C 2556:2015
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
2A 用語及び定義 ················································································································ 2
3 一般的原理(励磁電流法) ································································································· 3
3.1 測定の原理 ··················································································································· 3
3.2 単板試験器 ··················································································································· 5
3.3 空隙補償 ······················································································································ 6
3.4 試験片 ························································································································· 6
3.5 励磁電源 ······················································································································ 7
4 鉄損の測定(励磁電流法) ································································································· 7
4.1 測定の原理 ··················································································································· 7
4.2 測定器 ························································································································· 7
4.3 測定の手順 ··················································································································· 8
5 磁界の強さ,励磁電流及び皮相電力の測定(励磁電流法) ······················································ 10
5A 一般事項 ····················································································································· 10
5.1 測定の原理 ·················································································································· 10
5.2 測定器 ························································································································ 11
5.3 測定の手順 ·················································································································· 12
5.4 特性値の計算法 ············································································································ 12
5.5 再現性 ························································································································ 14
附属書A(規定)ヨーク製作に関する必要条件 ········································································· 15
附属書B(参考)単板試験器による測定値のエプスタイン相当値への換算法 ··································· 16
附属書C(参考)方向性電磁鋼帯におけるエプスタイン測定値とSST測定値との相関関係 ················ 17
附属書D(参考)デジタルサンプリング法による磁気特性測定····················································· 18
附属書JA(規定)Hコイル法の単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法 ··························· 21
附属書JB(参考)Hコイル法の単板試験器におけるヨーク構造 ··················································· 31
附属書JC(規定)単板試験器による測定値のエプスタイン相当値への換算法 ································· 33
附属書JD(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 37
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まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本
電機工業会(JEMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を
改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格で
ある。これによって,JIS C 2556:1996は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
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単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法
Methods of measurement of the magnetic properties of electrical steel strip
and sheet by means of a single sheet tester
序文
この規格は,1992年に第2版として発行されたIEC 60404-3,Amendment 1(2002)及びAmendment 2
(2009)を基に,我が国で一般的となっている技術と整合させるため,技術的内容を変更して作成した日
本工業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JDに示す。
1
適用範囲
この規格は,単板試験器を用いた電磁鋼帯の磁気特性の測定方法の一般的原理及び技術的細目について
規定する。
この規格は,商用周波数における次の磁気特性の測定方法に適用する。
a) 方向性電磁鋼帯
1) 1.0 Tから1.8 Tまでの磁束密度の波高値Jˆにおける,次の磁気特性。
− 鉄損Ps
− 皮相電力Ss
− 磁界の強さの実効値H~
2) 1 000 A/m以下の磁界の強さの波高値Hˆにおける,次の磁気特性。
− 磁束密度の波高値Jˆ
− 磁界の強さの波高値Hˆ
b) 無方向性電磁鋼帯
1) 0.8 Tから1.5 Tまでの磁束密度の波高値Jˆにおける,次の磁気特性。
− 鉄損Ps
− 皮相電力Ss
− 磁界の強さの実効値H~
2) 10 000 A/m以下の磁界の強さの波高値Hˆにおける,次の磁気特性。
− 磁束密度の波高値Jˆ
− 磁界の強さの波高値Hˆ
単板試験器は,いかなる等級の電磁鋼帯から採取した試験片にも適用できる。磁気特性は,誘起電圧が
正弦波となる励磁条件下(以下,正弦波磁束励磁条件という。)において,磁束密度の波高値Jˆ及び励磁周
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波数を指定して測定する。
測定は,(23±5) ℃の周囲温度において,消磁された試験片で行う。
注記1 磁化の強さの指標について,この規格の対応国際規格であるIEC 60404-3:2009においては,
IEC 60050-221:1990で定義される“磁気分極(magnetic polarization)”の用語が用いられてい
るが,一部のIEC 60404シリーズの規格では,“磁束密度(magnetic flux density)”の用語が
使用されていた。この規格では,我が国で一般的な,後者の用語を用いる。
注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60404-3:1992,Magnetic materials−Part 3: Methods of measurement of the magnetic properties
of magnetic sheet and strip by means of a single sheet tester,Amendment 1:2002及び
Amendment 2:2009(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 2550-1 電磁鋼帯試験方法−第1部:エプスタイン試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法
JIS C 2550-5 電磁鋼帯試験方法−第5部:電磁鋼帯の密度,抵抗率及び占積率の測定方法
JIS C 2552 無方向性電磁鋼帯
JIS C 2553 方向性電磁鋼帯
2A
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
2A.1
磁界の強さ,H(magnetic field strength)
試験片を磁化しようとする磁場の大きさ。一般的に,磁界の強さHは,式(1)によって求める。
1
1
d
I
N
l
H=
∫
············································································· (1)
ここに,
H: 磁界の強さ(A/m)
l: 磁路の長さ(m)
N1: 磁路に巻かれた励磁コイルの総巻数
I1: 励磁電流(A)
磁界の強さHを求める方法には,励磁電流法とHコイル法とがある。
2A.2
励磁電流法(magnetizing current method)
磁界の強さHを,励磁電流から求める方法。磁界の強さHが磁路の一部の試験片の既定の長さlmでは
一様で,その他の磁路においてはゼロと仮定する。磁界の強さHは,式(1)から導出される式(2)によって
求める。
m
1
1
l
I
N
H=
················································································· (2)
ここに,
lm: 既定の磁路長(m)
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2A.3
Hコイル法(H coil method)
磁界の強さHを,試験片表面に近接して置いた空芯の磁界の強さ検出コイル(以下,Hコイルという。)
の誘起電圧によって検出する方法。
注記 Hコイル法による磁気特性の測定方法を附属書JAに,Hコイル法における試験器構造を附属
書JBに示す。
2A.4
既定の磁路長,lm(conventional magnetic length)
磁界の強さHが一様でない磁気回路において,励磁電流法で用いる,磁界の強さHを一様と仮定した特
定部分の磁路の長さ。
注記 単板試験器では,ヨーク両端磁極間の内側寸法に等しい0.45 mを既定の値とする。
2A.5
磁束密度,B(magnetic flux density)
一様に磁化された試験片の,単位断面積(m2)当たりの磁束量。単位はテスラ(T)。
2A.6
磁気分極,J(magnetic polarization)
一様に磁化された試験片の,単位断面積(m2)当たりの磁化の強さ。単位はテスラ(T)。
注記 単板試験器において,二次コイル及び空隙補償用の相互誘導器を用いて測定される値は,磁気
分極Jである。磁束密度Bと磁気分極Jとは,磁気定数をμ0=[4π×10−7 (H/m)] とすると,B
=J+μ0Hの関係にある。電磁鋼帯などの高透磁率材料では,磁束密度Bと磁気分極Jとは,ほ
ぼ等しい。我が国では,一般的に磁気分極Jと磁束密度Bとを区別せずに用いることが多い。
2A.7
実効質量,ma(effective mass)
磁気回路を構成する鉄心のうち,既定の磁路長lmに相当する試験片の長さの部分が鉄損Psに寄与すると
して求めた,既定の磁路長lmの試験片の質量(4.3.1参照)。単位はキログラム(kg)。
2A.8
空隙補償(air flux compensation)
二次コイルの誘起電圧から,コイル内に試験片がない状態で二次コイルに誘起する電圧を差し引くこと
によって,二次コイルの誘起電圧を磁気分極Jの微分値に対応させること(3.3参照)。
2A.9
鉄損,Ps(specific total loss)
正弦波磁束励磁条件によって励磁したときに,試験片中で消費されるエネルギーの,試験片の実効質量
maで除した値(4.3.3参照)。単位はワット毎キログラム(W/kg)。
2A.10
皮相電力,Ss(specific apparent power)
正弦波磁束励磁条件によって励磁したときの,励磁電圧の実効値と励磁電流の実効値
1
~Iとの積を試験片
の実効質量maで除した値(5.4.4参照)。単位はボルトアンペア毎キログラム(VA/kg)。
3
一般的原理(励磁電流法)
3.1
測定の原理
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鉄損特性,交流磁化特性及び皮相電力特性の測定は,試料に加えられた磁界と磁束とを同時に検出する
方法によって行う。試料は1枚の電磁鋼板で,2個の巻線の中に置き,ヨークとともに閉磁気回路を構成
する。2個の巻線は,外側に巻かれた励磁コイルと内側に巻かれたBコイルとである。ヨークは,試料に
加わる磁界の分布と試料内の磁界の分布とを均一に近付けるために用いる。
単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定原理には,励磁電流法及びHコイル法の二つの方法がある。
励磁電流法についての測定原理は,次による。Hコイル法についての測定原理は,附属書JAに示す。
励磁電流法は,試験片を挿入した単板試験器を無負荷変圧器と捉え,試験片及びヨークを含め磁路長全
体の総合的な磁気特性が検出されるが,これを規定の磁路長lmの試験片の磁気特性と等価と仮定して算出
する。励磁電流法は,測定再現性がよい長所がある。しかし,JIS C 2552及びJIS C 2553の特性表の数値
と比較するためには,附属書JCに規定する規定の磁路長lm,試験片とヨークとの間のギャップの磁気抵
抗及びヨークの損失に関する補正が必要である。
注記1 JIS C 2552及びJIS C 2553では,磁気特性の表の数値について,JIS C 2550-1に規定するエ
プスタイン法による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法を適用している。エプスタイン法の測定
原理は励磁電流法であり,実効磁路長を規定の値とするが,ヨークを使用せず試験片だけで
磁気回路を構成するため,試験片の磁気特性だけを測定している。
試験片は,1枚の電磁鋼帯の切板とし,次の2個のコイルの内側に挿入する。
− 外側に,一次コイル(励磁コイル)
− 内側に,二次コイル(Bコイル)
2個の同形状のヨークを用いて,閉磁路を形成する(図1参照)。ヨークの断面積は,試験片の断面積よ
りも十分に大きくなければならない。
注記2 ヨークを用いることによって,試験片に加わる磁界の分布及び試験片内の磁束分布が均一に
近付く。
図1−単板試験器の概要
試験片に加わる圧力による影響を最小限とするため,3.2.1に従い,上側ヨークの質量の一部を相殺する
機能のある懸架装置を用いる。
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温度の変化は,熱膨張収縮によって試験片に応力が発生しない範囲に保持する。
3.2
単板試験器
3.2.1
ヨーク
各ヨークはコの字形状で,絶縁された方向性電磁鋼板又は鉄−ニッケル合金薄板で構成する。ヨークは,
磁気抵抗が低いものとし,その鉄損Psは,1.5 T及び50 Hzにおいて1.0 W/kg以下とする。ヨークは,附
属書Aの必要条件に基づいて製作する。
ヨークは,渦電流効果を抑えてヨーク内の磁束がより均一な分布となるように,一対の接着した積層鋼
板鉄心で製作する。ヨークのコーナー部は,交互積みの突合せ接合とする(図1参照)。
注記1 積層鋼板の接着又は支持によってヨーク内に発生する応力は,極力小さくすることが望まし
い。
単位 mm
図2−ヨークの寸法
ヨークの磁極面の幅は,25 mm±1 mmとする。
それぞれのヨークの二つの磁極面は,0.5 mm以内で同一平面となるようにし,二つのヨークの対向する
磁極面の隙間は,可能な限り小さく,かつ,均一な状態とする。
ヨークは,試験片内に機械的応力を発生させないよう,高い剛性をもたなければならない。
各ヨークの高さは90 mmから150 mmまでの間とする。ヨークの幅は50005
+mmとし,内側寸法は450 mm
±1 mmとする(図2参照)。
注記2 磁極面間の隙間の均一性は,上側ヨーク及び下側ヨークの対向する磁極面の間に感圧シート
を挟み,上側ヨークの荷重をかけたとき,磁極面が不均一に接触する場合に現れる発色の偏
在がないことによって,確認できる。
注記3 試験結果の比較性能を証明できる場合には,他のヨーク寸法を採用できる。
ヨークの脚の間に,試験片を載せる絶縁非磁性体の支持台を配置する。支持台は,試験片がヨークの磁
極面と隙間なく接触するように,磁極面と同じ平面の中心に配置する(図2参照)。
上側ヨークは,試験片を挿入しやすいように,上方向に移動できる状態にする。また,試験片を挿入し
た後,上側ヨークは下側ヨークと正確に再整列できなければならない。上側ヨークの懸架装置は,ヨーク
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質量の一部を相殺できるものとし,試験片に加わる力が100 Nから200 Nまでの間となるように調整する。
注記4 正方形のヨークを採用すれば,無方向性電磁鋼帯の材料を1枚の試験片で測定できる。正方
形の試験片を90°回転することによって,圧延方向及び直角方向の特性の測定が可能となる。
3.2.2
コイル
一次コイル及び二次コイルは,440 mm以上の長さとし,絶縁非磁性体の四角形の巻枠に巻く。巻枠の
寸法は,次による。
− 長さ
445 mm ±2 mm
− 内側幅
510 mm ±1 mm
− 内側高さ
520
−mm
− 外側高さ
15 mm以下
一次コイルは,次のいずれかによって製作する。
− 5個又は5個以上の同じ寸法で同じ巻数のコイルを,並列に接続して並べて全長とする(図3参照)。
例えば,5個のコイルであれば,直径1 mmの銅線を5層に巻いて,400ターンとする。
− 1個の全長にわたって連続かつ均一に巻いたコイルとする。例えば,直径1 mmの銅線を1層又は多
層に巻いて,400ターンとする。
二次コイルの巻数は,測定機器の特性に合わせて設定してよい。
注記 一次コイル及び二次コイルは,巻枠の同じ側から巻き始めて,同じ周方向に巻くことが望まし
い。
図3−一次コイルの5個のコイルの接続図
3.3
空隙補償
空隙磁束の効果は,補償しなければならない。例えば,相互誘導器によって行える。相互誘導器の一次
コイルは,単板試験器の一次コイルと直列に接続し,相互誘導器の二次コイルは,単板試験器の二次コイ
ルと逆極性で直列に接続する(図4参照)。
注記 単板試験器の一次コイルの内側に,空隙補償用の二次コイルを設置し,相互誘導器の二次コイ
ルと同じ作用をさせることができる。
相互誘導係数の調整は,単板試験器に試験片がない状態で一次コイルに交流電流を流したときに,単板
試験器及び相互誘導器の二次コイルの非共有端子間で測定した電圧が,単板試験器の二次コイル単独の両
端間に現れる電圧の0.1 %を超えないように行う。
この調整によって,連結した二次コイルに誘起される電圧の整流平均値は,試験片内の磁束密度の波高
値Jˆに比例する。
3.4
試験片
試験片の長さは,500 mm以上とする。磁極面の外側に出た試験片の部分は,測定に大きな影響を及ぼ
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さないが,試験片の出し入れを容易にするのに必要な最小限の長さとする。
試験片の幅は,可能な限り大きいものとし,ヨーク幅の60 %以上,ヨーク幅以下とする。
試験片は,過剰な切断かえり及び機械的な変形が生じないように切断する。試験片は,平たんでなけれ
ばならない。試験片を切断する場合には,鋼帯の母材の縁を基準方向とする。圧延方向と切断方向との角
度の許容差は,次による。
− 方向性電磁鋼帯については,±1°
− 無方向性電磁鋼帯については,±5°
無方向性電磁鋼帯については,試験片が正方形の場合を除き,圧延方向に平行な試験片1枚及び直角な
試験片1枚の,2枚の試験片を切断する。試験片が正方形の場合は,試験片1枚でよい。
3.5
励磁電源
励磁電源は,内部インピーダンスが低く,かつ,電圧及び周波数の安定性の高いものを使用する。測定
時において,電圧及び周波数の精度は,±0.2 %以上とする。
さらに,二次コイルに誘起する電圧の波形は,可能な限り正弦波とする。二次電圧の波形率は,1.10 %
〜1.12 %とすることが望ましい。例えば,電子負帰還制御の電力増幅器を用いるなど,幾つかの方法によ
って達成できる。
注記 二次電圧の波形率“1.10 %〜1.12 %”を,対応国際規格では“1.111±1 %”と表記している。
4
鉄損の測定(励磁電流法)
4.1
測定の原理
試験片を挿入した単板測定器は,無負荷の変圧器に等しく,その鉄損Psを図4に示す測定回路を用いて
測定する。
4.2
測定器
4.2.1
電圧計
注記 デジタルサンプリング法の適用は,附属書Dを参照。
4.2.1.1
平均値形交流電圧計
単板試験器の二次電圧の整流平均値は,平均値形交流電圧計で測定する。入力インピーダンスが1 MΩ
以上で,±0.5 %の精度以上のデジタル電圧計が望ましい。
注記 このような電圧計は,通常,1.111を整流平均値に乗じた値で表示されている。
二次側回路の負荷は,可能な限り小さくする。このため,平均値形交流電圧計の内部抵抗は,1 000 Ω/V
以上とする。
4.2.1.2
実効値交流電圧計
実効値に応答する電圧計を使用する。入力インピーダンスが1 MΩ以上で,±0.5 %の精度以上のデジタ
ル電圧計が望ましい。
4.2.2
周波数計
±0.1 %の精度以上の周波数計を使用する。
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Hz
V2
V1
W
A
M
試験片
一次
コイル
二次
コイル
S1
S2
S3
Hz :周波数計
A :電流計
W :電力計
M :空隙補償用の相互誘導器
V1 :平均値形交流電圧計
V2 :実効値交流電圧計
S1,S2及びS3 :スイッチ
図4−鉄損の測定回路
4.2.3
電力計
電力計は,実際の力率及び波高率において±0.5 %の精度以上をもたなければならない。
注記1 電圧回路の入力抵抗が1 MΩ以上のデジタル電力計が望ましい。
注記2 デジタルサンプリング法の適用は,附属書Dを参照。
電力計の電圧回路の入力抵抗は,全てのレンジにおいて100 Ω/V以上とする。必要に応じて,二次側回
路の損失を読取値から差し引く。
注記3 二次側回路に接続する計器に,入力インピーダンスが十分高いデジタル電圧計及びデジタル
電力計だけを使用する場合は,二次側回路の損失を無視できる。また,レンジの1/4以下の
値の読取りは,可能な限り行わないことが望ましい。
電圧回路のリアクタンスを補償する機能のある電力計を除き,電力計の電圧回路の入力抵抗は,そのリ
アクタンスの5 000倍以上とする。
測定回路内に電流計が含まれている場合は,二次電圧を調整して損失を測定している間,電流計を短絡
する。
4.3
測定の手順
注記 デジタルサンプリング法の適用は,附属書Dを参照。
4.3.1
測定の準備
試験片の長さを±0.1 %の精度以上で測定し,その質量を±0.1 %の精度以上で測定する。試験片をコイ
ル内に挿入してコイルの縦横軸の中央に置き,質量の一部を相殺した上側ヨークを降ろす。
測定前に,試験片は,測定時よりも十分高い初期磁場から減衰する交流磁界で消磁する。
磁気回路の既定の磁路長lmは,0.45 mを既定の値とする。したがって,試験片の鉄損Ps及び皮相電力
Ssの計算に用いる実効質量maは,式(3)による。
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m
l
l
m
m
a=
················································································ (3)
ここに,
ma: 試験片の実効質量(kg)
lm: 既定の磁路長(m),(lm=0.45)
l: 試験片の長さ(m)
m: 試験片の質量(kg)
4.3.2
励磁電源の調整
励磁電源は,二次電圧の整流平均値が所要値に達するまで,出力を徐々に増加させる。この値は,式(4)
による。
J
A
R
R
R
N
f
U
ˆ
4
t
i
i
2
2
+
=
································································ (4)
ここに,
2
U: 二次コイルの誘起電圧の整流平均値(V)
f: 励磁周波数(Hz)
N2: 二次コイルの巻数
Ri: 二次回路内の計器の合計抵抗(Ω)
Rt: 二次コイルと相互誘導器との直列抵抗(Ω)
A: 試験片の断面積(m2)
Jˆ: 磁束密度の波高値(T)
二次回路内の計器に入力インピーダンスが1 MΩ以上のデジタル電圧計及びデジタル電力計を用い,二
次回路内の計器の合計抵抗Riが二次コイル及び相互誘導器の直列抵抗Rtに比べ十分に大きい場合は,式(4)
は式(5)に置き換えることができる。
J
A
N
f
U
ˆ
4
2
2=
·········································································· (5)
実効値表示された平均値形電圧計の読みを用いる場合は,式(5)の右辺の係数を
π
2とした,式(6)を用
いる。
J
A
N
f
U
ˆ
2
2
2
π
=
······································································ (6)
試験片の断面積は,式(7)による。
m
ρ
l
m
A=
·················································································· (7)
ここに,
A: 試験片の断面積(m2)
m: 試験片の質量(kg)
l: 試験片の長さ(m)
ρm: 試験片の規定の密度,又はJIS C 2550-5に従って測定された
値(kg・m−3)
4.3.3
鉄損の測定
一次回路に電流計が含まれている場合は,電流計の値を観察し,電力計の電流回路が過負荷にならない
ように注意する。その後,電流計を短絡して,改めて二次電圧を調整する。
二次電圧波形をオシロスコープで観察し,基本波以外の成分を含まないことを確認した後,電力計の値
を読み取る。電力計で測定した電力は,二次側回路内の計器によって消費された電力を含んでいる。二次
電圧は基本的に正弦波状であるため,この二次側の損失電力は一次近似として,(
)
i
2
2
/
111
.1
R
U
に等しい。
このため,合計損失Pcは,式(8)による。
10
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(
)
i
2
2
m
2
1
c
111
.1
R
U
P
N
N
P
−
=
····························································· (8)
ここに,
Pc: 合計損失(W)
N1: 一次コイルの巻数
N2: 二次コイルの巻数
Pm: 電力計によって測定された電力(W)
2
U: 二次コイルの誘起電圧の整流平均値(V)
Ri: 二次回路内の計器の合計抵抗(Ω)
鉄損Psは,合計損失Pcを試験片の実効質量maで除して求め,式(9)によって算出する。
m
c
a
c
s
ml
l
P
m
P
P
=
=
·········································································· (9)
ここに,
Ps: 鉄損(W/kg)
Pc: 合計損失(W)
ma: 試験片の実効質量(kg)
l: 試験片の長さ(m)
m: 試験片の質量(kg)
lm: 既定の磁路長(m),(lm=0.45)
注記 研究報告によれば,既定の磁路長(lm=0.45 m)としたヨークの内側寸法は,異なる磁束密度B
における,方向性電磁鋼帯の実効磁路長(lm>0.45 m)及び無方向性電磁鋼帯の実効磁路長(lm
<0.45 m)の平均値に近い。
エプスタイン試験器による鉄損測定値を基準として,単板試験器の測定結果を補正する場合の補正方法
の詳細を,附属書JCに示す。
無方向性電磁鋼帯においては,JIS C 2552の鉄損規定値と対比する目的の測定では,圧延方向及び直角
方向について測定した二つの鉄損値の算術平均を報告する。その他の測定では,圧延方向及び直角方向に
ついて測定した鉄損値を個別に報告する。
4.3.4
鉄損測定の再現性
この箇条で規定した測定方法における鉄損測定の再現性は,方向性電磁鋼帯については,1 %の相対標
準偏差,無方向性電磁鋼帯については,2 %の相対標準偏差とする。
5
磁界の強さ,励磁電流及び皮相電力の測定(励磁電流法)
5A
一般事項
この箇条では,次の特性を判定するための測定方法を規定する。
− 磁束密度の波高値 Jˆ
− 励磁電流の実効値
1
~I
− 磁界の強さの波高値 Hˆ
− 皮相電力 Ss
5.1
測定の原理
5.1.1
磁束密度の波高値
磁束密度の波高値Jˆは,4.2.1.1及び4.3.2の規定に従い,二次コイルの誘起電圧の整流平均値から求める。
5.1.2
励磁電流の実効値
励磁電流の実効値
1
~Iは,図5に示す回路内の実効値交流電流計によって測定する。
11
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
Hz
V2
V1
A
M
試験片
一次
コイル
二次
コイル
Hz :周波数計
A :実効値交流電流計
M :空隙補償用の相互誘導器
V1 :平均値形交流電圧計
V2 :実効値交流電圧計
図5−磁界の強さの実効値の測定回路
5.1.3
磁界の強さの波高値
磁界の強さの波高値Hˆは,励磁電流の波高値
1ˆIから得る。励磁電流の波高値 1ˆIは,図6に示すように,
既知の値の精密抵抗器Rの両端に生じる電圧降下を,波高値交流電圧計又は校正済みのオシロスコープを
用いて測定する。
Hz
V2
M
試験片
一次
コイル
二次
コイル
R
V1
Hz :周波数計
R :精密抵抗器
V1 :波高値交流電圧計又は校正済みのオシロスコープ
M :空隙補償用の相互誘導器
V2 :平均値形交流電圧計
図6−波高値電圧計を用いた磁界の強さの波高値の測定回路
5.2
測定器
5.2.1
平均値形交流電圧計
平均値形交流電圧計は,4.2.1.1による。
5.2.2
電流の実効値測定器
励磁電流の実効値
1
~I測定には,±0.5 %の精度以上の低インピーダンスの実効値電流計で測定するか(図
5参照),又は,一次コイルに直列に接続した無誘導精密抵抗器両端の電圧降下を実効値交流電圧計を用い
12
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
て測定し,電流値に換算する。
5.2.3
電流の波高値測定器
高感度の波高値交流電圧計,又は校正済みのオシロスコープで,一次コイルに直列に接続した無誘導精
密抵抗器両端の電圧降下の波高値を測定する(図6参照)。
使用する装置のフルスケール誤差は,±3 %以内とする。
5.2.4
励磁電源
励磁電源は,3.5による。
5.2.5
抵抗器
±0.5 %の精度以上の,既知の値の無誘導精密抵抗器を使用する。
抵抗値は,波高値電圧計の感度に応じて選定する。誘起電圧波形のひずみ(歪)を最小限に抑えるため,
抵抗値は1 Ωを超えてはならない。
注記 一般的には,0.1 Ω〜1 Ωの範囲の値をもつ0.1 %の精度以上のものを用いる。
5.3
測定の手順
5.3.1
測定の準備
測定の準備は,4.3.1による。
5.3.2
測定
通常は,一組又は複数組の磁束密度の波高値Jˆ及び磁界の強さ(波高値又は実効値)の値を測定する。
磁界の強さHを指定して磁束密度の波高値Jˆを測定する場合は,所要の磁界の強さHとなるように励磁
電流を調整し,二次電圧の整流平均値を平均値形交流電圧計を用いて測定する(4.3.2参照)。
磁束密度の波高値Jˆを指定して磁界の強さHを測定する場合は,4.3.2によって,所要の磁束密度の波高
値Jˆとなるように二次電圧の値を調整する。
磁界の強さの実効値H~の測定においては,励磁電流の実効値
1
~Iを,5.1.2によって測定する。
磁界の強さの波高値Hˆの測定においては,励磁電流の波高値
1ˆIを,5.1.3によって測定する。この測定
においては,二次電圧の波形率は規定の値(3.5参照)を超えてもよい。
5.3.3
無方向性電磁鋼帯
無方向性電磁鋼帯において,圧延方向及び直角方向について測定した二つの磁束密度の波高値Jˆの算術
平均を求め,それとJIS C 2552の表1又は表2の磁束密度Bの規定値とを対比する。
5.4
特性値の計算法
5.4.1
磁束密度の波高値の測定
磁束密度の波高値Jˆは,式(10)による(4.3.2参照)。
i
t
i
2
2
4
1
ˆ
R
R
R
U
A
N
f
J
+
=
···························································· (10)
ここに,
Jˆ: 磁束密度の波高値(T)
f: 励磁周波数(Hz)
N2: 二次コイルの巻数
A: 試験片の断面積(m2)
2
U: 二次コイルの誘起電圧の整流平均値(V)
Ri: 二次回路内の計器の合計抵抗(Ω)
Rt: 二次コイルと相互誘導器との直列抵抗(Ω)
注記1 二次回路内の計器に入力インピーダンスが十分大きいデジタル電圧計及びデジタル電力計を
用い,二次回路内の計器の合計抵抗が二次コイル及び相互誘導器の直列抵抗に比べ十分に大
13
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
きい場合は,式(10)は次の式に置き換えることができる。
2
2
4
1
ˆ
U
A
N
f
J=
注記2 実効値表示された平均値形電圧計の読みを用いる場合は,上式の右辺の分母の係数を
π
2と
した,次の式を用いる。
2
2
2
1
ˆ
U
A
N
f
J
π
=
5.4.2
磁界の強さの実効値の測定
磁界の強さの実効値H~は,式(11)による。
1
m
1~
~
I
l
N
H=
···············································································(11)
ここに,
H~: 磁界の強さの実効値(A/m)
N1: 一次コイルの巻数
lm: 既定の磁路長(m),(lm=0.45 m)
1
~I: 励磁電流の実効値(A)
複数組の磁束密度の波高値Jˆ及び磁界の強さの実効値H~の測定によって,磁界の強さの実効値H~に対
する磁束密度の波高値Jˆの磁化曲線を描くことができる。
5.4.3
磁界の強さの波高値の測定
磁界の強さの波高値Hˆは,式(12)による。
································································· (12)
ここに,
Hˆ: 磁界の強さの波高値(A/m)
N1: 一次コイルの巻数
lm: 既定の磁路長(m),(lm=0.45 m)
1ˆI: 励磁電流の波高値(A)
Rn: 無誘導精密抵抗器の抵抗値(Ω)
mˆU: 無誘導精密抵抗器の両端の電圧降下の波高値(V)
注記
振幅透磁率μaは,次のように表すことができる。
1
ˆ
ˆ
0
a
+
=
H
J
μ
μ
5.4.4
皮相電力の測定
合計皮相電力Sは,式(13)を用いて算出する。
····················································· (13)
ここに,
S: 合計皮相電力(VA)
1
~I: 励磁電流の実効値(A)
2
~U: 二次電圧の実効値(V)
N1: 一次コイルの巻数
N2: 二次コイルの巻数
注記
2
2
2
2
~
U
U
π
=
の関係は,U2が正弦波電圧の場合にだけ成り立つ。
皮相電力Ssは,合計皮相電力Sを試験片の実効質量maで除して求め,式(14)によって算出する。
m
m
n
1
1
m
1
ˆ
ˆ
ˆ
U
l
R
N
I
l
N
H
=
=
2
1
2
1
2
1
2
1
~
2
2
~
~
N
N
U
I
N
N
U
I
S
π
=
=
14
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
S
ml
l
m
S
S
m
a
s
=
=
······································································ (14)
ここに,
Ss: 皮相電力(VA/kg)
S: 合計皮相電力(VA)
ma: 試験片の実効質量(kg)
l: 試験片の長さ(m)
m: 試験片の質量(kg)
lm: 既定の磁路長(m),(lm=0.45)
5.5
再現性
この箇条で規定する測定方法の再現性は,3 %以内の相対標準偏差とする。
15
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A
(規定)
ヨーク製作に関する必要条件
ヨーク製作に関する必要条件を,次に示す。
a) ヨークでの損失を確実に,低く,かつ,不変にすることが重要である。励磁周波数50 Hzで測定した
ときの典型的な損失値は,磁束密度40 mTにおいて1 mW/kgである。鋼板間の短絡は,ヨークでの損
失が高くなる一つの要因となる。ヨークに一次コイルと二次コイルとを巻くことによって,ヨークで
の損失を測定できる。それぞれのコイルの巻数は,25ターンで十分である。
b) ヨークの鋼板間の絶縁抵抗は,抵抗計及びプローブを用いて検査する。
c) ヨークの製作の手順は,次による。
1) 切断した鋼板を応力除去焼なましする。
2) 鋼板を接着してヨークを組み立てた後,磁極面を機械加工する。ヨークの組立ては,高い圧力を加
えないで行わなければならない。
3) 磁極面の平行度を適切な計器で確かめ,上側ヨークと下側ヨークとの磁極面間のエアギャップの均
一度を感圧シートを用いてチェックする。
4) 感圧シートの発色濃淡分布が一様となり,エアギャップが十分均一であることが示されるまで,カ
ーボランダム及びダイヤモンドペーストを使って研磨する。上側ヨークを使用時の正規の状態で下
側ヨークの上に置き,僅かの距離で往復させて研磨してもよい。
d) 研磨によって金属流動が起こり,鋼板間に短絡を生じることがある。この金属流動層を非酸化性酸(例
えば,塩酸)を用いて,注意深いエッチング処理して除去することが重要である。この処理は,金属
流動層が除去されるまで酸を染ませた布で磁極面を擦って行う。その後,注意深く洗浄及び酸の中和
を行うことが重要である。
e) d) の処理による損失の減少を確認するため,研磨及びエッチング処理の前後でヨークでの損失の測定
を行うことは有効である。
f)
磁極面のエッチング及び洗浄処理の後に,鋼板間の絶縁抵抗の最後の確認を行う。
g) ヨークを使用する前に,使用時に生じる最大の磁束密度より大きい初期磁束密度から,注意深く消磁
する。
16
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B
(参考)
単板試験器による測定値のエプスタイン相当値への換算法
(対応国際規格を不採用とした。)
17
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
方向性電磁鋼帯におけるエプスタイン測定値とSST測定値との相関関係
(対応国際規格を不採用とした。)
18
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
デジタルサンプリング法による磁気特性測定
D.1 一般原理
デジタルサンプリング法は,この規格の電気関連の測定に多く使用されている。二次電圧U2(t) 及び励
磁コイルに直列に接続された無誘導精密抵抗器(図6参照)の両端の電圧降下U1(t) のデジタル化,並び
にこれらのデータから数値処理によって試験片の磁気特性を判定することを特徴としている。この目的の
ため,電圧の時間関数からjの添え字をもつこれらの電圧の瞬時値u2j及びu1jを,サンプル−ホールド回
路によって,等しい時間間隔でそれぞれサンプリングする。サンプリングされた電圧の瞬時値は,アナロ
グ−デジタル変換器(ADC)によって,デジタル値に変換する。1周期又は複数周期にわたって採取した
データによって,この規格で要求する全ての磁気特性をコンピュータ処理で求めることが可能である。
デジタルサンプリング法は,図4〜図6の計器の全ての機能を,データ捕捉装置とソフトウエアとの組
合せによって実現する。二次電圧の正弦波制御もデジタル法によって可能となる。
デジタルサンプリング法は,不確かさを低くするが,不適切な使用方法によっては,大きな誤差をもた
らす。
D.2 技術的詳細及び要求事項
デジタルサンプリング法の原理は,電圧及び時間の離散化にある。すなわち,無限小の時間間隔dtを式
(D.1)によって算出する有限の時間間隔Δtで置き換える。
s
1
1
f
fn
n
T
t
=
=
=
∆
···································································· (D.1)
ここに,
Δt: サンプリング点の間隔(s)
T: 励磁周期の長さ(s)
f: 励磁周波数(Hz)
n: 1周期の間にサンプリングされた瞬時値の個数
fs: サンプリング周波数(点/s)
不確かさを低くするためには,励磁周期長さをサンプリング間隔で除した値が整数(ナイキスト条件)
で,サンプリング周波数fsが入力信号帯域の2倍より大きいことが望ましい。
平均値形交流電圧計に倣い,磁束密度の波高値Jˆは,1周期の間に採取されたu2jの値の合計から,式(D.2)
によって算出する。
∫=
=
T
t
t
t
U
T
A
N
f
J
0
2
2
d
)
(
1
4
1
ˆ
∑
−
=
≅
1
0
2
2
s
4
1
n
j
j
u
A
N
f
··································· (D.2)
鉄損Psは,u2j及びu1jを1点ごとに掛け算して,1周期の間を合計することから,式(D.3)によって算出
する。
∫=
≅
=
T
t
A
RN
l
N
t
t
U
t
U
T
A
RN
l
N
P
0
m
2
m
1
2
1
m
2
m
1
s
d)
(
)
(
1
ρ
ρ
∑
−
=
1
0
2
1
n
j
j
ju
u
·················· (D.3)
ここに,
Jˆ: 磁束密度の波高値(T)
f: 励磁周波数(Hz)
n: 1周期の間にサンプリングされた瞬時値の個数
A: 試験片の断面積(m2)
19
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
T: 励磁周期の長さ(s)
fs: サンプリング周波数(点/s)
u2: 二次電圧(V)
j: 瞬時値の連続番号
N1: 一次コイルの総巻数
lm: 規定の磁路長(m)(lm=0.45)
R: 励磁コイルに直列に接続された無誘導精密抵抗器の抵抗値
(Ω)
Ps: 試験片の鉄損(W/kg)
N2: 二次コイルの総巻数
ρm: 試験片の密度(kg・m−3)
u1: 無誘導精密抵抗器の両端の電圧降下(V)
注記 磁界の強さの波高値Hˆ及び皮相電力Ssは,それぞれ次の式によって算出できる。
∑
∑
=
=
≅
=
n
j
j
n
j
j
u
n
u
n
A
RN
Rl
N
S
U
Rl
N
H
0
2
2
0
2
1
m
2
m
1
s
m
1
1
1
ˆ
ˆ
ρ
及び
u2j及びu1jの演算は,コンピュータ又はデジタル信号処理器(DSP)によって処理できる。ナイキスト条
件を成り立たせるには,サンプリング周波数fs及び励磁周波数fを,共通の高い周波数のクロックで生成
することが必須であり,この場合,必然的に整数比のfs / fが得られる。ナイキスト条件が成り立つ場合に
は,1周期128点のサンプリング数で,十分な精度をもって波形を測定できる。1周期128点の数は,シャ
ノン定理に基づき,H(t) が通常41次以上の周波数の高調波を含んでいないことによって導かれる。ただ
し,市販のデータ捕捉装置には励磁周波数と同期できないものがあり,この場合,必然的にfs / f比は整数
とはならず,ナイキスト条件が成り立たない。ナイキスト条件が成り立たない場合,真の励磁周期の長さ
とサンプリングされた周期との相違を最小とするために,サンプリング周波数を十分高く(1周期に500
サンプル以上)する必要がある。ナイキスト条件を成立させることは,高い周波数の測定(例えば,この
規格の範囲に含まれる400 Hz)では決定的に有利である。また,デジタルサンプリング過程で生じるエリ
アシングノイズの原因となる,無関係な高周波成分を除去するために,ローパス・アンチエリアシングフ
ィルタを使用することを推奨する。
振幅の分解能については,12ビットより低い場合はデジタル化誤差が無視できない。このため,測定波
形の振幅に対して最低12ビットの分解能をもつことを推奨する。さらに,二つの電圧信号測定チャンネル
間の位相差を,鉄損測定の誤差がこの規格に規定する値(0.5 %)を超えないように,十分小さくすること
が望ましい。位相差の問題は,低い力率cos(φ)(φは,二つの信号の基本周波成分間の位相差)の場合に,
より重要となる。この理由によって,二つの電圧信号の瞬間値を異なる時間でサンプリングする方式であ
る,マルチプレクサを用いた計器は推奨しない。
信号調整に用いる増幅器は,低い周波数での位相シフトを防ぐために,a.c.結合ではなくd.c.結合である
ことが望ましい。しかし,増幅器のd.c.オフセットは,数値計算の値に大きな誤差をもたらす場合がある。
このd.c.オフセットの影響を除く方法には,計算による補正消去法が適用できる。
D.3 校正
この規格の繰返し性及び再現性要件を満たすには,測定装置の適切な校正が必要である。増幅器とADC
とを含む二つの電圧信号測定チャンネルについては,標準交流電源を用いて校正することが可能である。
さらに,二つのチャンネルの位相特性とその周波数特性とを確認することが望ましい。これらの特性は,
20
C 2556:2015
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コンピュータでの補正計算に使用できる。いずれの場合においても,校正用サンプルを用いて校正する方
法では不十分である。なぜなら,校正用サンプルによる校正は,その材料と測定条件との組合せのときに
だけ,有効であるためである。
21
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附属書JA
(規定)
Hコイル法の単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法
JA.1
一般的原理(Hコイル法)
JA.1.1
測定の原理
Hコイル法による単板試験器の測定原理には,本体に規定する励磁電流法に比べて,試験片の磁気特性
を直接測定できる特長がある。
Hコイル法は,試験片表面に近接して置いた空芯コイル(Hコイル)を用いて,試験片にかかる磁界の
強さHを直接測定し,二次コイルで検出する磁束密度Bから試験片の磁気特性を直接測定する。このため,
励磁電流法における附属書JCに規定する補正を必要としない長所がある。励磁電流法に比べ,Hコイル
及び二次コイルの誘起電圧の増幅器及び積分器を追加する必要がある。
Hコイル法の試験器は,ヨーク,一次コイル,Hコイル,二次コイル及び空隙補償コイルで構成する。
一次コイル内の均一な磁界の強さHの領域に,二次コイル及びHコイルを配置する。Hコイルは,試験片
表面に可能な限り近接して置く。Hコイルの誘起電圧を積分することによって,試験片が置かれた磁界の
強さHを検出することができる。試験片の単位体積当たりの鉄損P0及び磁化特性は,Hコイルで検出し
た磁界の強さH及び二次コイルで検出した磁束密度Bから求める。また,皮相電力Ssは,検出された磁界
の強さの実効値H~及び二次電圧の実効値から求める。
試験片の単位体積当たりの鉄損P0は,磁界の強さH及び磁束密度Bを軸とする二次元空間に,磁界の
強さH及び磁束密度Bの時間関数が描く,ヒステリシスループの面積と励磁周波数との積として,式(JA.1)
で表せる。
∫
=
B
H
f
P
d
0
········································································· (JA.1)
ここに,
P0: 単位体積当たりの鉄損(W/m3)
f: 励磁周波数(Hz)
H: 磁界の強さ(A/m)
B: 磁束密度(T)
単位体積当たりの鉄損P0は,式(JA.1)によるH積分方式のほか,式(JA.2)のB積分方式でも求めること
ができる。
∫
−
=
H
B
f
P
d
0
······································································· (JA.2)
試験結果の比較性能を示すことができれば,単位体積当たりの鉄損P0をB積分方式によって求めてもよ
い。
JA.1.2
単板試験器
JA.1.2.1
一般事項
Hコイル法においては,一次コイルによって磁化された単板の試験片の磁束密度B及び磁界の強さHを,
それぞれ二次コイル及びHコイルで検出することによって,試験片の磁気特性を求めることのできる100
mm幅単板磁気器又は500 mm幅単板試験器を使用する。
試験結果の比較性能を示すことができる場合には,他のヨーク構造(附属書JB参照),ヨーク寸法及び
試験片サイズを採用できる。
22
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JA.1.2.2
100 mm幅単板試験器
JA.1.2.2.1
ヨーク
ヨークは,平たんなコの字形状で,絶縁された方向性電磁鋼帯又は鉄−ニッケル合金薄板で構成する。
ヨークは,磁気抵抗が低いものとし,その鉄損Psは,1.5 T及び50 Hzにおいて1.0 W/kg以下とする。
渦電流効果を抑えてヨーク内の磁束分布を一様にするため,ヨークは,接着された積層鋼板鉄心からな
るものとし,ヨークのコーナー部は,交互積みの突合せ接合とする(図JA.1参照)。積層鋼板の接着又は
支持によってヨーク内に発生する応力は,極力小さくする。
ヨークの二つの磁極面は,0.5 mmの精度以上で同一平面となるようにする。漏れ磁束を抑えて試験片に
加わる磁界の分布と試験片内の磁束の分布との均一性を図るため,試験片及びヨークの接触部は,十分な
面積をもち,試験片の全幅をヨークに接触させる。
単位 mm
図JA.1−100 mm幅単板試験器の例(横形単ヨーク)
ヨークを構成する薄板の寸法精度については,幅は±0.2 mm,長さは±0.5 mmとする。薄板は,コイル
巻枠の長さに合わせ積層する。ヨークの磁極間内側寸法は,300 mmとし,積層高さは,7 mm以上とする。
試験片を載せるヨーク間の支持台は,絶縁非磁性体とする。支持台は,ヨークの両磁極間の中心に磁極面
と同一平面となるように配置し,試験片が磁極面と隙間がないように接触させる。
Hコイル法においては,ヨークは試験片に加わる磁界の強さH及び磁束密度Bの均一化のため,補助的
に使用される。
JA.1.2.2.2
コイル
一次コイル及び二次コイルは,絶縁非磁性体の巻枠に巻く。Hコイルは,巻枠の内側に配置する(図JA.2
参照)。巻枠寸法は,次による。
− 長さ
:294±0.5 mm
− 内側幅
:10205.0
+
mm
− 内側高さ
:6±3 mm
− 高さ
:15 mm以下
23
C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
一次コイルは,例えば,直径1 mmの銅線を巻枠の全長294 mmの間に均一に3層に巻いて並列接続と
する。巻数は,各層240ターンとする。
二次コイルは,例えば,直径0.5 mmの銅線を巻枠の長さ方向の中心に対して対称に長さ200 mm±0.5 mm
間に1層に均等に巻く。巻数は140ターンとする。
一次コイル及び二次コイルの巻数は,測定機器の特性に合わせて設定してよい。
Hコイルは,例えば,厚さ1±0.1 mm,幅85±0.2 mm,長さ250±1 mmの絶縁非磁性体の板状巻枠に密
着して,φ0.2 mm銅線を長さ200±0.2 mmの間に1層に均一に巻く。Hコイルは,試験片表面に近接して
コイル面と試験片表面とが平行となるように置き,長さ方向の位置を二次コイルに一致させる。Hコイル
のエリアターンの経時変化を防止するため,Hコイルは板状巻枠に樹脂などで固定することが望ましい。
Hコイルは,支持台にその上面が支持台の上面と同一平面となるように埋め込み,支持台及びHコイルの
上面を薄いガラスクロステープなどで覆ってもよい。このとき,ガラスクロステープの表面は,ヨークの
磁極面と同一平面とする(図JA.2参照)。
注記 Hコイルは,出力電圧を大きくするため,巻数を多くしてエリアターンを大きくしている。
なお,励磁コイル,二次コイル及びHコイルは,各巻枠の同じ側から同一巻方向で巻くこと
が望ましい。
単位 mm
図JA.2−100 mm幅単板試験器コイル構成の例
JA.1.2.3
500 mm幅単板試験器
JA.1.2.3.1
ヨーク
ヨークは,3.2.1による。
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C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JA.1.2.3.2
コイル
一次コイル及び二次コイルは,絶縁非磁性体の巻枠に巻く。Hコイルは,巻枠の内側に配置する(図JA.3
参照)。巻枠の寸法は,次による。
− 長さ
:445±2 mm
− 内側幅
:510±1 mm
− 内側高さ
:5
2
0
−
+ mm
− 高さ
:15 mm以下
一次コイルは,例えば,直径1 mmの銅線を巻枠の全長400 mmの間に均一に3層に巻いて並列接続と
する。巻数は,各層400ターンとする。
二次コイルは,例えば,直径0.5 mmの銅線を巻枠の長さ方向の中心に対して対称に長さ200 mm±0.5 mm
間に1層に均等に巻く。巻数は140ターンとする。
一次コイル及び二次コイルの巻数は,測定機器の特性に合わせて設定してよい。
Hコイルは,例えば,JA.1.2.2.2に適合するものを4枚使用し,直列に接続する(図JA.3参照)。
単位 mm
図JA.3−500 mm幅単板試験器コイル構成の例
JA.1.3
空隙補償
空隙補償は,3.3による。
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JA.1.4
試験片
試験片は,3.4による。
JA.1.5
励磁電源
励磁電源は,3.5による。
JA.2
鉄損の測定
JA.2.1
測定の原理
試験片の鉄損Psは,図JA.4に示す測定回路の電力計によって測定する。
注記 デジタルサンプリング法の適用は,附属書Dを参照。
Hz
V2
V1
W
M
試験片
一次
コイル
二次
コイル
増
幅
器
増
幅
器
積
分
器
V1
V2
Hコイル
Hz :周波数計
W :電力計
M :空隙補償用の相互誘導器
V1 :平均値形交流電圧計
V2 :実効値交流電圧計
図JA.4−Hコイル法による単板磁気特性測定回路
JA.2.2
測定器
JA.2.2.1
平均値形交流電圧計
平均値形交流電圧計は,4.2.1.1による。
JA.2.2.2
実効値交流電圧計
実効値交流電圧計は,4.2.1.2による。
JA.2.2.3
周波数計
周波数計は,4.2.2による。
JA.2.2.4
電力計
電力計は,4.2.3による。
JA.2.2.5
増幅器及び積分器
増幅器は,コイルの誘起電圧の測定に影響を及ぼさない程度に入力インピーダンスが高く,出力インピ
ーダンスが低くなければならない。増幅器は,周波数特性のよい飽和しないものを使用することが必要で
ある。
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積分器は,高精度の演算増幅器によって構成されたミラー形の積分器を用いる。積分器の回路定数は,
50 Hzの正弦波信号を用いたとき,入力電圧と出力電圧との比が1となるように設定する。
増幅器及び積分器の総合性能は,次の性能とする。
− 入力インピーダンス
:500 kΩ以上
− 出力インピーダンス
:15 Ω以下
− 増幅率の精度
:± 0.3 %以上(30 Hz〜2 kHzにおいて)
− 位相誤差
:3分以内(47 Hz〜400 Hzにおいて)
JA.2.3
測定方法
JA.2.3.1
測定の準備
測定の準備は,4.3.1による。
JA.2.3.2
励磁電源の調整
励磁電源は,二次電圧の整流平均値が所要値に達するまで,出力を徐々に増加させる。この値は,式(JA.3)
による。
J
A
N
f
U
ˆ
4
B
2
2
α
=
·································································· (JA.3)
ここに,
2
U: 二次コイルの誘起電圧の整流平均値(V)
f: 励磁周波数(Hz)
N2: 二次コイルの巻数
A: 試験片の断面積(m2)
αB: B増幅器の増幅率
Jˆ: 磁束密度の波高値(T)
注記1 二次回路内の計器の合計抵抗が二次コイル及び相互誘導器の直列抵抗に比べ十分に大きいた
め,式(JA.3)の右辺の補正係数
t
i
i
R
R
R
+
は省略している[式(4)参照]。
注記2 実効値表示された平均値形電圧計の読みを用いる場合は,式(JA.3)の右辺の係数を
π
2とし
た,次の式を用いる。
J
A
N
f
U
ˆ
2
B
2
2
α
π
=
試験片の断面積は,式(7)による。
JA.2.3.3
鉄損の測定(Hコイル法)
JA.2.3.2で調整した磁束密度の波高値Jˆに対する試験片の単位長さ当たりの損失Plは,電力計の読みか
ら式(JA.4)を用いて算出する。
(
)
m
B
H
2
H
H
0
l
P
N
A
N
P
α
α
μ
τ
=
························································ (JA.4)
ここに,
Pl: 試験片の単位長さ当たりの損失算出値(W/m)
τ: H積分器の時定数(s)
μ0: 磁気定数[4π×10−7(H/m)]
NHAH: Hコイルのエリアターン(m2)
N2: 二次コイルの巻数
αH: H増幅器の増幅率
αB: B増幅器の増幅率
Pm: 電力計によって測定された電力(W)
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注記 積分器の時定数は,50 Hzの正弦波信号を用いて入力電圧と出力電圧との比が1となるように
回路定数を選択した場合は,
50
2
1
×
=π
τ
(s)となる。
鉄損Psは,試験片の単位長さ当たりの損失Plを,試験片の単位長さの質量(m/l)で除して求め,式(JA.5)
によって算出する。
m
l
P
P
l
s=
··············································································· (JA.5)
ここに,
Ps: 試験片の鉄損(W/kg)
Pl: 試験片の単位長さ当たりの損失算出値(W/m)
l: 試験片の長さ(m)
m: 試験片の質量(kg)
JA.2.3.4
鉄損測定の再現性
この箇条に規定する測定方法の鉄損測定の再現性は,1 %以内の相対標準偏差とする。
JA.3
磁界の強さ及び皮相電力の測定(Hコイル法)
JA.3.1
一般事項
この箇条では,次の特性の測定方法を記載する。
− 磁束密度の波高値 Jˆ
− 磁界の強さの波高値 Hˆ
− 皮相電力 Ss
JA.3.2
測定の原理
図JA.4に示す測定回路を用いて測定する。
JA.3.2.1
磁束密度の波高値
磁束密度の波高値Jˆは,図JA.4に示す測定回路を用い,二次コイルの誘起電圧の整流平均値から求める。
JA.3.2.2
磁界の強さの波高値
磁界の強さの波高値Hˆは,図JA.4に示す測定回路を用い,Hコイルの誘起電圧の整流平均値から求め
る。
JA.3.3
測定の手順
JA.3.3.1
測定の準備
測定の準備は,5.3.1による。
JA.3.3.2
測定
通常,一組又は複数組の磁束密度の波高値Jˆ及び磁界の強さ(波高値又は実効値)の値を測定する。
磁界の強さを指定して磁束密度の波高値Jˆを測定する場合は,指定の磁界の強さHとなるように励磁電
源を調整し,二次電圧の整流平均値を平均値形交流電圧計を用いて測定する(JA.2.3.2参照)。
磁束密度の波高値Jˆを指定して磁界の強さを測定する場合は,JA.2.3.2の規定に従い,所要の磁束密度
の波高値Jˆとなるように二次電圧の値を調整する。
磁界の強さの実効値H~の測定においては,Hコイル回路の積分器の出力電圧の実効値を,実効値交流電
圧計を用いて測定する。
磁界の強さの波高値Hˆの測定においては,Hコイル回路の増幅器の出力電圧の整流平均値を,平均値形
交流電圧計を用いて測定する。この測定においては,二次電圧の波形率は規定の値を超えてもよい(5.3.2
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参照)。
JA.3.4
特性値の計算法
JA.3.4.1
磁束密度の波高値の測定
磁束密度の波高値Jˆは,式(JA.6)による(JA.2.3.2参照)。
2
2
2
4
1
ˆ
U
A
N
f
J
α
=
·································································· (JA.6)
ここに,
Jˆ: 磁束密度の波高値(T)
f: 励磁周波数(Hz)
N2: 二次コイルの巻数
A: 試験片の断面積(m2)
α2: 二次コイル回路の増幅器の増幅率
2
U: 二次コイルの誘起電圧の整流平均値(V)
なお,実効値表示された平均値形電圧計の読みを用いる場合は,式(JA.6)の右辺の分母の係数を
π
2と
した,式(JA.7)を用いる。
2
2
2
2
1
ˆ
U
A
N
f
J
α
π
=
······························································ (JA.7)
JA.3.4.2
磁界の強さの実効値の測定
磁界の強さの実効値H~は,式(JA.8)による。
(
)
H
H
H
H
0
~
~
U
A
N
H
α
μ
τ
=
······························································ (JA.8)
ここに,
H~: 磁界の強さの実効値(A/m)
τ: 積分器の時定数(s)
μ0: 磁気定数[4π×10−7(H/m)]
NHAH: Hコイルのエリアターン(m2)
αH: Hコイル回路の増幅器の増幅率
H
~U: Hコイルの誘起電圧の実効値(V)
複数組の磁束密度の波高値Jˆ及び磁界の強さの実効値H~の測定によって,磁界の強さの実効値H~に対
する磁束密度の波高値Jˆの磁化曲線を描くことができる。
JA.3.4.3
磁界の強さの波高値の測定
磁界の強さの波高値Hˆは,式(JA.9)による。
(
)
H
H
H
H
0
2
1
ˆ
U
A
N
f
H
α
μ
π
=
····················································· (JA.9)
ここに,
Hˆ: 磁界の強さの波高値(A/m)
μ0: 磁気定数[4π×10−7(H/m)]
NHAH: Hコイルのエリアターン(m2)
αH: Hコイル回路の増幅器の増幅率
H
U: Hコイルの誘起電圧の整流平均値(V)
注記 振幅透磁率μaは,次のように表すことができる。
1
ˆ
ˆ
0
a
+
=
H
J
μ
μ
JA.3.4.4
皮相電力の測定
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
試験片の単位体積当たりの皮相電力Svは,式(JA.10)による。
(
)
2
H
2
H
2
H
H
0
v
~
~
~
~
U
U
N
A
N
A
J
H
S
α
α
μ
τ
=
=
······································ (JA.10)
ここに,
Sv: 試験片の単位体積当たりの皮相電力(VA/m3)
H~: 磁界の強さの実効値(A/m)
J~: 磁束密度の実効値(T)
μ0: 磁気定数[4π×10−7(H/m)]
A: 試験片の断面積(m2)
NHAH: Hコイルのエリアターン(m2)
N2: 二次コイルの巻数
αH: Hコイル回路の増幅器の増幅率
α2: 二次コイル回路の増幅器の増幅率
τ: 積分器の時定数(s)
H
~U: Hコイルの誘起電圧の実効値(V)
2
~U: 二次電圧の実効値(V)
皮相電力Ssは,試験片の単位体積当たりの皮相電力Svを,試験片の密度で除して求め,式(JA.11)によっ
て算出する。
(
)
2
H
2
H
2
H
H
0
m
v
s
~
~U
U
N
A
N
m
l
S
S
α
α
μ
τ
ρ=
=
········································ (JA.11)
ここに,
Ss: 試験片の皮相電力(VA/kg)
Sv: 試験片の単位体積当たりの皮相電力(VA/m3)
ρm: 試験片の規定の密度,又はJIS C 2550-5に従って測定された
値(kg・m−3)
l: 試験片の長さ(m)
τ: 積分器の時定数(s)
m: 試験片の合計質量(kg)
μ0: 磁気定数[4π×10−7(H/m)]
NHAH: Hコイルのエリアターン(m2)
N2: 二次コイルの巻数
αH: Hコイル回路の増幅器の増幅率
α2: 二次コイル回路の増幅器の増幅率
H
~U: Hコイルの誘起電圧の実効値(V)
2
~U: 二次電圧の実効値(V)
JA.3.5
再現性
この箇条で規定した測定方法における再現性は,3 %以内の相対標準偏差とする。
JA.4
校正
Hコイル法は,試験片にかかる磁界の強さと試験片内の磁化の強さとを直接測定しているため,附属書
JCによる換算の必要はない。
JA.4.1
Hコイルのエリアターンの校正
Hコイル誘起される電圧の計算に必要な,コイルのエリアターン(実効断面積×巻数)の校正は,次の
ような方法によって±0.5 %の精度以上で行う。
a) Hコイルと0.2 %の精度以上で知られたエリアターンをもつ標準コイルとの一様な交流磁界によるコ
イル誘起電圧を測定して求める。
30
C 2556:2015
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b) ソレノイドコイル中の一様な磁界領域の磁界の強さは,交流磁界によるコイル誘起電圧を測定して求
める。この場合,ソレノイドコイルに流す電流値は,標準抵抗による電圧降下を入力インピーダンス
が1 MΩ以上で,±0.5 %の精度以上のデジタル電圧計で求める。
注記 JA.1.2.2.2に規定したHコイルにおいて,巻数が約850ターンの場合,エリアターンは,約1 050
×10−4 m2となる。
JA.4.2
増幅器の校正
二次コイル回路及びHコイル回路の増幅器の増幅率の校正は,既知の周波数の正弦波信号を入力端子に
入力し,出力電圧をデジタル電圧計で読んで行うことができる。増幅率は±0.3 %の精度以上とする。
JA.4.3
積分器の校正
積分器の校正は,増幅器との総合性能とし,次による。既知の周波数の正弦波信号を増幅器の入力端子
に入力し,増幅器の入力電圧ein及び積分器の出力電圧eoutをデジタル電圧計で読む。積分器の出力電圧eout
と増幅器の入力電圧einとの関係は,式(JA.12)で表す。
τω
α
τ
α
in
H
in
H
out
d
e
t
e
e
=
=∫
························································· (JA.12)
ここに,
eout: 積分器の出力電圧(V)
αH: Hコイル回路の増幅器の増幅率
ein: 増幅器の入力電圧(V)
τ: 積分器の時定数(s)
ω: 2πf(s−1)
式(JA.12)からH増幅器の増幅率を含むαH/τが求まる。
この回路の位相の誤差は,αH/τの周波数特性の測定で調べられる。すなわち,eout/einが所定の周波数範
囲で周波数に対して反比例の関係にある場合は,位相の誤差は無視できる。
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附属書JB
(参考)
Hコイル法の単板試験器におけるヨーク構造
JB.1
ヨーク構造
試験器は,試験片に加わる磁界と磁束の分布とが測定範囲にわたって均一となるよう,ヨークを用いて
試験片を通る磁束に対して閉磁路を形成する。
横形ヨークと縦形ヨークとがある。
JB.2
横形ヨーク
横形ヨークの試験器を,図JB.1に示す。窓寸法は,磁束の偏りがエプスタイン試験器と同程度となるよ
うに寸法を決定する必要がある。
注記 横形ヨークは,積鉄心変圧器と同様な磁気回路を構成しており,窓内側と外側とで磁路長が異
なることから,試験片幅方向の磁束分布が不均一の場合があるが,これは,従来から広く用い
られているエプスタイン試験器においても起こっている。
横形複ヨークの場合は,ヨークだけでも磁路が閉じるため,残留磁束が残りやすい。このため,横形複
ヨークの場合には,測定前にヨークの消磁を行う必要がある。
なお,試験片寸法に応じてヨーク寸法を変更する場合は,決定された窓寸法に対して比例して拡大又は
縮小するとよい。
図JB.1−横形ヨーク単板試験器の構成
JB.3
縦形ヨーク
縦形ヨークの試験器枠を,図JB.2に示す。縦形単ヨークは,縦形複ヨークに比べて,試験片との接触部
付近の漏れ磁束が大きいため,縦形複ヨークに比べヨーク極間距離を長くするか,又は,試験片とヨーク
との接触面を大きくとる必要がある。縦形複ヨークは,上側ヨークによって試験片に機械的なひずみが生
じないように注意する必要がある。
32
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図JB.2−縦形ヨーク単板試験器の構成
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附属書JC
(規定)
単板試験器による測定値のエプスタイン相当値への換算法
JC.1
一般
この附属書では,この規格で規定する単板試験器によって得られた方向性電磁鋼帯の磁気特性値を,エ
プスタイン相当値へ換算する方法を規定する。
JC.2
一般的原理
この規格に基づく単板試験器による鉄損Psの測定値は,同じ鋼帯に対してJIS C 2550-1に基づきエプス
タイン試験器で測定した鉄損値に対して,2 %から10 %大きいことが一般的に知られている。この原因は,
単板試験器で測定される損失にヨークでの損失が含まれていること及び規定の磁路長lmよりも実効磁路長
が方向性電磁鋼板では長いためと推定される。
方向性電磁鋼帯の磁気特性測定においては,エプスタイン試験器による測定では試験片を応力除去焼き
なましするが,単板試験器による測定では試験片に応力除去焼きなましを行わない。試験片の応力除去焼
きなましによって,試験片を切断したときに生じた応力が除去されるとともに,鋼帯中に存在していた製
造時の残留応力も除去される。試験片に残る応力によって,磁気特性が劣化することは,一般的に知られ
ている。このため,同じ供試材の隣接部位からエプスタイン試験器の試験片及び単板試験器の試験片を採
取して,前者に応力除去焼きなましを行い,後者に応力焼きなましを行わない状態で,それぞれJIS C
2550-1及びこの規格に基づき測定を行っても,異なる磁気特性の材料の測定となる可能性があり,エプス
タイン試験器による測定値と,単板試験器による測定値との正しい相関係数を求めることができない。
この附属書では,エプスタイン試験器による測定値と単板試験器による測定値との正しい相関係数を求
めるため,同じ試験片を用いてJIS C 2550-1及びこの規格の測定手順に従い,エプスタイン試験器と単板
試験器とで測定する。求めた相関係数を用いることによって,単板試験器の測定値をエプスタイン相当値
に変換する。
JC.3
試験片の準備
試験片の準備は,次による。
a) 方向性電磁鋼帯の供試材の圧延方向の長さ約500 mm及び幅約500 mmの領域から,圧延方向に長い
16枚の長さ (500±0.5) mm及び幅 (30±0.2) mmの試験片を長辺のエッジが隣接するように切断採取
する。このとき,試験片を再配列することを容易とするために,試験片に番号を付与するか,又は切
断前の供試材の表面に目印となる斜線などの模様を描く。
b) 試験片を切断する場合には,鋼帯の母材の圧延方向を基準方向とする。圧延方向との角度の許容差は,
±1°とする。
c) 試験片は,過剰な切断かえり及び/又は機械的な変形が生じないように切断する。試験片は平たんで
なければならない。
d) 試験片は,切断後に製造業者の推奨する条件で応力除去焼きなましを行う。供試材が応力除去焼きな
ましによって磁区制御効果が失われる磁区制御材の場合には,応力除去焼きなましを行った試験片に
磁区制御処理を行う。
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C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注記 応力除去焼きなましでは,試験片の温度分布が均一となるよう注意するとともに,試験片中に
ひずみが残留しないように,徐冷することが望ましい。
JC.4
エプスタイン試験器による測定
JIS C 2550-1の測定手順に従って,エプスタイン枠に試験片を挿入し,磁気特性を測定する方法は,次
による。
a) 試験片の長さは規定の長さよりも長いが,エプスタイン枠に試験片の中央部が配置されるように挿入
する。
b) 試験片が重なりあった部分において,試験片の間の隙間をできるだけ狭くするように,重なり合った
試験片の表面に約1 Nの力がかかるように絶縁非磁性体の重しを置き,枠からはみ出した試験片の部
分が水平となるように,絶縁非磁性体で支える。
c) 磁気特性は,磁束密度1.7 Tにおける鉄損Psを,励磁周波数50 Hz及び60 Hzで測定する。また,磁
界の強さの波高値Hˆが800 A/mにおける磁束密度の波高値Jˆを,励磁周波数50 Hz又は60 Hzで測定
する。
方向性電磁鋼帯のグレードは,1.7 Tでの鉄損値で区分される。普通材に対しては1.5 Tでの鉄損値が参
考として示されるため,1.7 Tに加えて1.5 Tでの鉄損Psを測定してもよい。
箇条1に示す磁束密度の波高値Jˆ,及び磁界の強さの波高値Hˆの範囲において,鉄損Ps及び磁束密度B
を測定することもできる。
JC.5
単板試験器による測定
16枚の試験片を,切断時の試験片の配列に密接して並べ,接着力の弱いテープで貼り合わせ,長さ500
mm及び幅480 mmの単板試験片とする。一体化した試験片を,この規格の試験手順に従って単板試験器
に挿入し,エプスタイン試験器による測定と同じ励磁条件で測定する。
16枚の試験片を一体化して取扱いを容易とするため,複数の試験片の上面にまたがるように絶縁非磁性
体の薄板を置き,粘着力の弱いテープで貼り付けてもよい。
JC.6
エプスタイン試験器による測定値と単板試験器による測定値との相関係数の決定
エプスタイン試験器による測定値と単板試験器の測定値との相関を求める。相関係数は,同じ母材の供
試材に対して50 Hz及び60 Hzの励磁周波数で測定した鉄損値のデータに対して,最小二乗法で相関係数
を求める。相関係数の式は,式(JC.1)によって求める。
B
EP
s,
A
SST
s,
C
P
C
P
+
=
······························································· (JC.1)
ここに,
Ps,SST: 単板試験器による鉄損測定値(W/kg)
Ps,EP: エプスタイン試験器による鉄損測定値(W/kg)
CA: 単板試験器における,実効磁路長と規定の磁路長との比に
関わる相関係数
CB: 単板試験器における,ヨークでの損失に関わる相関係数
(W/kg)
注記1 60 Hzでのヨークでの損失は,50 Hzでの損失に比べ約20 %大きいが,試験片の鉄損値に比
較してヨークでの損失値が十分小さい場合には,この差異は鉄損値の測定ばらつきに対して
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C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
小さくなり,ヨークの損失をCBで代表できる。
所要の磁界の強さの波高値Hˆにおける,磁束密度の波高値Jˆに対する相関係数は,式(JC.2)によって求
める。
D
EP
C
SST
C
B
C
B
+
=
································································· (JC.2)
ここに,
BSST: 単板試験器による所要の磁界の強さの波高値における磁束
密度の波高値(T)
BEP: エプスタイン試験器による所要の磁界の強さの波高値にお
ける磁束密度の波高値(T)
CC: 試験片の透磁率に関わる相関係数
CD: 単板試験器における,ヨーク及びヨークと試験片との間のギ
ャップの磁気抵抗に基づく,磁束密度測定値の低下量(T)
注記2 磁界の強さHを指定した磁束密度Bの測定値に対しては,エプスタイン試験器と単板試験器
との相違は,ヨークの磁気抵抗及びヨークと試験片との間のギャップの磁気抵抗の大きさに
依存して,励磁電流法で求めた試験片に加わる磁界の強さが小さいために生じる。このため,
単板試験器では,エプスタイン試験器での測定よりも低い磁界の強度で磁束密度Bが測定さ
れることになり,磁界の強さHの差と指定された磁界の強さHにおける試験片の透磁率との
積の分だけ,磁束密度Bの値が小さく測定される。
JC.7
単板試験器による測定値のエプスタイン測定の相当値への換算
式(JC.1)で求めた相関係数を用いて,単板試験器で測定した鉄損値は,式(JC.3)によってエプスタイン試
験器による鉄損測定の相当値に換算できる。
(
)
A
B
SST
s,
EPeq
s,
/C
C
P
P
−
=
···························································· (JC.3)
ここに,
Ps,EPeq: エプスタイン試験器による鉄損測定の相当値(W/kg)
Ps,SST: 単板試験器による鉄損測定値(W/kg)
CA: 単板試験器における,実効磁路長と規定の磁路長との比に
関わる相関係数
CB: 単板試験器における,ヨーク損失に関わる相関係数(W/kg)
式(JC.2)で求めた相関係数を用いて,単板試験器で測定した所要の磁界の強さの波高値Hˆにおける磁束
密度の波高値Jˆは,式(JC.4)によってエプスタイン試験器による磁束密度測定の相当値に換算できる。
(
)
C
D
SST
EPeq
/C
C
B
B
−
=
······························································ (JC.4)
ここに,
BEPeq: エプスタイン試験器による所要の磁界の強さの波高値にお
ける磁束密度の波高値測定の相当値(T)
BSST: 単板試験器による所要の磁界の強さの波高値における磁束
密度の波高値(T)
CC: 試験片の透磁率に関わる相関係数
CD: 単板試験器における,ヨーク及びヨークと試験片との間の
ギャップの磁気抵抗に基づく,磁束密度測定値の低下量(T)
JC.6で求める相関係数は,鋼帯の呼称厚さ及び透磁率に依存するため,式(JC.3)及び式(JC.4)の適用に当
たって,供試材に対応した相関係数を用いることが必要である。
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C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献 IEC 60050-221:1990,International Electrotechnical Vocabulary (IEV)−Chapter 221: Magnetic
materials and components
IEC 60404-2,Magnetic materials−Part 2: Methods of measurement of the magnetic properties of
electrical steel strip and sheet by means of an Epstein frame
IEC 60404-8-4,Magnetic materials−Part 8-4: Specifications for individual materials−Cold-rolled
non-oriented electrical steel strip and sheet delivered in the fully-processed state
IEC 60404-8-7,Magnetic materials−Part 8-7: Specifications for individual materials−Cold-rolled
grain-oriented electrical steel strip and sheet delivered in the fully-processed state
IEC 60404-13,Magnetic materials−Part 13: Methods of measurement of density, resistivity and
stacking factor of electrical steel sheet and strip
J. D. Sievert, Determination of AC Magnetic Power Loss of Electrical Steel Sheet: Present Status and
Trends, IEEE Trans. Mag. Vol. 20, No. 5 (1984) 1702-1707.
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C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JD
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS C 2556:2015 単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法
IEC 60404-3:1992,Magnetic materials−Part 3: Methods of measurement of the
magnetic properties of magnetic sheet and strip by means of a single sheet tester,
Amendment 1:2002及びAmendment 2:2009
(I)JISの規定
(II)
国際規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
2A 用語
及び定義
−
−
規定なし
追加
JISでは,IEC 60050-221の用
語の定義を追加した。
IEC規格での磁気分極Jに対応す
る用語としてJISでは我が国で一
般的である磁束密度Bを用いた
が,実質的に等しい。これ以外は
IEC 60050-221と整合している。
3 一般的
原理(励磁
電流法)
3.1 測定の原理
3.1
主に測定法を記載してい
る。
追加
測定の原理を記載した。技術的
差異はない。
−
3.2.1 ヨーク
3.2.1
ヨークは一対のCコア又
は積層接着コアとしてい
る。
変更
JISでは,Cコアを削除した。 Cコアは形状安定性が乏しいた
め,推奨できない。
対向する磁極面の間隔は
任意の点で0.005 mmを
超えてはならないとして
いる。
削除
JISでは,数値を削除し,“可
能な限り小さく,かつ,均一な
状態とする”と変更した。
磁極面の0.005 mmの間隔を測定
することは実際上困難である。
3.5 励磁電源
3.5
二次電圧の波形率を
1.111±1 %としている。
変更
JISでは,二次電圧の波形率を
1.10 %〜1.12 %に変更した。
市販励磁電源から判断して,IEC
規格の二次電圧の波形に合わせ
ることは難しい。
4 鉄損の
測定(励磁
電流法)
4.2.1.1 平均値形交
流電圧計
4.2.1.1
精度を“±0.2 %の精度”
としている。
変更
JISでは,精度を±0.5 %以上,
かつ,入力インピーダンスが1
MΩ以上と変更した。
市販測定器の精度の状況から判
断して,IEC規格の精度に合わせ
ることは難しい。
3
C
2
5
5
6
:
2
0
1
5
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(I)JISの規定
(II)
国際規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
4 鉄損の
測定(励磁
電流法)
(続き)
4.2.1.2 実効値交流
電圧計
4.2.1.2
精度を“±0.2 %の精度”
としている。
変更
JISでは,精度を±0.5 %以上,
かつ,入力インピーダンスが1
MΩ以上と変更した。
市販測定器の精度の状況から判
断して,IEC規格の精度に合わせ
ることは難しい。
4.3.1 測定の準備
4.3.1
記載なし。
追加
JISでは,JIS C 2550-1との整
合性を高めるため,実効質量の
計算式を追加した。
内容の変更はない。
4.3.2 励磁電源の調
整
4.3.2
記載なし。
追加
JISでは,実効値形と平均値形
との差に注意を促すため,平均
値形電圧計を使用する場合の
式を記載した。
内容の変更はない。5.4.1について
も同様。
4.3.3 鉄損の測定
4.3.3
鉄損の計算式を記載。
変更
技術的差異はない。
−
エプスタイン試験器に対
する補正方法を注記に記
載
変更
JISでは附属書JC参照とした。 IEC/TC 68にIEC規格の改定を提
案した。
5 磁界の
強さ,励磁
電流及び
皮相電力
の測定(励
磁電流法)
5.1.2 励磁電流の実
効値
5.1.2
図5の回路に空隙補償コ
イルを含まない。
変更
JISでは二次電圧の空隙補償を
考慮した。
JISの方が磁気測定の基本である
IEC 60404-2と整合している。
5.1.3磁界の強さの
波高値
5.1.3
図6の回路に空隙補償コ
イルを含まない。
変更
JISでは二次電圧の空隙補償を
考慮した。
JISの方が磁気測定の基本である
IEC 60404-2と整合している。
波高値交流電圧計を記
載。
変更
JISでは,オシロスコープも使
用できるようにした。
JISの方が現状の技術に則してい
る。IEC規格の改定を提案する。
5.3.1 測定の準備
5.3.1
4.3.1と同じ内容の記載が
ある。
変更
技術的差異はない。
−
5.3.2 測定
5.3.2
記載なし。
追加
二次電圧の波形率は規定の値
を超えてもよいことを明記し
た。技術的差異はない。
−
5.4.1磁束密度の波
高値の測定
5.4.1
磁束密度の波高値の計算
式を記載。
変更
計算式を修正しているが,技術
的差異はない。
−
5.4.3磁界の強さの
波高値の測定
5.4.1
磁界の強さの波高値の計
算式を記載。
変更
計算式を修正しているが,技術
的差異はない。
−
5.4.4皮相電力の測
定
5.4.1
皮相電力の計算式を記
載。
変更
計算式を修正しているが,技術
的差異はない。
−
3
C
2
5
5
6
:
2
0
1
5
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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C 2556:2015
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(I)JISの規定
(II)
国際規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
附属書A
(規定)
−
附属書A
(規定)
エアギャップの分布測定
にエンジニアリングブル
ーの使用を規定
変更
JISでは,現在では一般的でな
いエンジニアリングブルーに
替わり,一般的な感圧シートの
使用を規定した。
JISの方が現状の技術に則してい
る。IEC規格の改定を提案する。
附属書B
(参考)
附属書B
(参考)
附属書C
(参考)
附属書C
(参考)
附属書D
(参考)
附属書D
(参考)
附属書JA
(規定)
−
追加
JISでは,Hコイル法を規定し
た。
我が国では一般的であり,規定し
た。
附属書JB
(参考)
附属書JC
(規定)
−
−
追加
JISでは,IEC規格の附属書B
に記載される校正ではなく,相
関係数に基づく実践的な換算
方法を記載した。
IEC/TC 68にIEC規格の改定を提
案した。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:(IEC 60404-3:1992,Amd.1:2002,Amd.2:2009,MOD)
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除……………… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD…………… 国際規格を修正している。
3
C
2
5
5
6
:
2
0
1
5
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。