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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS  

C 2565-1992 

マイクロ波用フェライト磁心試験方法 

Measuring methods for ferrite cores for microwave device 

1. 適用範囲 この規格は,主にジャイロ磁気現象を応用したマイクロ波装置に用いるフェライト磁心(以

下,磁心という。)の試験方法について規定する。 

備考 この規格の引用規格を,次に示す。 

JIS B 7725 ビッカース硬さ試験機 

JIS C 2501 永久磁石試験方法 

JIS C 3202 エナメル線 

JIS Z 2244 ビッカース硬さ試験方法 

JIS Z 8703 試験場所の標準状態 

2. 用語の定義及び記号 この規格で用いる主な用語の定義及び記号は,次による。 

なお,参考として対応英語を記す。 

(1) 飽和磁化 Ms (Saturation magnetization)  磁心が達することができる最大の磁化。 

(2) 複素誘電率 ε (Complex permittivity)  交流電気変位を表すベクトル量と交流電界の強さを表すベク

トル量の間の次の複素量。 

=

E

D

0

1

ε

ε

 ·············································································· (1) 

ここに, 

ε0=8.854×10-12: 真空誘電率 (F/m) 

E: ベクトル表示による交流電界の強さ (V/m) 

D: ベクトル表示による交流電束密度 (C/m2) 

また,εは,複素誘電率の実数成分をε',虚数成分をε''とすれば, 

ε

ε

ε

′′

−′

=

j ··············································································· (2) 

で表される。 

(3) 複素透磁率 μ (Complex permeability)  交流磁界の強さを表すベクトル量と交流磁束密度を表すベ

クトル量の間の次の複素量。 

=

H

B

0

1

μ

μ

 ············································································· (3) 

ここに, 

μ0=4π×10−7: 真空透磁率 (H/m) 

H: ベクトル表示による交流磁界の強さ (A/m) 

B: ベクトル表示による交流磁束密度 (T) 

また,μは,複素透磁率の実数成分をμ',虚数成分をμ''とすれば, 

μ

μ

μ

′′

−′

=

j

 ············································································· (4) 

で表される。

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(4) 磁気共鳴半値幅 ∆H (Gyromagnetic resonance linewidth)  一様磁気共鳴吸収曲線で損失が最大点の21

になる二つの印加直流磁界の差。 

(5) 実効g係数 geff (Effective Landé factor)  磁気共鳴で周波数と実効共鳴磁界との比を176×102で除し

た値。式(5)によって算出する。 

0

2

10

176

H

f

geff

×

×

=

 ··································································· (5) 

ここに, 

f: 周波数 (Hz) 

H0: 実効共鳴磁界 (A/m) 

(6) スピン波共鳴半値 ∆Hk(Spin-wave resonance linewidth)  スピン波磁気共鳴吸収曲線で損失が最大点

の21になる二つの印加直流磁界の差。 

3. 試験環境の温度 試験環境の温度は,規定がない限り,23±2℃とする。ただし,測定値に温度依存性

がないか,又はこの温度に特定する必要がない場合には,5〜35℃(JIS Z 8703に規定の常温)で試験を行

ってもよい。 

4. 試験機器及び装置 測定に用いる試験機器及び装置は,あらかじめ校正してあって,十分な精度をも

つものとする。 

5. 電気的・磁気的性能試験 

5.1 

飽和磁化 

5.1.1 

振動形磁力計法 振動形磁力計法は,次による。 

(1) 測定試料 試料の形状は,球状に近い塊又は粉末とする。塊のときは最大径は約3mm,粉末のときは

20〜30mgの試料を外径約5mm,内径約3mm,長さ約6mmのカプセルに適切な方法で固定する。 

備考 試料は,振動形磁力計の試料保持器に収まる寸法のものとする。 

(2) 測定条件 測定磁界の強さは,4×105A/m以上とし,飽和を確認するため測定磁界は最初の値とその

110%以上の2点を用いる。 

(3) 測定 試料(粉末のときは固定する前)及び基準試料の質量 (m,m0) を(有効数字3けたまで)ひょ

う(秤)量し,また,その密度 (d,d0) を測定する。次に,試料(粉末のときは固定したもの)及び

基準試料を振動形磁力計によって,定振幅,定周波数及び定位置で誘起電圧 (e,e0) を測定し,式(6)

によって飽和磁化Msを算出する。 

0

0

0

0

)

/

(

s

s

M

m

d

e

edm

m

A

M

=

 ································································ (6) 

ここに, 

e: 試料による誘起電圧 (V) 

e0: 基準試料による誘起電圧 (V) 

d: 試料の密度 (g/cm3) 

d0: 基準試料の密度 (g/cm3) 

Ms0: 基準試料の飽和磁化 (A/m) 

なお,基準試料はニッケルを用い,純度99.95%以上で直径約3mmとし,次による。 

)

/

(

90

.8

3

0

cm

g

d=

)

/

(8.

490

0

m

kA

Ms=

5.1.2 

磁気天びん法 磁気天びん法は,次による。 

background image

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(1) 測定試料 試料は,乳鉢などで粉砕し,約100メッシュのふるいを通過した粉末とする。 

(2) 測定条件 5.1.1(2)による。 

(3) 測定 試料及び基準試料の質量 (m,m0) を(有効数字3けたまで)ひょう量し,その密度 (d,d0) を

測定しておく。 

試料及び基準試料を磁気天びんによって,定位置でそれぞれが受ける力 (F,F0) を測定し,式(7)

によって飽和磁化Msを算出する。 

0

0

0

0

)

/

(

s

s

M

m

d

F

Fdm

m

A

M

=

 ······························································· (7) 

ここに, 

F: 試料が受ける力 (N) 

F0: 基準試料が受ける力 (N) 

d: 試料の密度 (g/cm3) 

d0: 基準試料の密度 (g/cm3) 

m: 試料の質量 (g) 

m0: 基準試料の質量 (g) 

Ms0: 基準試料の飽和磁化 (A/m) [5.1.1 (3)に準じる。] 

5.1.3 

継鉄法 継鉄法は,次による。 

(1) 測定試料 試料の形状は角柱又は円柱とし,長さ10〜20mm,直径又は一辺の長さがそれぞれ10〜

15mmとする。 

(2) 測定条件 5.1.1(2)による。 

(3) 測定 試料及び図1に示す同軸形補償サーチコイルをJIS C 2501に規定する磁化器の磁極間に装着し,

衝撃検流計法又は自記磁束計で磁束を測定し,式(8)によってMsを算出する。 

図1 同軸形補償サーチコイル 

ここに, 

φ: 磁束計で測った磁束 (Wb) 

n1: ピックアップコイルの巻数 

n2: 補償コイルの巻数 

background image

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

A1: ピックアップコイルの断面積 (m2) 

A2: 補償コイルの断面積 (m2) 

A: 試料の断面積 (m2) 

μ0: 真空透磁率=4π×10−7 (H/m) =4π×10−7 (T・m/A) 

同軸形補償サーチコイルは,ピックアップコイルと補償コイルの2個のコイルの起電力を互いに打

ち消すように直列につなぎ 

2

2

1

1

A

n

A

n

=

2

1

A

A

A

<

<

となるように調整する。 

また,ピックアップコイルの内径は,試料の径に近くなるようにする。 

5.2 

複素誘電率 

5.2.1 

測定試料 試料の形状は,円柱状とする。試料の直径は共振器の内径の0.060〜0.075倍,許容差は

±0.01mm,長さは共振器の高さh(図2参照)の1.5倍以上とする。 

5.2.2 

測定条件 測定条件は,次による。 

(1) 測定は,透過形円形TM010姿態共振器を使用する(図2参照)。 

(2) 試料は,図2に示すように共振器の中心に試料を共振器の軸と一致するように取り付ける。 

(3) 測定中は試料の軸方向に外部磁界 (HDC) を加える。外部磁界は,磁界を変化しても測定値の変化が観

測できなくなるまで(通常4×105A/m以上)印加する。 

(4) 共振器の形状は,図2のとおりとする。 

(5) 測定周波数は,8.2〜12.4GHzとする。 

図2 共振器と試料の形状 

5.2.3 

測定 測定は,次による。 

(1) 測定回路(図3参照) 

background image

C 2565-1992  

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図3 測定回路系のブロック図 

(2) 測定手順 0.1dB程度の確度をもつ精密級可変抵抗減衰器Fを操作し,3dB減衰させる。次に,空洞

共振器Gに試料を挿入しないで,周波数を変化させ,同じ入力レベルに対し出力が最大となる周波数

f0に発振器Aを設定する。このときの出力を検出器Hで読み取り,周波数f0を周波数計B又は適切な

測定器で測定する。次に,精密級可変抵抗減衰器Fの減衰量を3dB減じ,出力が減衰量を減じる前の

共振点と同じになる二つの周波数を測定し,その周波数の差∆f0を求める。周波数計Bは,周波数を

安定化したマイクロ波発振器を用いたヘテロダイン式周波数計又はこれと同程度の正確さをもつ他の

方式の周波数計とする。 

この場合の空洞共振器のQはQ=

0

0

f

f

⊿で求める。次に試料を挿入し,同じ操作を繰り返し,この場

合の共振周波数f1,出力半減点の周波数差∆f1を測定しQ1=

1

1

f

f

⊿を算出する。 

以上の測定において,電力計Eの指示が一定(入力電力一定)になるように可変抵抗減衰器Cを用

いて調節する。 

(3) 算出 上記の測定値からδf=f0−f1を求め,次に補正項ε'を式(10)によって算出し,式(9)及び式(11)によ

ってε'及びε''を算出する。 

=

ε

ε

ε

2

2

722

.0

1

a

b

 ································································· (9) 

14

.2

1

56

.1

1

2

1

692

.0

1

78

.0

1

0

0

2

2

0

b

a

n

f

f

f

fb

a

f

f

δ

δ

δ

ε

+

+

+

=

 ····················································· (10) 

2

2

2

0

2

0

2

2

2

1

45

.1

1

1

1

14

.2

1

56

.1

1

1

27

.0

1

1

a

b

b

a

n

f

f

f

f

b

a

Q

Q

ε

ε

δ

δ

ε

+

×

−′

+

+

=

′′

 ···· (11) 

background image

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ε

ε

ε

ω

ε

ω

ε

ε

ε

ω

ε

ω

ω

ω

−′

+

+

−′

+

=

1

)

(

1

2

2

1

2

0

1

2

1

2

2

1

2

0

1

21

0

1

0

2

h

a

a

b

L

b

c

J

b

c

J

a

b

L

b

c

J

b

c

J

Q

Q

 ································· (12) 

=

b

c

N

a

c

J

a

c

N

b

c

J

a

c

L

1

1

1

0

1

0

1

1

1

1

2

,

ω

ω

ω

ω

ω

π

ここに

 ·············· (13) 

α: 空洞の半径 (mm) 

h: 空洞の高さ (mm) 

b: 試料の半径 (mm) 

c: 真空中の光速 (3×1011mm/s) 

f0: 試料を挿入しない場合の共振周波数 (Hz) 

ω0: 試料を挿入しない場合の共振角周波数 (rad/s) 

f1: 試料を挿入した場合の空洞の共振周波数 (Hz) 

ω1: 試料を挿入した場合の空洞の共振角周波数 (rad/s) 

δf: 試料を挿入した場合と試料を挿入しない場合の空洞の共振

周波数の変化分 (Hz) 

Q0: 試料を挿入しない場合の空洞のQの測定値 

Q1: 試料を挿入した場合の空洞のQの測定値 

Q2: 測定試料と同じε'をもち,ε''=0(無損失)の試料を挿入した

と想定した場合の空洞のQ 

α=hの条件のもとで式(12)を

0f

fδの関数として計算したものを図4に示す。 

例 試料を挿入しない場合,共振器の共振周波数が10GHzのとき,共振器及び磁心の寸法を次のよう

に定めると,算出できる。 

mm

a

16

.

22

2

φ

=

mm

b

4.1

2

φ

=

mm

a

h=

mm

d

5.4

φ

=

mm

t 5.0

=

ε'及びε''は,式(14),(15),(16)及び図4を用いて算出する。 

)

10

7.3

1(

ε

ε

×

=

································································ (14) 

0

0

0

17

.3

1

2

1

2.

145

780

.0

1

f

f

f

f

f

f

δ

δ

δ

ε

+

+

+

=

 ······················································· (15) 

background image

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ε

ε

δ

δ

ε

×

+

×

−′

+

+

=

′′

−2

2

0

2

0

2

1

10

54

.0

1

1

1

17

.3

1

1

4.

72

1

1

f

f

f

f

Q

Q

 ········ (16) 

図4 

0f

0

2

Q

Q

の関係 

5.3 

複素透磁率 

5.3.1 

測定試料 試料の形状は,直径1.0mm以下の棒状とする。ただし,損失が極めて小さい材料につ

いては,厚さが0.3mmを超えない薄板状とする[図5(1)及び図5(2)参照]。 

5.3.2 

測定条件 測定条件は,次による。 

(1) 測定は,透過形方形TE102姿態共振器を使用する(図5参照)。共振器は8.2〜12.4GHzに共振周波数を

もち,負荷Qが2 000以上のものとする。 

(2) 試料は,共振器の側壁の中央にあけた一対の穴[図5(1)参照]又はスリット[図5(2)参照]を通して

取り付ける。 

(3) 共振器の形状は,図5(1)及び図5(2)参照。 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(4) 測定周波数は,9〜10GHzとする。 

5.3.3 

測定 測定は,次による。 

(1) 測定回路 5.2.3(1)による。 

(2) 測定手順 5.2.3(2)による。 

(3) 算出 複素透磁率

μ

μ

μ

′′

−′

=

j

は,式(17)及び式(18)によって算出する。 

−′

=

V

V

L

f

f

f

)1

(

2

2

1

0

1

μ

λ

 ····················································· (17) 

′′

=

V

V

L

Q

Q

μ

λ

2

2

0

1

2

1

1

 ························································· (18) 

ここに, 

f0: 試料を挿入しない場合の共振器の共振周波数 (Hz) 

f1: 試料を挿入した場合の共振器の共振周波数 (Hz) 

Q0: 試料を挿入しない場合の共振器のQの測定値 

Q1: 試料を挿入した場合の共振器のQの測定値 

λ: f0に対応する自由空間波長 (mm) 

L: 共振器の長さ (mm) 

∆V: 共振器内で試料の占める体積 (mm3) 

V: 共振器の容積 (mm3) 

background image

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図5 測定試料及び共振器 

5.4 

磁気共鳴半値幅及び実効9係数 

備考 磁気共鳴半値幅∆H及び実効g係数geffの測定は,400A/m以上の磁気共鳴半値幅をもつ材質の

ものについて適用する。 

5.4.1 

測定試料 測定試料は,次による。 

(1) 形状 試料の形状は,薄円板状又は球状とする。 

(2) 寸法 薄円板状試料の場合,試料の直径Dと厚さtとの比は30以上 (D/t≧30) であり,かつ,ストリ

ップライン共振器の中心導体の幅Wと試料の直径Dとの比は3以上 (W/D≧3) とする。 

球状試料の場合,図6に示される限界より小さい直径の試料とする。真球度は1001以下とする。 

background image

10 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図6 試料寸法限界曲線 

5.4.2 

測定条件 測定条件は,次による。 

(1) 測定周波数 測定周波数は,次のとおりとする。 

0.3GHz,1.0GHz,3.0GHz,10.0GHz及び30.0GHz 

(2) 共振器 0.3GHz及び1.0GHzでは,両端開放のストリップライン形共振器を使用し,中心に薄円板状

試料を配置して測定する(図7参照)。 

3.0GHz以上では方形TE10nモード(nは偶数)透過形共振器を用い,その中心に,球状試料を配置

して測定する(図8参照)。 

10.0GHzではTE106モード透過形共振器を用いる。3.0GHz,10.0GHz及び30.0GHzでは,試料と共

振器の体積比がほぼ同一となるように設計された共振器を使用することが望ましい。 

5.4.3 

測定 測定は,次による。 

(1) 測定回路 測定回路は,図3とする。 

なお,電磁石は精密調整する。 

(2) 測定手順 安定化発振器Aの周波数を共振器の共振周波数の近くで変化し,検出器Hの読みが最大と

なる点に固定する。このときの周波数f0を周波数計Bで読み取る。0.1dB程度の確度をもつ精密級可

変抵抗減衰器Fを所定の値α0 (dB) に設定し,可変抵抗減衰器Cを変化させて検出器Hの読みを基準

値A0に調整する。 

次に,試料を共振器に挿入して磁界を印加し,検出器Hの読みが最小になる点の磁界(共鳴磁界

H0)を測定する。磁界はH0に固定し,精密級可変抵抗減衰器Fを,検出器Hの読みが再びA0になる

ように調整し,そのときの読みをαr (dB) とする。a0とarとから式(19)によって

2

1

αを算出する。 

)

)(

1

10

log(

20

2

log

20

20

)

(

0

0

21

dB

r

+

+

=

−α

α

α

α

 ··································· (19) 

精密級可変抵抗減衰器Fを

2

1

αに設定し,磁界を変化して検出器Hの読みがA0になる二つの磁界H1,

H2を測定する。このとき共振器の共振周波数がずれた場合には,微細調整棒(図7及び図8参照)を

調節して共振周波数を合わせ,常に共振状態に保つこととする。 

(3) 算出 測定したf0,H1,H2及びH0から,∆Hは式(20)によって,球状試料のgeffは式(21)によって,ま

た,板状試料のgeffは式(22)によってそれぞれ算出する。 

2

1

2

1

,

H

H

H

H

H

>

=

ただし

 ··············································· (20) 

background image

11 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

0

2

0

10

176

H

f

geff

×

×

=

 ································································· (21) 

)

(

10

176

0

2

0

s

eff

M

H

f

g

×

×

=

 ························································ (22) 

ここに, H1,H2: 

2

1

αに対応する磁界 (A/m) 

H0: 共鳴磁界 (A/m) 

f0: 測定周波数 (Hz) 

Ms: 試料の飽和磁化 (A/m) 

図7 円板状試料測定用先端開放形ストリップライン共振器 

単位 mm 

周波数 

0.3 GHz 

1.0 GHz 

L1 

470 

140 

W1 

60 

60 

W2 

20 

20 

L2 

510 

180 

background image

12 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図8 球状試料測定用TE10n共振器 

単位 mm 

周波数 

3.0GHz 

10GHz 

30GHz 

278 

118.4 

36.9 

 72.1 

 22.9 

 8.636 

 34.0 

 10.2 

 4.318 

φ1 

 2.0 

 1.0 

 0.5 

φ2 

 6.0 

 3.0 

 1.5 

φ3 

15 

 5.0 

 2.5 

5.5 

スピン波共鳴半値幅 

5.5.1 

測定試料 試料の形状は,直径1〜2mmの球状とする。 

5.5.2 

測定条件 測定条件は,次による。 

(1) 測定周波数は,9〜10GHzとする。 

(2) 共振器は,負荷Qが2 000以上で,9〜10GHzの共振周波数をもつ透過形方形TE104姿態共振器とする

(図9参照)。 

(3) 試料の装荷位置 試料は,高周波電界が最小で,高周波磁界が最大である点の共振器の断面の中心に

装荷する(図9参照)。 

(4) 試料の取付け 試料は,溶融石英又はこれに類する誘電体棒の先端に接着剤などで固定する。共振器

へは共振器上面の中央にあけた結合孔から挿入し,固定する。 

(5) 印加静磁界 印加磁界は,高周波磁界と平行,すなわち,共振器の広辺方向に印加する。 

(6) マグネトロンの変調 パルス幅は1μs以上,繰返し周波数は,デューティサイクルが10−4程度になる

ように選ぶことが望ましい。 

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13 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図9 9.4GHzでのスピン波共鳴半値幅測定用TE104姿態共振器 

5.5.3 

測定 測定は,次による。 

(1) 測定回路 測定回路は,図10に示す回路又はこれと等価な回路とする。 

図10 スピン波共鳴半値幅測定回路のブロック図 

(2) 測定手順 測定は,次の順序で行う。 

(a) あらかじめ共振器の共振周波数f0,共振時の入力定在波比r1及び負荷QLを測定しておく。 

(b) 試料を共振器に装荷する。 

(c) マグネトロンを動作状態とし,周波数を共振器の共振周波数に合わせ,電力分配器Dを調整して共

振器への入射電力をほぼゼロとする。 

(d) 電磁石Jを用いて試料に静磁界を印加し,その強さH0を,ほぼ式(23)で与えられる値に調節する。 

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14 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6

)

(

2

1

2

0

2

0

S

S

M

M

H

+

=

γμ

ω

 ··················································· (23) 

ここに, 

Ms: 飽和磁化 (A/m) 

ω: 動作角周波数 (rad/s) 

γ=176×109: ジャイロ磁気定数 (m2/V・s2) 

μ0=4π×10-7: 真空透磁率 (H/m) 

(e) 電力分配器Dを調節し,共振器への入射電力を徐々に大きくしていき,オシロスコープMで観測

される出力波形に変化が認められる点を見いだす(図11参照)。 

(f) 共振器への入射電力を変化させ,その都度印加静磁界を変化させて,出力波形の変化が認められる

最小の入射電力P0を,電力計Hから読み取る。 

図11 出力波形の典型的な変化 

(3) 算出 算出は,次による。 

(a) 通常の電力計は,平均電力を指示するもので,式(24)によって共振器への入射ピーク電力Pinを求め

る。 

10

10

)

(

0

A

f

W

P

W

Pin

×

×

=

 ································································ (24) 

ここに, 

P0: 電力計から読み取った入射電力 (W) 

W: パルス幅 (s)  

f: 繰返し周波数 (Hz) 

A: 方向性結合器Fの結合度と固定減衰器Gの減衰量の和 (dB) 

(b) 式(25)によって臨界磁界hcritを算出する。 

+

=

2

0

0

1

4

)

/

(

na

d

d

b

a

f

S

Q

P

m

A

h

L

in

crit

π

μ

 ······························· (25) 

ここに, S=1+r1(粗結合の場合) 
 

1

1

1r

S

(密結合の場合) 

r1: 共振時の共振器の入力VSWR 

QL: 共振器の負荷Q 

a,b,d: それぞれ共振器の幅,高さ及び長さ (m) 

f0: 共振器の共振周波数 (Hz) 

μ0=4π×10-7: 真空透磁率 (H/m) 

n: 共振器中の半波長の数(図9の場合n=4) 

(c) 式(26)によってスピン波共鳴半値幅∆Hkを算出する。 

ω

μ

γ

S

crit

k

M

h

m

A

H

=

0

)

/

(

 ····················································· (26) 

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15 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

5.6 

キュリー温度 

5.6.1 

測定試料 測定試料は,5.1.1(1)による。 

5.6.2 

測定 5.1.1(3)に規定の飽和磁化測定装置の試料部分に温度制御可能な加熱装置を取り付ける。毎

分3℃以下の割合で温度を上昇させながら飽和磁化を測定し,図12に示すように飽和磁化の最大こう配部

分の接線が横軸と交わる点を求め,それをキュリー温度とする。 

図12 

5.7 

直流磁気特性 

5.7.1 

測定試料 環状試料に絶縁テープを一層巻き,これに二次巻線としてJIS C 3202の附属書2(ホル

マール銅線)に規定の直径0.23mm程度の絶縁導線を試料の全周にわたって均一に一層巻く。更にその上

に一次巻線としてJIS C 3202の附属書2に規定の直径0.6mm程度の絶縁導線を同じ巻き方で巻く。二次巻

数は,測定器の設定指示量による。一次巻数N1は,式(27)によって算出する。 

I

l

H

N

m

=

1

 ·············································································· (27) 

ここに, 

I: 磁化電流 (A) 

Hm: 実効飽和化磁界の強さ (A/m) 

l: 試料の平均磁路長 (m) 

備考 磁化電流によって一次巻線が発熱する場合は,線径を太くするか,又は磁化電流を小さくする

ように一次巻数を多くする。 

5.7.2 

測定条件 実効飽和磁束密度を測定する実効飽和化磁界の強さは,予想されるその試料の飽和保磁

力によって表1のとおりとする。 

なお,飽和保磁力の大きさが表1の各クラスの境界と予想される場合は,大きい方の磁界を選ぶことと

する。 

表1 

単位 A/m 

予想される飽和保磁力 実効飽和化磁界の強さ 

80未満 

800 

80以上 160未満 

1 600 

160以上 800未満 

4 000 

800以上 

8 000 

5.7.3 

測定 測定は,次による。 

(1) 測定原理 自記磁束計法には,積分方式によって,相互誘導器を用いたM積分方式とコンデンサと抵

抗によるCR積分方式があり,図13に両方式の原理図を示す。 

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16 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図13 測定原理 

M積分方式は,差電圧∆eを増幅して相互インダクタンスLによって入力側に負帰還する回路方式で

あり,増幅器の利得が十分に大きければ∆eを常に0にするように帰還電流が流れe1≒e2となるから 

dt

dB

A

N

e

dt

di

L

e

2

1

2

=

=

 ·························································· (28) 

から 

A

N

Li

B

2

=

 ··············································································· (29) 

ここに, 

B: 磁束密度 (T) 

L: 相互インダクタンス (H) 

i: 電流 (A) 

N2: 二次巻数 

A: 試料の断面積 (m2) 

となり,電流iを分流し,電圧に変換してXY記録計のY軸に入れ,そのときの磁化電流をX軸に

入れて磁化曲線を自動記録する。 

CR積分方式についても同様に増幅器の利得が十分大きければ 

iR

dt

dB

A

N

e

2

1

=

 ···································································· (30) 

となり 

=

=

RCV

idt

R

AB

N2

 ····························································· (31) 

と全磁束変化はコンデンサの両端の電圧Vを測定して求める。実際上はVの代わりにe0を用いても

誤差は無視できるので,e0を用いて式(32)によって磁束密度Bを算出する。 

A

N

CR

e

B

2

0

)T( =

··········································································· (32) 

(2) 測定手順 図13に示す原理図をもつ測定器でXY記録計にヒステリシス曲線を描かせて,飽和磁束密

度,残留磁束密度及び保磁力を次によって求める。ただし,磁束密度への換算は個々の計器係数によ

る。 

(a) 飽和磁束密度 ヒステリシス曲線の実効飽和化磁界の強さに対応する磁束密度を読み取り,これを

飽和磁束密度とする。 

17 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

(b) 残留磁束密度 ヒステリシス曲線の飽和磁束密度の状態から,磁界を取り去ったときの磁束密度を

読み取り,これを残留磁束密度とする。 

(c) 保磁力 ヒステリシス曲線の飽和磁束密度の状態から磁界を取り去り,更に反対方向に磁化してい

くとき,磁束密度がゼロになる磁界の強さを読み取り,これを保磁力とする。 

6. その他の性能試験 

6.1 

見掛密度 

6.1.1 

測定試料 特に規定しない。 

6.1.2 

液中でひょう量する方法 液中でひょう量する方法は,次による。 

(1) 測定原理 液体中にある試料は,試料と同体積の液体の重さに等しい浮力を受けているので,空中で

ひょう量し,これらの値と液体の密度から試料の見掛密度を求める。 

(2) 測定手順 測定は,次の順序で行う。 

(a) 試料をよく乾燥し,ひょう量して4けたまで求める (m1) 。 

(b) 試料を溶解したパラフィン中に浸し,十分に含浸させた後,これを取り出して表面に付着したパラ

フィンを十分にぬぐい取る。 

(c) パラフィン付試料をひょう量し,4けたまで求める (m2) 。 

(d) 試料をつり線で一定温度T (℃) の水中につるす。試料をつり線でつれないときは,つり線の付いた

容器に入れ,水中につるす。 

(e) 水中につった試料をひょう量し,4けたまで求める。つり線の付いた容器を用いるときは,試料を

容器に入れ,水中につり,ひょう量して4けたまで求める (m3) 。 

(f) つり線又は容器付つり線を水中でひょう量し,4けたまで求める (m4) 。 

(3) 算出 見掛密度は,式(33)によって算出する。 

S

m

m

m

m

d

=

)

(

4

3

2

1

app

 ···························································· (33) 

ここに, 

dapp: 見掛密度 (g/cm3) 

m1: 試料の空気中での質量 (g) 

m2: パラフィン含浸試料の空気中での質量 (g) 

m3: パラフィン含浸試料の水中での質量 (g) 

m4: つり線又は容器付つり線の水中での質量 (g) 

S: 温度T℃の水の密度 (g/cm3) 

備考1. つり線は,試料をつるすのに十分な強さをもち,水中に入ったつり線の体積の変化による誤

差が無視できるようなものであること。 

2. 水中につってひょう量するときは,すべて泡がないようにしなければならない。 

6.1.3 

体積から求める方法 試料の体積を幾何学的に計算できる場合は,その体積と質量から見掛密度を

式(34)によって算出する。 

V

m

d

=

app

 ················································································ (34) 

ここに, 

dapp: 見掛密度 (g/cm3) 

m: 試料の質量 (g) 

V: 試料の体積 (cm3) 

6.2 

曲げ強さ 

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18 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.2.1 

測定試料 試料の形状及び寸法は,原則として図14に示すとおりとする。ただし,断面が長方形

又はだ円形でもよい。 

図14 試料の形状及び寸法 

6.2.2 

測定 試料を図15に示すように,隔たった2支点間に載せ,両支点間の中央に加圧くさびで荷重

を試料に垂直に一定の速度で加えて,試料が切断破壊する荷重を測定し,式(35)によって曲げ強さσb3を算

出する。 

4

3

2

3

10

8

)

m

/

N

(

×

=dPL

b

π

σ

 ····························································· (35) 

ここに, 

P: 切断破壊時の荷重 (N) 

L: 支点間の距離 (m) 

d: 試料の直径 (m) 

図15 曲げ強さ試験 

備考1. くさびは,鋼製とする。 

2. 断面が長方形の場合(図16)は,式(36)によって算出する。 

4

2

2

3

10

2

3

)

m

/

N

(

×

=ab

PL

b

σ

 ···························································· (36) 

3. 断面がだ円形の場合(図17)は,式(37)によって算出する。 

4

2

2

3

10

8

)

m

/

N

(

×

=ab

PL

b

π

σ

 ···························································· (37) 

図16 

図17 

6.3 

ビッカース硬さ 

6.3.1 

測定試料 試料は,直径10mm以上の円又は一辺の長さ10mm以上の正方形若しくは長方形の断

面をもち,厚さ5mm以上のものとする。 

19 

C 2565-1992  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

測定断面は,エメリーぺーパ600番を用いて,水冷を行いながら研磨し,必要に応じてバフ研磨を行い,

傷がないものとする。 

6.3.2 

測定 測定に用いる試験機は,JIS B 7725の規定によって,更にこの測定に必要な検査に合格した

ものとする。 

測定は原則として9.8Nの荷重を用いて行う。ただし,9.8Nの荷重では試料に明確な割れ又はくずれを

生じるものは4.9Nの荷重とし,4.9Nの荷重も不適当な場合には0.49Nの荷重を用いる。 

ビッカース硬さの測定は,規定がない限り,試料の全体を代表できるように選んだ5か所で行い,その

平均値をもって測定値とする。測定値には,使用した試験荷重を示す。 

その他測定に関する事項は,JIS Z 2244による。 

6.4 

線膨張係数 

6.4.1 

測定試料 特に規定しない。 

6.4.2 

測定 圧力一定の下で,試料が温度とともに変化する長さを測定し,式(38)によって線膨張係数αt

を算出する。 

なお,測定記録には,測定温度を付記する。 

)

1(

0

t

L

Lt

α

+

=

 ········································································· (38) 

ここに, 

Lt: t℃での長さ (m) 

L0: 0℃での長さ (m) 

at: 線膨張係数 (1/℃) 

原案作成メンバー構成表 

(順不同) 

氏名 

所属 

(主査) 

橋 本 忠 士 

東京電気化学工業株式会社 

紅 林 秀都司 

三菱電機株式会社 

高 橋   弘 

日本マイクロウェーブ 

小笠原 直 幸 

東京都立大学 

金 木 利 之 

日本放送協会 

富 島   浩 

日本電信電話公社茨城電気通信研究所 

乾   哲 司 

日本電気株式会社 

徳 光 康 之 

株式会社富士通研究所 

村 田 計 枝 

島田理化工業株式会社 

田 村 修 二 

工業技術院標準部 

(事務局) 

安 原 吉 郎 

電子材料工業会