えて動作を確認する。
7.2.3
騒音試験 ソレノイドを共鳴の影響を受けない支持角に取り付け,定格電圧,定格吸引力に相当す
る負荷を加え,JIS C 1502(普通騒音計)に規定された指示騒音計を用いて,ソレノイドから 50cm 離れた
位置で吸着状態における騒音を A レンジで 10 回繰返し測定する。
ただし暗騒音は,
40dB (A)
以下とする。
7.2.4
消費電力試験 ソレノイドのコイルに定格電圧を加えたときの励磁電流を測定し,消費電力(定格
電圧×励磁電流)を算出するか,又はコイル抵抗を測定し,消費電力(定格電圧の 2 乗/コイル抵抗)を
算出し求めてもよい。
なお,コイル温度は,20℃を基準とし,測定は,コイルの温度上昇が無視できる時間内に完了しなけれ
ばならない。
7.2.5
保持電流試験 可動鉄心を固定鉄心に吸着した位置に保ち,定格電圧を加えたときの励磁電流を測
定する。
なお,測定は,コイルの温度上昇が無視できる短時間内に完了しなければならない。
7.2.6
始動電流試験 可動鉄心を定格ストロークの位置に保ち,定格電圧を加えたときの励磁電流を測定
する。
なお,測定は,コイルの温度上昇が無視できる短時間内に完了しなければならない。
7.2.7
保持力試験 ソレノイドを,その性能に影響を与えない支持台に取り付け,定格電圧を加え(自己
保持形は無通電)コイル温度 20∼40℃に保った状態において可動鉄心の中央に反吸引方向の荷重を加え,
離脱しない荷重の最大値を測定する。
7.2.8
吸引力試験 ソレノイドをその性能に影響を与えない支持台に取り付け,定格ストローク(又は定
格ストローク以内の任意のストローク)で定格電圧を加え,コイル温度 20∼40℃に保った状態において瞬
時に吸引し得る荷重の最大値を測定する。
7.2.9
残留吸着力試験 ソレノイドをその性能に影響を与えない支持台に取り付け,定格電圧を加えて可
動鉄心を固定鉄心に吸着させた状態において,通電を断った直後可動鉄心の中央に静荷重を加え,離脱す
るときの荷重の最小値を測定する。
7.2.10
温度試験 可動鉄心を固定鉄心に吸着した位置に保ち,定格電圧を連続して加え温度が一定となっ
たとき(短時間定格の場合は,その指定時間通電したとき)コイルの温度上昇値を抵抗法によって測定す
る。
7.2.11
絶縁抵抗試験 JIS C 1302[絶縁抵抗計(電池式)]に規定する 500V の絶縁抵抗計を使用し,コイ
ルと非充電金属部間の絶縁抵抗を測定する。
7.2.12
耐電圧試験 耐電圧試験は,JIS C 0704 によって行い,試験電圧は,同表 8 による。
7.2.13
耐湿性試験 ソレノイドを周囲温度 40±2℃,相対湿度 90∼95%の環境に連続 48 時間保ち,標準
試験状態に取り出して 1 時間以上 2 時間以内放置した後,7.2.1,7.2.2,7.2.11 及び 7.2.12 の試験を行う。
7.2.14
保管耐寒性試験 ソレノイドを−25±3℃の恒温槽に連続 72 時間保ち,標準試験状態に取り出し,
水滴が付着した場合はふきとり,1 時間以上 2 時間以内放置した後,7.2.1,7.2.2,7.2.11 及び 7.2.12 の試験
を行う。
7.2.15
保管耐熱性試験 ソレノイドを 80±3℃の恒温槽に連続 16 時間保ち,標準試験状態に取り出し,1
時間以上 2 時間以内放置した後,7.2.1,7.2.2,7.2.11 及び 7.2.12 の試験を行う。
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C 4552-1984
7.2.16
端子強度試験 ソレノイドの端子又はリード線に任意の方向へ引張荷重を徐々に加えて,定められ
た値に達した後,その値で 1 分間保持する。
7.2.17
耐久性試験 定格ストロークで定められた一定こう配のばね負荷を可動鉄心の中心に取り付けて,
定格電圧を加え,耐久回数動作させ,7.2.2,7.2.8,7.2.9 及び 7.2.11 の試験を行う。
なお,動作は,試験中コイル温度上昇値が
表 7 の値を超えない頻度内でなければならない。
8.
表示 ソレノイドの本体には,見やすいところに次の事項を表示しなければならない。
(1)
名称又は形式
(2)
定格電圧
(3)
定格周波数(50/60Hz 共用の場合は省いてもよい。
)
(4)
短時間定格(連続定格の場合は表示しなくてもよい。
)
(5)
製造業者名又はその略号
(6)
製造年月又はその略号(
2
)
注(
2
)
略号の例:59.1(昭和59年1月)又は1984.1(1984年1月)
委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
関 口 隆
横浜国立大学
(幹事)
矢ケ崎 義 一
財団法人日本電気用品試験所
宮 川 清 孝
工業技術院標準部
桜 井 謙 次
東京都立工業技術センター
宮 内 正 夫
社団法人日本電気工業会
久 島 重 良
社団法人日本事務機械工業会
田 仁 哲
日本工作機械工業会
柏 崎 史 夫
日本自動販売機工業会
岩 田 憲 治
株式会社広業社通信機器製作所
守 田 武 司
国際電業株式会社
佐々木 実 施
シーケーディコントロールズ株式会社
木 城 金 光
東北沖電気株式会社
高 瀬 志津夫
松下電工株式会社
神 谷 好 治
日本電気制御機器工業会
菅 原 淳 夫
財団法人日本企画協会