2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
C 2527-1994
金属抵抗材料の熱起電力試験方法
Testing method for thermo-electromotive force of
metallic resistance materials
1. 適用範囲 この規格は,金属抵抗材料などの−40〜+250℃程度の温度範囲における熱起電力の試験方
法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1602 熱電対
JIS Z 8703 試験場所の標準状態
JIS Z 8710 温度測定方法通則
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
(1) 金属抵抗材料 電気抵抗特性を利用する金属導電材料。
(2) 熱電対 熱起電力を発生させる目的で,2種類の導体の一端を電気的に接続したもの。
(3) 熱電対の脚 熱電対を構成する2種の導体の各々。単に脚ともいう。
(4) 測温接点 熱電対の素線を接合した接点で,温度を測る位置に置かれるもの(JIS C 1602参照)。
(5) 基準接点 熱電対と銅導線,又は熱電対用補償導線と銅導線との接合点を,一定の温度(例えば,氷
点)に保つようにしたもの。
(6) 温度定点装置 熱電対などの特性を試験するため,JIS Z 8710に規定する定義点,二次基準点及びそ
の他の基準点の温度を実現させる装置。
(7) 標準白金線及び標準銅線 試験片と組み合わせて熱電対を構成させる場合に,相手の脚となる白金線
又は銅線。
(8) 銅導線 基準接点と測定器とを結ぶ銅製の導線。
(9) 対白金熱起電力 試験片と標準白金線で構成した熱電対において,測温接点と基準接点間との温度差
に対応して発生する熱起電力。この場合,基準接点において白金に向かうときの極性を正,逆の場合
を負とする。
(10) 対銅熱起電力 試験片と標準銅線で構成した熱電対において,測温接点と基準接点間との温度差に対
応して発生する熱起電力。この場合,基準接点において銅に向かうときの極性を正,逆の場合を負と
する。
3. 試験片
2
C 2527-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3.1
試験片の採取方法 試験片の採取は,製品から切り取り,そのままのものを試験片とする。製品が
そのままのものでは試験片とならない寸法の場合には,同一溶解単位の中間工程から別に採取した試験片
を使用する。線又は棒では,これを伸線若しくは引抜きし,帯又は板では,これを長さ方向に裁断するな
ど,適切な方法で試験片を作製する。
3.2
試験片の処理方法 試験片の処理方法は,次のとおりとする。
(1) 製品とは別に,伸線,引抜き又は裁断によって作製した試験片は,適切な熱処理を施して伸線,引抜
き又は裁断によって生じたひずみを除去しておかなければならない。
(2) 試験片の表面に酸化皮膜又は絶縁被覆がある場合には,試験片の両端の皮膜又は被覆を除去して金属
面を露出させておかなければならない。
3.3
試験片の寸法 試験片の寸法は,線又は棒の場合には,直径4mm以下,帯又は板の場合には,幅
4mm以下とする。ただし,試験片の体積抵抗率が0.03μΩm以下の場合には,1mm以下,0.03μΩmを超え
0.10μΩm以下の場合には1.6mm以下とする。長さは,測温接点及び基準接点をそれぞれ所定の温度に容易
に保持できる程度であればよいが,通常は,取扱い上1.2m以上とする。
4. 試験条件 試験は,JIS Z 8703に規定する常温(温度20±15℃)で行う。
5. 測定装置 測定装置は,図1のように測定器,基準温度装置,温度定点装置又は恒温槽,標準白金線
又は標準銅線,導線などを組み合わせて使用する。
図1 測定装置(一例)
(1) 電圧測定器 電圧測定器は直流電圧測定の許容差が,1μV以内のものとする。電圧測定器は適切な標
準器を用いて精度の確認を行ったものを使用する。
(2) 銅導線 銅導線には,めっきを施した銅導線を用いてはならない。
(3) 標準白金線及び標準銅線 標準白金線は,十分焼きなまされた直径0.5mmの純白金線であって,100℃
における電気抵抗 (R100) と0℃における電気抵抗 (R0) との比 (
0
100
R
R) が1.391 6以上のものとする。
標準銅線は,十分焼きなまされた直径1mm以下の純銅線で,標準白金線と組み合わせて熱電対を
構成させ,基準接点を0℃,測温接点を100℃とした場合の熱起電力が0.76
02
.00
+
mVのものとする。
(4) 氷点装置 氷点装置及びこれを用いて0℃を実現する操作は,JIS Z 8710の規定による。
(5) 氷点以外の温度定点装置 氷点以外の温度定点装置は,JIS Z 8710の規定による定義定点,二次基準
点又はその他の基準点の中から適切なものを選び,この温度を再現する装置で,このうち水の沸点装
置及び操作方法は,JIS Z 8710による。
(6) 恒温槽 恒温槽は,容器の中に粘度の低い液体を入れ,これを加熱又は冷却するとともに,十分かき
3
C 2527-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まぜて所要の温度を均一,かつ,一定に保つようにしたもので,試験片の測温接点付近は,所定の温
度±0.1℃に保持されることが望ましい。
(7) 温度計 恒温槽の温度測定は,所定の温度が100℃以下の場合は0.1℃以下,100℃を超え250℃以下の
場合は0.5℃以下の精度で測定できる温度計を原則として使用する。
6. 測定方法
6.1
定点測定法と比較測定法 熱起電力の測定は,定点測定法又は比較測定法のいずれを用いてもよい。
定点測定法は,温度定点装置によって所定の温度を実現させ,試験片の測温接点をこの温度に保ったとき
の熱起電力を測定する。
比較測定法は,恒温槽などをある一定温度に保ち,この温度を温度計によって読み取り,試験片の測温
接点をこの温度に保ったときの熱起電力を測定する。
6.2
熱起電力の測定
6.2.1
測定準備
(1) 熱起電力を測定するには,まず温度定点装置や恒温槽を作動させる。すなわち,氷点装置,水の三重
点装置,沸点を利用する温度定点装置又は恒温槽が,それぞれ正常に作動して所定の温度を実現して
いることを確認し,凝固点や転移点を利用する温度定点装置においては,定点物質が完全に溶解して
いることを確認する。この場合,気圧の補正を必要とするものであれば所定の補正を行い,正しい温
度を求めておかなくてはならない。
測定器は,予備通電をし,正常で安定な状態にあることを確認する。
6.2.2
試験片の挿入
(1) 試験片は標準白金線又は標準銅線と電気的に接続して熱電対を構成する。この熱電対の基準接点側両
脚に銅導線を接続し基準温度(氷点)装置の挿入部に挿入する。次に,測温接点を所定の温度の温度
定点装置又は恒温槽の挿入部に挿入する。
(2) 挿入の深さは,10cm以上であることが望ましいが,測定装置の関係上やむを得ない場合には,試験片
の直径若しくは幅の10倍以上,又は標準銅線の直径の100倍以上のいずれかのうち,大きい方をとる
ことにする。
また,恒温槽による測定の場合は,試験片の測温接点と温度計の感温部との間に温度差を生じない
ようにできるだけ接近するように挿入する。
6.2.3
測定値の読取り 基準接点及び測温接点の温度が安定して測定器の指示に時間的変動がなくなり,
安定したときの値を読み取る。この値が熱電対の測温接点と基準接点間の温度に対応する熱起電力となる。
なお,測定に当たっては,回路中に寄生熱起電力を含まないことを確かめるために,両接点を同一の温
度にした場合に熱起電力が生じないことをあらかじめ調べておかなくてはならない。
6.3
平均熱起電力の測定 熱起電力と温度差との関係が,直線関係にあると仮定しても誤差を生じない
ときの温度差1℃当たりの熱起電力を平均熱起電力といい,平均熱起電力は,次の式によって求める。た
だし,熱起電力特性が,温度の二次式で求められるとき,温度の二次の係数が大きいものでは,測温接点
の温度の選定には注意を要する。
4
C 2527-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
t
E
E
⊿
=
′
ここに,
E: 平均熱起電力 (mV/K)
∆t: 基準接点と測温接点との温度差 (℃)
E′: 温度差∆t℃における対白金又は対銅熱起電力 (mV)
6.4
対白金熱起電力及び対銅熱起電力の換算 試験片の対白金熱起電力及び対銅熱起電力のいずれか一
方を測定して他を求める場合の換算は,次の式による。
E′Pt=E′Cu+E′ (Cu−Pt)
ここに,
E′Pt: 温度差∆t℃における試験片の対白金熱起電力 (mV)
E′Cu: 温度差∆t℃における試験片の対銅熱起電力 (mV)
E′(Cu−Pt) : 温度差∆t℃における標準銅線の標準白金線に対する
熱起電力 (mV)
電気部会 電気抵抗材料専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
平 山 宏 之
東京都立科学技術大学名誉教授
揖 斐 敏 夫
通商産業省基礎産業局
中 島 一 郎
通商産業省機械情報産業局
倉 重 有 幸
工業技術院標準部
加 藤 仲 司
日本電気抵抗合金工業会
久保田 節
東京特殊電線株式会社
島 田 次 雄
シルバー鋼機株式会社
立 花 種 則
株式会社古河テクノマテリアル
中 村 恭 之
住友特殊金属株式会社営業本部
清 田 泰 輔
日本金属工業株式会社営業本部
赤 嶺 淳 一
社団法人日本電機工業会技術部
岡 村 郁 生
株式会社精電舎
加 藤 敏 男
横河電機株式会社品質保証部門品管標準
殿 塚 文 彦
同和鉱業株式会社サーモテック事業本部
三 谷 進
日本電信電話株式会社技術協力センター
(事務局)
平 野 由紀夫
工業技術院標準部電気規格課
稲 垣 勝 地
工業技術院標準部電気規格課