B 9928 : 1998
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
B 9928 : 1998
コンタミネーションコントロールに使用する
エアロゾルの発生方法
Methods of aerosol generation for contamination control
序文 各種の設備機器の性能試験に用いるエアロゾルは,その発生条件の規定がないために,多様な粒度
分布,濃度を示し,性能評価に支障をきたす難点があった。利用頻度の高いエアロゾルの発生方法を選び,
粒子径,分散,濃度の再現性が保たれるように発生方法・条件を整え,性能評価の信頼性を図るために,
JIS B 9928が制定された。
1. 適用範囲 この規格は,コンタミネーションコントロールを目的としたエアフィルタ,ガスラインフ
ィルタ及びこれらに用いるろ材の性能試験,エアフィルタ設置現場試験,光散乱式自動粒子計数器などの
性能試験などに用いる試験用エアロゾルの発生方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版を適用する。
JIS B 9920 クリーンルーム中における浮遊微粒子の濃度測定方法及びクリーンルームの空気清浄度
の評価方法
JIS B 9921 光散乱式自動粒子計数器
JIS B 9924 表面付着粒子計数器
JIS K 6753 フタル酸ジオクチル (D. O. P. )
JIS K 8150 塩化ナトリウム(試薬)
JIS K 8585 ステアリン酸(試薬)
JIS Z 8103 計測用語
JIS Z 8122 コンタミネーションコントロール用語
JIS Z 8813 浮遊粉じん濃度測定方法通則
JIS Z 8814 ロウボリウムエアサンプラ
JIS Z 8901 試験用粉体及び試験用粒子
3. 定義 この規格に用いる主な用語の定義は,JIS Z 8122及びJIS Z 8103によるほか,次による。
a) ガスラインフィルタ 高純度ガスなどのガス供給配管中に取り付け,ガス中に存在する粒子状物質を
除去するろ過フィルタ
b) ポリスチレン系粒子 ポリスチレン,ポリビニルトルエン,スチレンジビニルベンゼンなどを主成分
とする極めて粒径のそろった単分散固体粒子で,JIS Z 8901に規定する試験用粒子1
2
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4. 試験用エアロゾルの種類 この規格で用いる試験用エアロゾルの種類は,表1による。
表1 試験用エアロゾルの種類
種類
材料
ポリスチレン系粒子エアロゾル
スチレン,ビニルベンゼン,ビニルトルエン
ステアリン酸エアロゾル
JIS K 8585に規定する特級
フタル酸ジオクチル (DOP) エアロゾル
JIS K 6753に規定する2号
セバシン酸ジオクチル (DOS) エアロゾル
(CH2) 6 (CH2COOC8H17) 2, 分子量427芳香性無色の油状液体
塩化ナトリウム (NaCl) エアロゾル
JIS K 8150に規定する特級
5. 試験用エアロゾルの発生方法
5.1
ポリスチレン系粒子エアロゾル発生方法 ポリスチレン系粒子分散液を噴霧,乾燥する方法,又は
エジェクタを用い,分散・乾燥する方法で,附属書1による。
参考 ポリスチレン系粒子は,通常超純水に懸濁した状態で市販されている。
5.2
ステアリン酸エアロゾル発生方法 ステアリン酸を加熱によって蒸気化し,凝結核と混合した後に
冷却し,蒸気を核に凝縮させる方法で,附属書2による。
5.3
フタル酸ジオクチル (DOP) エアロゾル発生方法 附属書2, 附属書3又は附属書4による。
5.4
セバシン酸ジオクチル (DOS) エアロゾル発生方法 附属書2, 附属書3又は附属書4による。
5.5
塩化ナトリウム (NaCl) エアロゾル発生方法 食塩水を噴霧・乾燥する方法,又は塩化ナトリウム
を蒸気化し冷却する方法で,附属書5又は附属書6による。
6. 試験用エアロゾルの測定方法
6.1
測定器 測定器は,次のa)〜d),又はこれらとe)若しくはf)とを必要に応じて併用する。
a) 光散乱式自動粒子計数器 (JIS B 9921)
b) 凝縮核粒子計数器 (CNC)
c) 電子顕微鏡
d) 光学顕微鏡
e) 微分型電気的移動度分級器 (DMA)
f)
多チャンネル波高分析器 (PHA)
6.2
測定順序 測定順序は,次による。
a) エアロゾル発生器が定常的に作動していることを確認する。
b) 使用する測定器の適用範囲を超えないように必要に応じてエアロゾルの濃度を希釈する。
c) 測定器によって粒径及び濃度を測定する。粒径及び濃度の測定は,JIS B 9920の5.(浮遊微粒子の濃
度測定方法)の5.1(測定方法)による。
d) 測定結果から個数中央径 (CMD) , 及び幾何標準偏差(σg)又は変動係数(CV値)を求める。ただし,ポ
リスチレン系粒子の場合は,ポリスチレン系粒子分散液に表示された平均粒径(μm)及び変動係数 (%)
の値を使用してもよい。
7. 記録 試験用エアロゾルの発生結果は,次の事項を記録すること。
a) 試験日時,気温及び湿度
b) エアロゾルの種類
c) エアロゾル発生装置の名称
3
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
d) 測定方法
e) 発生条件
(1)
空気又はガスの圧力及び流量
(2)
温度
f)
発生量及び変動幅(%/発生時間)
g) 個数中央径 (CMD) (μm)
h) 幾何標準偏差(σg)又は変動係数(CV値) (%)
備考 発生結果の記録例を,表2に示す。
関連規格 JIS B 9908 換気用エアフィルタユニット
JIS B 9927 クリーンルーム用エアフィルタ−性能試験方法
JIS Z 4812 放射性エアロゾル用高性能エアフィルタ
JIS Z 8814 ロウボリウムエアサンプラ
表2 試験用エアロゾル発生結果の記録(例)
光散乱式自動粒子計数器を用いた測定による記録
1)
試験年月日
温度
湿度
試験者
2)
エアロゾルの種類
3)
エアロゾル発生装置名称
測定方法
4)
測定器名
形式
試料流量
l/min.
最大定格粒子濃度
[発生結果]
個数中央径 (CMD)
幾何標準偏差(σg)
平均粒子濃度
最大粒子濃度
最小粒子濃度
光学顕微鏡を用いた測定法による記録
1)
試験年月日
温度
湿度
試験者
2)
エアロゾルの種類
3)
エアロゾルの発生装置名
称
4)
試料の内容
5)
試料捕集の内容
電子顕微鏡を用いた測定法による記録
1)
試験年月日
温度
湿度
試験者
2)
エアロゾルの種類
3)
エアロゾル発生装置名称
4)
測定器名
5)
試料の内容
6)
粒子捕集の内容
4
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書1(規定) ポリスチレン系粒子エアロゾルの発生方法
1. 適用範囲 この附属書は,粒径が既知のポリスチレン系粒子エアロゾルを発生する方法について規定
する。
2. 原理 ポリスチレン系粒子をエアロゾル発生装置を用いて清浄空気中に噴霧,乾燥し,ポリスチレン
系粒子だけが清浄空気中に分散している状態とする。
3. 発生装置の種類 ポリスチレン系粒子エアロゾル発生装置には,附属書1図1に示すようなガス供給
系,噴霧器及び乾燥・希釈器によって構成される低濃度(10/ml程度以下)のエアロゾル発生装置と,附
属書1図4に示すガス供給系及びエジェクタによって構成される高濃度(106/ml程度以下)のエアロゾル
発生装置とがある。
低濃度エアロゾル発生装置は,主として光散乱式自動粒子計数器の校正に用いられ,高濃度エアロゾル
発生器は,エアフィルタ,ガスラインフィルタ及びこれに用いられるろ材試験などに用いる。
4. 低濃度エアロゾル発生装置
4.1
低濃度エアロゾル発生装置の構成例
a) ガス供給系 ガス供給源から,除湿器,又は冷却乾燥器,圧力調整器及びフィルタを通し,安定的に
噴霧器へ清浄ガスを供給する。ガスの相対湿度は,10%以下とする。
b) 噴霧器 加圧したガスを細いノズルから噴き出し,毛細管でポリスチレン系粒子の分散液を吸い上げ,
微小な液滴として飛散させる。噴霧器の構造の一例を附属書1図2に示す。
c) 乾燥・希釈器 噴霧器によって噴霧されたポリスチレン系粒子を含む液滴の水分などを乾燥空気と混
合することによって蒸発させる。液滴群と乾燥ガスとの混合が十分行われるように,気流を回転させ
る構造の例を附属書1図3に示す。
4.2
低濃度エアロゾル発生装置に適用するポリスチレン系粒子
a) ポリスチレン系粒子分散液の濃度 ポリスチレン系粒子分散液を超純水などで希釈し,濃度は108/m1
以下とする。
b) ポリスチレン系粒子の粒径範囲 低濃度エアロゾル発生装置に適用するポリスチレン系粒子の粒径は,
0.1〜1μmとする。
5. 高濃度エアロゾル発生装置
5.1
高濃度エアロゾル発生装置の構成例
a) ガス供給系 ガス供給源から,圧力調整器及びフィルタを通し,安定的に噴霧器へ清浄ガスを供給す
る。ガスの相対湿度は,10%以下とする。
b) 噴霧器 キャピラリを通してポリスチレン系粒子の分散液をエジェクタの狭あい部(スロート)中央
に送り,高速のガスによって分散液を微分散,乾燥させてポリスチレン系粒子エアロゾルを発生させ
る。噴霧器の構成例を附属書1図4に示す。
エジェクタの構造の例を附属書1図5に示す。
5
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
5.2
高濃度エアロゾル発生装置に適用するポリスチレン系粒子
a) ポリスチレン系粒子分散液の濃度 ポリスチレン系粒子分散液を超純水などで希釈し,濃度は1012/ml
以下とする。
b) ポリスチレン系粒子の粒径範囲 高濃度エアロゾル発生装置に適用するポリスチレン系粒子の粒径範
囲は,0.02〜10μmとする。
参考 噴霧器は,いずれの場合もポリスチレン系粒子エアロゾルを凝集しない状態で発生できるもの
を使用し,機械的に堅ろう,かつ,化学的に安定な材料で作り,洗浄が容易な構造であること
が望ましい。
6. 発生手順 発生手順は次による。
a) ポリスチレン系粒子を含まない噴霧液滴が蒸発したときに発生する蒸発残さが十分少なくなるように
超純水などを用い,ポリスチレン系粒子分散液の希釈に用いる器具,噴霧器などを洗浄する。
b) 発生器を超純水などで運転し,エアロゾル発生口のガス中の粒子数を試験に用いる計数器によって測
定し,異物粒子の濃度が十分低く安定したことを確認する。
c) 目的の粒径のポリスチレン系粒子の分散液を超純水で4.2a)又は5.2a)に従って所定濃度に希釈し,エ
アロゾルを発生させる。エアロゾル濃度及び発生の安定性を光散乱式自動粒子計数器,又は凝縮核計
数器 (CNC) を用いて測定する。
d) c)で測定されたエアロゾル濃度に対する異物粒子の割合は,低濃度エアロゾル発生器では1%以下,高
濃度エアロゾル発生器では5%以下であることを確認する。
e) 試験終了後は,噴霧器などを超純水などで洗浄する。
備考 ポリスチレン系粒子エアロゾルの濃度は,噴霧系の構成,噴霧器の構造,噴霧条件,粒径など
によって異なる。各ポリスチレン系粒子エアロゾル発生装置の指定条件に調整する。
7. 試験用エアロゾルの測定方法
a) 粒径及び濃度の測定は,本体6.に基づいて行う。
b) ポリスチレン系粒子エアロゾルの粒径及び濃度の測定は,JIS B 9921に規定した光散乱式自動粒子計
数器を用いて行う。
光散乱式自動粒子計数器の最小可測粒径以下のポリスチレン系粒子エアロゾルの濃度測定には,凝
縮核計数器 (CNC)を用い,粒径は微分型電気移動度分級器 (DMA) を用いて測定する。
ポリスチレン系粒子としては,附属書1表1の条件を満たすものを使用する。
附属書1表1 平均粒径の範囲及び変動係数
平均粒径の範囲 (1)
μm
変動係数(2)
%
0.02〜0.08
≦20
0.08を超え≦10
≦10
注(1) 粒径測定は,JIS B 9924の附属書,
及びJIS Z 8901の附属書による。
(2) 変動係数(CV値):{粒径の標準
偏差/平均粒径}×100(%)
8. 注意事項 発生したポリスチレン系粒子エアロゾルは帯電しているため,次の事項に注意する。
a) ポリスチレン系粒子エアロゾルを試験対象物,光散乱式自動粒子計数器などに導く配管は,静電気力
6
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
による粒子沈着の影響が少ないものを使用する。
b) 発生したポリスチレン系粒子エアロゾルは,放射性同位元素などによって生成される正負両極性イオ
ンによって中和し,平衡帯電分布として用い,粒子沈着を少なくすることが望ましい。
附属書1図1 低濃度エアロゾル発生装置の構成例
附属書1図2 低濃度エアロゾル発生装置噴霧器の例
附属書1図3 乾燥・希釈器の例
7
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書1図4 高濃度エアロゾル発生装置の構成例
附属書1図5 エジェクタの構造例
8
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書2(規定) ステアリン酸,DOP及びDOSエアロゾルの
発生方法(蒸気凝縮法)
1. 適用範囲 この附属書は,ステアリン酸,DOP及びDOSエアロゾルを発生する方法について規定す
る。
2. 原理 ステアリン酸,DOP, 又はDOSをボイラによって加熱,蒸気化し,放電によって得た金属粒子
を核として凝縮させ画試料のエアロゾルを発生する蒸気凝縮法を用いる。
次の範囲のエアロゾルの発生に適している。
個数中央径 (CMD) : 0.1〜0.4μm
幾何標準偏差 (σg) : 1.4以下
3. 発生器の構成 発生器は凝縮核を発生させる放電部,ステアリン酸,DOP,又はDOSを加熱蒸気化さ
せるボイラ部,蒸気を均一にさせる再加熱部及び凝縮・固化させる冷却部で構成する。附属書2図1に発
生例を示す。
4. 発生手順 発生手順は次による。
a) キャリアガスの圧力及び流量を規定の値に設定する。
b) 電源を投入し,ボイラ,再加熱及び補助加熱のヒータ温度を規定の値に設定する。
c) ステアリン酸,DOP,又はDOSが融解するまで約30分間放置する。
d) 常に一定の放電になるように放電電極の先端及び間隔を検査し調整する。
e) 放電電圧を規定値に合わせ,約30分間放置する。
f)
ステアリン酸,DOP,又はDOSは,使用時間によって定期的に交換する。
5. 粒径及び濃度の測定 粒径及び濃度の測定は,本体6.に基づき平均粒径及び幾何標準偏差を求める。
また,質量濃度を求める必要がある場合には,JIS Z 8813のろ過式,又はひょう量法によって測定する。
附属書2図1 蒸気凝縮法によるエアロゾルの発生例
9
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書3(規定) DOP及びDOSエアロゾルの発生方法
(加圧噴霧法)
1. 適用範囲 この附属書は,DOP及びDOSエアロゾルを加圧噴霧法によって発生する方法について規
定する。
2. 原理 DOP及びDOSを加圧空気によってバブリングし,液中に生じた無数の気泡が破裂する際に形
成される微少な液滴をエアロゾルとして利用する。
次の範囲のエアロゾルの発生に適している。
個数中央径 (CMD) : 0.2〜0.3μm
幾何標準偏差 (σg) : 1.4〜1.8
3. 発生器の構成 附属書3図1にラスキンノズルを用いたエアロゾルの発生例を示す。
4. 発生手順 発生手順は次による。
a) DOP, 又はDOSを発生器の容器に適量注入する。
b) 必要なエアロゾルの量に応じてラスキンノズルに接続されたバルブを開く。
c) 圧縮空気の圧力及び試料の液温は,指定した範囲内で一定に保つ。
d) DOP及びDOSは,汚れないように定期的に点検する。
5. 粒径及び濃度の測定 粒径及び濃度の測定は,本体6.に基づき,個数中央径 (CMD) 及び幾何標準偏
差(σg)を求める。
10
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書3図1 ラスキンノズルを用いたエアロゾル発生例
11
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書4(規定) DOP及びDOSエアロゾルの発生方法
(加熱・加圧噴霧法)
1. 適用範囲 この附属書はDOP, DOSエアロゾルを加熱・加圧噴霧法で発生する方法について規定する。
2. 原理 試料を加熱し,アトマイザによって噴霧し,更にガラスフィルタ(ミスト発生部)によって機
械的に分散し再加熱,冷却を行いエアロゾルを発生する。
この方法は,次の範囲のエアロゾルの発生に適している。
個数中央径 (CMD) : 0.2〜0.3μm
幾何標準偏差 (σg) : 1.4以下
3. 発生器の構成 附属書4図1に加熱・加圧噴霧法を用いたエアロゾルの発生例を示す。
4. 発生手順 発生手順は次による。
a) 試料容器にDOP, DOSを注入し,指定された温度に加熱する。
b) 加圧空気を供給し指定の圧力に設定する。
c) アトマイザへの空気量及び希釈空気量を設定する。
d) 加熱部温度を規定の値に設定する。
e) 試料は使用時間によって定期的に交換する。
5. 粒径及び濃度の測定 粒径及び濃度の測定は,本体6.に基づいて個数中央径 (CMD) 及び幾何標準偏
差(δg)を求める。
附属書4図1 加熱,加圧噴霧法を用いたエアロゾルの発生例
12
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書5(規定) NaClエアロゾルの発生方法(加圧噴霧法)
1. 適用範囲 この附属書は,NaClエアロゾルを発生する方法について規定する。
2. 原理 塩化ナトリウムのエアロゾルを発生するもので,次の原理による。
方法1: NaC1水溶液を加圧空気によってアトマィザ(噴霧器)で破砕分散させ,発生したミストを
乾燥し,エアロゾル化する。
次の範囲のエアロゾルの発生に適している。
個数中央径 (CMD) : 0.15〜0.35μm
幾何標準偏差 (σg) : 1.5以下
方法2: NaCl水溶液を加圧空気によってバブリングし,発生した気泡が破裂する際に形成される微
少な液滴を乾燥させエアロゾル化する。
次の範囲のエアロゾルの発生に適している。
個数中央径 (CMD) : 0.05〜0.30μm
幾何標準偏差 (σg) : 1.43〜1.83
3. 発生器の構成
方法1: NaCl水溶液を一定量連続して噴霧するために,タンクからポンプで水溶液をアトマイザへ
送り余剰の水溶液をタンクに戻す強制循環と,アトマイザ内の液面レベルを一定に保つ液面
調整とを組み合わせた循環ラインからなるミスト発生部,発生したミストを一定の粒子群に
する分級部,水分を蒸発させエアロゾル化させる粒子生成部及び清浄空気部による希釈部で
構成される。附属書5図1に発生例を示す。
方法2: 附属書3に示すラスキンノズルを用いる。
4. 発生手順
方法1: a) 発生器内に収容されている水溶液,廃液及び洗浄の各タンクの液量を確認する。
b) 電源を入れ乾燥管の温度,乾燥空気量及び希釈空気量を規定値に設定する。
c) 乾燥管温度が規定の温度に達した後アトマイザを作動させる。
d) 発生温度及び安定度の確認を行う。
e) 粒径及び濃度の測定を行う。
f)
試験終了後は洗浄スイッチを入れ,噴霧ノズルの洗浄を行う。
方法2: a) NaCl水溶液を発生器に適量注入し,附属書3の手順に従う。
b) 発生粒子は,発生器出口から圧縮空気の流量に比べ十分大きな風量の試験ダクトに接続
し,ダクト内を乾燥させエアロゾル化する。
5. 粒径及び濃度の測定 粒径及び濃度の測定は,本体6.に基づき,個数中央径及び幾何標準偏差を求め
る。また,質量濃度を求める場合には,JIS Z 8814の手法によって求める。
13
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書5図1 NaClエアロゾルの発生例
14
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書6(規定) NaClエアロゾルの発生方法(蒸発凝縮法)
1. 適用範囲 この附属書は,NaClエアロゾルを蒸発凝縮法で発生する方法について規定する。
2. 原理 固体の塩化ナトリウムを高温で加熱し蒸気化した後,冷却してエアロゾル化する。
次の範囲のエアロゾル発生に適している。
個数中央径 (CMD) : 0.005〜0.02μm
幾何標準偏差 (σg) : 1.4以下
3. 発生器の構成 固体の塩化ナトリウムを含む試料ボートと,加熱蒸気を輸送するキャリアガスライン,
加熱蒸気及び形成粒子の管壁への沈着を防ぐためのシースガスラインと,これらを加熱するため電気炉及
びキャリアガス,シースガスを冷やす冷却装置とで構成される。附属書6図1に発生装置の例を示す。
附属書6図1 NaCl微粒子発生器
15
B 9928 : 1998
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4. 発生手順
a) キャリアガス用円管(石英管)の先端部の試料ボートに塩化ナトリウムを充てんする。
b) キャリアガス及びシースガスの流量を規定の値(流量比が約1:5)に設定する。
c) 電気炉を規定の温度に調整する。
d) 発生温度及び安定性の確認を行う。
e) 試験終了後は電気炉の温度が十分低下するまでガスを流す。
5. 粒径及び濃度の測定 粒径及び濃度の測定は,本体6.に基づき,個数中央径及び幾何標準偏差を求め
る。
JIS B 9928 制定原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
中 江 茂
東京理科大学理学部
(委員)
横 地 明
東海大学工学部
高 見 勝 己
湘南工科大学
片 桐 拓 朗
日本品質保証機構計量計測センター
山 下 憲 一
山下試験用粉体研究所
中 嶋 誠
通商産業省機械情報産業局産業機械課
大 嶋 清 治
工業技術院標準部機械規格課
山 村 修 蔵
財団法人日本規格協会技術部
杉 田 直 記
ミドリ安全株式会社
星 名 民 雄
リオン株式会社
星 野 守
日本無機株式会社
武 田 隼 人
進和テック株式会社
田 口 光 裕
東洋濾紙株式会社
横 山 惇 彦
株式会社日立製作所
沼 田 典 之
エアロゾル研究所
佐 野 浩
株式会社モリテックス
日 方 幹 雄
日本合成ゴム株式会社
新 関 満
柴田科学器械工業株式会社
水 本 隆 憲
日新化成株式会社
福 嶋 信 彦
日本科学工業株式会社
篠 田 潤一郎
積水化学工業株式会社
三 上 壮 介
社団法人日本空気清浄協会
大 竹 信 義
社団法人日本空気清浄協会
(オブザーバー)
加 山 英 男
財団法人日本規格協会技術部調査研究課