C 2550-5:2020
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 抵抗率の測定 ··················································································································· 2
4.1 一般事項 ······················································································································ 2
4.2 測定原理 ······················································································································ 2
4.3 試験片 ························································································································· 5
4.4 測定装置 ······················································································································ 5
4.5 測定手順 ······················································································································ 6
4.6 再現性 ························································································································· 6
4.7 試験報告書 ··················································································································· 6
5 密度の測定 ······················································································································ 7
5.1 一般事項 ······················································································································ 7
5.2 抵抗率測定に基づく方法(D1法) ···················································································· 7
5.3 ガスピクノメータ法(D2法) ·························································································· 9
5.4 試験報告書 ·················································································································· 10
6 占積率の測定 ·················································································································· 10
6.1 一般事項 ····················································································································· 10
6.2 試験片 ························································································································ 10
6.3 測定手順 ····················································································································· 10
6.4 再現性 ························································································································ 11
6.5 試験報告書 ·················································································································· 11
附属書A(参考)長方形単板試験片を使用する抵抗率測定装置の例(R2法) ································· 12
附属書B(参考)ガスピクノメータ法による密度測定の例(D2法) ············································· 13
附属書C(参考)けい素及びアルミニウム成分による密度計算式(D4法) ···································· 16
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 17
C 2550-5:2020
(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人
日本電機工業会(JEMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規
格を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本産業規
格である。これによって,JIS C 2550-5:2011は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS C 2550の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 2550-1 第1部:エプスタイン試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法
JIS C 2550-2 第2部:寸法・形状の測定方法
JIS C 2550-3 第3部:中間周波磁気特性の測定方法
JIS C 2550-4 第4部:表面絶縁抵抗の測定方法
JIS C 2550-5 第5部:電磁鋼帯の抵抗率,密度及び占積率の測定方法
日本産業規格 JIS
C 2550-5:2020
電磁鋼帯試験方法−第5部:電磁鋼帯の抵抗率,
密度及び占積率の測定方法
Test methods for electrical steel strip and sheet-
Part 5: Methods of measurement of resistivity, density and
stacking factor of electrical steel strip and sheet
序文
この規格は,2018年に第2版として発行されたIEC 60404-13を基とし,我が国で一般的となっている
技術と整合させるため,技術的内容を変更して作成した日本産業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,電磁鋼帯の抵抗率,密度及び占積率の測定方法について規定する。これらの測定量は,材
料の特性を証明するために必要である。また,密度は磁気分極の規定値,抵抗率及び占積率を求めるため
に必要である。
測定は,(23±5)℃の周囲温度において行う。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60404-13:2018,Magnetic materials−Part 13: Methods of measurement of resistivity, density and
stacking factor of electrical steel strip and sheet(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 2550-1 電磁鋼帯試験方法−第1部:エプスタイン試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法
注記 対応国際規格:IEC 60404-2,Magnetic materials−Part 2: Methods of measurement of the magnetic
properties of electrical steel strip and sheet by means of an Epstein frame
JIS C 2556 単板試験器による電磁鋼帯の磁気特性の測定方法
注記 対応国際規格:IEC 60404-3,Magnetic materials−Part 3: Methods of measurement of the magnetic
properties of electrical steel strip and sheet by means of a single sheet tester
ISO 1183-3,Plastics−Methods for determining the density of non-cellular plastics−Part 3: Gas pyknometer
2
C 2550-5:2020
method
IEC 60050-121,International Electrotechnical Vocabulary−Part 121: Electromagnetism
IEC 60050-221,International Electrotechnical Vocabulary−Part 221: Magnetic materials and components
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,IEC 60050-121,IEC 60050-221及びISO 1183-3によるほか,次
による。
3.1
抵抗率(resistivity)
単位断面積及び単位長さの導体の電気抵抗。
3.2
密度(density)
試料の質量と体積との比。
3.3
占積率(stacking factor)
積層した電磁鋼帯における合計断面積の見掛け断面積に対する比。
4
抵抗率の測定
4.1
一般事項
この規格では,エプスタイン試験片を使用する方法(R1法)及び長方形の単板試験片を使用する方法(R2
法)の二つの抵抗率決定方法を規定する。
注記 R2法は,二次元等角写像理論に基づくvan-der-Pauw(VDP)法に基づいている。均一な厚さの
任意形状の物体に対し,四つの電極間の電圧と電流との比から抵抗率を得る公式が成立する。
この公式は,試験片形状と電極の位置とが対称な場合,単純化できる。R2法は,長方形の単板
試験片に適している。
厚さを含めた試験片の形状寸法測定に基づく抵抗率ρの決定方法は,全ての種類の試験片に適用するこ
とが可能である。しかし,5.2で規定する密度ρmの決定に使用する場合は,5.1で規定する電磁鋼帯に限定
する。
4.2
測定原理
4.2.1
エプスタイン試験片を使用する測定方法(R1法)
エプスタイン試験片の抵抗率を測定する回路は,図1に示すように接続する。二つの電流接点A及びB
は,電流が試験片の長辺方向に均一に流れるよう,試験片の両端に配置する。電位接点C及びDは,電流
接点AとBとの間にあり,かつ,試験片長軸上のエッジにあるよう配置する。試験片の切断エッジで電気
的に接触するため,酸化物,その他の絶縁皮膜などを除去する必要はない。
3
C 2550-5:2020
A, B:電流接点
C, D:電位接点
A1 :直流電流計
V1 :直流電圧計
le :CD間長さ
IAB :AB間電流
S :電流反転スイッチ
UCD:電位接点CD間の電圧
図1−エプスタイン試験片の抵抗率測定回路(R1法)
電流が試験片の中を均一に流れる場合,エプスタイン試験片の二つの接触点間の抵抗値Rは,式(1)から
算出する。
AB
CD
I
U
R=
·················································································· (1)
ここに,
R: 電位接点CD間の抵抗値(Ω)
UCD: 電位接点CD間の電圧(V)
IAB: 電流接点AB間の電流(A)
抵抗率ρは,式(2)から算出する。
el
d
b
R
=
ρ
·············································································· (2)
ここに,
ρ: 抵抗率(Ω・m)
R: 電位接点CD間の抵抗値(Ω)
b: 試験片の幅(m)
d: 絶縁被膜を除いた試験片の厚さ(m)
le: 電位接点CD間の長さ(m)
4.2.2
長方形単板試験片を使用する測定方法(R2法)
長方形の単板試験片の抵抗率を測定する回路は,図2に示すように接続する。四つの電気接点A,B,C
及びDは,試験片のそれぞれの辺の中心に配置する。接点A,B,C及びDと試験片との接触部は,でき
る限り小さくする。接点AB間の電流を測定し,接点CD間の電圧を測定する。試験片の切断エッジで電
気的に接触するため,酸化物,その他の絶縁皮膜などを除去する必要はない。
電源
試験片
A1
V1
4
C 2550-5:2020
A, B, C, D :電気接点
A1 :直流電流計
V1 :直流電圧計
IAB :AB間電流
S :電流反転スイッチ
UCD:電位接点CD間の電圧
図2−長方形単板試験片の抵抗率測定回路(R2法)
抵抗値RAB,CDは,式(3)によって算出する。
AB
CD
CD
AB,
I
U
R
=
············································································ (3)
ここに,
RAB,CD: 電位接点CD間の抵抗値(Ω)
UCD: 電位接点CD間の電圧(V)
IAB: 電流接点AB間の電流(A)
二つの対向接点A及びCの接続を入れ替えた後,接点DとAとの間の電圧,及び接点BとCとの間の
電流を測定し,同様に抵抗値RBC,DAを算出する。
二次元場の等角写像法に基づき,均一厚さ及び任意の形状の物体について,式(4)の関係が成立する。
ρ
π
ρ
F
R
R
d
+
=
2
ln2
DA
BC,
CD
AB,
························································ (4)
ここに,
ρ: 抵抗率(Ω・m)
d: 絶縁被膜を除いた試験片の厚さ(m)
RAB,CD: 電位接点CD間の抵抗値(Ω)
RBC,DA: 電位接点DA間の抵抗値(Ω)
Fρ: 比
DA
BC,
CD
AB,
R
R
だけの関数
比
DA
BC,
CD
AB,
R
R
が1に近い場合には,Fρは1になり,これを省略できる。この比を1に近くするには,図2に
示すように,接点A,B,C及びDは,長方形試験片のそれぞれの辺の中心に対称に配置する。
R2法は,長方形単板試験片の測定に使用する基板及び接点ホルダ(附属書A参照)を使用して,エプ
スタイン試験片にも適用できる。信頼性のある結果を得るため,例えば,10枚以上の試験片を測定し,結
果を平均する必要がある。
注記 R2法(van-der-Pauw法)は,エプスタイン試験片を使用するR1法と等価であり,同じ等級の
電源
試験片
A1
V1
5
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材料の個々のエプスタイン試験片にR1法を適用した場合の分散よりも小さいことが示されて
いる。R2法は,適用できる試験片形状の範囲が広い利点がある。
4.2.3
厚さdの測定
4.2.3.1
一般事項
式(2)及び式(4)に使用する試験片の厚さdは,4.2.3.2に規定する方法で算出する。
4.2.3.2
密度ρmに基づく方法
厚さdは,5.3の方法で測定した密度ρmの値,又は製造業者から提供された密度の値を使用して,式(5)
から算出する。
l
b
m
d =
m
ρ
············································································· (5)
ここに,
d: 絶縁被膜を除いた試験片の厚さ(m)
m: 試験片の質量(kg)
ρm: 試験片の密度(kg・m−3)
b: 試験片の幅(m)
l: 試験片の長さ(m)
4.3
試験片
4.3.1
エプスタイン試験片
R1法(4.2.1参照)に使用するJIS C 2550-1に合致したエプスタイン試験片は,次の寸法とする。
− 幅 30 mm
− 長さ 280 mm〜320 mm
試験片の幅は±0.2 mm,長さは±0.5 mmの許容差に入るよう切断する。
4.3.2
長方形単板試験片
R2法(4.2.2参照)に使用する正方形又は長方形のJIS C 2556に合致した単板試験片は,次の寸法とす
る。
− 幅 300 mm〜500 mm
− 長さ 500 mm〜610 mm
試験片の幅及び長さは±0.5 mmの許容差に入るよう切断する。
4.4
測定装置
4.4.1
R1法及びR2法に共通の必要条件
次の装置が必要である。
− 試験片の質量mを,±0.1 %の精度で測定できるひょう(秤)量器。
− 1 A〜10 Aの電流を供給できる低電圧直流安定化電源で構成する電源装置(4端子抵抗計を使用する場
合は,供給できる電流は低くてもよい。4.5.2及び4.5.3参照)。
− 試験片の抵抗Rを±1 %の精度で測定できる抵抗測定装置(例えば,±0.1 %の精度の電流計及び電圧
計,ケルビンダブルブリッジ又はこれらと類似の精度の4端子抵抗計)。
− 接点を備えた基板及び接点間の試験片よりも小さな(接点が配置された側において)支持平板で構成
する,試験片を接触させるための装置(4.4.2及び4.4.3参照)。ただし,支持平板と試験片との差異は,
各々の側面上で5 mm以下(長方形単板試験片については10 mm以下)。支持平板の厚さは,接点が
支持平板の上に置かれた試験片に触れる程度にする。
4.4.2
R1法の必要条件
エプスタイン試験片と電気的に接触する装置は,4個の接点を備える。つまり,脱着可能なブリッジ上
6
C 2550-5:2020
に配置された2個の電位接点及び基板に固定された2個の電流接点とする。4個の接点は,2個の電位接点
C及びDが電流接点AとBとの間にあり,かつ,試験片長軸上にあるように配置する(図1参照)。電流
接点は,試験片の短辺中心から±0.5 mmの対称な位置に配置する。電位接点は,比較的鋭利な角部(例え
ば,1 mmの曲率半径)を備えており,電位接点間の距離leは,200 mmを超えるものとする。電位接点と
電流接点との間の最小距離は,試験片の幅以上とする(電位接点間の距離leを±0.5 mmの精度で測定でき
る測定器で測定する。図1参照)。
4.4.3
R2法の必要条件
R2法については,比較的鋭利な角部(例えば,1 mmの曲率半径)を備えた各々の接点を,基板に固定
されたホルダ上に取り付ける。接点は±1 mm(エプスタイン試験片については±0.5 mm)の精度で,試験
片の軸に対称に配置する(図2参照)。
注記1 R2法の測定装置の例は,附属書A参照。
注記2 十分に電気的に接触させるために,はんだ付けなどの他の方法を使用してもよい。
4.5
測定手順
4.5.1
試験片の厚さdの測定
試験片の厚さdは,4.2.3.2に規定する方法によって算出する。試験片の長さl及び幅bを測定し,質量
mをひょう(秤)量する。
4.5.2
エプスタイン試験片での手順(R1法)
回路を,図1に示すように接続する。指定された精度の電圧読取り値を得るため材料の厚さ及び材料の
特性に応じて,1 A〜5 Aの電流を試験片に流す。同じ測定精度の4端子抵抗計を使用する場合には,より
低い電流でよい。電圧及び電流を読み取り記録する(4端子抵抗計又はケルビンダブルブリッジで抵抗値
を直接測定する場合を除く。)。熱電圧の影響を減らすため,電流を反転し,同じ電流値に設定して再度電
圧を読み取り,これら二つの電圧値の平均値を算出する。
抵抗値Rは,式(1)によって算出する(4端子抵抗計又はケルビンダブルブリッジで抵抗値を直接測定す
る場合を除く。)。
抵抗率ρは,式(2)及び式(5)によって算出する。
4.5.3
長方形単板試験片での手順(R2法)
回路を,図2に示すように接続する。指定された精度の電圧読取り値を得るのに十分な2 A〜10 Aの電
流を,接点A及びBを介して試験片に流す。同じ測定精度の4端子抵抗計を使用する場合には,より低い
電流でよい。電圧及び電流を読み取り記録する(4端子抵抗計又はケルビンダブルブリッジで抵抗値を直
接測定する場合を除く。)。熱電圧の影響を減らすため,電流を反転し,同じ値に設定して再度電圧を読み
取り,これら二つの電圧値の平均値を算出する。
抵抗値RAB,CDを式(3)によって算出する(4端子抵抗計又はケルビンダブルブリッジで抵抗値を直接測定
する場合を除く。)。二つの対向接点A及びCの接続を入れ替えた後,同様に抵抗値RBC,DAを算出する。
抵抗率ρは,式(4)及び式(5)によって算出する。
4.6
再現性
箇条4に基づくR1法及びR2法の再現性は,抵抗率の相対標準偏差で0.5 %とみなされる。
4.7
試験報告書
(我が国の現状に合わせ,試験報告書は電磁鋼帯の製品規格で規定しているため,この規格では不採用
とした。)
7
C 2550-5:2020
5
密度の測定
5.1
一般事項
密度測定方法は,次の四つのいずれかによる。
− 抵抗率測定に基づく方法(D1法)
− ガスピクノメータ法。ISO 1183-3に規定する基本的な方法(D2法)
− 浸せき法。ISO 1183-1及びISO 2738に規定する方法(D3法)
− 試験片の化学組成による計算式に基づく方法(D4法,附属書C参照)
D1法は,箇条4で規定する抵抗率決定に関するR1法及びR2法に基づく間接測定法である。5.2で規定
するD1法は,次の化学組成範囲の無方向性電磁鋼帯にだけ適用する。
− けい素Si(質量%): Si≦4 %
− アルミニウムAl(質量%): 0.17 Si−0.28≦Al≦0.17 Si+0.28 ただし,Al≧0
− 他の合金成分の合計:0.4 %以下
化学組成が不明の場合は,この方法を使用する前に確認する必要がある。一般に,電磁鋼帯の化学組成
は,製造業者の裁量に委ねる。
D2法は,5.3で規定する直接測定法で,方向性電磁鋼帯及び無方向性電磁鋼帯に適用する。
D3法は,ISO 1183-1及びISO 2738で規定される直接測定法である。
注記1 以前は,密度の測定には浸せき法が基本的な方法と考えられていた。しかし,経験によって,
相対的に大きな表面積をもつ試験片の場合には,表面に付着する残留気泡の影響のため,こ
の方法を使用するのは極めて困難なことが分かった。これに対して,ガスピクノメータ法は,
より実用的であり,かつ,電磁鋼帯試験片の場合,高い精度が得られる。
D4法は,試験片の化学成分に基づく計算式による間接測定法であり,受渡当事者間の合意に基づき適用
する。けい素及びアルミニウム成分に基づく密度計算式の例を附属書Cに示す。
注記2 製造業者は,一般的に,製造過程の厚い試験片を使用した寸法測定に基づき体積を決定して,
密度を決定する。
5.2
抵抗率測定に基づく方法(D1法)
5.2.1
測定原理
8
C 2550-5:2020
○ R1法による測定値,□ :R2法による測定値
図3−無方向性電磁鋼帯における積ρm・ρの関数としての密度ρm
5.1で規定する電磁鋼帯の場合には,経験によると密度ρmと積ρm・ρとの間の関係は,図3に示すように
単調であり,ほとんど直線的である。したがって,密度の直接測定に代わり積ρm・ρの測定によっても密度
を算出することが可能である。
注記1 密度ρm及び抵抗率ρのいずれも,けい素及びアルミニウム成分の関数である。
実験データの直線回帰によって得られた図3に示す直線関数によって,次の実験式が導かれる。
ρm=7 975−89 000×(ρm·ρ) ···························································· (6)
ここに,
ρm: 絶縁被膜を除いた試験片の密度(kg・m−3)
ρm・ρ: 密度と抵抗率との積(Ω・kg・m−2)
注記2 この関係式は,一般的な不純物成分範囲の無方向性電磁鋼帯に浸せき法を適用した測定値を
統計的に処理した結果から確立されている。エプスタイン試験片(R1法)及び長方形単板試
験片(R2法)による積ρm・ρは,箇条4に基づいて決定される。
5.2.2
試験片
5.2.2.1
エプスタイン試験片
4.2.1に規定するエプスタイン試験片を使用する場合,式(2)及び式(5)から,積ρm・ρと抵抗値Rとの関係
である式(7)が得られる。
l
l
m
R
=
e
mρ
ρ
············································································ (7)
ここに,
ρm: 絶縁皮膜を除いた試験片の密度(kg・m−3)
ρ: 抵抗率(Ω・m)
R: 抵抗値(Ω)
m: 試験片の質量(kg)
7.60
7.70
7.80
7.90
9
C 2550-5:2020
le: 電位接点間の長さ(m)
l: 試験片の長さ(m)
ρmの値は,式(6)及び式(7)から得られる式(8)によって算出する。
ρm=7 975−89 000
R
l
l
m
e
···························································· (8)
ここに,
ρm: 絶縁皮膜を除いた試験片の密度(kg・m−3)
m: 試験片の質量(kg)
R: 抵抗値(Ω)
le: 電位接点間の長さ(m)
l: 試験片の長さ(m)
5.2.2.2
長方形単板試験片
4.2.2に規定する正方形又は長方形単板試験片を使用する場合,式(4),式(5)及びFρ=1から,積ρm・ρと
抵抗値Rとの関係である式(9)が得られる。
ρm·ρ=
2
ln2
DA
BC,
CD
AB,
R
R
b
l
m
+
π
······················································ (9)
ここに,
ρm: 絶縁皮膜を除いた試験片の密度(kg・m−3)
ρ: 抵抗率(Ω・m)
m: 試験片の質量(kg)
RAB,CD: 電位接点CD間の抵抗値(Ω)
RBC,DA: 電位接点DA間の抵抗値(Ω)
l: 試験片の長さ(m)
b: 試験片の幅(m)
ρmの値は,式(6)及び式(9)から得られる式(10)によって算出する。
ρm=7 975−89 000×
2
ln2
DA
BC,
CD
AB,
R
R
b
l
m
+
π
································· (10)
ここに,
ρm: 絶縁皮膜を除いた試験片の密度(kg・m−3)
m: 試験片の質量(kg)
RAB,CD: 電位接点CD間の抵抗値(Ω)
RBC,DA: 電位接点DA間の抵抗値(Ω)
l: 試験片の長さ(m)
b: 試験片の幅(m)
5.2.3
測定手順
エプスタイン試験片を使用する抵抗値Rの測定は,4.5.2による。ρmの値は,式(8)で算出する。ρmの値
は,式(7)から算出した積ρm・ρの値に対応する値を,図3から読み取ることによっても決定できる。
長方形単板試験片(又はエプスタイン試験片)を使用する抵抗値RAB,CD及びRBC,DAの測定は,4.5.3によ
る。ρmの値は,式(10)で算出する。ρmの値は,式(9)から算出した積ρm・ρの値に対応する値を,図3から
読み取ることによっても決定できる。
5.2.4
再現性
5.2.1に規定する積ρm・ρとに基づく測定法の再現性は,密度の相対標準偏差で1.0 %とみなされる。
5.3
ガスピクノメータ法(D2法)
5.3.1
測定原理
ガスピクノメータ法は,固体の体積,すなわち,密度の測定方法であり,ISO 1183-3に基づいている。
注記 ガスピクノメータ法は,磁性材料だけではなく,定形,不定形の多孔質材料,粉体,粒状固形
物などの体積測定に工業的に広く使用されている。
10
C 2550-5:2020
5.3.2
試験片
試験片の酸化物又は絶縁皮膜は,研削,又は代替の物理的手段若しくは化学的手段によって除去する。
切断又は打抜きによって,使用するピクノメータの槽に適したサイズの試験片にする。
試験片は,質量0.2 kg以上で,ピクノメータの槽に最適な分量とする。
測定前の試験片は,グリースの付着及びさび(錆)のないものでなければならない。前処理を施す場合
は,密度測定に影響を及ぼす異物の付着がないようにする。前処理後に試験片を乾燥のため加熱した場合
は,室温まで冷却して測定する。
5.3.3
測定装置
ガスピクノメータ法による電磁鋼帯の試験片の体積,すなわち,密度の測定装置は,ISO 1183-3に規定
する装置が望ましい。
5.3.4
測定手順
測定手順は,5.3.2に規定する試験片を準備し,ISO 1183-3に規定する手順に従う。
電磁鋼帯試験片の密度測定の例は,附属書B参照。
5.3.5
再現性
5.3に規定するガスピクノメータ法の再現性は,ISO 1183-3に規定する,密度の相対標準偏差で約0.2 %
とみなされる。
5.4
試験報告書
(我が国の現状に合わせ,試験報告書は電磁鋼帯の製品規格で規定しているため,この規格では不採用
とした。)
6
占積率の測定
6.1
一般事項
占積率の測定方法は,全ての種類の電磁鋼帯に適用することが可能である。
6.2
試験片
試験は,6 mm以上の高さの積層を得るのに十分な数の同一寸法の試験片で行う。係争が生じた場合に
は,100枚とする。
試験片は,著しいかえりが発生しない方法によって切断する。著しいかえりが生じた場合は,適切な手
段で除去する。試験片は,幅20 mm以上で,面積 5 000 mm2以上とする。寸法公差は,幅±0.2 mm,長さ
±0.5 mmとする。
JIS C 2550-1に基づいたエプスタイン試験片が望ましい。
6.3
測定手順
試験片を,±0.1 %の精度でひょう(秤)量し,平均長さ及び幅を,それぞれ±0.2 %及び±0.7 %の精度
で測定する。JIS C 2550-1に基づいたエプスタイン試験片を使用してもよい。
試験片を積層し,圧縮機のラムの間に置く。ラムの表面積は,圧力を加える試験片の積層体を完全に覆
うことができる面積とする。特別に合意している場合には,試験片の寸法よりも小さいが,25 mm×12 mm
以上の面積のラムを使用して占積率を測定できる。この場合には,試験片の切断かえりを除去する必要は
ない。
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C 2550-5:2020
図4−占積率測定における積層試験片及びラム
試験片の積層体に(1.00±0.05)MPaの圧力を均一に加えた状態で,積層体の4辺の対称な位置のラム
間距離hを±0.3 %の精度で測定できる測定器で測定する。これができない場合は,短い2辺の中央(図4
におけるB)又は対角の角部(図4におけるA又はC)で測定する。
ラム間距離hの測定において,規定の精度が得られない場合には,積層高さを高くしてもよい。
式(11)によって,占積率fを算定する。
l
b
h
m
f =
m
ρ
··········································································(11)
ここに,
f: 占積率
m: 試験片の合計質量(kg)
ρm: 試験片の密度(kg・m−3)
h: ラム間距離(m)
b: 試験片の平均幅(m)
l: 試験片の平均長さ(m)
6.4
再現性
箇条6に規定する方法の再現性は,占積率の相対標準偏差で0.5 %とみなされる。
6.5
試験報告書
(我が国の現状に合わせ,試験報告書は電磁鋼帯の製品規格で規定しているため,この規格では不採用
とした。)
ラム
ラム
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C 2550-5:2020
附属書A
(参考)
長方形単板試験片を使用する抵抗率測定装置の例(R2法)
長方形単板試験片を使用する抵抗率測定装置(R2法,4.4.3参照)は,試験片と電気的に接触する比較
的鋭利な角部(例えば,1 mmの曲率半径)をもつ4個の接点を備える。各々の接点を,基板に固定され
たホルダー上に取り付ける(図A.1参照)。接点は±1 mmの精度で,試験片の軸に対称に配置する。エプ
スタイン試験片の場合,試験片の短辺中心からは,±0.5 mmの対称な位置に接点を配置する。接点間には,
(接点が配置された側において)試験片よりも小さな支持平板を配置する。ただし,支持平板と試験片と
の差異は,各々の側面上で10 mm以下(エプスタイン試験片については5 mm以下)とする。支持平板の
厚さは,接点が支持平板の上に置かれた試験片に触れる程度にする(図A.1参照)。
多様な長さの試験片に対応するため,対向して配置されたこれらの接点の位置を,変更できるようにす
る。接点間の距離が変わっても他の二つの接点を結ぶ軸に対する対称性は,±1 mm(エプスタイン試験片
の短辺については±0.5 mm)の精度で,保持されるようにする。この場合,支持平板のサイズを変更する
必要がある。種々の異なる位置にタップ孔又は調整スロットがある場合,接点ホルダーを異なった位置に
配置できる。接点は,ばねによって試験片に弾性的に押し付けられる。接点のエッジは試験片のエッジに
垂直とする。ホルダーに対して可動することができる小形の接点ブロックを使用し,ホルダーと接点ブロ
ックとの間に配置されたばねによって試験片に対して押し付けられるようにすると,接点のエッジは試験
片のエッジに垂直にすることができる。この可動接点は接点及びホルダーの両方に溶接された柔軟な導線
によって,ホルダー又はホルダー上の差込みソケットに接続する(図A.1参照)。
図A.1−接点ホルダー配置の概略断面図
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C 2550-5:2020
附属書B
(参考)
ガスピクノメータ法による密度測定の例(D2法)
B.1
概要
この附属書では,二つの槽を使用する圧力方式ガスピクノメータ法(ガス膨張ピクノメータ)による電
磁鋼帯の密度測定例について記載する。電磁鋼帯の物理的構造は温度によって変化するため,試験片の体
積も温度に依存する。5.3の規定に加えて,この附属書に記載した要件を考慮して測定することが望ましい。
B.2
試験片
試験片は,使用するピクノメータの槽に合わせた寸法,及び枚数の円板試料に加工する。直径50 mm,
長さ75 mmの槽を使用し,直径36 mm円板試料を総質量200 g以上として測定する場合,試験片の各厚さ
に対する推奨枚数を表B.1に示す。
表B.1−直径36 mm円板試料の枚数
厚さ
mm
枚数
概算総質量200 g
概算総質量500 g
0.20
135
330
0.23
120
290
0.27
100
240
0.30
90
220
0.35
80
190
0.50
55
130
0.65
40
100
試験片の皮膜除去には,例えば,次の手順のように化学溶媒を使用することが望ましい。
− 試験片を常温の塩化鉄(FeCl3)溶液に数時間浸せき(漬)する,又は試験片を水酸化ナトリウム(NaOH)
含有量が50 %を超える沸騰溶液に約10分間浸した後,直接,常温の高純度塩酸(HCl)に約30秒間
浸せきする。
− 試験片を水道水,蒸留水又は純水及びアセトンで順次洗浄する。代替として,試験片を水道水で洗浄
し,乾いた清潔な布又は吸水紙で拭いて乾かし,更に室温の乾燥空気を吹き付けて表面の水分を除去
する。
− 試験片に指で触れると測定結果に影響を及ぼす可能性があるため,かん(鉗)子又は適切な寸法の磁
石で試験片を扱う。
注記 上記の手順には,危険性のある物質,操作及び装置が含まれている場合があるが,その使用に
関する安全上の全ての問題に対処することを目的にしていない。使用者には,適切な安全対策
を確立した上で,手順の実施可否を判断する責務がある。
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C 2550-5:2020
B.3
測定装置
測定装置は,接続弁で接続された測定槽(体積 Vmeas)及び膨張槽(体積 Vexp),並びにガスを注入・排
出するための弁で構成する(図B.1参照)。測定槽は,気密性に優れた取外し可能な蓋を備えており,膨張
槽は校正された一定容量のものである。測定槽には,圧力センサ,通常は圧力トランスデューサを接続す
る。
1 ガス注入口
4 試験片
7 膨張槽
2 ガス注入弁
5 測定槽
8 ガス排出弁
3 圧力センサ
6 接続弁
9 ガス排出口
図B.1−二圧力室ガスピクノメータの構成
B.4
校正
ピクノメータは,国際測定標準に従って決定された体積,又は密度の標準試験片を使用して,製造業者
の指示に従って校正する。密度を決定する場合は,ひょう(秤)量器も校正する。
注記 ピクノメータの校正には,ステンレス鋼の球形試験片が一般的に用いられる。
槽の容量は,ISO 1183-3に従って校正することが可能である。
B.5
測定手順
試験片の質量を不確かさ0.1 mgのひょう(秤)量器で測定する。
試験片を測定槽に設置した後,全ての弁を開き,二つの槽を大気圧のガスで充満させながら,測定装置
をパージする。圧力センサの読取り値を,ゼロに設定する。ガスは,ヘリウム,窒素など,試験片の表面
吸着が低いものを使用することが望ましい。
図B.1の弁6及び弁8を閉めた後,弁2を開け,測定槽が規定の圧力P1(例えば,120 kPa)に達するま
でガスを流入する。弁2を閉めた後,弁6を開け,平衡圧力P2を測定する。
温度Tにおける試験片の体積VTは,式(B.1)によって算出する。
VT=
T
2
1
exp
meas
1
V
P
P
V
V
−
−
······························································· (B.1)
ここに,
VT: 試験片体積(m3)
Vmeas: 測定槽の容量(m3)
Vexp: 膨張槽の容量(m3)
P1: 弁を開放する前の測定槽の圧力(kPa)
P2: 弁を開放した後の平衡圧力(kPa)
試験片の密度ρmは,試験片の質量を式(B.1)で得られた体積を使用して(B.2)で算出する。
15
C 2550-5:2020
ρm=
T
V
m ················································································ (B.2)
ここに,
ρm: 試験片の密度(kg・m−3)
m: 試験片の質量(kg)
VT: 試験片体積(m3)
B.6
再現性
ヘリウム又は窒素を使用した場合,測定結果は,ほぼ同一の結果を示す。理想的な状態では,測定再現
性は約0.2 %以内とみなされる。
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C 2550-5:2020
附属書C
(参考)
けい素及びアルミニウム成分による密度計算式(D4法)
電磁鋼帯の密度は,ASTM A34/A34M-06に記載にする式(C.1)によって算出することができる。
ρm=7 865−65×(CSi+1.7×CAl) ·················································· (C.1)
ここに,
ρm: 密度(kg・m−3)
CSi: けい素の質量割合(%)
CAl: アルミニウムの質量割合(%)
注記1 電磁鋼帯の化学組成は,製造業者の裁量に委ねる。
注記2 実際の製品は,けい素及びアルミニウム以外の成分を含むことがある。このため,式(C.1)は,
常に適用できる訳ではない。
参考文献
ISO 1183-1,Plastics−Methods for determining the density of non-cellular plastics−Part 1: Immersion method,
liquid pycnometer method and titration method
ISO 2738,Sintered metal materials, excluding hardmetals−Permeable sintered metal materials−
Determination of density, oil content and open porosity
ASTM A34/A34M-06 Standard Practice for Sampling and Procurement Testing of Magnetic Materials
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C 2550-5:2020
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS C 2550-5:2020 電磁鋼帯試験方法−第5部:電磁鋼帯の抵抗率,密度及び占
積率の測定方法
IEC 60404-13:2018,Magnetic materials−Part 13: Methods of measurement of resistivity,
density and stacking factor of electrical steel strip and sheet
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
3 用語及び
定義
この規格で使用して
いる用語の定義。
3
用語の定義は記載され
ていない。
追加
用語の定義を追加した。
読者の理解を助けるため追加し
た。IEC規格の変更は提案予定な
し。
4.7,5.4,6.5
試験報告書
この規格では不採用
とする旨を記載した。
4.7,5.4,
6.5
それぞれ密度,抵抗率及
び占積率の試験成績書
に記載する内容を規定。
削除
項目自体を削除した。
試験方法規格で試験成績書の内容
を規定する必要はないため。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:IEC 60404-13:2018,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
C
2
5
5
0
-5
:
2
0
2
0