C 2143-8:2015 (IEC 60216-8:2013)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語,定義,記号及び略語 ································································································· 2
3.1 用語及び定義 ················································································································ 2
3.2 記号及び略語 ················································································································ 4
4 熱的耐久性の試験手順 ······································································································· 4
4.1 一般的事項 ··················································································································· 4
4.2 試験片の数 ··················································································································· 4
4.3 試験片の準備 ················································································································ 5
4.4 劣化処理過程の準備−ばく露温度及びサイクル時間 ······························································ 6
5 簡略化した計算及びグラフによる評価手順 ············································································ 9
5.1 手順の概要 ··················································································································· 9
5.2 簡略化した計算手順 ······································································································· 9
5.3 データの補完(Data rescue) ·························································································· 11
5.4 相対熱的耐久性指数(RTE)の決定 ················································································· 12
5.5 試験報告書 ·················································································································· 13
C 2143-8:2015 (IEC 60216-8:2013)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人電気学会(IEEJ)及び一般財団
法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本
工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS C 2143の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS C 2143-1 第1部:劣化処理手順及び試験結果の評価
JIS C 2143-2 第2部:熱的耐久性の測定−評価指標の選択
JIS C 2143-3 第3部:熱的耐久性の計算の手引き
JIS C 2143-4-1 第4-1部:劣化処理オーブン−シングルチャンバオーブン
JIS C 2143-4-2 第4-2部:劣化処理オーブン−300 ℃以下の精密オーブン
JIS C 2143-4-3 第4-3部:劣化処理オーブン−マルチチャンバオーブン
JIS C 2143-5 第5部:相対熱的耐久性指数(RTE)の求め方
JIS C 2143-6 第6部:固定時間枠法を用いる絶縁材料の熱的耐久性指数(温度指数及び相対熱的耐久
性指数)の求め方
JIS C 2143-8 第8部:簡略化した手順による熱的耐久性の計算の手引
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日本工業規格 JIS
C 2143-8:2015
(IEC 60216-8:2013)
電気絶縁材料−熱的耐久性−第8部:簡略化した
手順による熱的耐久性の計算の手引
Electrical insulating materials-Thermal endurance properties-
Part 8: Instructions for calculating thermal endurance characteristics
using simplified procedures
序文
この規格は,2013年に第1版として発行されたIEC 60216-8を基に,技術的内容及び構成を変更するこ
となく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
1
適用範囲
この規格は,温度指数(TI)及び/又は相対熱的耐久性指数(RTE),並びに半減温度幅(HIC)で表す
熱的耐久性を求めるため用いる,一般的な劣化処理条件及び簡略化した手順について規定する。
この手順は,高温に長期間ばく露した材料の熱的耐久性の評価の基本的事項を規定する。
この規格は,あらかじめ規定した特性変化を引き起こすにために必要な時間の対数と対応する絶対温度
(熱力学的温度)の逆数との間に,実質的な直線関係(アレニウス則の関係)が成り立つことを前提とす
る。
この規格は,試験する温度範囲内で供試材料に転移1),特に一次転移が起きる場合には,適用しないの
がよい。
注1) 高分子材料の場合,一次転移とガラス転移(二次転移)とがある。
一次転移とは,化学変化を伴わず,状態が気体,液体,固体など他の相に変わることをいう。
結晶性高分子の場合,構造中の結晶部分の融解が一次転移である。
非晶性高分子の場合には,相転移はないが,分子が熱エネルギーによって凍結状態から解放
されて自由な運動が可能になるガラス転移がある。
これら転移温度の上下では,熱力学的な状態が異なり,この試験方法の前提であるアレニウ
ス則に当てはまらないことがある。
この規格群の他の各部を通して,“絶縁材料”とは,常に“絶縁材料及びそれらを単純に組み合わせたも
の”を意味する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60216-8:2013,Electrical insulating materials−Thermal endurance properties−Part 8: Instructions
for calculating thermal endurance characteristics using simplified procedures(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
2
C 2143-8:2015 (IEC 60216-8:2013)
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とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 2143-1 電気絶縁材料−熱的耐久性−第1部:劣化処理手順及び試験結果の評価
注記 対応国際規格:IEC 60216-1:2013,Electrical insulating materials−Thermal endurance properties
−Part 1: Ageing procedures and evaluation of test results(IDT)
JIS C 2143-2 電気絶縁材料−熱的耐久性−第2部:熱的耐久性の測定−評価指標の選択
注記 対応国際規格:IEC 60216-2,Electrical insulating materials−Thermal endurance properties−Part
2: Determination of thermal endurance properties of electrical insulating materials−Choice of test
criteria(IDT)
JIS C 2143-3 電気絶縁材料−熱的耐久性−第3部:熱的耐久性の計算の手引き
注記 対応国際規格:IEC 60216-3,Electrical insulating materials−Thermal endurance properties−Part
3: Instructions for calculating thermal endurance characteristics(IDT)
JIS C 2143-4-1 電気絶縁材料−熱的耐久性−第4-1部:劣化処理オーブン−シングルチャンバオーブ
ン
注記 対応国際規格:IEC 60216-4-1,Electrical insulating materials−Thermal endurance properties−Part
4-1: Ageing ovens−Single-chamber ovens(MOD)
JIS C 2143-5 電気絶縁材料−熱的耐久性−第5部:相対熱的耐久性指数(RTE)の求め方
注記 対応国際規格:IEC 60216-5,Electrical insulating materials−Thermal endurance properties−Part
5: Determination of relative thermal endurance index (RTE) of an insulating material(IDT)
JIS C 4003 電気絶縁−熱的耐久性評価及び呼び方
注記 対応国際規格:IEC 60085,Electrical insulation−Thermal evaluation and designation(MOD)
JIS K 7100 プラスチック−状態調節及び試験のための標準雰囲気
注記 対応国際規格:ISO 291,Plastics−Standard atmospheres for conditioning and testing
3
用語,定義,記号及び略語
この規格で用いる主な用語,定義,記号及び略語は,次による。
3.1
用語及び定義
3.1.1
温度指数,TI(temperature index)
20 000時間(又は他の規定する時間)における熱的耐久性の関係から導く温度(℃)の数値。
3.1.2
半減温度幅,HIC(halving interval)
温度指数に等しい温度と,温度指数に等しい温度で得た終点到達時間の半分の時間から求めた温度(半
減温度)との温度間隔(K)の数値(図2参照)。
注記 この定義は,IEC 60050-212:2010の定義212-12-13を修正したもので,“温度指数又は相対温度
指数に相当する”を“温度指数に等しい”に置き換えた。
3
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3.1.3
熱的耐久グラフ(thermal endurance graph)
熱的耐久性試験で,規定の終点到達時間の対数と,試験した絶対温度(熱力学的温度)の逆数とを用い
てプロットしたグラフ(図2参照)。
注記 この定義は,IEC 60050-212:2010の定義212-12-10を修正したもので,“絶対温度”の語を挿入
した。
3.1.4
熱的耐久グラフ用紙(thermal endurance graph paper)
縦軸に10倍ごとの対数時間目盛をもち(多くの場合,10時間〜100 000時間が適切である。),横軸に,
絶対温度(熱力学的温度)の逆数の目盛をもつグラフ用紙。
注記1 横軸には,一般に左から右に温度が増す方向に合わせた非均等な温度目盛(℃)を併記する。
注記2 横軸の絶対温度の逆数は,左から右に減少する方向をとる。
3.1.5
自由度(degrees of freedom)
データの数からパラメータの数を引いた数。
3.1.6
終点(end-point)
熱的耐久性試験において,実用を考慮して定める特性の基準値。
3.1.7
終点到達時間(time to end-point)
終点又は一般的な破損に到達する時間。破損時間ともいう。
3.1.8
相関係数の平方,r2(square of the correlation coefficient)
他の変数によって説明されると考えられる一方の変数の変動の割合。全てのデータの偏差の二乗和を基
準にして,回帰式がデータ全体に近いかを説明できる割合を示している。
3.1.9
破壊試験(destructive test)
測定によって試験片が非可逆的な変化を受け,同一試験片での同じ測定を繰り返すことができない特性
試験。
3.1.10
非破壊試験(non-destructive test)
測定によって試験片の性質が非可逆的な変化をせず,適切な取扱いの後,同一試験片で更なる測定をす
ることができる特性試験。
3.1.11
保証試験(proof test)
各劣化処理サイクルの終わった後,各試験片に規定のストレスを加え,試験片が壊れるまで以後の劣化
処理サイクルを続ける特性試験。
3.1.12
温度グループ(temperature group)
同じオーブンの中で共に同じ温度にばく露する試験片のグループ。
4
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注記 混同されるおそれがない場合,温度グループ又は試験グループを,単にグループという。
3.1.13
試験グループ(test group)
破壊試験のために温度グループから一緒に取り出す試験片のグループ。
3.1.14
相対熱的耐久性指数,RTE(relative thermal endurance index)
評価対象材料の見積られる終点到達時間が,参照材料のその評価された温度指数(TI)に等しい温度で
見積られる終点到達時間に等しい点での温度(℃)の数値。
3.2
記号及び略語
この規格で用いる主な記号及び略語は,次による。
a,b
:回帰係数
na,nb,nc,nd :破壊試験用の試験片の数
N
:試験片の総数
r
:相関係数
x
:試験温度(絶対温度の逆数)(1/Θ)
y
:終点到達時間の対数
ϑ
:温度(℃)
Θ
:絶対温度(K)
Θ0
:0 ℃の絶対温度の値(273.15 K)
τ
:(終点到達)時間
μ2
:値のグループの2次中央モーメント
TI
:温度指数
HIC
:温度指数と等しい温度での半減温度幅
RTE
:相対熱的耐久性指数
注記 対応国際規格には,上記の他に“n及びF”を規定しているが,この規格では用いていないた
め削除した。
4
熱的耐久性の試験手順
4.1
一般的事項
この規格では直線性からの偏差だけを検定し,データのばらつきを検定しない簡略化した手順について
規定する。
幾つかの制限の下で,熱的耐久性のデータをグラフを用いて評価できる。この場合,データのばらつき
の統計的な評価はできない。ただし,直線関係からのデータの偏差を評価することは重要である。
温度は,電気絶縁材料(EIM)に影響を及ぼす支配的な劣化要因であるため,ある程度の基礎的な温度
クラスは有用であり,国際的に認識されている(JIS C 4003参照)。
4.2
試験片の数
耐久性試験結果の精度は,各温度で劣化処理した試験片の数に大きく依存する。一般に,試験手順に関
連する事項を次に示す。
a) 非破壊試験の判定に必要な試験片の数は,ほとんどの場合,一つの温度のグループ当たり5個とする
のが妥当である。
5
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非破壊試験又は保証試験での判定基準が特性の初期値に基づく場合,初期値は,各温度グループの
試験片の数の2倍以上の試験片を用いて測定することが望ましい。
b) 保証試験の判定に必要な試験片の数は,一つの温度のグループ当たり,11個以上,できれば21個と
する。
試験片の寸法及び調整の方法は,関連する試験方法で規定する方法に従う。
c) 破壊試験の判定に必要な試験片の総数(N)の最小値は,式(1)によって求める。
d
c
b
a
n
n
n
n
N
+
×
×
=
···································································· (1)
ここに,
na: 一つの温度及び一つの時間で同じ処理を受け,特性評価終了
後に破棄する試験グループの試験片の数(通常,5個)
nb: 一つの温度での処理の数,すなわち,ばく露時間の長さの水
準の数
nc: ばく露温度の水準の数
nd: 特性の初期値を確定するために用いる試験片の数。通常の手
順では,判定基準がその初期値からの特性の変化率(百分率)
であるとき,通常,nd=2 naを選択する。判定基準が特性の絶
対値の場合,初期値の報告が要求されない限り,通常,nd=0
とする。
注記 これらの規定によって試験片が膨大な数になる場合は,関連する試験規格の規定に従わず,試
験片の数を減らしてもよい。ただし,試験結果の精度は,試験片の数に大きく左右されること
を認識することが望ましい。反対に,個々の試験結果が非常にばらついている場合は,十分な
精度を得るために,必要に応じて試験片の数を増してもよい。予備試験によって,劣化試験に
必要な試験片の数及び処理時間をおおよそ推定することが望ましい。
4.3
試験片の準備
劣化試験に用いる試験グループは,調査する母集団から無作為に抽出して構成し,同等に取り扱うこと
が望ましい。
個別材料規格又は試験規格は,試験片の準備に必要な全ての事項を含んでいる。
試験片の厚さは,熱的耐久性の決定に関する特性測定の一覧表の中で規定している場合がある(JIS C
2143-2参照)。このような規定がない場合は,厚さを記録しなければならない。物理的特性の幾つかは,
たとえ試験片の厚さの変化が僅かであっても,影響を受けやすい。このような場合は,関連する個別材料
規格に規定があれば,各劣化処理期間経過後に厚さを測定し,報告する。
劣化の速度は厚さによって異なることがあるので,その場合にも厚さは重要である。厚さの異なる材料
の劣化のデータは,必ずしも比較できるとは限らない。したがって,異なる厚さで測定を行って導いた複
数の熱的耐久性によって,材料を評価するのがよい。
試験片の寸法の許容差は,一般の試験で通常用いられるのと同じであることが望ましい。ただし,試験
片の寸法の許容差が普通より小さい必要がある場合は,特別な許容差を規定してもよい。寸法を測定して
選別することによって,試験片が均質で,かつ,試験材料を代表していることを保証することができる。
加工工程が,幾つかの材料の劣化特性に著しく影響することがあり,例えば,サンプルの抽出,供試ロ
ールからのシートの切断,与えられた方向での異方性材料の切出し,成形方法,硬化方法,前処理などは,
全ての試験片に同じ方法で行う。
このような試験片を続けて準備するために,元の材料のバッチから,予備として十分な数の試験片を別
に確保しておくことが望ましい。このような配慮をすることによって,不測の事態が生じた場合に必要と
される試験片の追加及び劣化処理で,試験グループの間に系統的な差を生じるおそれを最少にとどめるこ
6
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とができる。このような不測の事態は,例えば,熱的耐久性の関係が直線を外れる場合,又はオーブンが
熱的に暴走して試験片が破損した場合に生じる。さらに,予備の試験片は,次のような場合に用いること
ができる。
− 試験精度の向上のため,追加した温度での劣化処理が必要な場合。
− 参照試験片が必要な場合。
予備の試験片は,適切な標準雰囲気中で貯蔵しなければならない(JIS K 7100参照)。
熱硬化性材料は,選択した最も低いばく露温度で48時間放置し,状態調節する。
必要な場合,熱可塑性材料も選択した最も低いばく露温度で48時間放置し,状態調節するのがよい。
4.4
劣化処理過程の準備−ばく露温度及びサイクル時間
温度指数の決定に関しては,終点到達時間の対数と絶対温度の逆数との間で直線関係を示す十分広い範
囲内の3点以上の温度で試験片をばく露する。可能な場合,4点以上の温度で試験片をばく露するのがよ
い。
適切な熱的耐久性の計算で不確かさを低減するには,熱的ばく露の全範囲にわたり,次の要件を順守す
るように,ばく露温度を注意深く選ぶ必要がある。
a) 最も低いばく露温度は,終点到達時間の平均値又は中央値が温度指数を決定するときの外挿時間(一
般に20 000時間)の1/4より大きい結果が得られるような温度でなければならない。
注記1 温度指数への対応平均時間は,通常20 000時間であり,したがって,最も低い温度は平均
時間が5 000時間以上となる温度に対応する。
注記2 必要な場合,他の時間(20 000時間以下又は以上の時間)を選んでもよい。
b) 温度指数の確定に要する外挿は,25 Kを超えてはならない。
c) 最も高いばく露温度においても,終点到達時間の平均値又は中央値が100時間以上となるような温度
でなければならない。
注記
幾つかの材料では,適切な直線性を維持していながら,500時間未満の終点到達時間を満
たさないものがある。ただし,平均終点到達時間の範囲が小さくなるほど,データのばら
つきが同じであっても,結果の信頼区間が拡大することに留意するのがよい。
20 000時間に対応する温度指数に関するばく露温度及び時間の指針を,表1に示す。
ばく露時間及びばく露温度の設定に有用な幾つかの推奨事項及び指示を,JIS C 2143-1の附属書B(暴
露温度及び暴露時間)に示す。
熱劣化処理を始める前に,状態調節した必要な数の試験片に対して,室温で,選択した試験方法で初期
試験を行わなければならない[JIS C 2143-1の5.4(初期特性値の確定)参照]。
適切なばく露温度を選択するためには,試験に供する材料について,関連情報が確認されている必要が
ある。このような情報が手に入らない場合は,熱的耐久性評価に適切なばく露温度を選択するために,予
備的な試験を行うのがよい。
熱劣化処理では,オーブンはJIS C 2143-4-1に規定するもので,特に許容温度差及び換気率に関して要
求事項を満たすものを用いなければならない。
必要な数の試験片を,それぞれ選択した温度に保ったオーブンに入れる。
種類の異なる材料によって試験片に相互汚染のおそれがある場合は,材料ごとに別のオーブンを用いる。
それぞれの熱劣化処理時間経過後に,必要な数の試験片をオーブンから取り出し,状態調節する。必要
な場合,状態調節は適切に調節した雰囲気中で行う(JIS K 7100参照)。
試験は,選択した試験の基準に従って,室温で実施しなければならない。
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この手順を,調査対象の特性の数値が規定のしきい値に到達するまで継続する。
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表1−20 000時間に対応する温度指数に関するばく露温度及び時間の指針
単位 日
予想される温度
指数の範囲
ばく露温度
℃
120 130
140
150
160
170
180
190
200
210
220
230
240
250
260
270
280
290
300
310
320 330
340
350
95〜104
28
−
14
−
7
−
3
−
1
105〜114
28
−
14
−
7
−
3
−
1
115〜124
28
−
14
−
7
−
3
−
1
125〜134
28
−
14
−
7
−
3
−
1
135〜144
28
−
14
−
7
−
3
−
1
145〜154
28
−
14
−
7
−
3
−
1
155〜164
28
−
14
−
7
−
3
−
1
165〜174
28
−
14
−
7
−
3
−
1
175〜184
28
−
14
−
7
−
3
−
1
185〜194
28
−
14
−
7
−
3
−
1
195〜204
28
−
14
−
7
−
3
−
1
205〜214
28
−
14
−
7
−
3
−
1
215〜224
28
−
14
−
7
−
3
−
1
225〜234
28
−
14
−
7
−
3
−
1
235〜244
28
−
14
−
7
−
3
−
1
245〜254
28
−
14
−
7
−
3
−
1
推奨事項を,JIS C 2143-1の附属書Bに示す。
注記1 この表は,主として保証試験又は非破壊試験に適用するものであるが,破壊試験を行うのに最適な時間間隔を選ぶ場合にも利用できる。このような場合,56
日以上のサイクル時間を必要とする場合もある。
注記2 最初に設定した最も低い温度よりも低い温度で追加試験をする場合は,最も低い温度よりも10 K低い温度とし,温度指数を求めるための1サイクルを42日
とすることが望ましい。
3
C
2
1
4
3
-8
:
2
0
1
5
(I
E
C
6
0
2
1
6
-8
:
2
0
1
3
)
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C 2143-8:2015 (IEC 60216-8:2013)
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簡略化した計算及びグラフによる評価手順
5.1
手順の概要
選択したある温度で,選択した特性(例えば,機械的,光学的又はその他の特性:JIS C 2143-2参照)
の数値の変化を,時間の関数として求める。
この手順を,特性が規定の終点の値に到達するまで継続し,その温度での終点到達時間を求める。
さらに,それ以上の数の試験片を,2点以上の異なる温度でばく露し,該当する特性の変化を測定する。
試験片を3点又は4点の温度で加熱劣化処理し,それぞれの温度における終点到達時間を求めるのがよい。
全ての温度でデータがそろった後,熱的耐久グラフを描き,適切な統計計算を行って,グラフの直線性
を調べ,熱的耐久性の計算が可能かどうかを判定する。
選択した試験には,実用上意味があると思われる特性に関連があり,可能な限り,国際規格,又は国際
規格に整合した日本工業規格に規定する試験方法(例えば,JIS C 2143-2参照)を使用しなければならな
い。試験片の寸法及び/又は形状が熱処理によって変化する場合は,これらの影響を受けない試験方法だ
けを用いる。
終点は,選択した特性値の許容可能な変化の範囲を考慮して選択しなければならない。この値は,想定
される使用状況に基づいて決める。
5.2
簡略化した計算手順
5.2.1
簡略化した計算の有効性
この計算手順は,全ての温度グループについて,終点到達時間の平均値算出に用いるデータの数がほぼ
等しいときだけに有効である。
さらに,この計算手順では,試験データのばらつきについて,許容できるかどうかの検定を行わないた
め,その計算結果は統計的に完全に受け入れられるほど信頼性が高くない。したがって,この手順は,熱
的耐久試験において,供試材料の劣化挙動についての適切な経験が既にあるときだけに用いるのがよい。
試験データが疑わしい全ての場合について,特に試験データのばらつきが許容できる程度か否かについ
て疑念のある場合には,JIS C 2143-3によって完全な解析を行うことが望ましい。
5.2.2
終点到達時間
破壊試験では,それぞれのばく露温度及びそれぞれの劣化処理時間経過後にオーブンから取り出したグ
ループについて,選択した特性の初期値に対するその特性の平均値の百分率(特性値保持率)を,劣化処
理時間の対数の関数としてプロットする(図1参照)。このグラフが終点基準を示す水平線を横切る点か
ら,温度グループの終点到達時間を求める。
非破壊試験では,それぞれの劣化処理時間経過後に,それぞれの試験片で測定した特性の初期値に対す
る百分率を時間の対数の関数としてプロットし,このグラフが終点基準を示す水平線を横切る点から,試
験片の終点到達時間を求める。温度グループの終点到達時間は,それぞれの試験片で測定した時間の平均
である。
保証試験を用いる場合は,それぞれの劣化処理時間は,劣化処理時間の始めと終わりとの時間の平均と
して計算する。温度グループの劣化処理時間は,保証試験中に破損の中央値が得られる時間とする。
終点到達時間の平均値の対数を,ばく露温度の逆数に対してプロットする。選択した制限時間(通常は
20 000時間)でのこの曲線の交点が,求める温度指数である。
注記 温度目盛を絶対温度の逆数が等間隔となるように選ぶとき,直線的な依存性がある場合には,
求めた幾つかの点は一つの直線の上に乗る。設定した温度範囲が比較的小さいときは,曲線は
温度に比例した横軸を用いて描くことができる。ただし,この場合には,直線への当てはめは
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
十分慎重に行う必要がある。
図1−各温度における終点到達時間の決め方−特性変化(JIS C 2143-1の図2参照)
5.2.3
回帰直線の計算
この規格の目的に沿って仮定する劣化を表す式は,絶対温度Θと,特性値のある一定の変化に要する時
間の平均値τとの関係として式(2)で表される。
τ=AeB/Θ ··················································································· (2)
ここに, A,B: 材料及び判定試験による定数
この式は,次の直線の式(3)として表される。
y=a+bx ·················································································· (3)
ここに,
y: ln τ
x: 1/Θ
a: ln A
b: B
最適の直線関係を示すa及びbの値は,x及びyの値から式(4)及び式(5)で求められる。
(
)
(
)
−
−
=∑
∑
∑
∑∑
k
x
x
k
y
x
xy
b
2
2
····························································· (4)
(
)
k
x
b
y
a∑
∑
−
=
······································································ (5)
ここに,
k: x,y値の数
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注記1 ほとんどの“統計用”関数をもつ“科学用”計算機は,回帰分析機能をもち,上記の式(2)〜
式(4)が示す計算は,計算機によって実行できる。この場合,xを独立変数とし,yを従属変
数として入力する。
注記2 これらの計算機を用いて,時間(τ)及び絶対温度(Θ)を入力し,総和を求める前にそれぞ
れx及びyに変換することが可能である。
注記3 他の底の対数(例えば,10)が用いられることもあるが,使用する数値に影響を及ぼす。
5.2.4
直線性からの偏差の計算
相関係数の平方(決定係数)は,式(6)を用いて計算する。この計算も,計算機の回帰機能を用いて実行
できる。
(
)
(
)
(
)
−
−
−
=
∑
∑
∑
∑
∑
∑∑
k
y
y
k
x
x
k
y
x
xy
r
2
2
2
2
2
2
······································ (6)
相関係数rが0.985を超える場合は,温度指数及び半減温度幅の値を決めてもよい。ただし,この条件
を満足できない場合には,基本的な前提からの逸脱が大きすぎるため,この計算を実行できない。
注記 これはフィッシャーの直線性検定ではないが,データの数値の広がりの一部分としての回帰直
線からのデータの平均偏差を示している。
5.2.5
温度指数及び半減温度幅
温度指数及び半減温度幅を求めるために,式(3)を変形し,式(7)を導く。絶対温度Θ(K)を温度ϑ(℃)
に置き換える。
(
)
0
ln
Θ
a
b
−
−
=
τ
ϑ
······································································· (7)
ここに,
Θ0: 273.15(3.2参照)
20 000,10 000及び2 000のτ値(時間)に対応する温度ϑ(℃)を,それぞれϑ20 000,ϑ10 000及びϑ2 000
とし,温度ϑ20 000,ϑ10 000及びϑ2 000を計算する。
データ対(ϑ20 000,20 000)及び(ϑ2 000,2 000)を用いて,熱的耐久グラフ用紙上に回帰直線を描き,熱
的耐久グラフを得る。
TI及びHICの値を計算する。
TI=ϑ20 000
HIC=ϑ10 000−ϑ20 000
図2に一例を示す。
TIの計算に20 000と異なるτの値を用いる場合には,上記の10 000及び2 000の数値はそれぞれτ/2及
びτ/10に置き換える。
注記 r2の値は,JIS C 2143-1及びJIS C 2143-3に記載のフィッシャー検定に関連がある。
5.3
データの補完(Data rescue)
グラフの外挿における信頼性は,容認できるアレニウスプロット(時間の対数と対応する絶対温度の逆
数との間に直線関係が成り立つ。)を入手できるかどうかで決まり,選択した温度範囲で転移現象に関わる
挙動を示す材料では取り扱えない。
3点の試験温度について,5.2.4で求めた相関係数rが0.985以下の場合には,データの補完のため,異
なる試験温度で追加の試験を実施することによって,データの直線性を改善できる場合がある。
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図2−熱的耐久グラフ−温度指数−半減温度幅
5.4
相対熱的耐久性指数(RTE)の決定
相対熱的耐久性指数(RTE)の決定では,参照材料の選択,その材料の熱的耐久性及びその測定方法が
極めて重要である。
参照材料は,試験する材料と同じ種類で,かつ,十分な使用実績をもつものでなければならない。また,
参照材料は,相対熱的耐久性指数(RTE)の試験に供する材料と同じ,又はできるだけ近い特性及び終点
の値をもち,かつ,既知の温度指数をもつものでなければならない。
参照材料の温度指数及び半減温度幅は,試験する材料に予期される値とほぼ同じものを用いるのがよい。
式(7)からϑA及びϑBをそれぞれ図3に示すグラフ上の点A及び点Bに対応する温度とする。
点A及び点Bを,図3のグラフ上又は数値計算のいずれかで求め,相対熱的耐久性指数(RTE)を式(8)
によって求める。
RTE=TIr+ϑA−ϑB ······································································ (8)
相対熱的耐久性指数(RTE)の試験結果を報告するときは,関連する参照材料に対応する情報として,
特性に関する一般的な情報,終点及び試験片データを追加することが望ましい。
必要な場合,試験する材料をJIS C 4003に規定する絶縁材料の耐熱クラスに当てはめることがある(JIS
C 2143-5参照)。
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TIr 参照材料の本来のTI
tr
参照材料の終点到達時間
A 参照材料の温度指数(TIr)と参照材料の回帰直線との交点
B 参照材料の終点の時間と評価対象材料の回帰直線との交点(RTE)
図3−熱的耐久グラフ−相対熱的耐久性指数
相対熱的耐久性指数(RTE)は,試験する材料と参照材料との比較試験から求まる二つの熱的耐久性の
関係,又は二つの直線のいずれかから導かれる熱的耐久性である。相対熱的耐久性指数(RTE)は,参照
材料について初めから決まっている温度指数に対応する時間に関連している。
5.5
試験報告書
試験報告書には,TI,HIC及びRTEを次の書式で作成する。
TIs=xxx
HICs=yyy
RTEs=zzz
注記 TI,HIC及びRTEの添字“s”は,簡略化(simplified)を意味する[JIS C 2143-1の6.2(熱的
耐久性及びその表記)参照]。
試験報告書は,次の事項を含まなければならない。
− 試験した材料の完全な仕様を知るために必要な全ての情報,並びに寸法及び状態調節を含む試験した
材料の説明
− 調査した特性,選択した終点,及び終点が百分率の値の場合は特性の初期値
− 特性の測定に用いた試験方法(例えば,試験規格の引用)
− 試験実施手順の関連情報,例えば,劣化処理雰囲気,また,試験片が何らかの応力を受けるばく露方
法の場合は,劣化処理条件の詳細
− 個別材料規格に適合する形状,寸法及び試験片の調整方法
− 状態調節
− オーブンの形式,その換気率,気流の方向及び流速の詳細
− 各オーブンにおけるばく露時間及びばく露温度
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− 各試験温度及びその温度での次のいずれかのデータ
・ 非破壊試験では,劣化処理時間の経過に伴う特性変化のグラフ及び個々の終点到達時間
・ 保証試験では,それぞれの劣化処理サイクルで終点に到達した試験片の数,劣化処理サイクルの数
及び経過時間
・ 破壊試験では,劣化処理時間及び個々の特性値,並びに劣化処理時間に伴う特性変化のグラフ
− 熱的耐久グラフ
− この規格の規格番号及び名称
参考文献 JIS C 2142 固体電気絶縁材料−試験前及び試験時における標準状態
注記 対応国際規格:IEC 60212:1971,Standard conditions for use prior to and during the testing of
solid electrical insulating materials(MOD)
JIS C 2143-6 電気絶縁材料−熱的耐久性−第6部:固定時間枠法を用いる絶縁材料の熱的耐久
性指数(温度指数及び相対熱的耐久性指数)の求め方
注記 対応国際規格:IEC 60216-6:2006,Electrical insulating materials−Thermal endurance
properties−Part 6: Determination of thermal endurance indices (TI and RTE) of an insulating
material using the fixed time frame method(IDT)
IEC 60050-212:1990,International Electrotechnical Vocabulary (IEV)−Chapter 212: Insulating solids,
liquids and gases
IEC 60493-1:2011,Guide for the statistical analysis of ageing test data−Part 1: Methods based on
mean values of normally distributed test results
ISO 2578:1993,Plastics−Determination of time-temperature limits after prolonged exposure to heat