C 2138:2007
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 用語及び定義 ··················································································································· 1
3 電気絶縁材料の用途及び特性 ······························································································ 4
3.1 誘電材料の使用目的 ······································································································· 4
3.2 誘電特性に影響を及ぼす要因 ··························································································· 4
4 試験片の形状及び電極配置 ································································································· 4
4.1 固体絶縁材料 ················································································································ 4
4.2 液体絶縁材料 ················································································································ 8
5 測定方法の選択 ················································································································ 9
5.1 零位法 ························································································································· 9
5.2 共振法 ························································································································· 9
6 試験の手順 ····················································································································· 10
6.1 試験片の準備 ··············································································································· 10
6.2 状態調節 ····················································································································· 10
6.3 測定 ··························································································································· 10
7 試験結果························································································································ 10
7.1 比誘電率, ················································································································· 10
7.2 誘電正接, ················································································································· 10
7.3 精度の期待値 ··············································································································· 10
8 報告······························································································································ 11
附属書A(参考)測定装置 ···································································································· 19
附属書JA(参考)共振法による広域帯・高精度測定方法及び測定装置 ·········································· 30
附属書JB(参考)JISと対応する国際規格との対比表 ································································ 42
参考文献 ···························································································································· 44
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人電気学会(IEEJ)及び財団法人日本
規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準
調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は
もたない。
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日本工業規格 JIS
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電気絶縁材料−比誘電率及び誘電正接の測定方法
Electrical insulating materials-
Methods for the determination of the relative permittivity
and dielectric dissipation factor
序文
この規格は,1969年に第1版として発行されたIEC 60250を基に作成した日本工業規格であるが,技術
的内容を変更して作成した日本工業規格である。
この規格の対応国際規格であるIEC 60250:1969に,規定されていない新しい測定方法及び測定装置を,
附属書JAに示す。
この規格で点線の下線を施してある箇所及び附属書JAは,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JBに示す。
1
適用範囲
この規格は,比誘電率,誘電正接,及びこれらから算出される誘電損率などの誘電特性を,15 Hz〜300
MHzの周波数範囲で測定する方法について規定する。この規格で規定する幾つかの測定方法は,特別な注
意を払うことによって,この周波数範囲よりもかなり低い周波数領域,又は高い周波数領域においても使
用できる。
液体及び容易に液状となる材料は,固体材料と同様に,この規格で規定する方法で測定できる。測定値
は,周波数,温度及び試料の水分含有量のような物理的条件,また,特殊な場合として,電界の強さにも
依存する。
1 000 V以上の電圧を印加して試験した場合,比誘電率及び誘電損率とは関係がない効果を導くことがあ
るが,この規格では規定しない。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
IEC 60250:1969,Recommended methods for the determination of the permittivity and dielectric
dissipation factor of electrical insulating materials at power, audio and radio frequencies including
metre wavelengths (MOD)
なお,対応の程度を表す記号(MOD)は,ISO/IEC Guide 21に基づき,修正していることを
示す。
2
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
2.1
(2.1A及び2.1Bに分割して定義する。)
2.1A
比誘電率,εr(relative permittivity)
2
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その絶縁材料が,電極の間及び周囲の空間を完全に満たしているコンデンサの静電容量Cxの,同一の電
極構成で電極の間及び周囲の空間が真空のコンデンサの静電容量C0に対する比。
0
x
r
C
C
=
ε
················································································· (1)
二酸化炭素を含まない乾燥空気の標準大気圧における比誘電率は1.000 53で,ほぼ1に等しいため,実
際には,通常C0の代わりにその電極の構成の空気中における静電容量Caを用いることによって比誘電率
rεを十分な精度で測定できる。
注記 対応国際規格では,比誘電率及び誘電率を2.1に定義しているが,この規格では分割した。
2.1B
誘電率(permittivity)
ある測定系における,その絶縁材料の比誘電率
rεと,その測定系における真空の誘電率0εとの積。
国際単位系(SI)では,絶対誘電率を,ファラド毎メートル(F/m)を単位として表す。さらに,国際単
位系(SI)では,真空の誘電率0εは,次の値となる。
12
0
10
854
.8
−
×
=
ε
(F/m)
9
10
π
36
1
−
×
≈
(F/m) ································ (2)
この規格では,静電容量を計算するときピコファラド及びセンチメートルを使用するので,真空の誘電
率は次の値である。
54
088
.0
0=
ε
(pF/cm)
2.2
誘電損角,δ(dielectric loss angle)
コンデンサの誘電体をその誘電材料だけから構成するとき,印加された電圧とそれによって生じた電流
との間の位相差をπ/2(ラジアン)から引いた角。
2.3
誘電正接1),tan δ(dielectric dissipation factor)
誘電損角δの正接。
注1) 損失の測定の結果が誘電損角の正接として報告されるため,幾つかの国では“誘電正接”より
も“損失正接(loss tangent)”ということがある。
2.4
比誘電損率,
r
ε′′(relative loss index)
その材料の誘電正接tan δと比誘電率
rεとの積。
2.5
複素比誘電率,εr*(relative complex permittivity)
比誘電率と比誘電損率とを組み合わせることによって導かれる値。
r
r
*r
ε
ε
ε
′′
−
′
=
j ········································································· (3)
r
r
ε
ε=
′
·················································································· (4)
ここに,
rε: 2.1Aに定義した比誘電率
δ
ε
ε
tan
r
r=
′′
··········································································· (5)
r
r
tan
ε
ε
δ
′
′′
=
·············································································· (6)
3
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注記 誘電損失をもつコンデンサは,任意の周波数において,静電容量Cs及び抵抗Rsの直列接続,
又は静電容量Cp及び抵抗Rp(又はコンダクタンスGp)の並列接続のいずれかの等価回路によ
って表すことができる。
等価並列回路
p
p
p
p
1
tan
C
G
R
C
ω
ω
δ
=
=
······························································ (7)
等価直列回路
s
s
tan
R
C
ω
δ=
········································································· (8)
誘電損失のある絶縁材料の場合は,通常,等価並列回路がより適切な表現であるが,ある単
一周波数において,コンデンサを,抵抗
sRと直列につながれた静電容量
s
Cで表現することが
常に可能であり,そのほうが望ましい場合がある。
直列等価回路を構成する素子と並列等価回路を構成する素子との間には,次の関係が成り立
つ。
δ
2
s
p
tan
1+
=
C
C
········································································ (9)
s
2
2
p
tan
tan
1
R
δ
δ
R
+
=
···································································· (10)
p
p
s
s
1
R
C
R
C
ω
ω
=
···································································· (11)
誘電正接tan δは,直列等価回路及び並列等価回路のいずれでも同じである。
測定回路が,直列等価回路素子に関する結果を与え,かつ,式 (9) における
δ
2
tan
が無視でき
ないほどに大きい場合には,比誘電率を計算する前に等価並列静電容量を算出しなければなら
ない。
この規格における計算及び測定では,
f
ω
π
=2
の正弦波交流電流波形を前提とする。
3
電気絶縁材料の用途及び特性
4
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3.1
誘電材料の使用目的
誘電材料は,一般に次の二つの異なる目的に使用する。
a) 電気回路の部品類を支持し,それらを互いに絶縁し,同時に大地(接地電位)からも絶縁する機能。
b) コンデンサの誘電体としての機能。
3.2
誘電特性に影響を及ぼす要因
周波数,温度,水分及び電界の強さが誘電特性に及ぼす影響は,次のとおりである。
3.2.1
周波数
工業的な用途に用いられる広い周波数範囲全域にわたって,実質上
rε及びtan δが一定とみなせる誘電
材料は,溶融シリカ,ポリスチレン,ポリエチレンなど限られた少数の材料だけである。したがって,tan
δ及び
rεは,その誘電材料が実際に使用される周波数で測定することが必要である。
誘電率及び誘電正接の変化は,誘電分極及び電気伝導によって生じる。最も重要な変化は,材料中の有
極性分子の双極子配向及び材料内の不均一性から引き起こされる界面分極によって生じる。
3.2.2
温度
誘電損率
r
ε′′は,ある周波数でピークをもち,その位置及び高さは,誘電材料の温度によって変化する。
誘電正接及び誘電率の温度係数は,測定温度に対する誘電損率のピークの位置によって正又は負のいずれ
の値も取り得る。
3.2.3
水分
分極の大きさは,吸湿によって,また,誘電材料の表面に水の膜が形成されることによって増大し,そ
の結果,誘電率,誘電正接及び導電率が大きくなる。したがって,試験片の状態調節は極めて重要であり,
試験結果を正しく評価するには,試験前及び試験中における水分量の管理は不可欠である。
注記 湿気の影響は,通常1 MHz以下及びマイクロ波周波数領域で顕著である。
3.2.4
電界の強さ
界面分極が存在する場合には,電界の強さが増すとともに自由イオンの数が増加し,誘電損率のピーク
の高さ及び位置が変化する。
誘電率及び誘電正接は,高い周波数領域では,誘電体内に部分放電が発生しない限り,電界の強さに依
存しない。
4
試験片の形状及び電極配置
4.1
固体絶縁材料
4.1.1
固体試験片の形状
材料の誘電率及び誘電正接を測定するためには,試験片は,シート状が望ましい。しかし,管の形状で
だけ供される材料もある。
誘電率を高い精度で測定する必要がある場合,試験片の寸法,特に厚さが最も大きな誤差の要因になる。
したがって,必要な精度に対応して厚さを十分に大きくする必要がある。厚さの選択は,試験片の作成法
に関連し,かつ,測定箇所の厚さの変動に依存する。1 %の精度が必要な場合は,通常は厚さが1.5 mm
あれば十分であるが,更に高い精度が必要な場合は,より厚い,例えば,厚さが6 mm〜12 mmの試験片
を用いることが望ましい。試験片の厚さは,試験片の全面に系統的に割り当てた測定点によって決定しな
ければならない。また,各測定値は,平均厚さの±1 %の範囲内に均一になっていることが望ましい。試
験片の端まで広がる電極を用いるときは,試料の密度が既知であれば,厚さは,試験片の質量から決定で
きる。測定に必要な面積は,要求精度を満足するために,試験片静電容量を確保できる大きさとする。装
5
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置に適切なガード及び遮へい(蔽)を施すことによって,容易に10 pFの静電容量を測定できる。しかし,
多くの装置では約1 pF程度に測定限界があり,その場合は,試験片は薄く,かつ,10 cm以上の直径が必
要である。
注記
測定点を系統的に割り当てる方法としては,例えば,試験片の電極が覆う領域について,周
辺部を8点及び中心部を4点測定し,得られた12点の測定値から最大値及び最小値を除き,
残りの10点の平均値を用いるなどの方法がある。
誘電正接の小さい値を測定するときは,リード線の直列抵抗によって生じる損失を可能な限り小さくす
ることが重要である。すなわち,測定静電容量と抵抗との積を可能な限り小さくする。そのためには,リ
ード線の抵抗を可能な限り小さくし,同時に試験片がなるべく小さな静電容量をもつことが望ましい。ま
た,総静電容量に対する測定静電容量の比率を可能な限り大きくする必要がある。そのためには,試験片
を接続するブリッジの比例辺の総静電容量が小さいことが必要であり,かつ,試験片が大きな静電容量を
もつことが望ましいことを示している。現実的には約20 pFの静電容量をもつ試験片を用い,試験片に並
列に接続する測定回路には,静電容量が約5 pFを超えないものを使用することが最も望ましい。
4.1.2
電極系
4.1.2.1 試験片の表面に電極を形成する場合
この場合の電極は,4.1.3.1,4.1.3.2,4.1.3.3,4.1.3.4及び4.1.3.6に規定する方法並びにその中に規定する
材料の一つを用いて,試験片の表面に形成する。ガードリングを使用しないとき,及び試験片の両面の電
極位置を正確に一致させることが困難なときは,一方の電極を他方より大きくする必要がある。試験片自
体に電極が形成されているときは,金属板又は金属ブロックの支持電極の間に試験片を挟む。支持電極は,
試験片の電極よりもわずかに小さくしておく。円盤状又は円筒状の種々の電極配置に対する静電容量の計
算式,及びこの条件におけるおおよその縁端静電容量を算出するための経験式を,表1に示す。
誘電正接の測定には,この項に述べる形の電極は,試験片の表面及び支持電極の表面が共に非常に平滑
で,互いに完全に密着しない限り,高周波においては不満足な測定結果しか得られない。特に,図1に示
す電極系では,試験片の厚さが十分均一であることが必要である。
4.1.2.2 試験片に電極を形成しない場合
表面導電率が十分に小さい試験片は,試験片自体に電極を形成せずに,あらかじめ空げき(隙)を設け
た電極の間に試験片を入れることによって試験できる。この空げきは,試験片の片面又は両面に設け,空
気又は液体によって満たす。
平板又は円筒電極の配置による静電容量計算式を,表3に示す。
次の二つの方式は,特に便利である。
4.1.2.2.1 気中測定用マイクロメータ付き平行板電極
電極の静電容量が,試験片を入れた場合と入れない場合とで同じ値に調整できるため,誘電率は,測定
システムの電気的な校正を必要とせずに決定できる。
注記
この電極を用いて誘電率の測定を行う場合には,測定システムは,静電容量が同一になったか
どうかを判定するだけの検出器として用いる。誘電正接の測定を行う場合には,電気的な測定
が必要となる。
ガード電極は,電極系の中に内蔵できる。
4.1.2.2.2 液体置換法
誘電率が試験片の誘電率とほぼ等しく,誘電正接が無視できる液体中では,測定は通常の場合ほど試験
片の厚さを正確に知る必要がなくなる。2種類の液体を順次使用する場合,試験片の厚さ及び電極系の寸
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法は,計算式から消去できる。
試験片は,直径が組電極と同じ円盤とする必要がある。マイクロメータ電極を用いる場合,試験片は,
縁端効果を無視できるよう十分に小さいほうがよい。マイクロメータ電極における縁端効果を無視できる
程度にするために,試験片の直径は,マイクロメータ電極の直径から試験片の厚さの2倍を差し引いた寸
法より,小さくする必要がある。
4.1.2.3 縁端効果
縁端効果による比誘電率の測定誤差の発生を避けるために,電極システムにはガード電極を内蔵するこ
とが望ましい。その場合は,ガード電極の幅は,試験片の厚さの2倍以上が必要であり,ガード電極と主
電極との間げきは,試験片の厚さより狭くする必要がある。ガードリングを使用できない場合には,一般
に縁端静電容量に対する補正が必要である。補正のための近似式を,表1に示す。これらの式は,経験式
であり,試験片の形状の限定された範囲でだけ成り立つ。
縁端静電容量は,適切な周波数及び温度において,これらの補正式を用いる代わりに,ガードリングの
ある場合及びガードリングのない場合の測定から求めてもよい。このようにして求めた縁端静電容量は,
異なる周波数及び温度における補正に用いても十分な精度が得られる。
4.1.3
電極形成用材料
4.1.3.1 金属はく(箔)電極
金属はく電極は,なるべく少量のシリコングリース又はその他の適切な損失が小さい粘着剤で試験片に
はり付ける。金属はくは,厚さ100 μm以下の純粋なすず(錫),鉛若しくはこれらの合金,又は厚さ10 μm
以下のアルミニウムを用いる。ただし,アルミニウムはくは,絶縁性の酸化膜を形成する傾向があり,測
定結果に影響を与える可能性がある。金ぱくも用いることができる。
4.1.3.2 焼付け金属電極
ガラス,マイカ及びセラミックには金属膜を焼付けによって形成できる。焼付け金属電極は,これらの
材料の試験には適切である。金属としては,銀が一般的に用いられるが,高温,高湿度下で電位差がある
と試験片の中へ移行を起こす。金の方が望ましい。
4.1.3.3 金属吹付け電極
亜鉛又は銅電極を試験片に吹き付けて形成する。吹付け電極は,表面が粗い試験片にも容易に適用でき
る。吹付け金属は非常に小さな孔には入り込まないので,布にも適用できる。
4.1.3.4 スパッタリング又は真空蒸着による金属電極
スパッタリング電極及び蒸着電極は,これらの処理によって絶縁材料に何らかの変化又は損傷を与えな
い場合,及び材料が真空にさらされたときに著しくガスを放出しない場合に用いることができる。これら
の電極は,その縁端が明りょうな輪郭をもつように形成しなければならない。
4.1.3.5 水銀及びその他の液体金属電極
(対応国際規格では,水銀及びその他の液体金属電極の用い方を規定しているが,我が国ではこれらの
金属を用いることができないので,不採用とした。)
4.1.3.6 導電性塗料
高導電性の銀塗料は,自然乾燥形又は低温硬化形のものが市販されており,いずれも電極材料用として
使用できる。導電性塗料は,多孔性であり水分が透過できるので,電極形成後であっても試験片を状態調
節できる。これは特に湿度の影響を調べるときに有用である。導電性塗料は,塗布後直ちに使用できない
という欠点がある。溶媒成分が残留していると誘電率及び誘電正接ともに増大するので,溶媒の残さを完
全に取り除く。このために通常一昼夜の自然乾燥又は低温加熱処理が必要である。
7
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これらの電極は,その縁端が明りょうな輪郭をもつようにしなければならない。塗料をはけ塗りする場
合,この要求を満たすことは難しいが,通常,締付け式又は圧着式のマスクを用いて塗料を噴霧すること
によってこの問題を克服できる。銀塗料の導電率が低い場合には,最も高い周波数領域で不具合を生じる
ことがある。
塗料の溶媒が,試験片に対して回復不能な影響を与えないことも重要である。
4.1.3.7 黒鉛(グラファイト)電極
黒鉛は,推奨できる材料ではないが,特に低周波領域の測定ではときどき用いられる。黒鉛の電気抵抗
によって誘電正接がかなり増大することがある。また,この電極を懸濁液から形成した場合には,試験片
内部にしみ込むこともある。
4.1.4
電極の選択
4.1.4.1 シート状試験片
次の二つの検討項目が重要である。
a) 試験片に電極を形成せずに行う方法は,迅速,かつ,簡便性があり,電極と試験片との間の密着度合
いによる不確実性を避けることができる。
b) 比誘電率の相対誤差
r
r/ε
ε
Δ
が,試験片の厚さhの測定誤差
h
Δh/から生じるとすれば,電極が試験片
に形成されている場合は,次の式となる。
h
h
Δ
Δ
=
r
r
ε
ε
···································································· (12)
しかし,試験片を一定間隔s( >h)の電極間に入れた場合には,比誘電率の相対誤差は,次の式とな
る。
h
h
Δ
Δ
×
−
=
f
r
r
r
1εε
ε
ε
························································· (13)
ここに,
fε: 試験片が浸せきされている流体の比誘電率
空気中で測定する場合には,
1
f=
ε
比誘電率が10を超える多孔質でない材料については,たい積形成による金属電極(depositted metal
electrode),すなわち4.1.3.2,4.1.3.3及び4.1.3.4のいずれかの方法によって形成した金属電極を用いるのが
よい。このような材料では,試験片表面の全体を覆うように電極を形成し,ガード電極は不要である。比
誘電率が3〜10程度の材料の場合,最良の精度が得られる電極は,金属はく又はたい積金属であり,材料
の特性に適したものを選ぶことが望ましい。ただし,試験片の厚さの測定に十分な精度が得られる場合に
は,試験片に電極を形成しない測定法も便利さの観点から望ましい。適切な液体があり,その液体の比誘
電率が既知の場合,又は十分な精度で測定できる場合には,液体浸せき法は非常に優れた測定方法である。
4.1.4.2 管状試験片
管状試験片の場合,最も適切な電極系は,その誘電率,肉厚,直径及び要求される測定精度によって異
なる。一般にその電極系は,管の内側に形成した電極及び両端にガード電極を備えた少し幅の狭い外側の
電極から構成する。外側の電極とその両端のガード電極との間げきは,管の肉厚よりも小さいことが望ま
しい。口径が小又は中程度の管状試験片には,管の外側電極としてはく帯又はたい積金属の3本の帯を用
いることができ,中央の帯は外側主電極として働き,金属はく又はたい積金属で形成した両側の2本の帯
はガード電極として働く。内側電極としては,たい積金属,金属はく又は管の内側に密着させた金属棒を
用いる。
高誘電率材料の管状試験片では,内側及び外側の電極はそれぞれ管の長さ一杯まで形成し,ガード電極
8
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は設けない。
大口径の管又は筒の場合には,円形又は長方形のちょう(貼)付電極を任意の一部分にはり付けて測定
を行う。このような試験片は,シート状試験片と同様に扱うことができる。金属はく,たい積金属,又は
しっかりと密着させた金属棒を内側電極として使用し,外側には主電極及びガード電極として金属はく又
はたい積金属を用いる。内側に金属はく電極を用いる場合には,電極と試験片とをしっかりと密着させる
ために,弾力性又は伸張性のある固定用のジグを必要とすることもある。
極めて精度の高い測定には,肉厚の測定が十分高い精度で行えることを前提として,試験片に電極を形
成しない測定方式を用いる。比誘電率
rεが約10以下の管状試験片の場合,最も扱いやすい電極は,金属
はく又はたい積金属である。比誘電率が約10以上の管状試験片には,たい積金属電極を使用する。セラミ
ック管には焼付け電極を使用する。電極は,帯状に管の全周,又は周の一部に形成する。
4.2
液体絶縁材料
4.2.1
セルの構造
誘電正接が小さい試験液に用いる電極系が備えるべき基本的な要件は,必要があれば容易に洗浄及び再
組立てができ,電極の相対的な位置を狂わせることなしに試験液を充てんできることである。他の望まし
い要件としては,必要な試験液の量が少なく,電極材料と液体とが互いに影響を及ぼさず,また,電極系
の温度は容易に調節可能で,端子及び接続が十分に遮へいされ,電極の絶縁支持部品が液体中に浸せきさ
れないことなどである。さらに,セルは,測定精度に影響が生じるような非常に狭い沿面距離及び鋭い縁
端部を含まないほうがよい。
前記の要求に合致するセルの詳細を,図2〜図4に示す。セルは,ステンレス鋼の電極,及びほうけい
酸ガラス又は溶融石英の絶縁材料からなる。また,抵抗測定にも用いることができる図2及び図3のセル
は,IEC 60247で詳細を規定している。
幾つかの液体,例えば塩素化合物などでは,誘電正接に電極材料に対する顕著な依存性を示すことがあ
り,ステンレス鋼製の電極が常に適切とは限らない。ときには,アルミニウム及びジュラルミン製電極を
用いた試験のほうがより安定した結果が得られている。
4.2.2
セルの前処理
セルは,1種類の適切な溶剤で洗浄するか,又は,1連の複数の溶剤で順次洗浄することが望ましい。こ
れらの溶剤には,不適切な混入物がないことを事前に確認しておく。その確認方法としては,化学的な純
度の試験方法を実施するか,又は,電気的な試験方法として,誘電率及び誘電正接の値が共に小さく,か
つ,その値が既知の液体試料を用いて,正しい結果が得られることを確認する方法のいずれかを用いる。
セルを幾つかの異なる種類の液体絶縁材料の試験に用いる場合,単に溶剤だけの使用では汚損生成物の
除去がうまく行かないことがあるので,わずかに研磨剤を含む洗剤と水とでセルの電極表面を洗ってもよ
い。
一連の溶剤を用いる場合には,最終洗浄に最高沸点100 ℃以下の試薬級石油エーテルを使用する,また
は,その代わりに既知の低誘電率及び低誘電正接の液体を使用すると正しい値を得られることが知られて
おり,試験する液体と化学的に類似している任意の溶剤を使用するのがよい。次の手法が望ましい。
a) セルは,完全に分解して,すべての部品を選定された溶剤で,逆流処理又は新鮮な溶剤中で揺動によ
る反復洗浄によって,十分に清浄にする。
b) すべての部品は,溶剤を振り落とし,約110 ℃の清浄なオーブン中で30分間加熱,放置する。
c) 部品は,室温よりわずかに高い程度の温度まで放冷した後,組み立てる。
d) セルに測定する試験液を満たし,2〜3分間放置してから試験液を捨て,再度充てんする。
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C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
e) 支持絶縁は,試験液でぬらさない。
f)
すべての段階で,実際にセルの内壁表面に直接触れることがないように,部品は清浄なフック又は器
具ばさみで取り扱う。
注記1 同じ性質の油を定常的に試験する場合は,この洗浄方法を省略して,各試験の後でちりを残
さない乾燥した紙でセルをぬぐうだけで済ますことができる。
注記2 溶剤を使用する場合は,火災及び人体への毒性の影響に対して適切な注意が必要である。幾
つかの溶剤,特にベンゼン,四塩化炭素,トルエン及びキシレンは有毒である。さらに,塩
素を含む溶剤は,光によって分解しやすい。
4.2.3
セルの校正
液体誘電体の比誘電率を高精度で測定する必要がある場合は,例えば,ベンゼンなど比誘電率が既知の
標準液によって,“電極定数”を事前に決定しておくことが望ましい。
“電極定数”
e
Cは,次の式による。
1
n
0
n
e
−
−
=εC
C
C
······································································ (14)
ここに,
C0: 空気中におけるセルの電極静電容量
Cn: 標準液を満たしたセルの電極静電容量
nε: 標準液の比誘電率
0
Cと
e
Cとの値の差は,補正静電容量
g
Cを与える。
e
0
g
C
C
C
−
=
····································································· (15)
未知の液体の比誘電率xεを計算するとき,これを考慮に入れる。
e
g
x
x
C
C
C−
=
ε
···································································· (16)
ここに, Cx: 試験する液体で満たした電極配置の静電容量
既知のnεを測定したときの温度と同じ温度で,C0,Cn及びCxの値を測定した場合は,εxの値を最も精
度よく求めることができる。
この方法を適用することによって,寄生静電容量に起因する誤差又は電極間の空げきの値の不正確な測
定によって生じる誤差を取り除くことができるので,液体誘電体の比誘電率の測定に十分な精度を得るこ
とができる。
5
測定方法の選択
誘電率及び誘電正接の測定方法は,零位法及び共振法の二つのグループに分けられる。
5.1
零位法
零位法は,50 MHz以下の周波数で用いる。誘電率及び誘電正接の測定には,置換法を用いる。すなわ
ち,試験片を接続した場合及び接続しない場合について,主に回路の一辺を調整することによってブリッ
ジの平衡をとる。通常,シェーリングブリッジ,変成器ブリッジ(比例辺を相互インダクタンスによって
結合したブリッジ)及び並列T形ブリッジを用いる。変成器ブリッジは,素子及び操作を一切追加せずに
ガード電極を使用できる利点があり,他の回路に比べて不利な点もない。
5.2
共振法
共振法は,10 kHz〜数百MHzの範囲で用いる。この方法は,常に置換法である。一般に使われる方法は,
容量変化法である。これらの方法は,ガード電極の使用には適さない。
10
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注記 典型的なブリッジ及び回路の例を,附属書Aに示す。この一覧表は,決して完全なものではな
い。ブリッジ及び測定方法に関する追加情報は,文献及びこれらの機器の製造業者のパンフレ
ットを参照することが望ましい。
6
試験の手順
6.1
試験片の準備
試験片は,規定された初期状態を得るために,固体材料から切り出すか,又は適切に規定された方法で
準備する。
厚さの測定は,許容誤差±(0.2 %+0.005 mm)内で精密に行う。測定点は,試験片の全域にわたり一様に
分布していなければならない。必要な場合は,有効範囲(領域)を決定する。
6.2
状態調節
状態調節は,関連する個別製品規格の規定に従って行う。
6.3
測定
採用した方法による電気的な測定を,この規格及び装置の製造業者による取扱説明書に従って適切に行
う。
1 MHzオーダ又はそれ以上の周波数の場合,接続用リード線のインダクタンスが結果に影響しないよう
に注意しなければならない。同軸ケーブルを用いたシステムは有用である。[図1の電極系は,容量変化
法用に組込み式微調用(vernier)コンデンサを備えている。]
7
試験結果
7.1
比誘電率,
rε
試験片自体を装着した電極から得られる試験片の比誘電率
rεは,式 (1) によって算出する。ガードリ
ングのない試験片の静電容量の測定値
x
C′は,わずかな縁端静電容量
e
Cを含むので,比誘電率は,次の式
となる。
0
e
x
r
C
C
C−
′
=
ε
····································································· (17)
ここに,
C0: 表1から計算した真空静電容量
Ce: 表1から計算した縁端静電容量
必要な場合は,試験片の対地静電容量,スイッチの接点静電容量及び等価直列容量と等価並列容量との
差も同様に補正する。
マイクロメータ電極間又は非接触電極間に入れて測定した試験片の比誘電率は,表2及び表3に示す適
切な式によって算出する。
7.2
誘電正接,
δ
tan
誘電正接
δ
tan
は,用いた特定の測定システムについて,それぞれの計算式に従って,測定値から算出
する。
7.3
精度の期待値
箇条5及び附属書Aに記載する測定法では,誘電率の精度は±1 %,誘電正接の精度は±(5 %+0.000 5)
程度が見込まれる。これらの精度は,少なくとも次の三つの因子に依存する。
a) 静電容量及び誘電正接の測定精度
b) 用いた電極構成によって決まるこれらの値の補正の精度
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c) 電極間真空静電容量(表1参照)の計算の精度
好ましい条件下の低めの周波数においては,静電容量の精度は±(0.1 %+0.02 pF),誘電正接の精度は
±(2 %+0.000 05)で測定できる。より高い周波数においては,静電容量の精度は±(0.5 %+0.1 pF),誘電
正接の精度は±(2 %+0.000 2)に低下する。
ガード電極を備えた誘電体試験片は,正味(direct)の電極間真空静電容量の計算の誤差だけを考慮すれ
ばよい。ガードされる電極(主電極)とガード電極との間げきが広過ぎるために生じる誤差は,一般に1 %
以下である。試験片の厚さの誤差は,±0.005 mmまで測定できるとすれば,平均厚さ1.6 mmに対して0.2 %
〜0.3 %となる。円形の試験片の直径は±0.1 %の精度で測定できるが,誤差に対して二乗で入ってくる。
これらの誤差を総合すると,正味の電極間真空静電容量は±0.5 %の精度で測定できる。
注記 “正味(direct)”の意味は,縁端静電容量がないと仮定したときの静電容量成分である。
電極を表面に形成し,マイクロメータ電極を用いて測定する試験片の静電容量は,試験片の直径がマイ
クロメータ電極の直径よりも十分に小さいという条件の下では,正味の電極間真空静電容量であり,補正
の必要はない。2端子試験片を他の方法で測定する場合には,縁端静電容量及び対地静電容量の値が無視
できない誤差をもたらすことがある。その理由は,縁端静電容量及び対地静電容量がそれぞれ試験片静電
容量の2 %〜40 %に達することがあるためである。これらの静電容量に関する現在の知見によれば,縁
端静電容量の計算には10 %の誤差があり,対地静電容量の推定値には25 %の誤差が存在する。したがっ
て,含まれる誤差の合計は,0.1 %のオーダから数%程度までとなる。しかし,両電極共に非接地の場合
には,対地静電容量の誤差は大幅に減少する。
マイクロメータ電極を用いることによって,0.03のオーダの誘電正接を真の値に対して±0.000 3以内で,
また,0.000 2のオーダの誘電正接を真の値に対して±0.000 05以内で測定できる。誘電正接の値の範囲は,
通常0.000 1〜0.1であるが,0.1以上になることもある。10 MHz〜20 MHzの周波数領域では0.000 02の誘
電正接を測定することも可能である。1〜5の比誘電率は,真の値に対して±2 %の精度で測定できる。測
定精度は,正味の電極間真空静電容量の算出に必要な幾つかの数値の測定精度,及びマイクロメータ電極
系の器差によって制限される。
8
報告
報告には,次の事項を記載する。
a) 絶縁材料の種類,名称及び入手時の形状。サンプリングの方法,試験片の形及び寸法。サンプリング
の日(試験片の厚さに関する記録,及び必要な場合には,電極と接触する試験片表面の領域の状態に
関する情報が重要である。)
b) 試験片の状態調節の方法及び要した時間
c) 電極配置,電極形式,及び試験片表面に形成した電極の場合には,その種類
d) 測定装置
e) 試験実施時の気温及び相対湿度,並びに試験片の温度
f)
試験電圧
g) 試験周波数
h) 比誘電率
rε(平均値)
i)
誘電正接
δ
tan(平均値)
j)
試験日
必要な場合は,比誘電率及び誘電正接の値,並びにこれらの値から算出される誘電損率及び誘電損角の,
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温度及び周波数との関係も報告する。すべての場合において,上記のすべてが必要ではなく,適切に選択
することが望ましい。
表1−真空静電容量(電極間を真空に置換した静電容量)及び縁端静電容量補正の計算
(1)
電極間真空静電容量
(単位:pF及びcm)
(2)
縁端静電容量の補正値
(単位:pF及びcm)
(3)
1. ガードリング付きの円板電極
h
A
h
A
C
54
088
.0
0
0
=
×
=ε
(
)2
1
4
π
g
d
A
+
=
Ce = 0
2. ガードリングなしの円板電極
a) 電極の直径=試験片の直径
h
d
C
2
1
0
0
4
π×
×
=ε
h
d2
1
54
069
.0
=
a≪hのとき
P
Ce=0.029−0.058 log h
1
πd
P=
b) 試験片より小さく直径が同一の電極
a≪hのとき
P
Ce=0.019ε1−0.058 log h+0.010
1
πd
P=
ここに,ε1:試験片の誘電率の近似値
c) 直径が異なる電極
a≪hのとき
P
Ce=0.041ε1−0.077 log h+0.045
1
πd
P=
ここに,ε1:試験片の誘電率の近似値
3. ガードリング付きの円筒電極
(
)
(
)
1
2
1
0
0
/
ln
g
π
2
d
d
l
ε
C
+
=×
=
(
)
(
)
1
2
1
/
log
6
241
.0
d
d
g
l+
Ce = 0
4. ガードリングなしの円筒電極
(
)
1
2
1
0
0
/
ln
π
2
d
d
l
ε
C
×
=
=
(
)
1
2
1
/
ln
6
241
.0
d
d
l
1d
h
h
+
<101であれば,
P
C
2
e=0.019 ε1−0.058 log h+0.010
(
)h
d
P
+
1
π
=
ここに,ε1:試験片の誘電率の近似値
試験片の比誘電率:
o
e
x
r
C
C
C−
′
=
ε
ここに,
x
C′:電極間の静電容量の測定値
ln:自然対数
log:常用対数
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表2−試験片を挿入したマイクロメータ電極(接触方式の場合)の静電容量の計算
試験片静電容量
注意
記号の定義
1. 並列接続された標準コンデンサによって試験片静電容量を置換する場合
Cp:試験片の並列静電容量
ΔC:試験片を取り除いた後,平衡に
戻すときの標準コンデンサの
静電容量増加分
Cr:電極間隔がrのときのマイクロメ
ータ電極の校正静電容量
Cs:試験片を取り除いた後,電極間
隔を狭めて,ブリッジの場合は平
衡を取り直し,共振法の場合は再
び共振状態としたときの電極間
隔sにおけるマイクロメータ電
極の校正容量
Cor,Coh:マイクロメータ電極の電極
間隔を変えずに試験片を除
去して空気と置換したと
き,電極間の距離r及びh
にそれぞれ対応する空気コ
ンデンサの静電容量
表1の式を用いて計算する。
r:試験片に形成された電極分を加え
た厚さ
したがって,r≧h0である。
h:試験片の真の厚さ
比誘電率:
oh
p
r
C
C
ε=
or
p
C
ΔC
C
+
=
試験片の直径は,マイクロメータ電極の直径よりも少
なくとも2 r(試験片の厚さの2倍)以上小さい。
試験片の真の厚さh及び面積Aを誘電率の計算に用い
る。
2. 試験片を取り除いた後,マイクロメータ電極の電極間隔を狭めることによ
って試験片静電容量を置換する場合
or
r
s
p
C
C
C
C
+
−
=
試験片の直径は,マイクロメータ電極の直径よりも少
なくとも2 r(試験片の厚さの2倍)以上小さい。
試験片の真の厚さh及び面積Aを誘電率の計算に用い
る。
3. 並列接続した標準コンデンサによって試験片静電容量を置換する場合
試験片の直径がマイクロメータ電極の直径に等しいときは,Cor及びCohを
求めるための空気の静電容量の計算を行わなくても,電極の縁端効果によって
生じる誤差は非常に小さい(0.2 %〜0.5 %)。
oh
p
C
ΔC
C
+
=
試験片の直径は,マイクロメータ電極の直径に等し
い。
試験片表面に形成した電極の厚さは,0とする。
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表3−比誘電率及び誘電正接−マイクロメータ電極(非接触方式の場合)
比誘電率
(1)
誘電正接
(2)
記号の定義
(3)
1. 空気中のマイクロメータ電極
ΔC:試験片を入れたと
きの静電容量変化
(静電容量が増加し
たとき,+)
C1:試験片を置いたとき
の静電容量
Cf:
=
×
0
0C
ε
液体だけの
ときの静電容量
(
0
f
f
C
C
×
=ε
)
C0:与えられた面積Aで
の真空の静電容量
(C0=
0ε×A/h0)
A:平方センチメートル
(cm2)で表した試験
片の片面の面積(試
験片が電極と同じ寸
法か又は大きい場合
は,電極の面積)
fε:試験温度における液
体の比誘電率(空気
の比誘電率 =1.00と
する)
0ε:ピコファラッド毎セ
ンチメートル(pF/cm)
で表した真空の誘電
率
δ
Δtan:試験片を挿入し
たときの誘電正接の
変化量
C
tanδ:試験片を挿入し
たときの誘電正接
X
tanδ:計算で求めた試
験片の誘電正接
d0:内側電極の外径
d1:試験片の内径
d2:試験片の外径
d3:外側電極の内径
h0:平行平板電極の間隔
h:試験片の平均厚さ
M:
1
0−
h
h
log:常用対数
h
h
C
ΔC
ε
0
1
r
1
1
×
−
=
又は,h0を
0
=
ΔC
になる新しい値
0h′に合
わせると,
(
)
0
0
r
h
h
h
h
ε
′
−
−
=
δ
Δ
ε
M
δ
δ
tan
tan
tan
r
C
X
×
×
+
=
2. 平板電極−液体置換
x
2
f
r
tan
1
δ
ε
ε
+
=
(
)(
)
(
)(
)
[
]
+
+
−
+
+
+
×
c
2
f
f
f
e
2
f
tan
1
tan
1
δ
δ
δ
ΔC
C
C
M
C
ΔC
C
δ
δ
δ
tan
tan
tan
C
X
Δ
M×
+
=
(
)(
)
(
)(
)
[
]
+
+
−
+
+
+
×
C
2
f
f
f
C
2
f
tan
1
tan
1
δ
δ
ΔC
C
C
M
C
ΔC
C
試験片の誘電正接が約0.1以下のとき,次の式が使用できる。
h
h
ΔC
C
ε
ΔC
ε
ε
0
0
f
f
r
1
×
+
×
−
=
δ
Δ
ε
ε
M
δ
δ
tan
tan
tan
f
r
C
X
×
+
=
3. 円筒電極−液体置換(tan δXが,約0.1以下の場合。)
1
2
0
2
1
f
r
/
log
/
log
1
d
d
d
d
C
ΔC
ε
ε
×
−
=
−
×
+
=
1
/
log
/
log
tan
tan
tan
1
2
0
3
f
r
C
X
d
d
d
d
ε
ε
δ
Δ
δ
δ
4. 2液置換法−平板電極(tan δXが,約0.1以下の場合。)
(
)
1
2
2
1
1
f
2
f
2
1
1
f
r
C
ΔC
C
ΔC
ε
ε
C
ΔC
ε
ε
×
−
×
−
×
+
=
ここに,
1
fε:標準液1の比誘電率
2
fε:標準液2の比誘電率
C1:標準液1を満たしたときの
電極間容量
1
ΔC:標準液1を満たした電極間
に試験片を挿入したときの
静電容量の増加分
2
ΔC:標準液1を満たした電極間
に試験片を挿入したときの
静電容量の増加分
1
C
2
1
0
r
1
C
X
tan
tan
tan
δ
ε
δ
δ
Δ
ΔC
C
C
×
−
+
=
ここに,
1
C
tanδ:標準液1の誘電正接
1
tanC
Δ
δ:標準液1中に試験片を挿
入したときの誘電正接
の増加分
注記
2液置換法の式に
おいて,添字の1
及び2は,それぞ
れ標準液1及び標
準液2に対応す
る。
15
C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図1−固体誘電体用マイクロメータ電極の組立
16
C 2138:2007
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単位 mm
1
内側電極
2
外側電極
3
ガードリング
4
内側電極取出し用ハンドル
5
ほうけい酸ガラス又は石英ワッシャ
6
ほうけい酸ガラス又は石英ワッシャ
図2−液体測定用三端子セルの例
17
C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
図3−液体測定用二端子セルの例
18
C 2138:2007
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図4−液体測定用平行平板電極付き二端子セル
19
C 2138:2007
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附属書A
(参考)
測定装置
序文
この附属書は,本体の規定を補足するものであって,規定の一部ではない。
A.1 シェーリングブリッジ
A.1.1 一般的事項
シェ−リングブリッジは,誘電率及び誘電正接の測定装置として最も古くから使われている代表的なも
のである。このブリッジは,商用周波数(50 Hz及び60 Hz)以下の周波数領域から100 kHzのオーダまで,
静電容量50 pF〜1 000 pF(試験片又は被測定機器の通常の静電容量)の範囲で使用される。
このブリッジは,図A.1に示すように四つの比例辺をもち,その内の二つは基本的に容量性比例辺(未
知静電容量
X
C及び無損失標準静電容量
N
C)で,残る二つ(しばしば,測定用比例辺と呼ばれる。)は無
誘導抵抗
1
R及び
2
Rから成る。これらのうち,少なくとも未知静電容量
X
Cと対向する抵抗
1Rにはバイ
パス静電容量
1
Cを接続する。一般にこの静電容量
1
C並びに,二つの抵抗
1
R及び
2
Rのいずれか一方は可
変である。
未知静電容量
X
Cに対して抵抗
S
R及び無損失静電容量
S
Cの直列等価回路を選べば,図A.1に示すブリ
ッジの平衡条件は,次の式となる。
2
1
N
S
R
R
C
C=
··········································································· (A.1)
また,未知静電容量
X
Cの誘電正接
X
tanδは,次の式となる。
1
1
S
S
X
tan
R
C
R
C
ω
ω
δ
=
=
···················································· (A.2)
抵抗
2
Rが静電容量
2
Cによってバイパスされている場合には,
δ
tan
は,次の式となる。
2
2
1
1
X
tan
R
C
R
C
ω
ω
δ
−
=
······················································ (A.3)
周波数領域によって,ブリッジの実際上の回路定数はかなり異なる。その理由は,50 Hzでは50 pF〜1 000
pFまでの静電容量のインピーダンスが60 MΩ〜3 MΩ程度であるのに対し,100 kHz では30 kΩ〜1.5 kΩ
程度と小さいためである。
後者の場合,ブリッジの四つの比例辺を同じオーダのインピーダンスにすることは容易であるが,50 Hz
又は60 Hzの商用周波数では極めて困難である。
A.1.2 低周波ブリッジ
このブリッジは,通常,高電圧ブリッジである。その理由は,感度の問題もあるが,それよりもむしろ,
低周波において誘電損が問題となるのは,主に高電圧技術だけのためである。いわゆる容量性比例辺と測
定用比例辺とのインピーダンスの差は,けた違いに大きくなるため,当然の結果として電圧配分にも同程
度の違いが生じる。電圧の最大値は,静電容量
X
C及び
N
Cの両端に現れる。先に示した平衡条件は,低
圧側の回路素子が高圧側の回路素子から遮へいされているときにだけ成り立つ。この遮へいは,平衡状態
の安定性を確保するために接地しなければならない。図A.2に示すように,この遮へいは,ガード付き静
電容量
X
C及び
N
Cと共用できるが,静電容量
N
Cに対するガードは実用上不可欠である。
接地方式の選び方によって,低周波ブリッジには二つの種類がある。
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A.1.2.1 遮へい付きシェーリングブリッジ
ブリッジの点B(ブリッジの信号源端子のうち測定用比例辺側)を遮へいに接続し,さらに接地する。
遮へいは,高電圧側に対する保護としてよく機能する反面,平衡点検出器の端子M及びNに接続する
幾つかのリード線と遮へいとの間の浮遊静電容量を増大させる。この静電容量には測定用比例辺の両端の
電圧が印加されるので,特に静電容量
X
C及び
N
Cが異なる場合には,通常は0.1 %のオーダに抑えられ
ている
δ
tan
の測定誤差を増大させる。
A.1.2.2 ワグナー接地回路をもつシェーリングブリッジ
前記の誤差の解消方法を,図A.2に示す。この回路構成によって,平衡点検出器のリード線と遮へいと
を同電位とできる。すなわち,外部比例辺
A
Z及び
B
Z(ワグナー接地回路)を付加し,その中間点Pを
遮へいに接続して接地する。付加比例辺(通常
B
Z)を調整して,
A
Z及び
B
Zにかかる電圧が,それぞ
れブリッジの静電容量性及び測定用比例辺にかかる電圧と等しくなるようにする。A.1.2.1 に記載した誤差
は,二組のブリッジ,すなわち主ブリッジAMNB及び副ブリッジAMPB(又はANPB)を同時に平衡状態
にすることによって,解消されることは明らかである。同時平衡状態は,平衡点検出器を主,副交互に切
り替えながら継続的に調整操作を行って,平衡状態に近づけていくことによって達成される。この方法に
よって,精度は1けた向上し,今日では,事実上,精度は,ブリッジに使用する回路素子の精度によって
制限される。
この誤差解消の方法では,信号源の両端子を共に非接地としなければならないことに,注意しなければ
ならない。それが不可能な場合には,より複雑な回路構成(二重遮へいブリッジ)が必要となる。
A.1.3 高周波用シェーリングブリッジ
このブリッジは,通常中程度の電圧で動作するので扱いやすい。静電容量
N
Cにしばしば可変静電容量
が用いられ(一方高電圧用では,この静電容量は普通固定である。),置換法が使いやすい。
周波数が高くなるに従って,望ましくない浮遊静電容量の影響が増大するので,遮へい及びワグナー接
地が使用される。
A.1.4 平衡点検出器における留意事項
シェーリングブリッジの点Bを接地する場合には,不平衡入力形(通常の電子装置では最も一般的)の
検出器の使用は,避けなければならない。
しかし,ワグナー接地回路を備えたブリッジでは,常に接地端子を点Pに接続するならば,このような
不平衡入力形検出器を支障なく使用できる。
A.2 変成器ブリッジ
A.2.1 一般的事項
このブリッジは,シェーリングブリッジよりも簡単な原理に基づいている。その基本的回路構成を,図
A.3に示す。
平衡状態においては,複素インピーダンス
X
Z及び
M
Z
の比は,電圧
1
U及び
2
Uの(ベクトルの)比
と一致する。したがって,後者の比が分かるならば,
X
Zは
M
Z
から容易に導くことができる。理想的な
ブリッジでは,
2
1U
U
は実数kである。したがって,
M
X
Z
k
Z=
となる。特に,
M
Z
の偏角から直接
X
δ
が導かれる。
変成器ブリッジがシェーリングブリッジに優る大きな利点は,補助比例辺を一切必要とせずに遮へい及
びガード電極の直接,かつ,的確な接地が可能なことである。
このブリッジは,商用周波数から数10 MHzの無線周波数まで用いられる。この周波数範囲は,シェー
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リングブリッジなどの前記のブリッジの周波数範囲よりも広いといえるが,実用に際しては周波数領域ご
とに配慮が必要である。
A.2.2 低周波用変成器ブリッジ
このブリッジも一般には高電圧ブリッジである(より正確には,電圧
1
Uが高電圧,電圧
2
Uは通常の電
圧である。)。このブリッジの手法は,計器用変圧器の手法と関連している。
次の,二通りの信号源電圧供給法が用いられる。
a) 信号源電圧は,巻線の片方に直接印加する。もう一方の巻線は,変成器の2次側として動作する。
b) 図A.3に示すように,信号源電圧は独立した1次巻線に印加され,ブリッジ自体の二つの巻線によっ
て,二つの個別の2次回路を構成させるか,又は一つの2次巻線に中間タップを設けることによって,
電圧
1
U及び
2
Uを得ることができる。
いかなる試験用変圧器であっても,変成器ブリッジには誤差を生じる(すなわち,電圧ベクトル比
2
1U
U
が理論値と異なる。)。この誤差は,負荷の状態によって変化する。最も重要なのは,実際には電
圧
1
U及び
2
Uの間の位相の誤差であり,これは
δ
tan
の測定に直接影響を与える。
したがって,ブリッジの校正が必要となる。校正は,
X
Zを無損失標準静電容量
N
C(シェーリングブ
リッジに使用されるものと同じ。)に置換することによって行う。
N
Cと
X
Cとが同じ値ならば,校正方
法は事実上置換で済み,校正は短時間に終わる。しかし,
N
Cが可変で調節可能な場合はほとんどないの
で,負荷の変化に対応した
X
Cに対する校正が必要である。図A.4に示す回路構成によって,一定の負荷
による動作が可能である。すなわち,
N
Cを測定するときはスイッチを
X
Cから接地にし,次にその逆の
状態で測定を行う。したがって,高圧側巻線に対する一定負荷の値は,両者の和である(厳密にいえば,
同様の回路を低圧側にも用いるべきであり,また,それは容易であるが,負荷がはるかに小さいので,こ
のような回路構成は必ずしも必要ではない。)。さらに,無損失標準静電容量
N
Cを電圧
1
Uに接続して校
正を行う場合には,電圧
2
Uを印加する測定用可変インピーダンス
M
Z
には,次のいずれかを用いる。
a) 電圧
1
U及び
2
Uが同相ならば(理想の場合),無損失標準静電容量
M
C。
b) 電圧
2
Uの位相が電圧
1
Uよりも進む場合には,静電容量
M
C及び抵抗
M
R。
c) 電圧
2
Uの位相が電圧
1
Uよりも遅れる場合には,抵抗
M
Rは負となる。これは,ブリッジを平衡状態
にするためには,抵抗素子を電圧
1
U側に設けなければならないことを意味する。しかし,高電圧用
の可変高抵抗は事実上,存在しないので,この抵抗素子は,図A.5に示すように,電圧
1
Uと同相の
電圧
3
U(低電圧)を印加する補助巻線を介して導入する。
注記
N
Cと直列に抵抗を接続することは,次の理由で不可能である。すなわち,この抵抗を静電容
量の下側に入れた場合には,
N
Cの主電極及びガード電極の電位は同じではなくなる。また,
高圧側配線の容量の手前に入れた場合には,抵抗を流れる電流がガード回路の電流を含むこと
になり,校正が不可能となる。
前記の留意事項は,c) の抵抗RMについても当てはまる。しかし,低圧側では,図A.5中に
点線で示したように,三つの抵抗, R1,R2及びR'の星形結線を用いることによって,静電容
量
M
C
に可変形の高抵抗で側路を付加した回路を構成できる。
M
Rは,次の式となる。
R
R
R
R
R
R
′
+
+
=
2
1
2
1
M
···························································· (A.4)
しかし,測定操作用可変静電容量は,無損失又は損失があっても十分小さくかつ既知でなけ
ればならない(一方,シェーリングブリッジの測定操作用可変静電容量は,これほど厳しい条
件を満たす必要はない。)。
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A.2.3 高周波用変成器ブリッジ
これまでに記載したブリッジ一般に当てはまる幾つかの条件は,このブリッジにも当てはまる。しかし,
このブリッジは,普通高電圧用ではないので,電圧
1
Uを印加する比例辺に容易に可変形の素子を使用でき
る。したがって,置換法を容易に使用できる。置換法は,適用可能なときには望ましい。
独立した1次巻線をもつブリッジの場合に更に特記すべきことは,信号源と検出器とを入れ替えができ
ることである。その場合のブリッジの平衡は,二つの2次巻線のアンペアターンが互いに逆極性となり,
打ち消しあうことに対応する。
注記 アンペアターン(Ampere-Turn:AT)は,電磁コイルの巻数と巻線を流れる電流との積である。
A.2.4 平衡点検出器に関する留意事項
変成器ブリッジでは,平衡点検出器の一方の端子は常に接地されているので,平衡入力形の検出器は必
要としない。
A.3 並列T形回路
並列T形回路は,ブリッジの一種で,発振器から二つのT形回路を通って検出器に向かって電流が流れ
るが,その電流は,検出器の入力において大きさは等しく逆位相となる。このような回路では,発振器及
び検出器は共に端子の片側を接地できる。また,幾つかの可能な回路構成において,試験片電極静電容量
及び平衡調節に用いる可変素子のそれぞれの端子の一方を接地できる。
図A.6に抵抗及びコンデンサだけを用いた最も簡単な並列T形回路を示す。また,誘電体の測定によっ
て広く用いられる回路の概略図を,図A.7に示す。この回路の平衡条件は,端子X−Xを開放状態として,
次の式となる。
L
C
C
C
C
C
N
A
2
B
N
A
1
1
1
1
ω
=
+
+
···················································· (A.5)
F
N
A
2
B
H
T
1
1
R
C
C
C
C
R
ω
=
+
······················································· (A.6)
実際には,可変コンデンサが端子X−Xに接続され,その静電容量
V
C及びコンダクタンスが見かけのL
及び
F
Rの値を変化させる。この状態で回路の平衡を取り,次に試料コンデンサを端子X−X間に接続し
て,静電容量
V
C及び
H
Cを調整して再び平衡を取る。このとき,次のとおりとなる。
a) 試料コンデンサの静電容量は,
V
Cの減少分
V
C
Δ
に等しい。
b) 試料コンデンサのコンダクタンスGは,次の式となる。
H
B
T
N
A
2
C
Δ
C
R
C
C
G
×
=ω
····················································· (A.7)
c) 試験片の誘電正接
δ
tan は,次の式となる。
V
H
B
T
N
A
tan
C
Δ
C
Δ
C
R
C
C
×
=ω
δ
···················································· (A.8)
ここに, ΔCH: CHの増加分
これらの回路は,50 kHz〜50 MHzの周波数領域において容易に構成することができ,十分な遮へいも容
易である。一つの大きな欠点は,平衡条件が強く周波数に依存することである。したがって,信号に高調
波成分が含まれていると,極めて平衡が取りにくい。広い周波数範囲にわたって使用する場合には,回路
素子類は適切に交換又は切り替えることが必要である。周波数範囲の上限付近では,接続用のリード線及
び,スイッチを使う場合にはそれらの残留インピーダンスが大きな誤差の要因となる。
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A.4 電圧上昇比法(Qメータ法)
電圧上昇比法又はQメータ法と呼ばれる方法は,10 kHz〜260 MHzの周波数領域で用いる。この方法は,
共振回路内に微小な既知の電圧を導入したときに,共振回路の両端に現れる電圧の測定に基づいている。
図A.8に通常の形式の回路を示す。この回路では,共振回路及び発振器は両者に共通に回路に含まれてい
る抵抗Rを介して結合されている。しかし,他の結合方法を用いてもよい。
測定の手順は,次のとおりである。まず入力電圧又は電流を測定周波数で設定値に調整し,共振回路の
同調をとって最大電圧を得て,生じた電圧
0
Uを測定する。次に試験片コンデンサを適切な端子に接続し,
可変コンデンサによって再び回路に最大電圧が現れる状態に調整し,新しい電圧値
1
Uを読み取る。
試験片コンデンサを接続して回路を再同調させたとき,
G
RL
≪1(図A.8参照)ならば共振静電容量は
ほぼ一定値となる。したがって,試験片コンデンサの静電容量は,可変コンデンサの静電容量変化分C
Δ
とほぼ等しい。
試験片の誘電正接は,近似的に,次の式となる。
−
≈
0
1
t
1
1
tan
Q
Q
C
Δ
C
δ
·························································· (A.9)
ここに,
tC: 電圧計の静電容量及びコイルの巻線間静電容量などを含む
回路内の全静電容量
1
Q: 試験片コンデンサを接続したときのQの値
0
Q: 試験片コンデンサを接続しないときのQの値
この方法の主要な誤差の要因は,二つの指示計器の校正時の誤差及び配線に伴う望ましくないインピー
ダンス,特に可変コンデンサと試験片コンデンサとの間の配線のインピーダンスである。誘電正接が大き
い場合には,RLG≪1の条件が保たれないため,近似式 (A.9) は成り立たない。
A.5 容量変化法(サセプタンス変化法,リアクタンス変化法)
図1に示すマイクロメータ電極システムは,高周波において,接続しているリード線及び測定系の静電
容量がもつインダクタンス並びに抵抗の直列成分に起因する誤差をなくすために,ハートショーン
(Hartshorn)によって開発された。これは,試験片まで同軸の往復線路(同軸ケーブル)を使用するとと
もに,測定回路への試験片の出し入れにかかわらず前記のインダクタンス及び抵抗を一定に保つことによ
って達成している。大きさが電極と同じか,又は小さい試験片を電極間に挟む。試験片及び電極の表面が
非常に平滑に磨かれていない場合は,試験片を電極間に入れる前に,試験片表面に金属はくか又はそれと
同等のものをはり付ける。電極間から試験片を取り除いた後,電極間げきをマイクロメータによって狭め
て,試験片を取り除く前と同じ静電容量になるように調整する。
マイクロメータ電極システムの静電容量変化を注意深く校正することによって,縁端静電容量,対地静
電容量及びリード線の接続静電容量についての補正を行わなくて済む。欠点としては,従来の多層可変コ
ンデンサと比べて静電容量の校正が正確ではないこと,及び静電容量の値が直読式ではないことである。
リード線の直列インダクタンス及び抵抗の影響を無視できる1 MHz以下の周波数では,マイクロメータ
電極の静電容量の校正は,マイクロメータ電極システムと並列に接続した標準コンデンサを用いて行うこ
とができる。
試験片の出し入れによる静電容量の変化は,このコンデンサによって測定する。
マイクロメータ電極におけるわずかな測定誤差の要因は,電極と同じ直径をもつ誘電体が存在すると,
電極の縁端静電容量(それは校正値に含まれる。)がわずかに変化することである。この誤差は,試験片の
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直径dSを,電極の直径dEよりも試験片の厚さtの2倍以上小さくする(すなわち,dE−dS≧2t とする。)
ことによって,無視できる。
まず,試験片をマイクロメータ電極に挟み,測定に使用する回路の同調をとる。次に,試験片を取り除
き,回路の合計の静電容量が元の静電容量と同じ大きさになるように,マイクロメータ電極を近づけるか,
又は標準コンデンサを調整する。
試験片の静電容量Cpは,表2から求める。
誘電正接は,次の式となる。
p
0
1
1
2
)
(
tan
C
ΔC
ΔC−
=
δ
·······················································(A.10)
ここに, ΔC1: 試験片が存在する状態で,可変コンデンサM2を変化
させて,指示計が共振電圧の
2
/1
に等しくなる電圧
を示す2点の静電容量の差。
ΔC0: 試験片を取り除いた状態での,同様の2点の静電容量
の差。
試験中,試験周波数を一定に保つように注意する。
注記 高周波数になると試験片にはり付けた電極の抵抗が無視できない大きさとなる。また,試験片
が平坦でなく厚さが不均一な場合は,誘電損が見かけ上大きく増加する原因となる。これが顕
著になる周波数は,試験片表面の平坦性に依存する。しかし,それは10 MHz付近である。し
たがって10 MHz以上の周波数ではちょう(貼)付電極なしの試験片を用いて静電容量及び誘
電損の追加的な測定を行わなければならない。Cw及びtanδWをちょう付電極なしの状態の試験
片の静電容量及び誘電正接とすると,真の誘電正接は,次の式となる。
w
tan
w
tan
p
δ
δCC
=
··························································· (A.11)
ここに, Cp: ちょう付電極を付けたときの試験片の静電容量
A.6 測定器の遮へい
測定器内の2点間に接地した導体を配置して遮へいを行うと,その2点間のいかなる静電容量も除くこ
とができる。そして,2点の両方の導体によって対地静電容量を代用する。したがって,対地静電容量が
問題にならない限り回路内のどのような点においても,リード線及び構成部品の遮へいを自由に行うこと
ができる。ワグナー接地回路を備えたシェーリングブリッジ及び変成器ブリッジはこの種の回路である。
一方,置換法によるブリッジ回路において,試験片の有無にかかわらず値が変化しない回路部品におけ
る代用ブリッジには,遮へいは不要である。
実際には,上記二つの場合を考えると,試験片コンデンサ,発振器及び検出器のリード線は,遮へいを
施すことが多い。なるべく多くの測定器は金属の遮へいで覆い,試験者の身体(多くの場合接地電位では
なく,また一定電位に保たれていない。)とブリッジ回路の構成部品との間の静電容量変化を避けることが
望ましい。
100 kHzのオーダ又はそれ以上の周波数では,自己インダクタンス及び相互インダクタンスを最小にす
るために,“往路”及び“復路”のリード線は近接させることが望ましい。また,このような周波数領域で
は,たとえほんの短いリード線のインピーダンスであっても無視できないことがあるので,複数のリード
線を一緒に接続したい場合には,できるだけ1点の近くにまとめることが望ましい。
試験片コンデンサの回路への切断にスイッチを使う場合には,スイッチを開放したときにその接点間の
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静電容量によって測定誤差が生じないようにする。3端子測定システムにおいては,接地した遮へいを接
点の間に入れるか,直列接続した二つのスイッチを用い,それらを開放したときには二つのスイッチの中
間の接続を接地するか,又は回路に接続されていない電極を接地することによって,前記の問題は回避さ
れる。
A.7 ブリッジ用発振器及び平衡点検出器
A.7.1 交流電源
電源は,必要な電圧及び電流を供給できる全高調波成分が1 %以下の任意のものを使用できる。
A.7.2 平衡点検出器
次のような方式の検出器を使用できる。いずれも感度を増すために増幅器とともに使用してもよい。
a) 受話器(必要があれば周波数切替え装置付き)
b) 電子電圧計又は波形観測装置
c) 陰極線オシロスコープ
d) “マジックアイ”式同調指示器
e) 振動検流計(低周波用)
インピーダンスの整合を図るため,又はブリッジ出力端子のいずれか片方が接地されている場合には,
ブリッジ回路と検出器との間に変圧器を介してもよい。
高調波成分があると,平衡点が不明りょうになったり,変化することがある。この問題は,増幅器の周
波数同調又はローパスフィルタを用いることによって回避できる。測定周波数の第2高調波に対するレベ
ルの差は40 dBあれば十分である。
A.8 周波数範囲
測定方法によって,推奨する周波数範囲は,表A.1による。
表A.1−測定方法及び推奨周波数範囲
測定方法
推奨周波数範囲
試験片形状
1. シェーリングブリッジ
0.10 MHz 以下
平板又は管
2. 変成器ブリッジ
15 Hz 〜 50 MHz
3. 並列T形回路
50 kHz 〜 30 MHz
4. 電圧上昇比法(Qメータ法)
10 kHz 〜 260 MHz
5. 容量変化法
10 MHz〜 100 MHz
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図A.1−シェーリングブリッジの回路図
図A.2−ワグナー接地回路付きシェーリングブリッジ
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図A.3−変成器ブリッジの回路図
図A.4−変成器ブリッジ(定負荷校正回路)
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点線:容量CMに並列な高抵抗側路の形成(電流I2の位相がI1に対して進んでいるとき)
図A.5−変成器ブリッジ−電圧U2の位相が電圧U1に対して遅れているときの補償
(電圧U3を発生する補助巻線の付加)
図A.6−並列T形回路の原理図
図A.7−並列T形回路の実用回路図
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図A.8−共振法(Qメータ法)の回路図
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附属書JA
(参考)
共振法による広域帯・高精度測定方法及び測定装置
序文
この附属書は,IEC 60250には規定されていないが,誘電率及び誘電正接の高確度測定が可能な方法と
して,社団法人電気学会 電気規格調査会規格JEC-6150:2000(電気絶縁材料の誘電率及び誘電正接試験
方法通則)に詳しく規定している試験方法の概要について示すものである。したがって,この規格本体の
規定を補足するものであって,規定の一部ではない。
この規格は,国際規格への整合を図るため,対応国際規格であるIEC 60250の初版を基にしている。し
かし,IEC 60250は,1969年に発行されてから,現在に至るまで一度も改正されていない。
当然,その間に種々の技術的改良が試みられ,より優れた測定方法及び測定装置が開発されている。次
に現在実用化されている新しい測定方法及び測定装置を,次に示す。
JA.1 共振法による測定方法
JA.1.1 共振法とマイクロメータ電極との組合わせ
Qメータは,本来はコイル,コンデンサなどの回路素子の試験装置であるが,共振法は図A.8 に示すよ
うなQメータの可変標準コンデンサに並列に,試験片コンデンサを直接,又は,例えば図1のような電極
装置を接続して,主に高周波領域における誘電特性の試験に用いられてきた。現在も基本的にはその状況
は変わっていないが,近年,共振法と4.1.2.2.2及び表3に規定した液体置換法とを組み合わせ,さらに同
じく近年開発された極めて精密なマイクロメータ電極を用いることによって,周波数範囲が広く(1 kHz
〜100 MHz),極めて信頼性・再現性の高い測定結果が得られる試験方法及び試験装置が実現されている。
これらの新技術について,その基礎である容量変化法及び半値幅法を,次に記載する。
JA.1.1.1 容量変化法
容量変化法は,5.2に規定した共振法の一つで,A.5に詳しく記載している測定法である。この測定法の
最大の特徴は,高周波における測定の信頼性を高めるために,共振回路の半値幅容量をコンダクタンス標
準として用いることである。測定回路には,図A.8に示した共振回路を用いる。
JA.1.1.1.1 Q値及び半値幅
図A.8の共振回路(Qメータ)において,接続された信号源からの電流iが一定,すなわち抵抗R(通
常,低抵抗)の両端に現れる電圧が一定の条件で,
LC
f
π
2
1
0=
で決まる共振周波数
0fの前後に信号源
の周波数を変化させて,可変標準コンデンサCの両端の電圧を電圧計Vで測定すれば,図JA.1に示すよ
うな共振曲線が得られる。共振周波数
0fにおける電圧最大値
0
Vを共振電圧という。A.4に述べられてい
るQ値は,この共振曲線上で共振周波数
0fの両側,共振電圧
0
Vの
2
1
の2点A及びBに対応する周
波数の差を
f
Δとするとき,これを半値幅といい,次の式で表す。これが本来のQ値の定義である。
f
Δ
f
Q
0
=
······································································· (JA.1)
ここで,信号源の周波数を
0fに固定し,可変標準コンデンサCを変化させて,前記と同様にその両端
の電圧を測定すれば,図JA.1と同様の共振曲線が得られる。ここで,共振点,すなわちピーク電圧
0
Vを
示す静電容量
0
Cを共振容量といい,この両側のピーク電圧
0
Vの
2
1
の2点A及びBに対応する静電容
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C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
量の差をC
Δとするとき,式 (JA.1) のQ値は,次の式による。
C
Δ
C
Q
0
=
············································································ (JA.2)
また,図1に示すようなマイクロメータ電極が使用できる場合には,この電極を可変標準コンデンサに
置き換えて電極間隔を変化させることによって,図JA.1と同様の共振曲線が得られる。共振点の電極間隔
0tを共振間隔と呼ぶ。この両側のピーク電圧
0
Vの
2
1
の2点A及びBに対応する電極間隔の差をt
Δと
すれば,式 (JA.1) のQ値は,次の式となる。
t
Δ
t
Q
0
=
············································································ (JA.3)
ここで,t
Δを半値幅距離ということにする。
さて,共振回路の半値幅容量C
Δと等価並列コンダクタンスGとの間には,次の式の関係がある。
2
0C
Δ
Gω
=
········································································ (JA.4)
ここに,
0
ω: 共振角周波数(
0
2f
π
=
,
0f:共振周波数)
したがって,良いコンダクタンス標準が得にくい高周波において,半値幅容量C
Δは信頼性の高いコン
ダクタンス標準として用いることができる。
JA.1.1.1.2 未知コンダクタンスの測定手順
図A.8に示すようなインダクタンスRL及び可変コンデンサCから成るLC共振回路において,可変コン
デンサCを調整して図JA.2 a)に示すようにその両端の電圧
0
Vが最大値(共振電圧)を示したときの電圧
を
00
Vとし,静電容量(共振容量)を
0
Cとする。また,
0
Cの両側で電圧
0
Vが共振電圧
00
Vの
2
1
とな
る二つの容量値
A
C及び
B
Cから半値幅容量
A
BC
C
C
Δ
−
=
を求める。共振角周波数を
0
ωとすれば,可変コ
ンデンサCの両端から見た回路の全等価並列コンダクタンスGと半値幅容量C
Δとの間には,共振回路
のQが十分高く,
G
C
Q
0
0
ω
=
≫1のとき,式 (JA.4) が成り立つ。したがって,半値幅容量C
Δを測定
することによって,可変コンデンサCの両端から見た回路の全等価並列コンダクタンスGが得られ,こ
れを基準として可変コンデンサCに並列に接続される未知コンダクタンス
X
Gを求めることができる。
未知コンダクタンス
X
Gの測定は,次の手順で行う。
まず図JA.2 b)において,図JA.2 a)と同様に共振回路の可変コンデンサCを変化させて共振電圧
00
V及
び半値幅容量
0
C
Δ
を測定する。次に,未知コンダクタンス
X
G(試験片コンデンサ)を可変コンデンサC
と並列に接続し,再び可変コンデンサCを調整して共振電圧
I
V0及び半値幅容量
IC
Δ
を測定する。これら
の測定値から,未知コンダクタンス
X
Gは,次の式から求めることができる。
2
)
(
0
I
0
X
ΔC
C
Δ
G
−
=ω
························································· (JA.5)
試験片材料の損失が少なく,未知コンダクタンス
X
Gが小さい場合には,
IC
Δ
と
0
C
Δ
との差が小さくな
り,誤差が大きくなる。このような場合には,未知コンダクタンス
X
Gは,次の式から求めることができ
る。
−
=
1
2
1
0
00
0
0
X
V
V
C
Δ
G
ω
························································· (JA.6)
共振回路のQが高い場合には,共振曲線が鋭いピークとなるために半値幅容量C
Δ(又は
0
C
Δ )が小さ
くなり,正確な測定が困難になることがある。このような場合には,図JA.2 a)に示すように,共振容量
0
C
の両側において,半値幅容量の代わりに容量Cの両端の電圧が共振電圧
00
Vの
5
1
となる静電容量の差
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(1/5 幅容量)を測定すれば,その値はΔC
2
,すなわち半値幅容量C
Δの2倍となり,測定が容易になる。
この測定を正確に行うには,半値幅容量測定のための高い分解能をもつ可変標準コンデンサ,又は共振
電圧
00
V及びV01の電圧比測定のための分解能の高い交流電圧計を必要とする。しかし,正確に把握する
ことが困難な共振容量及び共振電圧の値を必ずしも知る必要がない。したがって,半値幅容量は,広い周
波数範囲にわたって信頼性の高い高精度のコンダクタンス標準となる。
JA.1.1.2 間げき変化法(マイクロメータ電極使用)
間げき変化法は,試験片を電極間に挿入し,圧着する従来の方法と異なり,試験片と電極との間に一定
の間げきを設けて測定を行うため,電極と試験片との間,又は薄い試験片を2枚以上重ねて測定する場合
には,試験片と試験片との間に残存する空げきによる誤差を生じない。また,ちょう付電極,蒸着電極な
ど,試験片表面に形成する電極を使用する必要がないので,測定が容易に行える。さらに,試験片を試験
片と等価直列容量が等しい空気層に置き換える方法であるため,電極とリード線との間の残留インピーダ
ンスの影響が少なく,数10 Hz〜数100 MHzの広い周波数で使用できる。
低周波では,交流ブリッジを検出器とし,電極間隔の調整が可能なガードリング付の三端子マイクロメ
ータ電極を用いる。高周波では,Qメータなどを検出器とし,ガードリングなしの二端子マイクロメータ
電極を用いる。
図JA.3 a)に示すように,平衡平板対向電極間に平均厚さtの試験片をそう入し,電極と試験片との間に
100 μm〜300 μm程度の任意の空げきが残るように電極間隔Itを設定する。この電極を,交流ブリッジ,Q
メータなどのインピーダンス検出器に接続し,電極間等価並列容量及び電極間誘電正接
1
tanδを測定する。
次に,図JA.3 b)に示すように,試験片を取り去った後,電極間を狭めることによって,元の容量と等しく
なるように調整し,このときの電極間隔
0t(
1t
<)及び電極間誘電正接
0
tanδを測定し,
0
1
A
t
t
t
Δ
−
=
及び
0
1
tan
tan
tan
δ
δ
δ
−
=
Δ
を求める。試験片の誘電正接が1より十分小さく,縁端容量が無視できる場合は,
比誘電率及び誘電正接は,次の式となる。
A
r
t
Δ
t
t
−
=
ε
······································································ (JA.7)
δ
δ
tan
tan
A
0
Δ
t
Δ
t
t
−
=
··························································· (JA.8)
JA.1.1.3 半値幅法を導入した間げき変化法
間げき変化法に半値幅法を組み合わせた測定方法も開発されており,十分精密なマイクロメータ電極を
用いることによって,高確度の測定を行うことができる。
測定の手順は,まず平行平板電極間に板又はシート状試験片をそう入し,図JA.3 a)と同様に電極と試験
片との間に100 μm〜300 μm程度の任意の空げきが残るように電極間隔1tを設定する。この電極をLC共
振回路の可変コンデンサと並列に接続し,図JA.4の右側の共振曲線に示すように,コンデンサの静電容量
を調整して共振状態とし,共振電圧
01
Vを測定する。次に試験片を取り除き,図JA.4の左側の共振曲線に
示すように,電極間隔を狭めて再び共振状態とし,共振電圧
00
V及び電極間隔
0t(
1t
<)を測定し,間げ
き変化量
0
1
0
t
t
t
−
=
∆
を求める。また,電極間隔
0tの両側における電圧
2
00
V
の2点AとBとの間の間
げき変化量
0t
Δ(JA.1.1.1に記載した半値幅距離)を測定する。試験片の厚さをtとすれば,試験片の比
誘電率及び誘電正接は,次の式となる。
A
r
t
Δ
t
t
−
=
ε
······································································· (JA.9)
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−
−
=
1
)
(2
tan
10
00
A
0
V
V
t
Δ
t
t
Δ
δ
·················································· (JA.10)
この方法に用いるために,電極間隔の変化量を精密に調整でき,また試験片の挿入及び電極間隔の変化
に伴う縁端容量の変化が極めて小さくなるように工夫されたマイクロメータ電極が開発されている。図
JA.5にその一例を示す。間げき変化法では試験片の厚さtを正確に知る必要があるため,この電極は3対
のアンビル(anvil)から成る試験片の平均厚さ測定機構も備えている。
JA.1.2 液体置換法
平行板対向電極間に,誘電正接が小さく比誘電率が既知で試験片に近い標準液を満たし,この電極間に
試験片を浸せきしたときの電極間容量及び誘電正接の変化を測定して,試験片の比誘電率及び誘電正接を
求める方法である。試験片挿入による電極間インピーダンス変化が少なく,浮遊容量(対地容量,電線間
の容量など)の影響が少ない上に,電極と試験片との間の空げきの影響がないため,適切な液体を標準液
に選んだ場合には,低周波から比較的高い30 MHz程度の周波数まで極めて高い精度の測定が行える。電
極には図JA.6に示すような液体置換法用セルを用いる。
標準液としては,無水ベンゼン(C6H6,
284
.2
r≅
ε
),シクロヘキサン(C6H12,
023
.2
r≅
ε
),モノクロ
ルベンゼン(C6H5Cl,
708
.5
r≅
ε
),1・2ジクロルエタン(C2H4Cl2,
649
.
10
r≅
ε
),ニトロベンゼン(C6H5NO2,
704
.
35
r≅
ε
)及び低粘度シリコーン油(
3.2
r≅
ε
)を用いる。ここに記載した比誘電率の値は,20 ℃にお
ける概略値であり,実際の使用に当たってはより正確な値を得てその温度係数などから測定時の条件(特
に温度)における値を用いなければならない。また,シリコーン油以外はいずれも毒性をもっているので,
使用するときには注意が必要である。
JA.1.2.1 1種類の液体を用いる方法
電極を低周波では交流ブリッジ,高周波ではQメータなどのインピーダンス測定器に接続し,セルが空
のときの電極の正味の静電容量
0
Cを測定した後,誘電正接が小さく比誘電率
rF
εが既知で試験片に近い
標準液を満たし,その誘電正接
F
tanδを測定する。次に,間隔
0tの電極間を満たした標準液中に平均厚さ
tの試料片2枚を浸せきし,電極間容量増加量
P
C
Δ
及び誘電正接増加量
δ
tan
Δ
を測定する。試験片及び標
準液の誘電正接が1より十分小さい場合,比誘電率及び誘電正接は,次の式となる。
rF
0
P
0
0
P
rF
r
1
1
ε
ε
ε
−
−
+
=
t
t
C
Δ
t
t
C
C
Δ
·········································· (JA.11)
−
+
+
=
t
t
t
Δ
0
rF
r
F
1
tan
tan
tan
ε
ε
δ
δ
δ
······································· (JA.12)
なお,試験片及び標準液の比誘電率が近いときは,式 (JA.11) 及び式 (JA.12) は,次の式となる。
t
t
C
C
Δ
0
0
P
rF
r
+
=ε
ε
····························································· (JA.13)
δ
δ
δ
tan
tan
tan
0
F
Δ
t
t
+
=
······················································ (JA.14)
JA.1.2.2 比誘電率が異なる2種類の液体を用いる方法
液体置換法には,比誘電率の異なる2種類の標準液を用いる方法もある。この方法は,測定が繁雑にな
るが,試験片の平均の厚さtを測定する必要がないという特徴がある。
平行板対向電極が収められたセル(図JA.6参照)に比誘電率
rF1
εの標準液を満たし,電極間容量及び誘
電正接を測定する。次に,標準液を満たした電極間にそれぞれ2枚の試験片を挿入し,このときの電極間
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容量
P1
C
及びその誘電正接
01
tanδを測定し,試験片挿入による容量増加量
P1
C
Δ
及び誘電正接増加量
01
tanδ
Δ
を求める。最後に,比誘電率
rF2
εの標準液に入れ換え,電極間に再び試験片を挿入し,このとき
の電極間容量
P2
C及び試験片浸せきによる容量増加量
2
P
C
Δ
を測定する。このとき誘電正接を測定する必要
はない。標準液及び試験片の誘電正接が1より十分小さく,縁端容量が無視できる場合,試験片の比誘電
率及び誘電正接は,次の式となる。
P1
P1
P2
P2
rF1
rF2
rF1
r
1
)
(
C
C
Δ
C
C
Δ
−
−
+
=
ε
ε
ε
ε
························································· (JA.15)
01
1
P
P1
0
r
01
tan
tan
tan
δ
ε
δ
δ
Δ
C
Δ
C
C−
+
=
······································· (JA.16)
ここに,
0
C: 電極間が真空のときの電極間容量
縁端容量を無視すると,
t
S
C
0
0
ε
=
0ε:真空の誘電率
S:対向電極面積
t:電極間隔
比誘電率
rε及び誘電正接
δ
tan
を求める式 (JA.15) 及び式 (JA.16) は,いずれも試験片の厚さを含んで
いない。したがって,この測定法では試験片の平均の厚さを測定する必要がない。
なお,正確な測定を行うためには,2種類の標準液の一方は比誘電率が試験片より小さく,他方は大き
いことが望ましい。試験片の比誘電率が1に近いときには,比誘電率の小さい方の標準液の代わりに空気
を用いてもよい。
JA.1.3 液浸間げき変化法−測定法の組合せによる高確度測定法
JA.1.1に記載した容量変化法では,半値幅容量をコンダクタンス標準に用いるので,高周波まで使用で
きるが,電極と試験片との間の残存空げきが誤差の原因となる。JA.1.2 に記載した間げき変化法では,電
極と試験片との間の間げきは誤差の原因とはならないが,高周波におけるコンダクタンス標準の不確実さ
が誘電正接測定の誤差の原因となり得る。JA.1.3ではこれら二つの試験法を組み合わせた方法によって,
縁端容量の影響が少ない2端子マイクロメータ電極を用いて測定を行うと,残存空げきの影響もなくなる
ばかりでなく,確定することが困難な電極間隔及び電極面積を知る必要もなくなり,コンダクタンス標準
として半値幅容量を用いるので,低周波から高周波に至る広い周波数範囲において,高確度の測定が可能
となる。この方法の比誘電率の測定精度は,結局試験片の平均厚さの測定確度によって決まることになる。
そこで,これに液体置換法を組み合わせた液浸間げき変化法が開発された。この方法では,試験片の平
均厚さを測る必要もなくなるため,測定精度はさらに高くなる。
なお,JA.2.2に記載した2種類の標準液を用いる方法でも平均厚さの測定は不要であるが,測定は非常
に繁雑である。
液浸間げき変化法では,図JA.5に示すような2端子マイクロメータ電極をセル(液体容器)に収めた電
極装置を用い,まずセルに標準液を満たす前に,空気中でJA.1.1.3に記載した半値幅法を導入した間げき
変化法と同様に,試験片を挿入したときと除去したときとの間げき変化量
At
Δ,半値幅距離
0t
Δ及び試験
片を挿入したときと除去したときとの共振電圧比
01
00V
V
を測定する。次にセルに比誘電率
F
rεが既知の標
準液を満たし,試験片を挿入したときと除去したときとの間げき変化量
Ft
Δだけを測定する。これらの測
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定値から比誘電率及び誘電正接は,次の式から求めることができる。
F
A
F
A
rF
r
t
Δ
t
Δ
t
Δ
t
Δ
−
−
=ε
ε
······························································· (JA.17)
−
−
−
=
×
1
2
1
tan
10
00
F
A
0
rF
V
V
t
Δ
t
Δ
t
Δ
ε
δ
········································· (JA.18)
液浸間げき変化法の大きな特長の一つとして,試験片の平均厚さtを次の式から求めることができる。
1
rF
F
A
rF
−
−
=
ε
ε
t
Δ
t
Δ
t
································································ (JA.19)
したがって,紙,布などの繊維質材料,多孔質材料など,従来誘電特性の測定が困難とされる材料にお
いても,標準液を適切な方法で試験片に含浸して材料の空げきに存在する空気を標準液に置換することが
できれば,空気層を含まない材料自体の誘電特性の測定を行うことができる。
同時に算出される平均厚さは,同じく空気層を取り除いた材料だけの厚さを表すため,むしろ物理的意
味のある数値が得られるとして,一部には“厚さ測定器”として利用されている例がある。
この測定法には,液体置換法と同様に,比誘電率が既知の標準液,及び液体中で測定を行うためのセル
(容器)に収めた精密マイクロメータ電極を必要とする。その一例を,図JA.7に示す。
この電極を用いれば,誘電特性が既知の固体試験片(例えば,溶融石英の薄板など)を用意することに
よって,液体誘電体の誘電特性測定も行うことができる。
また,測定する試料の性質によって,直接電極間にそう入することが困難か,又は標準液に浸せきでき
ない試料については,適切なプラスチック(ポリエチレンなど)の袋又はシートを用意し,まずこれらの
風袋だけで誘電特性を測定しておき,次に,これらに試料を封入又は挟み込んだ状態で測定を行って,そ
の結果から試料の誘電特性を求める方法がある。この方法は“パウチ法”と呼ばれ,手順は少し繁雑とな
るが,従来,誘電特性の測定が極めて困難であった材料,例えば粉体材料などについても信頼性の高い測
定を行える可能性がある。
JA.2 新しい測定装置
JA.2.1 能動ブリッジ(アクティブブリッジ)
能動ブリッジは,A.2に記載した変成器ブリッジ(図A.3参照)を電子化して,変成器の二つの2次巻
線をそれぞれ演算増幅器に置き換えることによって,自動平衡形ブリッジとしたものである。変成器ブリ
ッジの使用可能な周波数範囲の上限が数100 kHz〜1 MHz程度であるのに対し,能動ブリッジの場合には
数10 MHz〜100 MHz 付近までと広く,また,小形で軽量であるため,近年,広く用いられている。
図JA.8に能動ブリッジの基本回路を示す。能動素子として利得がそれぞれ1の演算増幅器(非反転増幅
器)及び−1の演算増幅器(反転増幅器)が用いられており,そのそれぞれの負荷として未知インピーダ
ンス
X
Z&及び標準インピーダンス
S
Z&が接続されている。
S
Z&を調整してブリッジを平衡状態にしたときに
は,検出器Aに流れる電流は0であるから,
X
S
I
I
&
&=
であり,これよって
S
X
Z
E
Z
E
&
&
&
&
=
,すなわち,未知
インピーダンスを,次の式から求めることができる。
S
X
Z
Z
&
&=
········································································· (JA.20)
変成器ブリッジの場合と同様に,未知インピーダンス
X
Z&及び標準インピーダンス
S
Z&から見た,増幅
器の出力インピーダンス及び検出器のインピーダンスが極めて小さいため,能動ブリッジは雑音及び浮遊
インピーダンスの影響を受けにくい。
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C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図JA.9及び図JA.10に,それぞれ容量測定のための能動ブリッジ(一般に,キャパシタンスブリッジな
どと呼ばれる。)及び任意のインピーダンス測定用の自動平衡ブリッジ(一般に,LCRメータ,又はイン
ピーダンスメータなどと呼ばれる。)の基本回路を示す。
前者の場合には反転増幅器の前段に利得がA倍(可変)の増幅器がそう入されており,未知容量及び既
知容量(標準容量)をそれぞれ
X
C及び
S
Cとすれば,未知容量
X
Cは式 (JA.21) から求めることができる。
S
X
AC
C=
······································································· (JA.21)
後者の場合には,標準インピーダンスとして純抵抗
SRを用い,反転増幅器の前段に振幅及び位相の制
御回路が挿入されている。この振幅及び位相は検出器の出力が0となるように自動的に調整され,ブリッ
ジが平衡したときの制御信号から未知インピーダンス
X
Z&が計算されてディジタル表示される。
JA.2.2 広帯域インピーダンスメータ
低周波領域に使用される3端子(ガード付き)ブリッジ回路は,高周波領域ではガード回路の残留イン
ピーダンスが急増するため,高周波測定用に改良できる可能性はない。一方,高周波領域で用いられるQ
メータに代表される共振回路の場合には,大きなインダクタンスをもつ安定な共振回路用インダクタ(コ
イル)が製作できれば,測定周波数帯域を低周波まで拡張できる。また,低周波領域では3端子回路(ガ
ード回路)の導入も可能である。
一例として,Qメータにこのような改良を施して1 kHz〜100 MHzの広い周波数帯域にわたる測定が可
能で,また共振点を簡単な操作で正確に見出すための位相計用の回路を付加した広帯域インピーダンスメ
ータのブロックダイアグラムを図JA.11に示す。この装置では,コンダクタンス測定にはJA.1.1に記載し
た共振曲線の半値幅をコンダクタンス標準とする測定法を用いる。また,マイクロメータ電極を用いる場
合には,電極自体がその役割を果たすため可変標準コンデンサを必要としない。
前記の広帯域インピーダンスメータに図JA.7に示したマイクロメータ電極セルを組み合わせて,JA.1.3
に記載した液浸間げき変化法によって1 kHz〜100 MHzの広い周波数範囲にわたって測定した例を,図
JA.12 a)及び図JA.12 b)に示す。従来の誘電特性測定結果に必ず付けられていたエラーバーがないことが特
筆される。
37
C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図JA.1−Q値及び半値幅の定義
a) b)
図JA.2−共振回路の半値幅容量
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C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) b)
図JA.3−間げき変化法
図JA.4−半値幅法を導入した間げき変化法
図JA.5−精密マイクロメータ電極(アンビルによる平均厚さ測定機構付き)
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C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図JA.6−液体置換法用セル
図JA.7−液浸間げき変化法用精密マイクロメータ電極セル
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C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図JA.8−能動ブリッジの基本回路
図JA.9−能動ブリッジ(キャパシタンスブリッジ)
図JA.10−自動平衡ブリッジ(LCRメータ)
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C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図JA.11−広帯域インピーダンスメータ
標準液: シリコンオイル
標準液: ジクロルエタン
測定条件: 温度 25 ℃
測定条件: 温度 24.7 ℃
相対湿度 50 %
相対湿度 50 %
平均厚さ: 978 μm
平均厚さ: 719 μm
a) ポリエチレン b) ポリふっ化ビニリデン
図JA.12−液浸間げき変化法によるプラスチックフィルムの誘電特性の測定例
附属書JB
(参考)
JISと対応する国際規格との対比表
JIS C 2138 : 0000 電気絶縁材料−比誘電率及び誘電正接の測定方法
IEC 60250:1969,Recommended methods for the determination of the
permittivity and dielectric dissipation factor of electrical insulating materials at
power, audio and radio frequencies including metre wavelengths
(Ⅰ)JISの規定
(Ⅱ)
国際規
格番号
(Ⅲ)国際規格の規定
(Ⅳ)JISと国際規格との技術的差異の
箇条ごとの評価及びその内容
(Ⅴ)JISと国際規格との技術的
差異の理由及び今後の対策
箇条番号及び
名称
内容
箇条番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
2 用語及び定
義
2.1
2.1A 比誘電率と
2.1B 誘電率とを分
割して定義。
2.1
比誘電率及び誘電率の二
つの用語を定義。
変更
細目番号を分割したも
のであり,技術的な差異
はない。
−
4.1.1
固体試験片の形状
4.1.1
測定点を割当てる方法とし
て“系統的(systematically)”
とだけ規定されている。
追加
注記として,“測定点を
系統的(systematically)
に割り当てる方法”の例
を追記。
内容を補足したものであり,技
術的な差異はない。
4.1.3.5
4.1.3.5
水銀及びその他の液体金
属の電極の用い方を規定。
削除
規定内容を削除した。
我が国では水銀及びその他の
金属を用いることができない。
IECへの改正提案を検討する。
7.3
精度の期待値
7.3
追加
注記として,“正味
(direct)の”の意味を追
記した。
内容を補足したものであり,技
術的な差異はない。
附属書A(参
考)測定装置
図の番号,図A.1〜
図A.8とした。(本
体と附属書に分割し
た。)
附属書A
測定装置
図の番号:Fig. 5〜Fig. 12
(本体と連続した番号で
ある。)
変更
図の番号を,附属書での
番号に変更したもので
あり,技術的差異はな
い。また,技術動向から
見てJISでは参考として
の位置付けとした。
−
2
C
2
1
3
8
:
2
0
0
7
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(Ⅰ)JISの規定
(Ⅱ)
国際規格
番号
(Ⅲ)国際規格の規定
(Ⅳ)JISと国際規格との技術的差異の
箇条ごとの評価及びその内容
(Ⅴ)JISと国際規格との技術的
差異の理由及び今後の対策
箇条番号及び
名称
内容
箇条番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
附属書JA(参
考)
新しい測定方法及び
測定装置
−
−
追加
IEC規格は,発行後40
年を経過しており,この
間に,より優れた測定方
法及び測定装置が開発
され,実用化されてい
る。
IEC規格の,次回改正時に提案
する。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価: IEC 60250:1969,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除……………… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD………………国際規格を修正している。
2
C
2
1
3
8
:
2
0
0
7
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き、本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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C 2138:2007
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
IEC 60247: 2004,Insulating liquids ‒ Measurement of relative permittivity, dielectric dissipation factor (tan d)
and d.c. resistivity
JEC 6150: 2000 電気絶縁材料の誘電率及び誘電正接試験方法通則