C 2525 : 1999
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによってJIS C 2525 : 1994は改正され,この規格に置き換えられる。
また,令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
JIS C 2525には,次に示す附属書がある。
附属書(参考) ISO/TAG4の測定の不確かさの表示に関する指針の概要
日本産業規格 JIS
C 2525 : 1999
金属抵抗材料の導体抵抗及び
体積抵抗率試験方法
Testing method for conductor-resistance and
resistivity of metallic resistance materials
序文 この規格は,1974年に発行されたIEC 60468, Method of measurement of resistivity of metallic materials
を参考として,最近の計測技術の進歩を考慮して,JIS C 2525 : 1994を改正したものである。
1. 適用範囲 この規格は,体積抵抗率0.05μΩm以上2μΩm以下の金属抵抗材料などの導体抵抗,及び体
積抵抗率の試験方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8703 試験場所の標準状態
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
a) 金属抵抗材料 電気抵抗特性を利用する金属導電材料。
b) 導体抵抗 均一な断面積をもつ電気導体の長さ方向における所定長さ当たりの電気抵抗 (Ω)。一般に,
1m当たりの電気抵抗 (Ω/m) 又は1km当たりの電気抵抗 (Ω/km)。
導体抵抗の記号:RC
c) 体積抵抗率 単位断面積,単位長さの電気抵抗 (Ωm)。単に,抵抗率ということもある。体積抵抗率
の記号は,次による。
体積抵抗率の記号:ρ
t℃における体積抵抗率の記号:ρt
d) 電圧端子 試験片両端の電位差を測定するための,試験片押さえジグで,刃形の金具。
e) 電流端子 試験片に電流を流す場合の,試験片押さえジグで,ねじ止め式の金具。
f)
測定用導線 電圧端子,電流端子と測定器及び電源とを結ぶ導線。
g) 拡張不確かさ 高い信頼水準 (P) をもつことの期待される信頼限界のある測定の不確かさ。ここでは,
P=95%を使用する。
4. 試験片
4.1
試験片の採取方法 試験片の採取方法は,表1による。
2
C 2525 : 1999
表1 試験片の採取方法
試験片
製品の形状
採取方法
導体抵抗用試験片
線
製品から規定数を採取し,そのままのものを試験片とする。
棒
帯
板
体積抵抗率用試験片 直径0.1mm未満の線
製品と同一溶解単位の中間工程から直径0.5〜1.0mmの線,又は
厚さ0.5〜1.0mmの帯若しくは板を作製して試験片とする。同一
溶解単位の中間工程から試験片採取が困難な場合は,7.1b)によ
って試験片の断面積を求め,そのままのものを試験片としてもよ
い。
厚さ0.5mm未満の帯又は板
直径0.1mm以上の線又は棒 0.01Ω以上の試験片が得られれば導体抵抗用試験片をそのまま
使用する。0.01Ω未満の場合は,線又は棒ではこれを伸線若しく
は引抜きし,帯又は板ではこれを一様な幅をもつリボン状に裁断
して試験片とする。これが困難な場合は,同一溶解単位の中間工
程から別に線若しくは棒又は帯若しくは板を製造して0.01Ω以
上の試験片を作製する。
厚さ0.5mm以上の帯又は板
4.2
試験片の処理方法 試験片の処理方法は,次による。
a) 導体抵抗用試験片及び体積抵抗率用試験片は,製品の仕上がり状態のままのものを用いる。製品と別
に作製した体積抵抗率用試験片は,それぞれの材質に適した焼なましを施したものを用い,裁断によ
って採取した試験片は,裁断によって生じたひずみを除去しておかなければならない。
b) 試験片の表面に酸化皮膜又は絶縁被覆がある場合は,試験片と測定用端子の接触部分の皮膜又は被覆
を除去して,金属面を露出させておかなければならない。
c) 採取した試験片には,張力,曲げなどを加えてはならない。また,汚れ,じんあい(塵埃)などが付
着しないよう慎重に取り扱わなければならない。
d) ニッケルクロム電熱材の試験片は,使用者から熱処理の要望があった場合には,約800℃の温度で30
分間保持した後に空冷する熱処理を施すことができる(ニッケルクロム電熱材は,仕上げ焼なましで
急冷されると抵抗値が数%小さくなる特性があるからである。)。
4.3
試験片の寸法 試験片の寸法は,通常,測定長50cm以上でなければならない。ただし,体積抵抗率
測定用試験片の場合は,試験片の全長を通じて,直径に1%以上,幅及び厚さに3%以上の変化があっては
ならない。
5. 試験条件
5.1
試験場所の温度 試験は,通常,JIS Z 8703に規定する標準温度23±3℃で行う。試験温度が異なる
場合には,補正を加えて算出する。
5.2
測定電流 測定電流によって試験片が自己加熱し,その結果0.1%以上の抵抗値の変化を起こすおそ
れがある場合は,初めの電流とその2倍の電流とで抵抗を測定し,その差が0.1%を超えなければ初めの
電流で測定してもよい。0.1%を超えた場合は,上記の条件を満たすような小さな電流で測定する。
3
C 2525 : 1999
6. 測定装置 抵抗の測定は,ダブルブリッジ法,ホイートストンブリッジ法,デジタル抵抗計法又は電
圧比較法(電位差計又はデジタル電圧計を使用)などで行い,その測定装置は,参考図1.1(抵抗測定器法
による4端子測定の場合),参考図1.2(電圧比較法による4端子抵抗測定の場合),参考図1.3(抵抗測定
器による2端子測定の場合)のように電圧端子,電流端子,測定用導線,直流電流計,測定器,標準抵抗
器などを組み合わせて使用する。
a) 測定器 抵抗の測定には,必要な測定範囲で有効数字4けた以上を測定できるブリッジ,抵抗計,又
は電圧測定器を用いる。ただし,試験片の電気抵抗が0.01Ω未満のときは1μΩが測定できるものとす
る。測定器は適切な標準器を用いて精度(拡張不確かさ)の確認が行われたものを使用する。
b) 端子 電圧端子及び電流端子は,次による。
1) 一対の電圧端子は,丈夫な台の上に固定した測定長さ(端子間隔)100cm又は50cmのナイフエッ
ジとする。各端子における試験片との接触面を試験片の長さの方向にはかったとき,その大きさが
電圧端子間の間隔の1/500以下であることが必要である。ただし,試験片の抵抗値が十分高く,測
定に疑義を生じるおそれがない場合は,ねじ止め式の端子で代用してもよい。
2) 試験片の抵抗値が1Ω以下の場合は,電圧端子間の外側に電流端子を設けなくてはならない。この場
合,電流端子と電圧端子との間隔は,試験片の直径又は幅の3倍以上でなければならない。
3) 試験片の抵抗温度係数が1 000×10−6・K−1以上の場合には,試験片及び端子全体を絶縁性の油槽中
に浸し,抵抗測定中に試験片の温度が変化しない構造でなければならない。
c) 標準抵抗器 抵抗の標準を必要とする場合は,有効数字4けた以上まで精度(拡張不確かさ)の確認
された標準抵抗器を使用する。標準抵抗器は,その温度を測定し,温度による抵抗値変化を補正して
使用する。
d) 測定用導線 ダブルブリッジで測定する場合,電流,電圧の各端子と測定器とを接続する導線は,そ
の抵抗値が0.01Ω以下でなければならない。
7. 測定方法
7.1
試験片の寸法測定 試験片の寸法測定は,次による。
a) 長さの測定 長さの測定は,0.5mmの精度(拡張不確かさ)で測定する。試験片上の電圧端子間隔を
長さとする。
b) 断面積の測定 断面積の測定は,次によって行い有効数字4けたまで求める。
1) 直径から求める場合 線及び棒は,1点について互いに直角な2方向の直径をほぼ等間隔に5か所
以上の点で測定して平均し,次の式によって断面積を算出する。
2
4d
Aπ
=
ここに, A: 断面積 (mm2)
d: 直径 (mm)
2) 質量,密度及び長さから求める場合 形状上,寸法から断面積の算出が困難な場合は,質量,密度
及び長さから次の式によって算出する。
L
d
M
A
S
A
=
ここに,
A: 断面積 (mm2)
MA: 試験片の空気中の質量 (g)
L: 試験片の長さ (m)
4
C 2525 : 1999
ds: 試験片の密度 (g/cm3)
ただし,質量は4けたまで測定し,長さは,0.1%よりよい精度(拡張不確かさ)で測定する。ま
た,密度を測定する場合は,10g以上の試験片を用い,化学天びんで空気中と水中の質量を5けた
まで求め,次の式によって密度を算出する。この場合,水は常温とし,気泡などによって誤差が生
じないようにする。
L
A
L
A
S
M
M
d
M
d
−
=
ここに,
ds: 試験片の密度 (g/cm3)
MA: 空気中における試験片の質量 (g)
ML: 水中における試験片の見掛けの質量 (g)
dL: 水の密度 (g/cm3)
常温における水の密度を,表2に示す。
表2 常温における水の密度(一部)
温度 ℃ 水の密度 g/cm3 温度 ℃ 水
の
密
度
g/cm3
温度 ℃ 水
の
密
度
g/cm3
10
0.999 70
17
0.998 78
24
0.997 30
11
0.999 61
18
0.998 60
25
0.997 05
12
0.999 50
19
0.998 41
26
0.996 79
13
0.999 38
20
0.998 21
27
0.996 52
14
0.999 25
21
0.997 99
28
0.996 24
15
0.999 10
22
0.997 77
29
0.995 95
16
0.998 94
23
0.997 54
30
0.995 65
7.2
抵抗の測定 抵抗の測定は,常温における試験片の抵抗値を測定する。抵抗の測定をホイートスト
ンブリッジによって求める場合には,接続導線の抵抗値を測定値から差し引くものとする。求められた抵
抗値から導体抵抗及び体積抵抗率は,次によって求める。ただし,標準状態の温度は23℃とする。
a) 導体抵抗は,次の式によって有効数字4けたを求め,JIS Z 8401によって3けたに丸める。
L
R
RC=
ここに, Rc: 導体抵抗 (Ω/m)
R: 試験片の常温t℃における実測抵抗値 (Ω)
L: 試験片の長さ (m)
b) 導体抵抗の温度による補正 試験片の抵抗温度係数が270×10−6・K−1以上あるものでは,次の式によ
って23℃における導体抵抗値を算出する。
)
23
(
1
23
−
+
=
t
R
R
ct
α
ここに,
ρ23: 23℃における導体抵抗 (Ω/m)
Rct: t℃における導体抵抗 (Ω/m)
α: 試験片の抵抗温度係数 (K−1)
t: 試験片の温度 (℃)
c) 体積抵抗率 体積抵抗率は,次の式によって有効数字4けたを求め,JIS Z 8401によって3けたに丸
める。
5
C 2525 : 1999
(
)
[
]
A
L
t
R
A
R
−
+
=
=
23
1
23
23
α
ρ
ここに,
ρ23: 23℃における体積抵抗率 (μΩm)
R23: 試験片の実測抵抗値を23℃における値に換算した導体抵抗
(Ω/m)
R: 試験片のt℃における実測抵抗値 (Ω)
α: 試験片の抵抗温度係数 (K−1)
L: 試験片の長さ (m)
A: 試験片の断面積 (mm2)
8. 測定の不確かさ 測定の不確かさによって標準的方法及び日常的方法に分類する。
8.1
標準的方法の不確かさ 標準的方法においては,測定の不確かさは95%信頼度の拡張不確かさで表
すものとし,体積抵抗率±0.25%,導体抵抗±0.2%を推奨する。しかし,許容差によって,少なくとも許
容差の1/10よりよい拡張不確かさで測定しなければならない。測定値(補正を含む計算値)±拡張不確か
さは,許容差内でなければならない。不確かさの記載は,使用者との合意による。
ISOガイドで示される測定の不確かさに関する概要を附属書に記載する。
8.2
日常的方法の不確かさ 日常的方法では,規格の許容差の1/4よりよい拡張不確かさで測定する。こ
の方法は,測定又は試験のチェック,確認などのため,日常的に使用される方法で,測定値は,受渡試験
のデータとして使用することは望ましくなく,参考とする。
関連規格 IEC 60468:1974 Method of measurement of resistivity of metallic materials
ISO/TAG4/WG3:1993 Guide to the expression of uncertainty in measurement
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C 2525 : 1999
参考図1.1 測定装置(抵抗測定器による4端子測定の場合)
参考図1.2 測定装置(電圧比較法による4端子抵抗測定の場合)
参考図1.3 測定装置(抵抗測定器による2端子測定の場合)
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附属書(参考)
ISO/TAG44測定の不確かさの表示に関する指針の概要
この附属書(参考)は,本体で規定した事柄を説明するもので,規定の一部ではない。
この指針は1980年のBIPM(国際度量衡局)の勧告を基に作成され,現在のところ,最も詳細,かつ,
その根拠を明確に示し,広い計測分野をカバーするものである。従来不明確であった誤差に代わって,不
確かさ (uncertainty) の語を導入したものである。
不確かさをA,B二つに分け,Aは統計的に計算できるもの,Bはそれ以外を示す。Aは従来のランダ
ム誤差,Bは系統誤差に近いが,完全に同一ではない。
計算は要因によって,A,B二つに分けて1σ(標準偏差)相当の標準不確かさを求め,これをrss (root sum
of squares) 方式[不確かさの伝搬の法則]によって合成,合成標準不確かさを求める。次いでこれに保証
係数 (coverage factor) kを乗じて拡張不確かさを求める。
標準不確かさ 標準偏差で表した不確かさ
Aタイプ(ランダム) 一連の統計解析による評価
1) 多数データの場合 (n>10)
n
q
q
K
n
k
/
1
Σ
=
=
)1
/(
]
)
(
[
)
(
2
1
2
−
−
Σ
=
=
n
q
q
q
s
k
n
k
k
[
]n
q
s
q
s
K/
)
(
)
(
2
2
=
ここに,
n: 測定回数
qk: 測定値
q: 平均値
s2: 分散
2) 少数データの場合 (n≦10)
[
]n
q
s
t
q
s
K/
)
(
)
(
25
.0
)
(
2
2
05
.0
2
φ
=
ここに,
t0.05 (φ): φ=n−1のt分布(95%信頼水準)の値
Bタイプ(系統的) 統計解析以外の方法による評価で,要因ごとに分析
標準偏差相当に換算されている場合(そのまま)s (s1, s2…)
±aの長方形分布の(限界値の与えられている)場合a/3 (a1, a2…)
校正証明書(95%信頼限界の不確かさU)の場合U/2
合成標準不確かさ rss方式によって合成される1σ相当の不確かさ
]
)2/
(
3/
3/
[
)
(
2
22
21
22
21
2
U
a
a
s
s
s
y
u
q
C
+
+
+
+
+
+
+
=
−
Λ
Λ
拡張不確かさ 高い信頼水準をもつことの期待される信頼限界の値
(95%信頼水準の場合,k=2)
U=kuc (y)
保証係数 k拡張不確かさを得るため合成標準不確かさに乗じる係数
間接測定の場合,rss方式を適用するが,測定量間に相関のある場合には,相関を考慮する。この規格に
おいては,k=2,信頼水準95%の拡張不確かさを適用する。
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JIS改正原案作成(整合化)委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
平 山 宏 之
東京都立科学技術大学
(委員)
伊 藤 章
通商産業省機械情報産業局
村 上 拓 巳
通商産業省基礎産業局
大 嶋 清 治
通商産業省工業技術院
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会技術部
赤 嶺 淳 一
社団法人日本電機工業会
井 川 淳
横河M&C株式会社
岡 村 郁 生
株式会社精電テクノ
山 内 五 郎
NTT技術協力センター
* 塚 原 順 吉
大手金属株式会社
* 高 橋 宏
王子合金株式会社
* 木 島 三樹男
株式会社古河テクノマテリアル
* 戸 田 邦 明
根岸電材株式会社
* 原 田 秀 明
東京特殊電線株式会社
備考 *印は日本電気抵抗合金工業会技術委員